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7. 結論
本研究では,立体映像メディアを用いる人間のユーザビリティと視覚特性に着目し,立 体映像の撮影,編集及び呈示に関して実証的検討を行い,立体映像の制作から観察に至る までの,立体映像メディアの利用に関する提案を行った.
本研究においては,まず,立体映像の応用に関する研究として,福祉領域での立体映像 利用,文化財の立体映像記録,立体映像コンテンツの呈示設計に関して,ヒューマンイン タフェースの観点から諸要因の検討を行った.それより,以下の知見を得た.
1)対象者の選定やコンテンツの選定,呈示システムの設計を検討することで,高齢者にお ける立体映像の利用も有用である.
2)高精度な制作システムや制作手法の提案により,文化財の立体映像による記録は,学術 的資料としての利用にも有用となりえる.
3)呈示システムの差異によらず,呈示する立体映像コンテンツの制作手法と呈示方法を検 討することで,観察者の生理・心理的な負担を軽減させることができる.
そして,これらの研究より,立体映像の制作及び呈示システムに関する検討の必要性と 重要性を明確にした.
次に,立体映像の制作環境に関する提案として,立体映像の撮影用アダプタと編集用ソ フトウェアの試作を行い,評価実験によりユーザビリティに関して検討した.
立体映像撮影用アダプタに関する検討では,立体映像制作者の視点から,時分割方式で 入力するための立体アダプタの設計を検討し,その試作を行った.それより,以下の知見 を得た.
4)提案した立体アダプタにより,垂直視差の補正やケラレの除去など,立体映像撮影に重 要なユーザビリティが向上し,使いやすさと,撮影する立体映像の品質を向上させること が可能である.
5)立体映像撮影に関する諸要因を解決する立体アダプタの設計は可能であるが,実用性の 点で,ユーザビリティの向上と立体アダプタの小型化の両方を満たすことが課題となる.
立体映像編集用アダプタに関する検討では,立体映像の編集に特有な機能を実装した,
PC 上で動作するソフトウェアを設計し,その試作を行った.それより,以下の知見を得た.
6)提案したソフトウェアにより,従来の立体映像の編集システムを大幅に簡略化し,従来,
困難であった立体映像編集を容易にした.
7)提案したソフトウェアにより,時分割立体映像の編集段階での補正が可能となり,観察
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時の視覚負担を考慮した立体映像編集が可能となった.
8)ソフトウェア画面において直感的なユーザインタフェースとすることで,立体映像に特 有な編集操作のユーザビリティが向上する.
さらに,立体映像の呈示環境に関する提案として,単焦点レンズによる光学補正を用い た呈示方法の提案と,光学補正立体映像呈示システムの試作を行い,視覚特性に着目した 評価実験によりその有効性を検討した.
単焦点レンズによる光学補正を用いた呈示方法の検討では,立体映像観察時の調節と輻 湊の不整合を改善するための手段として,補正レンズを偏光メガネに付加する方式につい て実験により検討を行った.それより,以下の知見を得た.
9)凸レンズを用いた光学補正により,立体映像観察中の調節距離が遠方にシフトし,特に 近方観察において,見やすさや視覚負担の点で有効である.
10)単焦点レンズを用いた光学補正を行った場合も,先行研究による知見と同様に,視差 量が小さい再生条件において視覚負担が少ない.
11)適切な補正レンズの屈折力と立体像の再生位置により,調節と輻湊の不整合が軽減す る.
光学補正立体映像呈示システムの検討では,調節距離をシフト可能な立体ディスプレイ と,人間の視覚特性を踏まえて,立体映像を呈示するための制御ソフトウェアからなるシ ステムを設計し,その試作を行った.それより,以下の知見を得た.
12)テレセントリック光学系を用いた,従来とは異なる立体映像呈示方法を提案し,調節 距離と輻湊の変化を伴った,自然視に近似した視覚状態の形成が可能となった.
13)提案した呈示システムにより,奥行き方向に移動する立体映像の観察における動的な 光学補正を実現し,観察の違和感が少ない自然な立体映像観察が可能となった.
14)提案した呈示システムにより,視覚特性を考慮した立体映像呈示が可能となり,観察 者の視覚状態に合わせた映像呈示や,観察者の毛様体筋の緊張弛緩を促す映像呈示が可能 となった.
以上の知見より,立体映像の制作環境に関しては,制作者のユーザビリティ向上を考慮 したシステム開発に貢献でき,ひいては,立体映像メディア利用における重要な要因であ る,コンテンツの制作及び蓄積に貢献できると考えられる.また,立体映像の呈示環境に 関しては,観察者の視覚負担の軽減や立体映像の再生精度の向上を期待したシステム開発 に貢献でき,ひいては,立体映像を,人間にとって有効な映像メディアとして利用してい くことに貢献できると考えられる.本研究で得られた知見を生かした実用化を行うことが
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今後の課題である.さらに,本研究の今後の展開としては,一貫した立体映像の制作・呈 示システムへの応用が考えられる.立体映像では,制作方法だけではなく,呈示方法によっ ても観察者に与える映像情報が異なる.つまり,適正な映像制作及び編集を行ったとして も,呈示方法によっては,制作者の意図通りの映像呈示ができなかったり,観察者の負担 を増大させたりしてしまう可能性がある.そのため,撮影から編集,呈示における一貫し た,立体映像の制作及び呈示環境に関する検討,あるいは,多様な呈示方法に柔軟に対応 ができる,体系的な立体映像の制作及び呈示環境に関する検討が,今後の展開と考えられ る.本研究で得られた知見は,そのための手法として応用できると考えられる.