論文
保育者希望学生の音楽的資質形成について
(教育実習と保育実習の音楽表現活動の実態を基に)
冨田英也
Aboutthenatureformationofmusicofachildcarepersonhopestudent
(Onthebasisofrealityofmusicexpressionactivity
ofstudentteachingandchildcaretraining)
1.研究目的 日本の経済はバブルがはじけて以来景気が落込み、なかなか元に戻らな くなっており生活形態が大きく変わっている。バブル期を好景気や住みや すいと言っている訳ではないが、大人の誰もが働かねばならない世の中に なってきているのではないかと思われる。一つには新聞やニュースでよく 耳にするが、家庭を守っていたはずの主婦の座がなくなったことである。 働くお母さんが増え幼稚園では子どもを預ける時間帯を早めたり、延長し たりと変動せざるをえなくなった。二つには保育時問が長いためか、同じ ように保育園に子どもを預けるお母さんが増えていることである。そんな こともあってか、近年学生の就職需要が幼稚園から保育園希望に変わって 一89一いるのが事実である。また、保育園側も一人でも子どもの入園を増やした いため、園の特徴を出そうと色々な催しや教育的なことをやり始めている。 一方幼稚園では、保育園なら子どもに対する公的援助があるので、保育園 も併設し保育の時間を延長し預かることで子どもの減少に歯止めを掛け幼 稚園離れにならないよう備えている。 しかし、政府は公的援助を削減しようと、保育園の民営化や幼稚園と保 育園の機能を一つにした幼保一元化対策を進めており、「総合施設」とし て地域の実情に合わせた形態で05年度より本格的に事業が行われる予定で ある。 こうした動向があればやはり保育の形態も少しずつその流れに影響され ていくのは当然のことである。しつけや生活の援助中心であった保育園も 教育的な特長を打ち出し、幼稚園側も色々な催しを計画するなど実態はじ わじわと変化しているようである。 11月21日の朝日新聞によれば、保育園でひらがなの練習や週1回外国人 の先生と異文化に触れる時間を持ったり、料理や手話、ピアノや英会話等 も選択できるようにする園が出てきているとあった。そうなると、保育士 の資質は幼稚園の就学前教育も含めた広い教養が必要とされる。 筆者は、実際に幼稚園や保育園ではどんな音楽表現活動が行われている のか、音楽とどう関わっているのか、幼稚園実習後のアンケート調査と保 育園実習後の調査を行いその実態を調べ研究することにした。そしてこの ことが少しでも学生の意識を変え音楽的資質の向上につながり、また今後 の養成校での音楽教育のあり方を問い直すことになるのではないかと考え たからである。 ■.方法
1対象
(イ)幼児教育科2年生表現音楽前期受講生121名(ロ)幼児教育科2年生表現音楽後期受講生117名 2.調査時期 (イ)幼稚園本実習直後(1年見学実習後2度目の実習)の6月末 (ロ)保育園実習直後の9月下旬 3.調査方法
どちらも授業内記述による
4.回収 授業内回収、有効回答率(イ)95%(口)90%皿.調査内容
(イ)幼稚園 1.生活の歌はどんな歌がうたわれていましたか(年齢も明記) 2,園で計画した季節や月・行事等の歌がありましたか(対称年齢も明記) 3.幼稚園全体としてはどんな音楽活動が行われていましたか 4.担当したクラスではどんな音楽活動が行われていましたか、指導はど んな方法で行われていましたか、どんな楽器がありましたか、(歌、 お遊ぎ、動き、手あそび、合奏等、年齢毎・項目毎に答えて下さい) 5.貴方は音楽活動でどんなことを行いましたか 6.実習の体験で今後どんな音楽表現活動を身につけたいと思いますか、 その他音楽表現活動の感想。 7.貴方は責任実習ではどんなことを行いましたか (ロ)保育園 1.担当した年齢では主にどんなデイリープログラムでしたか 2.上記の活動で音楽的活動はありましたか、具体的に書いて下さい 3.あなたはどんな活動を行いましたか(音楽にこだわらないで) 4.あなたはどんな音楽表現活動を行いましたか、行った時の子どもの反応や表情はどんなでしたか
一91一5.その他保育園実習における音楽表現活動に対する感想など
IV.調査結果
(イ)幼稚園実習後の調査結果は次のようになった。 数字は件数、パーセントは少数第一位を四捨五入した。なお実習で学生の 担当した年齢はまちまちで、一つの学年に止まらずそれぞれの年齢をロー テーションし、責任実習を自分のやりやすい年齢を選んでいることと思わ れる。しかし、園の方針や他大学の実習生と重なり必ずしも希望どうりに は実施できなかったであろうと推測する。 1.生活の歌はどんな歌がうたわれていましたか 朝の歌 昼の歌 帰りの歌 年少児 70件61% 56件49% 54件47% 年中児 64件56% 57件50% 59件51% 年長児 84件73% 60件52% 68件59% ※すべての年齢で重複回答有り、曲目は省略、質問以外の曲目は削除 2.園で計画した季節や月・行事等の歌がありましたか(対称年齢も明記) 季節の歌 月の歌 行事の歌 他 年少児 合計157 78件68% 34件30% 29件25%・ 16件14% 年中児 合計177 80件70% 41件36% 34件30% 22件19% 年長児 合計227 98件85% 48件42% 47件41% 34件30%※無回答10件、すべての年齢で重複回答有り、回答は分類が無かったが曲 目を判断して分類する。曲目の掲載は省略する。 3.幼稚園全体としてはどんな音楽活動が行われていましたか 表3 1位 2位 3位 4位 5位 6位 リズム体操 41件36% おゆうぎ 28件24% 鼓笛隊 26件23% リトミック 25件22% 23件20%
歌唱
鍵盤ハーモニカ 17件15% ※無回答17件、重複回答有り※その他=ハーモニカ7件、手あそび5件、 BGM4件、和太鼓3件、音楽講師のあそび3件、ピアノ教室2件、英語でリズムあそび2件
4.担当したクラスではどんな音楽活動が行われていましたか、指導はど んな方法で行われていましたか、どんな楽器がありましたか 1位 2位 3位 4位 5位 その他 年少旧ん歌唱
42件37% 手あそび 36件31% リズム体操 11件10% リトミック8件7%
リズム楽器7件6%
鍵盤ハーモ ニカ5件、 ハーモニカ 2件 年中旧ん歌唱
39件34% 手あそび 37件32% 鍵盤ハーモ ニカ 15件13% リトミック 11件10% リズム楽器9件8%
ハーモニカ 5件、リズ ム楽器2件 年長児歌唱
46件40% 鍵盤ハーモ ニカ 39件34% 手あそび 34件30% 鼓笛隊 29件25% リズム体操 13件11% リトミック、 和太鼓、ハー モニカ、合 奏、ペープ サート、英 語あそび 一93一※すべての学年で重複回答有り、※曲目は省略する *歌唱の指導法=短く区切りながら何度もまねをして、振りをつけたり動 きをつけおゆうぎしながらうたっていた。子どもの好きなように動き、∼ のようにと声を掛けする。歌詞を少し前に伝え確認をしながらうたう。少 しずつピアノで弾きながら歌詞を教える。曖昧なところは何度も練習する。 何をうたいたいか聞いてうたう。リズムの練習をする。色々なバージョン でうたう。ファミリーデー(父親参観日)の練習でうたう。グループ毎に 歌を替えてうたう。ギターを使用してうたう。発声練習もやっていた。 *手あそび=絵本や紙芝居お話の読み聞かせの前に行う。始めにゆっくり 手本を見せ、次に先生がうたい一緒に動作をしそれから皆で一緒にやる方 法でした。 *リトミック=保育者のピアノにあわせ簡単な動物(うさぎやぞう)になっ たり、速さや音の長さを変えて行っていた。ぞうやおじいさんの動きをピ アノの低い方で弾く、あかちゃんはピアノの高い方で弾いていた。 *鍵盤ハーモニカ(ピアニカやメロディオン等)=誕生会や運動会で合奏 をする為に練習する。階名でうたってから弾いていた。ドを4回レを4回 と何度も同じ音を出しながら吹き手や指の練習をする。一日2小節ずつ覚 える。シールを貼って色が指定してある。わからない子には音の場所をお しえる。自由あそびの時間にも練習する。 *ハーモニカ=先生が手で音階を示して吹く。吸う吐くを手の動きで教え る。 *体操は=CDに合わせ先生が見本を見せ真似して踊っていた。保育者が ポーズをし子どもがまねをする、集中できているか確認をする。 *鼓笛隊(マーチング)=秋の運動会やおゆうぎ会に向けて練習する。声 に出してリズムを練習する。太鼓のリズム打ちをする。一定のリズムや変 奏したリズムを打つ。パート毎の練習をする。音楽指導の先生が来て指導 する。毎日1∼2時間練習をする。朝登園したら自分の楽器を3回練習す る。
*和太鼓=床に雑巾を敷きリズム打ちの練習をする、バチは手首で打つよ う指導する。 *楽器は=カスタネット、鈴、タンバリン、シンバル、大太鼓小太鼓、ト リオ、鍵盤ハーモニカ、鉄琴、木琴、グロッケン、シンセサイザー、等々 がある。 5.貴方は音楽活動でどんなことを行いましたか 表5 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 手あそび 104件90% 歌唱のピア ノ伴奏 100件87% シアター 21件18% 歌をうたう 14件12% リズム体操
9件8%
リトミック4件3%
鼓笛隊リズ ム指導 *無回答2件2%、*その他、責任実習で音楽を主に行った者4件3% 6.実習の体験で今後どんな音楽表現活動を身につけたいと思いますか、その他音楽表現活動の感想
1位 2位 3位 4位 5位 ピアノ伴奏 72件63% リトミックや おゆうぎ44件38%
手あそび 38件33% リズム体操 11件10% シアター6件5%
*その他、合奏3件、ギター3件、童歌あそび、オペレッタ *無回答7件6% *ピアノ演奏について=緊張してあがってしまい子どもの顔を見て弾く余 裕がなかった26件。弾きながら歌詞をリードして言えるようになりたい13 件。レパートリーを増やし色々な季節の歌やアニメソングなどもやりたい 5件。集中させる時弾くことが多かった3件。場面に応じた音楽をうたっ たり弾いたりできるようにしたい。正しい音程でうたえるようにしたい。失敗を恐れず楽しんでやる。子どもは少し遅いので速さの工夫が必要だ。 等々 *リトミックやおゆうぎについて=ピアノを使い歌や曲を移調して動きを つけた3件。子どもと一緒に踊りながら体を動かした3件。子どもがうた う歌に動きをつけて表現する2件。合図を出せるような余裕を持ってでき るようになりたい。等々 *手あそびについて=レパートリーを増やし、知らない手あそびを教えら れるようになりたい6件。正確な音程でできるようにしたい2件。何日か 繰り返して行うことが必要。アレンジと応用で子どもが関心を持てる工夫 した活動が必要。何歳児に適しているかよく把握することが必要。 *シアターについて=演技の時知っている話や歌があるとやりやすい。 *その他=子どもは歌やリズム表現が好きで嬉しそう。音楽で感覚を育て るのは楽しい。色々の表現や歌が知りたい。子どもがあきないよう工夫す る。色々な楽器を使えるようになりたい。色々なアレンジをした音楽表現 ができるようになりたい。季節感を感じてできるようになりたい。 7.貴方は本(責任)実習ではどんなことを行いましたか 表7 1位 2位 3位 4位 5位
制作
88件77% 歌唱の伴奏 39件34% 手あそび 30件26% シアター 26件23% ゲーム 21件18% 6位 7位 8位 オリジナル紙芝居
15件13% 新聞紙あそび 14件12% 絵本紙芝居の読 み聞かせ14件12%
リズム体操 14件12% リトミック的 動き12件10%
*シアター(ペープサート12件、エプロンシアター5件、軍手シアター5 件、パネルシアター4件)、*重複回答有り(ロ)保育園実習後の調査はつぎのような結果である アンケート調査の結果は幼稚園と同様に行い数字は件数、パーセントは少 数第一位を四捨五入した。本学の保育園実習の時期は主に夏休みの期間で、 学生によって異なるが8月末から9月中旬の20日間である。殆どの学生が 幼稚園実習では経験できなかった3歳未満時の保育実習を行っている。そ してそれぞれの年齢を体験し、保育園の指導や自分の希望で責任実習の年 齢を決めているようである。(学生によってはそれぞれの年齢でも責任実 習を行った者もいる) 1.担当した年齢では主にどんなデイリープログラムでしたか。 この項目は目的外なので掲載はしない。 2、上記(1)の活動で音楽的活動はありましたか、具体的に書いてくだ
さい
1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位歌唱
92件88% リズム体操 58件55% リトミック 39件37% 手あそび 25件24% 鼓笛隊 21件20% 鍵盤ハーモ ニカ 10件10% 和太鼓7件7%
*その他、手話ソング4件、絵本や紙芝居の読み聞かせ2件、ゲーム2件、 ペープサート2件、ハーモニカ。等々*具体的な内容、曲目は省略する。 3.あなたはどんな活動を行いましたか、(音楽にこだわらないで) 表9 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位制作
82件78% 読み聞かせ 74件70% シアター 56件53% 新聞紙あそ び17件 16% ゲーム 15件14% リズム体操 13件12% 集団あそび8件8%
一97一4あなたはどんな音楽表現活動を行いましたか、行った時の子どもの反 応や表情はどんなでしたか 1位 2位 3位 4位 5位 5位 手あそび 93件89% ピアノ伴奏 64件61% リトミック
8件8%
リズム体操6件6%
ゲーム5件5%
楽器制作5件5%
*その他、わらべうたあそび2件、手話ソング2件*無回答1件*反 応と表情は省略する。なお、手あそびの無回答者12件あり理由は外あそび や体操・絵を描くことが多かった。 5.その他保育園実習における音楽表現活動に対する感想など (*本稿に関係のある項目を抽出し掲載する) *歌唱について=朝の活動や給食の時間などに歌をたくさんうたっていた。 同じ曲を何日も続け、少しずつ歌を教えていました。0歳児の言葉を話せ ない子どもでも、おやつの歌が聞こえると「あ一あ一」と言いながら先生 の振りを真似して手足を動かしていました。室内のおもちゃあそび特に0 ∼2歳児の時に、保育者はよく歌をうたったり手あそびをして子どもたち が楽しく過ごせるように配慮していました。乳児から簡単な童謡をうたっ て体を動かす活動をすることによって、真似して手を打ったりすることが できるようになってくるので、初めは驚いたが大切なことだと思った。 rかわいい顔で優しい声でうたいましょう」と言葉掛けをしているので、 どなるような歌い方はしていないのが印象的で一体感を感じました。先生 は子どもの様子を見ながら静かな曲や元気な曲を弾き分け、子どもは先生 のピアノに応答してうたっているのがすごかった。動きを付けた方が子ど も達と一緒に楽しくうたえると感じました。年齢が大きくなるほど自由に 動きをつけてうたっていて楽しそうだった。授業で本に出てくる歌をうたっ ていたので、読み聞かせの時に歌を取り入れることがでました。運動会の活動が多く、運動会ための歌を毎日練習していました。運動会の歌は先生 方が替え歌にしてオリジナリティに溢れていました。運動会に行う活動や 色々な音楽に合わせて踊っていたのが見られて良かった。月ごとに歌やリ トミックの計画が決まっているのに、他にも先生の教える歌を各クラスと も自由にうたっていました。歌に力を入れている保育園で口の形や声の出 し方まで細かい指導をして、子どものうたっている姿は上手でした。 *手あそびについて=乳児は手あそびを教えるのが大変でした、しかし意 外と色々の手あそびをうたっているのには驚きでした。特に1歳未満児に 喜ばれる歌や手あそびをたくさんやりたいと感じました。次の活動に移る とき、手あそびを沢山知っていると子ども達も落ち着いて集中できること を知りました。何かやってごらんと言われやってみると、始めは子ども達 もきょとんとしていたが2回目からは一緒にやるようになり、自信につな がってよかった。色々な年齢でやってみると反応の違いがわかるよとアド バイスを受け、やってみたら反応の仕方で成長の度合いが感じられ、おも しろかった。できるだけ先生と違う手あそびをやる方が子どもも喜びいい と思いました。1∼6歳の年齢に合う手あそびを教えていただき子ども達 とあそべ少しの時間の部分実習にも役立ちました。どの先生も手あそびを たくさん知っていてとても勉強になりました。 *リトミックについて=0歳児でもリトミックをしていて、赤ちゃんでも 体を動かして楽しんでいたのに驚きました。2歳児クラスで子ども達がど んな音が何を表すか理解し、楽しそうにリトミックをしているのに驚きま した。3歳児のリトミックでは一緒に参加してとても楽しく勉強になりま した。スキップ、はいはい、駆け足、後ろ歩き、後ろ走り等、音の高さに よって動きを変えるのが難しそうでした。音楽を通して体を動かしたり友 達と活動する楽しさを味わえて良いと思った。一日の流れの中に自然とリ トミックが入っていて、音で静かにしたり、整列したり、楽しんでやって いるのが素晴らしいと思いました。とんぼのめがね等皆が知っている歌で リトミックをしていて楽しそうでした。先生方はピアノやオルガンが上手 一99一
く色々な場面で曲を使い子ども達も楽しそうにしていました。 *リズム体操について篇0∼1歳児ではカセットに合わせて活動する方法 をしりました。体力づくりを目的とするようなリズムあそびをして各年齢 に合っていて良いと思いました。音楽に合わせて体を動かしたり体操をす ることが多く、音楽が流れると子どもたちも自然に集まって踊っていまし た。音楽に合わせ様々に体を動かしていたので、改めて音楽の大切さをし りました。先生方も楽しそうで皆ダンスが好きなようでした。子ども達は リズム体操で、トンボのように飛んだり、波のように動いたり、側転した り伸び伸びと行っていました。運動会の練習で、ポケモンやハム太郎の曲 に合わせ一生懸命やっている姿が印象的でした。 *合奏・マーチングについて=合奏をすると色々な楽器に触れられるので 良いと思いました。保育者に決めてもらった楽器を練習しできると喜んで いる姿が見られました。保育士全員が年長児の指導にあたり、合図や応答 もドレミで行い鼓笛隊の個別指導をしていました。マーチングが盛んで難 しいリズムを上手に叩いているので感動しました。一生懸命練習している 姿がすごく心に残っています。鼓笛隊に力を入れており全国大会にも出場 しているほどなので、子どもが演奏しているとは思えないような音が聞こ えました。和太鼓を3∼5歳児がやっていました、リズムを覚えたり皆で 合わせたりできることがいいなと思いました。竹太鼓や和太鼓も子ども達 が好きなように叩けるようにしてあり、自由に楽器に触れられるのでいい なと思いました。 *その他、反省や感想等=どの年齢にもデイリープログラムには音楽が必 要だと実感しました。子どもの表情を見ながらピアノを弾く余裕がなかっ たので、もう少し練習が必要だと感じました。手あそび等子どもから見て 逆にならないように左右逆にやることも必要だった。手あそびのリズムや 音程が人によって違っているので、子どもが戸惑うので統一しないと覚え られないと感じました。リズムあそびや歌が月毎に替わって子ども達は楽 しそうに音楽活動をしていました。子どもの音楽活動の興味や積極性を感
じることができました。楽器のマラカスは自分で拾ってきた小石で作り、 音を作る興味をもたせ楽しみながらやっていました。CDをかけながら絵 本を見る音楽絵本を初めて知りましたミュージカルのようで楽しかった。 保育中心のあたたかい保育園で良かったが、もう少し音楽活動があっても よいのではないかと感じました。知らない歌が多いので様々な曲を教えて 欲しい。手話ソングもやってみたいと思います。多人数であそべる音楽あ そびをもっと知りたいと思います。以前に授業でパネルシアターを教えて いただきましたが、この実習でも使えるものを教えてもらいたい。
V.考察
幼稚園の調査で1・2の質問は本稿の内容にはあまり関係がないが貴重 な資料なので結果だけ掲載した。調査にはどの項目にも曲目がありさらに 詳しく知ることができる、しかし紙面の都合で削除した。 音楽活動としては、表3で判るように音楽に合わせ体を動かすリズム体 操がトップになっている。このことは音楽を理解するということではなく、 体の動きで音楽の楽しさや喜びを感じていると言うことがいえる。そして 動きと音楽とリズムが普段の子どもの生活に密着し、表現活動の一環になっ ているものと考察できる。続いておゆうぎ、鼓笛隊、リトミック、歌唱が 20∼24%と同様なパーセンテージになり全体的な幼稚園の音楽活動として 捉えることができる。 っづいて、担当したクラスで音楽活動はありましたかの質問に対し、表 4の幼稚園では年少児∼年長児まで歌唱がトップであり、年少年中児で2 位に手あそびがあり、年長児では鍵盤ハーモニカになっている。さらにリ ズム体操とリトミックは年齢が上がるにしたがって順位が下がっている。 このことは、音楽と動きの体系が年少児の方が得意であると判断できる。 そして、保育園の表8の質問でも同じ傾向があり、1位が歌唱で2位と3 位にリズム体操リトミックの順になっている。 一101一また、音楽でも技術的なことを扱う鍵盤ハーモニカは表4のように年長 児になるに従って順位が上がっている。さらに、年長児では年少年中児に みられない鼓笛隊の練習が入っている。これらは、秋の運動会やおゆうぎ 会に向けて行っているところが大半である。保育園でも同じように鼓笛隊 に力をいれ、講師の先生を呼んで指導を受けたり全国大会に出場するなど、 早期教育的な面も見られ、学生の感想からも厳しい練習をしていることが 伺える。ある意味では幼稚園や保育園の特長を社会にアピールし経営の一 端を担っているものと考えられる。しかし、強制的になったり音楽嫌いに なる子どももいるので、そのしわ寄せが子どもに影響を与えないようにし てもらいたいものである。 次に表5のどんな音楽活動をしたかの質問では、1位が手あそび、2位 がピアノ伴奏と80%を占めており、圧倒的に実習で行う音楽活動が垣間見 ることができる。これらの活動は、大体が部分実習で担当し、手あそびは 自分の手や体を操るので他の楽器等を演奏するのと違い、落ち着いて行う ことができれば、子どもの反応を見ながら対応を感じて、応用方法を考え ながら行うことができるからであろうと考察する。ピアノ伴奏は前表の一 位になっているように幼稚園の音楽活動はどの学年でもトップであり、歌 唱活動にはどうしてもピアノを弾かなければならないのであろう。ピアノ を弾きながら歌をうたうことや、担任の先生の補助的な役割で、歌の伴奏 の部分を担当したことで割合が高くなっていると考える。 表6では、ピアノ演奏が1位であり前項の質問と関係し、幼稚園の音楽 活動では現実にはまだまだピアノ演奏力が必要であるからであろうと考察 する。また、感想にあるように、余裕をもって次の歌詞を指示したり子ど もの顔を見て状況を判断しながらピアノを弾くことは、非常に難しいこと であり、精神的なコントロールと習熟した技術的な経験が必要であると考 察する。そんなことから身につけたい音楽表現活動のトップになったので あろう。 身につけたい音楽表現活動の2位がリトミックで、ピアノの技術がある
程度なければリトミックの指導はできない。それにクリエイテブで想像性 豊かでなければ色々なことを指示できない。自然の動植物や生活の中で見 られる物になったりしてポーズや動きにし、発想を音に変えてわかりやす い表現ができれば子どもを動かすことも可能である。表7にあるようにリ トミックを行った学生は8位の最下位で12人の学生であったが称賛に価す ることである。学生全体としてはやはり得意でないことになるので、身に 付けたいと思うのであろう。しかし目的が何であるかをしっかり持ってい なければならない。音を自由に操作できることは非常におもしろいことで あるが、何のためにその動きをやるのか、何をイメージするのかを忘れな いことであり、子どもの心身をむやみに動かすことは相応しくない。 表7の責任実習ではどんなことを行いましたかでは、圧倒的に1位の77 %が制作で何かを作り出来あがったらそれであそぶといった造形あそびが 占めている。しかし、2位と3位に前項でも述べた歌の伴奏と手あそびが ある。これらは、色々な活動の合間に行ったり、集中させて次の活動に移 るために行っていることも大分含まれていると考える。つまりこれらの活 動だけで本実習の1日をやりとうすことはできないので、主活動を盛り上 げ補う部分的な活動として行ったのだろうと考察する。割合は少ないが色 んな種目があり、学生の得意なものが行われたのであろうと推測する。 ここから保育園での活動になるが、表8では歌唱が1位でリズム体操・ リトミック・手あそびの順になっている。幼稚園でも保育園でも歌唱が第 1位になっており、パーセンテージでは保育園の方が倍以上の88%で、音 楽活動としてうたう活動はなくてはならないものであることが伺える。次 に音楽に合わせ体を動かすリズム体操55%やリトミック37%が上位を占め ている。さらに、幼稚園の活動では手あそびが2位であったのに対し保育 園では4位になっており、手あそびは保育園の全体的活動としてはそれほ ど多くないのかもしれない。 表9では、やはり制作が78%でトップで読み聞かせ・シアター・新聞紙 あそびと続いている。何かを作り出しそれであそぶ活動は学生にとっても 一103一
子どもにとっても興味があることなのが考察できる。読み聞かせは幼稚園 では7位であったが保育園では2位になり乳幼児にお話をしたり絵本を読 んであげる機会が多いことを伺える。また新聞紙を使用したあそびが増え ているのもおもしろい。 表10のあなたはどんな音楽活動を行ったかの質問では、幼稚園の表5と 比べると1位2位はまったく同じで保育園でも手あそび・歌の伴奏であり、 3位以降は割合が少ないがリトミック・リズム体操となっている。また幼 稚園ではシアターが3位で18%あったが、保育園では0であった。これは 季節的なことも考えられるし、学生の反省や感想にもあるように音楽活動 のあるシアターを授業でやらなかったことも考えられる。
Vl.まとめ
この調査から、筆者自身あらためて、学生にとって実習の体験は非常に 大切なことであると実感した。それは大学での幼稚園教諭や保育士として の机の上ばかりの勉強ではなく、子どもの関わりを通して保育者としてど んなことが不足しどんなことが必要なのか構築できるすばらしい実体験で あると考えるからである。子どもとのあそびの中で言葉一つひとつ動作一 つひとつが子どもに影響する、子どもに受け入れてもらえるかどうかによっ て保育者としての資質を確認し理想とする保育者像を目指すよい機会にな るのである。 今回の調査結果から、本学学生は幼稚園実習から3ヶ月程で保育園実習 となり秋の運動会の準備で忙しい時期であったが、しっかり音楽表現活動 について把握していると感じられた。それは、感想のそれぞれの項目に見 られ保育士の年齢に対応した指導法をよく観察し述べていることからも判 断できる。 さらに手あそびから成長の違いを感じたり、リトミックや音楽に合わせ リズム体操で体を動かし喜びを感じていること、鼓笛隊など子どもは音の出る楽器が好きなこと等々を受け入れており、学生の音楽的資質の大きな 向上が認められる。 高田短期大学の三宅・福西・山本らは卒業生にアンケート調査を行い、 経験年数によってさらに身につけたい音楽技能をまとめ報告している。そ れによると、卒業後1∼2年者はピアノの弾き歌い・音楽を伴う保育教材 の演じ方・読譜力、3∼4年者はピアノ奏法・ピアノの弾き歌い、5∼6 年者は鍵盤楽器以外のメロディー楽器の奏法、7∼8年者は読譜力・音楽 による感情表現方法がそれぞれトップに身につけたいとしている。 この三宅・福西・山本らの研究で明らかなことは、卒業後4年頃までは ピアノの演奏技術が不足し身につけたいことで、5年以後から少し余裕が できて他の楽器の演奏法や音楽本来の感情表現法など子ども達に豊かな心 情を伝えたいということが考察できる。 しかし、今回の実習後の調査だけでは音楽本来の感情の表現までにはい たっていないが、音楽的資質の形成としては、ピアノの演奏技術や歌唱力、 和楽器や打楽器そして合奏等の指導力、手あそびやシアター等のパホーマ ンス等々が必要なのは言うまでもない。しかし、それらすべてがオールマ イティな力量を求めるのではなく、保育者自身たとえそれらが習熟してい なくとも、イメージ豊かなパーソナリティを持って、子どもに楽しさや喜 びに満ち溢れたやる気や達成感を与えることができるなら、音楽的資質が 形成しているといえるのではないだろうか。ただしそれで満足し埋もれて しまうのではなく、自ら音楽を楽しみ喜びをみいだし吸収しようとする姿 勢と常に教材研究をする向上心が必要である。 音楽はまさに保育者と子どもの架け橋となることができる、保育者の心 のこもった表現を通して、子どもたちが生き生きと感じ、声を出してうた いたいと思い、イメージがわき自然に体が動きだし、子どもたちと共有し て楽しさや喜びに溢れるような活動ができるのである。音楽的資質とは、 幼児にとっての音楽的環境をプロデュースできる保育者である。 この世の中に教育や芸術で完壁なもの完全なものはない。どんな教育の 一105一
専門家でも芸術家でもその道を究めれば究めるほど探求心が増し、真髄を 求めひたすら悩み葛藤しているのである。その点で言えば、保育者の音楽 的資質の形成を推し量れるものではないが、ひとつの例えであって目安と しての筆者自身の考えを次に示す。 保育者の音楽的資質を考えると、始めは音楽の知識や技術を修得し歌や 楽器の演奏を嗜めることができる第1段階。次は音楽の喜びや悲しさ等心 の感動を表現し伝えることができる第2段階。さらに第3段階はその感動 や喜びを共有し色々なあそびや事象で活用し応用することができること。 最後に子どもや対象者の心情を理解し音楽活動を計画し音楽的環境をプロ デュースできる第4段階と考えることができよう。 教育要領や保育指針の領域表現では、心情、意欲、態度が幼稚園修了ま でに育つことを期待するとしており、環境を通した教育、遊びを通した指 導、子どもが興味・関心をもって自主的・主体的に取り組むこと、音楽活 動が技術や知識偏重になっていないか、豊かな感性をもち、自分なりに表 現して楽しむ、等々が観点やねらいに含まれている。 学生は保育実習や教育実習の体験で、生活の実態と子どもの発達段階を 直視し、これらの教育要領や保育指針を再認識したのである。そして音楽 表現活動や子どもとの関わりの中で音楽を通したあそびを行い、音楽の必 要性や重要性を十分に感じている。今回の調査では2段階から3段階に架 けての音楽的資質の修得を認めることができる。 最後にあたり、養成校として筆者自身の授業に対する研修を惜しまず、 学生が音楽的環境をプロデュースできる保育者になれるよう一層の努力を 期待する。