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巻頭言「Win-Win-Win の産学連携による人材育成」

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Academic year: 2021

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281 人 工 知 能  34 巻 3 号(2019 年 5 月) 広報担当理事としての任期を終えようという目前で,今回,巻頭言の執筆依頼を受けることとなった.学会広報関 係の仕事は,理事に就任する前からワーキンググループメンバとして携わらせていただいており,足掛け 6 年ほどに なる.その間,現副会長である津本周作先生をはじめとした歴代の広報担当理事の方々のもと,担当理事が交代して も持続可能な運用ができることを念頭に微力ながら運用システムの整備に尽力してきたつもりである.あくまでボラ ンティアベースでの学会運営に関しては,この“持続可能な仕組み”というところが一つのポイントになると思う. 幸いにも,現在の第三次 AI ブームはまだしばらくは続きそうな勢いであるが,その反面,この分野の研究者は老若男女, 産学問わず誰もがこれまでになくさまざまな活動に駆り出されて忙しくしているに違いない.その結果,学会活動に 割ける時間は自ずと制限されることになる.このような状況下では,担当理事や委員が身を粉にして働けば何とかな るというものでもなく,また,そういう対応の仕方は昨今の時代の流れにもそぐわず,やはり無理のない仕組みづく りが必要なのである.ただし,いくら仕組みを整備しても,最低限の人材は必要となる.筆者は理事以外にも編集委 員会メンバ,研究会主査・幹事などの立場から本学会の活動状況を見る機会があったが,運営に携わる方は“やって くれる人”が常連さんになる傾向があり,そういう方は本業でも忙しくしておられ,人材が豊富ということでもない ように思う.学会運営に限らず,この AI ブームの勢いをこのまま維持していくには,社会には若くて生きが良くて そして有能な人材がもっと必要なのである. AIについて学ぶ者にとって,現在は恵まれた環境にあると思う.先の第二次 AI ブームの頃は,筆者はまだ中高生 であり,当時も AI 搭載(正確にはファジィもしくはニューロファジィ搭載)家電なるものの宣伝を多く目にしてい た記憶がある.その終焉の理由を知ったのは,大学でこの分野に足を踏み入れてからのことであったが,そのときは すでにいわゆる冬の時代に入っていた.その当時と比べると,現在は AI ブームの牽引役となっている機械学習の主 要なアルゴリズムはオープンソースでのライブラリ化が進み,ネット上には玉石混交ではあるもののそれらに関する 記事があふれ,プログラミングについて多少の心得さえあれば,それらのアルゴリズムをベンチマークデータに適用 してみるくらいは容易にできるようになっている.ある程度の基礎を学べば,自由に参加できる国内外のコンペティ ションサイトで腕試しをすることもできる. もちろん,こういった自主的に学べる環境に限らず,教育する大学での取組みも冬の時代とは大きく異なってきて いる.政策的な後押しもあり,AI と関連の深いデータサイエンスに関する学部・学科も新設されつつある.手前味噌 で恐縮ではあるが,筆者が所属する大学院の専攻でも,博士前期課程の学生を対象としたデータサイエンティスト育 成プログラムが今春からスタートした.筆者はその取りまとめを仰せつかっているが,ちょうど本記事執筆中に受講 生の募集があり,情報系以外の学生を含め当初の想定数を超える応募があり,この分野に対する学生の興味・意欲の 高さを改めて感じたところでもある.また,筆者が学生の頃は AI 研究に懐疑的な立場であった先生方も,いつしか ご自分の看板の一つに AI を取り入れている方も少なからずおられるようであり,理由はともかく,学ぶ場が広がっ ていることは喜ばしく思う.現在の AI ブームを目の当たりにした中高生が大学に進んだときに,その興味や意欲を 引き延ばせるような学習環境がより一層整備されることを願うばかりである. 一方,産業界では AI 関連の人材が枯渇していることから,その需要は高いものの,育成するという観点からはま だ企業間の温度差は大きいように思う.実践的な技能をもった人材の育成と新しい技術の創出には,生々しいデータ に触れる機会が重要である.そのためには,やはり現場となる企業と教育を担うアカデミアの連携が重要となる.し かしながら,そのような機会を学生に提供することに積極的な企業ばかりではないのも事実である.生々しいデータ に触れるにはさまざまな制約があり,自社の利益を追求しなければならない企業にとって,学生にそのような機会を 提供することはある程度ハードルが高いことは理解できる.ただし,長期的に見れば,そのような機会がより有能な 人材の礎となることも確かである.そのような観点から,前述のような教育プログラムに限らず,学生も巻き込んだ 産学連携がより進むことが大事である.大学院生を研究プロジェクトに巻き込むことで,大学院生は実データに基づ く経験を積むことができ,また場合によっては経済的な支援も得ることができるであろう.企業は経験を積んだ人材 と研究成果の恩恵を受けることが可能となり,大学教員は研究成果を上げやすくなる.このような三者それぞれに利 がある Win-Win-Win の関係構築を進めるため,今後も力を尽くしていきたいと思う.それが,自身の楽隠居にもつ ながると信じて.

巻頭言

Win-Win-Win の産学連携による人材育成

大原 剛三

(青山学院大学)

参照

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