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中年女性におけるオーラルフレイル予防に向けた 水中運動トレーニングの有効性

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1)大阪成蹊大学 〒533-0007 大阪府大阪市東淀川区相川 3丁目10-62 2)神戸医療福祉大学 〒679-2217 兵庫県神崎郡福崎町高岡 1966-5 3)大阪市立大学 〒545-8585 大阪市阿倍野区旭町1-4-3 4)東京未来大学 〒120-0023 東京都足立区千住曙町34-12 5)芦屋大学 〒659-8511 兵庫県芦屋市六麓荘町13-22 6)プール学院短期大学 〒590-0114 大阪府堺市南区槇塚台4-5-1

1)Osaka Seikei University

  3-10-62, Aikawa, Higashiyodogawa, Osaka, Japan(533-0007) 2)Kobe Health Welfare University

  1966-5, Takaoka, Fukusaki, Kannzaki, Hyogo, Japan(679-2217) 3)Osaka City University

  1-4-3, Asahi-machi, Abeno-ku, Osaka, Japan(545-8585) 4)Tokyo Future University

  34-12, Senju, Akebono-cho, Adachi-ku, Tokyo, Japan(120-0023) 5)Ashiya University

  13-22, Rokurokusou, Ashiya-city, Hyogo, Japan(659-8511) 6)Poole Gakuin College

  4-5-1, Makizukadai, Minamiku Sakai-city, Osaka, Japan(590-0114)

中年女性におけるオーラルフレイル予防に向けた

水中運動トレーニングの有効性

臼井達矢1),辻慎太郎2),松尾貴司3),永井伸人4),竹安知枝5),織田恵輔6)

Effects of Water Exercise Training on Prevention of

Oral Frail in Middle-aged Women

Tatsuya USUI1), Shintaro TSUJI2), Takashi MATSUO3), Nobuhito NAGAI4),

Chie TAKEYASU5) and Keisuke ORITA6)

Abstract

 Oral hygiene is important for the prevention of many diseases. In particular, the prevention of poor oral health (oral frailty) is essential to prolonging the healthy life expectancy. Reduced immune response in the saliva has been associated with oral frailty. Previously, we focused on human-β-defensin-2 (HBD-2), which specifically regulates the immune response in the oral cavity, and demonstrated that the reduction of salivary HBD-2 results in poor oral health and increases the risk of opportunistic infections. In this study, focusing on water exercise training considered to increase intraoral immune function, we investigated the influence of water exercise training on the oral local immune function and Streptococcus mutans-suppressing effect. The salivary HBD-2 levels were 24.2±6.2 and 48.6±9.6pg/mL before and after intervention, respectively, showing that it significantly increased (p<0.05). Regarding the Streptococcus mutans-suppressing effect, a significant bacterial growth-inhibitory effect was noted after intervention compared with that before intervention (p<0.05). Focusing on water exercise training considered to increase intraoral immune function, the influence of Water exercise training on the oral local immune function and Streptococcus mutans growth-inhibitory effect was investigated.

キーワード:抗菌性ペプチド,βデフェンシン 2,水中運動トレーニング,オーラルフレイル予防

Keywords :Antimicrobial peptides, Human β -defensin-2, Water exercise training, Prevent Oral Frailty

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Ⅰ.緒  言

超高齢社会を迎えている我が国の高齢者の 口腔機能低下は,糖尿病やメタボリック・シ ンドロームなどの全身疾患との関連性も指摘 され,また歯周病を介した心血管疾患の罹患 を通して生命予後に関わることが指摘されて いる3 ).さらに歯科領域においても口腔機能 が虚弱した状態「オーラルフレイル」という 概念が提唱され14), この「オーラルフレイル」 は,社会的・精神心理的フレイル期から重度 フレイル期にいたる一連の段階のなかで,身 体面のフレイル期の前段階に相当すると考え られている14).オーラルフレイル期は身体面 のフレイル期への入り口であり,見逃してし まうと徐々に不可逆的なフレイル期に移り変 わっていく重要な時期である14).そうしたこ とからも口腔内の健康を促進させオーラルフ レイル予防に努めることが健康寿命の延伸に おいて極めて重要となる.口腔内は外気にた えず曝露されていることから,細菌やウイル スなどの病原微生物が侵入しやすく,第一線 の防御機構として機能する唾液免疫成分(特 に初期免疫機能)の働きが重要となる17, 30) 一般的に高強度運動や長時間運動,オーバー トレーニングなどの身体的ストレスに伴い口 腔内の局所免疫機能が低下し,上気道感染症 の罹患率の増加や症状が悪化し,その治りが 遅延することが報告されている19, 30).口腔内 免疫機能の代表としては,これまで唾液免疫 グロブリンAが報告されており,一過性運動 および繰り返し運動、長時間高強度運動によ り,その分泌が変化することが報告されてき た12).さらに近年では生体防御システムとし て抗菌性ペプチド群の存在が注目され,それ らは自然免疫に属し感染に対する第一線の防 御機構として機能するだけでなく,自然免疫 に続く獲得免疫系を活性化させる働きを有し ていることが報告されている7 ).特に上気道 感染症の予防や口腔内局所免疫機能において 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る の が Human- β -defensin- 2 (HBD- 2 )であり,気道上皮細 胞や唾液腺から分泌され,ウイルスや細菌な どに対する抗菌活動に貢献していることが報 告されている7, 21).Defensinは粘膜表層の生 体防御機構において重要な役割を担い,低分 子塩基性抗菌ペプチドの 1 グループとして分 類され,β-sheet構造と 2 - 3 個の分子内ジス ルフィドを持つカチオン性のペプチドとして 特徴づけられている8, 11).Defensinは抗菌性 ペプチドの多型遺伝子族を形成しており, 1980年に最初に発見されてからヒトを含む 様々な哺乳動物の気管,唾液,腸,舌,血液, 皮膚などからその分泌が発見されている8, 11) さらにDefensinは存在する 6 つのシステイン 残基の形成する 3 つのジスルフィド結合の組 み 合 わ せ の 違 い か ら, α -defensin と β -defensinとに大別される8, 11).HBD- 2 はグラ ム陰性菌,陽性菌および真菌に対して抗菌活 性をもち,皮膚や唾液,肺などで多く発現し ている16, 22).HBD- 2 は生体が細菌や炎症性の サイトカインに暴露された際に著しく誘導的 に発現されることが報告されている16, 22, 25, 26) また精神的および身体的ストレスに伴う内因 性 グ ル コ コ ル チ コ イ の 分 泌 増 加 に 伴 い, HBD- 2 の発現が抑制されるグルココルチコ イド依存メカニズムが報告されている1 ) HBD- 2 は他の抗菌性ペプチド群よりも約10 倍の抗菌活性を有しており,さらには直接的 な抗菌活性に加えて,自然免疫と獲得免疫反 応との間の伝達においても重要な作用を持つ ことが認識されてきており,これらの分泌が 口腔内局所免疫機能にとって非常に重要な役 割であるとされている25, 26).特に口腔内のよ うに細菌が豊富な環境下では,HBD- 2 のよ うな抗菌性ペプチドが生体防御に大きく寄与 する25, 26).抗菌性ペプチド群は歯科学や口腔 衛生学などで特に重要とされており,虫歯菌 (Streptococcus mutans) の増減や虫歯の発 生リスクと抗菌性ペプチド群の分泌濃度とは 関連があることが報告されている4 ).抗菌性 ペプチド群と運動に関するこれまでの報告で は,Davisonらが一過性の中等度長時間運動 に伴い唾液中の抗菌性ペプチド群 (LL-37, α -defensin) が有意に増加すること5 ),さらに 我々は中年女性に対する 1 年間の中等度強度

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ない者,高血圧症および脂質異常症による投 薬中の者は事前に対象から除外した.また運 動制限のないことを確認すると共に,今回は オーラルフレイル予防への有効性を検討する ため,対象者には実験日の 1 ヶ月前の期間, 上気道感染症の罹患がないこと,虫歯や歯周 病による通院や治療がないこと,喫煙習慣を 有する者がいないことを予め確認した.また 水中運動トレーニングによる影響を検討する ため,対象者は運動を定期的に実施していな い者,水中運動トレーニング期間中はそれ以 外の運動を控えることとし承諾を得た.さら に精神的ストレスが口腔内局所免疫の発現に 影響を及ぼすことから実験日から 6 ヶ月間の 間に身内などに不幸がなかった者を対象者と して選定した.水中運動トレーニング期間, 体調不良や家庭の事情より教室への参加率が 低かった 6 名を省き,水中運動トレーニング プログラムを完遂した36名(年齢 51.2 ± 8.3 歳; 身長 153.4 ± 6.4cm; 体重 50.8 ± 3.8kg; VO2max 23.7 ± 2.8ml/kg/min)を対象とし た.本研究のプロトコルは,大阪成蹊大学倫 理規程研究審査会による審査・承諾を得て, 各対象者には事前に本研究の主旨を説明し, 全員から研究参加への同意を得た. 2 .唾液採取および測定プロトコル 全12回のアクア教室を開催し,第 1 回目の 前日と第12回目の翌日において唾液採取およ びオーラルフレイルに関する以下の測定を実 施した.測定当日はAM11:00に実験室に入室 させ,口腔内のうがいと歯磨きを実施する.そ の後30分間安静状態を保ち,PM 0 :30より唾 液採取を実施した.唾液採取に関しては自然 誘発法とコットン法が多く用いられており2, 26) 今回は安静時での唾液採取であることから自 然誘発法を用いて 1 分間で分泌される唾液を 採取した. 3 .測定項目 1 )口腔内局所免疫として唾液HBD-2 の測定 採取した唾液を滅菌ろ過および遠心分離 した後,上清成分を採取し,直ちにマイナ での陸上運動トレーニングの実践が口腔内局 所免疫機能を高めることも報告してきた28) さらにEdaらはヨガストレッチなどのリラク ゼーション運動の実践が唾液HBD- 2 の発現 を高めることも報告している9 ).このことか ら特に中等度強度の運動トレーニングの実践 は唾液抗菌性ペプチド群の発現を高め,口腔 内局所免疫機能や口腔内の健康度の促進に大 きく貢献する.先行研究における中等度強度 の運動トレーニングについては陸上運動ト レーニングを主とした報告がなされている が,近年では,中年女性を対象にしたプール を利用した水中運動トレーニングが盛んに行 われており,従来のダンスやヨガピラティス などのスタジオレッスンと同様に,水中での アクアビクスやリラクゼーション運動が人気 とされている10).また水中環境では,浮力に より陸上よりも関節への負担を軽減でき,低 体力や比較的弱い筋力の女性でも姿勢維持し ながら取り組める10, 24).さらに水中運動によ り交感神経活動の抑制(ストレス軽減)や運 動後の副交感神経の促進も期待できるとされ ている10, 24).そうしたことからも今回は水中 運動トレーニングに着目することとした.さ らにこれまでの運動と免疫に関する多くの研 究13, 17, 18)では,運動刺激に伴い変化した唾液 免疫成分の濃度や分泌量などの動態や量的評 価は検討されているが,その機能や質的評価 および実際のオーラルフレイルを評価する項 目においては明らかにされていない.そこで 今回は,週 1 回の水中運動トレーニングに着 目し,その実践がオーラルフレイル予防に有 効であるかどうかを唾液免疫成分およびオー ラルフレイルに関わる口腔機能や口腔内の健 康度から検討する.

Ⅱ.対象および方法

1 .対象 対象はフィットネスクラブに新規入会した 中年女性42名中アクア教室(全12回)への参 加を希望したものとし,対象者の選定にあ たっては,整形外科または内科的疾患を有さ

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ス80℃凍結保存した. その後HBD- 2 を ELISA法 (Human β-Defensin 2 ELISA Kit, Phoenix Pharmaceuticals Inc, Burlingame, CA)を用いて吸光度から濃 度を算出した. 2 )虫歯菌に対する唾液抗菌活性の測定 採取した唾液を用いて虫歯菌に対する抗 菌活性レベルを測定した.被験株菌の培養 には,Difco(Michigan, USA) 製を用い, その他の試薬はシグマ製を用いた.実験に 用 い た 被 験 株 菌 は Institute for Fermentation Osakaの微生物バンクより 入手し, 虫歯菌はストレプトコッカス・ ミ ュ ー タ ン ス 菌(Streptococcus mutans ATCC35911)を用いて唾液抗菌活性を測 定した.抗菌活性レベルの測定は,菌をそ れぞれ採取した唾液と48時間培養(37℃) させ,その後,虫歯菌の細胞数をカウント した. 3 )オーラルディアドコキネシス(口腔機能)  の測定 舌口唇における運動の速度と巧緻性を包 括的に評価するためオーラルディアドコキ ネシスの測定を行った. 5 秒間で「パ・タ・ カ」をそれぞれ繰り返し発音させ,自動計 測器(健口くん:竹井機器工業)を用いて, 1 秒あたりのそれぞれの音節の発音回数を 計測した. 4 )自律神経活動指標の測定 自律神経活動指標の計測には,加速度脈 波測定システム「アルテット」(株式会社 ユメディカ社製)を使用し,示指にて 2 分 間(100拍)測定した.周波数は0.02∼ 0.40Hz とし,高周波成分HF(high frequency: 0.15 ∼0.50Hz),低周波成分LF(low frequency: 0.02∼ 0.15Hz),LF/HF(low frequency/ high frequency)に分類した.HFは副交感 神経活動の指標とし,LFとHFの比(LF/ HF)は交感神経活動の指標とした. 5 )細菌カウンタを用いての口腔内の細菌数  レベルの測定 口 腔 内 の 細 菌 数 レ ベ ル に 関 し て は, DEPIM(dielectrophoretic impedance measurement)法を用いた細菌カウンタ(パ ナソニックヘルス社製)を使用して,本測 定器の採取方法の基本に基づいて右側頬側 下顎歯肉部と舌先から 1 cmの部位を付属 の綿棒で 3 往復擦過し,その後,綿棒を 180度反転させて同じ部位を 3 往復擦過し, 口腔内の唾液中細菌数レベルを測定した. DEPIMは口腔内の細菌において培養法と の高い相関が確認されており,細菌数レベ ルは,レベル 1 (細菌数10万個未満:健康) ∼レベル 7 (細菌数 1 億個以上)まで示す ことが可能である23) 4 .水中運動教室プログラム内容 今回の水中運動トレーニングは,実験を承 諾した京都市内のフィットネスクラブの室内 プールを使用し, 1 回45分,週 1 回,全12回 の教室を開催した.今回使用した室内プール は縦25m,水深90∼100cmのコースを 3 コー ス使用し,トレーニング中のプールの水温は 30∼31.5℃とした. トレーニング指導は, フィットネスクラブのインストラクターが行 い,今回はらくらくアクア教室(初級)での 運動介入を行った.事前にらくらくアクア教 室( 初 級 ) の 運 動 強 度 を 心 拍 数 測 定 (HUAWEI Band 2 -89a)と予測最大心拍数 (220-年齢)から算出し,50∼60%(中等度 強度)となるよう設定した.さらに水中運動 トレーニング中も心拍数測定を行い運動強度 50∼60%になるようインストラクターが動き の指導と運動強度の調節を行った.水中運動 トレーニングの内容は,水中ウォーキング (前・横・後ろなどの歩行運動)およびレク リエーション運動によるウォーミングアップ を10分間,水中でのレジスタンス運動として, ニーアップ動作,レッグカール動作,スクワッ ト動作,アームカールやエクステンション動 作,プッシュアップ動作などを取り入れた運 動を10分間行った.主運動としてはアクアビ クスを20分間行い,アクアビクス初心者用の プログラムのため,関節可動域や動きのス ピードに考慮しながら,20分間動き続ける シェイプアップ運動を主体とし,フィットネ

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− 206 − レーニングを終了することができた.水中運 動トレーニングによる口腔内局所免疫機能で ある唾液HBD- 2 濃度においては,水中運動 トレーニング介入前24.2±6.2pg/ml,全12回 の水中運動トレーニング介入後48.6±9.6pg/ mlを示し, 介入後において有意(p<0.05, d=3.08)に高まった(図 1 ).また安静時の 唾液分泌量においても介入前0.18±0.05ml/ min,介入後0.26±0.05pg/mlを示し,有意(p <0.05, d=2.80)に高まった.このことから も水中運動トレーニングにより口腔内の健康 状態が高まった.安静時の唾液と虫歯菌との 培養による虫歯菌抑制効果においては,介入 前と比較して介入後では,虫歯菌の発育抑制 効果が有意(p<0.05, d=0.61)にみられた(図 2 ).このことからも口腔内局所免疫の量的 機能だけでなく質的機能も高まった.さらに 口腔機能を評価するオーラルディアドコキネ シスの 3 つ(パ・タ・カ)の発語回数の平均 値では,介入前5.3±2.3回/秒,介入後7.3±2.3 回/秒を示し,介入後において有意(p<0.05, d=1.69)に増加し,口腔機能が高まった(図 3 ).安静時の交感神経活動(LF/HF)では, 介入前3.9±1.6,介入後1.1±0.8を示し,介入 後において有意(p<0.05, d=3.20)に交感神 経活動が抑制されストレスの軽減がみられた (図 4 ).安静時の唾液中細菌数レベルでは, 介入前4.6±1.6,介入後3.3±1.4を示し,介入 後において有意(p<0.05, d=0.68)に口腔内 の細菌数レベルが軽減し口腔内の菌数が減少 した(図 5 ). スクラブで行われる一般的なアクアビクス運 動の内容とした.最後に水中でのストレッチ を用いたクーリングダウンを 5 分間行い,計 45分間の水中運動トレーニングとした.また 今回の水中運動トレーニングは,段階的に負 荷や強度を上げるものではなく,12回通して 同様の内容を反復することとし,50∼60%の 運動強度を維持して実施するように徹底し た. 5 .統計処理 全 て の 変 数 に つ い て は,Kolmogorov-Smirnov 検 定 に よ り 正 規 分 布 を 確 認 し た. データは正規分布を示していたため,平均値 ±標準偏差で示した.介入前後の 2 群間比較 については対応のあるt検定で分析した.な おt検定の効果量(d)は標本の平均値差を標 本からプールした標準偏差で除した値であ り,下記の通り算出した.この計算から得ら れる値は群ごとの平均値の差を標準化したも のである.Cohen s d における判断の目安と して,d=0.20を効果量小,d=0.50を効果量中, d=0.80を効果量大とする. 統計処理には SPSS(version24.0, IBM株式会社 ) を用い, 有意水準は 5 %未満とした.

Ⅲ.結  果

今回水中運動トレーニングを完遂した36名 の参加者の水中運動トレーニングへの参加率 は96.2±6.3%であり,水中運動トレーニング による整形外科的な外傷や障害はなく,ト 図1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 図1 介入前後におけるHBD- 2 濃度の変化

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− 207 − p. 18 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26

p. 19

3 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 図2 介入前後における唾液による虫歯菌抑制効果の変化 図3 介入前後におけるオーラルディアドコキネシスの測定 p. 20 図4 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 p. 21 図5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 図4 介入前後における自律神経バランスの変化(LF/HF) 図5 細菌カウンタを用いての口腔内細菌数の変化(レベル)

Ⅳ.考  察

今回は水中運動トレーニングに着目し,中 年女性に対する週 1 回(計12回)の中等度強 度での水中運動トレーニングの実践が口腔内 局所免疫機能および自律神経活動を改善さ せ,オーラルフレイル予防に有効であるかど うかを検討した結果,水中運動トレーニング の 実 践 は, 自 律 神 経 活 動 の 改 善 と 唾 液 HBD- 2 濃度を高め,さらに虫歯菌に対する 菌の阻止能力が高まり,オーラルフレイル予 防に有効であることが示された. 近年,抗菌性ペプチド群に関する報告が多 くなされており,なかでも唾液HBD- 2 は唾液 腺や気道上皮細胞から分泌され,口腔内の自 然免疫として重要な役割を担っていることが 明らかにされている6, 31).抗菌性ペプチド群と 運動やスポーツに関する報告では,Davison らが一過性の中等度強度の運動により抗菌性 ペプチド群 (LL-37, α-defensin) が一時的に 有意に増加したことを報告している5 ).さら に我々も中年女性に対する 1 年間の中等度強 度での陸上運動トレーニングの実践が口腔内 局所免疫機能を高めることも報告してきた28) またNijnikらは,唾液中のHBD- 2 は,口腔内 の防御機構として第一線に働き,その分泌量 や濃度が高いほど,より強い抗菌活性を示す ことや口腔内の健康状態に抗菌性ペプチド群 が大きく貢献していることを報告している20) そうしたことからも唾液中の抗菌性ペプチド 群を高めることが口腔内の健康および上気道 感染症予防に極めて重要となる.陸上での運 動トレーニングの実践は炎症性サイトカイン の反応性を高め,それに伴い唾液HBD- 2 の 発現を促進させる5, 28).さらに継続的な運動 トレーニングはストレスへの耐性を高め,ス

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トレスホルモンであるコルチゾールなどの分 泌を抑えることができる5, 9, 28).Abergらは, ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌 と口腔内局所免機である抗菌性ペプチド群と の関連を報告しており,ストレスに伴う内因性 のグルココルチコイドの増加が抗菌性ペプチ ド群の発現を抑制することを報告している1 ) このことからもいかに自律神経バランスを整 え,ストレスを軽減させることができるかが 口腔内の健康に大きく寄与する.近年,歯科 領域において口腔機能が虚弱した状態「オー ラルフレイル」という概念が提唱され14), こ の「オーラルフレイル」は,重度フレイル期 に移行し,身体面のフレイル期の前段階に相 当すると考えられている14).このことからも 口腔内の健康を促進させオーラルフレイル予 防に努めることが健康寿命の延伸において重 要となる.今回,水中運動トレーニングの実 践は, 唾液HBD- 2 濃度を有意に増加させ, さらに唾液抗菌活性レベルにおいも介入前と 比較して介入後では虫歯菌に対する抗菌活性 が有意に高まった.さらには自律神経活動の 改善やオーラルディアドコキネシスによる口 腔機能の高まりも示されたことから,水中運 動トレーニングはオーラルフレイル予防に有 効であると考えられる.水中運動は,陸上運 動と比較して,交感神経活動の抑制(ストレ ス軽減)や運動後の副交感神経の促進も期待 できるとされている10, 24).さらに水中運動は 陸上運動ではできないような様々な動作への チャレンジが楽しみや気持ちの高まり、リラ クゼーション効果をもたらすと報告されてい る10, 24).今回は水中運動トレーニングの実践 により安静時の交感神経活動を抑制させ,副 交感神経の影響を受ける安静時唾液量の分泌 も高まったことから,水中運動トレーニング により,自律神経活動バランスの改善につな がったと考えられる.さらに自律神経バラン ス の 改 善 に よ る ス ト レ ス 軽 減 が, 唾 液 HBD- 2 の発現を高め,虫歯菌に対する抗菌 活性や唾液中の細菌数の減少に貢献したと考 えられる.しかしながら今回は介入研究であ るにもかかわらず,コントロール群が設定で きておらず,測定による慣れの影響や時期的 な時間経過の影響などを考慮できていないの が研究の限界点である.今後,水中運動トレー ニングの効果をより示すためにも,コント ロール群の設定や他の運動方法(陸上運動) との比較,また水中内で安静状態を保つ場合 など,水中での運動が有効であることを検証 することで,オーラルフレイル予防に向けた 運動処方プログラム構築に役立てることが可 能となる.

Ⅴ.まとめ

 週 1 回の水中運動トレーニングの実践は, 安静時の自律神経活動を改善させ,口腔内局 所免疫機能や口腔機能の向上と唾液中の細菌 数の減少から,オーラルフレイル予防に有効 であることが示唆された.

利益相反

 本研究において開示すべき利益相反(COI) はない. 文  献

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(受付:2020年 7 月15日) (受理:2020年 9 月26日)

参照

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