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課題提起型教育を視点とした音楽科教育のあり方に関する考察:―パウロ・フレイレの成人識字教育を手掛かりにして―

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Academic year: 2021

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(1)課題提起型教育を視点とした音楽科教育のあり方に関する考察.  一パウロ・フレイレの成人識字教育を手掛かりにして一                            教科・領域教育学専攻                             芸術系(音楽)コース.                                 M09190D                                 舛本佳菜江  今日学校のいかなる教科においても、教師が教.  論文の構成は以下のとおりである。. えるのではなく、こどもの口からことばを引き出.  はじめに. そうとする教育のあり方がある。そして、それは.  第一章 わが国におけるフレイレの課題提起. 音楽科においても同じであり、表現や解釈に対す.      型教育の受容. る自分の意見をもち、それを音楽と言葉の両方で.      第一節 わが国におけるフレイレの. 伝えることができることは大切なカである。しか.          主要先行研究. し音楽科においては歌ったり演奏したりという.      第二節社会科における課題提起型. 目に見える表現活動が行われるため、音楽表現に.          教育の事例. ついて深い理解を得たり、自分なりの意見を持つ.  第二章 フレイレの課題提起型教育に関する. という主体的な表現活動がうまく行われてこな.      検討. かったようである。.      第一節 フレイレの成人識字教育の.  そして、そのような状況に対応するために有効.          中心概念. であると考えられる手段として本研究で取り上.      第二節課題提起型教育の概観. げたのがパウロ・フレイレの課題提起型教育であ.      第三節 課題提起型教育の構造. る。課題提起型教育では教師と生徒が水平的な関.      第四節対話. 係の中で対話を通して問題を解決していく教育.      第五節意識化. のあり方である。この教育では、教師と生徒はと.  第三章 課題提起型教育を視点とした音楽科. もに学びあう関係となるので、教師が下方的に知.      授業の単元開発. 識を伝える教育と違い、生徒は積極的に学習活動.      第一節単元「上鴨川住吉祥杜の神事. に参加するようになるのである。そして、対話的.          舞のゴホントウの田楽」にお. な学習活動に参加するということは自分の考え.          ける“調査の段階”. を自分のことばで伝えるということである。この.      第二節 単元r上鴨川住吉祥杜の神事. ように、単に活動しているだけの状態と学ぶ意識.          舞のゴホントウの囲楽」にお. を持って活動している状態一ではずいぶんと意味.          ける“テーマ化の段階”. は違ってくるのである。.      第三節 単元r上鴨川住吉祥杜の神事.  そこで本研究では、音楽を理解する力と音楽を.          舞のゴホントウの田楽」にお. 音楽と言葉の両方で表現するカ、そして音楽に主.          ける“課題提起の段階”. 体的にかかわっていくことのできる子どもを育.  第一章ではわが国におけるフレイレ理論の研. てることを目的とし、子どもの生活現実から授業. 究ではどのような事が明らかにされているのか. に入っていき、対話を中心に授業を進めていく課. について精査し、特に重要であると考えられる5. 題提起型教育を視点とした単元開発を通して新. つの論文について内容を要約し分析を加えた。ま. しい音楽科教育のあり方を目指すことにする。. た、わが国において筆者の知る限り唯一存在する、. 一362一.

(2) 社会科における課題提起型教育の事例について、. れるようになる。ここでは、田んぼや山田錦のお. その一部を紹介し、要約して分析を加えた。そし て、これらの作業によってフレイレ理論に関チる. 酒、上鴨川住吉祥杜の田楽などがコード表示され、. 研究はこれまでもなされてきたが、課題提起型教. よって討論されていく。課題提起の段階では、コ. 育を授業に援用した研究は、筆者の知る限り社会. ード表示をめぐる生徒たちの討論や生徒との対. 科の事例ひとつだけしかないということがわか. 話のなかで選び出した新たな生成テーマを課題. った。. として提起する。ここでは、囲楽のコード表示で.  第二章では、まずはじめにフレイレの成人識字. あれば、神事舞の歴史、ぴんざさらが表現するも. 生徒が気づいたことやすでにもっている知識に. 教育の中心概念について述べた。それは、学習者. の、振付についてなどが新たなテーマとなり、「び. の生活現実とはまったく関係のない識字教育の. んざさらの音が表現するものはなにか」といった. 教科書に対する批判や辺境に追いやられた存在. ように課題提起できることを示している。その後. といいながら、実は社会構造の中に埋没してしま. は提起された課題を省察していくことになり、課. っている存在である非識字者へ、社会構造からの. 題提起を中心に授業が進んでいく。. 脱出を促すものである。さらに、コード表示を取.  本稿では、課題提起型教育の概念について十分. り上げ、生活現実から始まる教育の重要性につい. に伝えている。また、コード表示については、そ. て述べている。また、その後は課題提起型教育を. の役割が生活現実を一段階抽象化して客観的に. 銀行型教育と比較しながら概観した後で、構造の. 分析することであるとは伝えたが、それが討論や. 3つの段階を示し、さらに詳しく説明を加えてい. 対話を通してであるということがあまり強く伝. る。さらに、フレイレ教育において大切な概念で. えきれていない。しかし、対話的教育の重要性は. あり、課題提起型教育でも大切になってくる対話. 確実なものであり、対話的授業をどのように作っ. についても対話の本質や条件についてまとめ、意. ていけぱよいのかにっいては伝えることができ. 識化についても触れた。. た。このような授業が続いていけば、生徒は音楽.  第三章では、上鴨川住吉祥杜の神事舞のゴホン トウの田楽を単元として、音楽科授業のあり方に. を音楽だけでなく言葉でも伝えられるようにな ることが期待できる。. ついて考察した。調査の段階では、生活現実とか.  また、生徒の学びに対する意識は、自分と関係. け離れた授業にならないために、まずしっかりと. のある課題を提示され積極的に対話に参加する. 生徒や生徒の生活する地域について知ることに. ことで、喚起されることになる。そのため、授業. なる。ここでは、文字情報に惑わされない客観的. 後に自ら新たな課題を見つけ、挑戦していこうと. かっ正確な情報を得るために、生徒が住む地域を. する主体的な態度が育っていくことも期待でき. 実際に地図を描きながら歩いてみること。さらに、. る。. 文献調査、インターネット調査という流れで調査 を進めていくように述べている。ここで調査した ことによって、加東市は田んぼが多く、栽培され. 主任指導教員 草野次郎. る米の50%以上が酒米・山岡錦であることなど.   指導教員 岡本信一. がわかっている。テーマ化の段階では、調査した 生徒の生活現実を、コード表示によって一段階抽 象化した形で提示する。それによって、生徒たち. はコード表示されている現実を客観的に捉えら. 一363一.

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