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特集 2 グローバル人材の育成 ーー高校の取り組みを中心にーー グローバル社会で活躍できる人材を育てようという試みは 大学を Contents 中心にこれまでにもいろいろな取り組みが行われてきた しかし近年 社会での グローバル人材 のニーズはさらに高まり ①より幅広い 概 説 16 グローバル人材

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ーー高校の取り組みを中心にーー

 概説:グローバル人材育成の経緯と、今後の展開

 グローバル社会で活躍できる人材を育てようという試みは、大学を

中心にこれまでにもいろいろな取り組みが行われてきた。しかし近年、

社会での「グローバル人材」のニーズはさらに高まり、①より幅広い

能力を持った、②より幅広い層の、③より早期からの、グローバル人

材育成が求められるようになっている。

 英語力の必要性は従来から指摘されているが、単に言葉が使えると

いうだけではなく、異なる価値観を持つ人とコミュニケーションがと

れる力や、チャレンジ精神・主体性といった幅広い能力が求められる

ようになっている。またグローバル社会との関わりを持って働く時代

を迎え、これらが一部のリーダーにだけ求められる素養ではなく、よ

り一般的に求められるようになりつつある。こうした変化を反映して、

大学生、社会人だけではなく、より早期からのグローバル人材育成の

ための取り組みを行う必要性も指摘されている。

 そこで今回の特集では、まず概説でグローバル人材の需要の高まり

やグローバル人材育成のための政府の取り組みについて概観したあと、

異文化間コミュニケーションの能力を高めるためのトレーニングと、

グローバル人材育成に取り組む学校を4例紹介する。まず小中高の発

達段階を意識した指導例として立命館学園、続いてグローバル人材に

必要な3つの要素の育成に関わる取り組みをしている高校3校を紹介

する。これらを通して、グローバル人材育成のために高校ではどのよ

うな取り組みができるのか考えてみたい。

というイメージが強かったが、近年は少子化で国内の人 口が減少し、国内消費が先細りになることが予想されて いることから、中小企業の海外進出も増加傾向にある。 こうした傾向を受けて、グローバル社会で活躍できる人 材の需要はさらに高まっている。  グローバル社会で活躍できる人材のニーズが高まる中、 グローバル社会で働くことへの若者の意識を測るデータ として、海外勤務への意識に関する調査結果をみてみよ う。産業能率大学「新入社員のグローバル意識調査」(2010 年)<図表1>では、「海外で働きたいと思うか」とい う問いに対し、「働きたいとは思わない」と海外勤務に  現代では、政治・経済・文化をはじめとするさまざま な分野でグローバル化が進展している。  まず日本企業の海外進出の様子をみてみよう。海外に 現地法人を持つ日本企業を対象に行った、経済産業省「海 外事業活動基本調査」(2009 年)によると、海外売上高 は 2008 年のリーマンショック後の 2009 年でも売上全体 の約 30% を占めており、グローバルに経済活動を行っ ていることがわかる。海外拠点の設置・運営にあたって 企業が感じている課題の1位が「グローバル化を推進す る国内人材の確保・育成」(74%)である(経済産業省「グ ローバル人材育成に関するアンケート調査」、2010 年)。  また、従来、海外進出は主に一部の大企業が行うもの 中小企業でも海外進出が増加し グローバル社会で活躍できる人材の需要が高まる 若者の海外勤務についての意識は二極化傾向 外国についての興味の有無が積極性に影響

グローバル人材の育成

C

ontents

概 説 ………16 グローバル人材育成の経緯と、今後の展開 コラム ………20 異文化間コミュニケーションの力の 発達段階と、指導の方法 東海大学 山本志都准教授 事例1 ………22 子どもの発達段階に合った グローバル人材育成のための取り組み 立命館学園  立命館小学校 浮田恭子校長 事例2 ………24 「語学力・コミュニケーション能力」の育成 埼玉県立和光国際高等学校 事例3 ………26 「主体性・積極性、チャレンジ精神、 協調性・柔軟性、責任感・使命感」の育成 京都府立嵯峨野高等学校 事例4 ………28 「異文化に対する理解と 日本人としてのアイデンティティー」の育成 愛知県立刈谷北高等学校

グローバル人材の育成

特集

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したデータからは「内向き」志向の若者の多さを指摘さ れがちだが、留学するための環境が整っていないことも 学生が留学を敬遠する要因になっている。  国立大学協会国際交流委員会留学制度の改善に関する ワーキング・グループ「留学制度の改善に関するアンケート」 (2007 年)は、国立大学を対象に、学生の海外への派遣 に関する障害について調査した。「帰国後、留年する可能 性が大きい(68%)」「経済的問題で断念する場合が多い (48%)」の割合が高く、留学する学生への就職や学費に 関する支援が十分でない現状が読み取れる。また「帰国後 の単位認定が困難(37%)」「助言教職員の不足(26%)」な ども障害と感じている大学の割合が比較的高く、学生が留 学に消極的になる理由には、大学の体制等の要因も影響し ていそうだ。  このようにグローバル社会で活躍できる人材を確保し て、海外拠点の設置などを積極的に進めたい企業と、さ まざまな要因から海外勤務や留学に踏み切れなかったり、 現在のグローバル社会のニーズについて十分な理解がで きない一部の若者との間にはミスマッチが生じている。  こうした現状を踏まえ、政府は日本企業の国際競争力 を低下させないための対策として、グローバル社会で企 業が求める人材像を「グローバル人材」とし、グローバ ル人材の持つべき能力の整理、具体化と、その育成のた めにすべきことについてまとめた。それが 2012 年6月 消極的な回答をした割合が、2001 年度の 29%から 2010 年度の 49%と増加している反面、「どんな国・地域でも 働きたい」と海外勤務に積極的な回答をした割合も 17%から 27% に増加している。海外勤務への志向が二 極化しているといえそうだ。  では海外勤務に積極的な人、消極的な人はなぜそう考 えているのか。内閣府「労働者の国際移動に関する世論 調査」(2010 年)で、「外国での就労に関心がある」、も しくは「関心がない」と回答した理由をみると、20 歳 代の「外国での就労に関心がある」理由としては「外国 の文化や生活に興味がある(76%)」「語学力の向上・活 用を図りたい(58%)」「技能の向上・活用を図りたい (49%)」の順に高くなっている。「関心がない」理由と しては「外国で生活することに不安を感じる(59%)」「語 学力に自信がない(56%)」の順に高かった。  この結果をみると、20 歳代の海外勤務についての意 識は、外国で生活することにポジティブなイメージを 持っているかが影響していそうだ。留学など、就職前に 海外での生活を経験する取り組みや、より実践的な語学 教育の推進が、若い世代の海外勤務への積極性を高める 可能性がありそうだ。  それでは、学生時代の留学に関する調査をみてみよう。 近年の日本人留学者数の推移と、留学制度の問題点につ いての大学へのアンケート結果だ。  OECD の調査では、世界の留学生は 1975 年の 80 万 人から 2009 年の 367 万人へと過去 30 年間で4倍以上に 増加しているのに対し、国別に見ると、日本からの留学 生数は 2004 年から減少が続いている<図表2>。こう 海外への日本人留学生数は減少傾向 大学の支援体制の強化が必要 「グローバル人材」が持つべき3つの要素が定まる 語学力だけでなく、より多様な能力が必要 <図表2>国別 学生の海外派遣者数の推移 (OECD「Education at a Glance」など。 グローバル人材育成推進会議「グローバル人材育成推進戦略」より転載) <図表1>新入社員のグローバル意識調査 (産業能率大学。グローバル人材育成推進会議「グローバル人材育成推進戦略」より転載) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 27% 24% 49% 18% 45% 36% 24% 47% 28% 17% 53% 29% ■どんな国・地域でも働きたい ■国・地域によっては働きたい ■働きたいとは思わない 「海外で働きたいと思うか」 2001年度 2004年度 2007年度 2010年度 0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 2008 中国 567,982 アメリカ 270,604 インド 211,038 韓国 127,291 日本 59,923 イギリス 32,048 オーストラリア 10,530 2009 2002 2003 2004 2005 2006 2007 中国 韓国 インド イギリス オーストラリア アメリカ 日本 (人)

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(グローバル人材育成推進会議「グローバル人材育成推進戦略」より抜粋) に発表された、国家戦略室の「グローバル人材育成推進 会議」の「グローバル人材育成戦略(グローバル人材育 成推進会議 審議まとめ)」である。  ここではグローバル人材の概念を、「要素Ⅰ:語学力・ コミュニケーション能力」、「要素Ⅱ:主体性・積極性、チャ レンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感」、「要素 Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティ ティー」の3つの要素に整理した<図表3>。語学力だ けではなく、幅広い能力が必要とされている。  またこうした幅広い能力を持ったグローバル人材であ ることは従来、トップ・エリートの素養として求められ たものだが、今後はより幅広い層に求められる素養であ るとした。例えば、要素Ⅰの語学力については、5つの レベルを設定している。5つのレベルとは①海外旅行会 話レベル、②日常生活会話レベル、③業務上の文書・会 話レベル、④二者間折衝・交渉レベル、⑤多数者間折衝・ 交渉レベル、の5段階だ。今後は④、⑤のハイレベルな 語学力を持つ人材が継続的に育成され、一定数確保され ることがきわめて重要であること、またそのためには「同 一年齢の者のうち約 10%が概ね 20 歳代前半までに1年 以上の留学ないし在外経験を有」することをめざすとし た。これに加え、「③レベルのグローバル人材についても、 相当程度の厚みのある人材層を形成することが必要」と している。このように、トップ層だけではない、より幅 広い層を加えた、多数のグローバル人材の育成をめざす ことが定められたことも、この「グローバル人材育成戦 略」の特徴だ。  こうした3つの能力を持つグローバル人材は、より具 体的にいうと、グローバル化する社会の動きやその中で の自分の役割を理解し、かつ外国語や異文化について一 定の知識や技術を持って、仕事をすることができる人の ことだ。グローバル化によって、世界各国との結びつき が複雑になると、国内の市場の動向だけを意識して仕事 をしたり、海外の一企業と一対一で取引をするだけでは 利益を保てなくなる。複数の国の企業や市場に目配りを した、より高度な判断が求められたり、日本国内にいて も外国人とともに働く、海外の事業所と連携して仕事を 進めることが求められるなど、外国の文化や情勢、言葉 を理解する能力が必要な場面は多くなる。また、直接外 国と関わる仕事をすることはなくても、取引先の国内企 業の海外進出によって、自社でも海外でのニーズを意識 した商品開発が必要になるなど、自分の仕事が世界の市 場とどのようにつながっているのかを理解して主体的に 仕事をすることが求められる場面も増えていく。こうし た場面で必要な新しい視点や能力を持っている人をグ ローバル人材として育成しようとしているのだ。    では<図表3>のようなグローバル人材としての能力 を身につけるための具体的な取り組みは、どのように行 われるのか。大学教育と、初等中等教育のそれぞれで、 これまでに政府が取り組んできたことや、今後力をいれ ていくことについてみていこう。  まず大学での取り組みについてだが、当初、グローバ ル人材の確保のために政府が取り組んできたのは、主に 大学での取り組みだ。なかでも重視していたのは日本人 学生をグローバル人材に育てることではなく、日本の大 学へアジア諸国から留学生を受け入れることによって、 日本企業が外国人人材を獲得できるようにすることだ。 留学生受け入れによって、結果的に日本人学生が国内で 学びながら、外国人学生と交流できる機会は増えたが、 日本人学生が海外留学する送り出しのための政策はあま り重視されなかった。  しかし中央教育審議会答申「新たな留学生政策の展開 について」(2003 年)で日本人学生が海外で学ぶための 支援も行う必要性が指摘された。具体的な施策としては、 奨学金の充実や、日本学生支援機構による情報提供など が挙げられている。その後の日本人留学生の送り出し事 業としては、経済産業省「GLAC(グラック:Global Activity of Japanese)事業」(2011 年)などがある。こ れはインドとベトナムに立地する日系企業に日本人学生 を派遣し、2~3週間の短期インターンシップを実施す るものだ。受け入れについても、例えば文部科学省「留 学生 30 万人計画」(2008 年)では 2020 年を目処に 30 万人の留学生受け入れをめざしているなど、継続的に取 政府主導の、大学でのグローバル人材育成の取り組みは 受け入れ中心から送り出しへ拡大 要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力 要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、 責任感・使命感 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー <図表 3 >グローバル人材の概念

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り組まれているが、近年は日本人学生 をグローバル人材に育成するため、受 け入れだけでなく、送り出しにも支援 が広がっている。  また、学生の送り出し、受け入れだ けではなく、グローバルスタンダード を意識した大学の制度改革も行われて いる。この取り組みとして、文部科学 省「グローバル人材育成推進事業」 (2012 年)がある。これは大学教育の グローバル化を目的とした体制整備を 推進する取り組みを財政支援するもの だ。採択された取り組みの中には、海 外の大学との単位互換、留学や留学生 対応の専門職員の配置、シラバスの充 実やナンバリング(注) の導入などの教 育課程の国際通用性を高めるものなど、多様な取り組み がある。優秀な外国人学生を呼び込む魅力ある大学作り や、日本人学生が海外でも自由に学び、成長できるよう な体制を整えることをめざす。  次に初等中等教育での取り組みをみてみよう。初等中 等教育でも従来から英語教育や国際理解教育は行われて きたが、大学や就職後にもつながる「グローバル人材育 成」のための取り組みとしてこれらが位置づけられた。 今後、初等中等教育で取り組むべきこととして、「グロー バル人材育成戦略」では、①実践的な英語教育の強化、 ②高校留学等の促進、③教員の資質・能力の向上の3つ が課題として挙がっている。  「①実践的な英語教育の強化」は英語科の授業の改善 が中心だ。外国語活動、英語科に関する新学習指導要領 の内容は<図表4>のようになっている。小中高一貫し て、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランス よく身につけ、英語でコミュニケーションができること を目標にしている。こうした能力を身につけさせるため、 従来の講義形式でない、生徒が授業中に多様な言語活動 を行えるような授業への切り替えが強く求められている。  「②高校留学等の促進」にも取り組む。18 歳頃までに 1年間以上の留学や在外経験を有する者を3万人規模に 増やすことをめざすほか、海外への関心を高めるための 海外勤務・留学経験のある社会人等との交流、海外への 進学・留学のための情報提供などが検討される。  「③教員の資質・能力の向上」としては英語担当教員 採用時に TOEFL・TOEIC の成績等を考慮することや、 英語担当教員等の養成の中核的拠点となる大学の整備な どが挙がっている。  多くの新しい政策が挙がっているが、<図表3>のグ ローバル人材の概念に沿って考えると、初等中等教育で は、まずは実際の場面で使える確かな英語力(【要素Ⅰ】) と、異なる文化的背景を持つ人と交流できる力(【要素 Ⅲ】)を育てることが中心になるだろう。それに加え、 新たなことにチャレンジしたり、主体的に行動できる力 (【要素Ⅱ】)も求められる。これについてはグローバル 人材育成のために新しい取り組みを始めるというよりは、 既存の取り組みを世界への視点と結びつけることが重要 になりそうだ。  さらに、海外で働く人が今後増えること、国内で働く にしても海外の企業との関わりや、日本で働く外国人と の協働の機会が広がることなどによって、より多くの人 にグローバル人材としての素養が求められるようになる。 その中で、初等中等教育ではグローバル社会のイメージ を具体的に伝えたり、そうした社会の中で将来自分はど う学び、働きたいのかを考える機会を設けることが必要 になりそうだ。 初等中等教育では、実践的な英語教育の強化 高校留学促進、英語教員の英語力向上の事業に重点 (注)ナンバリング…授業科目に適切な番号を付し分類することで、学修の段階や順序等を表し、教育課程の体系性を明示する仕組み。 (国家戦略室「グローバル人材育成推進戦略」補足資料より抜粋) <図表4>小中高を通じた英語教育の充実 ○ 基本的な考え方 ○ 学習指導要領の主なポイント ((※)コミュニケーション英語Ⅰ,Ⅱ及びⅢを履修した場合) ○小中高を通じて,コミュニケーション能力を育成。  ー言語や文化に対する理解を深める  ー積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する  ー「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく育成する ○指導語彙を充実(中高を通じて,2,200語から3,000語に) Ⅰ.小学校学習指導要領(平成20年3月改訂)(平成23年度から実施) ○平成23年度より,5・6年生において,外国語活動を週1コマ導入。平成21年度及び22年度は, 学校の判断により先行実施が可能 ○音声や基本的な表現に慣れ親しむことを中心 Ⅱ.中学校学習指導要領(平成20年3月改訂)(平成24年度から実施) ○各学年の授業時数を週3コマから週4コマ(約3割増)へ充実 ○従前の「聞く」「話す」を重視した指導から4技能のバランス取れた指導への改善 ○指導語彙を900語から1,200語へ充実 Ⅲ.高等学校学習指導要領(平成21年3月改訂)(平成25年度から年次進行で実施) ○選択必履修から「コミュニケーション英語Ⅰ」の共通必履修に変更する等,科目構成を変更 ○生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,  授業は生徒の理解の程度に応じた英語を用いて行うことを基本とすることを明示 ○指導語彙を1,300語から1,800語へ充実

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 「異文化感受性発達モデル」<図表>は、人が異文化をど のようなものとして体験し、そこから何を感じ、どんな意味を見い だすかに関わる感受性の発達段階を6段階に整理している。こ のモデルは、物事の考え方や価値観は、所属する社会の文化 によって方向づけられるとする社会構成主義の考え方を前提と している。この考え方に立つと、同じ文化的背景を持つ人同士 は考え方が似通っているため、スムーズにコミュニケーションがで きるが、異なる文化的背景を持つ人同士の場合、それぞれの 文化で常識とする、ものの考え方などが互いに異なるため、誤 解やすれ違いを生みやすいといえる。しかし経験やトレーニング を通して、文化による違いがあることを知り、その対応方法を知っ ていればトラブルは回避できる。異なる文化的背景を持つ人とス ムーズにコミュニケーションをとるためにはお互いの違いや共通点 を正しく整理して理解し、適切な行動をとることができる力が必 要である。  ではそうした異文化間コミュニケーションの力はどのように発達 するのかを「異文化感受性発達モデル」に沿ってみてみよう。  第1段階の「否定」は、相手の文化を認めないという意味 ではなく、相手の表現が物理的には見えていても、意味のある 違いとして、区別や認識ができていない状態を指す。「例えば ハリウッド映画の中の日本人役を、日本人でないアジア人が演じ ると、私たちは表情や話し方等の非言語表現の違いに気づき、 違和感を覚えます。しかし、その映画を制作したアメリカ人監 督の目には、日本人とそれ以外のアジア人の話し方や動作の違 いが区別できず、同じようなものとして映っている可能性がありま す」(山本先生)  第2段階の「防衛」は、相手との文化的な違いを認識しても、 それに対しネガティブな評価を下し、優越感を持つことで、自分 を守ろうとする段階だ。一方の文化が正しく、もう一方は悪いと 二項対立の図式で文化を考える点が特徴である。善悪の図式 が入れ替わり、相手国のものが絶対的に正しく、自国のものは すべて良くないと主張するような、逆転現象が起きることもある。  第3段階の「最少化」は「日本人もアメリカ人も人間は皆同 じで、泣いたり笑ったりする」と、人間の普遍性や共通性に注 目して、文化的な違いは些細なことだと考える段階だ。この段 階は好意に基づいているからこそ、問題が起きたときに深刻に なりやすいと山本先生はいう。  「例えば『親を大切にする』のは日本もアメリカも同じですが、 『大切にするとは具体的にどういう行動をすることか』はそれぞ れの文化によって異なります。福祉施設への入居を、アメリカで は親の自立や尊厳を守った行動だと解釈しますが、日本では子 どもが同居する責任や思いやりを放棄したことのように捉えること があります。こうした違いがあることを理解せずに『どちらの国 でも親を大切にするのは同じ』とわかり合った気になっている時 に、具体的な行動の違いに直面すると裏切られたような気持ち になり、大きな摩擦につながることがあります」  第4段階の「受容」は、人はそれぞれが属する文化の価 値観に依って生きており、大事にすることがそれぞれの文化で 異なることを理解し、尊重できる段階である。  第5段階の「適応」は、異文化社会の中にいるときには、そ の文化の価値観に視点を転換したり、その文化の価値観に基 づき、行動したりできる段階である。  グローバル人材には語学力だけではなく、相手の 文化的背景を理解し、それに合わせてコミュニケー ションができる力も求められる。こうした異文化間 コミュニケーションの力には発達段階があり、異文 化に対する感受性の観点からその過程を6段階に整 理したのがアメリカのコミュニケーション学者であ るベネットの「異文化感受性発達モデル」だ。この モデルは、異なる文化的背景を持つ人たちとのコ ミュニケーションを理解することに役立つ。外国人 との間だけではなく日本人同士の間にもある文化的 背景の違いに着目することで、外国人のいない高校 でも、このモデルで想定されているような、異文化 間コミュニケーションの力を伸ばすためのトレーニ ングができるという。  この「異文化感受性発達モデル」を日本に紹介し、 自身も大学生に異文化間コミュニケーションの力を つけるための授業を行っている東海大学の山本志都 先生に、異文化間コミュニケーションの力はどのよ うな段階を経て発達するのかと、高校でできる異文 化間コミュニケーションの力を伸ばすための取り組 みについて話を伺った。 否定→防衛→最少化→受容→適応→統合の 6段階で発達する異文化に対する意識

異文化間コミュニケーションの力の

発達段階と、指導の方法

東海大学文学部英語文化コミュニケーション学科 

山本志都

准教授

コラム

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 第6段階の「統合」は、自分が2つ以上の文化に属する際、 状況に応じてそれぞれの枠組みを使いわけることができ、かつ そうした行動を取れる自分自身にアイデンティティーを見いだせる 状態である。「『統合』は、長期間異文化の中で生活したり、 自分がマイノリティとしてマジョリティの社会に適応したりする経験 がなければ到達することは難しいので、高校での指導では、海 外の大学や職場で周囲から見て違和感のない行動ができるレ ベルである、第5段階の『適応』の段階を目標にするとよいと 思います」(山本先生)  異なる文化的背景を持つ人と適切にコミュニケーションができ る力はこのように発達していく。しかし外国人と関わる機会の少 ない、国内の高校ではどのようにこの力を育てればよいだろうか。  「異文化間コミュニケーションの教育では外国人とのコミュニ ケーションを念頭に置くことが多いですが、本来『異文化』は 国単位でのみ成立する概念ではありません。まず日本人同士 の間にも、小さな『異文化』があるということに気づかせ、そう した個人の違いを活用したトレーニングを高校で経験しておくと、 将来、職場などで外国人とコミュニケーションをとる時に応用でき ます」と山本先生はいう。  「身近な異文化はたくさんあり、例えば同じ高校の中でも、運 動部と文化部では、挨拶の仕方や先輩後輩の関係などに違い があります。ほかにも出身中学校、家庭、男子と女子の違いな どもあります。それぞれのグループのルールや優先順位などを書 き出すと、グループによって文化の違いがあることに気づきます。 所属するグループの文化の特徴を見て、自分がどんな文化的 背景を持っているのかに気づき、自分の価値観や行動規範と いった目に見えない特徴を意識したり、友人との違いを理解して 尊重し合うことの大切さを理解することができると思います」(山 本先生)  人がそれぞれ異なる文化的背景を持っていること、それを理 解、配慮し合うことの大切さに気づかせた後は、実践的な交 流の仕方を指導する。異なる文化的背景を持つ人と交流する には、意識的に自分の意見や状況を発信したり、相手の考えを 引き出すことで、理解し合う力が必要だ。こうした力をつけるた めの最初の取り組みとして、山本先生が行っているのが相手の 意見を引き出すことを重視したディスカッションだ。  「テーマは『自分にとって友達とは何か』など何でもよいと思 います。ディスカッションでは、自分の意見を発信する力が注目 されがちですが、実は相手から話を引き出す力の方が重要で す。いったん自分の先入観や意見は置いておいて、相手の意 見に対し『それはどういう意味ですか』など、相手をより理解 するための質問をしたり、『先ほどのあなたの話はこういう意味 だと思いますが合っていますか』と確かめたりする会話が、最も お互いの主張の理解につながり、新たな視点を生んで議論を 活性化させるからです。ですから、私の大学の授業では、ま ず相手の意見を意識的に聴き合う、支援的な雰囲気のディスカッ ションを行います。できるだけ多くの視点や意見を引き出し合っ て、チームとしての多様性と生産性を高める意識を持つよう指導 します。こうしてお互いの意見を引き出し合う力をつけてから、 意見をぶつけあう、発信する力を重視するディスカッションに取り 組むと、一方的に意見を言い合うだけでない、深い内容のディ スカッションができるようになります」  国内でもこのようなトレーニングが可能だが、短期間の交換 留学、外国への修学旅行など、高校生でも外国の異文化に 接する機会は増えている。山本先生はこうした場合の事前学 習としては、相手国の歴史や伝統文化などだけでなく、相手国 と自国の行動様式の特徴などを学ぶのが実践的だという。  「相手国の人と交流する機会があるのであれば、事前に、 相手は普段の自分たちの言動をどう理解するかといったシミュ レーションをするとよいでしょう。両国の行動様式の違いを説明し、 どのように発言し、振舞うのがよいか考えさせます。例えば恥ず かしがったり、遠慮して意見を言わない態度が、相手国の人の 目にはつまらなそう、やる気がなさそうな態度として映るのではな いか、などと意見が出ます。また先ほどの『親を大切にする』 の事例のように、根本の考え方は同じでも具体的な行動は異な る事例をケーススタディで学ぶ(注) と文化の違いがより明確にわ かると思います。身近な異文化を知ることや、こうしたケーススタ ディなどのトレーニングを高校で行うことで、将来、留学や職場 で出会う外国の異文化に接する際の基礎を作ることができると 思います」 (注)ケーススタディの事例集としては、『ケースで学ぶ異文化コミュニケーション-誤解・失敗・すれ違い-』(久米昭元・長谷川典子著、有斐閣選書、 2007 年)などがある。 <図表>異文化感受性発達モデル 自文化中心的状態 文化相対的状態 違いの 違いからの 違いの 違いの 違いへの 違いとの (存在) 否定 防衛 最少化 受容 適応 統合 (山本先生提供資料より編集部で作成) まずは支援的な雰囲気のディスカッションで お互いの意見を引き出し合う訓練をする 海外への修学旅行の事前学習では 歴史や伝統文化より、行動様式の違いを扱う 外国人に限らず、日本人同士にも「異文化」はある 身近な異文化に気づくことが出発点

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 発達段階に合った、グローバル人材育成のための取り 組みについて考える前提として、まずは子どもたちが小 学校から高校までの間にどのような段階を経て成長する のかを、それに合わせた同学園の指導方針とともに聞い た。  立命館小学校と立命館中学校・高等学校の一貫教育で は、12 年間を、小学校1年生~4年生(ファーストステー ジ)、小学校5年生~中学校2年生(セカンドステージ)、 中学校3年生~高校3年生(サードステージ)という3 つのステージに分ける、4・4・4制を導入している。 これは、現代の子どもの心身の発達段階を考えると、カ リキュラムや教育手法において、4年ごとに節目を設け、 それぞれの段階に合わせた教育内容の構築が必要との考 えに基づいている。国内外にも6・3・3制ではない形 で教育を組み立てている例は少なくない。そして、この 4年ごとの節目は、実際の子どもたちの様子とも一致し ている実感があると浮田先生はいう。  「小学校4年生くらいまでは、子どもたちは具象的に 物事を捉え、自分の体験を基準に物事を考えたり予測し たりします。それが小学校5年生頃になると、抽象的な 内容を理解し、物事に論理性を求めるようになります。 広い視野を持って、自らの個性を探 る時期でもあります。中学校3年生 頃からは、一人ひとりの個性や興味・ 関心を反映した自分なりの世界観を 求めるようになります。セカンドス テージまでの学びを基礎に、それぞ れが興味のある分野を選び取り、深 めていく時期といえます」  同学園ではこうした発達段階の特徴を踏まえて、ス テージごとに特色を持った指導を行おうとしている。  ファーストステージでは、読み・書き・計算の基礎を 反復して徹底的に身につけさせることに加え、子どもに 多くの体験をさせ、探究心を育てることを重視している。 観察や、自ら抱いた疑問(はてな)を図鑑などで調べる ことを習慣づける。  セカンドステージは、「学」への入り口である。体系立っ た学問をそれぞれの段階に応じて学べるように、数学や 理科のカリキュラムを工夫している。例えば、6年生で 数学を導入したり、公式を使うだけではなく、公式が成 立するまでの経緯を理解させることなど、学問の系統性 や論理性を重視している。  サードステージでは、それまでの学びを踏まえて、将 来自分が何をしたいのか、そのためには何を学ぶべきか を考えさせ、自身の目標とつなげて、学びを深めるよう に導いていくことをめざす。  生徒が発達の段階で、自然と興味・関心を持つタイミ ングに合わせた指導を行うことで、生徒がより深く学び、 主体的な学習者に育つことを支援したいという考えに基 づいた指導が行われている。  同学園ではグローバル人材育成のための取り組みに ついても、その他の学習と同様に、発達段階を見通し、 各段階に合わせた指導を行っている。まずグローバル人 材の要素の中でも重視される、外国語の指導について浮

子どもの発達段階に合った

グローバル人材育成のための取り組み

立命館学園

事例1

 概説で紹介したように、企業のニーズや世界的な 動向を踏まえ、政府でもグローバル人材の育成に、 大学よりも早期から、段階的に取り組もうという動 きが大きくなっている。それでは小学校・中学校・ 高校ではそれぞれどのような取り組みができるだろ うか。  小学校から大学までの一貫教育を行う立命館学園 の元一貫教育部長であり、「真の国際人を育てる」 ことを目標のひとつに掲げる立命館小学校校長であ る浮田恭子先生に、小学校・中学校・高校の子ども たちの発達段階の特徴に合ったグローバル人材育成 のための取り組みはどうあるべきかについて、話を 伺った。 立命館小学校 浮田 恭子校長 発達段階の特徴に合った4・4・4制を採用 各段階に合わせた方針で指導 「英語を学ぶ」から「英語を使う」へ

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田先生は次のように説明する。  「微妙な音声の聞き取りや発声の能力は、小学生の年 代の子どもたちが持つ宝物です。そのためファーストス テージの時期は、自分にとって意味ある英語をどんどん インプットし、楽しみながら英語を習得させます。セカ ンドステージでは、文法の学習や、英語を使って自分を 表現する活動も多くなります。関係代名詞や仮定法も小 学校段階で使っていますが、適切な時期に理論を教えて 子どもたちが理解できるようにしています」  そして、セカンドステージまでで「外国語としての英 語教育」に区切りをつけ、サードステージでは英語をツー ルとして使う学習をさせたいというのが、浮田先生の考 えだ。  「私自身、高校で英語を教えていましたが、そもそも 高校1年生で大体の基礎的な文法は学び終わるようにで きているので、『Science』や『Literature』などのアカ デミックな分野を、英語を使って学ぶとよいと考えてい ます。大学入試でも英語の能力だけでなく、母国語や特 定の分野の知識を使って英文全体を理解する力が問われ るものもあります。こうした問題に対応できる生徒の育 成にもつながるでしょう。ほかには、生徒の興味・関心 に合わせて、既に持っている知識で理解できる英語の書 物を読むのも、取り入れやすい取り組みだと思います。 同じように知識で英語力を補いながら読む練習ができま す」  また、高校までに3カ月、6カ月、1年程度の長期留 学の機会を設けて英語だけの環境を予め経験させ、大学 や大学院での留学は英語を身につけるためではなく、専 門性を磨くためのものにしたいと考えている。  異文化理解の面でも、3つのステージを意識した取り 組みを行っている。  ファーストステージでは、「World Week」として立 命館アジア太平洋大学に在籍する留学生を1クラスに1 ~2人、1週間招いて食べ物などの生活習慣や、文化な どについて話をしてもらうなどの交流の機会を設けてい る。毎年違う文化圏の学生と出会い、世界にはいろいろ な国や文化があることが当たり前だという感覚を育てる ことに主眼を置いている。  セカンドステージの小学校5年生からは、希望者が中 国、シンガポール、オーストラリアの姉妹校に訪問した り、最長2カ月間の寮生活を経験したりする<写真>。 単に留学先の子どもたちとの交流を楽しむだけではなく、 英語で意見を述べたり、言葉や文化の違いによる壁に直 面し、乗り越える経験をする。思春期は古い価値観から 新しい価値観への脱皮の時期であり、まだ自分の価値観 が固まっていないこうした時期に固定観念で物事を捉え てはいけないということを実感したり、相手の論理に 沿って考える経験をすることをねらいとする。  サードステージは4・4・4制を導入して今年初めて 生徒が進学したばかりだが、留学プログラムなどを通し て、各国の歴史的背景などについても知識を得た上で、 お互いの文化を客観的に見たり、説明や意見発表ができ ることを目標とする。  最後に浮田先生にグローバル人材とはどういった人材 か、どのように育成すればよいかについて意見を伺った。 「グローバル人材の定義は難しいですが、そうした人材 を育成するためには、多様性の中で学び、寛容性を身に つけたり自己の再発見につながったりするような学習機 会を、意識的に設けていかなければならないと思います。 これからの子どもたちが生きていく未来を考えると、国 家や文化、言語の壁を越えて多様な人々と出会い、共生 と協働の道を探求していく力が不可欠です。ファースト ステージで世界を知り、セカンドステージでは世界を読 み解くためのツールとして英語力を習得し、サードス テージでは世界の課題を自分の使命として捉え、解決す るための意見を持った青年に育ってほしいと思います。 そのためには異質なものと出会い自らを鍛えていくタフ さと、インテリジェンスを育てることが重視されるべき だと思っています」 <写真>オーストラリアの姉妹校での留学の様子 それぞれに異なった文化のもとで生きていることを 理解して尊重できる人を育てる

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「語学力・コミュニケーション能力」の育成

埼玉県立和光国際高等学校

事例2

 同校の教育の特色について校長の亀掛川先生は「知徳 体のバランスの取れた、国際社会で活躍できる人材を育 成するのが、普通科・外国語科に共通する本校の目標で す。本校ではすべての取り組みがその目標を意識して構 成されています」と語る。教頭の加藤先生は「国際社会 で活躍する人材といっても、職種や立場によって求めら れる能力は異なります。しかし誰とでも意思の疎通がで きる語学力・コミュニケーション能力はどんな仕事をす るにしても必要な能力なので重視しています」と話す。  ただし、こうした人材育成を高校の3年間だけで達成 するのは難しい。同校では 2011 年度卒業生の内 82% が 4年制大学へ進学するなど、大学進学率が高い。そのた め高校時代は、大学で力を伸ばし、国際人として活躍で きるようになるための基礎を固める時期と位置づける。  「3年間でネイティブのように英語を完璧に使えるよ うにはなりません。普通科の生徒は文法問題に強く、外 国語科の生徒は聞く、話す力が高いなど高校3年間では それぞれに得意な分野の能力や興味関心を伸ばし、大学 でそれぞれ自分に足りない部分を補って社会に出て行け ばよいと考えています」(加藤先生)  こうした教育目標を掲げる同校が力を入れる、英語教 育の内容をみてみよう。特に外国語科の英語の授業は <図表>のように構成され、多様な言語活動の場面が組 み込まれている。なかでも1年生から3年生までの「英 語表現」、2年生の「異文化理解」、3年生の「時事英語」 は、外国語として「英語を学ぶ」のではなく、基本的に すべて英語で活動する「英語で学ぶ」ことを重視した授 業を行う。この3科目の授業内容の詳細をみてみよう。  「英語表現」では社会問題などについて話し合い、そ れをもとに発表やディベートを行う。「話す」「書く」の 発信力を重視した科目だ。1年生では自分や身近な問題 についての発表が中心だが、2、3年生では「大学入学 時期を秋にすべき」など、「~すべき」というテーマを 設定し、それに沿って議論する。「話し合いの基礎にな る教材は、教科書以外に外国の新聞や、国際機関のホー ムページなどから教員が独自に探すこともあります。例 えば『日本の選挙権年齢を 18 歳にすべき』というテー 亀卦川 誠也校長 加藤 浩教頭 降籏 康善先生 山崎 勝先生 <図表>外国語科の英語科目と内容 科目 重点(*) 内容 総合英語 LSRW ・多読(毎時5~ 10 分) ・学習した英文の reproduction ・文法・語法・熟語等の学習 ・Reading の技能向上訓練(Scannig、Skimming、Inference、語 の推測、情報検索、パラグラフリーディング、指示語を意識して 読む、多読、速読等) 英語表現 SW 【1年】 ・自分について話す ・グループでスキット作成・発表 ・身近な問題についてプレゼンテーション ・パラグラフの構成 SW 【2年】 ・身近な話題から社会問題までディベート(「日本の全てのお店で プラスティックバッグの配布をやめるべき」等) ・卒業論文準備(社会問題に関する thesis 設定) SW 【3年】 ・社会問題をディベート(「大学入学時期を秋にするべき」等) ・卒業論文発表(パワーポイント使用) 異文化 理解 LSRW ・目標:世界の諸問題についての理解と発表 ・題材:環境問題、絶滅危惧種、児童労働、紛争、人権問題、 gender issues 等 時事英語 LSRW ・世界や日本の諸問題に対するバランスの取れた見方 ・メディア活用(英字新聞、テレビニュース、インターネット、ポッ ドキャスト等) 英語理解 RW ・中・長文問題演習  埼玉県立和光国際高等学校は、設立以来、教育目 標に「国際社会でリーダーとして活躍する有能な国 際人の養成」を掲げている。外国語科を中心に、英 語で資料を読み、意見をまとめ発表するなどの「英 語で学ぶ」取り組みを行うとともに、短期留学など で国際社会への興味関心を育てることや、社会人の 講演会を通して教養を身につけさせることなどにも 意欲的に取り組む。同校の取り組みについて、校長 の亀卦川誠也先生、教頭の加藤浩先生、英語科の降 籏康善先生と山崎勝先生に話を伺った。 大学での学びを前提に 高校では国際人としての基礎を築くことをめざす 「英語で学ぶ」教育を実践 多様な言語活動でコミュニケーション能力を育てる (*)記号は L:listening(聞く)、S:speaking(話す)、R:reading(読む)、 W:writing(書く)、の意味で、各科目で重視する技能を示す。

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マの際には、ちょうどアルゼンチンで選挙権年齢を 18 歳から 16 歳に引き下げようとしていましたので、それ に関する英文の新聞記事を全員で読みました。いきなり 英語で議論するのではなく、まず関連する英文を読むと、 そこから単語や表現を見つけて使うことができるので、 話し合ったり書いたりという活動がしやすくなります。 英語独特の表現の感覚が身に付くように、できるだけ原 文が英語の資料を使うようにしています」(降籏先生)  2年生では「異文化理解」の授業がある。環境問題や 人権問題、絶滅危惧種の保護といった世界各国が協力し て取り組むべきことについての英文を読み、話し合いや 発表をする。これらの諸問題に目を向けさせ、将来自分 には何ができるかを考えさせる。  こうした、外国語として「英語を学ぶ」のではなく、 新しい事柄について「英語で学ぶ」授業は同校で伝統的 に行われてきた取り組みだ。教科の知識や文脈からわか らない語彙を補い、実践的・応用的な語学力を身につけ ることを目的としている。「2011 年度から『異文化理解』 の授業に、上智大学と提携して CLIL(注) の指導方法を 導入しました。授業内容は従来から行ってきたこととそ れほど変わりませんが、理論的な裏づけのもと、なるべ く原文が英語の文章を使う、一人で考えるのではなくグ ループで意見交換をして考えを深め、それをグループで まとめて発表し、レポートにまとめるといった流れを、 より体系的に行えるようになりました。現在 CLIL の指 導用のテキストを作成中です」(山崎先生)  3年生の「時事英語」では、英字新聞やテレビ、イン ターネット上の文章や音声、映像などをもとに、日本や 世界の諸問題について考える。音声を含む、より多様な メディアに触れる点と、日本国内の問題にも目配りし、 世界各国の状況と比較しながら考察する点が2年生の 「異文化理解」と異なる点で、「時事英語」の方がより発 展的な内容になっている。  また3年間の授業の集大成として卒業論文の発表があ る。「異文化理解」「時事英語」などでの学びを生かし、 日本や世界の諸問題について生徒が個別にテーマを設定 し、自分の意見を A 4用紙5枚程度にまとめる。意見は パワーポイントで「英語表現」の時間に発表し、英語で 質疑応答をする。資料を調べ、議論を通じて自分なりの 意見を持ち、発信するというすべての過程を英語で行う。  なお、普通科では「異文化理解」と「時事英語」の授 業はないが、「英語表現」の時間に外国語科の指導のノ ウハウを生かしたディベートなどを実施している。  このように生徒が英語を使って活動する場面を多く設 定すること、バラエティ豊かな言語活動で4技能をバラ ンスよく育てることで実践的なコミュニケーション能力 を育てることが、同校の英語教育では意識されている。  英語教育は主に外国語科の事例を取り上げたが、普 通科・外国語科で共通した取り組みもある。同校では各 教室に、Longman の「Penguin Graded Readers」や Oxford の「Bookworms Series」など、さまざまな英文の書籍が 100 冊程度置かれ、自由に読むことができる。「薄い本で すが、年間 100 冊くらい読む生徒もいます。ペンギンの シリーズに表示されている語彙数や各種検定のレベルを 参考に少しずつハイレベルなものに取り組むことで、達 成感を感じているようです。英語の授業の冒頭5分は読 書をさせ、常に手元に1冊持たせています」(降籏先生)  短期留学も普通科・外国語科合同で行う。1年間で毎 年 80 名程度が、オーストラリアを中心にドイツ、フラ ンスの連携校や中国でのホームステイ等による短期留学 を経験する。また海外の大学で実施する 10 日間程度の 高校生向け語学コースへも 2011 年から 30 名程度ずつ派 遣している。さらに毎年数名、1年間の長期留学をする 生徒もいるが、実は長期留学は積極的には推奨していな いという。「将来の目標が既に決まり、語学力も一定程 度あるような生徒ならよいですが、日本語でさまざまな ことを学び、考える力が十分でないうちに留学しても、 中途半端な結果しか得られないおそれがあります。短期 留学にしても留学そのもので力が飛躍的に伸びるわけで はありません。留学などの機会を効果的に配置して、学 習意欲を高めることが主なねらいです」(加藤先生)  さらに、同校では国際人には教養も必須との考えから、 先端知識・技術、実践に触れるための講演会である「和 国アカデミア」を実施している。2012 年度は、世界銀 行上級国別担当官、理化学研究所の宇宙物理学の研究者 らを講師に迎え、普通科・外国語科の希望する生徒を集 めて、5回の講演会を開催した。同校では、こうした取 り組みを通して、語学力だけではなく、国際社会への関 心や知識を得られる環境づくりが行われている。 (注)CLIL…クリル:Content and Language Integrated Learning =内容言語統合型学習。ヨーロッパでさかんな、語学学習と教科学習(文章の内容理解)

を同時に行う学習方法。教科を外国語で学ぶことで、外国語能力向上をめざす。すべての教科を英語母語話者の外国人が英語で教えるイマー ジョン教育と似ているが、CLIL の場合、教員は必ずしも英語母語話者でない点、体系化された教育技法がある点が異なる。

英語での読書や、短期留学など

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「主体性・積極性、チャレンジ精神、

協調性・柔軟性、責任感・使命感」の育成

京都府立嵯峨野高等学校

事例3

 同校が育成したい人材像について小川先生は「国際社 会でリーダーとして活躍できる人材の育成をめざしてい ます。こうした人材育成のための取り組みとして位置づ けられているのが 2012 年度から指定を受けている SSH の取り組みです」と話す。同校の SSH は全校生徒を対 象に行う点が特色だ。一部の生徒が高度な研究にチャレ ンジするだけではなく、全校生徒を対象に、論理的にも のを考え、発信する力を身につける取り組みを行う。  こうした SSH としての取り組みを始めるにあたり、 同校では4つの柱をまとめた。それは「①科学を究める 探究心」「②国際舞台での発信力」「③リーダーシップと 社会貢献の精神」「④高度な言語運用能力の育成」だ。 この4つの柱に沿って、取り組みの内容をみていこう <図表>。  「①科学を究める探究心」については、自然科学系統 の生徒を対象とした「スーパーサイエンスラボ」と「サ イエンスフィールドワーク」を中心に力を育む。  「スーパーサイエンスラボ」は、1年生前期は「基礎 ラボ」として、クラス単位で、理科の探究活動に必要な 実験の基礎的な技術を習得する。林先生は「今年は物理、 化学、生物の各科目で『測定』をテーマに実験をしまし た。例えば生物では、髪の毛の太さなど微小なものの大 きさを測りました。通常の授業では顕微鏡とミクロメー ターを使いますが、基礎ラボでは、写真を撮って拡大し て測定するなど、ほかの手法を生徒に考えさせ、各測定 手法の長所や短所も挙げさせました。柔軟に手法を考え ながら研究を進めるヒントにするためです」と話す。  1 年生の後期には「物理・工学」「化学・材料」「生命・ 生物」「水圏・環境」「数理・解析」の5つの分野(ラボ 群)の中から、自分の興味のあるラボ群を1つ選び、そ こに所属する。最初はラボ群ごとに共通のテーマで実験 をしたり、講義を受ける。1年生の冬頃になると、2~ 5人のグループ(ラボ)に分かれ、協力して研究を進め る。2012 年度からは自然科学をより広く、分野横断的 な視点で研究ができるように、理系の教員だけでなく地 歴科や芸術科さらに家庭科の教員も指導に加わった。  2年生の夏にはラボでの研究の成果を、在校生のほか 保護者や近隣の中学校の教師、SSH 指定校の教員らを 招いて発表する。発表会では 30 グループほどある全て のラボがポスター発表を行う。林先生は「ポスター発表 では、目の前の見学者から、鋭い質問や厳しい意見が出 ます。それに即時に責任を持って対応することが求めら 小川 雅史副校長 河村 早苗先生 玉村 岳先生 林 博之先生  京都府立嵯峨野高等学校は「国際社会でリーダー として活躍できる人材」の育成を全校の教育目標とし ている。こうした人材育成のために行われている取り 組みのひとつが 2012 年度から指定を受けたスーパー サイエンスハイスクール(SSH)の取り組みだ。な かでも「京都こすもす科」(注1)で行われている、グルー プ(ラボ)での研究活動は、課題追究への積極的なチャ レンジや、責任感を持っての発表を行うなかで、グルー プの一員として動く協調性、科学者としての倫理観も 養い、グローバル人材の要素のひとつである「主体性・ 積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・ 使命感」といった資質の育成にもつながっている。  このほか同校の SSH では「国際社会でリーダーと して活躍できる人材」の基礎的な素養として、論理的 に考え、伝える力を鍛える取り組みを行っている。そ れらの取り組みには京都こすもす科の生徒だけではな く、全校生徒が対象のものもある。  これらの取り組みについて、副校長の小川雅史先 生、教育推進部長・京都こすもす科長の河村早苗先生、 進路指導部長の玉村岳先生、研究開発部長の林博之 先生に話を伺った。 国際社会でリーダーとして活躍できる人材を育てる SSH の取り組みの4つの柱 グループ(ラボ)での研究で挑戦する意欲を育てる 「スーパーサイエンスラボ」と「アカデミックラボ」 (注1)同校は、第Ⅰ類(文理科系)、第Ⅱ類(人文系、理数系)の2つの類型がある普通科と、人文社会系統、国際文化系統、自然科学系統の3つの系

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れる緊張感が、生徒にはよい勉強になるた め、ポスター発表を全てのラボに行わせて います」と意義を語る。発表の後には個別 に報告書を作成し、3年生になるとラボで なく個人で研究を行う。  平行して「サイエンスフィールドワーク」 も行う。大学・企業の研究所や施設を訪問 し、最先端の科学技術について実験・実習 や見学を行うものだ。第一線の研究者の話 を聞くことで、分野への興味関心が育つだ けでなく、データの扱い方や、科学の役割などについて の話から、倫理的な感性を養うことにもつながっている。  なお、SSH としての活動ではないが、ラボでの研究 活動は、「アカデミックラボ」として人文社会系統と国 際文化系統でも行っている。「国語国文学」「文化学」「歴 史学」「法学」「経済学」「英語学Ⅰ(統語論)」「英語学 Ⅱ(音韻論)」「英米文学」「異文化研究」「国際社会」の 10 分野に分かれ、スーパーサイエンスラボと同様に少 人数での研究活動と発表を行う。狂言を舞台で発表する ことを通して日本文化への理解を深めたり、模擬裁判を 行うなど、アカデミックラボでは実験に代わり、ワーク ショップやフィールドワークなどの体験を通じて学びを 深めることを重視する。  ラボで身につく力について玉村先生は「研究から発表 までの過程で、生徒は学ぶ意欲や科学的なものの考え方、 精神面など幅広い面で成長します。ラボで身につく力は 大学受験に必要な力とは別だと誤解されがちですが、そ うは考えていません。特にグローバル人材の要素にも含 まれる、チャレンジ精神や、そのもとになる探究心を育 てることは、研究にも大学受験にも共通する重要なこと だと考えています」と語る。  こうしたラボでの研究活動に加え、SSH では論理的 に考え、伝える力を伸ばす取り組みも行っている。  「②国際舞台での発信力」としては、希望者がシンガ ポールの高校と訪問し合い、共同研究などの交流を行う 予定であり、「③リーダーシップと社会貢献の精神」と しては、自然科学系統とサイエンス部の生徒が小中学生 向けに科学の面白さを伝えるワークショップを運営する などしている。  「④高度な言語運用能力の育成」としては、3つの取 り組みが行われている。1点目は自然科学系統の1、2 年生対象の「サイエンス英語」で、科学分野の英語を学 ぶ。「現在は英語科の教員が、中学生でも十分に理解で きる実験を英語で行っています。今後は簡単な英語の科 学論文を読んだり、研究結果の論文のサマリーを英語で 書いたりできるようにしたいと考えています」(林先生)  2点目は全校生徒が1年次に履修する「ロジカルサイ エンス」だ。「この科目は論理的思考力の育成が目的です。 授業では独自教材を用いて、文章を構成する論理要素へ の意識を高めたり、小論文に挑戦させたりします。また 議論の背後に存在する価値判断や先入観を自覚し、そこ から脱して客観的・論理的判断をするクリティカルな思 考を身につけることも試みています」(河村先生)  3点目は京都こすもす科の国際文化系統と普通科第Ⅱ 類人文系国際文化コースの2年生が対象の「グローバル サイエンス」だ。エネルギー政策など科学的な事柄に関 係する社会問題について書かれた英語の記事を読み、科 学と社会の関わりを学ぶ。文系の生徒の科学的リテラ シーを高めることを目的としている。  文系の生徒に科学的なトピックを学ばせたり、理系の 生徒に文章構成の仕方を教えるのは、グローバル化し、 複雑化した問題の解決が求められる現代においては、文 系、理系の限られた専門分野だけではなく、さまざまな 事象を総合的に考え、整理して伝える力が必要との考え による。2014 年度からは、自然科学、人文・社会科学 の基礎を幅広く学べるよう、一部の学科体制の変更も行 う(注2) 。「文系の素養を持った理系人材」「理系の素養を 持った文系人材」といった幅広い能力を持って、高度な 問題解決に寄与できる人材の育成に取り組む予定だ。 <図表> SSH の4つの柱と、取り組みの内容 (注2)現在、京都こすもす科は人文社会系統・国際文化系統・自然科学系統の3つの系統から構成されているが、改編後は人間科学系統と自然科学系統 の2系統編成となり、また学びの形も自然科学系統専修コース・共修コースに分かれる。共修コースでは1年次は自然科学、人文・社会科学の基 礎を幅広く学んだ後、2年進級時から人間科学系統と自然科学系統に分かれる。 国際社会で活躍するための素養として、 全校で論理的思考力などを伸ばす取り組みも実施 4つの柱 取り組みの内容 ①科学を究める探究心 ・スーパーサイエンスラボ(グループごとの研究活動) ・サイエンスフィールドワーク(大学や企業の研究室訪問) ・サイエンスレクチャーシリーズ(研究者の講演会) ②国際舞台での発信力 ・シンガポールのトップ校とのワークショップや共同研究 ・海外での学会や研究会への参加 ③リーダーシップと社会貢献 の精神 ・小中学生向けの科学ワークショップの開催 ・京都府北部地域の高校と協同学習 ④高度な言語運用能力の育成 ・サイエンス英語(科学分野の英語を学ぶ) ・ロジカルサイエンス (論理的思考力育成のため、文章構成の仕方を学ぶ) ・グローバルサイエンス (科学的リテラシーを高めるため、科学的な要素を含む社会問 題の記事を英文で読む) (高校パンフレットより編集部で作成)

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「異文化に対する理解と

日本人としてのアイデンティティー」の育成

愛知県立刈谷北高等学校

事例4

 同校には 2008 年に国際理解コースが設置され、これ を契機に国際理解教育に力を入れ始めた。国際理解部主 任の伊藤先生は国際理解教育の目的について「国際交流 の精神や行動の基礎をつくることが目標です。海外で働 く、地域に残るなどの進路にかかわらず、地球市民の一 員としていろいろな国の人とつながっているという意識 を持ち、互いに理解し合い、協力して物事に取り組むこ とができる人材を育てたいと考えています」と話す。   こうした人材育成のための取り組みのひとつがコース 設置初年度から行っている韓国研修だ。研修は4泊5日 で夏休みに行い、国際理解コースの1、2年生と、国際 理解コース以外の希望者が参加する。日本語が使えない 環境を体感させること、異文化に触れることを主な目的 としている。韓国研修には全体で行う研修と、班別に行 う研修がある。全体研修としては、2011 年度から行って いる、韓国の高校との交流などがある。互いの国の伝統 文化を紹介したり、英語での会話を楽しむ。班別研修は 少人数の班に分かれて行う。班ごとに韓国人の英語ガイ ドがつき、英語で地下鉄の乗り方を聞いたり、韓国の文 化について質問したりしながらソウル市内を巡る。  これらの研修中の、現地高校生やガイドとの会話から 「正座をするのは韓国では罰せられるときなので食事の ときには正座をしてはいけない」など、似ているようで 違う日韓両国の文化の違いを知る。また、研修期間中は 毎晩、各班が体験したことを模造紙にまとめ、発表し合っ て共有する。帰国後は研修中に見つけた異文化について、 生徒が各自で文化的な背景などを調べて発表し合い、異 文化への関心や理解を深めている。  刈谷市の姉妹都市であるカナダのミササガ市にある姉 妹校、スティーブン・ルイス校との交流も行っている。  刈谷市・ミササガ市の仲介で 2011 年から、手紙のや りとりなどの学校交流が始まった。2012 年9月には、 刈谷市が主催する「国際化・多文化共生推進計画重点協 働プロジェクト」の一環として、国際理解教育センター (NIED)から講師を招き、「私とカナダと世界をつなぎ 持続可能な未来を拓く」ワークショップを3回にわたっ て実施した。目的は、今後 10 年間で行いたい姉妹校交 流の具体的な内容を考えることと、その過程で地球市民 としての意識を育むことだ。ワークショップには国際理 解コースの2年生が参加した。  第1回は日本とカナダの違いから世界の多様性・共通 性について考えたり、環境問題など世界的に取り組むべ き課題について学んだ。第2回はスティーブン・ルイス 校について知りたいこと、刈谷北高校について知ってほ 浦部 紗矢先生 伊藤 卓紀先生 久原 巳季先生  愛知県立刈谷北高等学校は、普通科(定員 360 名) 内に国際理解コース(40 名)を設置し、同コースを 中心にした国際理解教育に力を入れている。  同校では韓国への研修旅行や、カナダのミササガ 市にある姉妹校、スティーブン・ルイス校との交流を 行っている。これらは同世代の外国人生徒との交流 が中心だが、このほかにも多文化共生の街づくりのた めの地域イベントに参加するなど、実際に外国人と交 流する機会を多く設定することで、異なる文化的背景 を持つ人々と協力して物事に取り組めるような人材育 成に取り組んでいる。さらに国際理解講座で国際的な 機関で働くということや、日本文化についての理解を 深めたり、国際理解教育を意識した各教科での取り 組みも行い、国際人としての内面の充実も図る。  こうした同校の国際理解教育について、国際理解 部主任の伊藤卓紀先生、国際理解コース担任の浦部 紗矢先生、久原巳季先生に話を伺った。 韓国への研修旅行で 異文化への関心・理解を深める カナダの姉妹校との交流を開始 生徒主体で、長期・短期の交流ビジョンをまとめる

参照

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