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地域における非行対策は如何に行われるべきか : 要保護児童対策地域協議会の活動を中心として

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⑴  本論文は「平成18年度・こども未来財団助成研究・児童関連サービス調査研究事業・地域 における非行対策推進に関する研究」として行った調査研究報告※1)を基に論文として再構 成したものである。 1.はじめに−研究の目的  非行問題は,古くは親の放任,過保護,過干渉や劣悪な生活環境に発生要因を見出してき たが,近年では,親の放任,過保護,過干渉といわれた要因の多くが児童虐待であったとの 捉え方に変化している。中・長期的な視点に立てば,児童虐待対策が進展することにより, 児童虐待が起因となった非行問題は減少すると考えられるが,現状においては福祉的非行対 策が後退していると指摘されている。一方,改正児童福祉法により,平成17年度から児童家 庭相談体制が市町村において展開され,厚生労働省からは「市町村児童家庭相談援助指針」 が示された。そして法改正の大きな目玉ともいうべき「要保護児童対策地域協議会」の設置 が「できる規定」から「努める規定」に変った。これは,要保護児童に対するネットワーク の重要性が一歩前進したことでもある。しかし,前述したように市町村レベル,民間レベル のネットワークは圧倒的に児童虐待対策ネットワークが多く,法定化によりそれらのネット ワークが「要保護児童対策地域協議会」に移行する場合も多い。  しかし,近年,日本の被虐待と非行・犯罪の関連についての調査研究が行われてきている。 たとえば,法務省の法務総合研究所編『児童虐待に関する研究(第1報告)』(2001)や国立 武蔵野学院編『児童自立支援施設入所児童の被虐待経験に関する研究』(2000)に拠っても, その相関が明らかにされた。それらの研究結果を踏まえると,虐待予防,虐待対策の整備・ 充実は非行予防にもつながるものである。  そして,児童虐待の調査研究は数多く行われているが,今後の調査研究の方向として必要 なものは,児童虐待対応たけでなく,地域における非行予防,非行対策のシステム化,ネッ トワーク化も重要な課題であり,児童の「自立支援」施策の体系化にも繋がる視点であると

地域における非行対策は如何に行われるべきか

――― 要保護児童対策地域協議会の活動を中心として ―――

小木曽   宏 

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⑵ 考える。  本研究はその先行研究として位置づけ,3年前の児童福祉法改正に伴う「要保護児童対策 地域協議会」の「要保護」児童とは決して,「児童虐待」だけを示すのではなく,「非行問題」 とその対策も含まれることを前提として,市町村における実践の現状把握を行うことを第一 の目的として調査を行った。同時に本研究は,探索的研究として位置づけられたものでもあ る。  そして,もう一つの目的として,今まで「非行ソーシャルワーク実践」の専門的機関とし ても児童相談所の先駆的取り組み状況について調査・研究を行い,児童相談所独自の実践ポ イントやスキルを抽出し,今後,市町村における実践及び「要保護児童対策地域協議会」の 相談援助実践にも活用できる提言を行うこととした。 2.研究の方法と対象  最初に行った調査研究として,「要保護児童対策地域協議会」を設置している都道府県に 問い合わせを行い,「要保護児童対策地域協議会」の比較的設置率の高い都道府県を選び出 した。その後,確定した都道府県に県内市町村の全数調査という形で,224ヶ所に質問紙を 郵送し,162ヶ所の回答を得た。(有効回答数72.3%)(平成18年7月∼10月実施)  その後,非行問題に対する先駆的な取り組みを行っている市町村を選定し,聞き取り調査 を実施した。( 4箇所実施)  もう一つの調査方法として,全国の児童相談所で,「非行担当部署」並びに「非行専任職員」 等を配置しているところを選定し,直接,聞き取り調査を行った。( 4箇所実施) 3.調査結果及びその考察 (1)質問紙調査結果の検討  前述したがアンケート配布市町村 224ヶ所,有効回答数 162ヶ所  (1)人口規模と児童人口数 表1 人口規模 1万人未満 1万人以上5万人未満 5万人以上10万人未満 10万人以上30万人未満 30万人以上 計(%) 11(6.9) 64(40.0) 30(18.8) 35(21.9) 20(12.5) 160(100.0)  (人口数未記入2市あり)

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⑶  (2)協議会以前のネットワークの有無  上記,調査のように,児童福祉法改正以前からネットワークとして「要保護児童」に対す るネットワークが設置されていた。しかし,そのネットワークの多くが「児童虐待防止ネッ トワーク」としてスタートしている。  そして,表2から読み取れることとして,児童人口「15%以上20%未満」の市町村に「協 議会」が多く設置されている根拠に関して,ネットワークの機能と規模との関連から検証し て行く必要があろう。  (3)協議会の調整機関について  1)協議会の調整機関(表4)  この結果から圧倒的に「調整役」は「子ども家庭福祉主管課」である。しかし,専門職の 配置を含めて,その役割を担う市町村の主管課の体制や職員配置について,もう一歩深く検 証しなければならない課題も指摘できる。 表2 児童人口 10%未満 10%以上15%未満 15%以上20%未満 20%以上25%未満 計(%) 5(3.3) 30(19.7) 107(70.4) 10(6.6) 152(100.0)  (児童人口数未記入8市あり) 表3 協議会移行前のネットワークの有無 あ り な し 計(%) 112(69.1) 50(30.9) 162(100.0) 表4 子ども家庭福祉主管課 母子保健主管課 統合課(子ども家庭福祉が主担当) 統合課(母子保健が主担当) 104(65.4) 1(0.6) 8(5.0) 2(1.3) 統合課(子ども家庭福祉・母子保健両方が主担当) 障害福祉主管課 児童相談所 教育委員会 10(6.3) 0(0.0) 1(0.6) 1(0.6) 福祉事務所 家庭児童相談室 保健センター 保健所 4(2.5) 9(5.7) 1(0.6) 0(0.0) 法務局 警察署 その他 特定していない 計(%) 0(0.0) 0(0.0) 18(11.4) 0(0.0) 159(100.0)

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⑷  2)調整機関で活躍する人材について  この結果からも市町村の「行政職」が大きな役割を担っていることがわかるが,筆者が周 知している限り,事務職の異動サイクルは2年程度であることから,事務引き継ぎやそれま での積み重ねがきちんと行われているのかも今後の課題となるであろう。  (4)会議の開催について  1)代表者会議の開催頻度  2)実務者会議の開催頻度  3)個別ケース会議の開催頻度  現在,「要保護児童対策地域協議会」は上記のように「三層構造」になっているところが 多いと思われる。基本的に代表者会議は機関長レベル,実務者会議は課長職レベル,個別 ケース会議が担当者レベルの会議となっているが,問題はこの「三層構造会議」がどのよう に連携できているかという課題である。一番,大切な問題はケース会議で問題となったこと が,単に個別ケースの問題では決してなく,ネットワーク全体や組織運用に関わる問題であ 表5 調整機関で活躍する人材 社会福祉主事等の市区町村の子ども家庭福祉に 関わる行政職        児童福祉司等の都道府県の子ども家庭福祉に 関わる行政職       92(57.9) 5(3.2) 学校等の教員 警察官 保育士 保健師 その他 計(%) 1(0.6) 0(0.0) 4( 2.5) 32(20.1) 25(15.7) 159(100.0) 表6 代表者会議 開催していない 年に1,2回 年に3,4回 計(%) 23(15.1) 122(80.3) 7(4.6) 152(100.0) 表7 実務者会議 開催していない 年に1,2回 年に3,4回 隔月に1回 月に1,2回 計(%) 33(23.1) 49(34.3) 31(21.7) 12(8.4) 18(12.6) 143(100.0) 表8 個別ケース会議 開催していない 年に1,2回 年に3,4回 隔月に1回 月に1,2回 週1,2回 17(11.3) 19(12.6) 15(9.9) 18(11.9) 59(39.1) 20(13.2) 週3回以上 計(%) 3(2.0) 151(100.0)

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⑸ ると判断されたとき,その課題がきちんとその上部会議に上げられ,検討されているかが重 要なことである。今回の調査では,そこまで検証はできなかった。  4)庁内連絡会議の開催頻度  (5)ケースについて  1)前年度対応したケース数  2)前年度対応したケース数のうち非行関係事例数  3)非行予防活動 表9 庁内連絡会議 開催していない 年に1,2回 年に3,4回 隔月に1回 月に1,2回 週1,2回 45(51.7) 15(17.2) 5(5.7) 8(9.2) 9(10.3) 4(4.6) 表10 前年度対応したケース数(総数) 0件 1件以上100件未満 100件以上200件未満 200件以上300件未満 300件以上400件未満 18(12.1) 79(53.0) 18(12.1) 5(3.4) 5(3.4) 400件以上500件未満 500件以上600件未満 600件以上 計(%) 6(4.0) 4(2.7) 14(9.4) 149(100.1) 表11 前年度対応したケース数のうち非行関係事例数 0件 1件以上10件未満 10件以上20件未満 20件以上30件未満 30件以上40件未満 86(57.0) 53(35.1) 4(2.6) 3(2.0) 2(1.3) 50件以上 計(%) 3(2.0) 151(100.0) 表12 非行予防活動について している 今はしていないが今後予定している 今はしていないが今後も予定はない 計(%) 109(71.2) 16(10.5) 28(18.3) 153(100.0)

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⑹  (6)福祉サービスを市区町村が主体となって実施することについて  (7)市区町村の協議会による非行対応について  2)今後の協議会による援助において非行対応は可能になるか  上記のように,非行対応に関して「条件次第で可能」としている。その条件に関しては, 自由記述にて回答を得た。  その主な意見を上げてみる。  ・専門職の配置が必要  ・司法。警察の協力  ・思春期に子どもと向き合う社会資源の有無  ・市町村の非行児童を扱う範囲の設定  ・非行対応のガイドライン  ・財源の確保  その他にも多くの条件が提示された。これは,児童虐待問題とも共通することであるが, 表13 福祉サービスを市区町村が主体となって実施することについて 適当である 条件次第 である  あまり適当 ではない  不適当である 計(%) 障害児福祉行政について市 町村で実施 59(38.3) 80(51.9) 13( 8.4) 2(1.3) 157(100.0) ひとり親家庭福祉行政につ いて市町村で実施 56(35.7) 89(56.7) 11( 7.0) 1(0.6) 157(100.0) 非行児童福祉行政について 市町村で実施 24(15.5) 89(57.4) 37(23.9) 5(3.2) 157(100.0) 在宅福祉サービスについて 市町村で実施 54(34.8) 86(55.5) 14( 9.0) 1(0.6) 157(100.0) すべての子ども家庭福祉行 政について市町村で実施 23(14.9) 101(65.6) 26(16.9) 4(2.6) 157(100.0) 表14 現状の市区町村の協議会による援助において非行対応は可能か 現状でできる 現状でも条件次第でできる 現状ではややできない 現状ではできない 計(%) 16(10.4) 58(37.7) 60(39.0) 20(13.0) 154(100.0) 表15 今後の協議会による援助において非行対応は可能になるか 可能だと思う 条件次第で可能だと思う やや不可能だと思う 不可能だと思う 計(%) 17(11.3) 87(58.0) 36(24.0) 10(6.7) 150(100.0)

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⑺ これらの「条件整備」が市町村窓口にとって必要不可欠になってくる。特に非行問題と児童 虐待問題で大きく違うことは,児童虐待は子どもが「被害」を受けるが,非行の場合の多く は,子どもの「加害」問題に関わる。虐待の場合は保護者側の「虐待認識」の問題が大きく その後の関わりを左右する。しかし,非行問題の場合は,子どもがその「行動認識」がない 限り,エスカレートして行くであろう。この点に関しては後述する。 (2)聞き取り調査結果(市町村及び児童相談所)  今回の調査研究で,独自の非行対応を実践してきている市町村,及び「非行対応班」「非 行専任職員」を配置している児童相談所に対して,直接,聞き取り調査を実施した。  ① 加古川市  1)加古川市要保護児童対策地域協議会の設置経過  加古川市は2002年に児童虐待防止ネットワークのモデル事業対象市となり,児童虐待防止 ネットワークを2002年11月に立ち上げた。  2005年4月に施行された「児童福祉法の一部を改正する法律」(平成16年 法律第153号) により要保護児童対策地域協議会が法的に位置づけられたことに伴い,児童虐待防止ネット ワークを「加古川市要保護児童対策地域協議会」として2005年4月に移行させた。  機構改革により2006年度から,加古川市福祉部の「高齢者・こども支援局」を「高齢者・ 健康支援局」と「こども支援局」に再編し,「こども課」が新設された。  2)加古川市の非行対策事業の特徴と課題  非行ケースに関しては,加古川市少年愛護センターと加古川市要保護児童対策地域協議会 との連携が中心となっている。特に家族関係が原因でないものは,加古川市少年愛護セン ターのみで対応している。加古川市には市内及び各中学校区における各種団体の代表をもっ て組織し,地域における青少年問題の実態を把握するとともに,それに即した青少年の健全 育成にかかる効果的な事業を企画・実践することを目的とする「加古川市青少年育成連絡協 議会」を1971年から中学校区ごとに設置している。加古川市教育委員会青少年育成課が事務 局となっている。  地域における非行防止活動に関しては,要保護児童対策地域協議会に先行して地道な取り 組みを行ってきている。月に1回,加古川市少年愛護センターにおいて生徒指導担当教員の 情報交換会を行っており,学校との連携は非常に良好であるという。  また,不登校児支援のための加古川市独自の施策として全中学校に「メンタルサポーター」 を配置している。教員免許所有者もしくは教育関係の業務に従事した経験のある「メンタル サポーター」が,心に悩みやストレスを持った生徒宅の家庭訪問を行ったり,相談相手にな る中で,生徒と教師等との橋渡し的存在となり不登校の未然防止と不登校生徒の再登校を目

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⑻ 指す事業である。  しかし,現実問題として非行ケースの担当となった地区担当児童福祉司とは連携するが, まだ充分であるとは言えない。要保護児童対策地域協議会における個別ケース会議には,必 ず児童相談所からも参加してもらっている。隣接する明石市に兵庫県中央子ども家庭セン ターがあり県立の児童相談所唯一の一時保護所が併設されているが,常時,満床状態であり, 一時保護の依頼も困難な状況である。同様に,県立唯一の児童自立支援施設である明石学園 も隣接する明石市に設置されているが,こちらも常時,満床状態である。けれども神戸家裁 姫路支部とは,年に2回の情報交換会を行っている。加古川市少年愛護センターの隣接地に, 東播少年サポートセンター(警察の少年非行防止活動機関)があり,密接な連携をしている。 やはり,市町村には措置権がないことは非常に問題である。市町村の権限の範囲内では限界 がある。そして,保健所との連携が課題となっている。また,専門職任用についても現在の 懸案事項である。さらに,充実した対策をするための財源も大きな問題であるということが わかった。  ② 明石市  1)明石市要保護児童対策地域協議会の設置経過  明石市は2002年に児童虐待防止ネットワークのモデル事業対象市となり,児童虐待防止 図1 「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやかネット)」と 「要保護児童対策地域協議会」の布置          

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ネットワーク会議を2002年11月に立ち上げた。2001年12月,明石市下の人工砂浜が陥没し, 5歳の女児の死亡事故が発生した。その後,事故後の対応と市政の信頼回復が焦点となった 市長選挙により,現市長の北口寛人市長が2003年4月に就任。子育て支援を市行政の重要課 題として積極的に推進してきている。2004年度より,明石市健康福祉部に「こども室」が開 設された。  元・教育指導主事の谷氏を主査とし,元・警察の少年係担当者を非常勤嘱託職員として任 用している。  2004年7月21日に,「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやかネット)」をス タートした。2005年の法改正により要保護児童対策地域協議会が法的に位置づけられたこと に伴い,「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやかネット)」の一部である「全体 会(明石市青少年問題協議会)」「支援策検討所属長会議」「支援策検討実務者会議」を「要 保護児童対策地域協議会」として2006年1月12日より位置づけている。  支援策検討会議における非行ケースの検討数は,2006年度は2ケース,2005年度は4ケー ス,2006年度は1月末の時点で3ケースである。  2)明石市の非行対策事業の特徴と課題  要保護児童対策地域協議会で扱う非行ケースは,予防段階が主たるターゲットとなってい る。  非行ケースのほとんどは学校から情報が上がってくる。したがって,地域における非行対 策としては,児童相談所・警察・青少年育成センター(旧・補導所)・少年サポートセンター 等と連携する必要がある。2004年7月に,「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこ やかネット)」がスタートしたことにより,児童福祉関係者との連携はとりやすくなった。 学校関係者に「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやかネット)」の活用を促す ために,2007年度版『明石市教育の指針』(明石市教育委員会編)の「 9 生徒指導」の章 の「(2)生徒指導体制の充実と家庭・地域・関係機関との連携」に関する実践項目として「② 問題行動等への対応については,青少年育成センター・教育研究所・学校サポートチーム・ 中央こども家庭センター・警察等,関係機関や地域との日常的な『行動連携』に努めるとと もに,明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやかネット)の活用を図る」こととし た。(図2) ⑼  ○支援策検討会議での検討事例数 実務者会議の開催 虐待事例 非行事例 その他の事例 平成16年度( 7月設置) 25件 15件 2件 1件 平成17年度        34件 16件 4件 0件

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図2

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 近年は「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやかネット)」が,ケースマネジ メントの役割を担うことができるようになってきている。非行ケースを子ども単体として捉 わず,家族全体を対象にできるのは,「明石市児童健全育成支援システム(こどもすこやか ネット)」の持つ大きな可能性であると言える。非行対策の中心となるのは,措置権を持つ 児童相談所であると考える。しかし,児童福祉法改正後は,「丸投げ」の傾向が強まってい るのも事実である。措置権のない市町村の立場からは,「児童相談所とのかけひきが大変」 という感覚がある。  明石市の虐待ケース数は下がってきている。要保護児童対策地域協議会による市町村での 対策の成果も反映されているだろう。一方で,虐待ケースのすりあわせを要保護児童対策地 域協議会から提案しても受け入れてもらえない等,まだ課題も多い。しかし,要保護児童対 策地域協議会のメンバーとして,司法関係者が入っていないことも課題である。最後に,非 行ケース家庭の家族に精神障がい者がいる場合,保健師も有効な社会資源となる。障害者手 帳が交付されている場合はヘルパー派遣制度や送迎ボランティアを活用するなど,家庭をま ず支援することによって非行ケースの地域支援が可能となる場合もある。  ③ 中間市  1)中間市要保護児童対策地域協議会の設置経過  昭和40年代後半,筑豊地区の炭鉱閉山に伴い,多くの失業者が出てしまう。それは大人だ けの問題ではなく,児童,生徒にも大きな影響を与える結果となった。当時,学校にも行か ず日中からシンナーを,吸引する生徒が街のあちらこちらにもいた。そこで,市に家庭相談 室を設置し,家庭訪問など丹念に行った。相談員は男女2名配置。その後,警察OBや男性 相談員,女性相談員(各2名)の常勤化を行った。非行問題対応としては,平成12年4月に 「児童虐待防止ネットワーク」から,平成17年4月に要保護児童対策地域協議会「中間市は ばたけ子ども・ネットワーク」に移行し,平成18年6月「非行少年支援対策協議会」を立ち 上げている。  2)中間市の非行対策事業の特徴と課題  個人情報保護の観点から連携上,「守秘義務」の問題がある。やはり,都道府県の機関と は異なり,市町村の限界を感じる。そして,少年法との関連で「14歳のカベ」がある。14歳 以下だと主犯となる少年のケアができない。児童相談所の一時保護依頼もなかなか受けて くれないときがある。家庭裁判所調査官(以下,家裁)とは連携を図っている。特に性的非 行問題の対応などが多い。他に保護司,人権擁護委員など,協議会のメンバーとして入って くれている。最近はドメスティック・バイオレンスのケース対応を良く行ってくれる。そし て派出所の巡査も協力的である。学校及び教育指導課とは定期的に情報交換を行ってきてい る。平成10年から不登校,非行問題対応を行っている。非行予防に関して,シングルマザー ⑾

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の問題が深刻化してきている。妊娠,出産,若年母子家庭にどのように関わっていくかが課 題である。他に相談しやすい環境づくりとはどのようなものか。保育所入所以前の問題にど う対拠するか等である。ある意味で母性を育てること。母子関係の調整,ネット(網)ワー クからこぼれるケースの対応が必要である。モデル地区として,「非行少年対策協議会」が 設置されているが,これは警察,教育委員会が中心となっている組織である。しかし,そこ には家庭児童相談室も加わっている。実際は難しい課題が多くあるが,市町村が中心になっ てやって行く必要がある。先ほどの課題と同じように,女子の場合は保健師等の連携が不可 欠である。  ④ 前原市  1)前原市要保護児童対策地域協議会の設置経過  平成17年3月作成の「次世代育成計画」で要保護児童対策推進を掲げ,10月には「児童虐 待防止連絡設置規定」を廃止し,「前原市要保護児童対策設置規定」に移行。児童虐待のみ ならず,要保護児童全般を対象に,児童福祉に関する必要施策を提言,実行する体制をつ くって来た。つまり,前原市の特徴は児童虐待と引きこもりと非行問題を分けて考えていな いことが特徴である。児童虐待問題は乳幼児部会と発達支援部会との関係が強い。しかし, 問題行動部会は学校部会との関係から創設することになった。  2)前原市の非行対策事業の特徴と課題  「要保護児童ネットワーク」(問題行動部会)の定例化した。会議では,ケース・カンファ レンスシートを使いカンファレンスを行ってきた。週1回,児童相談所担当者が来庁して, 連携をとっている。「要保護児童ネットワーク」の構成メンバーに警察・生活安全課が入っ ている。  今後,司法機関との連携も必要になる。以前から「要保護児童ネットワーク」の前身であ る「学校担当者会」があった。実際に困っているのは学校である。そして,本ネットワーク では,各学校より,直接,児童,生徒に関わっている教員を選出してもらいメンバーとなっ ている。  福祉相談のメリットとは,家庭に関われることである。やはり親支援がメインに行われる べきではないか。家庭訪問をすると家庭の状況が見えてくる。家庭児童相談室に対して,学 校も配慮してくれる。発達的に問題のある児童は保健師を通して,関わって行く必要がある。 実際には,乳幼児の健診から相談に関わり,就学支援に繋がっていくケースもある。子ども の居場所づくりが必要である。家出や万引きなど非行を犯してしまう子どもたちの行き場も 必要である。不登校や引きこもりの学習適応教室などとは違う支援が必要である。 ⑿

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(3)児童相談所  ① 熊本県中央児童相談所  児童虐待については,「児童虐待防止法」の成立があり,行政の啓発と相まって,住民意 識も高まった。そして,住民からの関係機関への通告・相談も急増した。一方,非行につい ては,その要因が親からネグレクト等(虐待)であっても初期の段階で児童相談所や市町村 に繋がることが少なく,非行が相当進行してから警察等からの通告という形で繋がり,児童 相談所の対応も相当な労力(家裁送致等)を要することになってしまう。そして,当該児童 についても鑑別所や家庭裁判所等の関与を受けることもあり,相当の負担を強いられること になる。このようなことから,「非行と虐待の連鎖」について,啓発や広報が必要である。 法律でいう「要保護児童」という用語自体,一般的に理解しにくいので,法律の見直しや市 町村の広報などで,児童虐待に特化してしまうではなく,幅広く捉えることが必要であろう。 児童虐待には児童相談所における「児童虐待マニュアル」が整備されているが,非行対策に も今後「非行相談マニュアル」が必要である。非行問題は特に個別対応が求められる。そし て,担当職員の資質によるところも大きい。従って,以下の配置,充実が必要だと思われる。  ・ケースワーカー5人に対して一人のスーパーバイザーの配置が必要・各県の児童自立 支援施設の人的・物的体制の整備が必要・自立援助ホームの整備,非行対応ができる 専門里親の育成・中学卒業児童のケアが不十分なので,その体制づくりが必要であ る。  非行対策における県と市町村の役割分担については,市町村は児童虐待対策に比べて非行 対策について十分応えて,移行という姿勢が感じられない。市町村では子どもの非行防止の 一貫で,電話相談や子どもの街頭補導はよく行っているが,補導した子どもについての継続 的な指導ができていない。市町村教育センターや青少年センター等の担当職員や相談員等が 配置されているので,その社会資源を活用して,学校等と連携し,継続的な個別指導を行っ ていくことができないか。市町村は要保護児童対策地域協議会の機能を十分活用し,非行問 題に対応して行くべきである。そして,児童相談所は後方支援として,事例検討会等にも参 加する。市町村では児童委員や青少年指導員等の社会資源を有効活用すべきである。  他機関との連携は年一回,県警本部,各警察署・生活安全課部門との連絡会を開催してい る。女性センター(DV関係)と合同開催し,懇親も深めてきている。しかし,警察との協 議の中で,一時保護に対する認識にズレがあると感じる。たとえば,家出を繰り返す児童の 保護依頼が何度もある。平成14年度から警察官を女性相談課に配置した。その際,児童相談 所の兼務となり,立ち入り調査等で協力を得ている。児童虐待については,児童相談所,県 警本部,本庁担当課との連絡網を整備し,各市町村,県内各警察署に配布している。けれど ⒀

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も,学校において,服装違反等で校門指導を受け,学校に入れない生徒が多くいる。学校と しては,非行生徒の他の生徒への影響を危惧する傾向がある。結局,公園等のたまり場に, そのような生徒が集まる傾向が出てきている。熊本市教育委員会,教育センター,児童相談 所との年1回の連絡会を開催し,問題点の協議を行っている。また普段からの問題ケースに ついての連絡は行っている。熊本市要保護児童対策地域協議会では非行についての相談窓口 は教育委員会になっているが,平成18年12月現在,学校から2件の相談があったが,市民か らの通告はない状況である。非行問題を協議する関係機関連絡会が年1回,家庭主催で開催 されている。中学校代表,福祉事務所家庭相談室,警察,児童相談所等各機関より協議事項 を提案し協議する。児童相談所長からの家裁送致については,家裁調査官と事前協議を行っ ている。市について家庭相談室との連携で在宅指導に厚みのある支援が可能である。市が支 援しているケースにも必要に応じ,児童相談所の支援も可能になっている。町村については, 非行担当窓口がはっきりせず,専門職員もいないということで町村の支援は難しい。町村は 特に要保護児童対策地域協議会の機能を十分生かし,非行問題に対応していくべきである。 県は事例検討会にも参加し後方支援を図る必要がある。  課題として,中学生等で家出を何度も繰り返す児童の一時保護を,警察や学校等から依頼 を受けるが,本人が一時保護に納得していないため,たとえ保護しても保護所からの無断外 出を繰り返したり,他児を誘い無断外出をしたり,指導が困難な事例がある。14歳以上の虞 犯行為については警察は家裁に送致も可能であるが,家出程度では受理してくれないため, 警察は児童相談所に相談をかけてくることが多い。子どもの居場所としての学校の空き教室 を利用し,専任教員を配置した特別教室等の整備が必要である(市町村の適応指導教室は非 行児を除外しているよう)。学習面だけでなく,作業,職業訓練などが実施できることが望 まれる。退所後のフォロー(家庭支援専門委員)と児童相談所における継続指導の連携につ いては,受け入れ家庭や地域の環境調整,改善指導が必要である。重ねて地域の人材活用(主 任児童委員,NPO法人等)関係機関(学校,警察,市町村等)との連携依頼も必要であろ う。自立援助ホームの活用,施設退所時に市町村要保護対策地域協議会での対応が有効であ ろう。  ② 堺市子ども相談所  平成18年4月,堺市が政令指定都市となったため,新たに設置された。取り組みの特徴と しては,「養護・非行相談の専門チーム」を持つことである。そのモデルは大阪府子ども家 庭センターのプログラムである。大阪府の非行問題の背景には,「ひったくり」件数が多く, その対応について,大阪府としても取り組みが急務であった。大阪府には,大阪府子ども家 庭センターの他に少年補導センター(サポートセンター)がある。その組織として,警察育 成室や警察官OB,ケースワーカーがいる。 ⒁

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 堺市の現在までの非行件数は139件(平成18年4月から平成19年1月まで)である。非行 の傾向としてシンナーや集団非行が増えてきている。非行件数が多いことから,警察からの 通告が遅く,指導,援助のタイミングを逸してしまうこともある。マンパワーについて上記 のような状況から大阪府と同じようにかなり手厚い人事ができている。大阪府からのベテラ ン派遣職員が課長職としてきている。今後,市の若手職員の育成が課題ではあるが,職員は 一生懸命に業務に専念している。  大阪府と堺市は派遣の職員がいることで,連携が図りやすい。政令指定都市であるので, 区との関係から考えると地域差はあるが,国から出される方針対象は都道府県と市町村であ り,それを堺市の場合,区と読み替えてよいか戸惑う時がある。やはり,区は家庭児童相談 室が中心で,発達相談や軽微なケースについては対応できる。逆に,「非行ケース」は少ない。 しかし,3ヶ月に1回の区との連絡会を開催している。大阪府,堺市,との連携の他に,個 別ケースでも,家庭児童相談室の連携はシステムとして出来上がっている。今後,在宅ケー スでもプログラム化して行く方向にある。本市は児童虐待と非行問題ケースが多く,毎月1 回開催される学校警察連絡協議会に,協助員がボランティアとして関わっている力は大き い。少年サポートセンターとも非行問題に特化して毎月1回,連絡会を開催している。  地域差はあるが,問題として,個人情報保護の影響で学校からの情報が出なくなってきて いる。しかし,協助員が学校に関わってくれているので連携ができている。児童相談所の対 応について迅速にして欲しいという依頼はあるが,何でもすぐに,学校や警察通告,すぐ保 護という訳にはいかない。しかし,家裁調査官との連携はある。但し,家裁送致自体が難し い状況である。それは14歳以上は家裁,14歳以下は児童相談所というのが原則があるが,14 歳以下の児童通告に関して,特にきちんと本人に非行内容の確認をすることを心がける。「児 童相談所の専門職人事は約10年異動させるな」と言われるように,政令指定都市でもそのよ うな人事システムがとれるかが課題である。大阪府は堺市以外の市町村に対しても12名のベ テラン専門職を派遣してきた。これもマンパワーとして市町村は大きな力となっている。  非行児童が措置された施設等から地域に戻ってくる場合,どのように再発防止に取り組ん でいるか。また,今後の子どもや子どもを受け入れる市町村にどのようなフォローが行われ ているか。新たな取り組みとして児童自立支援施設が退所後,3ヶ月間,アフターケアする システムを持っている。児童自立支援施設職員が児童相談所職員を兼務するシステムを作っ ているのも大きい。児童相談所も退所後の児童を施設とともにサポートしていける。  ③ 名古屋市児童相談所  虐待ケースは「介入型ケースワーク」で行うことができる。リスクが高ければ,「強制介入」 も可能である。しかし,非行ケースは従来のケースワーク技法に則って,どのように関わる か,方針を立てるか検討する。警察からの通告でも学校照会は以前より,実施することはな ⒂

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い。非行傾向も「不登校ケース」に近い対応を必要とする場合が増えてきている。身柄付通 告( 1割程度),警察官同行が原則である。しかし,必ずしも一時保護を行うとは限らない。 一時保護を行わず,条件を提示して戻す場合もある。つまり,警察の通告=児童相談所一時 保護ではなく,児童相談所独自のスタンスを維持したいと思っている。虐待ケースも同じで あるが,子どもに焦点を当てつつ,親との関係は保つことを念頭においている。5名の非行 対策専任職員を配置したことが特徴である。係長が週1回,スーパーヴィジョンを行う。な るべくケースの大変さを共有し,チームワークを組んで対応することを心がけている。一方 若い職員も育ってきている。名古屋市は政令指定都市であるため,区との役割分担を行って いる。区も子ども虐待対応のため人員を増やしてきているが,非行などの相談対応は名古屋 市児童相談所が行っている。今後もこの方向は変わらないと思う。  児童相談所の若い職員は警察と対等に連携することは難しいが,月1回,警察署に通告書 を受け取りに立ち寄り,もろもろの情報も得て来る。次第に,警察の方から連絡をして来る ようになった。学校の教員が生徒指導などで苦慮していることに対し,相談にのることが多 い。しかし,どこまでそれに応えるかが今後の課題である。直接,児童福祉司が学校に行き カンファレンスすることもある。スクールカウンセラーはどちらかというと「不登校」問題 は扱えるが「非行」問題には慣れていない。そこである程度のトレーニングが必要だと思う。 特に臨床心理学的知見からケースに関わることなどが求められる。家裁は「けじめをつける ところ」,児童相談所は「生活力をつけるところ」という役割分担があると思う。家裁とは 連携は密に取れている。年1回のケース会議を実施している。家裁からの送致は年間,16件 から20件程度である。そのうち「児童相談所送致」となるケースも多い。最初から児童相談 所に通告があって,指導に乗らないケースでも,家裁決定で児童相談所に来ると,スムーズ に対応できることが多い。  近年,家庭内暴力事案が多い。以前は警察もあまり対応しなかったケースでもドメス ティック・バイオレンス問題で,児童相談所に相談がある。対応には苦慮することが多い。  名古屋市児童相談所から逆に家裁送致は年間1∼2件である。やはり,「基本は児童相談 所で,家裁は最後に」ということをモットーとする,説得による同意が大切で,権限は使わ ずに行なっている。  児童福祉,司法,矯正機関の連携が必要なケースが増えている。家裁との連携では,家裁 で処遇の見直しを図ってもらったり,予め連携ができていれば積極的に「児童相談所送致」 を受ける。たとえ少年院に送致されても,その後,手紙を送ったりして繋がることができる。 今後,少年法,少年院法改正が行われるなか,児童相談所の持ち味が強調される必要がある。 「 2号措置」による継続指導が多い。施設退所即,終了とはしない。以前は短期処遇を行っ ていた。「説得型」で関わって行き,できなければ「 4号措置」※2)に切り替える。 ⒃

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 非行専任職員は平均60∼70ケースを持っている。毎年,新規が50∼60ケース上がっても対 応できる。児童虐待専任は一人,180件位,ケースを持っている。  ④ 東京都児童相談センター  東京都では「要保護児童対策協議会設置」に伴い,「要保護」に「非行問題」も含むこと を浸透して行くことを推し進めている。東京都の児童福祉対策のもとになった『東京の児童 相談所における非行相談と児童自立支援施設の現状』という調査がある。そこでは非行相談 の24%に被虐待経験があるという結果が導き出された。明らかに非行の背景に児童虐待があ るというエビデンス・ベースとなった。児童虐待が非行問題の背景にあるという指摘から非 行はその「行動化」とも考えられる。「違い」というよりもその「因果関係」を明確にする ことで事業を進めることが大切である。  東京都は区に「子ども家庭支援センター」を設置している。そして,児童民生委員の役割 を明確にし,児童自立支援施設退所に向けて支援体制を作っていく。「東京都児童自立サポー ト事業ハンドブック」※3),そして,区市町村に対する研修も重要である。子ども家庭支援セ ンターや主任児童委員を中心に,非行相談体制が組めるように研修体制を確立した。(例『子 ども家庭支援センター 専門分野研修【非行相談】非行相談とは何か∼非行相談の現状と関 係機関の役割』)※4) 警察との連携は各児童相談所や東京都福祉局レベルでも連携を図ってい る。地域によって,連携の状況は異なっている。しかし,最近の傾向として,学校担任が個 人のレベルで児童相談所に情報を提供できない。一旦教育委員会に学校がケースを上げてか ら,情報提供が可能となり,それから学校と児童相談所で情報共有をすることが多い。そし て,学校に行くと学校の先生にスーパーヴァイズすることが増えてきた。家裁とは定期協議 会等で連携を図っている。家裁との関係ではケースについても丁寧に連携できている。学校 と児童相談所,そして家裁の三者の繋がりを持っている。東京都児童相談センターには,虐 待対策班,地域支援班,非行対応班が設置されているが,今後,先駆型子ども家庭支援セン ターと施設退所児などの家庭復帰に向けた体制作りを行っていく方向である。非行相談と地 域連携は両輪である。したがって,その組織連携は不可欠である。最近,少年院の職員が児 童相談所に研修に来る。その理由は,少年院法改正と関わりで,「少年院送致年齢下限撤廃」 となった場合を想定していると思うが,14歳以下の児童に対する「処遇技術」を児童相談所 に学ぼうとしている。やはり,児童相談所としても非行相談,支援プログラムを確立して行 かなければならない。一つは子ども達が立ち直る生活環境づくりがある。二つ目は親子関係 の改善である。前にも紹介したが,主任児童委員,児童民生委員の役割が大きい。そして, 以前から,児童福祉施設職員は施設退所後の児童のアフターケアは行ってきていたが,新た に施設退所後の自立支援として「提携型グループホーム」も始まっている。一方で,その実 践は施設で暮らす児童の大きな目標となっている。 ⒄

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4.考察と今後の課題 (1)市町村における非行相談体制の課題  市町村における児童福祉の担当者から非行対応の現状を尋ねた場合,主として警察や学校 との連携が十分にできるかどうかに対する不安の声が聞かれた。市区町村での対応が住民に 近い窓口として望ましいという意向を提示する反面,非行に対する市区町村担当者の知識や ノウハウが必ずしも十分に備わっているとはいえない現状を示唆するものであると考えられ る。これには,3つの側面があるであろう。ひとつは,非行対策そのものに対する市町村担 当者の専門性やノウハウが十分に蓄積されてきていないという側面である。次に,福祉,教 育,警察という分野ごとの分断により,横のつながりが十分に築かれていなかったという側 面である。そして,現状において要保護児童対策地域協議会を活用していく際に抱えている 課題の露呈という側面とがあるように見受けられる。市町村を中心とする子ども家庭福祉行 政の潮流の中で,予算の確保,人的資源に関する手当て(人員増や専門職の確保,研修の充 実等)が十分ではなく,要保護児童対策地域協議会の役割は何か,有効に機能させるために 必要なこととは何かということについても十分検討される必要があることが感じられる。 (2)質問紙調査の総括  本研究の主眼である非行のある子どもに対する福祉の実際は,児童虐待のように急速に対 応が講じられることになった課題とは違い,根底には警察や学校等との連携の問題が大きく 横たわっており,市町村への分権による業務の拡大による様々な懸念があり,さらに連携の 方策としての要保護児童対策地域協議会を活用する際に対応するべき課題が山積している。 現状では要保護児童対策地域協議会は例えば佐藤まゆみ(2006,2007)※5)の研究において子 ども家庭福祉担当者から指摘されているように,「当面は虐待に限って」の運営の方向性を もっていることが明らかになっており,本調査においても要保護児童対策地域協議会では現 状において虐待に偏った対応がなされていることが明らかになった。このことは,要保護児 童対策地域協議会における非行対応の検討の必要性を要するということを示唆している。本 研究により,要保護児童対策地域協議会における非行対応の実態が明らかになった。今後は その対応のあり方や具体的なスキル,ガイドラインの作成が必要があると考えられる。 (3)聞き取り調査から見えてきたものと課題  1)市町村の場合  今回の聞き取りは,4市で実施された。それぞれ,その市の取り組みの特色があった。や はり,中心的な役割を担うところが,保健部署,家庭児童相談室,教育委員会との連携など である。しかし,やはり都道府県や児童相談所の連携には苦慮している面もあり,ある意味, ⒅

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今までのように児童相談所に対し「措置」に関わることなど任せきりではなく,市町村が 「要保護対策地域協議会」を設置できるということを,「追い風」にして「要保護」問題に 取り組んで行こうと意気込みを感じることができた。しかし,反面,権限を持たないことで の「カベ」は存在し,今後,児童虐待対応の権限の移譲も含めた議論も活発化するものと考 える。そして,次に強く感じられたことは,この4市は関係機関との連携が,比較的スムー ズに行われているという印象であった。それは,通常,地域を基盤として,多くのケースに 関わっていく中で自然に出来上がった連携でもあり,どこかの機関だけで,そのケースを抱 えないという信頼関係ができていた。しかし,今後の課題として,「非行問題」に対して, 小学校から中学校へ,そして,その後の自立に向けて,継続的にその子どもや家庭支援をど こがイニシァチブをとって支援するかという問題がある。確かに保健師や家庭相談員など の専門職が中心的に担っている場合は,ある程度長期的な関わりが保障される。しかし,市 町村の児童相談窓口などの行政機関が担って行く場合,担当者の異動によって,支援が「停 滞」,若しくは「途切れ」ることのないよう,もう一つの仕組みをつくっていくことが必要 であろう。  2)児童相談所から見えてきたものと課題  今回のヒアリング対象は,2政令指定都市,2都道府県児童相談所であった。第一の印象 は「人がいる」ということである。つまり,そこには多くのケースに関わり,「非行ソーシャ ルワーク」を実践し経験を積まれた方々が第一線にいるという印象を強く持った。そして, やはり「虐待予防」は「非行予防」であると異口同音に話をされていた。そして。決して市 町村(区)とのネットワークでも「問題発生型」ネットワークではなく,日常的な「機関連 携型」ネットワークをつくっているという印象も受けた。しかし,児童虐待対応のように「介 入型ソーシャルワーク」ではなく,非行対応は「関係機関調整型ソーシャルワーク」ともい うべきスタンスがある。つまり,学校や警察からの通告から関わりが始まるにせよ虐待対応 のように「被害を受けている児童」の心身の安全を優先するという方向とはまた異なった関 わりが必要となる。つまり,その非行を犯している「本人」の意思の変化を求めて行くプロ セスである。名古屋市児童相談所の渡辺忍氏が言うように「警察の身柄付で児童相談所に通 告があっても,必ずしも保護に同意しない本人に,もう一度,今,自分がどういう状況にあ るかに気づくことが大切である」。そして,渡辺氏は「つまり,いつかこのようなことを繰 り返していけば,家裁に関わることにもなり,そこで,気づく機会もある。その時に再び, 児童相談所長送致で,児童相談所との関わりが始まるケースもある」ということである。ど んなに周りの大人が「このままじゃ,ダメになるからここでがんばんなさい」といっても「は い,わかりました」ということにはならない,ということであり,当然,児童自立支援施設 に繋がっても「罰」としての感覚は抱き続けるであろう。しかし,このような「非行ソーシャ ⒆

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⒇ ルワーク」は先輩から後輩へと引き継がれてきたが,それがある意味で,「職人芸的な伝承」 スタイルをとってきたことも事実である。今後の課題として,そのような児童相談所独自の 「非行ソーシャルワーク」を児童相談所の「専門性」として引き継いで行くのか,危惧する とともにその方途を検討したい。  なお,本研究は分担研究者,小林英義(秋田大学教授),鈴木崇之(会津大学短期大学部 専任講師),協力研究者,新開よしみ(東京家政学院大学専任講師),遠藤夏美(社会福祉法 人・新栄会,臨床心理士),関根ふき子(千葉県スクールカウンセラー,臨床心理士),佐藤 まゆみ(淑徳大学大学院総合福祉研究科・博士後期課程),島谷信幸(児童養護施設・聖家 族の家・児童指導員)の多大なる協力により実施できたことを付記する。そして,本学,柏 女霊峰教授に本研究の意義について,ご相談した折,「福祉分野における非行対策の貴重な 研究である」という心強い激励の言葉によって,平成19年度も継続研究とし,昨年度はより 深く,そしてより具体的にその成果を示したいと考えている。 ※1) 主任研究者:小木曽宏『地域における非行対策推進に関する研究報告書』財団法人こども未来 財団,2007 ※2) 児童福祉法第27条〔都道府県の採るべき措置〕 都道府県は,前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致 のあった児童につき,次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。 一.(省略) 二.児童又はその保護者を児童福祉司,知的障害者福祉司,社会福祉主事,児童委員若しくは 当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う相談支援事業 に係る職員に指導させ,又は当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター若し くは当該都道府県以外の相談支援事業を行う者に指導を委託すること。 三.(省略) 四.家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は,これを家庭裁判所に送致す ること。 ※3) 『東京都児童自立サポート事業ハンドブック』東京都福祉保健局編,2005 ※4) 『子ども家庭支援センター 専門分野研修【非行相談】非行相談とは何か∼非行相談の現状と関 係機関の役割』東京都保健福祉局少子社会対策計画課編,2006 ※5) 佐藤まゆみ「子ども家庭福祉行政実施体制のあり方に関する研究∼協議会型援助による市町村 役割強化の可能性∼」淑徳大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修士論文

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How Should the Anti-misdeed Measure in the Area be Taken ?

Mainly on the activity of

The protection necessary child measures regional conference

’―

Hiroshi OGISO

 In late years, the issue of misdeed is said when the overprotection of the parent, not only the excessive interference but also child abuse and neglect are big factors.

 However, it is pointed out that the measures of the welfare in the issue of misdeed are late while child abuse measures go.

 And, by law revision, I got possible to set up ‘The protection necessary child measures regional conference’ Therefore we performed the present conditions investigation of the anti-misdeed measure for an anti-protection child measure area.

 This article considered what I understood from the findings.

 It was an unexpected result, but there were few places that took an anti-misdeed measure in cities, towns and villages. Therefore we performed hearing investigation in the cities, towns and villages which performed an action of the pioneer.

 At the same time, I heard it in the child consultation center with the misdeed charge post.

 This study was the summary, but we were able to get a valuable result to deepen a study newly in the next fiscal year.

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