冨 田 義 弘
(近畿大学バイオコークス研究所)【緒 言】
近年,林業は衰退するとともに放置竹林が問題となっ ている。竹は現在利用用途が少なく伐採するコストは再 利用収益を大きく上回っていることが原因の一つであ る。一方,竹は最も成長する時で1 日に1m 近く伸び, そのサイクルの早さがバイオマスとして量を集めるのに 向いている。 そこで未使用バイオマスである竹をベースとしたバイ オコークス(以下,BIC と略す)の製造を検討した。特 に BIC は製造時にバイオマスの含水率や材質によって 製造条件が異なることから,材料の選定や処理コストを 考慮した製造条件の抽出が必要である。現在ボイラーの 燃料として使われている灯油の代替エネルギーとして消 費エネルギー全体の一部でも置き換えることを目標と し,BIC を代替材料として利用することが出来れば,近 い将来に枯渇が危惧される化石燃料の代替として併用す ることで灯油の使用量削減,CO2の排出削減になると考 える。 本実験では,成長が早い竹と,一般廃棄物として使用 用途のない木質バイオマスの剪定枝を混合させた,これ らの材料で横型連続式量産型反応器を使った竹,剪定枝 混合 BIC の製造条件の抽出を行った。製造した BIC の 冷間圧縮試験を行い,材料の含水率と,混合比率が BIC の製造性に及ぼす影響について考察を行った。【実験方法】
1.バイオマスの粉砕乾燥処理 BIC の材料となる竹を粉砕するために株式会社大橋の エンジン式樹木粉砕機 GS400D を用いた。この粉砕機 は最大処理径 200mm なので,径が200mm 以内の竹は そのまま粉砕する事が可能である。図1に全体図を示 す。この図 1の左部から材料投入を行い,粉砕された材 料は右部のベルトコンベアで送り出される。また剪定枝 は図 2のダイコー精機株式会社のモーター式一軸式粉砕 機 DAS︲54を用いて粉砕を行った。 材料の乾燥は株式会社御池鐵工所のロータリーキルン 式の乾燥機を用いて行った。この乾燥機を下の図 3に示 す。含水率の調整は窯の中に材料を入れる速度を調整す る方法と窯の入り口の温度を調整させる方法の二種類あ る。BIC は株式会社ナニワ炉機研究所の横型連続式量産 図1 エンジン式粉砕機 GS400D 図 2 モーター式一軸式粉砕機 DAS-54 図 3 ロータリーキルンの全体図型 BIC 製造装置で製造を行った。図4に BIC 製造装置 の全体図を示す。 2.BIC の製造条件 本実験では横型連続式量産型 BIC 製造装置を使い製 造を行った。材料となる竹はエンジン式の粉砕機で,剪 定枝はモーター式の粉砕機をそれぞれ用いて15mm 以 下に粉砕を行った。その後含水率約 6%と約 12%に設定 するためにロータリーキルン(乾燥機)と自然乾燥で調 整を行った。粉砕,乾燥を終えた含水率約 12%の竹を 下の図 5に示す。 混合比率は収集バイオマスの量を考え(竹:剪定枝= 100:0,75:25,50:50)の3 種類を設定した。含水率 が異なる2 種類と混合比率の異なる3 種類の計 6 種類の 材料について BIC 製造前に含水率の測定を行った。製 造装置の条件は製造温度を453K,加熱時間 300s とし た。量産を想定した場合に製造装置の停止などが起きず に安定した製造が出来るか考察するためにそれぞれ8 時 間以上ずつ製造した。
【実験結果】
1.BIC の製造 目標含水率が6% の材料はロータリーキルンを用い乾 燥を行った。竹と剪定枝,各材料の乾燥前後の含水率と 材料を窯の中に送る速度を決める周波数,所要時間をま とめたものを表1に示す。 また深さ10cm,24kg/m2に広げた竹を1 日 1 回撹拌 行い,7 日間自然乾燥させた結果,含水率約 45% だっ た竹が7 日間で含水率約 20% までしか下がらなかっ た。実験を行った10 月だと自然乾燥では含水率 12% 台 までしか下がらず,12 月だと含水率 15% 台までしか下 がらなかったことから,気温が低い時期だと設定含水率 12% であってもロータリーキルンで乾燥を行わなけれ ばならないことが分かった。 ロータリーキルンと自然乾燥を比較すると,燃料や電 気を必要とするロータリーキルンに対して定期的に撹拌 を行うだけで済む自然乾燥は費用で考えると優位だが, 乾燥に要する時間が1 週間以上なおかつ含水率の下がる 限度も決まっているので,そこを考慮すると1 時間あた り130kg の処理能力があり,含水率も6% 以下に下げる ことが可能なロータリーキルンの方が使い勝手が良いと 言える。 BIC 製造前の混合材料について含水率を3 回ずつ測定 し,それぞれに試料番号を付けたものを表 2に示す。す べての条件において設定含水率よりも測定値が高い結果 となった。これは材料を乾燥した後,保管をしている間 に水分を吸収したことが考えられる。 BIC の製造を行った結果,試料番号②を用いた時シ リンダー内で材料の水分が影響して摩擦が高まったた め,完全に詰まってしまい BIC を製造することが出来 なかった。試料番号④,⑥の材料を使うと,設定した時 図4 横型連続式量産型反応器の全体図 図 5 含水率約 12%の竹 表 1 含水率と設定条件 材料 乾燥前含水率(%) 乾燥後含水率(%) 設定周波数(Hz) 所要時間(min) 設定温度(K) 竹 47.2 7.2 20 100 523 竹 43.4 4.2 15 130 剪定枝 40.2 5.0 18 100間内で BIC の排出が終わらずに製造機の運転が停止す ることが10 分から30 分の頻度で発生した。また試料番 号⑤,⑥のような剪定枝の混合比率が高い条件程,製造 装置の材料を溜めておくホッパー内で材料が詰まってし まい,シリンダー内に材料供給が行えず,製造機は材料 が無いと判断して誤作動で停止することが多かった。試 料番号②の製造条件は453K だがその他の材料について は443K で製造を行った。これは試料番号④の材料を製 造条件 453K で BIC を製造した時,大きなひびが入っ たため以降の製造は443K に変更した。 試料番号②の条件,竹 100mass%,含水率約 12% の とき材料がシリンダー内で詰まってしまった。これは竹 と剪定枝の分子レベルでの組成の違いが影響したと考え る。木材(剪定枝)は草本類を含め,植物体の骨格をな すセルロース,ヘミセルロース,リグニン(3 大主要成 分)で構成されている。これらの成分で構成されている 細胞壁の構造は,鉄筋コンクリートに例えられ,セル ロースは鉄筋,リグニンはコンクリート,ヘミセルロー スは鉄筋をとめる針金に相当する。鉄筋にあたるセル ロースは,結晶化して束(ミクロフィブリル)となり, その周りをコンクリートにあたるリグニンが固め,ヘミ セルロースは両者のつなぎ役のような働きする1, 2)。木 材(剪定枝)と竹におけるこれらの成分の含有量を下の 表 3に示す。 含水率の増加に伴い,ヘミセルロース及びリグニンの 熱軟化温度は大きく低下するのに対してセルロースはほ とんど変化しない。ヘミセルロースの軟化温度は全乾状 表 2 含水率測定値 竹 : 剪定枝 (mass%) 設定含水率 (%) 含水率測定値 (%) 含水率平均値 (%) 製造温度(K) 試料番号 100: 0 6 9.03 8.25 8.67 8.65 443 ① 12 13.78 13.25 15.08 14.04 453 ② 75:25 6 8.28 8.49 8.68 8.48 443 ③ 12 12.53 12.21 11.52 12.09 443 ④ 50:50 6 9.49 9.48 9.42 9.46 443 ⑤ 12 15.23 14.75 14.47 14.82 443 ⑥ 表 3 剪定枝と竹の組成 成分 剪定枝(mass%) 竹(mass%) セルロース 50 49 ヘミセルロース 20~30 24 リグニン 30~20 14 その他 0.5~5 13 態で200℃であるが含水率 60% になると約 20℃まで低 下し,リグニンの場合全乾状態で150℃だが含水率 20% 以上になると約 60℃まで低下する。対してセルロース の熱軟化温度は約 250℃である3)。以上のことから含水 率が平均計測値で14.04% だったため含水率に熱軟化温 度が影響を受けないセルロースの割合が竹,剪定枝にお いて同等であっても含水率の増加に伴い熱軟化温度が低 下するヘミセルロース,リグニンの割合が,竹に比べて 多い剪定枝を混合している材料を用いた BIC は製造時 にシリンダー内の滑りが良くなり排出できた。しかし竹 100mass% は滑りが良くなるヘミセルロース,リグニン の割合が少ないため,剪定枝を混合した BIC と同等の 含水率であったとしても詰まったと推測する。 2.圧縮試験結果 冷間圧縮試験を行うために,BIC の長さ100mm,断 面が水平になるように加工した。横型連続式量産型反応 器の排出時に長さのばらつきがあり,断面も凹凸がある ので試験が行えないので長さの調整と表面を水平にする ためにバンドソーマシンと旋盤を使った。冷間圧縮試験 は島津製作所のアムスラー型万能試験機を用いて試験を 行った。混合比率と含水率の異なる BIC5 種の全体図と 断面図を図 6に示す。 同じ混合比率であれば含水率が高い材料の方が低い材 料に比べて黒くよく反応していることがわかる。これは 含水率が高くなるとヘミセルロース,リグニンの熱軟化 温度が低下するので,同じ混合比率の材料を同じ温度で 加熱しても含水率の高い BIC の方が軟化温度が低いの で反応しやすく,2つを比べるとより黒くなったと考え る。
図 6 竹:剪定枝(混合割合) 目標含水率の全体図(左)断面図(右) また竹,剪定枝混合 BIC について混合比率を BIC の表面を見て判断するのは困難なほど似ているが,竹 100mass% の BIC については材料がすべて幹であるこ とから表面にも葉が浮き出てきていないため目視で判断 する事が出来る。 長さ100mm に切断後の BIC の質量を測定し,まと めたものを下の表 4に示す。また,横型連続式量産型 反応機で製造された BIC の直径は100mm,その後長さ 100mm に加工したので,質量 m(kg),密度ρ(kg/m3) としたとき m 0.05 × 0.05 × 0.1 ×π = ρ (1) となり,この(1)式を用いて密度を求め,まとめたも 竹:剪定枝(50:50) 目標含水率 6% 竹:剪定枝(50:50) 目標含水率 12% 竹:剪定枝(75:25) 目標含水率 6% 竹:剪定枝(75:25) 目標含水率 12% 竹:剪定枝(100:0) 目標含水率 6% 図6 竹:剪定枝(混合割合) 目標含水率の全体図(左)断面図(右) また竹,剪定枝混合BIC について混合比率を BIC の表面を見て判断するのは困難なほど似ているが, 竹100mass%の BIC については材料がすべて幹であることから表面にも葉が浮き出てきていないため 目視で判断する事が出来る. 長さ100mm に切断後の BIC の質量を測定し,まとめたものを下の表4に示す.また,横型連続式量 産型反応機で製造されたBIC の直径は 100mm,その後長さ 100mm に加工したので,質量
m
(kg),密 度 ρ (kg/m3) としたときm
0.05×0.05×0.1×π = ρ (1) となり,この(1)式を用いて密度を求め,まとめたものを下の表5に示す. 竹:剪定枝(50:50) 目標含水率 6% 竹:剪定枝(50:50) 目標含水率 12% 竹:剪定枝(75:25) 目標含水率 6% 竹:剪定枝(75:25) 目標含水率 12% 竹:剪定枝(100:0) 目標含水率 6% 表 4 条件別 BIC の質量 竹 : 剪定枝 (mass%) 含水率(%) 質量(kg) 100 : 0 6 0.947 0.931 0.947 0.944 0.957 75 : 25 6 1.012 0.977 0.979 0.979 0.974 12 0.996 0.987 0.988 0.958 1.008 50 : 50 6 0.932 0.915 0.920 0.877 0.925 12 0.984 1.008 1.012 0.973 0.991のを下の表 5に示す。 今回の実験で求めた BIC の圧縮強度をまとめたもの を下の表 6に,プロットしたものを図 7に示す。 表 6より,製造条件による密度への影響は生じたが 製造には問題はなかった。また図 7より,混合比率 竹 50mass% の試料番号⑤と⑥については,圧縮強度 30MPa 付近に多く位置しており,混合比率竹 75mass% の試料番号③と④については35MPa 付近に多く位置し ていて,混合比率竹 100mass% の試料番号①について は40MPa 付近に多く位置している。これは竹の混合比 率が増えるとリグニンの割合が低下することから強度が 高くなったと推測する。 本実験で強度試験を行ったすべての条件において 20MPa を超える結果となった。つまり本実験において 製造性におよぼす竹と剪定枝混合条件の影響は考慮しな くて良いことがわかる。しかし,量産を考慮した場合, 表 5 条件別 BIC の密度 竹 : 剪定枝 (mass%) 含水率 (%) 密度(kg/m 3) 平均密度(kg/m3) 100 : 0 6 1205.8 1185.4 1205.8 1201.9 1218.5 1203.5 75 : 25 6 1288.5 1244.0 1246.5 1246.5 1240.1 1253.1 12 1268.1 1256.7 1258.0 1219.8 1283.4 1257.2 50 : 50 6 1186.7 1165.0 1171.4 1116.6 1177.7 1163.5 12 1252.9 1283.4 1288.5 1238.9 1261.8 1265.1 表 6 条件別 BIC の圧縮強度 竹 : 剪定枝 (mass%) 含水率 (%) 圧縮強度(MPa) 平均圧縮強度(MPa) 100 : 0 6 37.97 37.23 37.94 37.28 38.91 37.87 75 : 25 6 27.63 36.49 37.38 37.25 35.42 34.84 12 35.73 27.25 34.78 32.65 35.24 33.13 50 : 50 6 34.10 28.57 31.60 23.12 27.65 29.01 12 28.78 28.44 29.90 28.83 29.51 29.09 図 7 条件別 BIC の密度と圧縮強度
図7 条件別
BIC の密度と圧縮強度
表6より,製造条件による密度への影響は生じたが製造には問題はなかった.また図7より,混合比
率竹
50mass%の試料番号⑤と⑥については,圧縮強度 30MPa 付近に多く位置しており,混合比率竹
75mass%の試料番号③と④については 35MPa 付近に多く位置していて,混合比率竹 100mass%の試料
番号①については
40MPa 付近に多く位置している.これは竹の混合比率が増えるとリグニンの割合が
低下することから強度が高くなったと推測する.
本実験で強度試験を行ったすべての条件において
20MPa を超える結果となった.つまり本実験にお
いて製造性におよぼす竹と剪定枝混合条件の影響は考慮しなくて良いことがわかる.しかし,量産を考
慮した場合,製造装置が停止すると再始動させるまでに時間と人手が必要となり時間当たりの製造能力
も低下する.よって第一に安定した生産が行えることと,今回の実験で使用している竹と剪定枝の収集
バイオマスの量を考慮したうえで試料番号③の条件が量産に適していると考えられる.
【結言】
本研究では,放置竹林として問題となっていて,利用用途の拡大が望まれている竹と,利用用途が無
く現在一般廃棄物として費用をかけて処分されている剪定枝を使用し,横型連続式量産型反応器を使っ
た竹,剪定枝混合バイオコークスの製造条件の抽出を行った.そして冷間圧縮試験を行い材料の含水率
と混合比率がバイオコークスの製造性に及ぼす影響を検討した結果,次の事が得られた.
1. 含水率は低い方がシリンダー内の滑りがよく,横型連続式量産型反応器でのバイオコークス製造に
向いている.
2. 剪定枝の混合比率が高いと材料供給ホッパー内で混合材料が詰まってしまうので混合比率は低い
製造装置が停止すると再始動させるまでに時間と人手が 必要となり時間当たりの製造能力も低下する。よって第 一に安定した生産が行えることと,今回の実験で使用し ている竹と剪定枝の収集バイオマスの量を考慮したうえ で試料番号③の条件が量産に適していると考えられる。