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轡繕・1第齢9雛)
小児の溶連菌感染症
東京女子医科大学小児科学教室
教授磯田仙三郎
イソ ダ セン サブ ロウ
(受付 昭和39年10月7日)
緒 言
連鎖状球菌の種類は多く,その中でA群溶連菌 は小児にとって強敵である.それはこの菌が感染 症巣に炎症を起こすというだけでなく,その製産 する抗元性物質のために種々なる病的状態を起こ すと考えられて来たからである.
A群溶連菌はその産生する抗元性物質によって 30〜40の菌型に分かれている程であるが,A群溶 連菌の大多数は0−streptolysin,すなわち酸素に 敏感なStreptolysinを産出するといわれている.
これがためA群溶連菌の感染を受けた生体は,そ
の大多数がこれに反応してAntistreptolysin
(ASL−0)を産出してこれに対抗する.故に血清 中のASL−0値は溶連菌感染を探知するに有力な 手i掛りとなるものである.
よって私は小児の溶連菌感染症を述べるに当 り,患者の血清ASL−0値の観点から小児の溶連 菌感染症を論ずる事とした.
ところで問題となるのは,健康者でも既に溶連 菌感染の経歴を持っている者もあるので,現在の 疾患が溶連菌感染と無関係でも,或程度のASL−O 値を現わすものがある.乳幼児では一般に抗体値 が低いので125−166単位以上は一応A群溶連菌 感染の存在を考えるべきだともいわれるが,幼児 以後では健康者でも125−166Todd単位程度の
ものは少なくないといわれる・ よって私は一応 250Todd単位以上を以て現在の一士が溶連菌感 染に関係あるものと考える事として,最:近2年半
の入院患者について検べた結果を報告する.
検査成績と考察
(1)諸種疾患のASL−0値
(第1表)はASLO値を検べた全例を疾患別
第1表 諸種疾患のASL−0値
病 名
リウマチ熱 型 炎 血管性紫斑病 狸紅熱
上窩性アンギーナ 中耳炎併アンギーナ 感冒性カタル性アソ ギーナ
ヘルプァγギーナ 気管支炎・肺炎 百日咳肺炎 麻疹及麻疹肺炎 葡萄菌肺炎 非定型性肺炎 喘息および喘息性気 管支炎
突発性発疹 週期性1幅吐症 乳児下痢症 血小板減少性紫斑病
レチクローゼ ミオカルドーゼ 腎孟膀胱炎 細菌性心内膜炎 スチル氏病
例 数 19 45 10 73 10
3
28 2 26 2 10 3 10 15 4 3 3 3 1 2 7 6 1
ASL−0 250以上 例 数
16 34 8 8 1 2 3 o o o o o o o o o o o o o o o o
上昇例率 o/o
84.2 75.6 80.0 10.9 10.0 16.7 10.7 o o o o o o o o o o o o o o o o
Senzabur6 ISODA (Department of Pediatrics, Tokyo Women s Medicai College): Hemolytic strbpto−
coccal infection of the children.
一 752 一
59
第2表 諸種疾患の250以下のASL−0値
病 名
ヘルプアンギーナ
i例数灘劃
2 12 一 125
,tlSLO ISToD
気管支炎。肺炎 百日咳肺炎 麻疹および麻疹肺炎 葡萄菌肺炎 非定型性肺炎
1喘息および喘生性気管支炎 突発性発疹
週期性嘔吐症 乳児下痢症 血小板減少性紫斑病
ミオカルド一眠 土工膀胱炎 細菌性心内膜炎 スチル氏病
26 2 10 3 10 15 4 3 3 3 2 7 6 1
12以下 12 12 一 166 12 12・一 166
166以下 12以下 50以下 12以下
12 一 125 100 12一一 166 12 一一 166
12以下
に,その検査例数と250単位以上の例数とその百 分率を示した.このようにASL−0250単位以上 を示した疾患は,リウマチ熱の84。2%,糸球体腎 炎(混合型を含む)75.6%,血管性紫斑病の80%,
狸紅熱の10.9%,咽頭炎10%,そして中耳炎併発 咽頭炎16.7%で,その他の諸疾患では悉く250単 位未満であった.250単位未満の疾患に現われた 一ASL−0値は第2表に示した程度であった.
(1)ASL−0値の年令別分布
以上の検査全例のASL−O値を年令別に観察す ると第1図の如く,乳児と満1才では悉く166単 位以下で,満2〜3才では500単位までが少数あ
る程度で,高値を現わしたのは4−10才の間であ る.この事は,狸紅熱,リウマチ熱,紫斑病およ び糸球体腎炎の罹患年令とよく一致している.
(皿)疾病経過とASL−0値の変動
ASL−0は1種の生体反応であるから,その程 度は病日と関係がある筈である.よって検査病日
とALS−0値との関係を曲線図で示す.
a)第2図は糸球体腎炎でネフローゼ混合型も 少数含まれているが,一一般にASLO値は早期に 高く次第に低下するものが多い.但し混含型では 永く高値を持続する例があった.なおまた次に示 す如きASレ0上昇の疾患の中で,腎炎が最も高 値を現わした例が多い.
衿D/∂34S・67?タ〆。〃/a /3/4/ /9才
第1図年令別ASL−0値
病日/o⊇03ゆタθgoク卿タ。〃〃〃々〃β園圃洛伽∠蜘勧卿ア
第2図腎 炎
ASLO 勘σ
lasc
/ooo
7te
如o
Rタ。
ノタ
/a
ス}iレ比病伽→
_.工
一一一一一一
?mL.
細/oao・30 40 SO・50ク080?〃0ρ加泌ρρ槻那9〃θ∠椰ρ切ψ隔
第3図 リウマチ熱 一753一
・60
ASLO
殉
蛎
a
/a
/a
舶ノa34trち72.9・/o〃/a t3!4 xs ls n !g/9 Re∂/鋤
第4図狸紅熱
第3表 血管性紫斑病
氏 名
年令1騰A蓄0」縣。徴
1坂○ 武○ 1.7S 2中○ :文○・5.11.♀
3飛○ 栄○ 8.46 4武○ 信○ .6.10♂
5石○ 明○
6鈴○ 勤 7加○ 茄○
8長谷○一〇 9染○ 利○
10渡○ 修Q
4.79 6.3S 4.3S 7.08
8,0S 7.IS
十 十 十 十 十
十
1250 3750 100 625 333 833 375e 3000 250 ユ25
十
ASt−O
阜ノ
ノan.
.働
a
ノ
盈 v−tt x
E
翼 s Xx
6一一x一一.一H
病日ノOJe3り4け090 708090吻〃0ρ0βの物仰/6ρ加仰〃ψ0初ア
第5図血管性紫斑病
b)第3図はリウマチ熱で,やはり初期に高
く,次第に低下する.そして腎炎の揚三下高くは 現われなかった.c)第4図は狸紅熱である.狸紅熱が溶連菌感 染に原,因する事は幾多の研究によって明白である
にも拘らず,ASL−O値の上昇しないものが多
い.初期のみならず画復期でもなお上昇しないも のが大多数であった一■これにっ・いての考察は後か
ら述べる事とする.
d)1血管性紫斑病のASL−0値
第3表の如く血管性紫斑病1,0.例の中8例,すな わち80%がASL O上昇を現わ1した.6例は腎症 を併発.していたが腎症併発の有無によらず上昇し た(第3表,第5図).しかし腎症を併発したも の.の方が著しい上昇のように思われ,しかも永く 続くものがある.
以上の成績を吟味.して老察を加えるならば,先:
ず第1表に示した如くASL−O k昇の疾患でも悉・
くが250単位以上とはならず,250単位以下の側 がリウマチ熱で約16%,腎炎で約25%,血管性紫 斑病では20%.,しかして狸紅熱に至っては約89%
も上昇しない例があった.
この事は溶連菌感染に無関係を意味する事も考 えられるけれども,また一:方にたとえ溶連菌感 染があっても, その菌の産出するStreptolysin.
の多寡,強弱と個体反応との関係による事も考え られる.先人の研究によれば,狸紅熱溶連菌は菌型:
第1と第3の揚合が多いといわれ,また急性腎炎 では菌国号12の事が多いといわれている事と思い 合わせて見るならば,「溶連菌感染があっても菌型 の相違によってASL−O値の上昇,非上昇の相違、
が起こる事も老えられる.狸紅熱が溶連菌感染症 である幾多の研究実証があるにも拘らずASL一(》
値の上昇を現わすものが少ないのは,狸紅熱溶連一 菌は.Erythrotoxin(Dick・Toxin)を強く生産 するが,Streptolysin Oの産出は低い菌型では ないかと考えられ,腎炎に関係する溶連菌どは菌 型が異るという事も理解し得る事である.
糸球体腎炎でASL Oの昇らないものについて は,葡萄菌等の感染も考えられる.けれども,この 点についてはまだ何とも言えない.
リウマチ熱のASLO上昇例率は最も高いので
Streptolys・in Oを産出する溶連菌との関係が最も深いという;事になる.
血管性紫斑病のASLO値上地墨は今迄の報告
では25−40%で,その率の低いところがら溶連菌 が主役をなすとは老え難い.とされているが,われ一 754 一
6・1
第4表 ASL・O陽性者の咽頭溶連菌検出率
病名陣釧検・釧%
急性腎炎 リウマチ熱 狸紅熱 血管性紫斑病
レチクローゼ アソギーナ
27
14・
6一(陰性58)
10 1 6
6 1 1
(19)
1 o 1
22.0 7.1 16.6
i(32 . 7.)
10.0 o 16.6
われの例からすれば上昇例80%で深い関係にある と考えざるを得ない.
(N)ASL−0値と咽頭溶連菌検出率
ASL−0 250単位以上のものの咽頭溶連菌検出 率は第4表の如くで,いずれの疾患においても検 出率は極めて低い.検出率の最も高い腎炎におい てすら22.0%で,リウマチ熱では僅に7.1%であ
った.
このように咽頭溶連菌検出率がASL−0上昇例 においても低率である事は,検体採取法にも左右
されるであろうが,抗生物質使用の影響,また抗 体産出のためではないかと考えられる.
(V)最:後に腎炎:の治癒経過日数とASL−0値 の推移関係を検べたが,ASL−0値上昇と治癒日 数との間には一一t定の関係は観られなかった.
総 括
以上の事を要約すると次の如くなる.
1) A群溶連菌感染と最も関係深い小児疾患は リウマチ熱,腎炎,血管性紫斑病および狸紅熟,
それに1部の咽頭炎である.
2) しかもそれらの病原をなす溶連菌は,必ず しも同一菌型でなく,殊に狸紅熱溶連菌はStrepto−
1ysin Oの産生が少ないものが多いと考えられる.
3)ASL−O上昇者の咽頭溶連菌検出率は低
い.これは使用せる抗生物質のためと,生体の抗 体産出の影響かと老えられる.4)腎炎の治癒経過とASL−0値は一定の関係
がない.
文献省略
一755』凹