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左室形成術後心機能評価の検討 学位論文内容の要旨

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博 士 ( 医 学 ) 松 井 欣 哉

学 位 論 文 題 名

心電図同期心筋血流シンチグラフィを用いた 虚血性/非虚血性心筋症症例に対する

左室形成術後心機能評価の検討 学位論文内容の要旨

【背景 と目的】心臓外科手術後の心機能評価は,心嚢内癒着,中隔壁の奇異性運動,非協 調性 運 動 など に 影 響 を受 け る ため 壁 運 動だ け の 観察 で は 正確 な 判 断が 困 難 で ある.

Quantitative Gated SPECT(QGS)は,局 所心機能 評価及 び,全体 の心機 能評価方 法とし て,より客観的な検査である.重症な拡張型心筋症及ぴ虚血性心筋症例に対する左室形成術 前後のQGSを用 いた左室 形成術 後の心機能比較評価報告はなく,左室形成を行った心筋は どのような影響を受けるかは不明である.われわれは,拡張型心筋症,及び虚血性心筋症に 左室形 成術を施 行した症 例を対 象として,QGSを用いて,術前後での局所心機能および,

全体の心機能の変化を検討した,

【対 象 及 ぴ方 法 】2004年6月 か ら2008年11月 の期 間 にお いて, オーバー ラッピ ング型 左室形 成術(overlapping ventriculoplasty,OLVP),乳 頭筋接合術(papillary muscles approximation,PMA)の左室 形成術を単独あるいは合併施行した重症心筋症の25症例中,

術前後 の安静時QGSを施 行し得 た17症例( 男性14例 女性3例)を対象とした.特発性拡張 型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy,DCM)と診断された症例が8例,虚血性心筋 症(ischemic cardiomyopathy,ICM)と診断された症例が9例であった.術式選択基準として,

術前の経胸壁心エコーで左室拡張期径(left ventricular diastolic diameter,LVDd)と前後 乳頭筋 間距離(papillary muscles distance,PMD)を測定した.原則として虚血性心筋症 の 場 合 ,LVDdが 65mm以 上 か つPMDが30mm以 上 で ,OLVP+PMAを 選 択 し , LVDd が65mm未 満 で ,PMDが30mm以 上 で はPMAの み を 施 行 し た . 拡 張 型 心 筋 症 の 場 合 , LVDdが 70mm以 上 か つ PMDが 30mm以 上 で ,OLVP+PMAを 選 択 し ,LVDdが70mm 未 満 で ,PMDが30mm以 上 で はPMAの み を 施 行 し た .DCMと 診 断 さ れ ,PMAの み 施 行 し た3例(dPMA),OLVP+PMAを 施 行 し た5例(dOLVP),ICMと 診 断 さ れ ,PMAの み 施 行 し た4例(iPMA),OLVP+PMAを 施 行 し た5例(iOLVP)4つの 群 に 分け 検 討 した . QGSは , 術 前10月 以 内 , 術 後20月 以 内 に 施 行 し た . 基 本 的 に 安 静 時 に592MBqの 99mTc‑tetrofosminの核種を 注射し,QGSプ ログラム[Cedars SinaiMedical Center US]

で得られたデータを解析した,全体の心機能として,左室駆出率(ejection fraction,EF), 拡張末 期容積(end‑diastolic volume,EDV),収縮末期容積(end‑systolic volume,ESV) を術前 後で比較 した.ま た20分割 にしたareaで局所心 機能として,術前後の核種集積率 (quantitative gated SPECTQPS), 壁 厚 変 化(wall thickening,WT)を比 較 し た.

【結 果 】 周術 期 死 亡 はな かっ たが,1症例 のみ術後6ケ月 の時点 で,敗血 症で失 った,

1. 全 体 の心 機 能 :EFは 全 群で 術 前 後に 有 意 差は み とめ なかっ た,EDV,ESVはdPMA群     のESVを除き, 全群で 左室容積 縮小効 果を認め た.4群ともに,術後外科的切開,縫     合部心筋の血流欠損部位は認めなかった.

2. DCM症 例 で の 局 所 のQPS,WT;DCM症 例 では ,QPSはdPMA群 で は、area4,5,6で 有     ―10 ‑

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    意に改善、area3,14で改善傾向を認めた。dOLVP群では、areal,2,3,4,6,10で有意に     改善、area5,11で改善傾向、area8,13,14で有意に低下を認めた。WTは,dPMA群で,

    area16,17,19,20で有 意な 低下 を認 め,dOLVP群では,areal,2,3,4,6で有     意な改善,area5で改善傾向area13,14,19,20で有意な低下 を認めた.20分割area     の 長 軸 方 向 の 変 化 評 価 では ,OLVP+PMA施 行例 で心 基部 にお いてWTの 有 意な 改善     を認めた.

3. ICM症 例 で の 局 所 のQPS,WT:ICM症 例 で は ,QPSは 、iPMA群に おい て、area5のみ     で改善、iOLVP群では、area4,10,11,16で有意に改善を認めた。WTは,iPMA群で,

    area15,16,20で有意な改善,area19で有意な低下を認め,iOLVP群では,area2,     3,4,5,10で有意な改善,areal,6,7,9で改善傾向を認め た.長軸方向での変化     を み た 場 合 ,OLVP+PMA施 行 例 で はDCM症 例 と 同 様 に 心 基 部 に お い てWTの 有 意     な改善を認めた.

【考 察】Matsuiらが報告した左室オーバ ーラッピング法は,左室切開を行い,パッチを 用いず,自己心筋のみを心尖部を中心に重ね合わせる術式であるが、自己組織を重ね合わせ ることにより,心筋東が離断されず,長軸方向への短縮を伴わないと考えられる.そのコン セプトは左室縮小とともに左室形体をより正常な心形態(ellip soidal)に近づけることで心 筋機能の改善をもたらすことである.今回の研究の目的は,心筋切開,縫縮という外科侵襲 が加わった部位の局所心筋機能が悪化 するか,他の部分の局所心機能が改善するかをQGS により検討することである.結果として、心筋切開,縫合という外科侵襲が加わり局所心筋 機能が低下する部位は心尖部の極狭い範囲であり,切開,縫合部を含む中間部では壁厚変化 に影 響は なく ,明 ら かな 欠損 はな かっ た,DCM症 例に おい て,OLVP+PMA症例 では 心基 部のQPSがICM症例 に 比べ てよ り広 範囲 に改 善し てい るが ,中隔の一部心尖よりで低下 を認 めた 。心 筋血 流 に対 するQGSによ るQPS評価 は負 荷を かけない場合評価はやや難し く, 切開OLVPによる左室形体の変化,僧 帽弁閉鎖不全症の消失による拡張期圧低下が関 与し てい る可 能性 も ある と思 われるが,PMA単独例での症例数が少なくOLVP単独の意義 は不明である.また心尖部の壁厚変化の正常値は基部に比し高く,心尖部壁厚変化の低下の 意 義 は 小 さ い , す な わ ちOLVP+PMA症 例 で はPMA単 独 例 に比 べ, 心基 部の 局 所心 筋の 改善が全体の心機能改善に寄与した可 能性がある.ICM症例では,血行再建の影響かQPSは DCM症 例に 比べ 、術 前後 で有 意に低下し たareaはなかったが,有意な血流改善をより詳 細に検証するためには,負荷心シンチグラフイー検査が必要である.壁厚変化では,iOLVP 群が より 広範 囲に 改 善し てい る傾向にあった,切開、縫合領域は,PMA単独症例よりも OLVP+PMA症例 のほ う が大 きい が,瘢痕組織の広範なexclusionと左室形体の改善により wall stressの 軽 減 な ど に よ り , 局 所 壁 運 動 の 改 善 が 得 ら れ た と 思 わ れ る .

【結論】4群において,切開,縫合した心筋部分のトレーサーの欠 損(血流欠損)は認め なか った 。左 室縮 小 効果 はOLVP+PMA施 行群 にお いて 大き く,特に心基部で有意な壁厚 変化の改善を認めた.

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   松 居 喜 郎 副 査   教 授   筒 井 祐 之 副 査   教 授   玉 木 長 良

学 位 論 文 題 名

心電図同期心筋血流シンチグラフィを用いた 虚血性/非虚血性心筋症症例に対する

左室形成術後心機能評価の検討

  心臓外科手術後の正確な判断は困難である,重症な拡張型心筋症及び虚血性心筋症例に対 する左室形成術前後のQGSを用いた左室形成術後の心機能比較評価 報告はなく,左室形成 を行った心筋はどのような影響を受けるかは不明である,われわれは,拡張型心筋症,及ぴ 虚血性心筋症に左室形成術を施行した症例を対象として,QGSを用いヽて,術前後での局所 心 機 能 お よ び , 全 体 の 心 機 能 の 変化 を検 討し た. オ ーバ ーラ ッピ ング 型左 室形 成術 (overlapping ventriculoplasty,OLVP),乳頭筋接合術(papillary muscles approximation, PMA)の左 室形成術を単独ある いは合併施行した重症心筋症の25症例中,術前後の安静 時 QGSを 施 行 し 得 た17症 例 ( 男 性14例 女 性3例 ) を 対 象 と し た . 特 発 性 拡 張 型 心 筋 症 (idiopathic dilated cardiomyopathy,DCM)と診断され た症例が8例,.虚血性心筋 症 くischemic cardiomyopathy,ICM)と 診断された症例が9例であった.DCMと診断され , PMAの み 施 行 し た3例(dPMA),OLVP+PMAを 施 行 し た5例(dOLVP),ICMと 診 断 さ れ ,PMAの み 施 行 し た4例(iPMA),OLVP+PMAを 施 行 し た5例(iOLVP)4っ の 群 に 分 け 検討 した ,Quantitative Gated SPECT (QGS)プログラムで得られたデータを解析した . 全体の心機能として,左室駆出率(ejection fraction,EF),拡張末期容積(end‑diastolic volume,EDV),収縮末期容積(end‑systolic volume,ESV)を術前後で比較した.また20 分割 にし たareaで 局 所心 機能 とし て,術前後の核種集積 率(quantitative gated SPECT QPS),壁 厚変 化(wall thickening,WT)を比較した.全体の心機能:EFは全群で術前 後 に有意差はみとめなかった,全群で左室容積縮小効果を認めた.4群ともに,術後外科的切 開, 縫合 部心 筋の 血 流欠 損部 位は 認め なか った .左 室縮 小効 果はOLVP+PMA施行郡に お いて大きく,特に心基部で有意な壁厚変化の改善を認めた,

  副 査筒 井裕之教授よりbasal segmentsの改善を認めたが、mid−distal segmentsが 改 善 し な か っ た 理 由 、PMAで もbasalは 改 善 し た か ど う か 、DCMとICMで は 改 善 の 仕 方 が違うがどう解釈するか、STICTH trialはどう評価するかについて質問があった。これに 対し、外科的侵襲はほとんどないと考えるが、もともとmid‑distal segmentsの心機能が低 下 し て い る 可 能 性 が あ る 、PMAで はOLVPほ どbasalの 改 善 は 得 ら れ な か っ た 、DCM とICMでは 疾患 が違 い、 虚血 領域 、冠 動脈バイパス術の付加などによるものである、ST IT CH trialの対象は、心拡大の程度が低い症例が含まれており、 左室容積縮小率も、今 回 の 検 討 で は 、30% 前 後 で あ っ た の に 対 し 、10% 程 度 の も の もSTI TCHtrialこ

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は含まれており、慎重な解釈が必要であると答えた。

  副査 玉木長良 教授よ り心機能 評価方 法としてQGSを選 択した 事由、下壁梗塞の場合、

術式が変わるかどうか、WTなどの解析がどう治療戦略に生かされるかについての質問があ った。これに対し、QGSは,局所心機能評価及び,全体の心機能評価方法として,より客観 的な 検査であ るため、症例に応じてPMAを併用する場合もある、長期での検討はされてい ないが、局所への外科的侵襲以上に、心基部での改善が認められることから、重症心不全の 今後の治療戦略に役立っと答えた。

  主査 松 居 喜郎 教 授 から は 、QPSを 術前後 で比較検 討するこ とに問 題はない か、WTの 正常値は場所によって違うがmid‑distの変化はその意味で重要な意味を持たないのではな いか について 質問があった。QPSは相対的評価であり、術前後では、特に虚血の場合は影 響を考慮する必要がある、partial volume effectのため、WTのdistalの正常値は高くなる 傾向にあるのは事実であり、mid‑distalは術前で低下しており、mid‑distalの外科的侵襲は 小さぃと解釈できると答えた。

  この 論文は、 重症心不全症例に対し、左室形成術施行し、その前後で、QGSを用い局所 心機能評価を行ったことで高く評価され、今後の重症心不全症例の外科的治療戦略の検討に 役立っことが期待される。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における 研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するも のと判定した。

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参照

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