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日本経済の金融マクロ計量モデル 1976-1998 : 資金循環モデルによるアプローチ

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(1)

日本経済の金融マクロ計量モデル 1976-1998 : 資

金循環モデルによるアプローチ

著者

西山 茂

雑誌名

経済学論究

66

1

ページ

47-68

発行年

2012-06-20

URL

http://hdl.handle.net/10236/10771

(2)

日本経済の金融マクロ計量モデル

1976-1998

資金循環モデルによるアプローチ

A Financial Macroeconometric Model

of Japan 1976-1998

西 山   茂  

L.R.Klein presented a flow-of-funds model that resembles the input-output model of the Leontief. We formulate a flow-of-funds model by making some modification to the Klein model. The purpose of this paper is to construct a financial macroeconometric model of Japan, which is based on the modified Klein model. The sample period for the estimation is fiscal years 1976-1998. Some simulations are performed for estimation of the effect of an increase in net worth of households and the effect of a decline in the discount rate of the Bank of Japan using our financial macroeconometric model. The Japanese economy shows a tendency to expand.

Shigeru Nishiyama

  

JEL:E17, E50

キーワード:資金循環モデル、資産需要関数、金利

Keywords: Flow-of-Funds model, Asset demand function, Interest rates

1. 序

L.R.

クラインは、彼の著書『計量経済学講義』

(1983, pp.1-46)において、

レオンチェフの投入産出モデルに類似した資金循環モデルを提案した。

* 本稿は拙稿(2004)(環太平洋産業連関分析学会第 15 回大会報告論文)の翻訳を加筆修正した ものである。ただし、本稿では、説明の簡略化のため、モデルの方程式リストは省略した。本稿 を作成するにあたって、辻村和佑先生(慶應義塾大学)、辻村雅子先生(慶應義塾大学)および 小川一夫先生(大阪大学)より非常に有益なコメントを頂きました。心より感謝申し上げます。 なお、本稿における誤謬は全て筆者の責にあります。

(3)

本稿の目的は、まず、上記のクライン・モデルに修正を加えることによって

定式化される資金循環モデルに基づく、日本経済のための金融マクロ計量モデ

ルを提示することである。この金融マクロ計量モデルでは、クライン・モデル

の修正版がその全体系の核となっており、資産保有係数は利子率の関数として

推定されており、利子率は公定歩合あるいはその他の利子率の関数として推定

されている。

クライン・モデルの修正版は、クライン(1983, pp.1-46)のモデルに対し

て、対称的な見方をすることによって構成される。クライン(1983, pp.1-46)

のモデルは、負債サイドのモデルであるのに対して、クライン・モデルの修正

版は、これを資産サイドのモデルに修正したものである。

拙稿(1997)の分析の期間は、1970

年度から

1989

年度までの期間であり、

1

次石油ショックからバブルの発生までの時期を分析の対象とした。これに

対して、本稿では、分析期間を

1976

年度から

1998

年度までの期間に移して

おり、第

2

次石油ショックの時期を含み、バブルの発生と崩壊および

90

年代

の不況を含む期間を分析対象としている。本稿のモデルは、拙稿(1997)のモ

デルを改訂したものであるが、各経済部門において、資産需要方程式を用いて

推定されている資産保有係数以外の残余の資産保有係数が外生変数として扱わ

れている点で、拙稿(1997)のモデルとは異なる。

本稿の構成は以下のとおりである。基本モデルであるクライン・モデルの修

正版は、第

2

節において説明されている。拙稿(1992)において、このモデル

は詳しく説明され、このモデルによる日本経済の実証研究がなされている。第

3

節において、金融マクロ計量モデルのアウトラインが説明される。第

4

節で

はデータが説明される。第

5

節において、シミュレーション結果についてのま

とめを行なっている。

本稿の基本モデルは、基本的には、経済学的に見て、辻村・溝下(2002)に

おける資産アプローチのモデルと同型のモデルである。したがって、金融連関

表や辻村・溝下(2002)のモデルにおける資金供給の考え方は、本稿のモデル

の分析の結果を経済学的に解釈する上で、重要な示唆を与えてくれる。

(4)

2. 基本モデル(クライン・モデルの修正版)

本稿の金融マクロモデルの核となるクライン・モデルの修正版を説明する。

以下に示す資金循環勘定のデータは基本的には年度末ストックである。

A

∗j

:経済全体における第

j

資産残高。

L

S i

:第

i

番目の部門が保有する総負

債残高。

N W

i

:第

i

番目の部門が保有する正味資産残高。

A

ji

:第

i

番目の部

門が保有する第

j

資産残高。

L

ij

:第

i

番目の部門が保有する第

j

負債残高。

(1)

A

∗j

=

n

X

i=1

A

ji

(2)

L

Si

=

m

X

j=1

L

ij

+ N W

i

(i = 1,

· · · , n, j = 1, · · · , m)

資産保有係数

(3)

e

ji

=

A

ji

L

S i

負債配分係数

(4)

f

ij

=

L

ij

A

j

(1)、

(2)

が資金循環勘定において成り立つ。(1)、

(2)

(3)、

(4)

を用いて

(5)、

(6)

のような行列で表示することができる。

(5)

A

= EL

S

(6)

L

S

= F A

+ N W

(5)

および

(6)

より、

(7)

L

S

= F EL

S

+ N W

(8)

L

S

= (I

− F E)

−1

N W

(9)

A

= EF A

+ E

{NW }

(10) A

= (I

− EF )

−1

E

{NW }

この場合、行列

E

F

は次のように定義される。

E =

0

B

B

@

e

11

· · · e

1n

..

.

..

.

e

m1

· · · e

mn

1

C

C

A

F =

0

B

B

@

f

11

· · · f

1m

..

.

..

.

f

n1

· · · f

nm

1

C

C

A

(5)

ベクトル

A

, L

S

および

N W

は次のように定義される。

A

=

0

B

B

@

A

1

..

.

A

∗m

1

C

C

A

L

S

=

0

B

B

@

L

S 1

..

.

L

Sn

1

C

C

A

N W =

0

B

B

@

N W

1

..

.

N W

n

1

C

C

A

方程式

(8)

(10)

L

S

A

を外生変数

N W

と係数

E

F

の関数として

表す誘導型方程式である。それゆえ、もしも係数

e

ji

f

ij

が現実値を用いて

(3)、(4)

の形で与えられるならば、各年度末において、内生変数と外生変数の

現実値は、方程式

(8)

と方程式

(10)

の両方を満たす。われわれの金融マクロ

計量モデルは

8

経済主体と

20

金融資産からなる日本の資金循環勘定に基づい

ている。すなわち、

n = 8

m = 20

である。資金循環勘定のデータおよび実

物資産残高のデータの詳細は、第

1

表、第

2

表および第

3

表に示されている。

第 1 表.集計された資産・負債と原データにおける資産・負債の比較

集計されたデータ 原データ さ 有 保 て っ よ に 関 機 融 金 間 民 . 1 れる現金通貨 民間金融機関によって保有される現金通貨 2.M2+CD注 民間金融機関を除く部門によって保有される現金通貨、要 求払預金、郵便貯金を除く定期性預金、公的金融機関を 除く部門によって保有される譲渡性預金 3.郵便貯金 郵便貯金 4.日銀預け金 日銀預け金 5.その他の預金 政府当座預金、非居住者円預金・外貨預金、公的金融機関によって保有される譲渡性預金 6.信託 信託 7.短期債券 短期債券 8.長期国債 長期国債 9.投資信託受益証券 投資信託受益証券 10.その他の長期債券 地方債、金融債、公社公団債、事業債、外債 11.株式 株式 12.日銀貸出金・借入金 日銀貸出金・借入金 13.コール+買入手形・売渡手形 コール + 買入手形・売渡手形 14.市中貸出金・借入金 市中貸出金・借入金 15.政府貸出金・借入金 政府貸出金・借入金 16.生命保険 生命保険 17.一般政府繰入金 一般政府繰入金 18.売上債権・買入債務 売上債権・買入債務 19.対外証券投資 対外証券投資 20.その他の資産・負債 金、SDR、コマーシャル・ペーパー、その他の金融資産・負債(対外証券投資を除く) 第 1 表における上記の集計された資産・負債の左側の数字 1∼20 は本稿における分析に関連する資 産・負債項目を表し、われわれのモデルにおいて使用されている記号の添え字 j に対応している。 注)金融資産負債残高表においては、M2+CD の数値はないので、金融資産負債残高表の統計デー タから、推計する必要がある。実際の M2+CD そのものではないが、M2+CD の概念に近いもの として、上記の第 1 表のような方法で、M2+CD に相当する資産を原データから推計した。

(6)

第 2 表.集計された経済主体と原データの経済主体の比較

集計された経済主体 原データの経済主体 1.非金融法人企業 民間法人企業,公的企業 2.中央銀行 中央銀行 3.民間金融機関 民間金融機関 4.公的金融機関 公的金融機関 5.一般政府 一般政府 6.対家計民間非営利団体 対家計民間非営利団体 7.家計 家計 8.海外 海外 第 2 表における集計された経済主体の左側の数字 1∼8 は、本稿で の分析に関連する経済主体の種類を表し、われわれのモデルにおいて 用いられている記号の添え字 i に対応している。

第 3 表.経済主体によって保有される実物資産(有形資産)

経済主体 経済主体によって保有される実物資産 非金融法人企業 在庫,純固定資産,土地,森林,地下資源 民間金融機関(金融機関) 純固定資産,土地 一般政府 純固定資産,土地,森林 対家計民間非営利団体 純固定資産,土地,森林 家計 在庫,純固定資産,森林,土地,漁場

3. 金融マクロ計量モデルの説明

本節では、本稿の金融マクロ計量モデルのアウトラインを説明する。

金融モデルは、金利決定式ブロック、資産需要関数ブロックおよび資金循環

セクターの

3

つの部門からなる。金融資産・負債数は

20、経済部門数は

8

ある。基本的には各部門の正味資産残高の水準が、資金循環勘定における金融

資産・負債残高を決定する。公定歩合によって決定された各種の金利水準は、

資産需要関数で定式化された資産保有係数の水準に影響を与えることになり、

資産保有係数は資金循環セクターに入って、経済全体の金融資産残高の水準や

各部門の総負債残高の水準に影響を与える。また資金循環セクターで決まった

経済全体の市中貸出金は、非金融法人企業の市中借入金と家計の市中借入金に

影響を与える。この非金融法人企業と家計の市中借入金は、金融市場の資金

供給状態を表し、この資金供給が豊富であれば、貸出金利が低下することとな

り、金融市場の資金の需給状態が金利にフィードバックすることになる。モデ

ルの構造のアウトラインは次の図

1

で要約される。

(7)

図 1.  モデルの全体系の主な特徴

公定歩合 d

利子率

資産需要関数として推定される資産保有係数

正味資産残高 →

資金循環セクター

L

S

= F A

+ N W

A

= EL

S

→ A

j

, L

Si

資産残高,負債残高

3.1.

金利決定部門

金利決定ブロックにおいて、金利は公定歩合と資金供給によって決まる。

以下の金利決定式が本稿のモデルには含まれ、通常最小二乗法によって推定

されている。標本期間は

1976-1998

である。

R

¯

2

は自由度修正済決定係数であ

る。

DW

はダービン・ワトソン比である。係数の下の括弧の中の数値は

t

である。

貸付信託配当率

r

tr

= 0.109285

(0.65)

+ 0.7735

(13.36)

∗ d + 0.3097

(5.45)

∗ r

tr

(

−1)

DW = 0.769

R

¯

2

= 0.980055

1976-1998

コールレート

r

C

=

−0.02773

(−0.13)

+ 1.259546

(26.29)

∗ d

DW = 0.899

R

¯

2

= 0.969106

1976-1998

貸出利子率

r

L

= 3.787564

(6.78)

− 0.00154

(−2.08)

L

1,14

+ L

7,14

10

3

+ 0.5695

(10.73)

∗ r

C

DW = 0.851

R

¯

2

= 0.917692

1976-1998

(8)

国債利子率

r

S

=

−0.56277

(−1.11)

+ 0.847768

(3.77)

∗ r

L

+ 0.248455

(1.17)

∗ r

S

(

−1)

DW = 1.675

R

¯

2

= 0.888225

1976-1998

土地収益率

r

la

=

−0.026

(−1.86)

+ 0.18202

(2.55)

∗ r

E

+ 0.2363

(3.02)

∗ r

E

(

−1) + 0.6732

(6.90)

∗ r

la

(

−1)

DW = 2.020

R

¯

2

= 0.834138

1976-1998

以下に変数の意味を記す。

r

tr

:貸付信託配当率、

d

:公定歩合、

r

C

:コールレート、

r

L

:貸出利子率、

r

S

:国債利子率、

r

la

:土地収益率、

r

E

:株式収益率、

L

1,14

:非金融法人企業の市中借入金、

L

7,14

:家計の市中借入金。

3.2.

資産需要関数部門

われわれの金融マクロ計量モデルにおいて、次のようなポートフォリオ方程

式が含まれ、資産保有係数

e

ji

の水準が決定される。3.1

節の金利決定式で決

定された金利は、以下のポートフォリオ方程式での資産保有係数

e

ji

の水準の

決定に影響する。推定のための標本期間は

1976

年度‐

1998

年度である。

e

ji

,

A

ji

, L

Si

の添え字

j

は第

1

表の金融資産の番号

1∼20

を示し、

e

ji

, A

ji

, L

Si

添え字

i

は第

2

表の経済部門の番号

1∼8

を示している。次のタイプの方程式

が資産需要関数の基本形として用いられる。以下のポートフォリオ方程式は部

分調整原理に基づいている。全ての資産需要方程式は、通常最小二乗法で推定

されている。ただし、金融資産残高の資産需要関数の実際の推定結果は、説明

の簡略化のため、本稿では掲げない。

A

ji

= e

ji

∗ L

Si

e

ji

= α

0

+ α

1

r

OW N

+ α

2

r

SU B

+ α

3

»

(A

ji

(

−1)/p(−1))

(L

S i

/p)

+ α

4

X

1

+ α

5

»

X

2

(L

S i

/p)

+ α

6

»

10

5

(L

S i

/p)

e

ji

= α

0

+ α

1

r

OW N

+ α

2

r

SU B

+ α

3

e

ji

(

−1) + α

4

X

1

+ α

5

»

X

2

(L

S i

/p)

+ α

6

»

10

5

(L

S i

/p)

(9)

X

1

X

2

は利子率と第

j

番目の資産のラグ変数を除く、実質

GDP

や実質

GDP

の成長率等の変数を表す。

L

Si

は第

i

部門の総負債残高である。

A

ji

は第

i

部門によって保有される第

j

資産残高である。

A

ji

L

Si

e

ji

を乗ずること

によって決定される。

r

OW N

は第

j

番目の資産の自己利子率であり、

r

SU B

他の資産もしくは代替的な資産の利子率を表している。資産選択の観点からす

れば、

α

1

はプラスであり、

α

2

はマイナスである。

α

1

は自己利子率の自己効果

であり、

α

2

は代替的な資産の利子率の交叉効果である。

e

ji

の関数形はブレイ

ナード・トービン型のポートフォリオ方程式に似ている。ブレイナード・トー

ビン型の方程式はブレイナード・トービン(1968) およびトービン(1969)に

よって示されている。サイトウ(

1983

)と小川・斎藤・得津 (

1992

)はわが

国におけるブレイナード・トービン型の資産需要関数についての実証研究のプ

ロトタイプである。

また、本稿のモデルでは、実物資産残高の資産需要関数も含まれている。以

下の実物資産残高の資産需要方程式が通常最小二乗法によって推定されてい

る。標本期間は

1976-1998

である。

R

¯

2

は自由度修正済決定係数である。

DW

はダービン・ワトソン比である。係数の下の括弧の中の数値は

t

値である。

非金融法人企業によって保有される在庫および純固定資産

K

1

= e

k1

∗ L

S1

非金融法人企業によって保有される在庫および純固定資産の資産保有係数

e

k1

= 0.0325174

(1.42)

− 0.0046199

(−2.29)

∗ r

L

+ 0.9617911

(2.99)

Y

(L

S 1

/p)

+ 0.1587258

(0.60)

∗ e

k1

(

−1)

DW = 0.563

R

¯

2

= 0.895030

1976-1998

非金融法人企業によって保有される土地

LA

1

= e

la1

∗ L

S1

(10)

非金融法人企業によって保有される土地の資産保有係数

e

la1

= 0.080437

(3.00)

+ 0.1458

(9.65)

∗ r

la

+ 0.779

(10.05)

(LA

1

(

−1)/p(−1))

(L

S 1

/p)

− 0.2897∗

(−2.70)

10

5

(L

S 1

/p)

DW = 1.523

R

¯

2

= 0.953627

1976-1998

民間金融機関によって保有される有形資産残高(土地を含む)

K

3

= e

k3

∗ L

S3

民間金融機関によって保有される有形資産残高(土地を含む)の資産保有係数

e

k3

= 0.008316

(1.38)

+ 0.028203

(4.94)

∗ r

la

+ 0.900078

(8.94)

(K

3

(

−1)/p(−1))

(L

S 3

/p)

− 0.021174

(−1.55)

10

5

(L

S 3

/p)

DW = 1.909

R

¯

2

= 0.915496

1976-1998

家計によって保有される在庫および純固定資産

K

7

= e

k7

∗ L

S7

家計によって保有される在庫および純固定資産の資産保有係数

e

k7

=

−0.011364

(−2.54)

+ 0.3281

(5.96)

Y

(L

S 7

/p)

+ 0.5087

(6.39)

∗ e

k7

(

−1)

DW = 0.836

R

¯

2

= 0.9802

1976-1998

家計によって保有される土地

LA

7

= e

la7

∗ L

S7

家計によって保有される土地の資産保有係数

e

la7

= 0.1659

(4.33)

+ 0.223410

(7.83)

∗ r

la

+ 0.65983

(8.52)

(LA

7

(

−1)/p(−1))

(L

S 7

/p)

+ 0.194937

(0.99)

Y

− Y (−1)

Y (

−1)

− 0.14676

(−1.07)

10

5

(L

S 7

/p)

DW = 1.121

R

¯

2

= 0.888660

1976-1998

以下に変数の意味を記す。

LA

1

:非金融法人企業によって保有される土地、

LA

7

:家計の土地、

Y

:実質

GDP、

p

:GDP

デフレータ、

r

la

:土地収益率、

(11)

K

1

:非金融法人企業の在庫および純固定資産、

K

3

:民間金融機関の有形資産残高、

K

7

:家計の在庫および純固定資産、

L

S1

:非金融法人企業の総負債残高、

L

S3

:民間金融機関の総負債残高、

L

S 7

:家計の総負債残高、

e

la1

:非金融法人企業の土地の資産保有係数、

e

k1

:非金融法人企業の在庫および純固定資産の資産保有係数、

e

k3

:民間金融機関の有形資産残高の資産保有係数、

e

k7

:家計の在庫および純固定資産の資産保有係数、

e

la7

:家計の土地の資産保有係数。

3.3.

資金循環セクター

本稿のマクロ計量モデルの資金循環セクターは、第

2

節で説明したクライ

ン・モデルの修正版である。3.2

節の資産需要関数で決定された金融資産残高

の資産保有係数は、以下の資産保有係数行列の中に入って、経済全体における

各種金融資産残高や各経済部門の総負債残高の決定に影響を及ぼす。

経済全体における各種金融資産残高

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

A

1

A

2

.

..

..

.

A

20

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

=

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

e

1,1

e

1,2

e

1,3

e

1,4

e

1,5

e

1,6

e

1,7

e

1,8

e

2,1

e

2,2

e

2,3

e

2,4

e

2,5

e

2,6

e

2,7

e

2,8

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

..

.

e

20,1

e

20,2

e

20,3

e

20,4

e

20,5

e

20,6

e

20,7

e

20,8

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

L

S1

L

S 2

L

S3

L

S 4

L

S5

L

S6

L

S 7

L

S8

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

A

∗j

:経済全体の第

j

資産残高。

j = 1, 2,

· · · , 20

L

Si

:第

i

部門によって保有される総負債残高。

i = 1, 2,

· · · , 8

e

ji

:資産保有係数。

i = 1, 2,

· · · , 8

j = 1, 2,

· · · , 20

(12)

各経済部門の総負債残高

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

L

S 1

L

S2

L

S 3

L

S4

L

S 5

L

S6

L

S7

L

S 8

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

=

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

f

1,1

f

1,2

· · · f

1,20

f

2,1

f

2,2

· · · f

2,20

f

3,1

f

3,2

· · · f

3,20

f

4,1

f

4,2

· · · f

4,20

f

5,1

f

5,2

· · · f

5,20

f

6,1

f

6,2

· · · f

6,20

f

7,1

f

7,2

· · · f

7,20

f

8,1

f

8,2

· · · f

8,20

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

A

1

A

2

..

.

.

..

A

20

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

+

0

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

B

@

N W

1

N W

2

N W

3

N W

4

N W

5

N W

6

N W

7

N W

8

1

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

A

N W

i

:第

i

部門によって保有される正味資産残高。

i = 1, 2,

· · · , 8

f

ij

:負債配分係数。

i = 1, 2,

· · · , 8

j = 1, 2,

· · · , 20

本稿のマクロ計量モデルにおいては、資金循環セクターにおける上記の資産

保有係数行列中の

e

ji

の中で、

3.2

節の資産需要関数で決まった資産保有係数

以外の資産保有係数は外生変数である。

4. データ

資金循環勘定のデータおよび実物資産残高のデータは『国民経済計算年報』

(経済企画庁)の金融資産負債残高表と期末貸借対照表勘定から得られる。い

ずれも年度末ストックである。第

1

表、第

2

表および第

3

表は、

『国民経済計

算年報』

(経済企画庁)の金融資産負債残高表と期末貸借対照表勘定から得ら

れた資金循環勘定のデータおよび実物資産残高のデータについての詳細を提

示している。単位は

10

億円である。非金融法人企業の在庫および純固定資産

K

1

、非金融法人企業の土地

LA

1

、民間金融機関の有形資産残高(土地を含む)

K

3

、家計の在庫および純固定資産

K

7

、家計の土地

LA

7

については、

『国民

経済計算年報』

(経済企画庁)の期末貸借対照表勘定からデータを得ることが

できる。また、第

i

部門の正味資産残高

N W

i

は、第

i

部門の実物資産残高を

含む総資産残高から、同じ第

i

部門の金融負債残高の合計値を差し引くことに

よって得られる。

(13)

金利とその他の変数のデータの出所は以下のとおりである。

r

S

:利付国債利回り(10

年、年月末)(単位:%),

  『経済統計年報』(日本銀行調査統計局).

r

E

:株式投資収益率、東証第一部 『株式投資収益率 

2002

年』

(日本証券

経済研究所).

r

C

:コールレート(有担保翌日物)(単位:%),

  『経済統計年報 』

(日本銀行調査統計局).

r

L

:貸出約定平均金利(全国銀行)

(単位:%)

『経済統計年報』

(日本銀行

調査統計局).

d

:公定歩合(単位:%)

『経済統計年報』

(日本銀行調査統計局).

p

:GDP

デフレータ(基準年=1990)

『国民経済計算年報』

(経済企画庁).

Y

:実質

GDP(基準年=1990)

(単位:10

億円)

『国民経済計算年報』

(経

済企画庁).

r

tr

:貸付信託予想配当率(2

年もの)

(単位:%)

『経済統計年報』

(日本銀

行調査統計局).

r

la

:土地収益率、六大都市市街地価格指数の変化率(2000

3

月末=100)

  『市街地価格指数 全国木造建築費指数』(日本不動産研究所).

5. モデルの構造と動学的シミュレーションの結果

本稿の金融モデルを用いて、最終テストがまず行われ、家計における正味

資産残高の増加のケースと公定歩合の低下のケースにおける動学的シミュレー

ションが実行される。

5.1.

最終テスト

RMSE

率は以下の通り定義される。

RMSE

=

v

u

u

t 1

N

N

X

t=1

P

t

− A

t

A

t

«

2

N

:標本観察値の数。

P

t

:予測値。

A

t

:現実値。

(14)

最終テストについては、本稿では、具体的な結果は掲げないが、結果を要約

すれば、高い

RMSE

率を示した内生変数もあったが、大部分の内生変数は低

RMSE

率を示した。最終テストで得られた解はコントロール解であり、以

下のシミュレーションで計算された仮想解と比較される。これらのコントロー

ル解は以下のシミュレーション分析における基準解として用いられる。シミュ

レーションの手続きについては、サイトウ(2000,pp.123-168)において詳し

く解説されている。

5.2.

家計の正味資産残高における増加の効果

次に、モデルのシミュレーションは家計によって保有される正味資産残高の

増加の効果の推定に適用される。各経済部門の正味資産残高の拡張は、全金融

経済の成長のもっとも重要な要因である。われわれは、このシミュレーション

において、家計の正味資産残高における仮想的シフトを想定する。仮想解は、

われわれのモデルの外生変数、すなわち、家計の正味資産残高における仮想的

設定のもとで得られる。すなわち、仮想解は、家計の正味資産残高を毎年現実

値よりも

100

兆円増やした場合に得られる解である。家計の正味資産残高の

増加の金融資産と金利に対する効果は、家計によって保有される正味資産残高

における

100

兆円の増加によって跡付けられる径路をシミュレートすることに

よって推定される。シミュレーションは、1976

年度から

1998

年度にかけて、

毎年現実値よりも

100

兆円高く、家計によって保有される正味資産残高を上げ

ることによって実行される。

4-1

表∼第

4-4

表はコントロール解からの仮想解の乖離によってシミュ

レーション結果を提示している。第

4-1

表∼第

4-4

表における数字は、仮想解

マイナスコントロール解を意味する。100

兆円の家計の正味資産残高の増加の

金融的成長径路に対する効果は、第

4-1

表∼第

4-4

表において、コントロール

解と仮想解の差によって示される。

家計の正味資産残高の増加の金融成長径路に対する効果は以下のとおりで

ある。全金融経済は、家計の正味資産残高の増加のため拡張する。経済全体に

おける金融資産残高

A

∗j

は増加し、各経済主体の総負債残高

L

Si

は、家計の正

(15)

第 4-1 表.100 兆円の家計の正味資産残高における増加の効果

(仮想解マイナスコントロール解)

年度 A* 1 A*2 A*3 A*4 A*5 A*6 A*7 A*8 A*9 A*10 1976 6.8 2078.3 4909.3 10.2 39.2 1974.6 248.0 1026.0 596.3 1988.5 1977 16.1 4061.7 5117.7 18.6 64.3 2395.6 536.5 1793.9 681.4 3027.3 1978 26.5 6153.0 5198.4 27.3 16.7 2835.1 909.7 2321.5 707.0 3832.1 1979 37.1 7725.6 5391.6 35.9 75.3 3355.5 558.0 3098.6 647.9 4421.4 1980 49.7 8993.4 5812.2 45.0 40.7 4044.0 748.0 3951.4 574.0 4874.0 1981 62.6 10472.9 6301.0 55.1 60.3 4649.0 725.6 4978.9 654.1 5596.2 1982 75.1 12049.5 6614.0 64.2 64.0 5205.0 581.5 5696.0 848.5 6237.0 1983 92.4 13707.2 6782.6 79.2 39.2 5793.1 578.1 6615.5 1241.0 6965.3 1984 115.1 15032.9 6973.4 99.3 86.5 6341.6 763.9 8173.5 1530.9 8490.1 1985 137.2 16890.1 7047.9 116.5 86.2 6973.9 759.5 9223.2 1674.9 9241.0 1986 168.1 18944.3 7121.8 144.3 1488.0 7710.3 1072.3 10366.5 2610.4 9602.0 1987 190.3 21719.4 7216.7 158.0 1248.0 8464.7 1264.1 10445.4 3146.6 9687.7 1988 211.9 24817.0 7141.7 171.7 1508.2 9168.6 1303.0 10709.1 3443.5 10299.3 1989 230.9 27411.5 7576.5 180.1 1845.8 10060.1 1459.8 10882.2 3351.8 11603.5 1990 242.1 28108.5 7761.8 183.1 2041.0 10697.1 1280.0 10814.5 2995.3 12653.9 1991 248.3 29063.3 8532.7 181.0 2070.3 11075.5 1238.8 11660.7 2854.7 14714.5 1992 259.0 30924.2 9391.2 190.7 1941.1 11514.6 1442.7 12775.6 3274.0 16924.6 1993 272.2 33129.0 10112.4 203.6 1973.4 11992.8 1623.7 14541.4 3687.4 18280.6 1994 279.0 34521.7 11044.3 207.0 1543.2 12205.8 1512.5 15519.0 3630.8 18403.3 1995 291.7 37198.3 11064.5 219.9 1811.6 12651.2 1964.2 17234.5 3518.7 17505.6 1996 292.1 39309.4 11217.9 216.6 1452.6 13095.8 2114.8 18357.4 3801.4 18379.9 1997 298.0 41804.3 12141.9 218.6 1502.7 13872.0 2544.8 20806.9 3457.0 21184.4 1998 301.2 43550.9 13303.6 219.6 1442.4 14794.4 2347.4 23871.1 4177.6 21212.3 *)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

第 4-2 表.100 兆円の家計の正味資産残高における増加の効果

(仮想解マイナスコントロール解)

年度 A* 11 A*12 A*13 A*14 A*15 A*16 A*17 A*18 A*19 A*20 1976 11686.6 20.7 466.6 1738.8 5057.1 1395.2 23.8 583.0 290.4 2685.0 1977 24655.0 34.6 772.9 3911.9 5921.3 2830.0 33.2 1434.8 705.9 3968.4 1978 38741.9 65.9 1042.4 6262.2 6842.3 4248.0 38.6 2463.8 1199.1 4848.6 1979 50447.9 47.6 1351.6 8675.4 7998.8 5442.2 40.0 3501.3 1665.8 6555.1 1980 64749.5 50.9 1581.6 11614.1 8866.2 6601.9 46.3 4704.1 2169.8 8389.3 1981 76788.8 46.9 1849.2 14455.0 10067.4 7624.2 52.1 5748.5 2764.4 10968.0 1982 90828.2 71.8 2201.9 17152.9 11141.6 8547.5 54.2 6827.6 3371.8 12570.8 1983 111066.9 104.1 2758.3 20933.8 12064.9 9477.7 57.8 8064.9 4186.4 14602.1 1984 126114.6 76.7 3443.2 25919.6 12960.7 10466.2 64.0 9140.6 5235.2 18501.1 1985 144185.8 177.0 4056.2 30629.3 13284.0 11378.4 75.5 10359.0 6291.2 21672.2 1986 171349.0 278.3 5239.7 37017.6 13687.2 12326.8 77.0 11599.9 7727.9 25175.9 1987 187060.3 313.1 5347.6 41154.2 13731.0 13170.4 74.5 12981.4 8899.5 31019.6 1988 207041.3 305.6 5783.5 45146.0 13928.5 14121.4 96.7 14740.8 10026.4 37661.1 1989 221036.1 299.9 6031.9 48590.9 14500.3 15232.6 108.0 16633.1 11017.9 42232.9 1990 226706.4 248.2 5931.7 50687.8 15218.7 16150.8 183.1 18019.4 11522.8 43115.2 1991 228367.4 293.7 6078.0 51587.8 16223.0 17124.4 220.5 18999.6 11932.4 43187.9 1992 242919.6 375.3 6645.4 53312.5 18285.5 18026.3 245.9 19782.1 12739.6 45344.1 1993 261666.1 412.3 6886.9 55546.5 20448.9 18882.8 188.9 20618.3 13642.3 45665.0 1994 266026.9 282.2 6765.6 56487.2 22437.0 19557.0 123.9 21256.9 14232.3 50624.2 1995 292390.4 102.1 7643.9 58679.8 23197.8 20151.8 142.8 22322.4 15161.3 55495.1 1996 296054.8 73.1 6965.5 58278.8 24714.7 20320.6 155.7 23428.0 15597.2 59985.3 1997 311014.3 371.7 7084.6 59156.1 26950.6 21076.8 176.2 25050.8 16187.2 68909.7 1998 326940.0 91.5 6854.8 59668.5 28209.7 21673.1 225.5 26306.3 16686.4 67960.4 *)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

(16)

第 4-3 表.100 兆円の家計の正味資産残高における増加の効果

(仮想解マイナスコントロール解)

年度 LS 1 LS2 LS3 LS4 LS5 LS6 LS7 LS8 LA1 K*1 1976 15822.3 214.8 9398.4 6385.8 2725.8 396.4 101379.8 1091.4 1325.2 857.5 1977 30291.8 399.8 15625.6 7668.4 4222.1 496.3 102352.7 1894.9 3707.7 942.8 1978 45845.9 526.6 21457.6 8831.2 5627.2 585.7 103602.4 2488.7 7022.4 1138.0 1979 59411.4 718.1 26605.4 9972.4 6809.2 678.6 104808.5 3444.4 10742.3 629.6 1980 75159.6 708.9 32926.5 11315.1 8193.6 783.2 106239.1 4523.9 15413.8 51.9 1981 87504.7 903.4 40134.2 12885.3 9761.4 894.9 107671.4 5913.0 20096.3 202.8 1982 102835.6 997.9 46297.6 14237.9 10869.7 991.4 109065.8 7399.3 24923.6 579.7 1983 120618.4 1058.7 58345.3 15378.3 12345.0 1097.0 110674.4 8855.0 31746.4 762.6 1984 131100.9 1267.7 73267.8 16952.8 14537.3 1193.2 112463.1 11337.0 39588.8 685.7 1985 149367.6 1395.6 83330.2 18159.5 15897.7 1316.3 114343.5 13443.4 47658.3 1094.5 1986 166326.9 1800.4 106230.1 19012.7 17859.4 1361.1 116811.9 16011.4 57274.7 1300.8 1987 188534.9 1947.3 110895.9 19766.9 18215.2 1409.1 118633.8 20137.3 67729.8 2336.9 1988 215419.4 2106.0 119539.6 20576.5 18647.2 1521.7 120906.5 23637.6 77876.1 3343.0 1989 238160.0 2643.2 122706.8 21658.6 19294.5 1556.2 123048.5 26591.3 86688.4 2851.1 1990 248708.5 2491.7 121122.5 22624.5 19602.4 1648.8 124059.9 27247.4 90367.9 1343.2 1991 254318.8 2725.7 118738.4 24925.0 20838.7 1760.3 124924.3 27867.3 89833.9 2058.5 1992 264244.3 2986.6 130217.4 27894.1 23694.3 1937.4 125826.6 29030.0 86947.1 4097.2 1993 278262.3 3595.5 140698.0 30556.0 27078.1 2074.9 126922.7 29942.7 86614.6 5677.7 1994 285856.7 3662.3 139934.5 32748.6 29366.4 2243.5 128182.3 31327.6 86411.3 6324.1 1995 307595.1 3939.7 152806.4 34846.8 32721.2 2333.7 129314.4 33416.0 88063.4 8110.6 1996 324575.7 4155.3 143528.3 37075.1 35446.5 2346.1 129619.6 36572.2 91698.6 9269.7 1997 346176.0 6009.7 145812.1 40851.5 40510.4 2467.8 130731.4 41246.1 94495.3 9642.9 1998 360079.8 5159.4 147219.7 44033.9 45936.1 2684.6 132517.8 40071.3 96597.2 9833.4 *)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

第 4-4 表.100 兆円の家計の正味資産残高における増加の効果

(仮想解マイナスコントロール解)

年度 LA7 K*7 K3 1976 18078.4 6695.1 84.2 1977 31444.1 1821.6 227.9 1978 41022.8 1160.3 421.5 1979 47154.7 2933.6 640.7 1980 52260.1 3803.1 926.6 1981 55312.6 3955.2 1253.4 1982 57039.6 3774.6 1595.7 1983 60430.0 3637.2 2159.4 1984 65285.8 3527.6 2998.8 1985 68732.6 3853.3 3896.4 1986 72798.5 4745.7 5209.3 1987 76465.3 5254.4 6513.6 1988 78640.0 4862.8 7692.3 1989 78885.6 4704.3 8648.2 1990 76131.4 4148.2 9087.8 1991 70820.1 3177.4 9119.9 1992 64487.1 2776.0 8902.7 1993 61235.3 2825.7 8846.5 1994 59041.6 2844.3 8737.1 1995 58614.7 2950.5 8738.2 1996 59478.5 2950.4 8772.3 1997 58117.2 2940.2 8732.7 1998 56448.6 2874.7 8607.6

*)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

(17)

味資産残高の増加にあわせて、増加する。われわれのモデルの主たる構造は図

1

において示されている。

家計の正味資産残高の増加の場合、増加が顕著な経済全体における金融資産

残高について整理すると、以下のとおりである。経済全体における

M

2

+CD,

A

2

、経済全体における長期国債

A

8

、経済全体におけるその他の長期債券

A

10

経済全体における株式

A

11

、経済全体における市中貸出金

A

14

、経済全体にお

ける政府貸出金

A

15

、経済全体における生命保険

A

16

、経済全体における売上

債権・買入債務

A

18

などの増加が著しい。その中でも、経済全体における株

A

11

の増加が最も大きく、家計による資金供給に伴う金融経済の拡張の中

で、株式市場の成長が最も顕著である。また、実物資産の中では、家計の正味

資産残高の増加に伴って、非金融法人企業が保有する土地

LA

1

と家計が保有

する土地

LA

7

の増加が大きい。

各経済部門の総負債残高の中では、非金融法人企業が保有する総負債残高

L

S 1

と民間金融機関が保有する総負債残高

L

S3

が大きく増加しているが、これ

は、家計の正味資産残高の増加による資金供給の増加が、株式市場を大きく成

長させるため、株式を負債とする非金融法人企業と民間金融機関の総負債残高

が大きく増加することによるのである。

5.3.

公定歩合における低下の効果

われわれは公定歩合低下の経済全体の各種金融資産残高、

A

∗j

、および各種

経済部門の総負債残高、

L

Si

、に対する効果をシミュレートすることができる。

このシミュレーションにおいて公定歩合における仮想的シフトを想定する。わ

れわれのモデルの外生変数すなわち公定歩合における仮想的設定のもとで、仮

想解が得られ、具体的には以下の想定のもとで得られる。公定歩合は現実値よ

りも

0.5%引き下げられる。公定歩合は現実値よりも

0.5%だけ低い水準に固定

される。シミュレーションは、1976

年度から

1998

年度までの期間、現実値よ

りも低く、毎年、0.5%だけ公定歩合を引き下げることによって実行される。

5-1

表∼第

5-4

表は、シミュレーション結果をコントロール解からの仮想

解の乖離によって提示している。第

5-1

表∼第

5-4

表の数字は、仮想解マイナ

(18)

第 5-1 表.0.5%の公定歩合の低下の効果(仮想解マイナスコントロール解)

年度 A* 1 A*2 A*3 A*4 A*5 A*6 A*7 A*8 A*9 A*10 1976 1.0 734.1 2.6 1.3 4.3 74.6 17.7 257.4 2.5 221.4 1977 2.7 1385.2 9.0 3.1 9.7 182.0 45.2 555.3 5.8 454.4 1978 4.7 2062.8 18.8 5.0 2.9 325.6 102.2 872.6 10.5 658.1 1979 7.1 2727.5 30.8 7.0 16.9 512.9 111.8 1246.0 12.5 818.0 1980 10.1 3463.8 49.6 9.5 9.7 724.7 161.8 1696.8 16.4 944.4 1981 13.5 4196.7 73.3 12.3 14.6 945.0 205.0 2154.4 27.0 1146.2 1982 17.1 4958.4 99.0 15.1 16.2 1148.6 178.5 2574.0 38.3 1393.9 1983 22.1 5800.3 128.7 19.6 8.1 1344.3 193.6 3193.9 61.6 1774.2 1984 29.1 6524.5 165.7 26.0 24.2 1548.0 270.8 3935.0 96.3 2372.3 1985 36.3 7500.7 204.4 31.9 23.5 1862.8 278.4 4642.8 128.6 2846.7 1986 47.2 8842.1 256.8 42.1 480.7 2444.4 408.8 6020.7 355.0 3612.8 1987 56.3 10590.2 301.4 48.6 437.8 3144.5 524.4 6986.6 486.0 4197.3 1988 66.5 12688.8 352.8 56.4 570.6 3636.8 604.9 8119.1 604.8 5111.8 1989 76.7 14843.9 431.4 63.0 768.2 4184.2 670.2 9075.5 658.5 6106.9 1990 84.8 16226.0 486.3 67.7 878.1 4493.4 640.1 9537.3 630.8 6728.2 1991 91.4 17325.6 580.8 70.5 935.0 4164.1 604.1 9902.1 643.4 7504.4 1992 100.6 18704.7 694.6 78.4 914.1 3805.4 721.4 10809.1 800.6 8748.1 1993 110.9 20193.4 810.0 87.4 966.1 3690.8 842.5 11965.7 1086.5 9660.1 1994 117.7 21115.3 949.2 91.2 770.8 3702.6 812.3 12484.3 1202.1 9683.6 1995 127.3 22819.3 1021.3 99.7 926.8 3611.1 1031.1 13611.9 1123.3 9536.3 1996 125.1 20865.8 1040.2 92.6 691.3 3305.0 1013.9 11976.2 1205.6 8481.3 1997 122.9 19941.6 1124.4 87.3 667.4 2808.6 1092.4 11343.3 1054.6 8841.5 1998 118.2 18951.7 1231.9 81.6 584.1 2265.5 932.9 11027.6 1274.1 8016.8 *)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

第 5-2 表.0.5%の公定歩合の低下の効果(仮想解マイナスコントロール解)

年度 A* 11 A*12 A*13 A*14 A*15 A*16 A*17 A*18 A*19 A*20 1976 2613.6 5.6 72.8 32.7 161.9 153.5 3.1 94.9 144.0 358.6 1977 5604.1 9.8 140.1 255.7 347.0 362.3 6.0 262.5 298.7 714.8 1978 9032.1 19.9 200.6 589.5 553.9 603.4 8.5 487.0 459.0 989.8 1979 12524.4 14.8 286.0 1017.7 800.8 867.5 10.4 745.2 615.2 1493.0 1980 17060.6 17.7 353.4 1615.0 1040.8 1187.3 13.4 1072.4 801.3 2071.7 1981 21344.2 16.4 426.7 2282.6 1338.6 1501.0 16.0 1390.8 1005.5 2850.9 1982 26225.6 26.2 539.3 2975.2 1658.8 1806.8 17.7 1740.7 1216.5 3431.3 1983 32972.6 39.5 709.2 3990.9 2001.2 2129.6 20.5 2149.4 1503.7 4155.3 1984 38847.9 29.3 933.2 5435.0 2388.5 2480.6 23.7 2534.7 1873.0 5495.4 1985 46027.7 69.4 1159.4 6875.7 2699.7 2853.1 29.9 2995.1 2264.4 6732.9 1986 57510.4 113.5 1609.2 8980.8 3167.8 3306.2 34.9 3527.5 2882.1 8468.6 1987 67099.4 135.9 1718.9 10541.5 3495.2 3814.1 38.3 4200.8 3462.3 11213.3 1988 79700.4 141.1 1998.8 12288.3 3948.3 4413.8 56.0 5115.7 4122.2 14645.8 1989 91703.3 144.9 2227.4 14003.5 4371.0 5149.3 67.8 6197.4 4789.3 17387.6 1990 100534.2 127.6 2316.4 15455.2 4883.7 5895.3 120.5 7161.1 5281.0 18768.3 1991 106783.6 154.5 2517.8 16594.6 5390.1 6605.0 141.6 7978.6 5702.7 19532.4 1992 117965.8 201.6 2885.7 18231.8 6327.9 7214.5 156.8 8707.6 6304.9 21284.8 1993 130903.6 223.6 3067.3 20100.4 7334.2 7765.7 118.7 9448.6 6960.0 22103.0 1994 136876.1 154.3 3059.9 21272.2 8102.6 8200.5 76.6 10078.1 7418.1 24837.2 1995 153253.2 57.0 3578.6 23004.3 8770.6 8586.0 88.4 10900.4 8053.0 27927.2 1996 146655.5 36.0 2910.6 23374.2 8642.7 7971.8 81.9 11324.6 7546.8 27518.8 1997 145911.6 162.3 2737.0 23326.2 8767.9 7549.6 80.4 11748.1 7239.6 29297.2 1998 145040.9 37.3 2446.9 22631.3 8419.5 7092.5 90.1 11839.9 6948.4 26763.2 *)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

(19)

第 5-3 表.0.5%の公定歩合の低下の効果(仮想解マイナスコントロール解)

年度 LS 1 LS2 LS3 LS4 LS5 LS6 LS7 LS8 LA1 K*1 1976 2592.4 58.4 1380.9 186.1 353.0 13.6 53.2 251.0 217.1 1046.2 1977 5731.4 112.8 2712.5 412.2 766.6 32.2 180.8 512.8 673.7 1339.4 1978 9386.6 158.6 3999.5 656.1 1241.3 52.9 375.4 722.2 1368.5 1545.0 1979 13203.3 223.7 5352.8 922.4 1774.7 75.7 597.9 1020.3 2233.7 1613.4 1980 17952.6 247.0 7174.7 1228.7 2366.4 103.2 906.6 1382.7 3406.4 1636.2 1981 22157.3 316.3 9252.2 1588.2 3000.7 132.8 1252.7 1824.0 4689.7 1817.2 1982 27319.8 364.3 11150.8 1968.2 3552.1 164.4 1632.1 2315.8 6107.3 2023.4 1983 33314.4 402.2 14803.2 2363.7 4385.4 201.0 2099.3 2832.2 8151.4 2214.4 1984 37647.3 484.9 19680.9 2905.7 5387.3 239.3 2672.6 3685.4 10596.3 2301.1 1985 44781.2 547.4 23303.3 3438.3 6281.7 289.0 3316.1 4486.4 13276.0 2597.5 1986 52844.4 733.8 31854.2 4033.7 8098.6 333.0 4212.4 5668.4 16721.5 3108.5 1987 64266.4 845.0 35041.8 4624.4 9352.7 371.3 4953.9 7524.6 20903.8 3987.3 1988 79169.9 972.2 40595.0 5386.1 10810.3 437.5 5973.5 9415.4 25490.2 4867.6 1989 94283.8 1277.4 44351.5 6053.2 12109.0 476.0 7005.6 11200.9 30053.5 5272.6 1990 104916.5 1281.6 46330.6 6782.4 12895.1 536.1 7773.2 12126.0 32930.4 4921.0 1991 112792.9 1433.7 47690.0 7782.8 13383.9 598.8 8503.4 12909.6 34127.5 5132.5 1992 121942.9 1604.4 55076.8 9127.9 15114.2 695.8 9307.0 13951.7 34330.1 6043.0 1993 132706.0 1950.0 61789.6 10393.2 17019.7 781.1 10167.1 14849.8 35714.7 6879.6 1994 140246.3 2002.1 62613.4 11239.0 18151.7 864.3 11017.0 15805.3 37121.6 7220.2 1995 154538.5 2198.4 70336.5 12574.1 20252.0 937.1 11935.8 17239.4 39377.8 8277.3 1996 155372.8 2047.7 59382.8 12461.1 18647.0 924.3 12019.0 17169.2 41760.2 4733.8 1997 157506.8 2623.7 55918.7 12818.1 18477.2 940.5 12106.6 17893.5 43024.5 4043.9 1998 155335.2 2105.8 52458.5 12767.8 18356.8 970.5 12270.9 16157.5 43430.6 3785.8 *)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

第 5-4 表.0.5%の公定歩合の低下の効果(仮想解マイナスコントロール解)

年度 LA7 K*7 K3 1976 9.5 3.5 12.4 1977 39.8 9.8 37.4 1978 97.7 15.4 73.8 1979 176.7 15.6 118.8 1980 287.6 16.3 181.9 1981 425.6 13.9 259.6 1982 583.9 9.7 345.6 1983 811.3 6.2 493.5 1984 1128.2 2.7 725.6 1985 1478.0 11.9 985.8 1986 1955.2 37.0 1395.3 1987 2477.3 80.1 1832.5 1988 3020.9 88.0 2268.2 1989 3506.2 113.5 2653.3 1990 3801.1 130.6 2873.7 1991 3885.8 113.1 2946.1 1992 3864.5 111.3 2933.4 1993 4041.7 131.5 3001.2 1994 4270.2 149.9 3049.5 1995 4637.9 172.0 3153.9 1996 4996.2 218.9 3219.6 1997 5041.7 245.2 3217.9 1998 5003.0 251.9 3162.6

*)A∗ j, L S i, K 1, K 7, K3および LA1, LA7の単位は 10 億円である。

(20)

スコントロール解を意味している。第

5-1

表∼第

5-4

表は、

0.5%

の公定歩合

低下の全金融システムに対する効果を提示している。

公定歩合

0.5%の低下の全金融システムに対する効果は以下のとおりである。

債券金利

r

S

,

貸出金利

r

L

,

コールレート

r

C

および信託配当率

r

tr

は、公定

歩合

d

とともに動く。債券金利

r

S

,

貸出金利

r

L

,

コールレート

r

C

および信託

配当率

r

tr

は、公定歩合

d

が低下するにつれて低下する。資金循環勘定におけ

る全ての資産・負債残高はこれらの金利における変動に反応する。われわれ

のシステム内での資産・負債残高の水準の決定は、債券金利

r

S

,

貸出金利

r

L

,

コールレート

r

C

および信託配当率

r

tr

の変動によって影響される。

結果的には、公定歩合の低下のため、経済全体における信託

A

6

を除いて、

大部分の経済全体の金融資産残高

A

∗j

は増加し、各経済部門の総負債残高

L

Si

は増加する。概して、公定歩合における

0.5

パーセントの低下のもとで、金融

経済全体が拡張する。

公定歩合

d

における低下は、資産需要方程式において、代替的な資産の利子

率の効果と借入利子率の効果を通じて、金融経済の拡張を引き起こす。

われわれのモデルの主たる構造は図

1

において示されている。

公定歩合の引き下げの場合、増加が顕著な経済全体における金融資産残高に

ついて整理してみると以下のとおりである。経済全体における

M

2

+CD,

A

2

経済全体における長期国債

A

8

、経済全体における株式

A

11

、経済全体におけ

る市中貸出金

A

14

、経済全体における売上債権・買入債務

A

18

などが、増加

が著しい。その中でも、経済全体における株式

A

11

の増加が最も大きい。公

定歩合の引き下げに伴って、借入費用もしくは代替的な資産の利子率である貸

出金利

r

L

が低下するが、このことは、資産選択行動にもとづいて、非金融法

人企業、民間金融機関、家計の株式の資産保有係数を上昇させることとなる。

その結果、非金融法人企業、民間金融機関、家計が保有する株式(資産)が増

加する。公定歩合の引き下げに伴う金利の引き下げは、非金融法人企業、民間

金融機関、家計の資産選択行動の変化を通じて、株式市場への資金供給を増や

すこととなるのである。また、実物資産の中では、公定歩合の引き下げに伴っ

て、非金融法人企業が保有する土地

LA

1

と家計が保有する土地

LA

7

の増加が

(21)

大きい。

各経済部門の総負債残高の中では、非金融法人企業が保有する総負債残高

L

S1

と民間金融機関が保有する総負債残高

L

S3

が大きく増加している。このこ

とは、公定歩合の引き下げによって引きおこされる非金融法人企業と民間金融

機関と家計の資産選択行動の変化が、株式市場への資金供給を増加させ、株式

市場を大きく成長させるため、株式を負債とする非金融法人企業と民間金融機

関の総負債残高が大きく増加したことによるのである。

6. 結びに変えて

本稿の金融マクロ計量モデルを用いて、家計の正味資産残高の増加の場合と

公定歩合の低下の場合について、それぞれ、シミュレーションを行なった。

日本銀行は公定歩合を引き下げることによって、金融経済全体を拡張させ、

概して、経済全体における金融資産残高と各経済部門の総負債残高は、いくつ

かの場合を除いて増加する。経済全体の金融資産残高の中では、M

2

+CD、長

期国債、株式、市中貸出金、売上債権・買入債務などの金融資産残高の増加が

顕著である。また、実物資産残高では、非金融法人企業の土地、家計の土地の

増加が顕著である。各経済部門の総負債残高の中では、非金融法人企業の総負

債残高、民間金融機関の総負債残高などの増加が顕著である。いずれにして

も、公定歩合引き下げの結果、株式市場が大きく成長することが、上記の金融

経済の拡張に影響を与えていると考えることができる。

家計の正味資産残高の蓄積は実物経済における貯蓄と資産価格の上昇によっ

て引き起こされる。家計の正味資産残高の増加は、金融資産残高および負債残

高の蓄積を引き起こす。経済全体の金融資産残高の中では、M

2

+CD、長期国

債、その他の長期債券、株式、市中貸出金、政府貸出金、生命保険、売上債権・

買入債務などの増加が顕著である。各経済部門の総負債残高の中では、家計の

総負債残高は、直接家計の正味資産残高が増加するため大きいが、株式市場の

成長のため、株式を負債として含む非金融法人企業や民間金融機関の総負債残

高の増加が顕著である。特に、非金融法人企業の総負債残高が際立った成長を

示している。

(22)

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図 1.  モデルの全体系の主な特徴 公定歩合 d ↓ 利子率 ↓ 資産需要関数として推定される資産保有係数 ↓ 正味資産残高 → 資金循環セクター L S = F A ∗ + N W A ∗ = EL S → A ∗j , L Si 資産残高,負債残高 3.1

参照

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