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J.-J.ルソーの「環境思想」を探る (論文)

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J.-J.ル

ソ ー の

「環 境 思 想 」 を 探 る

J.-J.Rousseau,AsanEcologist

HirosukeArai は じ め に:小 稿 の 目 的 レ ヴ ィ=ス トロ ー ス(Levi-Strauss,C,1908∼)は1962年 の ル ソ ー(Rousseau,J.-J.1712-一 一1778) 生 誕250年 記 念 祭 に お け る 講 演 で 、 「文 学 、 詩 、 哲 学 、 歴 史 学 、 道 徳 、 政 治 学 、 教 育 学 、 言 語 学 、 音 楽 、 植 物 学 そ の 他 も ろ も ろ の 分 野 」 が ル ソ ー の 才 能 に 負 っ て い る が 、 さ ら に ル ソ ー は 「人 類 学 を 創 始 し た 」。 「彼 の 語 調 の 一 つ 一 つ 、 彼 の 人 格 、 彼 の 存 在 そ の も の に よ っ て 、 入 類 学 者 に 兄 弟 と し て の は げ ま し を 与 え る 」。 「人 類 学 者 は ル ソ ー の イ メ ー ジ の 中 に 自 分 自 身 の 姿 を 見 出 し 、 そ の イ メ ー ジ に よ っ て よ り よ く 自 己 を 理 解 す る 」 と 述 べ たq)。 ル ソ ー の 膨 大 な 著 作 の 中 に は 、 人 類 学 の ほ か に も 、 す で に 『人 間 不 平 等 起 源 論 』(以 下 『不 平 等 論 』)の 、 岩 波 文 庫 版 邦 訳 者 が 、 そ の 訳 注 や 訳 者 解 説(平 岡 昇 、1972年)で 簡 単 で は あ る が 注 記 を 忘 れ な か っ た よ う に 、 今 日 「環 境 思 想 」 と し て … 括 で き そ う な 一 連 の 言 説 を 見 出 す こ と が で き る 。 ま た 後 述 の よ う に 、 環 境 倫 理 学 者 や 環 境 経 済 学 者 が 、 自 説 の 主 張 に 際 し ル ソ ー を 想 起 し て い る 例 が 見 ら れ る 。 こ の 小 稿 で は 、 こ う し た 言 説 に つ い て さ さ や か な 整 理 を 試 み 、 ル ソ ー 思 想 の 多 様 性 の 中 に 、 「環 境 思 想 家 」 と し て の 一 面 を 探 る こ と に し た い 。 そ し て こ の 作 業 を 通 じ て 、 ル ソ ー の 「自 然 」 理 解 の 一 つ と し て の 「自 然 環 境 」 の 把 握 が 、 今 日 我 々 が 言 う と こ ろ の 「環 境 」 と して の 「自 然 」 理 解 に 及 ぼ う と し て い た こ と 、 ま た そ れ に よ っ て 、18世 紀 フ ラ ン ス 啓 蒙 思 想 が 「環 境 思 想 」 を 含 み つ つ あ っ た こ と を 示 唆 し て み た い 。 な お 、 一 口 に 「環 境 思 想 」と い っ て も 、 そ の 内 容 は 現 在 多 岐 に 及 ん で い る 。 こ こ で は と り あ え ず 、 ル ソ ー 思 想 の 中 に 見 ら れ る 、 自 然 破 壊 と 人 間 の 諸 活 動 の 関 係 や 都 市 化 等 と 健 康 問 題 と の 関 連 の 認 識(環 境 問 題 意 識)、 生 物 類 と 自 然 環 境 と の 生 態 的 関 係 の 認 知(生 態 系 と し て の 「自 然 」認 識)、 そ れ に 自 然 の 生 命 価 値 ・内 在 価 値 の 重 視(「 自 然 」の 環 境 倫 理 的 理 解)な ど に つ い て 注 目 し て み る(2)。 〔1〕 ル ソ ー の 「環 境 問 題 意 識 」 の 諸 相 1人 間 の 諸 活 動 と 自然 破 壊 との 関 連 の 認 識 まず ル ソ ー が 土 地 ・森 林 の 開拓 や技 術 開 発 、 資 源 消 費 の拡 大 な ど、 人 間 の 諸 活 動 の 高 ま り と 自 然 破 壊 と の 問 に い か な る関 連 を認 め て い た か 、 彼 自 身 の 言 葉 を例 示 す る と次 の よ うに な る。 (1)開 拓 ・消 費 の増 加 と土 壌 破 壊 の 増 大 土 壌 の 破 壊 、 す な わ ち植 物 に適 した 物 質 の 損 失 は 、 土 地 が ます ます 開 拓 さ れ 、 い っそ う勤 勉 な住 民 が ます ます 多 量 に土 地 の あ ら ゆ る種 類 の物 産 を消 耗 す る の に比 例 して増 大 す る に ち が い な い … 。(本 田喜 代 治 ・平 岡 昇 訳 『不 平 等 論 』 原 注(d),P.140。 以 下 頁 数 は こ の版 に よ り、 P.140な ど と記 す 。 他 の 引用 も こ の形 に 準 じる 。)

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(2)草 木 の 多 量 消 費 に よ る砂 漠 化 の危 険 も し私 の 読 者 の な か に、 こ の よ うな 土 地 の 自然 的 な肥 沃 さ(引 用 者 注 一 ル ソ ー は 本 文 で 未 開社 会 は 「土 地 は 、そ の 自然 の ま まの 豊 饒 さに 放 置 さ れ(d)、い まだ か っ て 斧 を入 れ た こ との な い大 森 林 に 蔽 われ て い て … … 」と した)を 仮 定 す る考 え に つ い て 、私 に 異 議 を とな え る よ うな だ れ か 意 地 の わ る い科 学 者 が あ る な らば 、私 は 、彼 に次 の 一 節 で もっ て 答 え る だ ろ う。 … … 。 「人 間 は 火 や そ の他 の 用 途 の た め に木 材 や 草 木 を 多量 に 消 費 す る の で 、 そ の結 果 と して 、 人 の 住 む 地 域 の 植 物 地 層 は た えず 減 少 し、 つ い に は 中央 ア ラ ビ アや そ の 他 非 常 に 多 くの 近 東 の 地 方 の よ う に変 わ っ て しま わ ね ば な ら な い 。 こ の近 東 は 事 実 、 もっ と も古 くひ と の住 ま っ た風 土 な の だ が 、そ こ に は塩 と砂 だ け しか 見 出 され な い の だ 。」『博 物 誌 』「地 球 理 論 の 証 拠(第 7条)」 … …(『 不 平 等 論 』 原 注(d)P,139) (3)森 林 破 壊 と開 発 との 関 係 の認 識 この 数 世 紀 の 間 に 発 見 さ れ た ほ とん どす べ て の 無 人 島 が あ らゆ る種 類 の 多数 の 草 木 で 蔽 わ れ て い た とい う こ と と、 ま た地 球 が 人 に住 まわ れ 開発 され る に従 っ て 地 上 い た る と こ ろ で 膨 大 な森 林 を切 り崩 さな けれ ば な らな か っ た と歴 史 が わ れ わ れ に教 え て い る … 。(『不 平 等 論 』 原 注(d)P.139) (4)技 術 と社 会 的 不 平 等 、森 林 破 壊 との 関 連 の 認 識 一 人 の 人 間 が 他 の 人 間 の援 助 を必 要 とす るや い な や … 平 等 は消 え うせ て、私 有 が 導 入 され 労 働 が 必 要 と な っ た 。 そ して広 大 な 森 林 は 美 しい原 野 と変 わ っ て 、 そ の原 野 を人 々 の 汗 で う る お さ な け れ ば な ら なか っ た し、 や が て そ こ に は収 穫 と と もに奴 隷 制 と貧 困 とが 芽 ば え 、 生 長 す る の が 見 られ る よ う に な っ た 。 冶 金 と農 業 とは 、 そ の 発 明 に よ っ て こ の 大 き な 革 命 を生 み だ した 一 つ の技 術 で あ っ た 。 人 間 を文 明 化 し、 人 類 を堕 落 させ た もの は … … 鉄 と小 麦 で あ る。(『不 平 等 論 』P.96∼97) 即 ち、(1)で は 「植 物 に適 した物 質 の 損 失 」 と定 義 さ れ た 「土 地 の破 壊 」 の増 大 が 、住 民 に よ る 土 地 資 源 の 消 費 活 動 の拡 大 に よっ て 進 行 す る こ と 、 ま た(2)は、 も と も と は引 用 者 注 に見 る通 り、 "未 開 社 会 の 土 地 が 自然 の ま ま豊 か で あ り 、 大 森 林 に お お わ れ て い た"と の 自説 に 関 す る 批 判 に 対 し、 ビ ュ ッフ ォ ンの博 物 誌 の 引 用 で 反 駁 し よ う と した もの で あ る 。 こ の 引 用 部 分 は しか し、 同 時 に上 記(1)の 自説 を補 強 す る役 割 を も有 して い る と見 て よか ろ う。 現 在 で も途 上 国 に お け る草 木 の 大 量 消 費 は 、 破 漠 化 の 一 因 と して あ げ られ る こ とが 多 い が 、 ル ソ ー は す で にそ う した 関 連 を ビ ュ ッフ ォ ンか ら学 ん で い た とい え よ う。 ま た 、 『不 平 等 論 』 の訳 注 で は 、 こ の 原 注(d)に関 して 、 「この あ た りは文 明 が 生 命 に と っ て大 切 な 自然 の破 壊 へ 導 く とい う近 代 社 会 の 問 題 を先 取 して い る よ う に み え る」 と して い る 。 また 平 岡昇 は 訳 者 解 説 で 「生 態 学 や 公 害 問 題 を先 取 した よ う な」 原 注 の 存 在 に注 意 を促 して い る 。 さ ら に(3)は、歴 史 的 に も最 近 数 世 紀 問 の発 見 に か か る無 人 島 が 、 多 種 多様 の 緑 に恵 まれ て い た の に 、 「地 球 」 上 にお け る 人 間 の 開 発 活 動 の 進 行 に伴 い 、 膨 大 な量 の 森 林 が 破 壊 され た 事 実 を指 摘 して い る 。 これ ら(1)∼(3)を通 じて 、 ル ソー が 土 質 の劣 化 、森 林 破 壊 、砂 漠 化 の 進 行 と人 間 の 開 発 ・消 費 活 動 の 拡 大 との 間 に は 、 一 定 の 因 果 関 係 が あ る こ とを把 握 して い た こ とが 示 唆 さ れ よ う。 こ れ ら は す で に今 日の 我 々 に と っ て 、 基 本 的 な環 境 問 題 の 一 つ と して認 識 され て い る。 最 後 に(4)だが 、環 境 破 壊 の 大 き な要 因 の 一 つ で あ る 森 林 破 壊 と土 地 私 有 制 の 導 入 、 社 会 的 不 平 一92一

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等(奴 隷 制 と貧 困)の 生 長 との 関 連 、 さ ら に は これ ら と冶 金 や 農 業 技 術 の 発 明 との 問 の 密 接 な関 係 が 指 摘 さ れ て い る。 こ の 点 に つ い て は従 来 の ル ソー 研 究 で も、 「ル ソー の 眼 は … … 人 類 文 化 の 発 展 の 表 裏 に き び し い批 判 を下 して い た」 と し、 と くに技 術 の 発 明 との 関 連 の指 摘 につ い て 、 「ル ソー が 『不 平 等 論 』 第 二 部 で 、脱 自然 状 態 化 の 諸 段 階 に鋭 い分 析 を加 え て 、「改 善 能 力」 の 不 吉 な働 きを描 い た部 分 は 、 と くに天 才 的 な 洞 察 に光 っ て い る。」(3)と 述 べ ら れ て い る。 ル ソー が と く に注 目す る土 地 の 私 有 制 の 拡 大 、 貧 困 の 生 長 と耕 作 地 化 に よ る 「広 大 な 」 森 林 破 壊 は 、現 在 途 上 国 の 住 民 が 直 面 す る大 きな 環 境 問題 の 一 つ で あ る。 人 間 の 不 平 等 を見 す え る ル ソ ー の 視 界 に は、 近 代 化 、 工 業 化 を促 した 「改 善 能 力 」 の 展 開 と環 境 破 壊 との 関 連 も映 じて い た も の と思 わ れ る 。 なお 、 ル ソ ー が 指 摘 した 、土 地 私 有 権 と環 境 破 壊 との 関 連 に つ い て 、環 境 経 済 学 者 の宮 本 憲 一 は 「環 境 は 人 間 の 共 同 財 産 です 。 と こ ろ が土 地 が 生 産 手 段 と して 私 有 化 され る と と もに土 地 そ の もの とそ れ に付 属 す る表 流 水 、 地 下 資 源 、 地 上 の森 林 や 空 間(大 気 を含 む)は 所 有 あ る い は 占有 す る企 業 や 個 人 の 私 的利 益 の た め に 自 由 に利 用 さ れ る よ う に な り ま した 。J.-」.ル ソー は 『人 間 不 平 等 起 源 論 』 の 中 で 、 公 共 空 間 で あ る土 地 に縄 ば りを して 私 有 権 が み とめ られ た 時 に 、 人 間 の 社 会 的 不 平 等 が 生 まれ た と い っ て い ます が 、 同時 に土 地 の 私 有 権 が み とめ られ た 時 に、 人 間 が 自 然 を搾 取 し て 、環 境 を破 壊 す る 自 由 が み とめ ら れ た とい っ て よ い の で は ない で し ょ うか 。」(4)と 述 べ て い る 。 上 記(4)の よ う な ル ソ ー の 認 識 に は 、 こ う した 現 代 の環 境 経 済 学 者 の 問 題 意 識 と通 底 す る もの が 見 て取 れ よ う。 レ ヴ ィ=ス トロ ー ス は 冒頭 に触 れ た よ う に、 ル ソ ー の 「語 調 の 一つ 一 つ が 人 類 学 者 に兄 弟 と して の は げ ま し を与 え る」 と述 べ た 。 こ の宮 本 の 語 調 に は 、あ る先駆 的な 環 境 経 済 学 者 が 、 ル ソー の 中 に一 人 の 縁 者 を 見 出 した との 想 い が 感 じ られ る の で あ る まい か 。 2都 市 化 ・産 業 化 ・文 明化 と健 康 問 題 との 関 連 の 把 握 こ こで は 、 今 日 の大 きな 環 境 問 題 の 一 つ で あ る 、 都 市 化 な ど と健 康 問題 の 発 生 との 関 連 につ い て 、 ル ソー が ど う認 識 して い た か 例 示 して み る(5)。 (1)食 品 ・薬 品 公 害 、都 市 大 気 汚 染 に よ る病 気 な ど ① な ん らの 偏 見 も もた な い で 、社 会 人 の状 態 を未 開 人 の そ れ と比 較 して み るが よい 。 そ し て ど ん な に社 会 人 が 、 そ の 邪 悪 さ と欲 望 と悲惨 との ほ か に、 苦 痛 と死 と に向 っ て新 しい 門 を 開 い た か を 、 で きれ ば 研 究 して も ら い た い 。 … … ま た も し食 物 の 異 常 な混 合 、有 害 な調 味 料 、腐 っ た食 料 品 、 変 造 さ れ た薬 剤 、 そ れ を売 る人 た ち の 詐 偽 行 為 、 そ れ を服 用 させ る 人 た ち の誤 り、 そ れ を調 合 す る容 器 の 毒 … … また 、 集 まっ た 多 数 の 人 々 の 間の 悪 い空 気 の た め に発 生 す る伝 染 病 、 わ れ わ れ の 生 活 様 式 の脆 弱 さ や わ れ わ れ が家 の 内 と外 とを往 き来 す る た め に起 る病 気 … … や が て わ れ わ れ の生 命 また は健 康 を失 う こ と に な る よ う な 〔医 学 的 な 〕 処 置 な ど の た め に 起 る病 気 な ど に、 皆 さん が 注 意 を 向 け る な らば 、 … われ わ れ が 自 然 の 教 訓 を軽 蔑 した こ と に対 して 、 自然 が い か に 高 い 代 価 をわ れ わ れ に 支 払 わ せ て い る か が 感 じ られ るで あ ろ う。(『不 平 等 論 』 原 注(i)P.150∼151) ② 生 活 様 式 に お け る極 端 な 不 平 等 、 あ る 人 々 に は 過 度 の 余 暇 、 他 の 人 々 に は 過 度 の 労 働 … … 夜 更 しそ の 他 あ らゆ る 種 類 の不 節 制 … … あ らゆ る 身分 で 人 々が 経 験 し、 そ の ため に魂 が 永 遠 に蝕 まれ る無 数 の 悲 哀 と苦 痛 。 これ こ そ 、 わ れ わ れ の 不 幸 の 大 部 分 が わ れ われ 自 身

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の 仕 業 で あ る こ と、 従 って わ れ わ れ が 自 然 に よ っ て 命 じ られ た簡 素 で 一 様 で孤 独 な 生 活 様 式 を守 っ て い た と した ら 、恐 ら くは こ れ らは ほ とん どすべ て 避 け られ た だ ろ う こ との 忌 ま わ しい証 拠 で あ る 。(『不 平 等 論 』 第 一一部P.47) (2)都 市 の 空 気 汚 染 、 不 潔 ① 都 市 は 人 類 の堕 落 の 淵 だ。 … あ ま りに も多 くの 人 が 集 ま っ て い る 場 所 の不 健 康 な 空 気 の な か で 失 う こ とに な る 生 気 を 、 ひ ろ い 田 園 で と り も ど させ る が よ い 。(今 野 一 雄 訳 『エ ミ ー ル 上 』 第1編 ,岩 波 書 店,1990年 第60刷,66頁 。 以 下 『エ ミー ル 上 』) ② パ リ に着 い て 、 ど ん な に予 想 を裏 切 られ た こ とだ ろ う!… …市 中 に 入 る と 、眼 に映 る も の は 、 汚 い 臭 気 にみ ち た狭 い 路 と黒 ず ん だ粗 末 な 家 、 不 潔 と貧 困 の 雰 囲 気 、 乞 食 、 … … そ ん な もの ば か り だ。(桑 原 武 夫 訳 『告 白 上 』 岩 波 書 店,1990年 第60刷,228頁 以 下 『告 自 k』) (3)産 業 化 に伴 な う、 生 命 ・健 康 破 壊 、 職 業 病 発 生 の 指 摘 ① 鉱 山 労 働 や 金 属 ・鉱 物 、 と りわ け 鉛 ・銅 ・水 銀 ・コ バ ル ト ・砒 素 ・鶏 冠 石 な どの さ ま ざ ま な 調 製 な どの よ うな 、 寿 命 を縮 め た り、体 質 を壊 した りす る あ の 多 数 に の ぼ る 不 健 康 な 職 業 を加 え て み る と よい 。 な お そ の 他 に 、屋 根 葺 きや 、 大 工 ・左 官 や 石 切 場 で 働 く人 た ち な ど、 多 くの 労 働 者 に 毎 日命 を失 わ せ て い る 危 険 な職 業 をつ け加 え て み る と よい 。(『不 平 等 論 』 原 注(i)P.154) ② 石 切 場 、 坑 道 、製 鉄 所 、溶 鉱 炉 、 鉄 砧 や 大 槌 が 響 き煙 と火 の渦 巻 く工 場 が 田 園 の仕 事 の 楽 し い光 景 にか わ る 。 鉱 山 の毒 気 に憔 悴 した み じめ な 人 た ち の青 ざめ た顔 、 ま っ黒 な鍛 冶 屋 、 醜 い 一 眼 の 巨 人 、 鉱 山経 営 に よ っ て 大 地 の 内部 に 見 られ る そ う い う姿 が 大 地 の 表 面 に お け る 緑 の 野 や 花 、 青 い 空 、 恋 す る牧 人 や 頑 健 な農 夫 た ち の姿 に と って か わ る。(今 野 一 雄 訳 『孤 独 な 散 歩 者 の夢 想 』 第7の 散 歩,岩 波 書 店,1990年 第60刷,ll7頁 。 以 下 『夢 想 』) 即 ち、(1)、(2)では ル ソー は文 明 化 され た生 活 や 環 境 で 多 く見 られ る 現 象 と して 、 健 康 に有 害 な 食 品 や 調 味 料 、 変 造 薬 品 、 有 毒 な 容 器 の 使 用 、 そ れ に 都 市 にお け る伝 染 病 な どの 病 気 の 流 行 や大 気 汚 染 な ど に伴 う健 康 問 題 の発 生 を指 摘 して い る。 また 、 過 度 の 余 暇 と労 働 が 併 存 して い る よ う な 「生 活 様 式 の 不 平 等 」 や 「あ らゆ る種 類 の 不 節 制 」 な ど を い わ ゆ る 「文 明 人 」 の不 幸 と見 て 、 この 原 因 を 人 間 が 本 来 自然 に保 つ べ きラ イ フ ス タイ ル を守 らな い こ と に 求 め て い る 。 さ らに(3)では 、① で 鉱 山 開発 や 「煙 と火 の 渦 巻 く工 場 」 労 働 、 鉛 ・銅 ・水 銀 な ど健 康 に有 害 な 原 料 調 製 の 過 程 か ら くる職 業 病 の 発 生 や 生 命 ・健 康 の 破 壊 が 指 摘 さ れ て い る。 ま た 、② の牧 人 や 農 夫 の健 康 に溢 れ た 姿 が 鉱 山 労 働 者 の青 ざめ た顔 に と っ て代 わ る と い う描 写 は 、 い わ ば 第1次 産 業 従 事 者 が 第2次 産 業 労 働 者 に転 換 して い く変 動 に、 す で に 不 吉 な兆 候 を感 じ、 これ に鋭 い 警 告 を発 した と見 る こ と も で き よ う。 な お 、 『不 平 等 論 』 の 訳 者 解 説 で は 、(1)∼(3)を指 して で あ ろ うが 「労 働 問 題 は も と よ り、 … … 公 害 問題 を先 取 し た よ うな … … 諸 編 、 そ の な か に今 も変 わ らぬ 数 々 の 社 会 悪 、 文 明 悪 を い っ そ う 具 体 的 に論 じた 文 章 は 、 現 代 の わ れ わ れ を 驚 か す ほ どの 新 鮮 な興 味 を そ な え て い る。」 と述 べ ら れ て い る。 以 上 〔1〕で は 、 ル ソ ー が 人 間 の諸 活 動 と 自然 環 境 破 壊 との 関連 や都 市 化 と生 命 ・健 康 問 題 との 関係 につ い て 鋭 く洞 察 し、 こ れ に批 判 を加 え て い る様 子 な ど を一 見 し た。 これ ら は 、現 代 の環 境 問題 意 識 の 重 要 な構 成 要 素 とな っ て い る。 ・,

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ま た 、 これ ら に つ い て と くに注 目 され る の は 、 ル ソー が 多 義 的 に用 い て い る 「自然 」 に は 田 園 や 山 岳 、水 流 な どの 自然 環 境 が 含 まれ て い るが 、 この 自然 環 境 に は、 都 市 の 大 気 、 土 地 、 土 壌 の 質 、 森 林 な ど もあ る こ と、 しか もそ れ らが こ れ まで 見 た よ う に 、 我 々 が 今 日環 境 問 題 な ど と い う 時 の 厂環 境 」 の 一 つ と して の 、土 地 、 土 質 、 森 林 、 大 気 な どの 意 味 を荷 っ て 登 場 して い る こ とで あ ろ う。 ル ソ ー の 「自然 」 理 解 は 、 今 日の 我 々 の 「環 境 」 と して の 「自然 」 理 解 に迫 りつ つ あ っ た こ とが 示 唆 さ れ る の で は な か ろ うか(こ の 点 は 、 さ ら に 〔囮 の2で 再 説 す る)。 ル ソ ー の 『不 平 等 論』 等 に お け る文 明 社 会 批 判 には 、 環 境 破 壊 批 判 も含 まれ て い た こ と に改 め て 注 意 した い 。 〔幻 ル ソ ー の 生 態 系 と して の 「自 然 」 認 識 1森 林 の 保 水 作 用 や 、 土 壌 ・森 林 と動 植 物 間 の 生 態 的 関 係 の感 知 次 の引 用 にみ る よ う に、 ル ソー は前 述 の ビ ュ ッ フ ォ ンか ら学 ぶ と と もに 、 自 ら 「実 験 」 を行 う な ど して 、 森 林 に水 分 と水 蒸 気 を保 存 す る 保 水 作 用 が あ る こ とや 、 動 植 物 と森 林 、 土 壌 の 間 に 、 エ コ ロ ジ カ ル な 関係 が あ る こ と を知 っ て い た もの と思 わ れ る 。 (1)「 植 物 は そ の 養 分 と して 、 土 地 か ら よ り も空 気 や 水 か ら は る か に 多 くの 物 質 を ひ き 出 す の で 、腐 敗 す る にあ た っ て は 土 地 か ら ひ き 出 した よ り も多 くの もの を土 地 に返 す こ とが あ る 。 な お 、 そ の上 に、 森 は水 蒸 気 を ひ き止 め る こ と に よ っ て 雨水 を決 定 す る。 こ う して 、 人 が 永 く触 れ な い で 保 存 す る よ うな 森 林 の な か で は 、 植 物 の た め に役 立 っ た 地 層 が 非 常 に増 大 す る だ ろ う。 と ころ が 動 物 は土 地 か らひ き出 す よ り も土 地 に返 す ほ うが 少 な」 い 。 『博 物 誌 』 「地 球 理 論 の 証 拠(第 七 条)」 … …(『 不 平 等 論 』 原 注(d)P.139) (2)動 物 に よっ て な され る植 物 質 の消 耗 を埋 め あ わせ る よ う な植 物 が あ る とす れ ば 、 そ れ は と りわ け 森 の 木 で あ っ て 、 そ の 梢 や 葉 が 集 ま り、 他 の植 物 よ り も多 くの 水 分 と水 蒸 気 と を わ が 物 に す る の だ 。(『不 平 等 論 』 原 注(d)P.140) (3)私 の 第 三 の そ して い っ そ う重 要 な指 摘 は 、 木 々 の果 実 は 他 の植 物 が 供 給 し うる 以 上 に豊 富 な栄 養 を動 物 に供 給 す る とい う こ とで あ り、 これ は 、私 が 自分 で行 な っ た実 験 で あ っ て 、 大 い さ も質 も相 等 しい二 つ の 土 地 で 、 一 方 に は栗 の木 を い っ ぱ い に植 え 、 他 方 に は 麦 を播 い て 、 そ の 産 物 を比 較 して み た の で あ る 。(『不 平 等 論 』 原 注(d)P.140) 即 ち 、(1)はル ソ ー 自 身 の言 葉 で は な く、 前 章 〔1〕、1の(2)の 後 半 と同 じ く ビュ ッ フ ォ ン の博 物 誌 か らの 引 用 で あ る。 こ れ も前 と 同様 「土 地 の 自然 的 な肥 沃 さ を仮 定 す る」(『不 平 等 論 』 原 注(d) P.138)自 説 に対 す る批 判 反 駁 の材 料 で あ る と 同時 に、(2)で引 用 した 、 ル ソ ー の 、 森 林 の 保 水 作 用 や そ れ と動 植 物 問 の エ コロ ジ カ ル な 関 係 に つ い て の主 張 を裏 づ け る 資 料 と して使 わ れ て い る 。 こ の(2)は、 ル ソ ー の言 葉 で 森 林 に保 水 作 用 が あ る こ と、 また こ の保 水 作 用 が 、 ビ ュ ッフ ォ ンの 説 か らの 「推 理 」 に従 っ て 、 動 物 に よ る植 物 質 の 消 耗 を埋 め 合 わせ て い る と述 べ られ て い る 。 ま た(3)では 、 ル ソ ー 自身 の 「実 験 」 に よ っ て 、 動 物 へ の 栄 養 供 給 に お け る木 々 の 果 物 と他 の 植 物 との 生 態 的 な関 係 を確 認 した こ とが 「い っ そ う重 要 な指 摘 」 と説 か れ て い る。 以 上 〔II〕で は,ル ソ ー の エ コ ロ ジ カル な認 識 の い くつ か を例 示 して み た。 現 代 の 環 境 科 学 で は 、 地 球 規 模 の 生 態 系 研 究 が発 展 しつ つ あ る。 周 知 の通 りそ の 中 で も熱 帯 雨 林 な どの森 林 帯 が 気 候 や 動 植 物 、 あ る い は土 質 に 与 え るエ コ ロ ジ カ ル な影 響 に つ い て の研 究 が 重 視 され て い る。 ル ソー は 、

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こ う した 自然 環 境 が 持 つ 生 態 系 と して の意 味 に 関 して も限 定 的 、 部 分 的 な が ら認 識 して い た もの と思 わ れ よ う。 〔皿〕 「自然 」 の 環 境 倫 理 的 理 解 現 代 の 環 境 思 想 にお け る 自然 環 境 観 とは 、 もは や 経 済 開発 の た め に破 壊 され る に任 され る 「自 然 」 で は な い 。 そ れ は人 間 の み な らず 、 地 球 上 の全 生 命 と共 生 す る 自然 で あ り、 そ れ 自体 が 自己 保 存 と 自己 実 現 の 権 利 を持 つ 存 在 で あ る と の 理 解 が 、 「環 境 倫 理 」 の 考 え 方 の 一 つ と して しだ い に広 が りつ つ あ る 。 自然 環 境 とい う意 味 で の 「自然 」 に対 す る ル ソ ー の心 情 、 認 識 な ど は 、 従 来 の 研 究 で もた び た び と りあ げ られ て い る 。 こ こ で は そ れ らを 「環 境 倫 理 」 の 考 え 方 に よ る 自然 環 境 観 か ら改 め て見 直 し、 ル ソー の 言 説 に どの よ うな 新 しい意 味 を見 出す こ とが で きる か 検 討 を加 えて み る 。 1自 然 愛 の 感 情 (1)自 然 の 中 で や す ら ぐ幸 福 感 充 実 した完 全 無 欠 な幸 福 … こ う した 状 態 こそ わ た しが サ ン ・ピエ ー ル島 に お い て 、 また は ほか の 美 しい 川 の ほ と りや 砂 漠 の上 を さ ら さ ら流 れ る細 流 の か た わ らで 、 孤 独 な 夢 想 に ふ け りな が ら しば しば経 験 した 状 態 な の で あ る 。(『夢 想 』 第5の 散 歩P.88) (2)ア イ デ ンテ ィ テ ィの修 復 牧 場 、 水 流 、森 、 人 気 の ない 場 所 、 そ して な に よ り もや す ら か な 静 け さ 、 すべ て そ うい う もの の あ い だ にみ い だ され る休 息 、 … そ れ は 人 々の 迫 害 … 憎 悪 を 、 軽 蔑 を 、侮 辱 を … か れ ら が あ た え た あ ら ゆ る苦 しみ を忘 れ させ る。(『夢 想 』 第7の 散 歩'P.126) (3)自 然 の 豊 か さや 景 観 の 賛 美 自 然 に よ って 活 気 づ け られ 、 婚 礼 の 衣 装 を ま とい 、水 の 流 れ と鳥 の 歌 声 に取 り巻 か れ た 大 地 は 、 自然 の 三 つ の領 域 の 諧 調 に よ っ て 、 生 気 と興 味 と魅 力 に み ち た 光 景 を人 間 の まえ に展 開す る 。 そ れ は こ の 世 にお い て 人 間 の 目 と心 情 が 決 して あ き る こ との な い唯 一 の 光 景 な の だ。 (『夢 想 』 第7の 散 歩,P.llO) (4)即 物 的 ・実 用 的 な 自然 利 用 観 か らの 解 放 の 訴 え で は 、 自然 の もっ と も心 にふ れ る美 し さ を、 い つ もな にか し ら身 の 利 益 に な る こ と と こ っ ち ゃ に した りはせ ず に 、 感 受 す る 人 は い な い とい うの か 、 … … あ の 色 彩 、 あ の 香 り、 あ の 優 雅 な 変 化 に富 ん だ形 態 、 そ れ らの もの が 植 物 に付 与 され た の は 、 一 切 合 切 ひ っ くる め て 乳 鉢 の 中 で す りつ ぶ さ れ る た め にす ぎ ない とい うの か 。 あ あ 、 自然 を愛 す る こ と を知 ろ うで は な い か 。 … … 自然 の美 し さ に讃 嘆 す る こ とを 知 ろ う。 自然 は私 た ち の 利 益 の た め に 身 を飾 っ た の で は な い 。(高 橋 達 明訳 「植 物 学 断 片 二 」、 『ル ソ ー全 集 』 第12巻 、 白水 社 、1987年 第 二 刷 、 141∼142頁 。) 以 上(1)∼(3)は 、 名 文 が 多 い こ と で 知 ら れ る 『夢 想 』 か ら の 引 用 で あ る 。 こ れ ら の 文 の 持 つ 意 味 に つ い て は 、 従 来 の ル ソ ー 研 究 で も 多 く触 れ ら れ て お り 、 例 え ば(1)の ル ソ ー の 幸 福 感 と 「自 然 」 と の 関 連 に つ い て は 、「人 間 と の 交 わ り に 自 由 も幸 福 も 見 出 せ な か っ た ル ソ ー 」 は 、 『夢 想 』 で 「自 然 と の 交 わ り に 幸 福 を 求 め 」 た 。 「つ ま り ル ソ ー は 、 自 然 で も よ い 友 人 で も よ い が 、 親 し く語 り 合 う相 手 を 求 め て い る の で あ り、 そ の 相 手 が 見 つ か っ た 時 に 、 彼 は 幸 福 だ っ た の で あ る 。」 な ど 一96一

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と され て い る(6)。 現 代 の 環 境 思 想 の 中 に は 、 ル ソ ー が と くに(4)で述 べ て い る よ う に 、 自然 環 境 に 、 人 間 に よ る実 用 価 値 を離 れ た 内 在 的 ・生 命 的 価 値 を認 め よ う とい う考 え 方 が あ る 。例 え ば、 我 々 が 自然 林 に入 っ た 時 に感 じる 一 種 荘 厳 な感 情 な ど も この あ らわ れ と して 認 め られ る こ とが 多 い 。 ま た 、 もは や 森 林 な ど と共 生 す る哲 学 を失 っ た近 代 的 自我 を 「存 在 障害 」 とみ な し、 そ れ を ど う リハ ビ リテ ー シ ョ ン す るか と い う問 題 が 提 起 さ れ て い る(7)。 さ ら に 自 己 保 存 、 自 己 実 現 の 権 利 を生 物 の み な らず 、 生 態 系 や景 観 な どに も認 め よ う と して い る 。 本 節(1)、(2)に見 る よ う に 自然 と一 体 化 す る こ とで 幸 福 感 を得 、 社 会 的 に否 定 され た ア イ デ ン テ ィテ ィ を修 復(リ ハ ビ リ)す る ル ソ ー の 姿 は 、 自然 体 験 に よ る 自我 リハ ビ リ テ ー シ ョ ンの可 能 性 を語 る もの で あ ろ う。 さ ら に(3)では 「自然 」 の豊 か さ 、 景 観 の 「生 気 」 な ど に宿 る 生 命 力 の 讃 美 を 、 また(4)では 、 実 用 価 値 を脱 した生 命 価 値 の 尊 重 を 、 そ れ ぞ れ示 唆 して い る もの と思 わ れ る。 こ れ ら は、 上 記 の よ う な現 代 環 境 思 想 の 考 え方 と通 い合 う も の を含 む とい え る で あ ろ う。 な お 、 ル ソ ー は 自然 景 観 の み な らず 、「わ た しは 、い つ も水 を情 熱 的 に愛 して き た」(『告 白 下』 P.231)と い う 通 り、 水 流 、 そ れ に 山 岳 の 魅 力 も生 々 と語 っ て い る が 、 あ る 環 境 倫 理 学 者 は 、 「西 欧 で の 自然 保 護 へ の 関 心 は … …啓 蒙 思 想 的 価 値 観 に対 す る ロマ ン主 義 の反 動 か ら大 きな 影 響 を 受 け て い る。 ル ソ ー… … は 、 そ の 意 味 で 自然 の 価 値 を 認 め た 先 駆 者」(8)であ る と述 べ て い る。 ル ソー の 自然 愛 な ど の 自然 環 境 観 が 、 「環 境 倫 理 」 の 考 え 方 か ら改 め て 関 心 が 寄 せ られ て い る こ とが 知 ら れ よ う。 また ル ソ ー に は 、 単 に 自然 景 観 な ど を讃 美 す る だ け で な く、次 に見 る よ う に 、 自然 環 境 の 破 壊 が 弱 い 立 場 に 不利 な形 で進 行 す る とい う、 環 境 破 壊 の不 平 等 現 象 をい わ ば弱 者 の 身 に な っ て と ら え よ う とす る 態 度 が 見 られ る。 2ル ソ ー の環 境 被 害 の 不 平 等 観 ル ソ ー の土 地 観 は、 す で に 〔1〕、1の(4)で 見 た よ う に 、 私 有 制 の 発 生 基 盤 と して の 土 地 と い う 制 度 的 な意 味 と、 前 章 〔II〕で 見 た よ う に、 動 植 物 と の 間 にエ コロ ジ カ ル な 関係 を もつ 土 壌 と して の土 地 と い う、 生 態 的 な意 味 の 二 つ が 区 別 で き る。 しか しル ソー の 土 地 に対 す る 眼 は この 二 つ を 見 て い る だ け で な く、次 の 引 用 に見 る よ う に 、 土 地 の破 壊 メ カ ニ ズ ム そ の もの に も及 ん で い る 。 この 美 しい 湖 は、 … … そ の な か に ふ たつ の小 さ な 島 を囲 ん で い る。 そ の ひ とつ に は 人 が 住 み耕 地 もあ っ て 、 周 囲 は約 半 里 。 ず っ と小 さい も う ひ とつ の ほ う に は 人 も住 まず 、 荒 れ た ま まで 、大 きい ほ う の 島 の 風 波 に よ る崩 壊 を修 復 す る た め に た え ず そ こ か ら土 を削 っ て補 って い くの で 、 や が て は 姿 を 消 して しま う こ と だ ろ う。 こ ん な ふ う に弱 者 の 身体 は い つ も強 者 の た め に利 用 さ れ る 。 (『夢 想 』 第5の 散 歩P.80) こ こ に あ らわ れ た ル ソー の 語 調 には 、 風 波 に よ る ほ か 人 工 の 力 が 加 わ っ た 自然 破 壊 を見 る心 の 痛 み が 感 じ られ る。 そ の 痛 み は 、 大 き い 島 の破 壊 修 復 が 小 さい 島 の 土 の犠 牲 下 で 行 わ れ る こ とで い っ そ う強 くな る ば か りか 、 そ の 状 況 を ル ソ ー の心 の も っ と も深 い 痛 み と もい うべ き 「弱 者 の 強 者 に よ る一 方 的 な収 奪 ・支 配 過 程 」 と と らえ る こ とで 、 ます ます 大 き くな っ て い く様 子 が 見 て取 れ よ う。 こ こ で は ル ソ ー の心 は 、 弱 者 の 立 場 、即 ち 、 た え ず 削 り去 られ て い き 、 や が て 消 滅 して しま う

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で あ ろ う、 小 さな 島 の 土 の側 に立 っ て い る 。 現 代 環 境 思 想 に お け る 「デ ィー プ ・エ コ ロ ジ ー」 の 一 分 派 で あ る 「ス ピ リチ ュ ア ル エ コ ロ ジ ー 」の 姿 勢 の 一 つ は、「「声 な き」生 物 種 に代 わ っ て 人 々 の 前 で 事 実 を語 る こ と」 で あ り、 そ の エ ッ セ ンス は 、 「山 の 身 に な っ て考 え る」 と い う 言 葉 で 示 され て い る(9)。小 さな 島 が 土 を 削 られ ま す ます 小 さ くな っ て い く様 子 を見 る ル ソ ー は 、ま さ に 「小 さ な島 の 身 に な っ て 」 語 っ て い る よ う で あ る。 さ らに上 述 の引 用 句 に は 、 も う一 つ 新 しい 意 味 を感 じ取 る こ とが で きる 。 環 境 経 済 学 な どで は 大 気 汚 染 な ど の環 境 破 壊 の影 響 が 、 子 供 や 老 人 の よ う な弱 者 の 方 に大 き くあ ら わ れ る こ と な ど を 「環 境 被 害 の 不 平 等 分 配 」 と呼 ぶ こ とが あ る(lo)。ル ソー が 、小 さ な島 が そ の 土 を大 きな 島 の修 復 に 使 わ れ 、 「や が て 姿 を消 して しま うだ ろ う」 と述 べ て い る こ とに は 、 こ う した環 境 被 害 の 分 配 構 造 の 不 平 等 性 を予 兆 して い る よ う な トー ンが 感 じ られ て な らな い 。 ま た 、先 進 国 に よる 途 上 国 の 森 林 資 源 破 壊 に よっ て 、 先 進 国 の 住 民 は木 材 を得 る な どの 利 益 を 受 け るが 、 途 上 国 の 住 民 は洪 水 や 山 崩 れ な どの 不 利 益 を蒙 る こ とが あ る 。 これ を環 境 社 会 学 な ど で は 「受 益 圏一 加 害 圏 と受 苦 圏 一 被 害 圏 の 成 立 」 と して と らえ る こ とが あ る(11)。引 用 句 で は 、 受 苦 圏 一 被 害 圏(小 さ な 島)と 受 益 圏 一 加 害 圏(大 き な島)の 対 比 が あ ざや か で 、 ル ソー の 眼 は こ と 「不 平 等 」 に対 して は 、 と くに鋭 く光 る よ う で あ る。 以 上 の検 討 をふ まえ て 考 え る と、 〔1〕で も触 れ た よ う に 、 ル ソー の 自然 環 境 認 識 に は 、 我 々 の い う 「環 境 」 と して の 意 味 が 含 まれ つ つ あ る こ とが 示 唆 さ れ よ う。 3ル ソ ー の 生 物 観 (1)生 物 種 の多 様 性 と植 物 の 通 有 性 の魅 力 ① 生 物 種 の 多様 性 の 魅 力 感 想 像 して み て くだ さい 。 あ ま た の 驚 くべ き光 景 の 多様 さ、 偉 大 さ、 美 し さ を。 自分 の ま わ り に ま っ た く新 しい物 た ち 、不 思 議 な鳥 、 変 わ っ た見 知 らぬ 植 物 ば か りを 見 、 い わ ば も う一 つ の 自然 を観 察 し、新 しい世 界 の なか に い る と い う喜 び も。 … … そ の魅 力 は 空 気 が 微 細 な た め に い や ます の で す 。」(松本 勤 訳 「新 エ ロ イ ー ズ 」(上)第 一 部 書 簡23,『 ル ソー 全 集 』 第9巻,白 水 社,1988年 第 四 刷,77頁) ② 植 物 の種 ご との 通 有 性 存 在 の驚 異 感 植 物 の構 造 や 組 織 に つ い て 、 そ の 繁 殖 器 官 の 営 み 一 一 そ の 系 統 は そ の こ ろ の わ た しに は ま っ た く珍 しい もの に思 わ れ た の だ につ い て 行 な う観 察 の 一 つ 一 つ に覚 え る恍 惚 と陶 酔 、 そ れ は他 に く らべ る もの もな い くら い に 異 常 な もの だ っ た。 そ れ ま で は 思 い も及 ば な か っ た 植 物 の 通 有 性(caracteresgeneriques)(12)を み わ け 、 あ りふ れ た 種 に そ れ を 検 証 す る こ と は 、 わ た しを驚 喜 させ 、 さ ら に珍 奇 な種 にめ ぐ りあ う期 待 をい だ かせ た 。(『夢 想 』 第5の 散 歩P.83) 「デ ィー プ ・エ コ ロ ジ ー」 で は 、人 間 以 外 の 多 種 多 様 な生 命 の 尊 重 を う た っ て い るが 、現 在 の 地 球 規 模 の 環 境 政 策 の 一 つ と して 、 生 物 種 の 多 様 性 を次 の世 代 に引 き継 ぐ こ とが重 視 され て い る。 ル ソー は 、① で み る よ う に 、 地 上 の 生 物 種 が い か に 多 様 で あ る か 、 ま た そ れ が どん な に 「偉 大 さ 、 美 し さ」 に輝 い て い る か を あ ざや か に感 じ取 り、我 々 に伝 え て い る。 ま た② で は 、 と くに ル ソ ー が 好 ん だ植 物 学 の 知 識 の 一 端 が 示 され て い る。 こ こ で は、 生 物 種 は 多 様 で あ る ば か りで な く、 種 ご と に通 有 性 を持 つ こ と を植 物 を例 に観 察 し、 「驚 異 」 を感 じて い ・ ・

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る様 子 が 見 られ る 。 ル ソ ー研 究 で す で に指 摘 さ れ て い る通 り、 と くに晩 年 に 近 づ くに つ れ て 、 ル ソ ー の 知 性 と感 性 は 植 物 に 向 か っ て大 き く開 か れ た 。 ② で引 用 した文 章 か らは 、 ル ソー は 、 す で に前 記1の(4)で 見 た よ う に 、 自然 生 物 の 一 つ で あ る 植 物 は 、独 自の 生 命 価 値 を持 つ こ と、 人 間が 注 目 し よ う と し まい と、 自 らの 尊 厳 と美 し さ 、輝 き と魅 力 を 自己 実 現 して い る こ と を感 知 して い る こ とが うか が わ れ よ う。 (2)動 物 の 権 利 等 の 認 識 ① 人 間 に よ って 無 用 に 虐 待 され な い権 利 の主 張 動 物 もそ の授 か っ て い る感 性 に よ っ て 、 あ る 程 度 わ れ わ れ の 自然 に か か わ りが あ る の だ か ら、 彼 ら も ま た 自然 法 に加 わ る は ず で あ り、 そ して 人 間 は彼 ら に対 して な ん らか の 種 類 の義 務 を負 うて い る 、 と判 断 さ れ る だ ろ う。 … … この 特 質 は 動 物 と 人 間 と に共 通 で あ るか ら、 これ が 少 くと も前 者 が 後 者 に よっ て 無 用 に 虐 待 さ れ な い とい う権 利 を前 者 に与 え て い る は ず で あ る 。(『不 平 等 論』P.31∼32) ② 動 物 にお け る 感 覚 、憐 れ み の 感 情 、 観 念 の存 在 の 指 摘 どん な動 物 も、 感 覚 を も って い る の だ か ら、観 念 を もっ て い る。 動 物 は あ る程 度 まで そ の観 念 を組 み 合 せ さ え す る 。 そ して 人 間 は こ の 点 で は禽 獣 と量 の 上 で 違 い が あ る にす ぎな い 。 … … ③ 私 は憐 れ み の情 の こ と を言 って い る の で あ る が 、 … … そ れ は … 時 に は禽 獣 で さ え もそ の い ち じる しい徴 候 を示 す ほ ど 自然 的 な 徳 で あ る 。 … … 馬 が 生 きた か ら だ を足 で 踏 むの を嫌 う こ とは 毎 日観 察 され て い る 。 動 物 は 同 じ種 の もの の 屍 体 の そ ば を通 る と きに は 必 ず 不 安 を感 じる。 な か に は一 種 の埋 葬 を行 な う もの さ え もあ る。 そ して屠 殺 場 へ は い っ て ゆ く家 畜 の 悲 しげ な唸 り声 は 、彼 が そ の 心 を打 っ た恐 ろ しい 光 景 か ら受 け る印 象 を告 げ 知 らせ る 。 (『不 平 等 論 』P.52,P.71∼72) まず ① で は 、 動 物 が 人 間 に よ っ て 不 当 に虐 待 され な い権 利 を持 つ こ と、 そ して ② と③ で は、 動 物 に も、 感 覚 と ル ソ ー が 重 視 した憐 れ み の 感 情 を、 そ して 観 念 の 存 在 を認 め て い る 。① の 動 物 の 権 利 問 題 に は 、 そ もそ もい か な る基 準 で 生 命 を カテ ゴ ラ イ ズ す るか とい う根 本 的 な 問題 が 含 まれ て お り、 こ の 点 につ い て は 、 環 境 倫 理 学 の 分 野 で 現 在 活 発 な 「動 物 解 放 論 争 」 が つ づ け られ て い る(13)。 な お 、 あ る研 究 で は この よ う な 「動 物 の 権 利 の 原 型 を生 み 出 した の は功 利 主 義 で あ り、 育 て た の は フ ラ ン ス 革 命 で あ っ た 。 こ の系 図 が 示 す よ う に、 こ れ らの 権 利 は 、動 物 が 痛 み を感 じる 能 力 に 由 来 して い た」 と して い る(14)。 この 考 え 方 に よれ ば 、 ル ソ ー は そ の 動 物 観 にお い て もフ ラ ン ス革 命 にか か わ っ た こ と に も な ろ うか 。 また ル ソー は 、 動 植 物 に は興 味 を示 した が 鉱物 に つ い て は 、 「鉱 物 界 は … 人 を惹 きつ け る よ う な も の は な に もな い」(『夢 想 』P.116)と 述 べ て い る 。 こ の 点 に つ い て 多 田 道 太 郎 は,「 無 機 的 な もの は か れ の 感 覚 に は う と ま しい もの で あ っ た 。」(15)との 解 釈 を 示 して い る。 〔N〕 ル ソ ー の 「環 境 思 想 」 の 背 景 以 上 、 私 見 にか か わ る ル ソ ー の 「環 境 思 想 」 を 示 唆 して み た 。 次 に こ の背 景 につ い て も検 討 を 加 え て み た い と こ ろで あ る 。 しか し、 この 問 題 は 、 ル ソ ー の 多様 か つ 複 雑 な思 想 全 体 と 「環 境 思 想 」 の位 置 ・構 造 との 関係 にか か わ る 大 き な 問題 で あ り、到 底 この 小 稿 の残 され た 紙 幅 が 扱 い 得

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る と こ ろ で は な い 。 そ こ で 、 こ こ で は と りあ え ず 、 こ の 点 に つ い て の 今 後 の 研 究 の た め の メ モ ラ ン ダ ム の 一 つ と し て 、 小 稿 で 引 用 し た ル ソ ー の 言 説 の 相 互 関 連 を 、 著 作 に お け る 文 脈 か ら 整 理 し て み る と 、 一 つ の 仮 説 と し て 図1が 得 ら れ た こ と を 報 告 す る に と ど め た い 。 図1「 環 境 思 想 」 を持 ち得 た ル ソ ー の 背 景(仮 説) 即 ち 、 図1の 上 半 分 に示 した 通 り、 本 文 〔1〕の 環 境 問 題 意 識 に 関 す る とこ ろ は 、 ル ソー の 社 会 思 想 の特 徴 の 一 つ で あ る 文 明 社 会批 判 、都 市 化 ・産 業 化 批 判 、不 平 等 社 会 批 判 とか か わ っ て い よ う。 こ れ に は ま た ル ソー 自 身が 親 し く知 っ て い た と され る、 囲 い 込 み に よ る 農 民 層 の窮 乏 化 や 、 パ リ初 訪 問 の 印象 な どの 体 験 も影 響 した こ とで あ ろ う。 ま た動 物 の 権 利 観 に は 『不 平 等 論 』 序 文 にあ る通 り、 自然 法認 識 か ら由 来 す る 、感 性 的 存 在 と して 人 間 と動 物 は共 通 で あ る との 考 え方 が 働 い て い よ う。 ま た 、 〔II〕の 自然 に つ い て の 生 態 系 認 識 や 〔m〕の環 境 倫 理 的理 解 に関 す る部 分 は 、 図1の 下 半 分 に示 した 。 即 ち 、 文 明 社 会 批 判 に対 す る社 会 的 ・政 治 的 迫 害 か らの 逃 避 欲 求 は、 少 年 期 の 田 園 生 活 体 験(16)と と も に 、 自然 愛 、 植 物 愛 、博 物 学 へ の 関 心 を 育 て 、 そ れ らが 生 物 種 の 多様 性 ・通 有 性 を認 識 させ る に 至 っ た もの と思 わ れ る 。 ま た こ れ ら は 、生 態 系 の 存 在 や森 林 の保 水 作 用 の 感 知 に通 じた こ とで もあ ろ う。 なお 、 『エ ミー ル』 に 見 られ る ル ソー の 自然 環境 教 育 観 は 、 そ れ が 文 明 社 会 批 判 に基 づ く、 「自 然 人 」教 育 の一 環 と して 位 置 づ け られ て い る こ と、また ル ソ ー の 自然 宗 教 観 が 彼 の も う一 つ の 「自 然 」 で あ る 、 万 物 の 秩 序(17)、宇 宙 、 神 と人 間 との か か わ り を 中心 とす る こ とか ら、 エ ミ ー ル へ の 自然 宗 教 教 育 に は 、 今 日の環 境 倫 理 教 育(生 態 圏 秩 序 にお け る 人 間 の位 置 、 倫 理 の 教 育)の 発 想 と も似 た 点 が 認 め られ る こ と な ど に 、 ル ソー が 『エ ミー ル』 で 我 々 に伝 え よ う と した メ ッセ ー ジの 一 つ を感 じ取 る こ とが で き る。 こ の 点 も、 改 め て くわ し く触 れ て み た い と こ ろ で あ る 。 100

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結 び 従 来 、 「現 代 の エ コ ロ ジ ー 論 者 は啓 蒙 思 想 の 価 値 観 に対 す る批 判 を広 め て き た 」U8)と され る な ど現 在 、 環 境 思 想 研 究 の側 で に 啓 蒙 思 想 を一 本 化 して と らえ 、 わ りに少 数 の研 究 者 を の ぞ い て 、 ル ソー にお け る 一 連 の 言 説 に 十 分 とい え る 注 意 を払 わ な か っ た う らみ が あ る 。 小 稿 で は この 点 を や や くわ し く扱 い 、 ル ソ ー の 「自然 」 理 解 の 一 つ に 「環 境 」 と して の 理 解 が 含 まれ つ つ あ る こ と 、 少 な く と も18世 紀 フ ラ ンス啓 蒙 思 想 は 、 そ の 中 に環 境 思 想 を抱 きつ つ あ っ た こ と を示 唆 し よ う と 試 み た 。 も と よ り小 稿 は 、 い わ ば 序 論 的接 近 で あ り、 多 くの誤 解 を含 ん で い る こ と も予 想 で き る。 こ れ らは 今 後 の継 続 的 な検 討 に よ っ て克 服 して い くべ き問 題 と考 え る。 今 後 の 検 討 課 題 の も う一 つ が 、 同 時 代 の 啓 蒙 思 想 家 との 対 比 で 、 「自然 との 対 立 的 関 係 を 深 め て い く構 造 を も っ て い た」(19)との解 釈 もあ る 、A.ス ミ ス の 社 会 ・自然 認 識 との 比 較 や 、 百 科 全 書 派(デ ィ ドロ 、 ダ ラ ンベ ー ル な ど)の 自然 観 との 対 比(20)、 さ らに は 、 唯 物 論 派(ド ルバ ッ ク な ど)や フ ラ ンス の 経 済 思 想 家(ケ ネ ー 、 テ ユ ル ゴ ー な ど)の 経 済 ・社 会 思 想等 との 比 較 な どが 考 え られ る。 こ れ らの 作 業 を通 じて 、 ル ソー の 「環 境 思 想 」 の特 質 と構 造 を い っ そ う明 確 に す る こ とを志 向 した い 。18世 紀 啓 蒙 思 想 の 中 に は 、 我 々 が近 代 化 を ス ター トさせ て 以 来 、 い つ の ま に か 振 り落 し て きた もの が 、 まだ この ほか に も見 出 さ れ る か も しれ ない 。 注 (1)レ ヴ ィ=ス ト ロ ー ス 著 ・塙 嘉 彦 訳 「人 類 学 の 創 始 者 ル ソ ー 」 山 口 昌 男 編 集 ・解 説 『未 開 と 文 明 』 平 凡 社 、1969年 、57頁 、59頁 。 (2)こ の 小 稿 で は と く に 断 わ ら な い 限 り、 「自 然 」 を 自 然 環 境 の 意 味 に 用 い て い る 。 (3)平 岡 昇 「ル ソ ー の 「自 然 状 態 」 に つ い て の 試 論 」 『思 想 』No.567、 岩 波 書 店 、1971年 、34頁 、 35頁 。 (4)宮 本 憲 一 『環 境 と 開 発 』 岩 波 書 店 、1992年 、17頁 ∼18頁 。 (5)こ の 箇 所 は 、 栃 木 亨 が 「人 本 主 義 哲 学 に お け る 自 然 の 概 念(N)一 ル ソ ー の 場 合(2)一 」 『姫 路 短 期 大 学 研 究 報 告 』No.22、1977年 の5頁 で 、 ル ソ ー の 社 会 悪 の 描 写 に つ い て 現 代 社 会 と の 対 比 を 明 ら か に す る た め の 「短 注 」 と し て 取 り上 げ た こ と が あ る 。 (6)小 林 善 彦 「自 由 に つ い て の 二 つ の 考 え 方(下)一 と く に ル ソ ー を め ぐ っ て 一 」 『思 想 』No.565、 岩 波 書 店 、1971年 、112頁 。 (7)池 田 善 昭 「4環 境 問 題 は わ れ ら に 何 を 語 りか け て い る か 」 伊 東 俊 太 郎 編 集 『講 座 文 明 と 環 境 』 第14巻 、 朝 倉 書 店 、1996年 、78頁 ∼80頁 。 (8)加 藤 尚 武 「1.環 境 倫 理 学 の 成 立 」 伊 東 俊 太 郎 編 集 『講 座 文 明 と環 境 』 第14巻 、 朝 倉 書 店 、 1996年 、12頁 。 (9)開 龍 美 「第2章 デ ィ ー プ ・エ コ ロ ジ ー 」 中 村 友 太 郎 ほ か 編 著 『環 境 倫 理 』 北 樹 出 版 、1996 年 、34頁 。 (lo)宮 本 憲 一 『環 境 経 済 学 』 岩 波 書 店 、1989年 、106頁 、107頁 。 ⑪ 海 野 道 郎 「第2章 環 境 破 壊 の 社 会 的 メ カ ニ ズ ム 」 飯 島 伸 子 編 『環 境 社 会 学 』 有 斐 閣 、1993 年48頁 、49頁 。 (12)J.-J.Rousseau;(EuvrescompletesI,Pleiade,nrf,gallimard,1959年 、1043頁(以 下OC)。 小 稿 で は 、 ル ソ ー の 引 用 訳 文 に つ い て 、 原 文 を 本 全 集 で 参 照 し た 。 こ の 「g6n6rique」 に は 「普 遍 的 な 」 と い う 意 味 の ほ か 、 「属 と して の 」 と い う 意 味 も あ る 。 小 学 館 ロ ベ ー ル 仏 和 大 辞 典 編 集

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委 員 会 編 『ロ ベ ー ル 仏 和 大 辞 典 』 小 学 館 、1988年 初 版 第1刷,ll34頁 。 (13)鬼 頭 秀 一 『自 然 保 護 を 問 い な お す 』 筑 摩 書 房 、1996年 、63頁 。 ⑳ ジ ェ イ ム ズ ・ タ ー ナ ー 著 ・斎 藤 九 一 訳 『動 物 へ の 配 慮 一 ヴ ィ ク ト リ ア 時 代 精 神 に お け る 動 物 ・痛 み ・人 間 性 』 法 政 大 学 出 版 局 、1995年 、229頁 。 (15)多 田 道 太 郎 「11『 孤 独 な 散 歩 者 の 夢 想 』 に つ い て 」 桑 原 武 夫 編 『ル ソ ー 論 集 』 岩 波 書 店 、 1970年 、377頁 。 (16)『 告 白 』 に は 、 ボ セ ー の 村 の2年 間 で は 「田 園 は わ た し に は 目 新 し く… … 田 園 を 愛 す る 気 持 は た い へ ん 強 く 、 こ れ は 終 生 消 え な か っ た 。」(『告 白 』 上 、22頁)と あ る 。 な お 、 栃 木 亨 「人 文 主 義 哲 学 に お け る 自 然 の 概 念(皿)一 ル ソ ー の 場 合 一 」 『姫 路 短 期 大 学 研 究 報 告 』No.22、 1977年 、 参 照 。 (1の 例 え ば 『エ ミ ー ル 』 に は 、 次 の よ う な 記 述 が あ る 。 ① 人 類 は 万 物 の 秩 序(1'ordredeschoses)の う ち に そ の 地 位 を 占 め て い る 。(『エ ミ ー ル 上 』 第2編 、P.103)OC,tomeIV、303頁 。 ② あ あ 、 人 間 よ 、 き み の 存 在 を き み の 内 部 に と じ こ め る の だ 。 そ う す れ ば き み は 不 幸 で は な く な る だ ろ う 。 自 然 が 万 物 の 鎖 の な か で き み に あ た え て い る 地 位 に と ど ま る の だ 。 … … き み の 自 由 、 きみ の 能 力 は 、 き み の 自 然 の 力 の 限 度 に お い て 発 揮 さ れ る も の で 、 そ れ 以 上 に お よ ぶ も の で は な い 。(『エ ミ ー ル 上 』 第2編 、P.lll) (18)小 原 秀 雄 監 修 『環 境 思 想 の 出 現 』 東 海 大 学 出 版 会 、1995年 、22頁 。 ⑲ 藤 原 保 信 『自然 観 の 構 造 と 環 境 倫 理 学 』 御 茶 の 水 書 房 、1991年 、107頁 。 ⑳ こ の 点 に つ い て は 、 舟 橋 豊 「ル ソ ー と デ ィ ドロ に お け る 自 然 の 観 念(1)∼(5)」 『名 古 屋 大 学 教 養 部 紀 要 』 第22、23集 、1978年 、1979年 、 『名 古 屋 大 学 総 合 言 語 セ ン タ ー 言 語 文 化 論 集 』II-2、 皿 一2、IV-2、1981年 、1982年 、 な ど 参 照 。 〔備 考 〕 本 稿 は 、 日本 教 育 学 会 第55回 大 会(1996年8月29日)で の 発 表 内容 を、 よ り展 開 し よ う と した もの で あ る 。 なお こ の 発 表 で は 、拙 稿 「フ ラ ンス 革 命 を め ぐ る諸 研 究 の 新 展 開 と国 際 理 解 教 育 一 ル ソ ー の 環 境 思 想 との 関連 を含 め 、 示 唆 を試 み る一 」 『文 教 大 学 教 育 研 究 所 紀 要』 第3号 (1994年)の 内 容 を進 展 させ よ う と した 。(1997年6月19日) (国際学部教授) 一102一

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