アメリカ保釈制度の考察
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(2) アメリカ保釈制度の考察. コロンピア地区犯罪法. ︵−︶釈放中の犯罪と保釈 ︵h︶. 七 あとがき. 六六. 本稿は︑勾留および保釈に関する研究の一過程として︑ アメリカの保釈制度を︑歴史︑実務︑立法例を中心に考察 したものである︒. 保釈の意義. 保釈︵訂εとは︑被逮捕者の公判への出頭を確保するために金銭その他の条件を付して被逮捕者を釈放するため の手続である︒. げ毘という言葉は︑保護者︑番人あるいは守備者を意味する︑フランス語の﹃訂箒﹄に由来する︒コモン.ローで. は︑告発された者は︑その者が法執行官の管理から釈放されて︑要求のあったときにその者を差し出すことを義務付 ︵亘︶ けられる保証人の管理に委ねられたときに︑保釈を認められると言われている︒被逮捕者の釈放を獲得し︑要求のあ. った時と場所に被釈放者が出頭することに対して責任を負う保証人は︑被逮捕者又は被勾留者を自己の拘束下に引取 ︵2︶ り︑そのようにして被疑者︑被告人の裁判所への出頭に対して自らを束縛するが故に﹃富監﹄と呼ばれた︒ ︵3︶ 一三世紀までは︑保証人となる者は︑文字通り﹁身柄のために身柄を束縛された﹂が︑後には︑被釈放者を差し出.
(3) さない場合には一定額の金銭を支払うという誓約によって保証人に約束をさせるか︑あるいは︑不出頭の場合に一定 ︵4︶ の金額を支払うという誓約によって約束し且つ被保釈者を保証人の管理に委ねることが一般的となった︒かようにし. ︵ヨ鉱昌oヨ9︶であり︑条件付釈放. て︑被保釈者が保証人の管理に委ねられて拘置された場合には保証人は厳密に保釈保証人であったが︑保証人が単に 被保釈者の出頭のための担保を与えたにすぎない場合には保証人は出獄引受人 ︵5︶. ︵日巴昌駐①︶を与えるものであると言われた︒右の出獄引受人は被保釈者を拘禁する権限もその者を引き渡す権限も ︵6︶ 持たない出頭のための保証人であったが︑保釈保証人は本質的には獄吏である︒かくて︑保釈を許容することは拘置. の変更にすぎない︒これは代用獄吏論とでも呼ぶべきものである︒ ︵7 ︶. イギリスの裁判所が︑不出頭の場合に保証人に損失の補償をするという契約は公共の政策に反し︑したがって違法. であると判示したのは︑右の代用獄吏論に基いている︒国家の求めるのは保釈保証書によって示される金額よりもむ. しろ被保釈者の出頭であり︑損失補償を保証人に許すことは被保釈者を差し出す動機を破壊する︑というのが右の議 論の要諦である︒. 被保釈者が出頭しないときにはその者が保釈保証人に保釈金の損失を補償するという契約を認めることに関して︑. アメリカで主張されていることは︑そのような契約は保釈制度の運用について貧乏人を圧迫するということである︒. 損失補償は被保釈者の出頭を確保するという保釈保証人の関心を挫くであろうし︑また︑富める犯罪者はさして困難. 六七. なく保証人を見付けて補償し︑裁判から逃亡を図ることができようというのである︒しかし︑リーリ事件では︑補償 ︵8︶ 契約は適法とされ︑保釈保証人の地位と出獄引受人の地位の間の区別を認めなかった︒ここに後述のボンズマンが存 アメリカ保釈制度の考察.
(4) アメリカ保釈制度の考察. ︵1︶. 匹8犀︑のピ鎖名U一畠o葛q︾讐一ミ︵膳島①傷●一〇ヨy. 国貸一一〇毛一辞︑のU一〇ユopρ曙o︷国昌αq一一昏い餌名︶辞刈︵一り8︶し. 在するにいたる基盤がある︒. ︵2︶. 碧一8︵ω乱&. ︶︒. 毛讐<o一︒目︾辞Ooo刈︵N&&︒. 醇㎝呂︵一8①a●y. =o一騎毒o旨F=一ω8昌o︷国⇒αQ一幽旨い費毛. 鼻弩儀一≦巴二きF↓ゲ①霞の8員o︷国畠一一旨い. <o一.宅. ︵3︶ ︵4︶. <o一●ヌ. 国帥鼻の8髭︑のOoヨ目g寅ユ①9辞旨oo︵一〇〇〇〇①︶︒ oo. =o一富毛o昌F=一の8蔓o︷国ロαq一一︒︒ゲ■餌名. ︵6︶. 冥く・勺o旨①H口〇一〇︺H界切●①P. ︵5︶. ︵7︶. qω鰯㎝舞. d旨&ω算8︿. い①鴛ざ田. ︵8︶. 二 保釈の歴史的背景. ︵2︶. 一〇密︶●. 六八. 保釈はイギリスにその起源を有し︑ノルマン時代以前にまで遡り︑記録のあるイギリス法に先だつとさえ言われて ︵1︶. いる︒その慣行はグランヴィールやブラクトンなど初期の学者によって認識された︒. 保釈金による釈放の本来の存在理由は定かではないが︑その発端は自由に対する考慮もさることながら︑それ以上 に﹁必要性﹂から生じたようである︒. 司法の運営が中世の執行官︵昏a鴇︶の掌中にあったとき︑執行官が執行官巡回裁判所を開廷するために配置され. るまでは︑あるいは︑もっと重大な事件では︑ことによると数年もかかる裁判官の到着までは︑逮捕は勾留を意味し.
(5) た︒拘置所における非衛生的な条件のために多くの被拘禁者が死亡した︒ワてしてある論者が指摘したように﹁そのよ ︵3︶ うな条件のもとでは︑拘禁は︑特に拘置所が牢獄熱病になめ尽くされた時期などは︑しばしば死刑であった︒﹂ ︵4︶ 王の代理として︑また︑刑事司法の主たる運営者として︑執行官はしばしば保釈を認めるようになった︒これは人. 道主義的な理由によるのではなくて︑拘禁は費用がかかり且つ煩わしいという事実のためであって︑執行官は被拘禁 ︵5︶. ︵6︶. 者を友人に引き渡すことによって︑受持の被拘禁者に対する個人的な責任を回避することを望んだ︒ ﹁破られるため. に作られた﹂場所であった拘置所からの逃亡が頻繁に起り︑その都度執行官は重い罰金を科せられた︒. 執行官はまた︑保釈を許容するに際して金銭的な利益を見出した︒保釈の可否を決定したのは執行官であるが︑そ ︵7︶ の不明瞭な裁量の行使の際︑財政裁判所から何らの規制がなかったことは︑必然的に権限の乱用へと導き︑保釈金に ︵8︶ よる釈放は利益ある仕事となった︒執行官は金銭を受け取るまで被疑者︑被告人を拘禁すると非難されさえした︒こ. のようにして︑保釈金による釈放は︑執行官に対して︑被拘禁者の逃亡に対する責任を免がれるという利益に加うる ︵9︶ に︑金銭を得るという結果をもたらした︒. ︵1 0︶ 被拘禁者を保護するために︑少なくとも二種類の令状が用いられたようである︒ 一つは釈放令状︵↓ぎ巧旨留. ぎ巨ま8覧囲欝&︒︶であって︑それは一三世紀後半から用いられ︑執行官が釈放することを義務づけられた被拘. であって︑先の令状と同様のものであるが︑保釈金による釈放と条件付釈放の区別は︑前者の保釈保証. 禁者を保釈金によって釈放することを執行官に強制するために使われた︒他は条件付釈放令状︵↓ぼ巧旨留目きー 琴昌ぎ需︶. 六九. 人は被釈放者の管理人︑保護者であるが︑条件付釈放保証人は被釈放者の出頭のための保証人にすぎない︑というこ アメリカ保釈制度の考察.
(6) アメリカ保釈制度の考察 とである︒. 七〇. 右の二つの令状は︑被拘禁者が王若しくは裁判官の命令で逮捕されていた場合︑又は︑殺人︑一定の林野を侵害す. る犯罪若しくは法によっても被拘禁者に対して動産占有回復訴訟を提起することを不可能にする犯罪のために逮捕さ れていた場合を除いて︑被拘禁者を解放することを執行官に命じたものである︒. そして︑=一七五年に制定されたウエストミンスター第一法律は保釈しうる犯罪と保釈しえない犯罪のリストを規 ︵H︶ 定し︑それが五世紀半以上もの間保釈しうる犯罪を決定する基準となった︒更に︑一二七五年から一四四四年の間に. 執行官の権限は治安判事の手に渡り︑治安判事は一連の制定法によって保釈を許容する権限を与えられた︒. このようにして培われたイギリスの保釈制度はアメリカに継受されるわけであるが︑その後アメリヵでは独自の道. 〇〇 〇ω︶● ω冨唱ゲ8 =一誓oqo︷チoOユヨぎ巴ピ餌毛o︷国昌αq一彗山や<〇一︒ど碧国ωoo︵一〇. を歩むことになる︒ ︵1︶ 同山. 導Oω ω 1 ω 僻 ︒. ︵2︶. 毛u<〇一︒目鳩碧㎝oo躯︵ぎ島&︒一〇8︶︒. 鵠︾B①ユoき閃巽︾︒ DD 緯一9︵一〇ら︶︒ ︒ o9讐ゆo昌一8ヨ巴. ψ蜀毛碧器♪冒さのユαq餌けぎの島①一帥名o︷>旨3. αq一一昏ピ. ︵3︶. 一一〇鼻き傷竃巴二8. ユ90噂●9け 碧器・. ↓ぎ頃一の8qo︷国. 中世の執行官の役割に関してはミ・>・言曾ユ9↓ゲ①寓o象2鎚一国品冴ゲωげR峯ε話8︵一〇ミ︶に詳しい︒ りo. ︵4︶. ︵5︶ ︵6︶. 一山. 葺Oザ凶導角の距一〇.. ︵7︶. 図山こ鉾酌QoO︒. 蜜oH. ︵8︶.
(7) ︵10︶. ︵9︶. ω希嘗①戸o℃︒畠こ碧器. 二つの令状については︑国o一駐毛o昌ダoマ巳﹃簿一〇㎝6①参照︒. oOOき&一8ω碧園oくこ辞ωお︵一〇認︶︒ >●﹈≦.O舘①B︸ω鳳一き自℃①吋のo口巴口げ①昌ざo. 保釈制度の慣行. ︵1 1︶. 三. イギリスで執行官の権限が裁判官の手に渡った後︑保釈を許容するか否かは裁判官の裁量事項となり︑権利章典は. 過度の保釈金の禁止を保証した︒アメリカに移ってからは︑連邦憲法は右のイギリスの型態を留め︑修正第八条は︑. 保釈金は過度のものであってはならないとのみ規定する︒しかし四〇州以上の憲法は︑被疑者︑被告人は死刑事件以 ︵1︶ 外のすべての事件で公判前又は判決前の保釈を許容されるべき絶対的権利を有する旨明白に規定する︒数州は制定法. で絶対的保釈権を規定している︒同様に︑一七八九年の連邦裁判所法は死刑事件以外のすべての事件において保釈権. を与え︑死刑事件では裁判官が裁量で保釈を許容することを認め︑連邦刑事訴訟規則四六条はこれを確認している︒こ. のように個人の絶対的保釈権が認められたことは︑アメリカという大国では実務上諸々の困難をもたらした︒辺境の ︵2︶ 開拓地は︑無罪を獲得する見込がなくて逃亡を企てる者を招き入れたからである︒そこでこのような事態に対して裁. 判所側が最初に示した反応は︑保釈金を与える者に対し︑その者は獄吏の権限を持つ準司法官であり︑被告人の出頭 ︵3︶ に対して責任を持たねばならないことを想起させることであった︒しかしながら︑私的な保証人が逃亡者を全国的に. 七一. 捜索することは不可能であったから︑被告人を出頭させるとの保証人の約束は︑次第に︑被告人が出頭しなけれぱ単 アメリカ保釈制度の考察.
(8) アメリカ保釈制度の考察. ︵4︶. 七二. に金銭を支払うという約束となっていった︒ここに今日的な意味での保釈制度が成立していったことがうかがえる︒. さて︑被疑者が逮捕されて警察に留置されたとき︑保釈により釈放が可能となる最初の段階である︒しかしこの段. 階では︑主として交通事犯のごとく軽微な犯罪についてだけ保釈が可能であって︑通常︑保釈は被逮捕者が不必要な 遅滞なくマジストレイトの面前に引致されたときから始まる︒. 被疑者がマジストレイトの面前に引致されたとき︑保釈を許容すべきかどうかが︑まず考慮されるべき間題の一つ. である︒マジストレイトの裁判所が直ちに当該事件を審理することのできる権限を持っている場合でも︑裁判所は直. ちに審理しないことが往々にある︒当事者がもっと多くの準備時間を欲するかもしれず︑あるいは︑裁判所が事件を. 多くかかえているかもしれない︒マジストレイトの裁判所が当該事件を審理しえず︑予備審間をなしうるにすぎない. 場合は︑後日裁判が行なわれるまで相当の日時がある場合がある︒かようにして公判前の保釈の間題が生じる︒更. に︑被疑者か公判のために拘束され︑又は大陪審への出頭のために拘束された後︑あるいは︑大陪審によって起訴さ れた後にも︑勾留又は保釈の選択がある︒ ︵5︶. いくつかの州では︑マジストレイトは保釈を許容するにあたって︑現金の供託又は特定財産の担保を要求しうる. が︑それは稀にしか行なわれない︒しかし︑保釈を受ける者は保釈金総額の保証書を提出しなければならないから︑. その者に代って保証書を提出する保証人かいない限り︑保釈金相当の財産を持っていることが必要である︒そこで通. 常マジストレイトは︑被釈放者が出頭しないときは指定額の金銭を支払うという保証人の約束をとりつけて︑その保. 証書の提出を求める︒保証人は被疑者︑被告人と人的な関係にあることを要求されず︑このことは︑保釈の保証人と.
(9) なり︑その報酬を依頼人から要求することを職とする保釈保証業者ーボンズマンーの発達を可能にしている︒ボンズ. マンは依頼人と損失補償契約を結び︑依頼人が出頭しないときには損失の全部又は一部を償うに充分な担保財産を取 り上げることによつて自己の投資を確保する︒. 当初のセオリーとしてはボンズマンは逃亡を防止するために依頼人と密接な接触を維持することに資するところが ︵6︶. あった︒現在でもまれにそうであるが︑しかしボンズマンは依頼人との接触にあまり意を用いていないと報告されて いる︒. ︵7︶. ボンズマンの存在を正当化するために提出されたもう一つの理由は︑出頭しない依頼人を取り戻すことによって州. の出費を節約して当局を助けるということである︒ボンズマンは何時でも依頼人を逮捕しその身柄を当局に引渡すこ. とのできる古典的な権利を有している︒ボンズマンが探している保釈中失踪者が当該州を離れる場合には︑ボンズマ. ンは︑逃亡者を捜索する法執行機関に要求される厳しい逃亡犯人引渡の条件に従う必要なしに失踪者を追跡し取り戻. すことができる︒しかし︑ボンズマンが逃亡者を取り戻すことが︑常に州の出費なしに遂行されるかどうか疑がわし. い︒ボンズマンは警察の情報を頼りとし︑しばしば逃亡者の逮捕に関し援助を地方警察に依頼する︒事実︑イリノイ ︵8︶. では州を逃れた者を逮捕するための費用は公庫からでており︑ボンズマンがコストを支払うという議論は間違ってい ると主張されてい る ︒. 七三. いくつかの州は︑報酬の制限やボンズマンの免許制度化︑あるいは︑業者を保険会社の支持を得たものに制限する ︵9︶ などの手段によってボンズマンを規制しようとしている︒しかし規制の網にかからない多くの弊害が残存している︒ アメリカ保釈制度の考察.
(10) アメリカ保釈制度の考察. 七四. 第一に︑ある程度の資産家だけが報酬を支払うことができ︑ボンズマンが要求する担保を提供しうる︒公判への出. 頭の確保として財産上の保証にのみ基いた保釈制度は貧乏な大多数の被疑者︑被告人にとっては無益である︒第二. に︑実際上︑裁判官よりもむしろボンズマンが︑保証書を与えるか与えないかを決定することにより︑被拘禁者が自. 由になるべきかどうかの判断をすることになる︒第三に︑ボンズマンは︑刑事裁判について経験を有する者のうち. で︑被疑者やその家族が出会う最初の者であることが往々である︒かような立場から︑ボンズマンは被疑者︑被告人. ︵2︶. ︵1︶. 一げ置●. Zoけρゆ鉱一 >⇒>目一〇旨弓﹃8菖8閃①oN鎖BぎΦ負刈O鴎鎖一①い餌毛一〇貫こ碑8刈︵一8一︶.. 寄o&鎖昌畠ミ巴負ω象=昌一げ①ご巳け&ω寅$の. のために弁護人を選択し︑あるいは︑いかがわしい役割を演じるようである︒. ︵3︶ 一ぴ崔︒. 一§矯讐N︵一〇総y. ︵4︶. 辞一鴇︵一8刈︶︒. 9民賃一80け卑一. >昌笹o・>Bo﹂8昌Oユヨぎ巴冒ωユ8. ︵5︶. >B①ユo碧切胃>300㌶岳o昌勺3一①90昌匡ぎゆB仁ヨω寅p審巳ω男gOユ目ぎ亀冒ω二8. ︵7︶ 陣ぴ髭●. 一獣山●. >昌︸暮一〇艮り﹃碧ユ8閃o賃角Bぼ巴︸8吋. 一〇U餌毛﹃o霞. 彗零ミ︵一8一︶嚇凶日一窪卑. 一 8唱●9r緯. ω宣p山舞房勾o一醇ぎαq↓o汐oマ. ︵6︶. ︵8︶. 20一ρ國巴一. ユ巴男巴①器9暮8︵一800︶.以下>●甲︾●ω寅昌審乱のとして引用する︒. ︵9︶. 一〇 〇 刈−拐・.
(11) 四. 保釈改革への動因. ︵i︶ 保釈と貧困. 保釈制度の性格は﹁逃亡の危険﹂をドルに形を変えるという実際上不可能な仕事を要求し︑更には︑金銭の損失の. 危険は被疑者が訴追から逃れることを防止するために必要であるという保釈制度の基本的前提さえも効力があるかど. うか疑がわしい︒すべての被疑者︑被告人が保釈金を支払わなければならないという要求は貧乏な被疑者︑被告人に. 対する差別を生ぜしめ︑かくて︑保釈に関する最近の批判は貧困な者に対する差別が不可避であるという事実である︒. 被逮捕者は︑警察官により︑公判への出頭の担保として保釈金を決定する勾留判事又は裁判官の面前に引致され. る︒裁判所では保釈スケジュールがそれぞれの犯罪ごとに保釈金額を決定し︑被逮捕者が右の金額を支払うことがで ︵1︶ きる場合には︑裁判官はめったに当該事件個々について考慮しない︒被逮捕者が要求金額を支払うことができるか︑. 若しくは︑ボンズマンにプレミアムを支払うことができる場合には︑彼は公判まで釈放される︒支払うことができな. い揚合には︑拘置所に拘禁される︒ボンズマンに支払われるプレミアムの基準率は保釈金額の約一〇%である︒但. し︑二〇%の高率が報告されており︑保釈金が五〇〇ドルを超えるときは︑多くの被疑者︑被告人が提出しえないほ どのものとなる︒. 七王. 一九五七年に行なわれたニューヨークの保釈実務に関する研究によれば︑全被疑者︑被告人のうち︑二五%が五〇 ︵2︶ ○ドルを︑四五%が一︑五〇〇ドルを︑六三%が二︑五〇〇ドルを支払うことができなかった︒ アメリカ保釈制度の考察.
(12) アメリカ保釈制度の考察. 七六. 金銭保釈の差別的な側面は︑ジョンソン大統領が一九六六年の保釈改革法に署名したときに述べた意見の中に写実 的に叙述されている︒. ﹁財産を持つ被疑者︑被告人は保釈金を支払う余裕がある︒彼は自由を買う余裕がある︒しかし貧しい被疑者︑被. 告人は保釈金を支払うことができない︒彼は公判前に数週間︑数ケ月あるいは数年間さえ拘置所で苦しむ︒. 彼は有罪であるが故に拘置所に居るのではない︒彼は何らかの刑が言渡されるが故に拘置所に居るのではない︒彼. は公判前に逃亡する見込があるが故に拘置所に居るのではない︒彼はただ一つの理由で拘置所に居るのである1彼は. 公判前拘禁. ︵3︶ 貧しいが故に︒﹂. ︵h︶. 公判前拘禁の影響は重大である︒まず︑無罪の推定を受ける被疑者が︑通常︑有罪の評決を受けた被告人に課せら ︵4︶ れる以上の義務負担付き条件のもとで︑拘置所での生活について心理的︑肉体的な損失を被るのである︒被拘禁者は. 審理される前に勾留によって処罰を受けているのであるから︑法の適正手続によって保証される基本的な公正を拒否 ︵5︶ されていることになると指摘される︒ ︵6︶. 被拘禁者は防禦の準備を妨げられる︒被拘禁者は弁護人と迅速に面会できず︑また︑証拠収集や証人の発見につき. 制限のない機会を持たず︑更には︑貧しい被拘禁者は弁護人に依頼する資金を働いて得ることができない︒ ︵7︶ 拘禁による公庫の浪費が問題とされている︒被拘禁者一名につき一目に三ドルから九ドル費用がかかる︒一九六二. 年にニューヨーク市は︑三〇日平均五八︑四五八名を勾留し︑その費用は一名につき一日六ドル以上︑年間一千万ド.
(13) ル以上であった︒不必要な拘禁は拘置所の費用以上に社会に出費を要求する︒保釈金を支払えない人々の多くは仕事. や扶養家族を持っている︒彼らの拘禁の結果は明白である︒職を失い︑家族の支えを失い︑借金がかさむ︒家族が国. 家による援助を受ければ︑社会基金はその援助に没頭しなければならない︒失業もまた税の収益を減少させる︒被疑. 者︑被告人が拘禁され︑その職を失えば︑あるいは︑ボンズマンヘのプレミアムに自己の限定された財産を使わなけ. ればならないならば︑彼の弁護人に支払うべき財産的能力が減退し︑社会は国選弁護人を与えるための出費を引き受 けなければならないことがある︒ ︵8︶. 公判前拘禁は被拘禁者にも多大の犠牲を要求する︒殊に︑判決の結果拘禁刑が科せられないときに︑公判前拘禁は. 被告人にとって苛酷で不公正なものとなる︒最近のニューヨークの調査では︑七三二の事件で公判前に拘禁された者. は四九%であったが︑刑の宣告で監獄に拘置された者は四〇%であった︒連邦では︑一九六三年に約二二︑三四〇名. が公判前に拘禁されたが︑二二︑六〇〇名だけが後に監獄に拘置された︒右の事実は︑被告人の社会との結びつき︑ ︵9︶. 職業︑家族に対する責任など︑釈放の決定と刑の宣告の双方にとって重要な要素は︑刑の宣告に関しては考慮されて. いるが︑公判前の釈放の決定においては反映されていないことを示している︒ ︵10︶ 更に︑公判前拘禁は事件の成行きに不利益な影響をもたらすという明白な証明がある︒フィラデルフィア︑コロン. ビア地区及びニューヨークの調査によれば︑拘禁されていた被告人に対する有罪率は釈放されていた被告人の有罪率. 七七. を越える︒例えば︑重窃盗の問責を受けた被告人のうち︑公判まで保釈されていた者の四三%が有罪の決定を受けた ︵H︶ のに対し︑拘禁されていた者の七二%が有罪の決定を受けた︒ アメリカ保釈制度の考察.
(14) アメリカ保釈制度の考察. 簿直︵一§︶・. 七八. したがって︑判決を待つ間の遅滞と挫折感を避けるために有罪の答弁をする被告人が多くいるということであるーU8磯冨9. 暮刈S︵一︒鵠︶・. ︵1︶零8こΦ簿︑ωOo謹B陣︒巴o目8い 零国鑑oN8窮①艮獅乱︾旨ぎ一の霞角凱80︷甘︒件♂P↓器犀閃98菊o宕N磐↓サoOo蔑量. 讐零︵お爲y以下↓霧犀閏98閑魯o旨として引用する︒. ︵2︶閨85︾ωけ&冤︒︷罠︒︾旨ぎ巨鼻一8︒hω餌一=昌2薯ぎ鼻99まd・℃騨冒毛寄<. ︵4︶. ︵3︶↓錺パ悶98閑①宕詳鉾巽. くお疑p昌巷飢︾昌o曾o口ωqの嵐息09δ畷巴Φ卜勉︷一〇目N. ︵5︶男8爵ρ目ゲ①OoBぼαqOo霧自言ユoロ巴Oはの置ぎω巴7昌讐目ωd︒℃卑︒冒≦幻o︿こ緯昌脇︵一馨yしかしある論者は. 20一P切巴一. 刈O国貰〜. ﹁無罪の推定は公判のときに機能する証拠法則にすぎない︒それは︑あたかもすべての被疑者が公判以前の時期に実際に無罪. であるかのように処遇されるぺきことを要求するものではない﹂︵Z9ρ男器蕊旨才oUo8暮ご昌国99↓ユ巴. ↓器パ閃o﹃8幻醸δ昌∪鉾G oo. 冨≦国①︿こ9嶺O︹ち8︺︶とする︒ ︵6︶. 凶び崔●. o℃︒息ε辞39. ︵7︶. 一窪島・. >昌︾昌o一〇馨勺壁o鳳8男8図§ぎo. ︵8︶. o●. ︵9︶. 男琶置F日げo国崩①99℃3件ユ巴U卑9該OP墜客k・d・ピ餌毒国薯・①占︵一達︶は公判前拘禁と不当な処置との間に密. 接な関係のあることを示している︒ ︾39園碧家昌轡傷ωεq︸↓ゲ①竃聾舞一きω毘℃Ho需o﹃鴇2●肖.9い国o︿. 鉾oo麻︵一8ω︶︒. ︵0 1︶. ︵11︶.
(15) ︵i︶. 五. 保釈金によらない釈放. マンハッタン・プロジェクト. 貧困及び公判前拘禁への洞察の結果として︑公判前釈放の改善が発達して来ている︒ヴェラ財団のマンハッタン・ ︵1︶. プロジェクトは︑保釈決定に際して収集される諸事実の利用を発展させること︑及び︑保釈金のない誓約に基づく釈. 放︵邑臼器888αq巳Nき8︶を拡大することを唱えた︒そして︑合衆国全体の半分以上の州における少なくとも 一〇〇のコミュニティーの保釈実務の改革に模範を提供している︒. プロジェクトは︑被告人をして公判へ出頭せしめるものは︑財産的担保の没収を避けようとする欲求ではなくて︑. むしろ被告人の人間としての信頼性であるとする信念をもって活動した︒その信頼性は︑前科︑家族との結びつき︑. 職業及び住居によって証明される被告人の社会的基盤に関する調査によって評価された︒右の調査のために︑殺人と. 一定の麻薬及び性犯罪以外の犯罪で間責を受けている被逮捕者がアレインメント前にインタビューを受けた︒そこか ︵2︶. ら得られた結果は通常電話で他者に確かめられ︑逃亡の危険を評価するためにそれぞれの要素が考慮された︒被逮捕. 者を釈放しても大丈夫であると決定されれば︑保釈金のない釈放がリコメンドされる︒そして︑その背景となった情 報は︑弁護人と検察官︑それに裁判官も利用できる︒. 七九. 当初の三年間に約三︑五〇〇名がヴェラ財団の調査に基づいて﹁保釈金のない誓約に基づく釈放﹂を受けた︒その うち九八・五%が公判のために裁判所に出頭した︒ アメリカ保釈制度の考察.
(16) アメリカ保釈制度の考察. 八○. 被疑者︑被告人の社会的基盤について明確な情報が与えられたときは︑裁判所は進んでより多くの被疑者︑被告人. ﹁被告人の背景に関. をその者自身の誓約に基づいて釈放しようとすること︑及び︑社会との結びつきを持つ者は公判への出頭について信. 頼性があることが示された︒ある論者が述べたように︑マンハッタン・プロジェクトの経験は︑. ︵3︶. する健全できめ細かい調査は︑被告人の保釈金支払能力以上に信頼しうる公判前釈放の基準であるという充分な証 明﹂を提示している︒. しかしながら︑マンハッタン・プロジェクトは︑まだ︑社会との結びつきを持った被告人の逃亡の危険と︑社会と. の結びつきを持たない被告人の逃亡の危険との比較に関する実験を経なければならない︒両者の不出頭率が同じであ. れば︑社会的基盤のテストは無意味となるからである︒更に当プロジェクトは統計的な研究に共通の欠点を有してい る︒即ち︑誤謬のほとんどを隠していることである︒. しかしいずれにしても︑マンハッタン・プロジェクトの実験は一応成功したといえよう︒その結果︑一九六四年に. 司法省とヴェラ財団の後援で﹁保釈と刑事司法に関する全国会議﹂が開かれた︒同様なプロジェクトが全国にわたっ. 連邦保釈改革法. て活動を開始した︒イリノイ州は保釈法を根本的に改定し︑連邦は保釈改革法を採用した︒ ︵h︶. 諸々の実験が誓約に基づく釈放は効果的であることを証明し︑それを広汎に利用せよとの圧力が増大した︒その結 ︵4︶. 果の一つが︑一七八九年以来はじめての連邦保釈法における基本的な変化である一九六六年連邦保釈改革法であっ. た︒ ﹁すべての者がその財産状態の如何にかかわらずに︑問責に答弁するために出頭するまで不必要に拘禁されては.
(17) ﹁誓約に基づく釈放﹂から一定時間の釈放までの保釈の代替処置を規定している︒代替処置によっては公. ︵5︶ ならないことを確保するために︑保釈に関する実務を改める﹂ことがこの法律の政策であった︒. 同法は︑. 判への出頭を確保するために充分でないと考えられる場合にのみ︑保釈金を課すことができる︒どうしても被疑者︑. 被告人を勾留しなければならない場合は︑裁判官はその理由を明白に述べる書面によって意見を提出しなければなら. 死刑によって処罰しうる犯罪以外の犯罪で問責を受けてい. ない︒更に︑その判断を迅速に再審理するための規定が掲げられている︒. 三一四六条−非死刑事件における公判前の釈放1⑥項. る者が司法官の面前に出頭したとき︑その者は︑本人自らの誓約に基づいて︑若しくは司法官の指定した金額を記載. した担保のない出頭保証書の作成に基づいて公判前に釈放を命じられるべきである︒但し︑司法官がその裁量の行使. にあたって︑右の釈放は要求されるところのその者の出頭を合理的に確保しないと決定する場合にはその限りでな. い︒右の決定をなすとき︑司法官は右の釈放方法の代りに︑若しくはそれに加うるに︑その者が公判のために出頭す. ることを合理的に確保する左の釈放条件のうちの第一の条件を付さなければならない︒但し︑ただ一つの条件では出. 被釈放者を監督することに同意する人又は機関の拘束の下に被釈放者を置くこと︒. 頭を確保しない場合には︑左の条件の何らかの組合せを付さなければならない︒ qD. 八一. 指定金額を記載した出頭保証書を作成することを要求し︑且つ︑保証書の金額の一〇︒ハーセントを越えない額. ③ 釈放期間中の被釈放者の旅行︑交際又は滞在の場所に関して制限を設けること︒ 圖. アメリカ保釈制度の考察.
(18) アメリカ保釈制度の考察. 八二. の現金その他の指定担保を裁判所の登録所へ供託することを要求すること︒但し︑右の供託物は︑釈放条件が遂. 充分に支払能力のある保証人をつけて保釈保証書を作成すること︑又は︑その代りに現金の供託をすることを. 行されれば返還しなければならない︒. 叫. その他︑被釈放者が指定時間後拘置所に戻ることを要求する条件など︑要求通りの出頭を確保するために合理. 要求すること︒. ㈲. 的に必要であると思われる何らかの条件を付すこと︒. ㈲項 釈放条件のうちいずれの条件が合理的に出頭を確保するかを決定するに際して︑司法官は︑有効な情報に基. づいて︑問責されている犯罪の性質と事情︑被疑者︑被告人に不利益な証拠の重要性︑被疑者︑被告人の家族との結. びつき︑仕事︑財源︑性格と知的条件︑当該地域における在住期間の長さ︑有罪判決を受けた記録︑及び︑裁判所の. 手続への出頭︑訴追を避けるための逃亡又は裁判所の手続への不出頭に関する記録を考慮に入れなければならない︒. ⑥項 本条のもとである者を釈放することを許容する司法官は︑付すべき条件に関する陳述を含む適当な命令を発. し︑釈放条件の侵害に対して適用のある罰則についてその者に説明し.且つ︑右の侵害があれば直ちに逮捕令状が発. 釈放条件が付される者で︑且つ︑釈放条件を満足させることのできない結果として︑釈放審間のときから二. せられることをその者に告知しなけれぱならない︒. ④項. 四時間後にも︑なおかつ勾留されている者は︑申立に基づいて︑条件を付した司法官による条件の再審理を受ける権. 利を与えられなければならない︒釈放条件が修正されず︑したがって︑その者が釈放されない揚合には︑条件を付す.
(19) ことを要求する理由を書面で示さなければならない︒指定時間後拘置所に戻ることを要件とする条件に基づいて釈放. を命じられたものは︑申立に基づいて︑右の条件を付した司法官による再審理を受ける権利を与えられなければなら. ない︒右の要件が取り除かれず︑したがって︑その者が他の条件に基づいて釈放されない場合には︑司法官は右の要. 件を継続させる理由を書面で示さなければならない︒釈放条件を付した司法官が有効でない場合は︑当該地区におけ. 本条に掲げる何らかの条件に基づいてある者を釈放することを命じる司法官は︑何時でも︑釈放条件を追加. る他の司法官は釈放条件を再審理することができる︒. ⑥項. し又は別の釈放条件を付すために右の命令を修正することができる︒但し︑追加条件又は別の条件を付せば︑その者. がその条件を満足させない結果として勾留されることになる場合︑又は指定時間後は拘置所に戻ることを要件とする. 条件に基づいてその者が釈放されることになる場合には︑⑥項の規定を適用しなければならない︒. 右のごとく︑保釈改革法第三四六条は﹁誓約に基づく釈放﹂若しくは﹁担保のない出頭保証書に基づく釈放﹂を. 第一次的なものとしていることは明らかであり︑伝統的な金銭保証書は釈放条件の分類段階の底辺近くに位置させら. れており︑金銭保釈への依存を減じているのであって︑逃亡の危険性に相応する条件を付すことを許容している︒. 更に︑第三一四七条は︑前条の⑥項又は@項の再審理があった後に依然として勾留され︐又は︑指定時問後は拘置. 所に復帰することを要件とする条件に基.っく釈放を継続して要求される者は︑その勾留又は条件付釈放の命令を修正. 入三. するよう申立てることができ︑申立が拒否された場合には上訴で争える旨規定している︒そして︑第三一四八条は︑ アメリカ保釈制度の考察.
(20) アメリカ保釈制度の考察. 八四. 死刑事件又は有罪評決後の釈放につき︑被疑者︑被告人が逃亡せず︑又は︑他人若しくは社会に対して危険な態度を. 取らないことが︑釈放条件によっては合理的に確保されないと信ずべき理由を裁判所又は裁判官が持つ場合を除いて. 第一三四六条の規定に従って取り扱うべき旨を規定する︒また同法は被釈放者が出頭しない場合の制裁を規定する︒. 三一五〇条−不出頭に対する制裁−本章に従って釈放された後︑故意に裁判所又は司法官の面前に要求通りに出頭. しない者はいかなる者も︑連邦刑事訴訟規則の規定に従って︑釈放のために与え又はその保証に供していた担保の没. 収を受け︑且つ︑加うるに︑qDその者が重罪の問責と関連して釈放されていた場合︑又は︑刑の言渡を待つ間あるい. は何らかの犯罪について有罪の評決後上訴若しくは事件移送命令を待つ間に釈放されていた場合には︑五千ドル以下. の罰金又は五年以下の拘留に処し︑又は右の刑を併科し︑③その者が軽罪の問責と関連して釈放されていた場合に. は︑当該問責につき科せられる罰金の最高額以下の罰金又は一年以下の拘留に処し︑又は右の刑を併科し︑㈹その者. が重要証人として出頭しなければならない場合で且つ釈放されていた場合は︑一千ドル以下の罰金又は一年以下の拘 留に処し︑又は右の刑を併科する︒. ︵7︶. 以上の保釈改革法に対しては︑大統領諮問委員会が直ちに賛意を表明し︑これを各州が取り入れるべきことを勧告 ︵6︶. した︒更にアメリカ法曹協会︵A・BA︶も同法の趣旨を盛り込んだ草案を提唱した︒しかしこれに対し︑各州の動. きは極めて冷やかであった︒同法が州に対するモデルとして機能することが希望された点に関しては失敗に終ってい.
(21) るようである︒改革法の制定後四年間に︑諸州は同法を採用することに抵抗を示しており︑事実同法の趣旨と反対の ︵8︶ 方向に動いている︒. ︵⁝m︶A・B・Aの草案. 本草案は﹁公判前釈放に関する基準﹂といい︑その原形はニューヨーク大学の司法運営研究所の提案にあり︑その. 後A・B・Aに引継がれて︑刑事司法の最低基準に関するA・B・Aプロジェクトによって練りあげられた︒ここに 取挙げるのは︑一九六八年八月にA・B・Aの本部によって承認された確定稿である︒. 左に訳する︑釈放決定に関する規定は︑被疑者の釈放を何らかの方法で条件付けるべきであると信ずべき理由のあ. ることが示されないならば︑被疑者を保釈金なしに釈放しなければならないとする︒司法官は︑個々の事件の状況の. 要求するところに従って︑付すべき一連の条件を提供される︒その条件は︑責任ある者の非公式な監督のもとでの釈. 放から労働時間の間のみの釈放にまで及ぶ︒保釈金による釈放は最後の手段という位置にまでおろされている︒. 五︑一条ー出頭命令又は被疑者・被告人自身の誓約に基づく釈放ー⑥項 被疑者︑被告人は出頭命令又は自身の誓. 約に基づいて釈放される権利を有すると推定されなければならない︒右の推定は︑実質的な不出頭の危険︑又は︑. 五︑二条に規定する条件の必要若しくは五︑五条に規定する禁止の必要があるとの認定によって覆えされることがあ. る︒死刑事件では︑被疑者︑被告人が釈放されれば︑重大な犯罪を実行し︑証人に対する脅迫その他司法の執行への. 八五. 干渉を行ない︑又は逃亡すると思われるとの認定が諸々の事実によって支持される場合には︑公判前にその者を勾留 アメリカ保釈制度の考察.
(22) アメリカ保釈制度の考察 することができる︒. 八六. ㈲項 実質的な逃亡の危険があるかどうかを決定するにあたって︑司法官は被疑者︑被告人に関する左の要素を考 慮に入れなければならない︒. D当該地域における居住の長さ図職業上の身分︑職歴及び財産状態㈹家族との結びつきと関係凶世評︑性格及び精 O. 神状態㈲誓約又は保釈金に基づく過去の釈放に関する記録を含む︑過去の犯罪記録㈹その者の信用性を保証する当該. 地域内の責任ある構成員の身元ω不出頭の危険性に関連ある限りにおいて︑現在問責を受けている犯罪の性質︑有罪. 判決の明白な蓋然性及び科すことのできる刑罰圖その他︑当該地域との結びつきを示す要素又は故意に出頭しない危 険性に関連のある要素︒. ⑥項右の要素及びその他の要素を評価するにあたって︑司法官は︑現在の間責の性質を過度に重要視しないよう. 出頭命令又は誓約に基づく釈放はこれを許容しないと司法官が決定する場合には︑司法官はその理由につい. に配慮しなければならない︒. ④項. 司法官が︑出頭命令又は被疑者︑被告人自身の誓約に基づく釈放は許容されないと認. ての供述を記録しなけれぱならない︒. 五︑二条ー釈放 条 件 1 ⑥ 項. 定したとき︑司法官は︑被疑者︑被告人が裁判所に出頭することを合理的に確保すると思われる条件を少なくとも一. 釈放条件が必要であるとの認定がなされた場合には︑司法官は左の条件の一つ又は二つ以上を付さなけれぱ. つ付さなけれぱならない︒. ㈲項.
(23) ならない︒. ω 被疑者︑被告人を監督し且つその者が裁判所へ出頭することに助力することに関して責任を有する適格な人又 ︵9︶ は機関の保護下にその者を釈放すること︒右の監督者は︑被疑者︑被告人と密接な接触を推持し︑裁判所への出頭準. 備につき︑その者に助力し︑且つ︑適当な場合には裁判所への出頭につきその者に同伴することを要求されなければ. ならない︒被疑者︑被告人の代りに財産的責任を負うこと︑又は︑被疑者︑被告人が裁判所に出頭しない揚合に︑金 銭の没収を受けることを監督者に要求してはならない︒. 2 保護観察官その他適当な公務員の監督のもとに被疑者︑被告人を置くこと︒. 3 被疑者︑被告人の活動︑動行︑交際及び住居に関して合理的な制限を課すこと︒. 三条−保釈金による釈放1⑥項. 保釈金を課さなければならないのは︑他の釈放条件では被疑者︑被告人が裁. その他︑被疑者︑被告人の出頭を確保することを意図する合理的な制限を課すこと︒. 4 労働時間に被疑者︑被告人を釈放すること︑但し︑指定時間に拘置所に復帰することを要求すること︒あるいは︑ 侮 五︑. 保釈金を課すことの唯一の目的は被疑者︑被告人の出頭を確保することである︒被疑者︑被告人を処罰し又. 判所に出頭することを合理的に確保しないと認定された場合だけである︒. ㈲項. 司法官は︑保釈金を課すべきであると認定したとき︑左の事項の一つを要求しなければならない︒. は威嚇するため︑あるいは︑世論を懐柔し又は予想される犯罪行為を防止するために︑保釈金を課してはならない︒. ⑥項. 司法官が指定した金額を記載した担保のない保証書の作成︒但し︑右の保証書には他の者の署名の有無はこれ. 八七. OD. アメリカ保釈 制 度 の 考 察.
(24) アメリカ保釈制度の考察 を間わない︒. 八八. 図 司法官が指定した金額を記載した担保のない保証書で︑且つ︑当該保証書の額面金額の一〇︒ハーセントに等し. い額の現金又は担保の供託を伴う保証書の作成︒但し︑被告人が保証書の条件を遂行することに癬怠しなかった揚合. 現金その他の財産による全額の供託によって担保され︑又は報酬を受けない適格な保証人の債務証書によって. には︑合理的な行政手数料を差し引いて︑訴訟手続の終結の際に右の供託金を還付しなければならない︒. ③ 担保された保証書の作成︒. ④項 被疑者︑被告人が裁判所に出頭することを確保するために合理的に要求される金額より高額の保釈金を課し. てはならない︒保釈金の額を決定するにあたって︑司法官は︑被疑者︑被告人に関する左の要素を含む︑故意による 不出頭の危険性に関連のあるあらゆる事実を考慮に入れなければならない︒. ω当該地域における居住の長さと性質③職業上の地位︑職歴及び財産状態㈲家族との結びつきと関係叫世評︑性格. 及び精神状態㈲合法手続に対する反応に関しての前歴㈲過去の犯罪記録ω信用性を保証する︑当該地域における責任. ある構成員の身元㈲不出頭の危険性に関連ある限りにおいて︑現在の問責の性質︑有罪判決の明白な蓋然性︑及び︑. 間責の性質に従って決定された金額予定目録を参考にして保釈金を課してはならない︒保釈金は︑被疑者︑. 科すことのできる刑罰㈲その他︑当該地域における基盤などの要素︒. ⑥項. 被告人各人の特殊な情状を考慮に入れた個別的な決定の結果でなければならない︒. 五︑四条ー保証人の報酬受理の禁止ーいかなる者も︑報酬を得るために保証人となることを許されるべきでない︒.
(25) 保釈保証書上の本人と保証人間の損失補償契約の履行を求めるいかなる訴訟においても︑保証人が報酬を得るために. 昌傷ωロ目日o昌. 一〇①O︵℃Nooo①島口αq曾H昌2評鼻oo昌一ゲoO℃①同象δ旨9勺H卑ユ巴菊①一〇㊤ωo. 勤めたという事実は完全な抗弁となるべきである︒いかなる弁護人も︑保釈保証書上の証人となることは許されな い︒. ︵−︶当プロジェクトについてはω鉱一. 二ω蕩$目︵這臼︶参照︒なお︑ヴエ. ラ財団の活動については︑鈴木茂嗣﹁アメリカにおける保釈制度の改革について﹂神戸法学雑誌第一八巻第一号一頁以下に詳. ℃8冨99Zo妻Ko鼻這臼yOo一段貰プ園き8疑︾Oユ凱ρま9島o魯R一8昌切. しい︒. 点数制が採用された︒質問に対する被疑者︑被告人の回答が点数で記録され︑ヴェラ財団によって釈放をリコメソドされる. ためには最低五点を記録しなければならない︒この制度の機能について︑ヴェラのエグゼクティブ・ディレクターの挙げた一. ︵2︶. 例として次のごときものがある︒. ﹁ある被疑者が重罪の暴行と無登録の武器の所有で一九六四年に問責された︒彼の前科は単純暴行であったが︑一九五二年. 一九五七年に銘酊運転で有罪判決を受け︑その刑は一〇〇ドルの罰金又は三〇日の拘留. 一九六一年には治安素乱行為の問責で有罪判決を受け︑刑の延期を得た︒彼は三五才で︑現在の住居には六ケ月間. に三〇日の拘留の後刑を廷期された︒ であった︒. 妻子と生活していた︒三ヶ月間レストラソで働いていたが︑その前の仕事は三年間続いたことの証明があった︒現在の雇主は. 彼は良い働き手であるといっている︒⁝⁝この被疑者は誓約に基づく釈放をリコメソドされるべきであろうか︒点数を計算す. ると以下のごとくなる︒三つの軽罪に関する有罪判決についてはマイナス一点︑安定した住居についてはプラスニ点︑家族と. 八九. の結びつきについてはプラスニ点︑それに現在と過去の仕事に関する良い評価についてはプラスニ点︒これは最低限のスコア ︵五点︶であるが︐彼は釈放をリコメソドされるであろう﹂︵Oo一段貰﹃oやo凶〜碧a①︶︒. アメリカ保釈制度の考察.
(26) アメリカ保 釈 制 度 の 考 察 ︵3︶Oo一象貰Fo︐9 葺一蜜 ︒置?貿 ︵4︶田=男90目︾90039一〇︒d■ψρ㈱G. 九〇. 巳>旨試旨畳80ご5ユ︒ρ畢①O訂=︒品①o︷9冒①ぼ. ︵5︶窪出閑①︷︒彗︾900︒①ρ︾﹇o︒︒ム①ρ㈱ρo︒︒ω聾・Nに︵一8①︶・. ︵6︶冑︒ω幕艮︑︒Oo馨訂一88冒名国ぎH8馨暮. 乱90℃︒葺. ω09①蔓︸緯一ω一6ω︵一8刈︶●. ︵7︶︾切●>︒ω寅巳. 讐鵠N︵一S一︶.. 寄8. 第三者の保護下に被疑者を釈放する方法は︑保証人の管理下に被疑者を釈放する中世の慣行︵既述︶に類似するが︑ここに. 寄︷9ヲ零騨8匡旨ピ署寄︿. ︵8︶津&oユ鼻U︒=9970仲﹃芭Uo8旨一8餌巳↓ゲo一〇8豆ω一ユ90︷Oo冒ヨげ置OユBo>o?↓ぽ2①答ω言℃嘗国毘. ︵9︶. 提案される監督者は︑被疑者︑被告人に対してフィジカル・コソト・ールを行使することを当然のこととはされていない︒ー. 釈放中の犯罪と保釈. 六 予 防 勾 留. >︒甲>●ω冨p審乱ω£浮Oo崖β8雷曙.8︒9侍こ緯08. ︵i︶. 公判前保釈手続を発展させていく過程で直面する最も困難な間題は多分︑いわゆる予防勾留︵膚薯S馨︒留鼠三ア. 8︶の問題であろう︒保釈制度は保釈金を課すための唯一の有効な理由として︑公判への不出頭の危険性を認識する. が︑しかし社会はまた︑公判前に釈放すれば犯罪を実行するかもしれない危険な犯罪者から保護を獲得するという重.
(27) ︵2︶. 要な利害を有している︒被釈放者による犯罪の実行は﹁犯罪に対する闘争における重要な問題の一つ﹂と呼ばれてお. り︑それを予防するための勾留制度は︑ずっと以前提案されたことがあり︑現在大きな問題として提示されている︒. ︵互︶. ︵3︶. そして︑保釈改革法が諸州で採用されていない原因は︑同法が予防勾留に対処していないという事実に由来している という論者さえいる︒. 保釈に関するセォリーは︑危険な被逮捕者による危害から社会を保護するという要素を保釈決定にあたって考慮す. ることを排除する︒しかし実務では︑法に反し︑裁判官は︑釈放すれば犯罪を犯すか︑証人を脅迫し︑あるいは︑証 ︵4︶. 拠を浬滅するおそれのある者を﹁予防的に勾留﹂するために︑高額の保釈金を課していることは長い間に亘る明らか. な事実である︒例えば︑ニューヨーク市の保釈調査によれば︑ある地方検察庁は﹁社会を保護するために﹂麻薬犯罪. 者に高額の保釈金を課すこと︑ ﹁舷物故買を抑制し﹂窃盗を減少させるために賊物を受け取ったことで問責を受けて ︵5︶. いる犯罪者に高額の保釈金を課すことをリコメンドした︒全国保釈会議で︑ある巡回法務官は﹁強盗が多人数で行な. われた場合には︑裁判官は保釈金を課すとき︑公判の結着がつくまで強盗の仲問を拘置所に留めておくことを意識し. て保釈金を課していることについては何ら疑問はない﹂と述べ︑いく人かの裁判官は︑保釈金を課すに際して再犯の. ︵6︶. 見込を考慮することを認める一方︑この要素は被釈放者が公判のために出頭する見込みと関連があると主張してい る︒. このような実務に対し︑保釈改革の影響はどうであろうか︒マンハッタン・プ・ジェクトなど︑多くの都市で開始. 九一. されているプロジェクトによる﹁誓約に基づく釈放﹂に関しては︑裁判官はプロジェクトのリコメンドを受け容れる アメリカ保釈制度の考察.
(28) アメリカ保釈制度の考察. 九二. ことを強制されず︑したがって︑危険な犯罪者に対して高額の保釈金を課し続けることが可能である︒. 保釈改革法は︑第一に︑釈放の唯一のテストとして逃亡の危険性を明瞭化し︑第二に︑釈放の前提として誓約を要. 求している︒その結果︑同法は︑危険な被逮捕者を勾留するために金銭保釈を利用することについて裁判所が伝統的. に行使していた権限を奪ってしまうことになる︒しかし保釈改革法が高額の保釈金による勾留を完全に取り除いてし. まわないことは明らかである︒同法は︑必要な場合には保釈金を課すことを許容している︒そして︑再審理をする裁. 判所が高額の保釈金を課す理由を容認し︑あるいは︑再犯の危険は不出頭の危険と関係があるとの見解を広く容認す ︵7︶ れば︑右の実務の続行は可能である︒事実︑現在でもそれは行なわれているとのことである︒. しかしながら︑保釈改革によって︑金銭保釈への依存が減少した結果︑裁判官が過去におけるように非公然に予防. 勾留を実施する機会が減少することは疑いない︒そこで︑保釈制度は︑真正面から大胆に︑潜在的に危険な犯罪者に. 対する釈放を拒否する権限を付与されるべきではないかどうかに関する間題に立向うべきであるとする要求がなされ ている︒. 予防勾留を認めることに賛成する者は︑被逮捕者が釈放されて公判を待つ間に犯す犯罪について統計を提示して︑ ︵8︶ この問題は重大であることを論証しようとする︒その主要な例として︑コロンビア地区の犯罪に関する大統領諮間委. 員会の調査によれば︑重罪の問責で起訴された後釈放された者の七・五%が重罪の問責で再逮捕され︑ハート.コ︑・︑. ティーも同様の数字を報告している︒コロンビア地区合衆国検察局の調査では︑一九六八年に強盗で起訴された者五. 五七名のうち︑三四五名が釈放され︑一二二名が釈放条件を満足せずとして勾留された︒三四五名のうち二四二名な.
(29) いし七〇%が保釈中に再逮捕された︒. しかしこれらの統計はいずれもコ・ンビア地区に限られ︑更には反対者は︑先の七・五%に対して︑四・五%であ. ると指摘しており︑いずれにしても︑予防勾留の主張を支持する経験的な証拠は広くない︒. 更に︑予防勾留という拘禁のドラスティックなステップを取らなければならないほどに附随的な犯罪を実行するお ︵9︶ それのある被疑者︑被告人を裁判所が識別する方法が問題とされている︒一方では︑ ﹁以前の犯罪歴︑以前の悪しき. 反社会的行動形式︑又は問責の犯罪の性格﹂を基礎として︑他者に重大な肉体的危害を加え︑若しくは殺害する蓋然. 性の高い被疑者︑被告人︑又は︑公共の物的な安全性に対して大きな脅威となる者を識別することができると主張さ. れている︒他方では︑コ・ンビア地区の統計その他現在入手しうるあらゆる統計の中で︑釈放中犯罪を実行した者. を︑その者と同様の経歴や問責を持つが︑釈放中犯罪を実行しなかった者から予め区別しえたことをさし示すものは 何もないということが主張されている︒. 翻って︑将来犯罪が行なわれるかもしれないという予測に基づく個人の拘禁は憲法上の問題を提起する︒連邦憲法. 修正八条に規定する﹁過度の保釈金の禁止﹂は︑すべての非死刑事件において﹁絶対的保釈権﹂を与えるものである. かどうかに関しては連邦最高裁はまだ判断を示していない︒この問題は︑ここ数年のうちに提案されている幾多の予. 防勾留に関するプランの中で多くの論争を引き起している︒判例は︑間接的にこの争点にふれる二つの意見で結論を 異にしている︒. 九三. スタック事件の多数意見は﹁有罪判決前の伝統的な自由権は妨げられることのない防禦の準備を許し︑有罪判決前 アメリカ保釈制度の考察.
(30) アメリカ保釈制度の考察. ︵10︶. 九四. の科刑を妨げるべく奉仕する︒⁝⁝公判前の保釈権が保持されなければ︑数世紀に亘る闘争の後に初めて獲得された. 無罪の推定はその意義を失うであろう﹂として︑絶対的保釈権を承認した︒これに対し︑カールスン事件の多数意見. は︑修正八条の保釈に関する条項の起源は︑すべての非死刑事件において︑必ずしも︑保釈が許容されるべきことを. 要求するものではないイギリスの権利章典にあることを指摘した︒連邦の保釈権は制定法上のものであると結論する ︵U︶. にあたって︑リード判事は﹁当該修正条項の文言そのものは︑すべての逮捕が保釈可能でなければならないとはいっ. ていない﹂と述べた︒後述のD・C・クライム・アクト制定当時の司法長官ミッチェルはこれを支持して︑独立戦争. 時代には︑放火︑夜盗及び強盗は社会における被告人の潜在的危険性の故に保釈しえない死刑犯罪であったと議論 ︵12︶. し︑そして︑将来の犯罪実行の危険性が理由の勾留は単にその手続の継続であって︑危険な犯罪が現在もはや死刑犯 罪ではないからといって公判前の勾留が禁止されているといえないと主張している︒. コ八世紀においてさえ︑非常に多くの人々が︑五〇ドル以上と値踏された品物の. これに対し︑ある論者は︑ミッチェルが重大な重罪事件における保釈拒否の可能性を歴史的に正当化しようとした ことに異議を唱えている︒即ち︑. 窃盗又は合衆国通貨の偽造で問責を受けている者は公判前に釈放するには余りにも危険すぎる︑と思ったということ. は疑問である︒しかし︑右の犯罪の双方とも過去においては死刑によって処罰することができ︑したがって保釈する. ︵13︶. ことはできなかった︒⁝⁝仮定のうえにたつ危険性ではなくて︑逃亡の危険が死刑犯罪の問責で公判を待つ者の例外 的な処置の理由となる﹂と述べた︒. 右の主張は︑比較的危険性のない死刑犯罪について保釈が歴史的に否定されていたこと︑及び︑現在死刑事件では.
(31) 保釈が拒否されることをより説得的に立証していると思われる︒もし連邦最高裁が︑いかなる状況においても公判前. の釈放が可能であるとする立場を立法が排除することができるとするカールスン判決の立場を採用すれば︑保釈制度 の効果は極めて減ぜられることになるであろう︒. そこで︑釈放中の犯罪を防止するために予防勾留よりもゆるやかな立法をするようにとの提案がなされている︒一. 九七〇年のマサチューセッツの法律に導入されたA・B・Aの草案は次のように規定する︒. 五︑八条ー公判を待つ間の重大な犯罪の実行−被疑者︑被告人が前の問責について判決を受ける前に釈放されれ. ぱ︑その間に重大な犯罪を実行するということを信ずるにつき納得のいく事由を適格な裁判所又は大陪審が認定した. ことが示される場合には︑右の被疑者︑被告人を最初に釈放した裁判所は︑適当な審理の後︑釈放条件を再審理して. これを修正し︑又は︑必要な場合には︑右の釈放を取り消す権限を与えられるべきである︒. ︵M︶. その他︑予防勾留に代る処置として︑迅速な裁判︑危険に曝される証人の保護︑保釈改革法の規定する条件付釈放. などが有効であると指摘されている︒また︑平和を守るためには潜在的に危険な者を監禁することができるとするコ ︵15︶ モン・ローの手続は︑保釈中の再犯防止に関する領域においての先例となることが示唆されている︒しかし︑管理︑. 九五. 監禁による釈放に関する経験は限定されており︑ほとんどの地域では︑公判前に釈放される者を管理する責任を明瞭 ︵16︶ ﹁この方法の可能性はさらに探究しなければならない﹂ということであろう︒ に負う機関は存在しない︒. アメリカ保釈制度の考察.
(32) ︵. コロンビア地区犯罪法. アメリカ保釈制無の考察 11︶. 九六. ︵レ︶ 一九七〇年七月二九日ニクソン大統領が﹁コロンビア地区の裁判所改革及び刑事手続に関する法律﹂ ︵いわゆるD. ・C・クライム・アクト︶に署名したとき︑非死刑事件における公判前の予防勾留が合衆国に導入された︒この立法 は連邦における法定の保釈法の根本的な変革を生ぜしめることになる︒. 非死刑事件における公判前の釈放を規定する二三−一三二一条は︑可能なときはいつでも︑公判前は拘禁よりもむ. しろ釈放が用いられるという一般的な政策を述べている︒そこでは﹁死刑によって処罰しうる犯罪以外の犯罪で問責. を受けている者はいかなる者も︑司法官の面前に出頭したとき︑その者自らの誓約に基づいて︑又は︑司法官の指定. した金額を記載した担保のない出頭保証書の作成に基づいて︑公判前に釈放されることを命じられなければならない︒. 但し︑司法官が︑その裁量の行使にあたって︑要求通りのその者の出頭又は他人若しくは社会の安全を合理的に確保. しないと決定する場合はこの限りでない﹂と規定されて︑司法官は被疑者︑被告人が危険な行為をする可能性を予測. することになる︒右の規定の決定がなされる場合には︑司法官は︑第三者による拘束︑旅行と交際の制限︑保証書︑. 夜間若しくは週末の拘置など一九六六年の保釈改革法から引き継がれた釈放条件︑又は︑予防勾留を課すことができ. る︒そして︑出頭を確保するため︑社会を保護するため︑又は︑予防勾留を正当化するために︑いかなる条件が必要. とされるかを決定するに際して︑司法官は次の情報を利用することを要求される︒即ち︑当該犯罪の性質と情状︑証. 拠の重要性︑被疑者︑被告人の職業︑家族との結びつき︑財産状態︑性格及び精神状態︑過去の行為︑居住の長さ︑. 有罪記録︑及び︑過去において裁判所の手続に出頭しなかったことがあるかどうか︑がそれである︒過去の行為を除.
(33) いては︑右の要素はすべて保釈改革法のもとで出頭条件を付すに際して用いられたものである︒. ﹁暴力犯罪﹂で問責を受けている者︑及び︑裁判を妨害したと申立てられて. 公判前の勾留を規定する≡二−二一三二条は︑予防勾留に服する者について三つのカテゴリーを掲げている︒即ち ﹁危険な犯罪﹂ で 問 責 を 受 け て い る 者 ︑ いる者である︒. 第一に危険な犯罪に関し︑同法は︑初めて逮捕された者で︑次の問責を受けている者の予防勾留を許容している︒. 即ち︑ ﹁㈹強制力を用いて他人から財物を強取すること︑又はその未遂⑧人の夜間施設として用いられる家宅若しく. は仕事を行なうために用いられる家宅へ犯罪を実行する意志をもって不法に侵入すること︑又はその未遂⑥⑧に掲げ. た家宅の放火又はその未遂⑨強制による強姦︑又は強制による強姦を実行する意志をもってする暴行⑨︵議会の法律. によって規定されている︶麻薬︑鎮静剤若しくは興奮剤の不法な売買又は配布﹂であって︑いずれも︑一年以上の拘. 禁刑をもって処罰しうるものである場合に限っている︒そして︑右の危険な犯罪で間責を受けている者を勾留する前. ﹁謀殺︑強制による強姦︑一六歳未満の婦女に対する性交︑一六歳未満の子供に対して不. に当局は︑社会の安全を合理的に確保する条件が他にないことを証明しなければならない︒. 第二に暴力犯罪として︑. 道徳又は淫らなふるまいをすること又はその未遂︑身体傷害︑誘拐︑強盗︑夜盗︑不法な害を与える意思をもってす. る故殺︑暴力による威嚇を伴う財物の強要又は恐喝︑放火︑何らかの犯罪を実行する意思をもってする暴行︑危険な. 武器をもってする暴行︑あるいは︑右の犯罪のいずれかを実行せんとの未遂又は共謀﹂を規定し︑但し︑いずれも︑. 九七. 一年以上の拘禁刑をもって処罰しうるものである場合に限っている︒そして︑暴力犯罪で問責を受けている者の勾留 アメリカ保釈制度の考察.
(34) アメリカ保釈制度の考察. は︑ ﹁︵i︶その者が−⁝ここ一〇年以内に暴力犯罪で有罪判決を受けていたこと﹂又は﹁︵. 九八. 11︶その者が他の暴力犯罪. に関して保釈その他の釈放中である間︑又は︑保護観察付仮釈放若しくは刑の満了前の命令的釈放中である間に︑当. 該犯罪が実行されたと申立てられたものであること﹂のいずれかの要件を満足させなければならない︒. 第三に裁判の妨害に関し︑ ﹁何らかの犯罪で間責を受けている者で︑裁判を妨害するために証人又は陪審員となる. 者を脅迫若しくは威嚇し︑又は︑脅迫︑傷害若しくは威嚇しようとする者﹂を予防勾留に処しうるとする︒. 更に︑中毒者の勾留を規定する二三ー一三三二条は︑暴力犯罪で間責を受けている者で︑麻薬中毒者と思われる者. は︑実際に中毒者であるかどうかを決定するために︑直ちに三日間勾留することができる旨規定する︒検察官が明白. 且つ確信的な立証によってその者が中毒者であることを示し︑司法官が﹁危険性﹂と実質的な有罪の蓋然性の双方を. 認定したときに︑その者を勾留しうる︒その場合︑中毒者たる被拘禁者は﹁医師の管理下に﹂置かれる︒ 次いで手続に関しては︑右の各条文に規定がある︒. 被疑者︑被告人が司法官の面前に引致されたときは︑予防勾留に関する審問が︑合衆国検事の口頭による申立に基. づいて始められる︒同法は︑勾留が命じられる前に審間がなされるべきことを規定するが︑検察官が﹁充分な事由﹂. を示して審問延期の動議をなす場合には︑三目以内の期間に限って審問なしに被疑者︑被告人を勾留することができ. る︒同法はまた︑仮釈放︑保護観察又は委任釈放︵目き魯8蔓邑98︶中の者については五日以内の期間に限って 拘禁を許容している︒. 当該審間では︑司法官は︑ω予防勾留される者が同法の列挙する犯罪のいずれかで問責を受けていること︑働いか.
(35) なる釈放条件も社会の安全を確保しえないこと︑及び︑團実質的な有罪の蓋然性があることを認定しなければならな い︒この認定は書面による命令で提出しなければならない︒. 右のODは令状又は起訴状の提出によって満足される︒③は︑司法官が被疑者︑被告人の危険性を予測することを要. ﹁本条に従って発せられる命令において述べられる情報若しくは. 求する︒圖は確認することが困難である︒ある論者は︑合理的な疑いを越える証明ではなく︑納得するに足りる事由 を少しでも越えていることが必要であるとした︒. 勾留審問で用いられる証拠の基準は非常に広い︒. 右の命令と関連して提出される情報は︑裁判所における証拠の許容性に関する法則に従う必要はない﹂︵紹㌣お旨︵o︶. ︵㎝︶︶︒これは︑勾留の必要性に関する結論に到達するために︑裁判官が伝聞証拠︑一方的証拠︑更に逮捕歴をも利用 することを許容するものである︒. 被疑者︑被告人は︑弁護人の援助を受けること︑情報を提供すること︑証言すること︑及び︑証人を提供すること. の権利を有するが︑反対尋問の権利を有しない︒被疑者︑被告人のなした証言は後に︑公判でのその者の証言を弾劾. ︒誌 するための証拠として︑又は︑偽証及び保釈と関連のある犯罪の訴追の直接的な証拠として許容性がある︵紹o︒占o. ︵o︶︵O︶︶︒勾留命令は上訴で争うことができる︒. 勾留は六〇日以内に限定され︑その間︑事件は迅速に処理され︑裁判の健全な執行と調和すれば︑公判は優先権を. 九九. o占ω譜︵血×N︶︶︒しかし︑公判が進行中である場合︑又は︑公判が延期される場合には︑勾留はさらに 与えられる︵鷲o 継続する︒. アメリカ保釈制度の考察.
(36) アメリカ保 釈 制 度 の 考 察 ︵1︶Zo酔ρ男冨く8ユ︿ΦU9①鼻一〇Poや9けこ讐一藤8●. ︵3︶男U︒=①ω90や葺 帥一〇〇︒ド. 一〇〇. 罰. oや簿こ讐89ラ・フェイブは︑逃亡の危険の. ︵2︶>.rH●O&㊦︒幽9巨琶零︒︒&自︒㈱刈︒︵一︒︒︒一︶甲切︒①ぎ罠①浮二ω巻酔§ぎ9一︒品︒も二8︵一︒N刈︶・. ︵4︶閃8けρ>ωε伽団o︷↓ぽ>匹ヨぎ団の實&9鉱ω鉱=昌Z①≦吋o鼻9蔓. ︾霞8鷺↓げ①U①息巴o昌8↓鼻①帥ω島究9ぎ80鐸の酔&ざ導一〇〇り︹幻Φ目ぎ8口①餌ゆ一〇臼︺︶︒. 他に︑犯罪者が証拠を灌滅し︑又は訴追側の証人を買収する可能性は現在の実務における勾留の理由であるとする︵ミ い獅悶碧①. 戸一一︒︒9寄い寄く贋葺一一$︵一8q︶・. ︵5︶Zo一ρ寄①︿o&︿①U簿8一一8ゆ①︷9↓冨roや畠鳩餌二おド ︵6︶一げ崔︒. IO一︒ 舞Doooo. ︵7︶=①ω90や6F簿鱒o︒ρ. ︵8︶匡. ︵9︶男8一ρ票︒○︒巨亮09ω蜂亀︒量9芭のぎ田一一 ︵10︶ω蜜畠く9国o覧ρω島qOoこ餌け直ふ︵一〇㎝一︶︒ ︵1 1 ︶O震一ω8ぐ●ピ農山o戸ωおd●ωこ99①︵一〇9︶︒. 節二圏令. 寄①︿8一貯①冒のけ一8ぎ浮①饗︒ユ儀︒こ︒ぎ言言ぎF9<ぼαq巨帥冒毛勾︒︿こ. ︵12︶一︒ぎ客置喜①F浮二寄︷9ヨ卑巳醤︒08ω凱εぎ量一蔓︒︷零Φ三巴U︒希&︒p臼≦邑巳餌冒毛勾①︿. oo一︵一80︶︒ ︵B︶い↓きρ 卜 昌 ○ 琶 8 ︒ ︷ U ① 一 ① & 8. 舞ooミー刈oo︵一〇8︶● ︵14︶Zo一ρ℃3︿8二く①U①酔9臨o昌ω①︷9↓ユ巴︶oマ9〜簿一塞lO雪.
(37) ︵15︶. 一び崔●. ↓器犀閃98国①℃o詳. き. 僻お9ωoρ︒. 碧癖O︒. ℃qげ●い.O一600 0︶o o ωω蜜. ︵16︶. ︵17︶. 七 あ と が. ︵一零Oy. アメリカの保釈制度は︑本来の金銭保釈から徐々に訣別していこうとするのが現状である︒現段階におけるその一. 例が﹁誓約に基づく釈放﹂であり︑条件付釈放であった︒諸州では依然として金銭保釈が残存しているが︑右の釈放. ﹁犯罪抑制型﹂か﹁デュー・プロセス型﹂のいずれか. 形式は今後保釈制度の進むべき方向を示唆していると思われる︒しかしまだ実験段階の途上にあり︑今後増々純化さ れ︑改革されていくであろう︒ ︵1︶ アメリカの刑事司法制度は︑ある論者が特徴づけたごとく︑. に向うことが可能である︒前者では︑有罪の仮定と財産・人命を保護する必要性が無罪の推定と防禦準備の必要性を. 凌駕し︑後者は︑個人が合理的な疑いを越えて有罪であることが立証されるまで個人の拘禁を禁止する︒両者の相克. がまさに︑保釈と勾留︑なかんずく予防勾留の間題である︒D・C・クライム・アクトは︑議会が犯罪抑制型に向っ. たことを示している︒裁判所は︑勾留乃至保釈制度の本来の姿が予防勾留を支持しえるかどうかを判断しなければな らなくなるものと思われる︒. 一〇一. ︵一九七二年一〇月三一日︶. ︵1︶=Rげ①昌寄︒ざ♪↓き客&①一ψo︷浮︒9首ぎ巴胃︒8ω︒︒﹂G︒ωd・℃勲い署寄く﹂︵一︒9︶・. アメリカ保釈制度の考察.
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