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JAIST Repository: コンセプト創造型製品戦略の研究開発マネジメント

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Japan Advanced Institute of Science and Technology

JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/

Title

コンセプト創造型製品戦略の研究開発マネジメント

Author(s)

池島, 政広; 馬場, 房子; 篠原, 光伸; 海保, 英孝;

伊藤, 善夫

Citation

年次学術大会講演要旨集, 9: 3-9

Issue Date

1994-10-28

Type

Conference Paper

Text version

publisher

URL

http://hdl.handle.net/10119/5425

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す

るものです。This material is posted here with

permission of the Japan Society for Science

Policy and Research Management.

(2)

1

B1

コンセプト創造型製品戦略の 研究開発マネ

、 ジメント

池島 政広,馬場 房子

(

亜細亜大学

) ,

篠原 光神,

海保 英孝

(

成城大学

) ,

0 伊藤 善夫

(

立正大学

) ] . はじめに け 品 開発へと大きく

変化している。 しかし、

このような 戦略の転換は 仝のところその 成果を現してはいない 6) 。 現代企業を取り

巻く環境は、 技術革新をはじめ、

さて、

市場・事業の 開拓を目指した 新製品の開発に 業

活動の国際化、

顧客ニーズの 多様化といった 要因が

は、

製品の機能・ 品質に関る技術革新による 新たな 顧

複雑に絡み合い、

その変化の方向・

速度は、

現状から 客用途の創造が 不可欠となるが )

技術革新が累積的・ の延長では予測し 難い状況にあ

る。

こうした環境下で 継続的な技術知識の 蓄積に支えられていることを 考慮 は

、 技術水準、 販売チャネル、

ブランドイメージなど するとき

9)

コンセプト創造型の 製品戦略への 転換の成

の、

これまでに蓄積されたストックとしての 経営資源

否は、

企業において 技術蓄積の推進を 担う研究開発部 を 戦略的に展開していく 積極性が強く

求められる。

す 門の能力 ( 研究開発力 ) に大きく依存していると 言う な む

ち、

現状の延長線上からかけ 離れた方向に 変化す

ことができる。

ここで留意すべき

点は、

企業の研究開 る 可能性をはらんだ

環境と、

その環境の一つのサブシ 努力が技術知識を 蓄積する能力 ( 技術蓄積 力 ) のみに ステムであ る企業との接点を

維持していくためには、

よって規定されるものではなく、

蓄積された技術知識 蓄積された経営資源に 裏 打ちされる企業の 強みを創造 を新たな顧客用途の 創造を狙った 製品戦略に効果的に 的に革新する 戦略の策定・ 実施がなされなければなら 展開する能力 ( 蓄積技術の戦略展開力 ) をも包含する ないのであ る 2) 。 ことにあ る。 ところで清水は

絶えず流動化する 企業 外 環境と常 科学技術開発において 日本が十分競争力をもってい に固定化する 傾向にあ る企業内条件の 接点が製品であ るという評価は

9)

日本企業の技術蓄積 力 があ る程度の

るとし、

「具体的な経営戦略はすべて 製品を軸にして 水準にあ

ることを示唆する。

したがって

多くの日本 考えられる」ことを 指摘している

3)

。 したがって、

環境 企業でコンセプト 創造型の製品戦略への 転換が模索さ 変化の方向・ 速度にたいする 不確実性が極めて 大きい

れる中、

いまだその成果が 現れていないという 事実は

仝 日

経営戦略を構成する

要素のなかでも、

製品領域 技術蓄積 力 よりはむしろ 蓄積技術の戦略展開 力 に問題 の決定とそれら 製品の開発に 関する戦略 ( 製品戦略

)

が存在していることを

意味するだろう。

は 一層その重みを 増していると 言えよう。 本報告では、 確立された製品コンセプトの 洗練から 製品戦略には

大別すると、

既存事業における 安定型 新規なコンセプトの 創造への転換期における 蓄積技術 品の改良・コストダウンと 新たな市場・ 事業の開拓を の戦略展開力の

問題を、

技術革新による 顧客用途の創 目指した新製品開発を 想定することができるが 円 経営 造という観点から

考察するとともに、

日本企業におい 資源の戦略的展開という

立場では、

現状からの延長線 て 戦略展開 力 に寄与する変数がいかにマネ 、 ジメント さ とは方向を画するような 新製品の開発がより 重視され れているかを

実証的に分析し、

仝後の研究開発マネジ る

だろう。 従来、 日本企業の多くでは、

「競争企業よ メントの課題を

探ることにしよう。

り 少しでも品質の 良いものを ( 安く ) 開発することに 最高の価値をおいた」行動をとってきた 5) 。 つまり、 日 2. 技術革新とコンセプト 創造 本 企業の製品戦略は 安定製品の改良・コストダウン、 技術革新は一般に 知識源泉の多様性に 依存する [0) 。

言い換えれば、 市場・技術の 両面で確立された

製品 技術革新に支えられたコンセプト 創造型の製品戦略 へ コンセプトの 洗練を指向してきたのであ

る。 しかし、

の移行を目指す

企業内においても、

蓄積される技術知 上述の如く状況はこの

指向性を転換し、

新市場・執事 識を多様化することが

望まれる。

無論企業であ

る以上、

業の開拓を念頭においた

新製品開発という、

当該企業

研究自体が目的ではなく、

研究成果としての 技術知識 にとっては新規な

製品。

コンセプトの 創造に向かうこと を製品戦略に 展開することが

必要となるため、

多様化 を

余儀なくしている。

事実ここ数年の

間で、

日本企業 は将来事業領域との 関連世の予測される 範囲を制約条 の 経営目標は、 主力製品の市場占有率の 拡大から新製 件 として受けることになるだろうⅡ ) 。

(3)

ところで知識は、 文献などに記載される 情報と等価 ではなく、 情報にたいする 個々人の解釈をも 包摂した 人的資源であ る [2) 。 したがって、 知識の獲得には、 自 ら情報を探索・ 解釈し、 利用し、 生成していく 実践 的 ・経験的活動が 重要な役割を 果たす。 こうした知識 を多様化させるためには、 既に知識を獲得している 人 材を幅広い分野から 求めるか、 あ るいは仝後の 知識獲 得の場となる 活動を幅広く 分散させるかのいずれかが 少なくとも必要になる。 企業に蓄積する 技術知識の多 様 化にたいしては、 将来事業領域との 関連世の認めら れる戦略的な

範囲で、

研究開発活動を 主体的に担う 研 究者を広範な 専門分野より 採用することによって、 あ るいは研究テーマを 分散することによって 多様化を図 ることができるだろう。 ただし、 これら二つの 変数を 同時に多様化させることは、 組織内の人々の 努力のべ クトルを発散させる 危険を伴うため、 一定のバランス を保持する必要があ るだろう Ia)o さて、 日本における 科学技術開発が 相当以上に企業 の 研究開発活動に 依存している 現状を踏まえれば 出、 その競争力の 高さは企業による 技術革新の推進によっ て支えられていることを 物語っている。 つまり、 企業 内に蓄積された 技術知識は、 これまでのところ 十分な 多様性をもっていると 考えられるのであ る。 実際、 欧 米で創造された 製品コンセプトにいち 速く対応し、 製 品化してきた 日本企業には、 コンセプトを 具現化する 多様な技術知識が ( すべてが利用可能な 状態ではない にしても、 競争可能なまでには ) 蓄積されていること を 示している。 問題はこうした 多様性から創出される 技術革新が、 確立された製品コンセプトの 範 時にあ る 既存の顧客用途の 改善に向かう 傾向の強いことにあ る。 技術革新はその 定義から、 異質な技術の 新結合であ るとされるは ) 。 しかし、 高度化した技術開発において は、 結合されるべき 異質な技術知識を 革新の当初の 過 程から個人が 保有していることは 肴 な事態であ ると思

われる。

高度化に伴う

専門分化が、

蓄積技術全体の 多

様化に相反して、

相対的に同質な 技術知識を獲得する 機会を研究者個人に 与える傾向が 強くなると考えられ るのであ る [6) 。 したがって、 研究者個人の 専門分野を 越えた、 異質な分野の 研究者との技術知識を 交換する

直接的なコミュニケーションが、

蓄積技術の戦略展開 に 不可欠な技術革新の 創出 ( 二 異質な技術の 新結合 ) にとって 、 大きな要因として 寄与するだろう 17) 。 こう したコミュニケーションを 背景にして技術革新が 創出 されるが、 技術革新が製品戦略に 展開されるためには、 技術知識の新結合関係に 何等かの利用価値が 見出され ねばならない。 特に、 コンセプト創造型の 製品戦略で は、 利用価値による 既存の製品コンセプトにはない 顧 客用途の創造が 主眼となるため、 企業内部の製造・ 工 程 技術の革新による 安定製品の改良・コストダウンを 主 としたコンセプト 洗練型の製品戦略に 比べて、 企業 外部の顧客ニーズに 関する知識の 導入が、 研究開発 組 織 内での異質な 分野間のコミュニケーションに 相前後 して、 より豊富に導入される 必要があ る [8) 。 製品の企 画・販売を通じて 顧客と直に接しているという 意味で、 事業組織とのコミュニケーシヨン と 研究開発組織内の コミュニケーションの 複合が、 戦略展開に寄与するだ ろう。 このようなコミュニケーションの 複合に関連し

た従来の議論では、

両組織の構成員からなるプロジェ クトチームの 形成が有効であ ると報告されている⑨。 新たな顧客用途の

創造を、

技術革新の定義に 倣って、 技術知識と顧客ニーズの 新結合であ るとすることが 妥 当 であ るなら、 コンセプト創造には、 多様な技術知 識・顧客知識をもった 人材の接触を 可能にする、 全社 横断的なプロジェクトチームの 形成が寄与するものと 予測される。 3. 日本企業の研究開発マネジメントの 実態 技術革新による 顧客用途の創造という 観点からは、

・ 雰捷擢発 組織内での 異 分野間コミュニケーショ ・ 男捷擢発 組織とさ葉組織間のコミュニケーション Ⅰ 会 社横断的なプロジェクトチームの 形成 が 、 蓄積技術の戦略展開 力 にとって重要な 管理変数 であ ると考えられる。 ここでは、 これらの変数を 中心 に 、 我々の行ったアンケート 調査に基づいて 20) 、 日本 のエレクトロニクス 企業での研究開発マネジメントの

実態を分析してみよう。

3-]. 蓄積技術の戦略展開 力 蓄積技術の戦略展開にたいする 能力の高い企業では、 技術革新に通ずるアイデアが 活発に創造され、 これら のアイデアを 土台にした、 既存の製品 " コンセプトには ない顧客用途を 創造する新製品の 開発がより多く 実現 されているだろう。 仝回の調査で 我々は、 各企業の戦 略展開力を調べるため、 以下の二つの 変数を取り上け

た。 第一に、 研究者、

とりわけ若手の 研究者の、 新規 性の高い研究テーマの

提案状況を、

「研究所長が 奨励 しても、 以前より減った」から「以双よりも 非常に増 えた」までの 6 段階の SD 法で評点し、 アイデア創造 の活発さを測定した。 全調査対象企業のこの 指標の平 均値は 8. 6 2 であ り、 やや活発にアイデアが 創造さ れているよ う であ る。 第二には、 新規な研究テーマに 基づいて開発された、 既存の事業領域外における 新分 野製品の売上高構成比率を 、 0% を 1 、 2 0% 以上を 一 4 一

(4)

9 として測定した。 この指標の平均値は 4. 7 「であ り、 全体の 5% ∼ 7% の売上高が新分野の 製品によっ て占められていることが 分かる。 二つの指標が 大きいほど、 蓄積技術の戦略展開 力 が 高いものと考えられる。 以下の分析では、 上にあ げた 四つの管理変数の 、 アイデア創造・ 製品化に与える 影 響を検討することにする。 3-2. 技術知識の多様性 科学技術開発における

競争力を考慮すれば、

日本企 業の蓄積技術にはあ る程度の多様性が 備わっているも

のと予想される。 技術知識の多様化には、

研究者の専

門分野と研究テーマを、

一定なバランスの 中で戦略的 に分散させることが 必要となる。 そのバランスを 考え る 上で我々は、 研究者の専門性・ 研究テーマと 事業領 域との関連の 大きさを調べた。 この指標は、 事業領域

を規定する製品戦略がもっ、

人材や活動に 関する許容 範囲を示し、 許容範囲が広いほど、 現状では必ずしも 事業領域との 関連が大きくない 異責 な技術知識を 企業 内に導入することが

促進される。

具体的には研究者を

採用する場合に、

研究者個人の 専門分野と自社の 事業 領域との関連性をどの 程度重視しているか、 「関連性 のあ る者だけ採用する」から「全く 無関連でも採用す る」までの 6 段階 SD 法で評点した。 なお、 研究開発 の性格の相違を 考慮して、 共通基盤的、 あ るいは基礎 的な技術を開発する 全社的研究所と、 特定な事業の 製 品 開発に関連した 研究を行う事業部門所属研究所に 分 けて調査した。 また、 研究テーマについては、 「重点 事業の関連分野に 特化」から「直接関係しない 分野 ま は 共通している。 だが事業部門研究者については、 前 者の 2. 6 9 にたいして後者の 3. 3 9 と、 研究テー マを分散させている 企業では事業部門研究者を 事業領 域に、 より集約させるという、 平均 像 ( どちらかと言 えば後者の企業群 ) とは逆なバランスを 図っているの であ る。 両者の間で、 技術革新の芽となる 新規な研究 テーマの提案状況に 有意差は見られないことから、 バ ランスの図り 方にはアイデア 創造に関して 優劣が生じ ていないと考えられるが、 アイデアから 創出される 技 術 革新を、 製品化に結び 付ける開発の 段階では、 新分 野製品比率に 見られるよ う に、 戦略展開 力 に差が生じ ている。 つまり、 自社の事業領域に 関連深い技術を 専 門分野とする

事業部門研究者の、

その視野の範囲内で 中核技術の異分野への 応用展開を探索する

場合、

新 分 野 製品比率は 8. 87 (5% 弱 ) であ るのにたいして、 異分野の技術知識を 既にもつ事業部門研究者を 重点事 業に特化した 研究テーマに 従事させ、 自社の中核技術 を様々な角度から 見直す中で、 その潜在的な 応用可能 性を派生的に 見出していく 場合には、 同比率で 5. 1 2 (7% 強 ) となり、 製品化の側面での 戦略展開力を 高めているようであ る ( 表 t) 。 表 1 : 技術知識多様化のバランス 3-3. 異 分野間コミュニケーション

平均下の企業群

機会 (

)

に分けると、

新規な研究

の提案状況はそれぞれ 平均値で、 8.32

と 8.

ァ一

研究者の関連

度は

全社的研究所の

2.88 8.00

り有意差は認められず、

であ

自社開発で

一 5 一

(5)

7 7 となり、 コミュニケーション 機会の多い企業で、 よりアイデア 創造が活発になっていることが 分かる。 さらに、 新分野製品比率では、 8. 6 7 と 5. 2 0 で あ り、 異分野間コミュニケーションに 基づくアイデア が、 新分野での製品開発に 不可欠な技術革新の 創出を 支えていることを 物語っている。 こうした異分野間コ ミュニケーションの 機会の多い企業では、 研究開発 ポートフォリオを 利用し 2 町また全社的研究所の 研究 者の専門分野について 事業領域に集約している 企業が 多い。 研究開発ポートフォリオは、 技術的優位性・ 市 場インパクトを 評価軸として、 研究テーマをより 有望 な分野に絞りこなために 利用されているよ う であ る。 つまりこれらの 企業では、 研究テーマに 関する情報を

単に流通させるだけでなく、

自社事業を支える 中核 技 術 に確固とした 基盤を築きあ げ、 十分蓄積された 中核 技術知識を有望分野に 方向づけることで、 技術の融合 を企図しているように 思われるのであ る。 情報流通は、

技術融合を促進し、

その結果技術革新へ 導く質の高い アイデアをもたらすのであ る ( 統計的には必ずしも 有 意な差が認められなかったが、 コミュニケーション 機 会の多い企業の 中でも、 ポートフォリオを 利用してい る企業の新分野製品比率は 5. 9 2 と、 利用していな い 企業の 4. 5 6 よりも大きくなっている ) ( 表 2) 。 表 2 : 研究開発組織内 異 分野間コミュニケーション 3-4. 事業組織とのコミュニケーション 技術革新は、 それに利用価値が 認められて始めて 製 品に結実する。 コンセプト創造型の 製品戦略では、 そ の利用価値による 新たな顧客用途の 創造が主眼となる ため、 顧客のニーズに 関する知識の 導入は欠かせない。 技術革新の創出を 支え、 しばしば創出の 場となる研究 開発組織には、 こうした知識をもった 研究者が十分存 在しているとは 限らない。 研究者自身が 顧客であ る場 合を除き、 表面的な顧客情報を 保有しているに 過ぎな いのかもしれない。 したがって、 製品の企画・ 販売を つうじて顧客と 直に接している 事業組織と研究開発組 織の間のコミュニケーションが 重要な役割を 果たすも のと考えられる。 特に、 共通基盤的・ 基礎的技術の 開 発を担う全社的研究所では、 組織上事業部門に 所属し ないため、 このようなコミュニケーションを 行うため には困難を伴うだろう㏄ ) 。 しかしその反面、 全社的研 究所の行う事業組織とのコミュニケーションは、 特定 な事業活動に 閉じない多様な 顧客ニーズに 関する知識 と幅広い技術知識の

接触を可能とし、

事業部門内での 開発研究所と 事業組織とのコミュニケーションに 比較

して、

新たな顧客用途を 創造する機会がより 豊富であ

るとも考えられる。

そこで、 全社的研究所と 各事業部 門 との製品戦略に 関する意見交換を、 「組織間のどの レベルでも、 常に意見交換する 場を設け活用してい る」から「公式会議のみで 意見を述べることができ る」までの 6 段階で評点すると、 全体の平均では 2. 5 0 となり、 予想された困難さにもかかわらず、 コ ミュニケーションが 活発化しているようであ る。 この 指標が平均値よりも 低い企業群 ( コミュニケーション が 密 ) では、 新分野製品比率が 平均で 5. 5 0 と、 そ うでない企業群の 4. 0 0 よりも高く、 全社的研究所 と 事業組織とのコミュニケーションが、 技術革新の製 品化に寄与していることが 分かる。 こうしたコミュニ ケーションの 促進には、 研究テーマの 重点事業との 関

連性、

研究開発組織内の 異分野間コミュニケーション が 関与している。 コミュニケーションの 密な企業では、 研究テーマが 重点分野に集約され、 異分野間コミュニ ケーションの 機会が多くなっているが、 この集約によ り重点事業という 共通した問題意識をもつことができ るため、 事業組織との 意思疎通が円滑になるのであ る。

そして研究開発組織内の

異分野間のコミュニケー 、 ンコ ンとも相まって、 全社的研究所内に 多様な顧客 ニーズに関する 知識が伝播するのであ ろう ( 表 3) 0 表 3 : 研究開発・事業組織間のコミュニケーション 3-5. 会 社横断的プロジェクトチームの 形成 多くの論者が 指摘するように、 新製品の開発にあ たっては、 研究開発組織と 事業組織の接合が 鍵になる。 この接合の度合を

大きくするためには、

両組織の構成 員から成るプロジェクトチームの 形成が有効であ るこ とも報告されている。 新たな顧客用途の 創造を目指し たコンセプト 創造型製品戦略の 実施過程においては、 より多様な顧客ニーズに 関する知識と 技術知識の新結 合が必要となるため、 全社横断的にプロジェクトチー ムを 構成することが 有効であ るように思われる。 こう したプロジェクトチームは 平均的には 5 件程度進行し ているようだが、 調査対象企業はプロジェクトチーム 数 5 件以下の企業群と 1 0 件以上の企業群に 層別され 一 6 一

(6)

るため、

それぞれについて 新分野製品比率を

見ると、

前者で 4. 26 、 後者で 6. 0 0 となりプロジェクト を積極的に利用している 企業で製品化に 成功している ようであ

る。 また、

プロジェクト 実施の決定に 関する 最高意思決定者の 地位と新分野製品比率の 関係を見る と 、 意思決定者が 会長または社長であ る場合に 5. 8 8 、 それ以下では 8. 8 0 となり、 トップマネジメン トの認知が製品化を 左右していることが 分かる 24) 。 で

は逆に、

プロジェクトチームをより

多く形成し、

それ を トップマネジメントが

認知しさえすれば、

蓄積技術 を戦略的に展開することが 可能となるのであ

ろうか。

先に分析したように、

製品化の局面では 研究開発組織 と事業組織のコミュニケーションが 重要な影響を 及ぼ

すと思われるので、

このコミュニケーションが 密な企 業 とあ まり活発でない

企業を比べると、

プロジェクト 数では 5 ないし 6 件程度で有意な 差は見られず、 最高 意思決定者が 会長または社長であ る割合も大差が

無い。

だが、

コミュニケーションは 密であ るがプロジェクト 数が 5 件以下と比較的少ない 企業では新分野製品比率 が 5. 0 8 であ るのにたいして、 コミュニケーション のあ まり活発でない 企業では、 プロジェクト 数が 1 0 件以上と多く 意思決定者も 大半が会長・ 社長であ るに もかかわらず、 新分野製品比率が 5. 0 0 に止まって

いる。

トップマネジメントの 認知に基づく 全社横断的 なプロジェクトチームの

積極利用は、

全般的に製品化

を成功に導いていくものの、

研究開発組織と 事業組織 の間のコミュニケーションを 密に行っている

場合、

特 に大きな効果を 表わすと言えるだろう ( コミュニケー 、 ンコ ンの密な企業で、 プロジェクト 数が 1 0 件以上の

企業の多くでは、

意思決定者が 会長・社長であ

り、

そ の新分野製品比率が 6. 8 0 (1 5% 弱 ) と非常に高 いものになっている ) ( 表 4) 0 4. コンセプト創造とトップの 事業構想 力 先に指摘したよ う に、 日本企業における 蓄積技術の 戦略展開力の 問題は、 多様な技術知識の 蓄積が新たな 顧客用途を創造するような

技術革新に寄与するよりも、

既存の顧客用途を 改善するための 技術革新の創出に 寄 与する傾向が 強いことにあ る。 我々の調査からこうし

た問題は、

研究開発組織内の

異分野間コミュニケー

、 ンコ ンを促進要因とし、 全社的研究所と 事業組織との 活発なコミュニケーションに 基づく、 全社横断的な 新 製品開発プロジェクトチームを 形成することによって、 あ る程度回避できるものと 思われる。 プロジェクト チームの形成においては、 トップマネ 、 ジメントの認知 が 製品化の成否を 左右している。 蓄積技術の戦略展開 力は 、 トップマネジメントの 研究開発活動への 関与の 大きさを一つの 変数としていると 言えるだろう。 ところで、 トップマネジメントの 企業経営にたいし てもつ機能は、 企業の長期に 渡る維持・発展を 支える 事業に関する 将来的な展望の 明示 ( 事業構想の構築 ) 、 事業構想を現実のものとする 製品領域の決定と 資源配 分 ( 戦略的意思決定 ) 、 そして戦略実施局面での 内部 組織の活性化と 組織成員の活動の 調整・統合 ( 執行管 理 ) であ るとされるあ ) 。 トップマネジメントが 全社横 断的プロジェクトに

関与する大きさは、

その研究開発 目的とトップマネジメントの 事業構想との 適合性の大 きさに依存するものと 思われる。 全粒横断的プロジェクトによる 新製品開発の 過程で、 既存の製品コンセプトにない 顧客用途の創造を 促すた めには、 プロジェクトを 構成する成員の 中に、 従来結 合関係にない、 技術知識と顧客ニーズに 関する知識を もっ人材がそれぞれ 含まれていなければならない。 だ が 、 プロジェクトチームという 目的指向的な 組織では、 ム チ @ ク バン ロ プ 的 断 横 社 全 4 表

間ズ のイ

(7)

(= 製品コンセプト 26)) を介して、 別個な顧客ニーズ や 技術知識と結合あ るいは結合が 予想されている。 新 たな顧客用途が 創造される以双に、 これらの知識を 結 びつける合理的な 判断材料は存在しない。 プロジェク ト内に異質な 技術知識と顧客ニーズの 知識を合目的的 に 包含 し 得る範囲は 、 異なる製品コンセプトに 属する 顧客用途間の 影響関係の関数になるものと 思われる。 日本企業において 予想される相対的に 低いコンセプト 創造の水準は、 こうした影響関係を 事前に想定するこ とにたいして、 あ まり注意が払われていないことを 示 唆しているのではないだろうか。 顧客用途間の 影響関 係が小さい場合、 プロジェクト 構成員の多様性は 限定 されたものになり、 結合関係の比較的明確な 技術知識 と顧客ニーズの 知識による製品コンセプトの 洗練に 、 研究開発活動が 収敏していくものと 思われる。 事実

我々の調査結果でも、

事業部門間での 事業戦略の内容 は、 係長クラスというプロジェクト 実行主体にはあ ま り知らされておらず ( 自社内の他の 事業部門の戦略に ついて、 「個別の計画の 詳細な内容まで 知らされてい る 」から「他の 事業部門の戦略については 全く知らさ れない」までの 6 段階で評点したところ、 全体の平均 で 4. 0 4 となった ) 、 顧客用途間の 影響関係を想定 したプロジェクトが 少ないことを 窺うことができよう。 コンセプトの 枠を越えた顧客用途間の 影響関係を想 定することは、 製品コンセプト 間の関係図式が 事前に 描かれていることを 必要とするだろう。 製品コンセプ ト間の関係図式が 企業の将来事業構造を 意味する限り において、 トップマネジメントの 構築する事業構想は 、 個別な事業展開の 方向性を展望するに 止まらず、 事業 展開を相互につなぐ 製品コンセプトの 関係図式まで 明 示しなくてはならないのであ る 27) ( 図 1) 。 図 1 : プロジェクト 構成員の多様性

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Nb 会社横断的プロジェクトチーム 5. おわりに

本報告で我々は、

コンセプト創造型製品戦略への 転 換期における 蓄積技術の戦略展開力の 問題を、 技術革 新による顧客用途の 創造という観点から 分析した。 蓄 積 技術の戦略展開 力 に生じている 問題は、 蓄積された 多様な技術知識間の

新結合が、

既存の顧客用途の 改善 に寄与する傾向の 強いことにあ る。 こうした問題は

我々の調査から、

研究開発組織内での 異 分野間コミュ ニケーション・ 全社的研究所と 事業組織とのコミュニ ケーションを 土台とした、 トップマネジメントの 認知 に基づく全社横断的な 新製品開発プロジェクトチーム の形成により 回避し得るものと

考えられる。

しかし、 既存の製品コンセプトにない 新たな顧客用途の 創造を 促進するためには、 プロジェクト 構成員に、 必要以上 の 調整活動を招来しかれないような 多様性をもたせれ ばならない。 本報告では、 このようなプロジェクト 構 成員の多様性に 起因する調整活動の 増大と多様性から もたらされる 顧客用途の創造可能性のトレードオフの 解消にたいして、 トップマネジメントの 事業構想が強 く影響することが 指摘された。 すな ね ち、 「製品 " コン セプト間の関係図式を 付与する事業構想の 構築」が、 本報告での我々の

考察から導かれた、

コンセプト創造 型製品戦略における 研究開発マネジメントの 一つの 大 きな課題なのであ る。

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4) 清水 (1990:17) 5) 池島 (1993:37), なお、 括弧内は筆者。 6) 池島 (1993:40) 7)@ ?$7J<:(1990:17) ・ cf , firucker(1973:61)

@anwyk(lm84:,W04-m05) を参照。 9)@ Peck(1990:236) 10)ftosi(1988:234) 12)cf.&rUcker(1964: 邦訳 166), 野中 (1990:64) 15) 沼 上 (1989:67) によった。 cf.Mueser(1985). ぬ s ㎏ r9(1988:460-461) 16)cf.

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参照

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