中央銀行政策形成史の一断章 : イングランド銀行バーミンガム支店長の視点
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(2) 20. 第ⅩⅠⅩ巻第1号(1998). 横浜経営研究. (20). ド銀行券の淀通高の拡大を避けることが一般的. 引需要(『経済界の健全な需要』)に応えている. な原則であることに注意を喚起』した(アンダ. かぎり過剰発行はありえないという「健全需要」 6)だが,兎換が再開され本 説に立っていた.. ーラインは原文.以下同様).本店の支店局長 はニコルズにこのことを告げ,次のように直言 している.. 『有能な友人を仕事のことで冬め立てするの. 格的な景気循環と恐慌に見舞われると,バンク はあらためて健全な通貨供給を求められ,経営 的にも低収益時代への対応が課題となる.地金. は辛いのですが,職掌がら直言します.登登銀 行や多くの貴支店の[一般]顧客・銀行業者に. の流出入と外国為替の動向を指標にして銀行券 発行高を調整すべきことを「リカードから学ん. 対して,とくに害帽I勘定の呈1鹿[が必要な]時. だ」7)理事たちが力を得て,その考えにそって. に貴下がとっている全般的な行動をみて,総裁. 金融政策のノーハオが模索され始めた.. ・・・は支店割引勘定の縮小を極力回避することが 貴下の不変の目標であり,そのために貴下は時. 年3月25日,. に地方支店割引口座に関する現行の諸原則や受 取手形の品質に関するバンクの厳格なルールを. る』という『一部の強力な意見』に反対して,. 見失いがちだと判断されています.総裁は貴下. なんらの確固たる論拠も見出し得ない』と決議. が諸規則を旦且塾遵守しないかぎり直ちに理事会. されたが,このことを記録した議事録の余白に. との衝突になる旨,明言されました.』. は後年の書き込みがあって,. 『支店の正規の顧. ニコルズは,この時にも,. 客』や『地域の経済』に『混乱や影響がないか. 1819. 『イングランド銀行が発券額を減. らしさえすれば為替は好転し貴金属は流入す 『理事会はかかる見解(sentiment)を支持する. 『[この決議は]. 1827年12月6日に廃棄[された]』. (Rescinded. ぎりで』 『バンクの原則に従うよう努力する』. 6Decr1826)と読み取ることができる.この日, 『今後は外国為替と バンクの路線変更があり,. と回答した.そして割引残高至上主義という批. 地金市場の状況に不断に注目して流通手段の数. 判に対しては,. 『バンクの収益に寄与する効率. 的な支店』を目標に努力してきたが,. 『害帽I. [実績]を盟主」_追押し上げたり公正で適法な手 段以外で営業を拡大し維持しようとしたことは 『この 一度もない』と抗弁したうえで,ただ, 地方の諸地域で仕事をうまくやっていく方法は, 大都会の首都で営業する場合とは大きく異なっ ている』と論じている.. 「為替の動向」だけで. はなく「地方の実情」も重要な判断基準だと釘 をさしているのである.. 4). 量を規制することが望ましい』という決議が反 対論を押し切って成立したのである.. 8). 19世紀第2四半期は,このように,まさに 中央銀行政策の形成途上時代だった.イングラ ンド銀行地方支店網の開設も発券独占(地方発 券銀行の整理)によって『より管理可能な流通 (a more manageable 手段を全国に及ぼす』 circulating. throughout. medium. the. country)目的 1832年には「パーマーのル (預金 ール」すなわち『一切の要求払い債務』 で行なわれた.. 9). プラス銀行券)に対し『望ましいと思われるお 〔b〕バンク当局の模索と動揺 支店長ニコルズの基本姿勢を理解する背景と して,中央銀行政策の模索過程をイングランド. よその[準備]率は証券で3分の2,地金で3 分の1』であるという基準が総裁によって公表 された. 10)同時に理事会は高利禁止法の廃止 もしくは抜本的改訂を要請し,その結果1833. 銀行理事会内部の動向に焦点を絞って整理して おこう. 5)かつて究換停止時代の銀行当局は,. 年銀行法で3カ月(95日)以内の手形の割引. 物価騰貴の原因を究換停止と過剰発行に求めた. については法定最高金利(5%)の制約が外さ. り'ヵード(D.. れることになった.法的な枠組としてみれば 「バンク・レート[公定歩合政策]の一世紀」. Ricardo)やソーントン(H.. Thornton)に真っ向から反対し,優良手形の割.
(3) 中央銀行政策形成史の-断章(関口. が開幕した.. ll). 尚志). (21). 21. ち,ピール銀行法-の道程が平坦な一筋道でな. およそこのような脈絡で,銀行券の発行高を 金属貨幣が流通する場合と同様な動きをするよ. かったことは明らかであろう.実際,バンクの. うに厳格に規制するリカード-通貨学派の「国. った.理事会は「しばしば意見の分裂した」そ して「最良の意見が必ずしも多数を占めること. 際均衡」優先のルールが制度化され,ピール銀. ポ1)シーは一進一退,妥協と試行錯誤の連続だ. 15). 行法(1844年). -と結実する-というのが 通説的な理解であり,またそれが大筋として間. 「国際均衡」派と「国 のない」組織であり, 内均衡」派, 「健全通貨」論と「業績向上」論. 違っているとは言い難い.ただ,付言すれば,. が交錯・衝突して政策を不安定に揺り動かして. 「旧稿」で「サー・ジョン[・クラッパム]の. いた.. 発見」に細やかな補正を加えつつ詳論したよう. 「公衆に対する義務」. に,イングランド銀行を発券部と銀行部に事実 上「2部門分割」し,前者には「保証準備発行. 正反対の方向から執行部を批判するという「三. 額直接制限制度」,後者には「銀行部自由競争. 分裂を公衆に暴露する』ような動議合戦の自粛. 主義」を導入するという,. 「通貨に対する義務」. (金融引締派)と. (信用拡大派)が対立して. すくみ」状態を憂慮して,. 『理事会内の意見の. 決議案が提出され,これもまた否決された有様 16)内部抗争は焼烈だった.当然,本店の. 1844年法の核心と なる構想が,管見では1838年2月以降,理事. で,. 会で再三議題とされていて,そのさい「健全な. 指示も-貫せず,支店の側では,そもそも伝達. 通貨」というモネタリ・サイドの目的にくわえ. された営業方針が理事会でどの程度の重みをも. て,手形割引など通常の銀行業務の分野では. ち,どの程度の寿命と拘束力をもつのかを,と. 『優秀な民間銀行にならって』イングランド銀. きには付度してかからねばならなかった.. 行の経営を「競争銀行」として活性化し「業績. 一例として,地方発券銀行の処遇をめぐる. の向上」を図るというバンキング・サイドから. 本・支店間論争のきっかけとなったエピソード. 見た動機が存在したことも見逃せない.ピール. を引いておこう.. 銀行法は「リカード-通貨学派理論の観念的・. 総裁パーマーの支店宛回書の草案が提出された.. 機械的適用」と論評されているが,現実には,. それは≪イングランド銀行から金が流出し為替. いやがるバンクに外側から(政府や通貨学派に よって)一方的に押しつけられた「窮屈なジャ 12) ケット」だったわけではか、. 「健全な通貨」. が下落するときには,バンクのみではなく全地. (発券独占)と「業績の向上」. め,各支店はそのさい発券地方銀行への割引残 高の増大を拒絶すべきである≫ という内容だっ. (競争銀行)とい. う-ときに背反する-二重の動機の混緒が. -. 1830年11月,理事会に. 方発券銀行も発行残高を増やすべきでない(縮 小すべきである).この『原則を確立する』た. ピール銀行法とその成立史を彩っていたのであ. た.理事会は審議を次々ともちこし,結局は無. り,事実この立法を転機としてイングランド銀. 期延期となったので,総裁の構想は頓挫したか. 行地方支店の一般商工業者に対する直接の手形. に思われた.しかし「総裁が支店長に書簡を送. 割引が激増し,. 「銀行の銀行」化とは反対に地. ったり語りかけるのは,何の差し支えもないこ. 方銀行への割引の比重は減少する(「前々稿」. とだった.」パーマーは支店長ニコルズにこの. 第2表,第3図).同法が「反中央銀行法」13). 『銀行業の健全な原則』を『こっそりと徐々に 徐々に』実施するよう通達し,ニコルズはそれ. 的な性格をもち,. 「イングランド銀行を以前よ. りも中央銀行らしくなく」したという,ピール. が『深刻な恐慌をひきおこす』ことへの懸念を. 銀行法の「逆説」14)が説かれる所以である.. 表明する.稔裁側は,即座に,. このように, 19世紀第2四半期の「モネダ リ・オーソドキシー」形成史を概観しただけで. 不可避』であるが,. 『一種の恐慌は. 『自己の資本を超えて取引. し信用が堅くない人々が資金の源泉を断たれ.
(4) 横浜経営研究. (22). 22. 第ⅩⅠⅩ巻第1号(1998). 17). る』のは止むをえない,と切り返した.. Account)の開設認可にさいし一件ごとに割引 枠(最高残高)が審査・決定され,その後もし. 理事会では,金融引締が合意されても,その 方法をめぐって量的制限(窓口規制)と公定歩. ばしばその見直しが行なわれた.たとえば. 合引上(割引政策)の主張が対立し,これに売. 1832年1月,理事会は『バンク諸支店におけ. りオペ(公開市場操作)論や適格手形の期限短. る割引の状況に関する調査』を割引委員会に付. 縮論も絡んで,選択は動揺した.高利禁止法が. 託し,. 緩和されたとはいえ,公定歩合(バンク・レー. 5月,支店委員会の勧告を受けて,支店 長に『各支店の割引顧客の信用に関する特別年. ト)はピール法まで-. 次報告書』を『毎年』作成し『顧客毎に必要と. て-. 1839/40年を除い. 思われる所見を付記する』ことを指示している.. 4-5%に固定されていたから,全体と. して量的制限派が優勢で,割引歩合引上論は概 18)引下論(競争銀行 して少数派に留まった. 派)も劣勢で,. 1827年7月,. 5%を4%に引. 『バン. ク諸支店が競争銀行として行動』することは 『論外』と考えた. 20)バンク・レートが『市場 2%. 金利を参照として』機動的・弾力的にから8%,. 6月に設置した支店割引問題小委員会. の報告(7月)を受けて,割引顧客をA・B 二つのリストに格付けして分類して,前者につ. 下げて『市場割引レートに近づける』のが精一 19)本店は4%でも割引顧客の獲得 杯だった. が難しいことは『先刻承知』だったが,. そして,. 1844. 10%と一変更されるのは,. 年8月,本格的には47年4月以降のことであ る. 21)量的規制から公定歩合政策へという横 慢な趨勢はあったが,それもジグザグな変化に. いては『承認された信用限度額を改訂』,後者. については『割引口座を閉鎖』もしくは『口座 外勘定に移管』することを検討する方針を決定 した.. ㍊). ② 「口座外割引勘定」 (MiscellaneousDiscount (miscellaneous Account)扱いの「雑手形」 bills)一非発券銀行優遇口座および正規の割 引口座の限度枠を超えて割引かれる手形や,口 座なしにカウンターで割引かれる手形一につ. すぎなかった.中央銀行政策のマニュアルが経. 1833年4月,割引対象を『銀行手形と 外国為替手形』に限るべきことが示達された.. 験と試行錯誤のなかから歴史上はじめて形成さ. バーミンガム支店長は『小規模取引』が主流の. れてくる,そうした時代をいまは問題にしてい. 当地ではこの通達は『新規顧客の獲得に門戸を. るのである.. 閉ざす』 『自殺行為』に等しいと反論し, 『まず. いて,. しばらくは口座外割引顧客として取引して営業. (2). 「量的制限」 (選別融資)か. 「制限枠の緩和」 (-公定歩合政策)か 〔a〕窓口規制(量的制限)の諸方策 金融引締に関して,ニコルズは地金の出入. や取引関係をじっくりと把握し,それをふまえ. て正規の割引口座への申請を』勧めることが困 難になると強調した.総裁はその手形が『痘痕 できる業者間の塩生な[商取引に]起遮旦』も ち『銀行手形』 (Bankers Draft)と『同様に安. (為替の動向)だけでなく地域経済の状況(支. 全』なことを支店長が『知悉している』場合に. 店顧客の割引需要)も十分勘案すべきことを説. 限るという条件を付けて,支店側の主張に『譲. くと同時に,窓口規制(量的制限)の多用には 懸念を有していた.しかし,銀行当局は一時. 歩』した. ④ 「ロンドンで販売可能な手形」へのバンク. 折の公開市場操作(売りオペ)とともに一倍. 当局の執着が金融引締期には一段と強化された.. 用供与の量的制限(窓口規制)を様々なかたち. 当時「適格手形」の条件として「ランカシャ. で要求した.. 22). ① 「正規の割引口座」. (Regular. Discount. 24). ー-ロンドン基準」ともいうべき『基本ルール』 (fundamentalRule)があり, 「真正の(bonafide).
(5) (23). 尚志). 中央銀行政策形成史の-断章(関口. 商品取引」に起源をもち『二名の信用ある者の. 予定』なので,支店は割引手形の『きわめて大. 記名』がある3ケ月(95日)以内の手形に割. きな割合』を『表にも真にもスタンプせずに. 引を限ること,. 25)とくに「一級手形」は『ロ. ンドンで販売可能な手形』. 32). [ロンドンへ]送付する』ように指示された.. (ロンドンで名前を. とくにバーミンガム支店に対しては,ロンドン. 知られた者の記名がある手形)に限ること26). で販売可能な手形の送付の実行が厳しく督励さ. が各支店に求められていた.そして『割引手形. れ,. 期限の短縮』が金融引締の手段として議論され,. れている.. 長期手形が普通だったバーミンガム-ブラック. く着実に増加し続けています.総裁はこれを減. カントリ地域を苦しめた. もまして,. 27)しかし,それに. 1832年1月には以下のような文書が出さ 『貴支店の割引総残高はここしばら. らすことが必要と考え,試みたのですが,販売. 『為替の状況からみてロンドン市場. 可能な手形の割合が実際には余りにも少なくて,. からイングランド銀行券を引揚げる必要がある. 目的を達成できないでいます.定められた限度. 場合,支店から送られてくる過剰な割引手形を. 額を超えて[ロンドンで]即座に販売できない. ロンドンで再割引にだす』という『総裁の計画』 (手形の公開市場操作) 28)が実施されたことは,. 手形を割引くことは,一切,断固として拒絶す. ロンドンで販売可能な「一級手形」が少ないニ. ロンドンで販売可能な一級手形の送付実績を基 準にしてその『地域-の公正な[割引]枠を割. コルズの支店にはとくに深刻な痛手だった. 「適格手形」論争として前述したように,. 29). るよう,特別な注意が必要です宅』. 当てる』 (a fair. proportion. 33)そして,. will beallotted. to. your. 34). 1831年9月,本店は「非発券銀行優遇口座」 (circulationAccou山)での手形割引を『一級手. District)という方針が明示されている. ④発券銀行-の手形割引(再割引)は特別に. 形に限る』べきことを支店長に通達した.ニコ. 厳しく規制され,拒絶されることが多かった.. ルズは,彼の支店の顧客である地方銀行の取引 相手は『全てバーミンガムとその近在の商工業. 前述のように,金が流出し為替が下落するとき. 者に限られて』おり,. にはバンクのみでなく全地方発券銀行も発券を. 『その記名が一級手形の. 拡大すべきでない(縮小すべきである)という. 要件とされるロンドンの大商社とは全く関係を. 『原則を確立する』ことが総裁パーマーの悲願. もたない』こと,. であり,支店長には,この『銀行業の健全な原. 『これらの手形は大部分が小. 額で,ロンドンで販売可能な手形と比べれば外. 則』にしたがって発券銀行-の割引残高. 見上の魅力に乏しいが,バンクが不可欠な要件. を-. と位置づける二大原則,すなわち安全性と真正. るよう伝達されていた.. 『こっそりと徐々に徐々に』一削減す 35). もともと発券独占による『全国規模での管理. の起源という見地からみれば,他のどの地域の 手形にも劣らず,実際,首都の手形にも遜色は. 可能な流通手段』の確立を課題としたバンク当. ない』と主張して,通達を撤回させることに成. 局は,支店が発券銀行のために割引くことを原. 功した.. 23. 30). 則的に禁止していた(支店管理規程第32条:. しかし「口座外割引勘定」に関しては,当局. 1826年8月).. は発券銀行が少ないランカシャー本位の政策で,. は『全て[ロンドン]市場で現金化できる手形 でなければならず,それ以外の手形は受取って はならない』という立場を譲らなかった.. 36)ニコルズは,この「締め出し」. 発券銀行が主流のバーミンガム-ミドランズ地 31). 域では,. 「発券独占」という「基本戦略」を達. 市中金利が上昇した1831年11月には総裁から. 成するためにも,発券銀行を一概に敵視し排除. 各支店長に『秘密通達』があり,. するのでなく,取引と対話で『友好』関係を醸. 『支店での割. 引で受取られる手形の大部分はイングランド銀. 成し『徐々に』発券放棄を促すという「徐々な. 行の裏書無しで[ロンドン]市場で売りに出す. る単一発券化」が有効な「戦術」と考え,. 「オ.
(6) 24. 横浜経営研究. (24). 第ⅩⅠⅩ巻第1号(1998). ノート]を[彼らが]ロンドン市場で調達する. -バーローン」論争など,一連の書簡論争を展 開した.. 37). ことの違い』. とくに「緩和された窺制」の一時期(1828. money which. (the difference. to support. is alreadv. the circulation, in existence. between and. creating. obtainingthat. from. the. London. -33年)に,発券銀行はバーミンガム支店で は有力な割引顧客となっていた.地方銀行は,. Market)をニコルズは『熟考』すべきである.43). 1828年9月,小額銀行券の回収をひかえて 『1ポンド券の回収に必要なソヴリン金貨を調. 1833年12月,改訂第32条第1項は廃止され, 翌1月,支店長は発券銀行に対する割引は『支. 達するために』バンク支店に『塩墜振出・割引. 店に振込まれた彼らの地方銀行券を彼らに請出. 口座』 (temporaryDrawing. させる目的で』なされる以外『いかなる場合に. を開設できることになり,. 地方銀行は『広く』. and. Discount. Account). も承認されない』旨を通達された.. 1830年3月からは 『イングランド銀行券. 44)ニコル. ズは『全ての発券銀行業者を』顧客から排除し. (BankNotes)や鋳貨(coins)を調達する目的. 『銀行業者と一般顧客との差別を復活する』こ. で』この口座を利用できることになった(改正 38)ニコルズは 支店管理規程第32条第1項).. の措置について本店に強く抗議した.. この規制緩和を精一杯に活用した.バンク首脳. て,. は地方発券銀行-の割引便宜の供与が『長期間 継続しすぎ』 『大きすぎる』ことをバーミンガ. ンで現に引締の措置を講じている』その時に. 45)しか. し顧客である発券銀行に対しては,支店長とし. ム支店の『割引口座管理に顕著に見られる地域 的特徴』と捉え, 39)管理規程の不当な「拡張 解釈」を非難した.. 『為替が不利な状態』でバンクが『ロンド. 『一方で引締め他方で拡張することはできない のです』とバンクの『原則』的な立場を明瞭に 『貴殿t発券銀行]は今後,貴行自身. 説明し,. の銀行券の支払準備を貴行自身の資金で調達し なければなりません(当行はもはやこの目的で. バンク当局の言い分を要約すると,こうであ る.一発券銀行の場合,バンク支店で調達し. 貴行のために割引くことはできません)』とビ. たイングランド銀行券(支店券)は,地元企業. ジネスライクに通知している.. -の融資には使われず,したがって地域で流通. ルズによれば『発券銀行に関する最近の規制が』. することはない.それは地方銀行券の支払準備. 『我々の友人』であり『我々の営業でほとんど. としてその銀行に保有されるか,あるいは『ロ. ンドンに流入して通貨の運動を撹乱』する.. 46)結局,ニコ. 最大の利益をもたらす存在になっていた』地方 40). ロンドンでの金融引締の効果を減殺するそのよ. うな行動を慎むことが支店長の『絶対に必要』 な義務である. 41)バーミンガム支店長は『発 券銀行業者への割引はその地方での流通に必要. 銀行家を支店から『奪い取ってしまった』ので あった.. 47). ⑤ 「非発券銀行優遇口座」. (circulation. Account)に関しても,口座毎に割引限度額が 厳しく査定され,支店長は金流出期にこの低利 %割引の便宜を安易に供与して金融引締の効. な金貨や[支店]銀行券を彼らに供給するため. 3. のものに限られるという原則を全⊥考慮してい 42) ない.』 『銀行業の健全な原則に照らしてい. 果を殺ぐことのないよう指導された.この制度. えば,. [地方発券銀行が支払準備として]ロン. ドンに保有するバンクノートはロンドン市場で 調達されるべきものであって,支店で創造され. 旦べきものではない.』. 『彼ら[地方発券銀行]. の耗券流通を支えるための貨幣[バンクノート] を創造することとすでに存在する貨幣[バンク. はイングランド銀行券で営業する非発券地方銀 行をバンク・レートを通常1%下回る金利で優 遇するもので,発券特権の放棄を促す有力な手 段としてニコルズの建議で採用されバーミンガ ム支店で「とくに成功した」といわれている.48) しかし口座の利用は市場レートが低い時には閑. 散で,逆に逼迫期には急増する傾向にあったか.
(7) ら,. 49)バンク当局はその運用に神経をとがら. (25). 尚志). 中央銀行政策形成史の-断章(関口. 25. 用』が望ましい『原則』ではあるにせよ,原則 は『近似的にのみ実現される』と説き,当面,. せていた.. 口座の開設にあたってバンク理事会は『必要. 割引限度枠一本だけを設定して『市中金利がど. に応じて』利子率を引上げたり割引限度額を削 50)割引残高 減する『権利を留保』したほか,. うであれ』常時それに近い残高を求めてきた従 来のやり方を改めて,最高限度額とは別に最低. の『変動幅を極力小さく』して『割引限度枠内. 限度額を設定し,その『幅を大きめに』とるこ. での割引[口座]の安定した活用を確立する』 ことを『至上命題』 (absolutelyimperative)と 考えた. 51)そうでなければ『ロンドンでバン. とを本店に提案した.最高限度額と最低義務額 との『大きな開差』 (alargemargin)を認める. クが銀行券を引揚げているさなかに[特約」銀. ことによって,非発券銀行はバンク支店の口座 『自己銀行券 を存分に活用できることになり,. 行が優遇金利でのバンクノートの供給を支店に. の発行へと追い詰められる』こともなくなると. 迫る』ことになる.優遇口座の『変動幅. いうのである. 具体的に,非発券銀行優遇口座開設全国第一. 55). (margin)が大きい程それだけ[大規模な]バ ンクノートの追加発行が余儀なくされ』, 『紙券 流通の虚血(contracticm in the circulation)』が 『物事の自然のなりゆき』 (thenatural order甜. 号,バーミンガム株式銀行(Birmingham. 吐出鎚)であるときに,正反対の事態が進展す る. 52)割引残高の『平準的な動き』 (equable. 1833年夏,市場レートが優遇口座の割引歩合. action). 53)を強調することによって,バンク当. company)の事例をみよう. に認可されたこの銀行の,. を大きく下回ったため,. Banking. 1830年1月7日 56). 「3%口座」は,. 20万ポンドの割引限. 度額に対して割引残高は3万ポンドを割る有様 『支店バンクノートの流通高を一定に保つ』. 局は『営業規模の小さな銀行』までもが万一の. で,. 金融逼迫期に備えて『不必要に』高い限度枠を. 見地から「割引限度額」を「割引義務額」とも. 求めることを牽制し,厳格な量的規制を実施で. 見倣していたバンク当局はこの株式銀行の『完. きるよう予め布石したのである.. 54). 全な約束違反』を強く非難し,市中金利が反騰. 〔b〕「量的制限」緩和(-公定歩合政策). した11月,限度額の大幅な削減を要求した. 同時に,当局も, 『ロンドンでバンクが外国為 替の下落に対抗するに十分な金額の地金を売却. 論の展開. してイングランド銀行券発行高の縮小に努めて. バンク当局は多くの優遇金利通用口座が逼迫 期以外は開店休業に近いことを指摘して,支店. いるときに,バンク支店では[優遇口座による. 長に再三その是正を促した.これに対してニコ. 手形割引需要が限度額まで一挙に増大して]本. ルズは,顧客銀行の『割引額は地域のビジネス. 店での発行高の縮小に匹敵するほどの金額の支. の状況に左右されて』おり,彼らに『金庫に眠 らせておくお金を我々から買う』ことを強制は. 店バンクノートが増発を求められる』というこ. できないと反論した.とくに『為替の動向を考. ないではいなかった.. 慮せずに』自己銀行券を増発して営業する強力. ズは-. な地方発券銀行と競争している彼ら非発券銀行. 合を3%より下に下げることは実施不可能』だ. の営みを支援し,発券の誘惑から彼らを守るに は, 『欲しいときに欲しいだけ資金を調達でき. とすれば一上述のように非発券優遇口座につ いて最高限度枠とは別個に最低義務枠を設定し,. る』 (Ⅷey purchase. バーミンガム株式銀行の場合には最高20万ポ. it when. and. as血ey. want)と. いう確信をバンク支店が与えることこそ必要だ と訴える.そして,優遇口座の『むらのない活. とで,. 『現行制度の極度な不都合さ』を痛感し 57)この機を見てニコル. 『現状ではイングランド銀行が割引歩. ンド・最低5万ポンド(『マージン』は75%) にすることを提案したのである.. 58).
(8) 26. (26). 横浜経営研究. 第xIX巻. 理事会はこれを『最高・最低間の差額が大き. 第1号(1998). 『ほぼ14%』というバンク総裁の議会証言があ. すぎる』として却下した.その後,株式銀行は. り,デイクソン銀行との交渉の過程でも. 申請を最高20万ポンド・最低15万ポンド(マ. 『15%のマージンが原則』という言及が記録さ. ージン250/o)に修正し,バンクは一非公式 に『マージンは大きくても20% (25%は杢宜. れている.. 63). 塵)』と伝えたうえで一最高15万ポンド・最. このような諸事例から,最高限度額と最低維 持額の開差はほぼ13%から15%を『標準』に,. 低13万ポンド(マージン13%強)と回答す. 16-17%がボーダーとなり,. る,59)ニコルズはバーミンガム支店の発券高の. 20%,. 『2分の1から3分の1はバーミンガム株式銀. ったが,. 『特例』として. 25%のマージンが承認されることもあ 『33%. 64)と. [ないし30%]は論外』. 行に負っている』と述べ,同行が発券に踏み切. いうのがおよその基準だったと推定できよう.. れば『我が国紙券流通の中軸としてのイングラ. 裏側からいえば,バンク当局は非発券銀行優遇. ンド銀行』にとって『取り返しのつかない』事. 口座の最高割引限度額を金融逼迫期に備えて予. 態となると警告して,. め低く設定するために,それぞれの顧客銀行業. 『せめて』最高18ポン. ド・最低15ポンド(マージン17%弱)を,と,. 者が市況に係らず常時バンク支店に保有できる. なお執掬な要請を繰り返したが,結局,バーミ. 割引残高を基準にして,これに上記のパーセン. ンガム株式銀行がバンクの回答を『現在貨 幣市場に不利に作用している為替の状況が好転. トを上乗せした範囲に限度額を枠付けようと試. した時には』 『割引規模の厳格な制限が緩和さ れること』を『希望する』と付言して一受け 入れ,決着した.. 60). 2万ポンドの割引限度額で営業してい た近郊ビルストン(Bilston)の非発券銀行 (Jones,Son & Foster)は,バンク当局の意向を 付度して「最高£12,000-最低£8,000」. (マー. ジン33%)への変更を申し入れたが,当局は 納得せず,交渉は「12,000-10,000」. (16%)で 決着した.ただし,この場合は支店長ニコルズ の説得を容れて, 9,000ポンド以上の残高があ れば(つまりマージンが25%以内であれば) 『特例として』『最低額には余り固執せずバーミ ンガム支店長の裁量に委ねる』ことが承認され 61)またデイクソン銀行(Dixon,Dalt。n. ている.. &co.)の場合には,バンクは「28,000(28%)ないし「24,000-20,000」. (16%)の申請を退けて,むしろ「28,00024,000」. (14%)ないし「30,000-26,000」. (13%)の割引枠を提案した.. これに対してニコルズは横和期に過大な最低. 義務額を強制し逼迫期に過小な最高限度枠で 「貸し渋る」のは『理論としては正しくても現. なお,. 20,000」. みていたのである.. 62)一般に当時本. 店は最高限度額と最低維持額との間に12-. 実的でか、』 (rightTheory. and. wrong. 65). Practice). と批判し,それよりも,できれば第一に公定歩. 合を弾力的に上下し,第二に上述のように限度 枠は「ゆとり」をもって設定することが望まし いと主張した.第一の点について若干の補足を しておこう.ニコルズが支店長に就任して間も なく,. 1827年7月にイングランド銀行理事会 は5%に固定されていた本店・支店のバンク・ レートを40/oに引ー F-げ,同時に,今後『理事会 は常に割引歩合の変更の適否を検討し,バンク のレートを銀行業者等の市場割引レートに近付 けること』を『妥当』とする決議を採択した. 「競争銀行」派のこの一一時的な一勝利に は,地域の製鉄業者や中小企業を背景にしたニ 66)しかし,. コルズの主張と情報も貢献した. その後バンク・レートは4%に固定され,連動 して非発券銀行優遇口座の割引歩合も3. %に張. り付いたままだったから,ニコルズもその大口. 18%の余裕があれば顧客銀行は市況に『十分. 顧客だったバーミンガム株式銀行の経営者も,. に対応できる』とみていたといわれている.. 金融の緩和期(市場金利の低落期)には『[優.
(9) 中央銀行政策形成史の-断章(関口. (27). 尚志). 27. 遇金利が] 3%のままでは[割引残高の]変動 幅を20%に抑えられない』と訴え,バンク当. て割引く方針を示せ≫ という命題を先取りする もので,こうした弾力的な『クッション』こそ. 局への要望の『重点を利子率[の問題]に』移. 破局を防ぐ『安全弁』と考えられていた.だか. そうとしたことが看取される.これに対して本. ら彼は一公定歩合政策が採用できないという. 店は『イングランド銀行による利子率の引下げ (exceedinglydoubtful)』 ははとんど在りえか、. バンクの主宗に譲歩する場合にもー割引限度. として,. 『公式の発言は注意深く慎むよう』に. ニコルズに釘を刺している.. 67). 枠には「ゆとり」が肝要なことを強調した.. 『どうか,どうか,出心に留めて下さい. 何事であれ性急な変化は禁物です・-.私は,バ. 公定歩合の引下げが『現実性のない事柄』 (impracticability)68)だったのと同様,その引 上げも禁句に近かった.ニコルズは本店に『為. ンクを国の一大貨幣創造者(the. great. Money. Makerofthe. Country)とみた場合,イングラン ド銀行券で営業する銀行への割引が一定水墜に. 替が[下落して]銀行券の発行高を縮小させそ. 保たれるのが望ましいとする貴職[支店局長]. の価値[市中金利]を高騰させている』状況が 『ほぼ確実に継続すると見込まれる場合』には,. の議論に全く同意します,塵旦吐の問題としては 完全にそのとおりです.けれども過去にはマー. イングランド銀行も『割引レートを引上げるの. ジン[余裕]を,大きなマージンを認め崖止並. が適切ではなかろうか』と具申したが,当局 は『他に手段がなければ引上げも』ありう. ばならないのです.そうしたマージンがないと 引締は余りに突然で深刻なものとなり,無限の. ると述べつつもー『現在の割引歩合のもとで』. 窮状の原因となるからです.現にバンクの割引. 『許される範囲で』融資すると繰り返して,断. 口座はロンドンでも支店でも,残高一定という 貴職の原則に反して,貨幣市場が緩慢な時期に. 然「窓口規制」を優先した.. 69). 『割引レートの. 引上げといった,絶対必要になるまでは全力で. は休眠し,逆に現在のように為替の逆調で発券. 避けるのが当然な事態にバンクが追い込まれな. 高が縮小し貨幣が不足するや否や顧客銀行はす. いですむように』,支店長は『その影響下にあ. ぐにバンクやバンク諸支店にやってきます.こ. る銀行業者に[量的引締が必要なことを]悟ら 70) せる』べきだというのである.. れは確かに,通貨の健全で必要な縮小という進 行中の事態に遊動するものです.しかし,現実. 1844年のピール銀行法以後,バンクの金融 政策の基調は「窓口規制」から「公定歩合政策」. 的にみて,それがバンクや国に有害なのでしょ. へと転換する.同年8月,割引業務規程の全面. 崩壊を防ぐ一種の弾力的なクッション(elastic. 的な改訂で,一般市場金利に対応してバンク・. cushion)であり,わが金融システムにそれな. レートを機動的・弾力的に変更することが確認. しには存立しえない柔軟性を賦与するものとし. され,そのうえで,. 1847年のパニックにさい し,政府は信用の崩壊が『信頼の喪失』 (awant. て,有益であると私は信じます.巨大な機械の 安全弁(safety Valve)とも調整装置(Regulator). of. ともいえるのです.』. confidence)によって加速されるという見地 から,イングランド銀行理事会に対して『現在 の緊急事態に対処して適格証券に対する割引・ 貸付の数量を拡大すべきこと,但しこの業務を 合理的な限界内に保つため,高い利子率を課す. べきこと』を勧告するのである.. 71)ニコルズ. の立場は,このような≪パニックの到来が予想 される時には利子率を引上げたうえで思い切っ. うか.私はそうは思いません.反対に,それは. 72). (3)支店長ニコルズの金融政策論 一論拠と背景-. 〔a〕心理的要因の重視 金融政策に関するニコルズの主張は「量的制 限」緩和(-公定歩合政策)論を軸に展開され ていたが,その論拠や背景をやや立ち入って検.
(10) (28). 28. 横浜経営研究. 第ⅩⅠⅩ巻 第1号(1998). 討してみよう. 第一に,彼は金融引締の効果をみるにさいし. 引き付けておこうとする不公正な(unfair)』商 略にすぎなかった. 77)しかし,それは一種の. て,それが人々に与える心理的要因の重要性を. 早熟的な「信頼の効果」理論(confidence. 強調し,イングランド銀行はまさかの時に充分. theory)であり,その意味でニコルズはバジョ. な割引(したがって支払準備金)を用意してい. ットの先駆である.周知のように,バジョット は19世紀70年代のイギリス金融市場を叙述し. ることを銀行業者や公衆に確信させることが肝 腎だと考えた.上述のように,ニコルズは割引. た古典『ロンバード街』で「パニックに対する. 限度枠を『ゆとり』をみて設定しておく-そ. 最良の緩和剤は銀行支払準備金が充分にあって,. して引締が必要な時には『割引レートを引上げ. その準備金が有効に使用されるということを確. る』. 信せしめること」だと述べ,パニックにさいし. であると主張した.それは割引顧客,とくにイ. 「優良 て中央銀行は「非常に高い利率を以て」 なる担保に対しては選ぶことなく」 「どこまで. -ことが金融制度に『柔軟性』を賦与す る『安全弁』であり『崩壊を防ぐクッション』 ングランド銀行券で営業する非発券銀行に『欲 しいときに欲しいだけ(whenandastheywant)』. ニコルズの場合,. バンク支店で手形を割引いてバンクノートを調. 「経済心理学」的な認識はまだ理論的な精赦さ. 達できると確信させるからであり,この「信頼」. には欠けていた.しかし,経済や景気の動きに. こそパニックを防ぐ鍵となる.. 73)ニコルズは. 「信頼の効果」についての. また,銀行家との『友好関係』を築くには『そ. ついての知識や情報が心もとなく,金融調節の 政策技術も未塑型で予測し難かったこの時代に. れなりの繊細な心づかいと礼儀』. は,むしろそれだけに,. delicacy. as. well. as. (considerable. courtesy)が必要だという言. い方もしているが,ともあれ,信頼関係が堅け. 「流動性の危機」に対. する企業や民衆-とりわけ情報も資金も乏し. れば割引残高を厳しく規制しなくても実際の結. い中小企業経営者-の不安や恐怖は大きかっ た.実際, 「信頼の効果」についての事実上の. 果に『大差はない』 (yerynear)というのであ. 認識もすでに相当広範に存在した.. る.. 74)これに反して,. 『割引限度額の厳しい削. 79)バーミ. ンガム学派の論客でニコルズの顧客であり友人. 減』を『突然』通告するといった行為は『多数. でもあった地方銀行家トマス・アトウッドも,. の立派な』顧客に『猫疑心を懐かせ』, 『いかな. リカードが捨象した「大衆心理という重要な計. る時にも損なわれてはならないバンクの叡智と. 量不能要因」を重視したことで知られている.. 判断に対する信頼(confidence)』を失わせる.75). 80)ニコルズも中小企業・地場産業地域での現. 1834年9月15日,辞任にさいしてニコルズは 本店宛てに「職務的遺言」ともいうべき書簡を. 場の経験から,リカード-通貨学派原理の機械. 書き,地方銀行との『堅固な[信頼の]砦』を. つうじて中央銀行政策の現実的な在り方を模索. 築くために,バーミンガム支店は『一時的な犠. したのである.. 牲や不都合を』承知で『[金融]引締の時期で さえ銀行への割引は絶やさないのを常としてき た』ことを誇っている.. 76). このようなニコルズの立論は,バンク当局か らみれば,. 『外国為替[の変動]で従来認めら. 的適用ではなく,実業家の行動や心理の観察を. ピール銀行法が制定され,しかもこの法律が 恐慌の度毎に「停止」される(「停止」のアナ ウンスがされる)ことでパニックが緩和された 経験を回顧して, 行副総裁は,. 1856年に,イングランド銀. 『人々の心理的な恐れ』に起因す. れてきた融資の継続が真に不都合になった状. るバンクへの『確信』の崩壊がパニックの底に. 況』のもとでも『融資が認められるであろうと. あり,その防止は,. いう期待(expectation)でバンク支店に顧客を. 78). も」融資すべきであるとの主張を展開した.. 『割引の拒絶』でなく, 『割 引歩合の素早く時機をえた引上げ』,つまり.
(11) 中央銀行政策形成史の-断章(関口. 『バンクの門戸はいつでも誰にでも,代価を払. 尚志). (29). えば,開かれている』と告げることによっての. ています.割引の多くは当然に地方的なもので, 大多数の取引手形はロンドン市場では全く現金. み可能である,という『教訓が学ばれた』と述. 化できません.だから,手形がロンドンで現金. 29. 81). べている.. 化できるかどうかを吟味することによってわが [支店バンクノートの]発券高を規制すること. 〔b〕『小規模製造業者』の視点. は困難です.』 『他の大商業地域には容易に流人 するロンドンの資本は-当地までは乗り入れて. 第二に,ニコルズは量的制限(窓口規制)の かたちをとった『余りにも急激な割引の削減』. こないのです.だからこそ徐々に形成されつつ. が,優良手形とくに一級手形(『ロンドンで販 売可能な手形』)を持たない顧客には『割引源. あるイングランド銀行[支店]との結び付きが. 泉の閉塞』 (the. source. of Discount. [この地域にとっては]重要です.』. is clogged. or. 82). 88). (3%. バンク当局は「非発券銀行優遇口座」. altogether)を意味しており, 『小規模な製造業者や商人(the smaller description. 口座)の割引限度額を低く設定してその厳守を 『断 要求し,限度額を超過する割引は『一切』. of Manufacturersand. Merchants)には大きな打 撃である』ことを訴えた. 83) 「信頼の効果」を. 固として拒絶する』よう『特別の注意』を促し. 重視したのも,資金コストの上昇ばかりでなく. 場で販売可能な手形だけ(only. becomes. stopt. 「貸し. 資金フローの枯渇(fluidity crisis) 渋り」. た.但し,支店は『間違いなく[ロンドン]立. -を不安とせねばならなかった地場産. 莱,経済の知識や情報に乏しい中小企業経営者 の心理を理解していたからといってよい.. 84). バンク当局や多くの諸支店が『ロンドンの金融 的利害』 (Money hterest)や『無知で投機的な 商人』 (ignorantor 立ち,. sp∝ulative. 『勤勉で倫理的な』. merchant)の側に 『地方的利害』. strictly. bills)』に限って,優遇金利ではなく それより高い市場レート一正確には『バンク (通常は が市場レートと認定する利子率』. marketable. 4%) -を適用して限外割引を行なうことは 認められていた.この場合本店は割引手形の多 くを必要に応じてロンドンの『公開市場(the Market)で処分する』予定だから,支店 は『[ロンドン]市場で販売可能な[一級]手. public. (country Interest)を蔑ろにしがちだったのに対. 形のみ』を割引いて,裏書やスタンプは無しの. 比して,ニコルズのバーミンガム支店は『地元. まま本店に送付するように求められている.こ. の企業者的生産者層(enterpris血g and. の限外取引に触れて,バンク当局は,一級手形 なら『いつでも』 (always)また『いくらでも』. classesintheir. productive. various. vicinities)のために口座を 開設』した. 85)ニコルズが『友好関係』を培. (toanyextent)割引くのだから,. 「貸し渋り」. というのは当たらないと釈明した.. 89). った『近隣銀行』にしても『顧客の大部分』は 『小規模な製造業者や商人』で構成されていた. 86)手形の選別基準として「ロンドン市場での. ブラックカントリ地域にしてみれば,一級手形. 流通性」が重視されたことは,そのような手形. に限られた限外融資は画餅であり,低い最高限. とは一般には疎遠な客層を相手とする「ニコル. 度枠の厳守は『割引源泉の枯渇』を意味してい. ズのシステム」には大きな痛手なのであった.87). た.このためバーミンガム支店長は『割引規模. 『製造業者は商品を販売して2-3ケ月の手. しかし一級手形が少なかったバーミンガム-. の厳格な制限』の『緩和』にこだわったし,. 90). 形を受取るが,雇人に支払い営業を継続するた. また限外割引の対象を一級手形以外の優良手形. めにこの手形を銀行業者のところで現金化上皇 ければならないのです,もし割引の源泉が閉塞. 『ロンドンで販 にも拡大するように主張した. 売可能な手形と比べれば外見上の魅力に乏しい. すれば,営業は即座に麻痔し悲惨と窮乏が待っ. が,バンクが[優良手形の]不可欠な要件とす.
(12) 30. (30). 第ⅩⅠⅩ巻 第1号(1998). 横浜経営研究. る二大原則すなわち安全性と真正の起源という. が『新設銀行にとって極めて重要』な意味. 基準では遜色のない』優秀な手形がこの地域に. [confidence. 91). は沢山あるというのである.. 1832年,バ. ンク総裁はバーミンガム支店の割引残高を減ら すために,支店から送付された『限度超過分の』 手形を市場に出そうと試みたが, 手形の割合が全く僅少(so. !]をもつことをバンク首脳も. 『もう少し寛大に』理解して欲しいと陳情し. 実際,バーミンガム支店は,本店の意向に逆 らって積極的な営業を展開した.. effect. 『販売可能な. た.93)バンク当局には,しかし,それは『期待』 [「去]想」]で客を呼ぶ『不公正な』行為であり, 結局は顧客を『失望させ,おそらくは一層悪い 結果を招く』欺備にすぎなかった.. 94). ところで,ニコルズにとっては,中小企業だ. insignificant)』 92)ま で目的を果たせないでいると憤慨した.. からこそ概して大企業よりも堅実で活力もあり,. た1837年,本店は,割引限度内であれ限度外. 盤製造業者(型塾由皇Manufacturers)の集合体で,. であれ『支店長は適当と考える時にはいつでも 手形割引を拒絶する権利を留保すべきである』. 彼らは旺盛な活力と企業心の持ち主ですが,餐. と指示したが,このことを知ったバーミンガ. 金額です.. very. ム-ミドランド銀行の支配人は,我々の銀行は. 大切な顧客なのだった.. 『バーミンガムは生温. 本は細分され,売上も一人一人でみれば止呈_な -この点でバーミンガムはマンチェ 『当地の企 スタ-やリーズなどと異なります.』. バンク支店長から『手形が起源と安全性の点で 完全に疑問の余地がないものである限り市場金. 莱(business)の在り方は独特です.ここで生. 利での割引を拒絶することはない』という『保. 内消費向けに企画され,国中の様々な商店や小. 証』 (assurance)を受けている筈だ一支店長. 売商に販売されます.. 産される商品は単価が一般に小額で,大抵は国. も当行の議事録を『読んで確認』した-と. -ここには大資本家も大 製造業者もおりません.ただ無数の小規模製造. 『強く抗議』したという.しかも,この件につ. 業者がいるだけです.彼らは皆独立して営業し,. いて支店長は,割引いた手形が『[ロンドン] 市場に送られることもある』 (したがって割引. 全体として立派に生活し,信用ある暮しをして います.』 95)こうした『非常に富裕というわけ. は一級手形に限られる)旨をバーミンガム-ミ. ではないが勤勉で大変有用な小規模製造業者. ドランド銀行には伝達していないと述べてバン. 層』,彼らを始めとする『小規模商工業者層』. ク首脳を『驚かせた』と記録されている.. (the smaller. この時の支店長はニコルズの後任であるが, 彼は『バーミンガムの手形は一般に15ポンド,. Traders)こそこの地域の銀行業者の『顧客の 大部分を構成』し,またニコルズの支店の『最. 20ポンドといった小額の取引で振出されたも. も独立心に富み,最も優良で,最も安全な顧客』. ので,当事者は当地でなら優れていると知られ. でもあるというのである. 企業構造上のこの特徴は,ニコルズによれば. ているが,公開市場(the. open. market)ではは とんど評判を得られまい』人達であると述べ,. description. of Manufacturers. and. 96). 『バーミンガム手形』の重要性を理解するのに. こうした地場産業・中小企業の経営者を顧客と. 『絶対に必要な』事実である. 『バーミンガム商. する地方銀行にとっては『金利(主星垣)の高低. 工業の特性』に規定された『無数の小規模取引』. は全く関心外であり,専ら[割引]量(地主). は『多数の小額手形』を必然とし,この小額手. だけが』重要なのだと説明した.そして,バー. 形が『この地域の銀行業の基盤』になっている.. ミンガム-ミドランド銀行の支配人が『切望』. これらの手形は『ロンドンで販売可能な』一級 手形と比べれば『外見上の魅力に乏しい』が,. したのは『まさかの大きな金融逼迫期にも銀行. を立往生させることはない』というバンクの 『保証』(assurance)に尽きており,この『保証』. バンクが適格手形の『二大原則』としている 『安全性と真正の起源』という点では『王国の.
(13) 中央銀行政策形成史の-断章(開口. どの商工業地域の手形に対しても遜色なく』. to. (31). 尚志). conformto. 31. the Bank. 『首都の手形にさえ負けない』内容をそなえて. regulations)』という支店 開設以来の方針を基本的に変えようとはしなか. いる.支店長としての自分の『経験』に照らし. った.. ても『大きな金額の手形よりも危険が少なく素 姓も確かなので,私は小額の手形の方を選好す. 方には適合しない』と主張し続けたニコルズが. 97). る傾向にある』とニコルズは述べている. くわえて,彼は,. 辞任するまで,. 「適格手形」をめぐる本・支店. 間論争は継続した.. 100). 『小口な割引口座を開設して. 優れた業者から優れた手形を受取る』ことによ って,. 『ロンドンの尺度(LondonRules)は地. 『バーミンガムの場合には』,まず『その. 〔c〕『帝国』的『発券銀行』の原理と 『地域』的『割引銀行』の視点 第三に,ニコルズによれば,為替相場で発券. 口座は,たとえ僅か500ポンドの規模であって. も間違いなく頻繁に利用される』から『年末に. 量を調節する『[大英]帝国の支配的大原則』. なれば相当な割引鎗額になる筈で』,バンクの. がロンドンでは守られねばならぬとしても,. 収益の向上に寄与すること,次にまた『この地. 『地域的観点からのみ』いえば,ロンドンの為. 方の流通手段の在り方に好ましい影響を効果的. 替逆調の付けがそのままバーミンガム地域に回. に与えることができる』から,バンクの貨幣・. されるのは,好ましくもなければ筋の通ったこ. 金融政策の地方への浸透を促すことにもなると. とでもない.地域の実需に根ざした健全な手形. 説くのである.. 98). の割引需要こそが『銀行券発行の最良の地方的 尺度』なのであった.. バーミンガム-ブラックカントリの地域経済. 101)当時,イングランド. にとってこのように重要な位置を占める優秀で. 銀行の正副総裁を含めて多くの人々が,. 堅実な中小企業(およびこれに融資する地方銀 (窓口規制)で 行)が,バンクの「貸し渋り」. 高い』資本輸出(とくに外国証券の購入)や国. 苦境に陥っている.そういう事実認識にたって,. な天候(不作による穀物輸入)や戦争など,本. バーミンガム支店長は『ロンドンでの市場性を. 来バンク当局にとっては『全く無関係』で『コ. 基準に手形を選別し,それによって地域の貨幣. ントロール外の』出来事がしばしば『通貨の自. 流通を規制することの困難さ』を訴えた.ロン. 然的な変動を撹乱』することを重視していた.. ドンの反応は明快だった.ニコルズの見解を逆 手にとり,量的窺制が小企業に不利だとする認. 識では支店長と『完全に一致』するとしたうえ で,一口ンドン-マンチェスタ-の眼鏡でみ. 「不健全で危険で脆弱な」 /ト企業が相手 だからこそ取引を縮小せよ,というのである. て-. 『悪名. 際的投機(委託荷前貸金融の過熱など),不順. これらが原因で地金の対外流出と為替の悪化が 額発し『バンクノートの強制的縮小』が余儀な 102)資金が投機に流れてロンド くされている. ンの『金融的利害』が潤う『まさにそのときに』, 103) 『地方的利割は『貨幣不足』を訴えた. 金融の量的制限にさいしても,まず苦境に立つ. 察は総裁の見解と完全に一致しており,また実. のは『ロンドンのブローカーが見向きもしない, 地域の通常の商業手形』しか持たないバーミン. 際,そこにこそ一引締が必要な時にコントロ. ガムの地場産業である.. 『小規模製造業者層の苦境についての貴下の観. 104). こうした背景で,リカード-通貨学派の「国. ールできないまでに営業規模を拡張する地方銀. 行を支援するのは不適切であるという総裁が表 99)こ. 際均衡」優先の金融調節論を批判して,健全な. 明した判断の一完全な鍵が存在する.』 うしてバンク当局は『バーミンガムの経済をバ. 手形を割引く限り不健全な景気の過熱はないと. ンクの諸窺制[ランカシャー-ロンドン基準]. doctrine)が登場した.また『完全雇用と完全 賃金』 (fullemployment and full wages)以外に. に合致させる(to. bringthe. trade. of Birmingham. 説く銀行学派の「健全需要説」. (the. real. bills.
(14) 32. (32). 第ⅩⅠⅩ巻 第1号(1998). 横浜経営研究. 『流通手段の過不足を判断する正しい基準はな. governlng. い』 105)と主張するバーミンガム学派の平価切. circulationofthe. drain. export)と対内流出(a accommodation. of the. for. drain the. which. regulates. the general. Empire)として妥当するもので はありません.』. 下・管理通貨論も人気を集めていた.バンク理 事会の内部でも,地金の対外流出(a. PrlnCiple. for. internal. Country)とでは『反対の. こうしてニコルズによれば,健全な『割引銀 行』の営みに徹することが『地域』における銀 行券発行の最良の調節手段である.より正確に. 処方養』 (oppositetreatment)が必要なことを指. は,そのうえで,. 摘し,後者の場合『発券制限』は『窮境を増. 哩(「国際均衡」)と『地域』的『割引銀行』の. 幅・強化』しかねないと強調する意見や, 幣流通の節度ある増加(a. moderate. 『貨. increase)』. 『帝国』的『発券銀行』の論. 立場(「国内均衡」)が,どちらか一方が他を呑 み尽くすのでなく,相互に調整されるところに. が生産と雇用を拡大させ,この『雇用機会の拡. 中央銀行政策の在るべき姿が求められている.. 大』 (企業数・就労者数の増大)が『生産の効. 1もちろん,割引銀行の立場というとき,本店が. 率化』 (企業淘汰と労働生産性の向上)に負け. 批判した「割引残高至上主義」が意図されてい. ず劣らず国富に寄与することを主張する「連続. たわけではない.. 的影響説」 (F.A.Hayek)の立場など,. 「国内均. 衡」重視の議論が跡を絶たなかった.. 106)そう. い審査が不可欠であり,それには『地方の事情 に疎い』バンク当局の判断ではなく,現場の支 店長の『裁量』が尊重されるべきだというので. した時代とバーミンガムでの経験をふまえて,. 「健全需要」を確認する厳し. ニコルズは『地域的観点からみた』 『銀行券発 行の最良の尺度』を論じていたのである.ニコ. ある.. ルズの書簡から若干を引用してみよう.. 域の現実の真正な手形であるとすれば,我々. 『我々の銀行券発行の最良の地方的手段が地. 『[イングランド銀行は]発券銀行(Bankof. [支店]の職責は割引に呈示される手形の性格,. Issue)として公共機関であるとともに害帽[銀 行(BankofDiscount)です.しかも我々は割. 起源,安全性を注意深く吟味することに尽きて. 引という手段を通じてのみ地域の[銀行券]流. がるのです.つまり,手形は支店長が評価して. 通に影響を及ぼすことができるのです.. 抜群なだけでは駄目で,ロンドンでもそのよう. -だか. います.. -さて,しかし,ここで困難がもちあ. ら割引を適切な限度内に規制することが考察す. に見倣されなければならないのです.ある手形. べき問題です.』さて『ロンドンでは為替の状 悲(state of the Exchange)とその結果としての. について私は完全な確信をもったとします.そ. れは手形の当事者について,また我々の判断を. 貨幣の過不足がバンクに対する害帽I需要を規定. 左右する若干の周辺的な事情について,私が知. します.当地でもこれらの影響はありますが,. ロンドンほどの有効な要因ではありません.戟. っているからです.ところが,こうした地方の a want 事情に疎いために(from of this Local. が地域の[銀行券]流通の主要な尺度は地域の. knowledge)この手形がロンドンでは不信の目. 現実のビジネス(the. actual. I∃usiness. of. the. で見られることがあるのです.こうしたケース [だから]支店長は は毎日起こっています.. Distdct)です. -地域の公正で正直な真正の手 形(the fair honest bona fide Bills of a District)を. 様々な事項について臨機に対応するために一定. 割引くことが当地の紙券流通を調節する唯一で. の裁量権をもたなければならないのです.』. -. 107). なくてもおそらく最良の尺度なのです.いうま でもなく,この論理は地方的にのみ(aslocal merely)当てはまるもので,帝国全般の[紙券」 流通を規制する支配的大原則(the great. 〔d〕『需給原則が見落とされているのでは あるまいか』 -. 「バ-ミンガム学派」批判-.
(15) 中央銀行政策形成史の-断章(関口. 最後に,ニコルズは「バーミンガム学派」と. 尚志). (33). のインクで逐条的なコメントを書き入れ,本店. 異なって,不況の克服には『需給原則』の貫徹. 宛ての書簡に同封した.そこにはイングランド. (過剰資本の処理とコストの切下)が不可欠と. 銀行支店長と大口顧客である製鉄業界との見解. 考え,その認識にたって金融調整を構想し支店. の相違が浮き彫りにされている.. 決議はまず『1825年のパニック以来5年間』. 業務を統括した. 「バーミンガム中下層者同盟」. (Birmingham. 工業製品とくに銑鉄と棒鉄の価格が『持続的・. Classes)の領袖で 「バーミンガム・スクール」の指導者トマス・. 加速的に低落』したと訴える.これに対して,. アトウッド(ThomasAttwood)は,前述のよう. 大幅に増大した』とコメントし,過剰設備の存. に管理通貨と平価切下で『完全雇用と完全賃金』. 在を次のように指摘する.. を実現すべきことを説き,当面,イングランド. 以上の新高炉がスタッフオードシヤー内に建設. unioll. Of the Lower. 33. Middle. and. ニコルズは『それにもかかわらず鉄の生産量は 『1825年以降-20基. 銀行に銀行券増発と積極的景気政策を要求した.. された.しかもまた,それら高炉での作業には. ニコルズは『私の所信はこれとは全く異なって 108) 『中下層諸階級』 いる』と断わったうえで,. 大きな改良が加えられ,. とくに『工業生産者層(Manufacturing. は,ついで,この『長期・持続的不況の克服の. Classes). 1高炉あたりの出銑量. は今では-週に20トンも増加している.』決議. に対するアトウッドの影響力』や,彼が『バン. ため』製鉄諸企業は『あらゆる種類の節約』. クの温かい友人』と自称して『イングランド銀. 『改善』に努めてきたが, 『多くの』企業は赤字. 行券の法定通貨化』. (『バンクをただ一人の王,. すなわち唯一の紙券発行者に』すること)を構. に転落したと述べている.これに対して,支店 長の批判は,. 『労働者は現在一般によい支払を. 109)その議論や動静. 受けている』という点に向けられている.. を頻繁に本店に書き送った.アトウッドは地方. 決議文は,後半で,平価切下と通貨改革-. 想している点に注目して,. 銀行の経営者としてバンク支店の有力な顧客で. 『収益可能な価格水準』 (a remunerating. あり,彼に共鳴する多くの製鉄会社や中小企業. prices)を保証し『公正で適切な利潤』. が支店に口座を開いていた.この地方の民衆は. reasonable. level. of. (fairand. profits)と『正当で必要な貸金』. 『平価切下と紙券増発』 (Little Sovereigns. and. plentyofPaper)によってのみ『ポケットには お金,鍋には牛肉』 (pounds in bi島 Pocket. wages)を約束する『正当で (just, adequate, 適切で有効な通貨』 and. and. efficient. BeefinhisPot)が保証されると『毎日吹き込ま 110)こうした環境を無視 れて』いるのであり, しては支店の経営戦略もたて難い.総裁も『現 在我が国の異なった諸地方でそれぞれ支配的に なっている様々な見解を知って比較する』こと が必要だ,とニコルズは書いている.. 111). 1831年10月,ダドリーで開かれたスタッフ. (justand. necessary. Currency)の迅速な確立-を政府・ 議会に要請する.この点を批判して,ニコルズ は『供給が需要と目一杯に等しかったりこれを 超過したりしている限り,目に見えるような恒 久的な価格の上昇は期待できない.生産を縮小 (Lessenthe. せよ.そうすれば価格は上昇する. Make,. improve.)』と説き, 『しかし多くの製鉄業者はそうすることが三_皇 and. the. price. will. オードシヤー製鉄業者の集会は『鉄価格の著し くかつ長期的な低落』の原因を『通貨に関する. 立上三.損でも操業を継続しなければならないの. 現行諸法規の有害な作用』に求め,貨幣制度の. 過剰設備をかかえて操短もできない業界のジレ. 変革,平価の切下に活路を得ようとする,アト. ンマに言及する.そして,. ウッドの路線に沿った首相宛て決議を採択した.. 議では見落とされているのではあるまいか』と. ニコルズはこの決議文(2枚綴りのビラ)に宋. 栄吉してコメントを結んでいる.. だ.たしかに最も痛ましい状態ではある』と,. 『需給原則がこの決 112).
(16) 34. 第ⅩⅠⅩ巻 第1号(1998). 横浜経営研究. (34). このように,支店長ニコルズは不況の克服に は『需給原則』 (市場原理)の貢徹,したがっ. ルールがそのものとして強力に実行されるべき その時に,例外がとかくルールになりがちなも. て過剰設備の処理,挽業の短縮と原価の削減 (とくに賃金の引ーF)が不可避とみて,そうし. のなのです.』. た観点で支店割引業務を管理運営した.. 113)ま. 引用した書簡はいずれもバンク本店の支店局 長からバーミンガム支店長ニコルズに宛てられ. た『既存貨幣の取扱業者としての銀行業者』. たもので,. (Bankers or辿ofmoney)であると同時に. ある. 115)厳しい内容で,本・支店間の対立は. 『紙幣麹塵畳』(幽ofPaper. Money)でもあ るイングランド銀行の重責(為替と通貨価値の. 破局的にみえる.実際,ニコルズはその後まも. 安定についての義務)をも充分に自覚してい た.114)そのうえで彼は,バンク当局から通達さ. コルズは支店局長に「職務的遺言」ともいうべ き業務書簡を書き, 『バンクの支店監理諸規則. れる指導原則・一般理論の機械的・演緯的な適. は,私には常に,原則としては完全だが細部で. 用には疑問をもち,. はやや問題がある(perfect. 「地域(-勤労民衆). 実情や経験に即して「過剰」. 」の. (過剰生産・過剰. 1832年2月と翌33年12月の日付で. なく(1834年9月)辞職した.辞任当日,ニ. in principle,. and. nearly. 発行)の有無を点検することを根底に据えて,. soindetail)ように思われました.そう した諸規則のもとで-支店長たる者は[本店か. 現実的で有効な金融調整の手法を構想しようと. ら指示された]原則を堅持しながらも,不断に. したのである.. 生起する実に様々な状況にこれを適用するため. むすび-. 「中央」銀行政策の形成と 「地域」的経験-. 『職掌がら直言します.登登銀行や多くの貴. に,時には原則を現実的に修正することを心得 ねばなりません』と述べて,控え目な表現だが 『当局への挑戦』を隠そうとはしなかった.. 116). もっとも,ニコルズの辞任は新救貧法成立に. 支店の[一般]顧客・銀行業者に対して,とく. ともない首相から直々救貧委員への就任を懇請. に割引勘定の引塵[が必要な]時に貴下がとっ. されたためであり,また,このときバンク理事. ている一般的な行動をみて,総裁-は支店割引. 会は俸給の大幅な引上げを提案して慰留に努め. 勘定の縮小を極力回避することが貴下の不変の. たと記録されている.ニコルズが-ときには. 目標であり,そのために貴下は時に地方支店割. 職を賭して直言する硬骨漠だったが-. 引口座に関する現存の諸原則や受取手形の品質. 重要な支店長」117)であり,. に関するバンクの厳格なルールを見失いがちに. まえて形成期「中央」銀行政策の現実化に貢献. なる,と判断されています.総裁は貴下が諸規. したことを論争相手のバンク当局が最もよく知. 則を旦担劇.遵守しないかぎり直ちに理事会との衝. っていたからにほかなるまい.. 突になる旨,明言されました.』 『副総裁は,非発券銀行優遇口座の運用に関. 「最も. 「地域」的経験をふ. 118). 実際,彼の直言の多くは『バーミンガムがイ ギリスなのではない』. (Birminghamisnot. するバンクの健全な原則をふみにじる貴ーFの最. England) 119)といった社会的風潮のなかで一蹴. 近の行動を当局への挑戦にほかならないと深く. され黙殺されていた.しかし,少なくともその. 危供されています.理論としては正しいが現実. 若干は巧みに採り上げられ,金融政策の彫琢に. 的でない(right. 何ほどかの「構成的影響力」120)を及ぼすこと. Theory,. Practice)とは 奇妙な言い分です.貴下は理論の[現実への] wrong. 適用だといいますが,実際には理論の全面的な 破壊です.何度繰り返しても過ぎることはない のですが,イングランド銀行のような組織では,. ができた.そのことは,発券銀行や地場産業の 処遇,適格手形の要件,金融引締政策などに係 って,これまでに検討したとおりである.群小 企業向けの小規模口座の開設,口座外割引勘定.
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