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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 北 河 徳 彦

     学位論文題名

Epstein‑Barr virus‑encoded poly (A) ‑RNA supports Burkitt S     lymphoma growth through interleukin‑10 induction

    (EBウイ ル スが コ ー ドす る ポリ(A) ‑RNAの

イ ンタ ー ロイ キ ン10誘 導 を介 し たバ ー キ ットリ ンパ腫増殖 促進)

学位論文内容の要旨

研究背景と目的

  Epstein‑Barr virus(EBV)はヒト癌との関連が指摘された最初のウイルスであり、バ ーキヅトリンバ腫(以下BL)、上咽頭癌に加え,最近では胃癌や臓器移植後のりンバ腫と の関連も明らかとなっている。BLにはアフリカに風土病的に発生するものと、全世界に散 発 するもの があり、 前者では大部分がEBV陽性に対し、後者のEBV感染率は15〜20%に過 ぎ ない。一 方、BL細胞 には、EBV感染の有無に拘わらず、癌遺伝子c'mycの転座・活性化 が存在する。また、EBVが大部分のヒトに感染・維持されていることもあり、BL発生に重 要なのはc'mycの活性化であり、EBVはバッセンジャーに過ぎないとの見解も従来あった。

さ ら に 、BL型の 感 染 、す な わ ちEBV核 抗原EBNA1、 ポ リA(‑)の 小RNA EBER、BamHI‑A 断 片領域に コードさ れるBARFOの3つ のEBV遺伝子の みを発現する感染をin vitroで再現 できなかったことも解析を困難にしていた。しかし最近,BL型感染モデルAkata細胞系が 確 立され、 その解析 からEBVがBL細 胞の悪性化 に寄与し ているこ と、EBVがコ ードする 小RNA EBERがその活|陸を担っていることカs明らかとなった。このような背景のもとに、

本 研 究 では と くに サ イ トカ イ ンに 着 目 し、BL発生 に おけ るEBVの役 割 を検 討 し た。

材料と方法

  細胞および 組織:EBV陽 性、陰性BL細胞株、日本人BL患者生検組織を用いた。BL由来 Akata細胞とMutu細胞については、本来のEBV陽性クローンと、そこから限界希釈法によ って分離したEBV陰性ク口ーンを用いた。

  サイトカイ ンm RNAの定量 :Trizolにより細胞よりRNAを抽出後LightCyclerTMを用い たReal time RT‑PCR法により定量した。

  培養上清中のIL‑10の定量:ELISAによった。

  細胞への遺伝子導入:電気穿孔法で行い、ネオマイシン耐性によって遺伝子導入ク口ー ンを選択した。

  EBER欠 損EBV:相 同組換え 法によりEBER遺伝子をネ オマイシ ン耐性遺 伝子と置 換す ることにより作製した。

結果と考察

  Akata細胞についてEBV陽性クローンと陰性ク口ーンのサイトカイン発現量を比較した 結果 、EBV陽性 ク口ーン でEBV陰性ク口 ーンに比 ベIL‑10の発現 がmRNA、蛋白 質レペル で高いことが示された。一方、IL‑1B、IL‑4、IL‑6量に差は無かった。さらにMutu細胞に

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お ぃ て もEBV陽 性 ク ロ ー ン でIL‑10の 上昇 を認 めた 。す なわ ち、EBNA1、EBER、BARFO のみ を発 現す るBL型のEBV感 染に より 宿主IL‑10の発 現が誘導されることが示された。

  次いで、EBVのどの遺伝子産物にその活性があるのかを調べた。EBV陰性Akata細胞{以 下Akata(‑)}ヘEBNA1、EBER、BARFO遺伝子をそれそれ導入した細胞クローンを作製し、

IL‑10 mRNA量 を測 定し た。 その 結果 、EBER導入 クロ ーンでIL‑10 mRNA量が増加してい た。またAkata(.)にEBVを再感染させるとIL‑10 mRNAの発現増加を認めたが、EBER欠 損EBVの感染では増加しなかった。以上の結果、IL‑10発現誘導はEBERによることが判明 した。

  次に、Akata細胞の増殖へのIL‑10の影響を調べた。0.1%の低血清中では増殖できない Akata(.)は,IL‑10の添加により低血清中での増殖能を獲得した。一方、EBV陽性Akata細 胞{以下Akata(十)}は、抗IL‑10抗体やIL‑10に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの 添加により増殖能を失った。以上の結果は、Akata細胞の増殖がIL‑10に依存していること を示している。

  EBV陰 性 のBL細 胞 株Louckes、BL41、BL30は いず れもIL‑10 mRNAが 低か った。 これ らの 細胞 株にEBER遺伝 子導入したクローンではIL‑10の発現上昇を認めた。従って、BL 細胞一般に,EBERが発現するとIL‑10の発現も誘導されることが示唆された。BL生検組織 の検 討で は、EBV陽 性のBLではEBERの発現程度に応じてIL‑10 mRNAが高値を示したが、

EBV陰 性 のBLで はIL‑10 mRNAは いず れも 低か った。 従っ て、EBV陽性 のBL患者組 織に おいて、EBERによるIL‑10誘導が起こっていることが示唆された。

  EBERは 蛋 白 に 翻 訳 され な いボ リ(A)を 欠く 小RNAで.1細胞 中にlx107個 前後と 多数 コビ ー存 在す る。EBERはL22、La、PKRな どの細 胞蛋 白質に結合することが知られてい るが、その意義についてはほとんどわかっていない。わずかにPKRについてのみ調べられ てい る。PKRはイン 夕― フェ口ンにより誘導され、2本鎖RNAにより活性化される蛋白リ ン酸化酵素で、蛋白質合成開始因子eIF2aをりン酸化して蛋白質合成を抑制することが知 られ てい る。EBERはPKRに結 合し その 活性 を阻 害す るこ とが 報告 され ている 。EBERに よるIL‑10転 写活性 化とPKRの関 連を 調べ るため に、dominant‑negative型PKR、EBERと 同 様PKR抑 制 活 性 を も つ こ とが 知ら れて いる アデノ ウイ ルス のVA1遺 伝子 をそれ それ Akata(.)に導入し,IL‑10 mRNA量を測定した。その結果、IL‑10の転写は促進されなかっ た。従って、EBERによるIL‑10転写活性化はPKRとは別の経路によることが示唆された。

  以 上 よ り 、EBVが コ ー ド するEBER RNAはIL‑10の 転写 を活 性化 する こと 、それ によ り産生されたIL‑10はBL細胞の自己増殖因子として作用することを明らかにした。IL‑10 にはTH1細胞抑制活性があり、ウイルスはIL‑10誘導により宿主細胞免疫を回避しつつ、

自己 の生 存を 図っ てい るという巧妙なメカニズムが示唆された。また、本研究はRNA分 子による発がんという、従来まったく知られていなかった発がんの可能性を示した点でも 意義深いものと考える。

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学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名

Epstein‑Barr virus‑encoded poly (A) ‑RNA supports Burkitt S     lymphoma growth through interleukin‑10 induction

    (EB ウ イ ル ス が コ ー ド す る ポ リ (A) ― RNA の インターロイキン10 誘導を介したバーキットリンパ腫増殖促進)

  Epstein‑Barr virus (EBV)はヒト腫瘍との関連が指摘された最初のウイルスであるが、

その発癌活性については長年不明であった。近年Akata細胞系を用いた実験からEBVがバ ーキットリンパ腫(BL)の増殖に必要であることが証明さ れた。しかしその分子機構につ いては依然未知であった。申請者はこの点を明らかにすべく、特に宿主サイトカインの発 現に 着目 した 。材 料はBL由 来の細胞株および生検組織を使用した。そのうちAkata細胞 とMutu細 胞 に つ い て は 、EBV陽 性 お よ び 陰 性 ク ロ ーン を用 いた 。mRNAの 定量 はReal time RT‑PCR法に より 行い 、 蛋白 の定 量はELISAを 用い た。細胞ーの遺伝子導入は電気 穿孔 法で 行っ た。 実験 の結 果、EBV陽性Akataは陰性に比べmRNA、蛋白いずれでもIL‑10 の発 現が 著し く亢 進し てい た。IL‑1ロ、4、6に差 は無 かった。次にEBV陰性Akataに、

EBVの 潜 伏 感 染 遺 伝 子3種(EBNA1、EBER、BARF0) をそ れぞ れ導 入し たと ころ 、EBER 導入 での みIL‑10の発 現が 増 加し た。 またEBV陰性AkataにEBVを再 感染 させ るとIL‑10 の発 現は 増加 した が、EBERを欠失させた組換えEBVを再 感染させると増加しなかった。

し た が っ て 、IL‑10発 現 誘 導 はEBERに よ る こ と が 判明 した 。Akata、Mutu以 外 のEBV 陰性BL株 のい ずれ もIL‑10の 発現 は低 かっ たが 、こ れら の細 胞株 にEBER遺 伝子 を導入 する と発 現は 上昇 した 。こ のこ とか らBL細胞 一般 に、EBERはIL‑10の 発現 誘導 活性か あるものと思われる。次に、種々のIL‑10環境下でのAkataの増殖を調べた。その結果、

本 来 低 血 清 中 で は 増 殖 し な いEBV陰 性Akataは 、IL‑10の添 加に よりEBV陽性Akataに 匹 敵 す る 増 殖 能 を 獲 得し た。 逆にEBV陽 性Akataは 、抗IL‑10抗 体やIL‑10に対 する ア ンチ セン スオ リゴ ヌク レオ チドの添加により増殖能を失った。これはBLの増殖がIL‑10 に依 存す るこ とを 示し てい る。BL生 検組 織で は、EBV陽 性組 織でEBERの発 現程 度に応 じてIL‑10の発現が高かった が、EBV陰性組織ではいずれ も低く、実際の腫瘍組織内でも

邦 賢

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EBERがIL‑10を 介 して 増 殖 に寄 与 し てい る こ とを 疑 わ せた 。EBERがIL‑10の転 写を促 進 する経 路として 、PKR(2本 鎖RNA依 存性蛋 白リン酸 化酵素 )の介在を考えた。しかし dominant‑negative型PKRお よ びPKR抑 制活 性 を もっ ア デ ノ ウイ ル スVA1の 導入 で は IL‑10の転 写は促進 されず 、この経 路は否定的であった。以上より、申請者はEBVによる 細 胞悪性 化のメカニズムのーっとして、ウイルスが宿主自身のIL‑10の発現を誘導してBL の増殖を促進していることを明らかにした。

  審 査に当 たって藤 堂教授 から、他 のEBV関連腫瘍 とIL‑10の関わり、IL‑10だけで悪性 化 の説明 が可能かとの質問があった。申請者は各種文献や自身のデーターを引用し、EBV 陽 性 胃 癌ではIL‑10の発 現はな く、移植 後リン パ増殖症 ではEBVの膜蛋 白LMP‑1がIL‑10 を 転写促 進しているなど疾患により様々であること、IL‑10単独導入細胞ではSCIDマウス 皮下での造腫瘍性が得られず、EBER‑IL‑10経路は悪性化を担う因子のーっであることを回 答した。次いで小林からウイルス性IL‑10の影響の確認、IL‑10遺伝子のプロモーター領域、

本 研究成 果の治療への応用についての質問があった。申請者はウイルス性IL‑10について は 無発現 を確認していること、プロモーター領域にはNFにBなどの転写因子の結合部位が あり、これが発現調節にかかわっている可能性があること、抗サイ卜カイン療法について、

今 後而ガ VOでの 実験が 必要であ ることを 回答した。最後に高田教授から、IL‑10発現は EBV陽性 のBLに普遍 的なも のと推察 される かとの質 問があっ た。申 請者は、特に生検材 料 でEBERとIL‑10の発現量が相関していることから、そのように推察されると回答した。

  こ の論 文 は 、EBVに よるBL増殖 機 構 を明 ら か にし 、 ま たRNA分子によ る発癌と いう 従来まったく知られていなかった可能性を明らかにした。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院過程における研鑚や取得単位なども 併 せ 申 請者が 博士(医 学)の 学位を受 けるのに 十分な 資格を有 するも のと判定 した。

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参照

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