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愛 知 工 業 大 学 研 究 報 告 第43号 平 成20年

博士学位論文

(内容の要旨及び論文審査の結果の要旨)

氏名

学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学 位 授 与

Takahashi  Yasuyo  高 橋 泰 代

博 士 (経営情報科学) 経 博 甲 第 4号 平 成20年 2月 25日

学 位 規 程 第3条 第3項 該 当 学 位 授 与 条 件

論文題目 「 リ ー ス 会 計 に 関 す る 発 展 史 的 研 究

一 資 産 の 使 用 権 を 中 心 と し た リ ー ス 取 引 資 本 化 の 論 理 」 A study of historical development of Accounting Standards for Leases 

Research on the Transaction of Financial Lease from  a View ofthe Right to Use ofProperty一

論 文 審 査 委 員 (主査) 教 授 野 村 健 太 郎l

( 審 査 委 員 ) 教 授 中 田 信

JP

教 授 植 田 倍 之1

論 文 内 容 の 要 旨

リース会計に関する発展史的研究一資産の使用権を 中心としたリース取引資本化の論理一

A study of historical development of Accounting  Standards for Leases  ‑ Research on the Transac‑

tion ofFinancial Lease from a View ofthe Right to  U se of Property‑

わが国会計制度においては、キャッシュ・フロー計 算書の導入、研究開発費。ソフトウェア会計、年金会 計、税効果会計、有価証券に対する時価評価、連結会 計制度の導入など、様々な会計基準の改訂についての 検討・議論が行われ、国際会計基準への調和・統一化 が図られている。このような状況の中で、リース取引 の会計処理は、アメリカにおいては1973年、わが国に おいては1993年にリース会計基準として整備され、公 表された。しかし長い時を経でもなおリース取引の資 本化についての議論が収束されない状況の中で「リー ス取引資本化の論拠Jに焦点をあて、リース会計基準 設 定 先 行 国 で あ る ア メ リ カ に お け る リ ー ス 会 計 基 準 設定の発展史を概観し、わが国におけるリース取引資 本化論理の脆弱性についての考察を試みた。さらに、

アメリカ、日本、国際会計基準の3つの会計基準設定 主体のデュー・プロセスの比較・検討を行い、それぞ れのリース会計基準設定の歴史的考察を行った。

リース取引資本化の論拠には、取得原価主義を中心 とする伝統的会計理論から、時価主義へと転換する現 代会計理論の変遷に関係する様々な議論を経て、今日 l 愛知工業大学 経営情報科学部 (豊田市)

に至っている。現代会計理論の論理転換を図る会計基 準の課題として、本論文では特にリース取引資本化の 過渡期にあったものであると指摘し、アプローチを試 みた。

本論文は、 7つの章で構成される。

第 I章 第N章では、リース会計基準設定までを、

アメリカ、日本、国際会計基準からの発展史的考察を 行っている。

また、第V章 第四章では、会計概念論からのリー ス 取 引 資 本 化 論 理 の 脆 弱 性 を 検 討 し 、 リ ー ス 資 産 の

「使用権」に着目したリース取引資本化を提言してい る。

具体的には、第 I章「リース取引資本化の会計学的 意義」において、 1949年からアメリカで始まったリー ス会計基準の設定に係わる議論は、伝統的会計理論か ら現代会計理論へ移行する過渡期にあり、また現代会 計理論におけるリース取引資本化の論拠は、重要な意 義を持つものであると考えられる。リース取引資本化 が、伝統的会計理論に与えた影響を考察し、リース取 引 資 本 化 の 必 要 性 と 会 計 学 的 意 義 を 論 じ る こ と に し た。 第E章「アメリカにおけるリース会計基準設定 までの歴史的経緯とリース取引資本化の論理」におい ては、特にアメリカにおいて公表された代表的な調査 研究であるARBNo. 38  (1953年ARBNo. 43に移行)、 APB Opinion No. 5、APBOpinion No. 7、ARSN04、SFASNo. 13  が、リース取引資本化論拠の変遷の追跡を辿る上では 重要であると考え、リース会計基準の発展とリース取 引資本化の論拠の変遷について考察している。これら を考察することにより、リース取引資本化論理の脆弱 性を明らかにしたいと考えた。

第頂章「わが国における平成5年リース会計基準改 239 

(2)

240 

愛 知 工 業 大 学 研 究 報 告 第43号 平 成20年, Vol.  43, Mar.  2008 

訂 ま で の 歴 史 的 経 緯 と 課 題 」 に お い て は 、 平 成5年リ ース会計基準公表までのリース関連規定を概観し、わ が国におけるリース資本化の論拠について考察する。

特にわが国においては、リース取引に係わる「経済的 実 質 優 先 思 考Jが ど の よ う に リ ー ス 会 計 基 準 設 定 に 影 響 を 与 え 、 所 有 権 移 転 外 フ ァ イ ナ ン ス 。 リ ー ス の 例 外 規定を成立させ、例外規定が基準を制する逆転現象を 引き起こした原因について解明し、リース取引資本化 の限界について論じるのである。

第N章「リース取引における国際会計基準とわが国 会 計 基 準 の 比 較 検 討 」 に お い て は 、 国 際 リ ー ス 会 計 基 準やアメリカリース会計基準の例をみても、 「所有権 移 転 外 フ ァ イ ナ ン ス ・ リ ー ス の 賃 貸 借 処 理Jを容認し ている基準はなく、 「所有権移転外ファイナンス・リ ースの賃貸借処理」という例外規定の廃止としたわが 国 の 改 訂 リ ー ス 会 計 基 準 と 国 際 会 計 基 準 委 員 会 や ア メ リ カ 財 務 会 計 基 準 審 議 会 の 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト で リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 が 検 討 さ れ て い る 内 容 と の ズ レ を言及する。

第V章「リース会計基準とコンパージェンスへの課 題」においては、第N章 で 言 及 し た 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト とわが国リース会計基準改訂のズレをさらに言及し、

国 際 的 に リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 が 検 討 さ れ る 中 で 議 論 さ れ て い る リ ー ス 取 引 資 本 化 の 論 点 、 を 考 察 し て い る。

第VI章「リース資産・負債概念の拡大と使用権」に おいては、資産・負債概念、リース取引資本化の観点 から、概念フレーム・ワークにおける資産概念を中心 として、リース取引資本化を議論するためには新たな 資産・負債概念の構築が必要であることを提言する。

第 四 章 「 わ が 国 に お け る リ ー ス 会 計 基 準 の 現 状 と 課 題」においては、わが国において国際会計基準へのコ ンパージェンスの課題のひとつとして、リース会計基 準の改訂は余儀なくされており、国際会計基準自体が リース会計基準の改訂に注力している今、わが国のリ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 は オ ペ レ ー テ ィ ン グ ・ リ ー ス を 含 む す べ て の リ ー ス 取 引 に つ い て 整 序 的 思 考 を と る べ きことを提言している。

結論として、本論文では、 「リース資産の使用権」

に着目し、 「 リ ー ス 使 用 権 」 を 論 拠 と し た リ ー ス 資 産・負債を貸借対照表に計上するととを提言すること にした。

リース取引は、 「リース使用権」の取得であり、有 形、無形のリース資産に拘らず、 「リース使用権」を 資 産 と 認 識 す る こ と に よ り 、 フ ァ イ ナ ン ス ・ リ ー ス 取 引以外、オベレーテイング・リース取引を含むリース 取引全体をオンバランスする。このことにより実体開 示 と し て 会 計 情 報 が 投 資 意 思 決 定 に 機 能 す る と 結 論

している。

今 後 の 課 題 と し て は 、 改 定 さ れ た リ ー ス 会 計 基 準 適 用 に お け る 実 務 界 の 動 向 に 注 目 し て 、 実 証 的 研 究 を 継 続し、研究の発展を目指したい。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

わが国会計制度において、キャッシュ・フロー計算 書 の 導 入 、 研 究 開 発 費 会 計 、 ソ フ ト ウ ェ ア 処 理 、 年 金 会 計 、 税 効 果 会 計 、 有 価 証 券 に 対 す る 時 価 評 価 、 連 結

会計制度導入など様々な会計基準の改訂についての 検 討 ・ 議 論 が 行 わ れ 、 国 際 会 計 基 準 へ の 調 和 化 。 統 ー が 図られている。このような状況の中で、リース取 引の会計処理は、アメリカにおいては、 1 973年、 わが国においては、 1993年にリース会計基準とし て整備され、公表されてきたが、長き時を経でもなお

リース取引の資本化についての議論が収束されてい ない「リース取引資本化の論拠Jtこ焦点を当て、当該 基 準 先 行 国 で あ る ア メ リ カ に お け る リ ー ス 会 計 基 準 の設定の発展史を考察し、わが国におけるリース取引 資本化論理の脆弱性について検討し、更に、アメリカ、

日本、国際会計基準委員会の3つの会計基準設定主体 のデュー・プロセスの比較・検討を行い、それぞれの

リース会計基準の歴史的研究を試みた。

リース取引資本化の根拠として、取得原価主義を中 心 と す る 伝 統 的 会 計 理 論 か ら 時 価 主 義 へ と 転 換 す る現代会計理論の変遷に関係する様々な議論を経て きた実績を尊重すべきことを述べている。本論文は、

7章の構成としている。

第I章 第N章では、リース会計基準設定までをア メリカ、日本の諸基準、国際会計基準について発展史 的考察を行っている。第V章 第四章では、会計概念 論 か ら の リ ー ス 取 引 資 本 化 論 理 の 脆 弱 を 検 討 し 、 リ ー ス資産の「使用権Jに着目したリース取引資本化の意 義を提言している。

まず、第I章において、 1949年 か ら ア メ リ カ で 始 ま っ た リ ー ス 会 計 基 準 の 設 定 に 関 わ る 議 論 は 、 伝 統 的 会 計 理 論 か ら 現 代 会 計 理 論 へ 移 行 す る 過 度 期 に あ り、また現代会計理論におけるリース取引資本化の論 拠 は 、 重 要 な 意 義 を 持 つ も の と 考 え 、 リ ー ス 取 引 資 本 化 が 伝 統 的 会 計 理 論 に 与 え た 影 響 を 考 察 し 、 リ ー ス 取

引資本化の必要性と会計的意義を論じている。

第H章 に お い て は 、 特 に ア メ リ カ に お い て 公 表 さ れ た代表的調査研究のA R B No.  38 (1953年A R B No.  4 3に移行)、 A P B Opinion No.  5、A P B Opinion No.  7、A R S No.  4、S F A S No.  13がり ー ス 取 引 資 本 化 論 拠 の 変 遷 の 跡 を 辿 る 上 で は 重 要 と 考 え 、 リ ー ス 会 計 基 準 の 発 展 と リ ー ス 取 引 資 本 化 の 論 拠の変遷について考察している。これらを考察し、こ こ で は リ ー ス 取 引 資 本 化 論 理 の 脆 弱 性 を 明 ら か に し ている。

第E章においては、日本において、平成5年「リー ス会計基準j公表までのリース会計関連規定を概観し、

日 本 に お け る リ ー ス 資 本 化 の 論 拠 に つ い て 考 察 し て いる。特に日本では、リース取引に関わる「経済的実 質優先思考」がどのようにリース会計基準設定に影響 し、所有権移転外ファイナンス・リースの例外規定を 成 立 さ せ 例 外 規 定 が 基 準 を 制 す る 逆 転 現 象 を 引 き 起 こ し た 原 因 に つ い て 解 明 し リ ー ス 取 引 資 本 化 の 限 界 について論じている。

第N章においては、国際リ)ス会計基準やアメリカ リース会計基準の内容を勘案して、所有権移転外ファ イ ナ ン ス 。 リ ー ス の 賃 貸 借 処 理j を容認している基準 はなく、 「所有権移転外ファイナンス・リースの賃貸 借処理」という例外規定を廃止した日本の改訂リース 会 計 基 準 と 国 際 会 計 基 準 委 員 会 や 米 国 財 務 会 計 基 準 審 議 会 の 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト で リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 が検討されている内容とのズレを言及し、論述してい

(3)

リ ー ス 会 計 に 関 す る 発 展 史 的 研 究 資 産 の 使 用 権 を 中 心 と し た リ ー ス 取 引 資 本 家 の 論 理 一

る。

第V章 に お い て は 、 第N章 で 論 究 し た 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト と 日 本 の リ ー ス 会 計 基 準 改 訂 の ズ レ を 掘 り 下 げ 検 討 し 、 国 際 的 に リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 が 検 討 さ れ る 中 で 議 論 対 象 と な っ て い る ソ ー ス 取 引 資 本 化 の 論 点 、 を分析し検討している。

第VI章 に お い て は 、 資 産 ・ 負 債 概 念 、 リ ー ス 取 引 資 本 化 の 観 点 か ら 概 念 フ レ ー ム ワ ー ク に お け る 資 産 概 念 を 中 心 と し て 、 リ ー ス 取 引 資 本 化 を 議 論 す る た め に は 新 た な 資 産 ・ 負 債 概 念 の 構 築 が 必 要 で あ る こ と を 示 唆し提言している。

第 四 章 に お い て は 日 本 に お け る 国 際 会 計 基 準 へ の 収 飲 ( コ ン パ ー ジ ェ ン ス ) の 課 題 の 対 象 項 目 と し て 、 リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 が 余 儀 な く さ れ て お り 、 国 際 会 計 基 準 審 議 会 が リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 に 注 力 し て い る こ と を 勘 案 し て 、 日 本 の リ ー ス 会 計 基 準 の 改 訂 は 、 オ ベ レ ー テ ィ ン グ ー リ ー ス を 含 む 全 て の リ ー ス 取 引 に つ い て 整 序 的 ア プ ロ ー チ を 採 り 整 合 性 を 果 た す べ きことを主張している。

以 上 の 第 I章 第 四 章 の 考 察 に 基 づ き 本 研 究 で は

「リース資産の使用権」に着目し、とれを重視して「リ ー ス 使 用 権 」 を 論 拠 と し て 、 リ ー ス 資 産 ・ 負 債 を 貸 借

対 照 表 に 計 上 す る ご と の 必 要 性 を 強 調 し 、 提 言 を 行 っ

ている。リース取引は、 「リース使用権」の取得であ

り 、 無 形 の リ ー ス 資 産 に 拘 わ ら ず 「 リ ー ス 使 用 権 」 を 資 産 と し て 認 識 す る こ と に よ っ て 、 フ ァ イ ナ ン ス ・ リ ー ス 取 引 以 外 、 オ ベ レ ー テ ィ ン グ ・ リ ー ス 取 引 を 含 む

リ ー ス 取 引 全 体 を オ ン バ ラ ン ス す る こ と を 強 調 し て い る 。 さ ら に こ の こ と が 実 態 開 示 と し て の 会 計 情 報 が 投 資 者 の 投 資 意 思 決 定 に 機 能 す る も の で あ る こ と を 論及している。

本 研 究 は 、 リ ー ス 会 計 に つ い て 早 く か ら 発 展 し 展 開 さ れ て き た ア メ リ カ 会 計 基 準 の 推 移 を 徽 密 か っ 注 意 深 く 、 し か も 数 多 く の 原 典 を 渉 猟 ー 分 析 し 、 こ れ を 注 目 し な が ら 日 本 の リ ー ス 会 計 基 準 の 展 開 。 発 展 過 程 を 掘 り 下 げ 分 析 し 、 し か も 国 際 会 計 基 準 と の 収 欽 と い う 課 題 を 見 据 え て 鍛 密 か っ 丹 念 に 研 究 し て い る 。 今 後 、

さ ら に 、 日 本 の 実 務 界 の 反 応 園 経 営 行 動 の 分 析 を 行 っ て い け ば よ り 発 展 的 な 研 究 成 果 が 期 待 さ れ るc よって、

博 士 ( 経 営 情 報 科 学 ) の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と認iめる。

( 受 理 平 成20年3月19日) 241 

参照

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5 Ⅱ.論文審査の結果の要旨

 

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