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具体的符合説の再検討

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Academic year: 2021

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研究ノート

具体的符合説の再検討

一曖昧事例ー 二曖昧事例2 三曖昧事例3 表題事例と﹁因果関係の錯誤原理﹂ 存在の予見可能性と﹁因果的符合・主観的帰属原理﹂ 方法の錯誤原理

清水晴生

一曖昧事例1。A地点のXがB地点に来たら殺すつも.りでB地点に投げた爆弾がA地点へ飛

び止まっていたAが死んだら何の錯誤か︵表題事例と﹁因果関係の錯誤原理﹂︶

事例1の性格を端的にいいあらわせば、﹁客体が一人の方法の錯誤﹂ということになろう。方法の錯誤であるならば、

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白鴎法学第14巻2号(通巻第30号)(2007)130 結論はあきらかである。しかしさらに、むしろ因果関係の錯誤と考えるべきかを検討する余地のあることにおもいいた るだろう。因果関係の錯誤であるとすれば具体的符合説からも殺人既遂の結論をみちびきうることになり、この結論は 多くの具体的符合説論者にとってむしろ好都合のもの︵結論の具体的妥当性が得られるもの︶ではなかろうか。 ここで具体的符合説論者が因果関係の錯誤という結論をみちびいた際にもちいた思考過程に対して、そこでは﹁因果 関係の錯誤原理﹂が働いた、と述べておくことにする。因果関係の錯誤原理とはすなわち、﹁客体が一人の方法の錯誤﹂ は﹁因果関係の錯誤﹂だ、ということである︵因果関係の錯誤の問題はここでの内容につきない。たとえばいわゆる ﹁早すぎた結果発生﹂につき、最高裁平成一六年三月二二日棄却決定刑集五八巻三号一八七頁。原審仙台高裁平成一五 年七月八日判決判例時報一八四七号一五四頁の評釈として、たとえば拙稿﹁実行行為性の認識に関する符合判断につい て﹂白鴎法学二四号四三頁以下。<σq一団○工Z匂譲8。ドε紹竪o o江B目窪qO日蜂βP富①σq9亮8。N“の。 。。 。。 。辱 囚曽ωけ窪の帥巴ρζ○益○目①い①一9亀−囚○一目箆①長巨巨箒H冨おω>拐①冒9墜ヨく段巽9毒99①>仁ωω・冨百pσq αRく①箒菖σq巨σqωBO①oQH一9屏①冨p8ω○覧Rω1団Oμ召≦N。。図﹂。㎝N注ω図。8“望。B3

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曖昧事例2。A地点のXがB地点に来たら殺すつもりでB地点に投げた爆弾がB地点に来

たYの頭上を越えA地点へ飛び止まっていたAが死んだら何の錯誤か︵存在の予見可能性

と﹁因果的符合・主観的帰属原理﹂︶ 事例2は、事例1では機能した因果関係の錯誤原理の働きが阻害され、もはや本来的には方法の錯誤としかいえない ケースである︵Yに対する客体の錯誤をふくむ︶。つまり﹁客体が二人の方法の錯誤﹂は本来的な方法の錯誤にほかな らない。この結論そのものは明快ともいえる。しかしなお事例1と比較検討する余地があろう。 なぜなら、A地点へのYの登場はいわば偶然であって、この部分を重視しなくてよいならば、因果関係の錯誤とされ た事例1と同様のケースになるからである。あるいはまた、ここで事例2と事例1との相違はYに危険がおよんだかど うかに尽き、その意味では両事例間の相違はYにおよんだ危険の程度差によるいわば段階的・量的な差にすぎず、扱い を異にすべきかどうかについて疑問が生じうるということもできよう。 そしてじつはこの事例2こそまさに、井田説以来の修正︵やわらかな︶具体的符合説が、従来の具体的符合説により 方法の錯誤という結論にただちにいたりうるという処理ではなしに、︵後述する︶方法の錯誤原理に︵前述の︶因果関 係の錯誤原理を優先させるべき場合がありうると説いてきたところの事例類型であるということができる。こうしたこ と︵修正具体的符合説の抱いた問題意識の意味︶は、次に見る︵方法の錯誤原理の働く︶事例3と再度比較するときに はいっそうあきらかなものとなろう。

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白鴎法学第14巻2号(通巻第30号)(2007)132 一二

曖昧事例3。A地点のXがB地点に来たら殺すつもりでB地点に投げた爆弾がB地点に来

たYの頭上を越えA地点へ飛びA地点に来たZが死んだら何の錯誤か︵方法の錯誤原理︶

事例3は、客Zに対していわば客体の錯誤状況が生じているという以外は、事例2とパラレルなケースである。しか しその﹁客Zに対していわば客体の錯誤状況が生じている﹂ということを、客体の錯誤だからといって簡単に見過ごし てよいかには疑問がのこる。なぜなら事例2と比較したとき、A地点ないしB地点付近に︵もともといたことはわかっ ていた︶Xが存在することの予見可能性と︵もともとはいなかった︶Zが存在することの予見可能性との間には、経験 に照らしてみて差が生じているといえる場合が考えられ、そのときには﹁A地点でのX死亡﹂との問に認識︵B地点で のX死亡︶との︵故意を肯定するに足る︶符合を認めることはできても、﹁A地点でのZ死亡﹂と認識との間には符合 は認められない、といえる場合がありうる。このような処理こそ修正具体的符合説︵ないし主観的帰属説︶とよばれる 立場による主張の一態様である。 私見はいま見たとおり、たんに相当因果関係の範囲内で一致する以上の因果表象は重要ではないとする立場を否定し て︵拙稿﹁実行行為性の認識に関する符合判断について﹂白鴎法学一一四号四三頁以下参照︶、それが︵符合判断上︶重 要となりうる場合があることを認め、このことを具体的事実の錯誤の処理において機能させようという立場であり、従 来の符合説になぞらえれば因果的符合︵説︶ともよびうるものと考えるが、その基本的な発想はいわゆる修正︵やわら かな︶具体的符合説︵ないし主観的帰属説︶などと揆を一にするものである︵ただし事後評価であることを重視する点 では決定的に異なる︶。

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参照

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〔追記〕  校正の段階で、山﨑俊恵「刑事訴訟法判例研究」

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