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高齢者のヘルス・プロモーション活動としての水中運動の有用性 看護の視点からの考察

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(1)

高齢者のヘルス

Bプ

ロモーション活動

としての水中運動の有用性

∼看護の視点からの考察

刃[須 裕 Nasu Yutaka 長野県看護大学健康保健学 教授 雨宮多喜子・、池田紀子 、岩崎朗子、岩 月和彦、奥野茂代、小林美子・・ 、田村正枝、永井伸夫・・と、野坂俊弥、山田幸宏 酒井久美子 、田中高政 、藤垣静積 、堀内美和、本田智子、御子柴裕子 (2004年4月より研究参加)、 野口利香 (健康運動指導士) キ:2004年4月より香川県立保健医療大学 **:2004年4月より札幌市在住 病院勤務

***:2004年

4月より文化女子大学 我が国の健康づ くり対策は、1980 年 に入 って第

2次

国民健康づ くり対 策 (アクティブ80ヘルスプラン

)が

発表 されて活気 を増 し、健康増進の ための施設整備、人材養成等が謳わ れ、来 るべ き高齢化社会に備 えて、 高齢 になって も生 き生 きと社会参加 できる環境づ くりが進められてきた。 各地 に室内プールが設置 されたの も この頃で、1990年代 に入 ると、プー ル を単に泳 ぐ場所ではなく高齢者や 虚弱者のための「水 中運動 クラブ」 を実施す る場所 として とらえ、これ

を推し進めることが1つ の大きな潮

流となって今日に至ぅている。

水 中運動 は、水圧が自然な腹式呼 吸 と血液循環 を促進す る、水深 によ って重力負荷が大 きく変化 し膝や腰 にかかる負担が少ない、また水の抵 抗が無理 なく筋カ トレーニ ングに利 用で きる、 さらに水温の冷感刺激 に より皮膚血管の収縮 を促進 し、かつ 温感刺激 により循環機能の改善・向 上が期待で きる等のメ リッ トが挙げ られ、高血圧症、糖尿病等の生活習 慣病予防や健康維持増進 に効果が大 きいとされている。 長野県看護大学が開学 した95年に、 F高齢者の健康 と生活 に関す る研究J プロジェク ト(代表

:奥

野茂代・老 年看護学教授)力i発足 した。県立大 学 として、長野県の健康問題に取 り 組むにあた り、第

1に

注 目されたの が、長野県のそ して駒ケ根市 とその 周辺地域 における長寿 と高齢者の生 活の質の高 さ、医療費の低 さであり、 これが何 に由来す るのかを明 らかに しようと開始 されたのが この研究プ ロジェク トであった。 最初 に、大学が位置す る駒 ケ根市 をは じめ、隣接 す る中川村 ・飯 島 町・宮田村の

4市

町村 における高齢 者の生活 と意識 に関す るアンケー ト

健康づ くりへの道程

58 coMMuNITY CARE 2∞ 5‐1

(2)

調査 を行い、これ と並行 して、年1 回、各地の公民館や保健施設 を巡回 して、骨密度や各種運動機能測定、 簡単なス トレッチ指導、健康相談 を 対象高齢者 に実施 した。

4年

にわた り継続 されたこの活動 を通 じて、こ の地域の高齢者 が概 して非常に活発 であり前向 きで、家族や隣近所、地 域の人 々 とうま く折 り合 い をつ けな が ら生活 してい ることで あ り、 さら に健康や生活の質 向上 に対す る意欲 が高 く、医療 ・保健 に関す る専門的 な知識 を得 て実行す ることに高 い関 心 を寄せ ることも示 された。 95年 か ら98年 度 まで継続 した この 研究 プロジェク トの後 を受 ける形で、 「高齢者 の水 中運動 によるヘル スプロ モーシ ョン」プロジェク ト(代表 : 那須裕 ・健康保健学教授)力d立ち上 がったのは、99年に本学に室内温水 プール (25血)力馬完成 したことと、従 来の研究活動 に参加 して くれていた 高齢者の中か ら、より積極的に研究 に関わ りたい、そ して具体的に大学 の指導の元でヘル スプロモーション 活動 を定期的に行いたい という希望 が多 く寄せ られたことによる。 この 希望 に対 しては、本水 中運動 プロジ ェク ト以外にも、「西己偶者を亡 くした 高齢者が話 し合 う会」等のプログラ ムが用意 されて、現在 に至 るまで継 続 している。 高齢者の水 中運動 を始 め るに際 し て、長野 県剪ヒ御牧 村 (現・東御市) の 「ケアポ ー トみ まき」 に併設 され てい る身体教育 医学研究所 に教 えを 乞 うた。 ここでは高齢者 や幼 児 に積 極 的 に「運動 あそび」 を広 め、特 に 高齢者 においてはその転倒防止 と生 活 の質 の維持 を 目標 に掲 げて い る。 ここで、高齢者 に適 した水 中運動 プ ログ ラムや環境づ くりの検討 の ア ド バ イス を受 け、 また ここが開発 した 「健脚度 テス ト」 を高齢者 の行動体力 の指標 として用いることとした。 99年 度 は、水 中運動 に関す る情報 収集 を中心 に行 い、 また15名程度の 希望者 による予備 的 な水 中運動講座 を

6回

にわ た り試 行 した。 そ して 2000年には37名の希望者 に対 してクラ ス を

1年

にわた り24回 実施 した。 こ の参加者 は例 年3月に行 ってい る骨 密度等測定会 に参加 して くれ る人た ち (65茂以上

)か

ら希望者 を募 った。 その後 は

1年

ごとに初心者 クラスを 募集 し、また

1年

継続 した人たちで 希望者 が 自主 クラス を作 り、初心者 クラスの前 (午前11時 ∼12時)、 ある い は後 (午後

2時

半 ∼

3時

)に

実 施 されている (表1)。 初心者 のための講座 は1カ月に2 回、水曜 日の午後

1時

半 ∼

2時

半 ま で、健康運動指導士 に よる水 中歩行 を中心 とした軽 い運動の指導の もと、 研究グループメンバーが必ず

2∼

4 名加わって行い、これ を

1年

間継続 する (全24回)。 なお、本研究プロジ ェク トのメンバーの

1人

(山田幸宏) は医師であり、本研究開始に先立っ て 日本赤十字社の水 中安全法の資格 を取得 し、ほとんどすべてのクラス に参加 して参加者の安全 を期す る体 制 をとれたことが、本事業の円滑 な 運営 を継続す る上での大 きな力にな った。水中運動の前後には血圧測定 と問診 を実施 し、異常が見 られ る場 合には運動を中止する措置 を行った。 ● 2004年度 2003年度 2002年度 2001年度 2000年度 初心者 クラス (50名)開講 初心者 クラス (47名)開講 初心者 クラス (45名)開講 初心者 クラス (40名)開講 初心者 クラス (37名)開講 自主運動 クラス シニア クラス (35名) 自主運動 クラス シニアクラス (29名) 自主運動 クラス ンニアクラス (26名) 自主運動 クラス シニアクラス (22名) 自主運動 クラス スーパーシニアクラス (22名) 自主運動 クラス スーバーシニアクラス (31名) 自主運動 クラス スーバーシニアクラス (27名) し 水中運動の参加者 これまでの経週 表1

健康相談の場となる

水中運動とともに

VOL07 NO 01 59

(3)

この血圧測定 と問診 は新 たに講座 に 参加 した者 に対 して は毎 回実施 し、 ここで簡単 な健康相談や その 日の到 達 目標等 を聞いた。 プ ログ ラムの基本的構成 は、準備 運動 (10分間)、 水 中運動 (45分間)、 クー リングダウン

(5分

)か

ら成 り、血圧測定 ・間診の後 、着替 えを して プール サ イ ドに集合 し、準備運 動前 に当 日の責任者 (教員

)が

挨拶 し、連絡事項 を伝 える段取 りである。 水 中運動 の 中身 には、水 中歩行 、 ペ アにな って浮 き棒 を使 った浮 き身 歩行 、互 いの身体 マ ッサー ジ、音楽 に合 わせ ての水 中 ダンス等 が適宜組 み込 まれてい る。

1年

の講座 開催期 間中に

4回

の健脚度 (1(1111全力歩行ゝ 最大一歩幅、

40cm踏

み台昇降

)測

定 を行 い、各年度 の開始時 と終 了時 と には、主観 的幸福感 とセル フエ フ ィ カシー (GSES)・に関す る調査 を実施 した。 また毎年3月 に実施 してい る 骨密度等測定会 に も参加 を呼びかけ、 骨密 度 や重 心動揺 、長座位 体前屈 、 加速度脈波等の計波1を行っている。 本講座 に参加で きるの は原則 と し て65茂 以上で、かか りつ けの医師 に よ り水 中運動 を許可 された人、そ し て自力で大学の プール に来 られ るこ とが条件 で ある。多 くはかか りつ け

*GSES:GeneraI Seif― Etticacy Scale

● 全 く昇降 できない 着地 でふ らつ く 手 を腰 に当てれば昇降で きる 横向 きな ら降 りられる 楽 に昇降 できる 全 く昇降 できない 着地 でふ らつ く 手 を腰 に当てれば昇降で きる 横向 きな ら降 りられる 楽 に昇降 できる 3(人) 2002年4月

4(人

) 2000年4月 3(人) 2003年3月 男 性 (ni4)

4(人

) 2003年3月 男 性 (n=4) 7 12(人) 2002年4月 3 7(人) 2000年4月 2 17(人) 2003年3月 女 性 (n=21) 2002年開始 グルーブ 10(人) 2003年3月 女 性 (n=lo) 2000年開始 クループ し 水中運動前後における踏み台昇降の結果 表 2 出典 永井伸夫他 (2004):水中運動 を用いた高齢者のヘルスプロモーションに関する研究(3).平 成15年度健康づ くり研究発表会 (長野県)講演要旨集 より の医師か ら、ぜひ始 め るよ うに と励

が、

3年

後 にはふ らつ きな く楽 に昇 ま された経緯 を持つ。高血圧症 や糖

降できる群 に昇格 している (表2)。 尿病の既 往歴 を持つ人、手術 を受 け

この よ うに参加者 は、多 くの指標 た人 、腰痛症 に悩 ま され てい る人 な

において、水 中運動実施 によ り、現 ど、何 らかの身体的疾患 を持つ人 が

状 が維持 されてい ると見 るべ きで あ 半数以上 を占めてい る。 またかつ て

ろ う。 この ことは、立位や歩行時の 水 中運動 、特 に水泳 やその他 の運動

姿勢の安定 を保持 し、転倒予防 につ の経験 がある人がい る一方 で、生 ま

なが ってい ると推測 され る。 また主 れて始めて水着 を着 てプール に入 る

観 的幸福感や セル フエ フ ィカシー尺 とい う人 もかな りの数 を占めてい る。

度で見て も同様 に、大 きな変化 は見 月

2回

とはい え、人前 で裸 にな るこ

られず 、幸せ感やや る気 が維持 で き とに抵抗 を覚 える人、他 の人 に迷惑

ているのではないか と推察 され る。 をかけるのではないか と懸念 が絶 え ない人 もい る。 したがって、個人差 が大 きく均一 な集団 とはい えないの で あ るが 、 それ で も健 脚 度 の 中の

40cm踏

み台昇降 において、2000年 開 始 グループでは女性の うちの

3名

が、 当初 は途 中で介助 が必要 で あったの 水 中運動 を継続 してい る者 になぜ これ まで続 けて い るの か を聞 くと、

「Л

要痛がよくなった」「歩行が楽にな

った」

「毎日の生活に張りが出てきた」

などの声が挙がっていた。

介護予防に効果

者護の視点からの今後の展望

60 coMMuNITY CARE 2005-1

(4)

我 々の水 中運動講座の特徴 と して、 イ ンス トラクター以外 に必ず教員 あ るいは看護学生 アルバ イ トが加 わ る こと、講座 の前 に代表者 が挨拶す る こと、講座 に参加 して

1年

目の初心 者 に対 しては前後の問診 と血圧測定 を欠 か さない ことな どが あ り、自主 クラスでは年1回の怒親会 が持 たれ ている。 初 めての参加者 に とって水 中運動 は全 く新 しい経験である場合 も多 く、 その よ うな人たちに、余分 な緊張 を 与 えず に気楽に安心 して参加 して も らえる環境づ くりを心 がけているこ と、す なわち常 に看護 (ケア リング) を基調 と したスタンスを保 ち、かつ インス トラクターがそれ をよ く理解 した指導 を してい ることが本 プロジ ェク トの最大の特徴である。 水 中運動講座 に参加 し継続す るこ とによ り具体 的数値 と して体力や気 力の明確 な向上 が見 られ た とい うこ とはないが、少 な くとも加齢 による 行動体力の低下 を阻止 してい ること は明 らかである。 2∞2年には91歳の男性の参加があっ た。杖 を使 う足腰 の弱 った人で あっ たが、出席率 は60ο/οを越 えた。 この 人の脱衣・着衣 をは じめ水 中運動 中 も絶 えず教員 または学生 アルバ イ ト がつ きそっていた。

1年

間の講座参 加 を経 て、それ まで離せ なか った杖 を忘 れて帰 られ るほ どにな り、杖 な しでの歩行 が可能 で元気 にな られ た。 この人 は、

1年

後 に別の持病の治 療の ため来 られ な くな った が、よい時間 を水 中運動講 座 で過 ご していただけた と いう印象 を持 っている。 水 中運動 グル ープ参加者 か ら大学 や学生 、教員 が学 ばせて も らうことは非常 に 多い。

2年

前 か ら老年看護 学実習 の フ ィール ドの

1つ

と して学生 が参加 し、水 中 運動 の後 では参加者 との話 し合 い を持 ってお り、高齢 者 の生活 と意見 に接す る貴 写真 水中運動2004年度初心者 クラス (写真上)、 水 中運動 2004年度スーパーシエアクラス (前列真 ん中が山田医 師、後列左端が野口健康運動指導士)(写真下) 重 な機 会 となってい る。卒業研究 の 対象者 となって くれ る人 もこれ まで 数名お られた。 さらに、大学 が催す 各種の行事 、例 えば公開講座 、大学 祭 、そのほか講演会等 に率先 して参 加 して くれ るの も、 この水 中運動 グ ル ープの方 々で あ る。 その意味 で 、 この プ ロジェク トが看護大学 と地域 を結ぶ太 い絆 として機能 して くれ て い るとい える。水 中運動 の 中で声 を 掛 け合 い、名前 を呼び合 い、 ときに は肌 を接 して築 かれ る関わ りが強 い 絆の要因か とも考 える。 水 中運動 が高齢者の健脚度 をは じ め とす る行動体力低下防止 、予備力* 強化 、転倒防止や他の持病の疾患 の 悪化防止、社会的引 きこもりの予防、 さらに

QOL向

上 にいかに寄与するか を今後 とも継続 して検討 してい くこ とが本 プロジェク トの課題 で ある。 そ して、最大の 目的は、高齢者の参 加メンバ ーとの共同作業の中か ら看 護の視点で何が学べ るかを考 える機 会・場所 として捉 えてい くことだと 考える。 本研究は長野県看護大学特別研究費、ならび に日本学術振興会科学研究費の助成 を受けて実 施 されたものである。また本研究は長野県看護大 学者護実践国際研究センター看護地域貢献研究 部門(部門長・北山秋雄 健康保健学教授)の研 究プロジェク トの 1つ として推進 されている。 *予備力:その人が持 っている体力のキャパ シティから、安静時の運動量 を差 し引いたもの。 Voし0フ No 01 61

参照

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