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条件を定めることで論理的思考を深める

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Academic year: 2021

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条件を定めることで論理的思考を深める

萩 野 友 紀(東星学園小学校教諭)

要 旨

小学校における理科では、論理的思考を深めることは重要な目的の一つである。ただ、「なぜだろ う、どうしてなんだろう」という問いかけをするだけでは、論理的思考を深めることは困難であると 感じている。論理的思考を深める為には、なんらかの仕掛けが必要と考えていた。 仕掛けの一つの方法として、「条件を設定して、使用できる道具・材料を限定することで、その枠の 中で工夫させる」ことにより、自然に論理的思考を深められるのではないかと予測し、実践してみ た。条件の中で最適解を模索させることにより、児童の思考が発散せずに、目標に向かっての模索を 始められる。その際に、やってみたいという意欲を高められ、達成感が得られるような目標でないと 思考を深める動機付けにはならない。

キーワード

小学校、理科教育、6年生、ものの燃え方、土地のつくりと変化、動機付け、論理的思考力、協働

1.はじめに

本校では、2017 年度より研究研修テーマとし て『45 分間わくわくして取り組める授業』を掲 げ、特に 2018 年度は、「授業を貫く導入の工 夫」を研究していた。 その研究に沿うテーマとして、6 年生の「もの の燃え方」と「土地のつくりと変化」という2 つの単元に着目し、実践してみた。

2.著作権などの権利について

「ものの燃え方」に関しては、著作物は参考 にしていない。 「土地のつくりと変化」に関しては、「沈降実 験」という以前から知られている実験を土台に している。この実験の発祥に関しては、はっき りしていないが、以下の論文ではないかと思わ れる。 RONALD.J.GIBBS,MARTIN D.MATTHEWS,AND DAVID A.LINK;1971;THE RELATIONSHIP BETWEEN SPHERE SIZE AND SETTING VELOCITY; Journal of Sedimentary Research (1971) 41 (1): 7–18.

3.教材化の目的

前述の、「条件を設定して、使用できる道具・ 材料を限定することで、その枠の中で工夫させ る」ことにより、自然に論理的思考を深められ るのではないかということに、以下の2つの単 元が最適であると考えた。

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- 6 – ① ものの燃えかた 6 年 燃焼実験 ② 土地のつくりと変化 6 年 沈降・堆積 実験 この 2 つの単元であれば、適切に条件設定を し、その枠の中で自由に考え、論理的思考を深 められると考えた。 3.1 ものの燃えかた 6 年 燃焼実験 ものが燃える際には、常に新しい空気が必要 だということを実感する実験。 図 1 条件の板書 演示で、集気びんを逆さまにし、油粘土の台 座の上で燃えているろうそくにかぶせる。する と、ほぼ 13 秒でろうそくは消える。 図 2 演示実験 そこを出発点にして、それよりいかに長く、 ろうそくを燃やし続けることができるかを班ご とに競わせた。 演示で、集気びんを逆さまにしていることが 論理的思考を深めるためのミスリードで、集気 びんの開いている口を上にするか、横にするこ とで正解に達することができる。 教科書を予習している児童、塾などですでに 習った児童は、粘土で隙間を空けて底の方から 空気を取り入れようとする。 図 3 下に空気の取り入れ口を設ける 図 4 空気の取り入れ口のバリエーション 隙間を空けるにしても、様々な形状を工夫す るものだなあと、児童の発想の豊かさに改めて 気づく。 図 5 4 点で支える 図 6 両側を開ける ・目標:長い時間ろうそくを燃やそう! ・条件:ろうそくの全体が集気びんの中に 入っていること。 ・使える道具・材料: 集気びん(底付き)、ろうそく、油ねんど、 板(不燃性)、マッチ、燃え差し入れ、 水、ぞうきん

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- 7 - これらの方法で、21 秒から 45 秒燃え続けると いう結果が得られた。 ここで、目標の具体的数値を示し、「1 分以上 を目指しましょう」と告知すると、とたんに困 惑する。集気びんを下に向けたままでは、これ 以上の結果が得られないことに気づく児童が出 てくる。そこからが、発想の転換で、集気びん の向きを変えようとする班が出てくる。 図 7 開口を上に向け、ろうそくを中程にする びんの中程にろうそくが位置しているが、こ れだと、ぎりぎり 1 分持つかどうかの結果とな る。 そして、ついに正解に達する班が登場する。 図 8 開口を上に向けろうそくを上に持ち上げる ろうそくを集気びんの口ぎりぎりまで持ち上 げたのである。 こうすると、炎にはいつも新鮮な空気が当た り、ろうそくが燃え尽きるまで燃えた。 この形には、バリエーションがあり、児童達 は以下のような形状も考案していた。 図 9 斜め取り付け 図 10 受け皿方式 図 11 横倒し

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- 8 – なかなか見事な発想だと思った。 横倒しに関しては、集気びんが割れる可能性 があるので、顔を近づけないようにということ と、5 分ほど冷やさないと集気びんが熱くなっ ているという注意を与えた。 ストーリー仕立てでお伝えしたが、実際には 思考の飛躍がある班もあり、最初の実験からほ ぼ正解に近い形にたどり着くこともあった。各 班、3 回ほど実験できる時間をとった、正解に 近い班を見ても、そのまま模倣するのではな く、さらに工夫を重ねていく姿に頼もしさを感 じることができた。 班活動を大切にし、班の中で自由に意見を交 換することで、アイデアが湧いてくる楽しさを 感じ、達成感を感じてくれればいいな、と思っ た。それが、ともに助け合って成長する“協 働”という姿かと思う。図 1 に示した条件をど のように達成するかと考えることで、論理的思 考を深めていく過程を見ることがでた。 3.2 土地のつくりと変化 6 年沈降・堆積実験 2011 年に、1mの長さで、直径 25 ㎜のプラス チックパイプを利用した沈降装置を自作した。 このパイプを利用し、きれいな層として堆積さ せるための試料を探していた。実験の再現性を 保つために、熱帯魚の水槽底砂として、様々な 種類の砂利、砂、コントロソイルという土を一 定の径で固めたものなどを入手できた。 図 12 購入した砂の例 それらの試料の粒径、沈降速度を測定し、色 を加えて試料の一覧表を作成した。 図 13 配布するプリント この一覧表を頼りに、その中から 3 種類の試料 を混ぜて、沈降させ、きれいな層を堆積させる 実験を行った。 目的は、土石流などが海や湖に堆積する際 に、沈降しながら分離し、層が分かれてできる ことを実感することと、美しい層(混ざらずに 完全に分離した層)を創る為にデータを利用し 論理的に考えられるかということであった。 6 年生大地のつくりと変化 6 年 組 名前 堆積(たいせき)実験 きれいな地層を作ってみよう! 1) 試料 試料の名前 水1mを沈む 時間 粒 つぶ の直径 色 1 ピンクサンド 3.66秒 4.3mm ピンク 2 川砂(かわずな) 5.56秒 1.2mm 茶色 3 黒土(くろつち) 11.03秒 0.4mm かっ色 4 珪砂(けいさ) 4.05秒 3.8mm 白 5 桜大砂(さくらおおすな) 3.51秒 4.2mm ピンク 6 田砂(たずな) 6.25秒 0.8mm 白 7 コントロソイル 5.25秒 4.5mm 黒 8 大磯砂(おおいそずな) 3.87秒 3.8mm 灰色 2) 組み合わせ実験 試料の中から3種類を選び、混 ま ぜて沈降 ちんこう させ、きれいな層 そう を作る。 回数 試料の組み合わせ 結果 1 回目 2 回目 3 回目 図13 配布するプリント

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- 9 - 図 14 板書 あらかじめきれいに分離する 3 種類の組み合 わせで演示する。データのことを初めは説明せ ずに 1 回目の実験を行わせる。 行き当たりばったりに組み合わせた場合は、 沈降している間に分離せず、綺麗な層にはなら ないということに気がつく。 図 15 投入時は容器を振って混濁させる 図 16 筒の中で分離する様子 図 17 不適切な組み合わせだと 混ざって層にならない ・目標:3 層に美しく分かれた地層を創ろう ・条件:3 種類の資料を混ぜてから沈める ・使える道具: 沈降実験装置(1mの筒)、スタンド、桶、 ドリンクヨーグルトの容器 漏斗(ろうと)、計量スプーン、試料(8 種類)、 試料のデータ一覧表

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- 10 – そこから、表に記載されている、沈降速度 (水1mを沈む時間)、粒径(粒の直径)は何の ためのデータかということを考え始める。 正解は、 ・沈降速度に差があること ・上下に重なる粒径にあまり差が無いこと である。 沈降速度に差があればはっきり分離する、し かし、上下の粒径と大きな差があると、小さい 粒径の試料が大きい粒径の試料の隙間に入り込 んでしまい混ざり合ってしまう。さらに欲を言 えば、3 種類の試料の色が異なっていた方が美し く見えるが、これは応用編となる。 これらのことに気づくかどうかが、この実験 のポイントとなる。2 度ほど実験し、熟考すると 表からこれらのことが読み取れるようになる。 このことが論理的思考を深めることになる。 3 回の実験で全ての班が満足する結果を得られ た。 成功例: 4:珪砂 5:桜大砂 7:コントロソイル という組み合わせ (写真の下から、 桜大磯砂 珪砂 コントロソイル) 図 18 成功例 データを利用して、深く考えることで、美し い地層が作れるということで、達成感が高い実 験であった。

4.おわりに

このように、条件を適切に設定することで、 試行錯誤しながら論理的思考を深めていける。 さらに、「長くろうそくを燃やすことができ た。」「きれいな地層を作ることができた。」とい うように、意欲を持って取り組み、達成感を得 られる実験を設定できた。

謝辞

本研究の実践のために私立東星学園小学校の 先生方と関係者の皆様には多大なるご協力をい ただきました。ここに改めて感謝の意を表しま す。

参考文献

 文部科学省 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)  RONALD.J.GIBBS,MARTIN D.MATTHEWS,AND DAVID A.LINK;1971;THE RELATIONSHIP BETWEEN SPHERE SIZE AND SETTING VELOCITY; Journal of Sedimentary Research (1971) 41 (1): 7–18.

参照

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