• 検索結果がありません。

45 北海道科学大学研究紀要第 40 号 ( 平成 28 年 ) Bulletin of Hokkaido University of Science, No.40(2016) 建築物における構造部材の着雪 落雪に関する研究 Study on snow accretion and its falli

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "45 北海道科学大学研究紀要第 40 号 ( 平成 28 年 ) Bulletin of Hokkaido University of Science, No.40(2016) 建築物における構造部材の着雪 落雪に関する研究 Study on snow accretion and its falli"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

建築物における構造部材の着雪・落雪に関する研究

Study on snow accretion and its falling with structural members on buildings

佐藤 雄輝

千葉 隆弘

**

苫米地 司

***

大塚 清敏

田畑 侑一

Yuki Sato, Takahiro Chiba, Tsukasa Tomabechi,

Kiyotoshi Otsuka, Yuichi Tabata,

Abstract

In this study, we conducted field observation and experiment using small model wall for snow accretion on buildings. The field observation was conducted in 2 types of member’s section which shape is square and circular. The depth of snow accretion was measured by photogrammetry using digital images. At the same time, water content of snow was observed. As the results, depth of snow accretion in each type depended on the water content and snowfall amount. For high speed of wind, the depth on the small member was small compared to the large member. This means that the depth decreased with collision speed of snow particles increase. In addition, the accretion shape on square member depended on wind direction.

The snow falling experiment was conducted using small model wall a freeze snow. The water content between snow and the model surface was set 10 to 60%. The temperature behind the model was measured using Infrared camera. As the results, the falling condition was affected by distribution reached above 0℃. The ratio of its distribution increased with the water content increase. This means that the area adhered water increased with the water content increase. As stated above, it was found that both of snow accretion and its falling are affected by the water content.

1. はじめに 近年,建築物の高層化やデザインの多様化に伴い, 建築物における構造部材への着雪は,以前から関東 地方でも見受けられている。構造部材が屋外へ露出 した塔状の建築物の場合,構造部材一つ一つに着雪 が発生し,それが落雪することによって人的・物的 被害が発生している。このようなことから,関東地 方においても雪に対する備えの重要性が指摘された とともに,高層建築物への着雪対策が必要不可欠で あるといえる。建築物への着雪対策は,電気ヒータ ーやネットを用いて着雪量を制御する方法や,落雪 が発生する場合は巡回警備を行い周囲へ注意を呼び 掛けなどが挙げられる。しかし,これらの対策では 不十分であり,人的被害は防げても,建物への被害 は防ぐのが難しいのが現状である。そのため,構造 部材の着雪箇所および着雪量の推定や,着雪の落下 条件の検討などの,着雪対策の基礎的研究を行う必 要がある。 着雪対策に関する既往の研究をみると,道路標識 の着雪対策を対象とし,その傾斜角度で着雪量を制 御する研究や(1),着雪面の粗面粗さおよび撥水性・ 親水性(2)など,材料の表面性状と着雪状況との関係 についての研究が進められている。しかし,着雪時 の雪質やその発達メカニズムなどの基本特性に関す る研究は少ないのが現状である。このようなことか ら筆者らは,単純形状をした構造部材を対象に吹雪 風洞施設を用いた着雪実験を行った(3)。その結果, 雪粒子の部材への衝突率および着雪率は,雪粒子の 衝突速度および角度に依存すること,さらには,湿 った雪ほど着雪量が増加することを明らかにした。 一方,構造部材を対象とした屋外観測については, 事例が少なく,苫米地ら(4)が行った研究のみである。 従って,筆者らの着雪実験で得られた結果は,屋外 観測のデータに基づいて検証する必要がある。一方, *北海道科学大学大学院建築工学専攻 大学院生 **北海道科学大学工学部建築学科

(2)

落雪に関する既往の研究をみると,勾配屋根からの 落雪,すなわち,傾斜面を対象とした研究が中心で あり(5) (6),垂直面にある着雪の落下を対象とした研 究は,十分に行われていない。 このようなことから本研究では,構造部材におけ る着雪とその落下に関する基本性状を把握すること を目的に,先ず,単純形状をした構造部材を対象と した屋外観測を行った。次に,垂直面の着雪を対象 とした落雪実験を行った。 2. 屋外観測 2.1 観測方法 本研究で対象とした構造部材を表 1 に示す。表の ように,観測の対象とした構造部材は,北海道札幌 市手稲区の北海道科学大学構内にある円柱(鋼材), 円柱(RC),および角柱(鋼材)の 3 種類である。 これらの構造部材は,その周辺に他の建物が存在す るものの,冬期の主風向となる西北西から北北西に かけて 30m 以上開けた場所にある。各構造物の表面 仕上げは,円柱(鋼材)が塗装仕上げ,円柱(RC) はコンクリート素地,角柱(鋼材)は溶融亜鉛メッ キである。観測期間は,2014 年 12 月~2015 年 2 月の間に行い,日射による影響を少なくするため降 雪が開始した時間から翌日の 7:00~8:00 の間に 行った。本観測では,各構造部材の着雪状況を写真 撮影するとともに,Autodesk 製の 123D Catch を用 いて着雪表面の 3D メッシュをモデル化し,そのメ ッシュから着雪深さを測定した。また,着雪時の含 水率を河島ら(7)の熱量式による方法にもとづいて測 定した。観測期間中の気象特性は,最寄りの気象観 測点である山口アメダスの観測データを用いて分析 した。なお,山口アメダスでは積雪の観測を行って いないため,降水量のデータを用いて降雪状況を判 断した。 2.2 観測結果 2.2.1 着雪状況の観測結果 本研究では 18 回の観測を実施し,そのうち 9 回 は 3 種類の構造部材いずれかが着雪したのを確認し た。図 1 に,着雪の有無ごとに観測時の平均風速と 平均気温の関係を示す。なお,図中の平均気温およ び平均風速は,その日の降雪が始まった時間から観 測を行った時間までの平均値とした。図のように, 観測時における平均気温の上昇にともない平均風速 が増加する関係を示し,平均気温が 0℃以上で着雪 が発生しやすい傾向を示している。 図 2 に,平均気温と含水率との関係を示す。図の ように,平均気温の上昇にともない含水率が増加す る関係を示している。このことから,平均気温と含 水率は比例関係にあり,平均気温が高いほど湿った 雪が降ることが予想できる。 図 1 観測時の風速と気温の関係 図 3 平均風速と降水量の関係 図 2 平均気温と含水率の関係 表 1 観測の対象とした構造部材 角柱(鋼材) 円柱(鋼材) Φ=138.8mm Φ=257mm 200mm 200mm 円柱(RC) -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 0 2 4 6 8 10 12 14 平 均 気温 (℃ ) 平均風速(m/s) 着雪あり 着雪なし 0 5 10 15 20 25 30 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 含水率 平均気温(℃) 着雪あり 着雪なし 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 2 4 6 8 10 12 14 降水量 (m m ) 平均風速(m/s) 着雪あり 着雪なし 12月13日

(3)

図 3 に平均風速と降水量との関係を示す。図中の 降水量は,その日の降雪が始まった時間から観測を 行った時間までの合計値とした。なお,2014 年 12 月 13 日の降水量が 0mm となっているものの,積雪 の観測を行っている札幌管区気象台では 3cm の降 雪量を記録していた。このことから,この日におい ては山口アメダスにおいても同様の降雪があったと した。図のように,両者に明瞭な相関関係が見られ ないものの,降水量が 10mm 以上になると風速が 2m/s と小さい場合においても着雪が発生しやすく なる傾向にある。以上の結果をみると,含水率が大 きいほど着雪しやすく,気温に加えて降水量の影響 も大きいことがわかる。 2.2.2 着雪深さと気象特性の関係 図 4 に,123D Catch を用いてモデル化された 3D メッシュの各構造部材の着雪断面形状を示す。なお, 図中の Y 軸は冬期間の主風向である北西―南東軸と した。また,各着雪断面に着雪日を示すとともに, 円柱部材の場合はその日の平均風速を,角柱部材の 場合はその日の降雪が発生した時の最多風向を括弧 書示した。図のように,円柱(鋼材)をみると,い ずれの着雪日においても丸みを帯びた三角形の断面 形状を成しているものの,その着雪深さは観測日ご とに異なっている。円柱(RC)の場合をみると,着 雪の断面形状は円柱(鋼材)に比べて大きいため, 着雪深さが小さい傾向を示す。着雪対象物が小さい 場合,着雪形状は丸みを帯びた三角形を成している が,これに対し,着雪対象物が大きい場合,着雪形 状は着雪表面に広がるような形状を成している。こ れは,着雪の初期段階においては着雪幅から発達し, その後着雪深さが増加するため,部材幅が小さい円 柱(鋼材)の場合,円柱(RC)に比べ着雪幅が先に 発達し,着雪深さが増加したと思われる。また,同 じ形状の円柱部材でも着雪日にそれぞれ違いがみら れる。例えば,円柱(鋼材)の着雪が観測された日 の風速をみると,5.0m/s を下回る日が多く,着雪が 確認された 6 日分の着雪日の平均風速は 3.6m/s と なっている。これに対し,円柱(RC)の場合は,風 速が 6.0m/s を上回る日が多く,6 日分の着雪日の平 均風速は 6.5m/s と,円柱(鋼材)よりも大きい値と なった。これは,着雪対象物が小さい場合,強風の 伴った降雪が発生すると,雪粒子が着雪面に衝突す る際の速度が大きくなり,着雪面で雪粒子が弾かれ るまたは砕かれるため,着雪日の平均風速が小さい 日において着雪が観測されたと推測される。これに 対し,着雪対象物が大きい場合,着雪面近傍の淀み 領域が大きくなり,雪粒子が着雪面に到達するには それなりの速度が必要であるため,降雪にともない 平均風速が大きい日に着雪が観測された。一方,角 柱(鋼材)の場合をみると,着雪深さは風向に影響 図 4 各構造物の着雪断面形状 角柱(鋼材) 円柱(鋼材):各着雪日の平均風速:3.6m/s 円柱(RC):各着雪日の平均風速 6.5m/s -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 -200 -100 0 100 200 y (m m ) x(mm) 12/24(2.47m/s) 1/23(6.50m/s) 12/13 (2.93m/s) 12/15 (2.02m/s) 12/9(3.60m/s) 12/22 (4.10m/s) 日付(風速) -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 -200 -100 0 100 200 y (m m ) x(mm) 日付(風速) 1/8(8.52m/s) 1/23(6.50m/s) 1/7(12.13m/s) 12/15 (2.02m/s) 12/9 (3.60m/s) 12/16(6.25m/s) -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 -200 -100 0 100 200 Y (m m ) x(mm) 1/8(北西) 1/23 (西北西) 1/7(北西) 12/24 (北西) 12/9 (西北西) 日付(風向)

(4)

され,着雪面に対して斜め方向からの風向であった と思われる。そのため,着雪日ごとに着雪断面の頂 点部の方向が異なっており,着雪量にも違いがみら れる。これらのことから,同じ部材形状でも大きさ が異なる場合,着雪日は風速の影響を受けることが わかる。また,角柱などの着雪面が平らな場合,風 向により着雪形状や着雪深さに影響がみられる。 図 5 に,着雪日の気象条件と着雪深さとの関係を 示す。なお,着雪深さは,着雪形状の頂点から部材 着雪面までの最大値とした。また,着雪が観測され た日の中で着雪が観測されなかった構造部材の着雪 深さを 0mm として図に表記している。含水率と着 雪深さの関係をみると,角柱(鋼材)の 1 月 23 日 を除けば,いずれの構造部材においても,概ね含水 率の増加にともない着雪深さが増加する関係にある。 また,降水量と着雪深さとの関係をみると,円柱(鋼 材)および円柱(RC)の場合は,降水量の増加にと もない着雪深さが増加する傾向にある。これに対し, 角材(鋼材)の場合をみると,明瞭な相関関係がみ られない。これは,着雪深さが風向に依存している ためであると考えられる。しかし,角柱の 1 月 23 日の降水量は,他の角柱が着雪した日と比べ降水量 は 2.50mm であり少ないのが分かる。このことから, 角柱の着雪深さは,風向による影響の他に降水量に よる影響も考えられる。次に,平均風速と着雪深さ の関係をみると,円柱(鋼材)の場合,平均風速の 上昇とともに着雪深さが減少する傾向にある。また, 平均風速が 6m/s 以上では着雪が発生していないの が確認できる。さらに,円柱(RC)の場合をみると, 平均風速と着雪量に明瞭な関係がみられないが,平 均風速が 6m/s を上回った場合は,着雪深さが 0mm の日が確認されていないのがわかる。角柱(鋼材) においては,降水量の少ない 1 月 23 日のデータを 除いた場合,概ね平均風速が上昇するにともない着 雪深さが増加する傾向にある。以上の結果から,角 柱(鋼材)では風向の影響が大きいと考えられ,円 柱部材においては,含水率および降水量が着雪量に 及ぼす影響が大きい傾向にある。すなわち,気温が 高く湿った雪であればあるほど,さらには,飛雪の 空間濃度が高く,まとまった降雪ほど着雪量が増加 すると言える。 3 落雪実験 3.1 実験方法 落雪実験は,北海道札幌市手稲区にある北海道科 学大学が所有する低温実験室および,山形県新庄市 にある防災科学技術研究所雪氷防災研究センターが 所有する低温実験室を用いて実施した。試験体およ び着雪方法の概要を図 6 に,実験シリーズの概要を 表 2 に示す。図のように,試験体には,300×300mm のアクリル板を用い,その着雪面は,やや撥水性が 高くなるように塗装した。このような試験体に大き さ 150×150mm,深さ 30mm の自然雪(新庄市で行 った実験では人工雪)を凍結付着させた。着雪方法 は,先ず,試験体と雪の界面(厚さ 3mm 程度)に 10~60%の範囲で含水率を変化させた凍着部を設 け,その上に含水率 0%の雪をふるいで載せて試験 体に着雪させた。なお,着雪させる際の実験室温度 は-5℃とし,その温度条件で 12 時間以上放置して十 図 5 各気象条件と着雪深さの関係 円柱(鋼材) 円柱(RC) 角柱(鋼材) 0 10 20 30 40 50 60 0 10 20 30 着 雪 深 さ (m m ) 含水率 1月23日 0 10 20 30 40 50 60 0 10 20 30 40 着 雪 深 さ (m m ) 降水量(mm) 1月23日 0 10 20 30 40 50 60 0 5 10 15 着 雪 深さ (m m ) 平均風速(m/s) 1月23日

(5)

分に凍結付着させた。写真 1 に,カメラ位置および 実験状況を示す。図のように,試験体を 5℃の実験 室で垂直に固定し,落雪状況をデジタルカメラおよ びサーモカメラを用いて観察した。デジタルカメラ は,試験体の真横に設置し,着雪が落下するまでの 様子を撮影した。サーモカメラは 2 台用い,着雪表 面および試験体裏側のそれぞれの温度分布を 20 秒 インターバルで連続的に撮影した。 3.2 実験結果 3.2.1 含水率と落雪時間 図 7 に,含水率と落雪時間との関係を示す。なお, 落雪時間は,試験体を垂直に固定してから着雪が完 全に落下するまでの時間とした。落雪実験は,含水 率 10%が 1 回,20%が 6 回,30%が 1 回,40%が 6 回,60%が 3 回,合計 19 回を行った。図のように, 含水率と落雪時間との関係をみると,含水率の増加 にともない落雪時間が増加する傾向がある。含水率 20%の落雪時間は 400~650sec であり,これに対し, 含水率 60%の落雪時間は 1100~1600sec となり, 両者の差は明瞭である。雪の凍結付着は,着雪界面 の水分が凍ったものであり,含水率が大きい雪ほど 着雪界面での付着面積が増加したため,落雪時間が 増加したものと考えられる。 3.2.2 含水率ごとの界面温度の推移 サーモカメラを用いて撮影した試験体裏側の熱画 像を時間履歴で表すと図 8 になる。図のように,試 験体および着雪は,時間の経過に伴い周辺部から温 度が上昇しているのがわかる。着雪範囲における中 心部の温度に着目すると,160 秒で-1.0℃まで急上 昇し,340 秒で 0℃近傍まで上昇した。その後,温 度の上昇は緩やかになり 500 秒の 0.4℃で落雪に至 った。340 秒~500 秒の間は試験体と着雪界面の雪 が融雪しているため,0℃近傍で温度の上昇が緩や かになったと思われる。 図 9 に,熱画像を用いて整理した着雪範囲内にお ける温度分布の時系列を示す。含水率 10%の場合を みると,実験開始から 270 秒後に落雪し,そのとき の温度分布をみると,全体の 2 割が 0℃以上の状態 であった。含水率 20%の場合をみると,全体の 8~ 10 割が 0℃以上になった際に落雪した。これに対し, 含水率 40%および 60%の場合をみると,全体が 0℃ 以上に到達しても落雪に至っておらず,しばらくそ の状態を維持したまま 1℃以上で分布し始めた際に 落雪が発生する傾向にある。以上の結果をみると, 着雪の落下条件は,着雪界面の 0℃以上の温度分布 に影響を受け,含水率が低い雪が着雪した場合,着 雪界面の付着面積が小さくなり,その分着雪界面の 落雪にいたるまでの融雪量も少なくなるため,0℃ の温度分布が少ない場合でも落雪にいたると思われ る。これに対し,含水率が高い雪が着雪した場合, 付着面積が大きいためその分 0℃以上の温度分布も 3 0 mm 3 mm ふるいによる積雪 凍着部 (含水率 10~60% ) アクリル板 +やや撥水性のある塗料 3 0 0 mm 1 5 0 mm 150mm 300mm サーモカメラ (試験体裏側) デジタルカメラ (動画撮影) 試験体 着雪 表 2 実験シリーズの概要 図 6 試験体および着雪方法の概要 写真 1 カメラ位置および実験状況 図 7 含水率と落雪時間の関係 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 0 10 20 30 40 50 60 70 落雪時間 (s e c ) 含水率 含水率 (%) 実験回数 (回) 着雪深さ (mm) 凍着時間 凍着温度 (℃) 室温(℃) 10 1 20 6 30 1 40 13 60 3 30 12h以上 -5 5

(6)

多くなる傾向にある。 5. まとめ 本研究では,構造部材における着雪とその落下に 関する基本性状を把握することを目的に,屋外観測 および,落雪実験を行った。 その結果,屋外観測の場合,含水率が大きいほど 着雪が発生しやすく,また,同じ部材形状でも大き さが異なる場合,着雪の有無は風速が影響する傾向 にある。着雪量は,部材形状により影響する気象条 件に違いがみられ,円柱部材においては,含水率お よび降水量が大きく影響を及ぼす。角柱部材などの 着雪面が平らな場合,風向に依存する傾向にあるこ とが明らかになった。これらの結果は,建築部材へ の着雪箇所や着雪量を推定するための重要な知見に なると考えられる。 着雪界面の含水率を変化させた落雪実験では,含 水率が高いほど,落雪に至るまでの時間が増加する ともに,着雪界面が 0℃以上で分布する割合が落雪 に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。すなわ ち,気温が 0℃以上になったことに加えて,0℃以上 の継続時間を考慮して着雪の落下条件を捉える必要 があることが分かった。今後は,材料の表面性状, 特に,接触角と凍結付着面積との関係を検討し,表 面性状ごとの落雪条件を検討する必要がある。 【参考文献】 (1) 竹内政夫,”道路標識への着雪とその防止”,”雪氷”, 40 巻,3 号,1978,pp.15-25 (2) 吉田光則,金野克美,山岡勝,近藤考,浅井規夫, 佐竹正治,藤野和夫,堀口薫,水野悠紀子,”着 雪氷防止技術に関する研究(1)-各種材料の着氷力 について-”,”北海道の雪氷”,第 12 号,1993, pp.24-26 (3) 田畑侑一,大塚清敏,千葉隆弘,佐藤研吾,佐藤 雄輝,苫米地司,”異なる雪質に対する単純形状 部材への着雪実験”,”日本建築学会大会学術講演 会梗概集”,2015,pp.103-104 (4) 苫米地司,千葉隆弘,佐藤威,堤拓哉,高橋徹, 伊東敏幸”構造部材への着雪性状に関する基礎的 研究-屋外観測と風洞実験による部材形状と着雪 性状との関係について”,”日本建築学会構造系論 文集”,第 76 巻,第 659 号,2011,pp.45-52 (5) 苫米地司,高倉政寛,伊東敏幸,”屋根葺材の表 面粗さが滑雪現象に及ぼす影響”,”日本雪工学会 誌”,Vol.12,No.3,1996,pp.205-211 (6) 西村清志,苫米地司,伊藤敏幸,千葉隆弘,高倉 政寛,”多雪地域における屋根雪障害の実態とそ の対策手法について”,”日本建築学会北海道支部 研究報告集”,No.82,2009,pp.365-368 (7) 河島克久,遠藤徹,竹内由香里,”熱量式による 簡易積雪含水率計の試作”,”防災科学技術研究所 研究報告”,第 57 号,1996,pp.71-75 図 8 熱画像の時間推移 図 9 着雪範囲内における温度分布の時系列 1180s 含水率 60% 0℃以上 -1℃以上 -2℃以上 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 900 1200 各温度 分布の 割合 時間(s) 270s 含水率 10% 落雪 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 900 1200 各温度 分布の 割合 時間(s) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 9001200 各温度の面積割合 時間(s) 1 ℃以上 0 ℃以上 -1 ℃以上 -2 ℃以上 575s 含水率 40% 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 900 1200 各温度分布 の割合 時間(s) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 9001200 各温度の面積割合 時間(s) 1 ℃以上 0 ℃以上 -1 ℃以上 -2 ℃以上 565s 含水率 40% 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 900 1200 各温度 分布の 割合 時間(s) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 9001200 各温度の面積割合 時間(s) 1 ℃以上 0 ℃以上 -1 ℃以上 -2 ℃以上 385s 含水率 20% 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 900 1200 各温度 分布の 割合 時間(s) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 9001200 各温度の面積割合 時間(s) 1 ℃以上 0 ℃以上 -1 ℃以上 -2 ℃以上 含水率 20% 430s 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 900 1200 各温度 分布の 割合 時間(s) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 300 600 9001200 各温度の面積割合 時間(s) 1 ℃以上 0 ℃以上 -1 ℃以上 -2 ℃以上 着雪範囲 試験体範囲 0秒 160秒 着雪範囲 試験体範囲 340秒 着雪範囲 試験体範囲 500秒(落雪) 着雪範囲 試験体範囲

図 3 に平均風速と降水量との関係を示す。図中の 降水量は,その日の降雪が始まった時間から観測を 行った時間までの合計値とした。なお,2014 年 12 月 13 日の降水量が 0mm となっているものの,積雪 の観測を行っている札幌管区気象台では 3cm の降 雪量を記録していた。このことから,この日におい ては山口アメダスにおいても同様の降雪があったと した。図のように,両者に明瞭な相関関係が見られ ないものの,降水量が 10mm 以上になると風速が 2m/s と小さい場合においても着雪が発生しやすく

参照

関連したドキュメント

 21世紀に推進すべき重要な研究教育を行う横断的組織「フ

雑誌名 金沢大学日本史学研究室紀要: Bulletin of the Department of Japanese History Faculty of Letters Kanazawa University.

熱力学計算によれば、この地下水中において安定なのは FeSe 2 (cr)で、Se 濃度はこの固相の 溶解度である 10 -9 ~10 -8 mol dm

Furthermore, the upper semicontinuity of the global attractor for a singularly perturbed phase-field model is proved in [12] (see also [11] for a logarithmic nonlinearity) for two

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7