耳鼻咽喉科領域 におけ る針灸治療
-そ の2 該 領 域 症 候 と頚 肩 背 部 凝
り-大阪鍼灸専 門学校
大阪
鈴
木
紘
A Clinical Report on Nose, Ear and TLroat Disease
Osaka: Hiroshi SUZUKI
I 緒 言 近 代 医療 の 中 に針 灸治 療 が取 り入 れ られ, 各 科 で そ の効 果 を試 され て い る 。耳 鼻 咽 喉 科 領 域 に お い て も め ざま しい もの が あ る 。 これ ま で 難 治 で あ った 疾 患 が針 治療 で奏 功 した例 も少 な くな い 。 い まや, 針 麻 酔 の 時 代 は過 ぎ, 針 治 療 の 時 代 に 入 っ た とい え る 。 今 回 は, 耳 鼻 咽 喉 科 領 域疾 患 に 対 す る針 灸 治 療 効 果 とそ の 限 界, また, 西 洋 医 学 的 処 置 の 必 要 が な い か, して も効 果 の な い もの を 集 め, そ の 治 療 効 果 と適 否 を 調 べ た 。 II 方 法 1. 治 療 経 穴 選 穴 は, 今 回は, 多 疾 患 に な る た め, 後 記 の症 例 報 告 の 項 で そ の 疾 患 に つ い て治 療 穴 を記 す が, 全 般 的 に は, 全 症 例 に, 頚, 肩 背 部 の 凝 りが あ る た め, そ の 治 療 を重 点 的 に選 穴 した。 全 身調 整 と して は, 全 症 例 に 施 し, 百 会, 身 柱, 腎 愈, 合 谷 三 里, 孔 最, 太 谿 等 の一 般 重 要 穴 を選 穴 した。 む ん, 各 症 例 につ い て使 用 経 穴 は 異 な って い る。 2. 使 用器 具 治 療 器 具 は, ノイ ロ メー タ ー (200μA直 流 通 電) を使 用 し, 単 刺 入 で5∼6秒 通電 を全 身 調 整 と して施 術 した。 ま た, 症 例 に よ って イ トー レー タ ーE4型 低 周 波 置 針 法 も使 用 した。 使 用 針 は, ス テ ュ レス針 寸, 3∼寸6, 0∼3番 を使 用, 施 灸 は症 例 に よ って, 百 会, 身柱, 腎 愈等 に施 行 し た。 III 治 療 対 象 対 象 は耳 鼻科 医 依頼 の耳 鼻科 的 所 見 が な いか, あ る い は, 耳 鼻科 的 処 置 の不 必 要, ま た は, 処 置 して も不 変 の 症例56例 で あ る。 IV 疾患 ・症 候 別 治療 効果 1. 疾 患 ・症 候 別(Table 1) 症 例 を疾 患 ・症 候 別 に 分 け る との ご と くに な っ た 。 つ ま り, 8疾 患 (難 聴, ア レル ギ ー 性 鼻 炎, 顔 面 神 経 麻 痺, メ ニエ ル 氏 症 候 群, 扁 桃 炎, 慢 性 副 鼻 腔 炎, 中 耳 炎, 溝 状 舌), 10症 候 (耳 痛, 耳 鳴, 耳 閉 感, め まい, 下顎 痛, 咽 頭 痛, 眼 瞼 け い れ ん, 鼻 汁 感, 嗅 覚 異 常, 鼻 痛) で あ る。 難 聴 と 耳 鳴 は, 両 方 併 発 してい る症 例 も あ るた め に ま と め た 。 眼 瞼 け い れ ん は, 外 傷 性 の 側 頭 部 打 撲 か ら 起 因 した 随 伴 症 状 で あ る, 鼻 汁 感 とは, ノ イ ロー ゼ性 の も ので, 鼻 汁 が 流 れ る よ うな気 が す る と い う自覚 症 状 で あ る。 また, 嗅 覚 異 常 は, あ る嗅 い は判 別 で き るが あ る嗅 い は 判 別 不 能 と い う症 状 で あ る。 下 顎 痛 は, 2例 と も65歳 以上 の 老 人 で あ る。 鼻 痛 は, ま った く原 因 不 明 の症 例 で あ る。 2. 治 療 効 果 効 果 判 定 は, す べ て の症 例 に 他 覚 的 所 見 を得 る こ とは 難 か しいた め に一 部, 自覚 的 所 見 で 判 定 基 準 を設 定 した 。 つ ま り, 著 効 … … 症 状 が 治 癒 あ る い は 消 失 した (9割 以上 良 くな った) 有 効 … …効 果 は あ った が, まだ 症 状 が で る (6 割 ∼8割 良 くな った)。
-222-日鍼 灸 誌 30巻3号 昭56.3.15 無 効……まったく効果が なか った 。 以上 の4段 階 に設 定 した結 果 は, Table 1 の ご と くで あ る。 比 較 的 効 果 の 良 か った もの は, 耳 痛, 耳 閉 感, 顔 面 神 経 麻 痺, め まい, 下 顎 痛, 咽 頭 痛, 溝 状 舌 や や 有 効 な も のが, 難 聴, 耳 鳴, ア レル ギ ー性 鼻 炎, メ ニ エ ル, 扁 桃 炎 で, 無 効 は副 鼻腔 炎, 眼 瞼 け いれ ん, 鼻 汁 感, 嗅 覚 異 常, 鼻 痛 とな っ た。 また, これ らの全 症 例 に頸 部 (と くに後 頸 部), 肩 背 部 (と くに 肩 井 天 膠) に 凝 りを 自覚 的 に 認 め 他 覚 的 に も筋 緊 張 を 認 め た 。 この 凝 りが 原 因 で 症 状 が あ るた め に 凝 りが 発 現 す るの か とい うそ の 相 関 性 は, 判 別 困 難 で あ る。 V 症 例 報 告 1. 症 例1 67歳, 女 性, 主 婦 左 側 末 梢 性 顔 面 神経 麻 痺 (Fig. 1)。2∼3日 前 に 咽 頭 部 に 刺 痛, 発 現 前 日に 耳 部 に 刺 痛 後, 麻 痺 出現, 耳 鼻 科 来 院, 所 見 な く, す ぐ に 当院 に 依 頼 。 原 因 と して は, 3日 前 に な れ な い 畑 仕 事 を し て, 普 段 あ ま り凝 らな い の に 肩 背 部 が 強 く 凝 っ た 。 心 労 と過 労 が 考 え られ た 。20年 ほ ど前 に 右 側 顔 面 神 経 麻 痺 にか か っ て い る。 治 療 は, 週3回 と し, 治 療 穴 は, 四 白, 巨膠, 地 倉, 上 関, 騎 風 等 に低 周波 置 針, 0.5Hz∼1Hz, 15分 間, 針 は, ス テ ン レス 針 寸3, 1番 を使 用 し た 。 ま た, 頸 肩 背部 の 凝 りを とる べ く, 風 池, 天 柱, 肩 井 等 に単 刺 入 し, 全 身 調 整 と して, 手 足 三 里, 太 衝, 内 関, 中 胱, 腎 愈, 百 会, 身 柱 等 に 施 術 した 。 結 果 は, Fig. 1 来 院 時 の 状 態 で, Fig. 2 が, 1か 月後 の状 態 で あ る。2週 間 く らい よ り大 分 ま しに な り, 1か 月後 で は, まだ 額 の しわ の ゆが み と眼 の 開 きお よび, 口角 の ゆ が み が, 少 し正 常 で は な い 。 日常 生 活 で は, ま った く支 障 な し で あ る。Fig. 3は, 2か 月後 で あ るが, 額 お よび, 眉 毛 が 正 常 に な り, 口 も と もほ とん ど正 常 にな っ て い る。Fig. 4は, 約4か 後 の 最 後 の 状 態 で あ り, 治 癒 と して治 療 を終 った 。 Table. 1
-223-顔 面 神経 麻 辣 で は, 治 療 開 始2週 間 か ら1か 月 以 内が 最 も効 果 が 現 われ や す く, 1か 月 以 上 に な る とほ とん ど少 し しか 変 化 は な く, と くに 口 も と の ゆ が み が 最 終 的 に 残 って くる よ うで あ る。 2. 症 例2, 25歳, 男性, 会 社 員 。 ス トマ イ 性 難 聴 。5歳 の 時 に ス トマ イ の注 射 に よ り, 難聴 を 来 た した も ので, Fig. 5 は, 来 院 時 持 参 した, 大学 病 院耳 鼻科 で の測 定 した オ ー ジ オ メ ト リー で高 音 域 聴 力不 能 の感 音 系 難 聴 で あ る が, 混 合 性 も考 え られ る も ので あ る。 左 耳 が 右 耳 よ り少 し聴 力 良 だが, ほ とん ど聴 力 不 良 の 両 側 性 難 聴 で あ り, 日常 生 活 で は, 補 聴 器 を 使 用 して い る 。 発 声 ぱ, や や 聞 ぎ に く い 。 局 所 治 療 は, 耳 門, 聴 宮, 窮 風, 完 骨 等 に ス テ ン レ ス 針, 寸3, 0番 で 置 針30分, な ら び に, 風 池, 天 柱, 肩 井 等 の 肩 背 部, 太 谿, 陽 池, 身 柱, 腎 愈 等 に 単 刺 入 を 施 術 した 。 治 療 間 隔 は, 最 初3週 回 と し, 3か 月 く ら い よ り週2回 と した 。 結 果 は, 約4か 月 後 気 導 聴 力 右 耳 は, 低 音 域 (250cps) で, 10db500cps で, 10db, 1000cps で, 5db, 左 耳 で は, 250cpsで, 5dbと, そ れ ぞ れ わ ず か だ が 改 善 さ れ た が, 2000cps以 上 の 高 音 域 で は, ま っ た く不 変 で あ っ た 。 そ の 後 著
日鍼 灸 誌 30巻3号 昭56.3.15 し い 変 化 は な く, Fig. 6 は, 治 療 後1年 半 後 の メ ト リ ー で あ る が, 結 局, 右 耳 は, 250cpsで, 15db, 500cpsで は, 30dbに, 左 耳 は, 250cps で は, 10db, 500cpsで は, 5dbと, そ れ ぞ れ 上 昇 改 善 さ れ た が, 両 耳 と も2000cps以 上 の 高 音 域 で は, ま っ た く不 変 で 効 果 は 見 ら れ な か っ た 。 ま た, 骨 導 で は 気 導 と 同 様 に 右 耳, 左 耳, 250cpsで そ れ ぞ れ15db, 25dbの 改 善 の み だ っ た 。 結 果 と し て, 10db以 上 の 改 善 を 良 好 と見 る な ら ば, 右 耳 の250cps, 500cpsの 低 音 域 で の 改 善 の み で あ り, 全 体 的 効 果 は 無 か っ た と い え る 。 し か し, 本 人 の 自 覚 症 状 で は, 補 聴 器 の ボ リ ー ム が 最 初 の 頃 よ り も あ げ な く て 聞 こ え る と の こ と で あ っ た 。 自 覚 聴 力 の 問 題 は 以 前 か ら 報 告 さ れ て い る が, 判 別 不 可 能 で あ る 。 3. 症 例3 43歳, 女 性, 主 婦 。 主 訴 は, 1日 中, 舌 が ピ リ ピ リ と痛 み, と く に 食 事 時 に ひ ど く痛 む と い う。8か 月 前 よ り 出 現 し 大 学 病 院 の 内科, 皮 膚 科, 口腔 外 科, 神 経 内科 で 検 査 したが 特 別 の所 見 は なか った。 各 科 で種 々の 治 療 を施 した が, 経 過 不 変 で来 院 した。 耳 鼻科 へ も行 か せ, 診 察 した が, 針 灸 治療 の方 が 良 い だ ろ うとの こ とで あ った。 視 診 で は, 舌 の 左外 側 の痛 む部 位 の 表 面 が 深 い 溝 状 に な って お り, 炎 症 が 認 め られ た こ とに よ り 溝 状 舌 で は な い か と判 断 した 。 舌 神 経 痛 で は, 舌 表 面 の 変 化 は 認 め られ な い と考 え, 溝 状 舌 と して 治 療 を 加 え た 。 た た, 患 者 の 話 を 聞 い てい る と, この 症 状 の 発 現 す る前 に 家 庭 的 に 心 配 事 が あ り, また, こ の時 期 に胆 の う炎 手 術 を して い る。 自律 神 経 失 調 と更 年 期 障 害 性 の フ ァ クタ ーが 考 え られ る症 例 で あ る と感 じた。 この患 者 も心 配 事 が あ っ た 頃 よ り と く に後 頸 部 の 凝 りを 自覚 す る よ うに な った と 訴 え た。 治療 は, 自律 神 経 失 調 と更 年 期 障 害 治 療 を 重 点 に お き, 百 会, 神 門, 身 柱, 次 膠, 中 胱 等, 肩 背 Fig. 5 初 診 時 の オ ー ジ ォ メ ト リー
AIR CONDUCTION BONE CONDUCTION =L =L
=R =R
RIGHT EAR LEFT EAR
-225-部 凝 り治療 の 肩井, 天柱, 風池 等, 咽 頭 -225-部 の 疹 痛 部 に単 刺 入, 百会, 身柱, 三 陰 交 に は, 糸状 灸5 荘 を施 術 した。 ま た, 溝 状舌 は, 溝 に 食 物 の 残 渣 細 菌 が た ま って 炎 症 を 起 こす と考 え られ るた め, 日常 指 導 と して 夜 ね る前 に歯 を み が き, 舌 を 清 潔 にす る よ うに 指示 した 。 隔 日週3回 の 治 療 で, 3∼4回 目で 少 しず つ 良 くな り, 9回 目で痛 み が とれ, 14回 の 治 療 で 完 全 に痛 み が 消 失 した 。 ま た 肩 頸 部 凝 りや, そ の 他 の 不 定 愁 訴 もな くな り, 患部 の 炎 症 も とれ, 治 癒 と 判 断 した, VI 考 察 日本 耳 鼻 咽 喉科 学 会 で の 針 治療 の 報 告 は, 78年 79年 と相 つ い で発 表 され, 針 治 療 の 適否 を の べ て い る。 と くに79年 学 会 で は, 針 治 療 の効 果 と限 界 と題 して報 告 され, 顔 面 神 経 麻 痺 や, 疾 病 の随 伴 症 状 を 除 去 す る こ と に効 果 が 期 待 で き る と結 ん で い る。 今 回 の報 告 で も 同様 で あ るが, と くに非 耳 疾 性 の 耳 痛, 耳 閉 感 に 対 して針 治 療 は, 著 しい 効 果 を認 め る こ とか ら して, 今 後 の耳 鼻 咽 喉 科 疾 患 へ の針 治 療 の応 用 は, ます ます そ の 範 囲 を 拡 大 す る も の と考 え られ る。 一 方, 慢 性 副 鼻 腔 炎 や, メニ エル, ア レル ギ ー 性 鼻 炎 な どで は い まひ とつ 良好 な 効 果 は 認 め ず, 今後 の治 療 法 の確 立 を 研 究 せ ね ば な ら ない 。 症 例 報 告 で は, 客 観 的 効 果 の認 め られ や す い 症 例 を あげ, 検 討 を した が, 顔 面 神 経 麻 痺 で は, 発 症 期 間 が8年 経 過 した も のが1例 あ るが, ま った く無 効 の た め, や は り, 発 症 期 間 の 短 い もの ほ ど 治 りや す い とい え る。 今 回 は, 耳 鼻 科 医 か らの 依 頼 患 者 の み を 対 象 と した た め に 症 例 は 少 な い が, 顔 面 神 経 麻 痺 (末 梢 性) で は, 比 較 的 効 果 は 良 好 とい え る。 た だ し, 治 療 期 間 は, さ ま ざ まで, 約 1か 月 くらい が 一 般 的 で は な い か と考 え られ る。 ス トマ イ 性 雑 誌 で は, あ ま りに も罹 患 期 間 が 長 か った た め か あ るい は, 癒 りに くい 疾 患 な の か 判 別 で きな い が, 効果 は期 待 で きず, 低 音 域 の 改 善 Fig. 6 約1年 半 後 の オ ー ジ ォ メ ト リ ー
AIR CONDUCTION BONE CONDUCTION =L =L =L =R
RIGHT EAR LEFT EAR
-226-日 鍼 灸 誌 30巻3号 昭56.3.15 と 自覚 聴 力 の 変 化 に と ど ま った 。 耳 鳴 で は, 器 質 的 異 常 の な い 非 耳 疾 性 の もの で は 効 果 は よ く, 針 治 療 に期 待 は で き る。 溝 状 舌 は, 西 洋 医学 で は, 治 療 の必 要 の な い も の と して成 書 に は あ るが, 患 者 に と って は, 大 変 つ らい も の で あ り, この苦 しみ に悩 ん で い る人 は 割 と多 い と聞 く。 患 者 の話 で は, 神経 内科 通 院 中 に8年 間 通 院 し, い ま だ に軽 減 しな い 老母 が い た との話 で あ る。 今 後 この疹 痛 に 対 して 針 灸 治 療 を 試 用 され る こ とを 望 む もの で あ る。 全 般 的 に み て, 針 灸 治 療 の 適 否 を 考 え るな ら, や は り, 疹 痛 疾 患 に 対 して 期 待 が 持 てそ うで あ る とい え る。 しか も器 質 的 疾 患 の ない 症 状 のみ の も のに 対 して適 当 で あ ろ う。 中 耳 炎 で も炎 症 が 甚 し い急 性 の も のは 不 適 で あ り, 針 灸 治 療 と して は, 炎 症 が ひ ど くな る前 の軽 い 炎症 の もの に対 して は 有 効 で あ る。 つ ま り予 防治 療 とい え るか も しれ な い。 最 後 に, 該 領 域疾 患 と頚 肩 背 部 凝 りとの 関 係 で あ るが, この 関 係 は あ る程 度 以 前 よ りの べ られ, あ るい は 成 書 に 記 され て い るが, 重 要 視 され て い な い 傾 向に あ る。 と くに 西 洋 医 学 的 に は あ ま り重 視 してい ない 。 難 聴, 耳 鳴, 耳 痛, 耳 閉 感 等 で は 側 頸 部 の筋 緊 張 は 見 のが す こ とは で き な い し, ま た, 顔 面 神 経 麻 痺, メ ニ エル, め ま い等 で は, 肩 背 部 の凝 りが 随 伴 症 状 と して発 現 す る。 咽 頭 痛 や 扁桃 炎 で は, 側 頸 部, 後 頸 部 や 時 と して前 胸部 の 筋 緊 張 が発 現 す る。 針 灸 治療 で は, これ らの 凝 り 筋 緊 張 を軽 減 あ るい は 除 去 す る こ とを 目的 に 治療 す る と局所 を さわ る こ とな く, 各 疾 病 を 治 癒 せ し め る場 合 が あ る。 そ の 他 自律 神 経 失 調 症 や 更 年 期 性 の 不 定 愁 訴 症 候 群 の 随 伴 症 状 と して の め ま い や, 耳 鳴, 耳 閉 感 に 対 して も この 凝 りを 目標 に 治 療 す れ ば 著 しい 効 果 を 期 待 す る こ とが で き る。 VII 結 語 耳 鼻 咽 喉 科 領 域 疾 患56症 例 につ い て疾 患 分 類 を しそ れ ぞ れ の効 果 を 調 べ た。 耳 痛, 耳 閉感, 顔 面 神 経 麻 痺, め ま い, 下 顎 痛, 咽 頭 痛, 溝 状 舌 に対 して 良好 で, と くに, 耳 痛, 耳 閉 感 に 対 して は, 著 しい効 果 が あ った 。難 聴, 耳 鳴, ア レル ギ ー性 鼻 炎, メニ エ ル, 扁 桃 炎 で は, や や 有 効 で あ るが い ま ひ とつ 確 実 性 で は な か った 。 副 鼻 腔 炎, 眼 瞼 け い れ ん, 鼻 汁 感, 嗅 覚 異 常, 鼻 痛 で は, 今 回 の 症 例 で は 無 効 で あ った 。 各 疾 患 症 候 に は, す べ て 肩 頸 背 部 の 凝 りが 関 与 してお り, この 凝 りを 除 去 す る こ とが 良好 な結 果 を 得 る重 要 な ポ イ ン トとな る。 今 後 と も, 器 質 的 障 害 の 少 ない, あ るい は 原 因 不 明の 該 領 域 疾 患 に対 して, 医療 の一 手 法 と して の 針 灸 治 療 が, 活 用 され, 適 応 範 囲が 拡 げ られ る こ とを確 信 す る も の で あ る。 参 考 文 献 1) 河 田 政 一 ほ か: 耳 鼻 咽 喉 科 学, 金 原 出版 株 式 会 社 1973. 2) 堀 口 申作 ほ か: 耳 鼻 咽 喉 科 新 書, 中央 医 書 出 版 社 1958. 3) 米 山秀 彦 ほ か: 耳 鼻 咽 喉 科 領域 に お け る 電 気 針 治 療 の効 果 と限界, 日耳鼻 会報82巻10号, 1999. 4) 調 所 廣 之 ほ か: 耳 鼻 咽 喉 科 領 域 の ハ リ治 療 の効 果 と限 界, 日耳 鼻 会 報82巻10号, 1979. 5) 大 迫 茂 人 ほ か: 耳 鳴 に 対 す る針 治 療 の効 果 の評 価 日耳 鼻 会 報82巻10号, 1979. 6) 大 迫 茂 人: 耳 鼻 咽 喉 科 領 域 に おけ る針 治療, 日耳 鼻 会 報81巻10号, 1978. 7) 倉 島 宗 二 シ ン ポ ジ ウム神 経 マ ヒの 治療 につ い 中 村 万 喜 男: て, 日鍼 灸 誌22巻2号, 1973. 田中 昭 三 8) 三 木 健 次: 陳 旧性 顔 面 神経 麻 痺 の 針 治 療, 日鍼 灸 誌27巻2号, 1979. 9) 木 下 晴 都: 難 聴 の針 治療, 日鍼 灸 誌16巻1号, 1967. 10) 花 谷正 男: 日本 に お け る難 聴 の 鍼 治 療, 日鍼 灸 誌 25巻3号, 1976. 11) 丸野 新: 慢 性 鼻 炎 の 鍼 治 療, 日鍼 灸 誌27巻2号, 1979. 12) 首 藤 伝 明: め ま い の鍼 灸 治療, 医道 の 日本 社2月 号, 1977. 13) 鍼 灸 治 療室: 扁 桃 炎, 医道 の 日本 社8月 号, 1977 14) 鍼 灸 治療 室: メ ニエ ー ル症 候 群, 医 道 の 日本 社4 月 号, 5月 号, 1979.
-227-15) 鍼 灸 治療 室: 蓄膿 症, 医 道 の 日本 社8月 号, 1979 16) 坂 本 豊 次: め ま い の症 例 報 告, 医 道 の 日本 社12月 号, 1979. 17) 代 田文 試: 針灸 治 療 の 実 際, 創 元 社, 1970. 18) 宮脇 和 人: 顔面 神 経 麻痺 の 治 療, 医 道 の 日本 社4 月号, 1977. 19) 森 秀 太 郎: 針 灸 の た め の 診 断 と治 療, 医 道 の 日本 社, 1979. 20) 田崎義昭 斎藤 佳雄: ベ ッ トサ イ ドの神 経 の診 か た, 南 山 堂 21) 兵 頭 正 義: ベ イ ン ク リニ ッ クの 実 際, 南 江 堂, 1971. 22) 針 灸 学, 上 海 中 医 学 院, 1974. 23) 鈴木紘: 耳鼻咽喉科領域に おけ る針灸治療, 日鍼 灸 誌29巻3号, 1980. (〒569 大 阪 府 高 槻 市 永 楽 町3-14)
-228-A Clinical Report on Nose, Ear and Throat Disease
Osaka: Hiroshi SUZUKI
Objects: 55 patients suffering from various complaints of the nose, ear and throat. Method: Every patient was given not only local and general acupuncture treatment,
but also treatment for stiffness in the shoulders and the nape.
Results: It was very effective in such case as auricle obstruction, otalgia and facial palsy. On the contrary, it was not effective for nasal discharge and hyposmia. Conclusion: Without exception, all of patients complained of a sensation of stiffness
in the shoulders and the nape. These observations suggest that stiffness in the shoulders and the nape leads to auricle obstruction and otalgia. Theerfore, it may be very important to remove stiffness in the shoulders and the nape. From these studies, it is clear that acupuncture is very effective against auricle obstruction
and otalgia.