言語文化研究所年報
第
6号
1994
武 庫 川 女 子 大 学
言 語 文 化 研 究 所 年 報
第
6号
目次
女子大生 と若者 ことば
佐竹
秀雄
1
音 声 か ら 文 字 ヘ ー フランスの入門期指導論 3-言語使用の意識 若者語 女子大生 総体的方法 音綴 表記市川
真文
13
田上
稔
27
平 岡 照、明35
Rcined Speech Elegant Engllsh
「 外来語」についての覚え書 き
キ ー フー ド キ ー フー ド キ ー ワー ド キ ー ワー ド キ ー ワー ド キ ー ワー ド English in Embl,0 外来語 文字 ひらがな カタカナ アルファベ ット Elegant Engshへ
の序 曲女か ら見た女 の ことわ ざ
ことわ ざ 女子大生 言語意識岸本
千秋
45
清水
彰
57
久米島の琉歌 四題
彙報 本文異動 語註 民俗 現地調査
女子大生 と若者 ことば
佐
竹
秀
雄
:.は
じめに‐――研究の背景 近年、若者 ことばの研究が盛んにな されている。「 ア ッシー君」や「 イケ イケ」、あるいは「 超∼」 とい った、若い人たちに よく使われていることば を研究の対象にす るものが 日につ く。特に関西では、都染直也氏、小矢野哲 夫氏、米川明彦氏 らが大学生のことばを収集 して用語集 (文献1, 2, 3)
を作 っているし、米川氏は雑誌『 日本語学』で「 若者語」についての論文を 連載 している。 また、マスコ ミも若者のことばに関心が強ぃ ょぅで、 しば しば取 り上げる。 ただ し、その取 り上げ方は、「 オ トナは知 らないが、若者たちの こんな変わ った ことばがある」 とヽヽう視点か らの ものが多いようだ。 そ うした取 り上げ方の中で、一般の人 々、特にいわゆるオ トナたちは、若 者 ことば とい うものが画然 と存在 し、若者たちはだれ もがそ うしたことばを 嬉 々として使 っているかのようなイメージを抱 き始めた。 しか し、筆者には、 それは正 しくないのではないか と思われた。 理由は、実際に見聞 きした ところ、若者たちがそ うした若者 ことば と言わ れるものを使 う場合が ごく限 られてお り、必ず しも多 くの若者がそ うした こ とばを使 ってはいない ように思われたか らである。 また、テ レビの タイズ番 組で、若者 ことばを当て させ る問題で、オ トナの出題者が「 若者ならだれで も知 っているはず」 と言 うのだが、それを当の若者 自身が答えられない。そ うした シーンを再三にわたつて見せ られたこともある。 そ こで、若者たちが、いわゆる若者 ことばをどの ように使 っているのか、 また、若者 ことばを どのように認識 しているのかを実際の調査を通 して明 ら かに してみたいと考えた。ただ し、調査は本学の学生を対象 としたので、若 者 ことば全般 とい うよ り女子大生のことばに限定す ることに した。2.調
査の方法 調査の 目的は、上に述べた ように、女子大生たちが若者 ことばをどのよう に使 っているのか、また、使 うことに対 してどのよう.に考えているのかを明 らかにすることである。 そのために、次のようなア ンケー ト調査を実施 した。1.あ
なたは下欄の ことばを、だれに対 して使いますか。 また、将来、だれ に対 して使 うと思いますか。下 のA∼ Gか
ら当ては まるものをすべて選んで、それぞれの欄に○印を付けてください。
A…
父親B…
母親C… 親しい友人
(女性〇、男性●、両方◎
)D― あまり親 しくない友人
(女性〇、男性●、両方◎
)E―
(将来
)会
社の同僚
F―
(将来
)会
社の上司
G―
その他 (具体的に)2.あ
なたは、下欄のことばを、他人が使 っているのを聞 くと、どんな感 じ を受け ますか。下のH∼ Nか
ら、当てはまるものをすべて選んで、それぞ れの欄に○印を付けて くだ さい。H…
会 話 の テ ンポが よ くな る (盛 り上 が る) I…か っ こい い J―・ノ リがヽヽtヽK…
気持ちが よく伝わ るL…
自分 も使いたいM…
自分は使いた くないN…
その他 (具体的に) 般教 す っびん お茶する 朝一 きしょい 超∼ け ば い イ ケイ ケ オ タ ッキ ー 終 わ って る 爆睡す る ぶ っちする プー太郎つ ま り、 この調査では、若者 ことばを女子大生たちが「 だれに対 して使 っ ているか」「 なぜ使 うのか」 とい う、
2つ
の視点に立 って質問を設定 したの である。 調査対象 として選んだ若者 ことばは、文献3で
、「 よく使 うことば」 とし て取 り上げられているもの20語の うちか ら、本学の学生にとってよ り身近 と 思われ る13語を選んだ。ただ し、「 般教」だけは例外である。 とい うのは、 本学では「一般教養」 とい う言い方をす る科 目がな く、「 共通教育」 と言 っ ている。その意味で「般教」は身近ではないのだが、逆に、その影響を知 り たいために、「 般教」を調査語に加えた。 以下に、調査語の意味解説を簡単に述べてお く。 ・ 般教:大学で、一般教養科 目の略。 ・ 朝一 :朝 一番の略。学生の場合、一時間 目の授業の意味に もなる。 ・ けばい :け ばけば しい。非常に派手な人や ファッションに対 して使 う。 ・ 終わ ってる :回復が不可能な、最悪の状況に陥 っている。 どうしようも ない。 ・ ぶ っちする :授 業をさぼる。約束をす っばかす。 。す っびん :化粧を していない顔。 ノーメイク。 ・ きしょい :気 色悪い。気持ち悪い。人や物に対 して使 う。 ・ イケイケ :派 手な服装や化粧で、いかに も遊び好 きな人。 ・ 爆睡す る:思いっき り寝て しまう。学生では、授業中や電車の中での深 い眠 りを指す ことが多い。 ・ プー太郎 :定職につかず、 アルバイ トな どで暮 らす人。 また、その状態。 ・ お茶す る :喫茶店へ行 く。 ・ 超∼ :強調を表す語。 とても。す ごく。「 超 うまい」などと使 う。 ●オタッキー:マニア ッタな趣味をもち、友達 も少なく暗いイメージの人。 また、その状態。 調査を実施 したのは、1994年2月 、武庫川女子大学の学生が学部・学科の 壁を越えて参加できる授業(学内では特別学期の全学教養講座 と称 している) の時間内であ り、結局、259名の回答を得 ることがで きた。3.結
果(:)一
使 う相手 まず、だれに対 して使 うかについてを見てみ よう。下の図1は、調査 した 13語の平均を示 した ものである。 図1
だれとの会話で使 うか (人) 200 181.2 86.2 73.8 67.7 53.4 39.9 26.6 150 100 母 父 親 し く な い 男 友 達 親 し t 男 友 達 親 し ヽ 女 友 達 親 し く な ヽヽ 女 友 達 会 社 同 僚 会 社 上 司 図1で、平均値を使 って示 したのは、13語のどの語 も同 じような反応パタ ンを示 したか らである。13語のなかには、全体的によく使われ る語 とあま り 使われない語の差はあ ったが、使 う相手に よる多少のパタンには差があま り なか った。つ ま り、 どの語の場合 も女友達には よく使い、父親にはあま り使 わない とい うように、反応の現れ方が似ていた。そこで、平均値に よって結 果を代表 させたのである。 図1から指摘できることを整理す ると、次の3点
になる。 ①親 しい女友達が圧倒的に多い。それに親 しい男友達がその半分 ぐらいで 追 っている。親 しくない友達 との差は歴然 としている。②母親がかなり高い数値であることが注目される。それに比べて父親はい
非常に少なくて、親しくない女友達よりも低い。
③会社の同僚は父親以上の数値であり、上司は最低である。
まず、①の規 しい友達に対す る使用が多いことは、若者 ことばが親 しい仲 間の間で使われ るものであることを示 している。逆に言えば、 こうした こと ばを使 うほど親 しい関係にあると推測す ることもできる。 そ う考えるならば、② の母親の数値が高い ことは、母親が女子大生にとっ て心理的に身近な存在で、母親 との会話が、量的に も多 くて質の点で も中身 のあるもの と推察 される。子供 と母親 とが親 しいのは当た り前 と思われ るか もしれないが、25年 `,ど 前には “断絶の時代
"が
あ り、子供 と親 とが理解 し あえない状態の家庭が多か った。そのことを思えば、時代の変化の大 きさを 感 じずにはいられない。25年前に子供の側にいた人間が、今、親の立場にい るわけで、皮肉な感 じがす る。 もっとも、父親のは うは昔 と変わ らず、いや、 音以上にひどい状態にある。娘に とって父親は、母親 とは比べ ものにならな いほ ど離れてお り、その位置は、現 しくない女友達以上に遠い存在 とい うこ とになる。 また、③は、実社会に出たあと、会社同僚に対 しては使 ってもいいが、上 司には使 うべ きではない との意識を示 しているものであろ う。同僚の場合は 仲間 として会話することを想定 し、上司とは フォーマルな会話を想定 してい るのであろ う。若者 ことばをイ ンフォーマルなことば として認識 しているこ とのあらわれだと思われ る。4.結
果(2)一
使 う理 由のパタン 次に、そ うしたことばを使 う理由を分析 しよう。理由の選択肢の4つ
につ いて、それぞれを選んだ人数を、13の調査語の うちの最小値 と最大値によっ て示 した ものが次の表1である。 た とえば「 会話のテンポが良 くなる」 とい う回答を選んだ人は、13語の う ち最 も少なか ったのが「 爆睡す る」の場合で259人中37人、最 も多か ったの が「朝一」で同 じく74人であ った。 これを表 1では「37∼ 74人」 と示 してい るのである。表
1
理由の選択肢別人数 (最小∼最大) 会話 の テ ンボが 良 くな る か っ こい い /りが い い 気 持 ちが よ く伝 わ る 37∼ 74人 0∼ 9 17^´ 49 20ヽ149 これに よると、「 会話のテンポが よくなる」 とい う要素は、 どの語に も少 なか らずあるように思われ る。それに対 して、「 か つこいい」 とい う回答は ないに等 しい し、「 ノリがいい」 もそれほど多 くない。そ して、「 気持 ちが よ く伝わる」を選んだものが、259人の うち最小20人で最大149人と、語によっ てずいぶん と差がある。13の調査語について、「 気持ちが よく伝わ る」を選 んだ人数を多い順に並べ ると次の ようになる。 爆睡す る149
け ば ヽヽ135
終わ ってる129
きし=い
114
す っ び ん109
超 ∼ 85 朝-83
ブー 太 郎72
オタッキー 63 イケイケ49
ぶ っちする40
お 茶 す る41
般教
20
そ こで「気持ちが よく伝わる」 とい う理由の反応に着 日して、理由の選択 パ タンを調べてみた。すると、2つ
の特徴的なタイプがみつか った。一つは、 「 気持ちが よく伝わる」の数値が他の理由と比べて飛び抜けて高い値を示す ものであ り、 もう一つは、それが他の理 由とあま り差がないタイプである。 代表的な語例を次に示そ う。前者が「 けばい」で図2、 後者が「ぶ っちする」 で図3で
ある。選択 された理由の少なか った「 か っこいい」を除いた3つ
の 理由の多少を示 している。 図2「けばい」の ように、「 気持ちが よく伝わる」が突出 した タイプを「 け ばい型」 と呼び、図3「
ぶ っちす る」の ように、「 気持 ちが よく伝わ る」が それほ ど多 くな く、3つ
の理 由の差が比較的小 さいタイプを「ぶ っち型」 と 呼ぶ ことにす る。(人) 150 図2 1サば い型 :35 (人) 150 100 図
3
ぶ っち型 10[│ 5036
型 ノ リ カ t ヽ 45 50 テ ン ギ が , t 気 持 ち が 伝 わ る 気 持 ち が 伝 わ る ノ リ が い い テ ン ギ が い い そ して、13の調査語は、「 けばい型」「 ぶ っち型」をもとに、次の3つ
のタ イプに分類す ることがで きた。 【けばい型】 けばヽヽ爆睡する 終わってる きしょヽヽすっびん 【ぶっち型】 ぶっちする お茶する イケイケ オタッキー 【その他】 プー太郎 超∼ 朝一 般教 「けばい型」をみると、「 けばヽ― 終わってる・きしょい」と、状態やよ うすを感覚的に強調 して表す ことばが含まれている。近年の若者は感覚的だ といわれ、感覚的に とらえることと気持ちとが結びつ くことが多い。た とえ ば、自分の うれ しさを表現す るときも、 どのように うれ しいのかを相手にわ か るよ うに分析的に説 明す るのではな く、「 メ ッチ ャうれ しい。 も うサ イ コー。」 とい うように、 自分が直感的にとらえたものでそのまま述べる。気 持 ちの表現 と感覚の表現 とは非常に近 いのである。その意味では、「 気持ち が よく伝わる」 と回答 した「 けばい型」に、 これらの感覚的な表現の語が含 まれているのは納得できることである。なお、「爆睡す る」 も、「熟睡す る」 を よ り強調す る感覚的な表現 とみることもできよう。「 ぶ っち型」の「 ぶ っちす る・お茶す る」は行為 を表 す 語 で、その点 で「 け ばい型」 と異な ると考え られ る。 しか し、「 イ ケイ ケ・ オ タ ッキ ー」 は状態、 よ うす を感覚的 に表現す る点では「 けば い型」 に近 い。 したが って、「 ぶ っ ち型」の語 に、語 の性格上 に共通 の原因を認め る ことはむずか しい。別の要 因が「 ぶ っち型」の理 由選択 パ タンを作 り出 してい ると思われ るが、それは、 現在 の ところ解 明で きていない。 「 そ の他」に分類 した うち、「 プー太郎 ・超 ∼・朝一」は、選択理 由の「 気 持 ちが よ く伝 わ る」が「 けば い型」 ほ ど突 出せず 、 とい って「 ぶ っち型 」 と い うほ どで もない、いわば両者 の中間型であ った。そ して、「 般教」 は、「 テ ンポが よくなる」だけが特に多い とい う例外のタイプであ った。す でに述べ た よ うに、「 般 教」 は本学 内では使われ な い言 い方 であ り、 そ の ことが例 外 的 な反応 を もた ら した とも考 え られ る。
5.結
果(3)一
使 いた くない ことば 若者 ことば を ど う感 じるか の質問 の中 に、「 自分 も使 いた い」「 自分は使 い た くない」につ いて回答す る欄があ った。 そ の「 使いた くない」を選択 した ものの多い語を調べ た。その結果が次の 表2で
あ る。 表2.使
いたくない語 (25%以 上)1.ぶ
っちす る2.オ
タ ッキ ー3.超
∼4.き
し ょい 5.イ ケイ ケ6.お
茶 す る 1位の「 ぶ っちす る」の場合、非調査者の4割
以上が使いた くない と考え ているが、 これはかな り多い数である。 また、6位
の「 お茶する」でも4人
に1人以上が使いた くない と答えている。いわゆる若者 ことば と呼ばれてい 107人 (41.3%) 89 (34.4) 80 (30.9) 73 (28.2) 72 (27.8) 71 (27.4)るものであるにもかか1)らず、若者のはずの女子大生の中に、それを拒否 し ている人が多い語が存在 しているのである。女子大生は若者 ことばな ら何で もよしとしているわけではないことを示 している。 次に、 これ らの語を先の「 ぶ っち型」「 けばい型」 と比べてみ よう。「 ぶ っ ち型」の語は、「 ぶ っちす る・オタ ッキー・イケイケ・お茶す る」 とすべて 入 っているのに対 して、「 けι 'い 型」は「 きしょい」だけである(残りの「超 ∼」はその他のタイプ)。「ぶ つち型」が嫌われている。気持 ちや感覚の伝達 効果が うすヽヽ「 ぶ っち型」は使いた くないことを意味す ると思われ る。それ だけ、女子大生が こと:Iを使 うときに、気持ちや感覚を伝えることを大事な 要素だ と考えているのであろ う。 ところで、使 う相手の分析で、若者 ことばが親 しい間柄でよく使われ る仲 間 うちのことばだ と述べた。そ うだ とすれば、女子大生の場合、親 しい女子 大生の間だけで使 うのが最 も「若者 ことば らしいことば」 とい うことになる はずであ る。そ うい うことばを得るために、「 親 しい女友達に対 してだけ使 う人数」が多い語を調べた。つ ま り、規 しい女友達には使 うがそれ以外には 使わない、 と答えた人数の多い語を調べたのである。その結果が次の表
3で
ある。 表3.親
しい女友達だけに使 う人数 (20%以 上) ★1.お
茶する 2.I爆睡す る ★3.ぶ
っちす る4.す
っびん ★5.イ ケイケ ★6.超
∼ ★7.き
しょい 75人 (".0%) 71 (27.4) 65 (25.1) 60 (23.2)" (22.8)
" (22.8)
57 (22.0) 「若者 ことば らしいことば」 とヽヽうか らには、女子大生たちの多 くが好ん で使 うことばだ と予想 していた。 ところが、その予想に反 して、「 使いた く ない語」で上位を占めた語が、多 く含 まれていた。表3で
★をつけた ものがそれで、表
2「
使いた くない語」の6語
の うちの5語までが含 まれていたの である。つま り、女子大生に とって、仲間 うちのおしゃべ りだけで使 う「若 者 ことば」は、使いたいことばではな く、「 使いた くないことば」 と対応 し ているのである。 この事実は どう解釈す るべきであろ うか。 可能性 としては、次のA、Bの 2つ
のケースが考えられる。A
ある種の若者 ことばを、仲間 うちだけで熱心に使 う女子大生がいる 一方で、そ うした ことばに対 して批判的で使いた くないと考える学生 がいる。B
ある種の若者 ことばに抵抗感を もっている女子大生がいて、使いた くない、あるいは、使 うべ きでないと考えている。そ して、そ うした ことばを親や親 しくない人には使わないが、仲間 うちではつい使 って しまう。 いずれのケースがあては まるのか、次のデータを例に して考えてみ よう。 使いた くない語の1位で、親 しい女友達だけに使われ る語の3位
である「 ぶ っちする」の数値を次に掲げる。 使 いた くない 使 ってもよい 使 う 親 しい女友達だけに 36 21 103 41 それ以外 15 62 だれに も使わない 71 49 計 107 152 「 ぶ っちす る」を使いた くない107人の うち、だれに も使わない と答えた 人は71人で約 “%を
占めている。それに対 して、使 って もよいとす る場合は、 152人中の49人で約32%で
ある。使いた くない と考えている人のほ うが、実 際にだれにも使わない比率が高い。それだけ しっか りした批判的な意識を も っているわけで、批判派は存在す ると思われ る。 他方、使いた くないと答えてお きなが らも実際に使 う人は36人いて、その うちの6割
近い21人が親 しい女友達だけに使 うと答えている。それに対 して、 使 って もよい とす る103人の うち、親 しい女友達だけ とい うのは約4割
の41人だけ であ る。 つ ま り、使 いた くない と答 えた人のほ うが、親 しい女友達 だ けに使 う割 合が 多いのであ る。 とヽヽうことは、使いた くない と思いなが ら使 って しま うときには、親 しい女友達に対 して使 うことが多 くなるとい うこと であろ う。 以上 の こ とか ら、上述 のA、
Bの
仮説 については、両 方の ケースが存在 す る と考 え られ る。つ ま り、使いた くない とい う意識を もつ批判派が存在す る 一方で、使いた くない と考 えなが ら親 しい仲間には使 って しま う学生 も存在 す る。 ここでは、「 ぶ っちす る」 の デ ー タだけ を示 したが、使 いた くない とす る 人数 の多か った「 お茶す る・イ ケイケ・超∼・きしょい」で も、同様 の結果 が得 られ た。6.
おわ りに 調査結果の要点をまとめると、 。女子大生が使 う若者 ことばは、主 として仲間 うちで使 うことばであ り、 イ ンフォーマルなことば として位置づけている。 ・ 気持ちを伝える効果の多少に よつて、若者 ことばの位置づけが異なる。 つ ま り、若者 ことばなら何でも同 じなのではな く、違 うタイプの ことば が存在す る。 ・ 気持 ちの伝達効果の比較的高い ものを「 けばい型」、それは ど高 くない ものを「ぶ っち型」 と名づけた。 。女子大生は、若者 ことばを使 うときに、気持ち (感覚)を
伝達す る効果 があるか どうかを大事な要素 と考えている。 したが って、「 ぶ っち型」 は支持が少ない。 ・ 支持が少ない「ぶ っち型」は、その一方で、仲間 うちの ことば としての 性格が強い側面をもっている。 。それは、使いた くないとい う批判派が存在する一方で、使いた くないと 思いながら親 しい仲間には使 って しまう学生 も存在す るためである。 となろ う。こ うした分析結果 をふ まえて言 えることは、女子大生たちは、だれ もが若 者 こ とば を喜 々と して使 って い るのでは ない ことであ る。感覚、気持 ちの通 じあえることば として、若者 ことばを仲間 うちで熱心 に使 う学生 もい る し、 あ る種の語 に対 して、使 うことに批 判的な学生 もいる。 また、 ことばに よっ ては使 って もよい と支持す る語 もあれば、拒否反応の高い語 もあ る。 その意 味 で、学 生はみ んな若者 ことばを同 じよ うに使 っていると考え るのは、大 い な る誤 りなのであ る。 参考文献 文献1 文献2 文献3 都染直也編『 甲南大学キ ャンパスことば辞典』(1992年) 小矢野哲夫編『女子大生用語の基礎知識
-1993年
版』(1993年) 米川明彦編『 す きやねん 若者語辞典―梅花女子大生の ことば』 (1993年) (さたけ・ひでお 本研究所教授)音声 か ら文字 へ
― フランスの入門期指導論
3-市 ЛI真
文 総体的方法 (Mah(e globle)は
、子 どもたちを、音声か ら文字へ とど のように導いてい くのだろ うか。 伝統的な総合的方法(Matt synth`ique)は
、文字の習得か ら始めて、 順次、語・文へ と組み上げてい く方法をとる。た とえば、de Rafforeらの方 法では、母音字・子音字 ・二重子音字の綴 りと発音、 さらにそれ らを組み合 わせた音綴の綴 りと発音の習得が、全ての学習に先行す る。つま り文字 と音 声の結びつ きは、機械的な練習の成果で しかな く、表現や理解の活動 とは縁 がない。 また、文字の習得が優先 され、音声は文字の発音の観点か ら学ばれ ることとなる。 こうした方法に対 しては、無意味な学習の積み重ねであ り、 しかも非能率 的な読みのスタイルをつ くり、いわば「読書不振の入口」に子 どもたちを立 たせ ることになるとい う批判がなされた。すなわち、総体的方法である。総 体的方法は、音声か ら出発 し、子 どもたちの探究的な活動を通 して、文字の 習得にいたる過程を とる。入門期 までの子 どもたちの言語生活の実態をふ ま え、読み方 と書 き方を同時に指導 してゆ こうとす る。本稿では、総体的方法 にたって編集 された教科書CHメいTTEPAGEに
即 して、音声・口頭表現か ら、 どのように文字・表記の学習を開始 してゆ くのかを紹介 したい。 学習課題の リス トCHrttTEPAGEで
は、各課 ごとに習得す る音素 と表記の対が明示 されて いる。〔表1〕 に示 した ように、1学
年を通 して、音素 と表記の結びつ き、 すなわち音綴を時間をかけて着実に指導 してゆ くようになっている。 これは、 入門期の子 どもたちにとって音綴の習得が重要な課題であ り、 しかもしば しば困難な課題であ ることを物語 っている。実際、準備級 (C.P.)で落第す る 者 の多 くが、音綴 の習得が充分 でない こ とに よる「読み困難児」 である とい う指摘 もあ る。 したが って、
CHANTEPAGEで
は、充分に時間をかけて、 複雑 な音素 と表記 の対応を身 につ け させ よ うと してい る。〔表:〕
TABLEAU PHONO―
GRAPH:QUE
Tab:●au deS phOn`nleS et de leurS tFanSCriptiOnS graphiqueS Liste des mots― ●:6s cor,ospondants.
Lecons Mots-clds papa en bas
IA]→
Ial `10] dodo en haut un g6teau une pomme eau101
→ [ol [』 ヽ ヽ ヽ le square il arrive R ︶ ^ 0 [RIIv] u qui a vu...?
4 Il]
l'icole
en allant ‖ ¨.ez .¨er e e+‖ 0 0 0: al etvous n'irez pas danser doG elle se promdne elle se promine la
lor6t
Blanche-Neige il s'en allait et IEl → [el 回 IE] S SS Cc+e
c+:
t+i il danse un lasso un gar9on un pouce voici attention ! IsI n ︶ au zoo la t616vision Iz〕 Biribiri au lycde :il 10 le capitaioe des hi otarnes 〔Pl 11 un bonbon b [bl 12 mon Jeu monGuf
oou 【⊂l→
〔』 `[∞l 1313 〔
d
e ie n'ai pas fini14 Itl t
t viteune bicyclette
15 【d〕 d une dame 16 lul ou le loup 17 〔k] k C ou P6trouchks son sac quand 18 191 g gu la il se junglediguise
-
une quenon 19 回 an an、 on em devant les champs content le temps 20 lml 子Il dormez-vous ? la pomme mm 21 Inl n H61ёne 22 Im】 ≠ inl n nn m la cane Jeanne le costume 23 〔●1 gn la musaraigne 24/1Л
\
〔●〕 〔E】 ●in ainl :n lm oin un ma main il 8 faim le moulinc'est
impossible de la peinture un lundi 25 IV〕 V W je me lCve un wagon 26 r] f ff ph trois frdres des effortsun
ilephant
27 I倒 on om un h6rissonil tombe 28 【wAl
〔W」 [wEl {oulwa) 0: ou: oin une no[x ou[ loin 29 ISI ch un chat 30 〔3〕 ,9+0
0+i
je do.s rouge en rouqissant 31 U〕 i‖ il : y une grenouille le soleil premier un voyage 32 lЧil u: la nuit 33 〔ks] 〔21 19z】 X X X Astdrix sixidme lls exagerent ! │ │学習活動 の種類
音綴 の指導 にあた って構想 され てい る学習活動 は、以下 の12項 目であ る。
(Ct″:4Ⅳ
rEP4GE Gυ
夏)E PEID14GOCrOυE Iこよる)a)例
文 と変化 : いわゆ る総体的受容が 目標 となる。文 の中の語 を音節や文字 に分解せず に丸 ごと聞 き、読み、理解す る。b)音
素 の位置 測定 と表記 の識 別 : 学 習すべ き音 素 が語 の中の どこにあ るのか を聞 き分け、 また、 聞 き分け た音素が どの よ うに表記 されているのかを語 の中か ら識別す る。c)正
書法 の適 用 : 学習す る音綴 の比較 や文 法的規則 に基づ く形 態変化 の整 理、語 彙表 の作 成 な どを とお して、正書 法 の意識 を育 て る。d)書
き方 : 習字 帳 を利用 しなが ら、習得 の容 易な大文字 で、文 ・語句単位 で筆記 の 練習 を行 う。e)新
出語 の探 究 : 比較 ・仕分け ・類化 とい った分析の観点か ら、既知 の単語 を手掛か りに 新 出語 の読 み を探す。f)置
換 : 既知 の語 を もとに、複数 の音綴 を置 き換 えた り、1文
字 を置 き換 えた り しなが、新 しい語 をつ く り、語彙的 な拡張を図 る。g)対
話形式 の読 み : 役割 を決 めて読 み 合 うことで、別 の役 に興 味 を持 ち、積極的 に読む こ と に関わ るよ うに させ る。h)黙
読 : 読 み方 の指導 は、 内容 の理解 な しには行 えない。 したが って、音読 よ り も内容把握 に有利 であ る黙読 の指導 が必 要 とされ る。i)息
の まとま り: 内容理解 に関 わ る読 み方 は、息 のひ とま とま りを単位 とす る読 み方 であり、早 い時期か らそ うした読み の練 習が必要 とされ る。
j)イ
ン トネーシ ョン: イ ン ト不 ― シ ョンの違 いに注意 して読 む。 これは また、子 どもたちが朗 読す るのに役立 つ。k)学
校 内郵便 : 子 ど もた ちに とって手紙 を もらった り書 いた りす る ことは、読み方 や文 字 の筆 記 につ よい興 味 を抱 かせ、格好 の動機 付 とな る。1)読
みの アルバ ム: 子 どもた ちの 口頭表 現 を書 きとめ てゆ き、 それ を読 んだ り、挿絵 を描 き こんだ り、あるいは書 き写 した りで きる ようにす る。 以上 の よ うに、音綴 の学習 に しては ボ リュー ムのあ る学習活動 が用意 され てい るのだが、 これ らすべてが各課で行われ るわけではない。学習課題 であ る音綴 の性格や学習の時期に よって、い くつかの活動が選択 され、一つの課 での学習活動が構成 され る。 これ らの活動は、1)総
体的方法 に よる読み の規 則の発見、2)書
き方 の 練習、3)読
み の規則 の応用、4)黙
読法、音読 法 の練習、5)読
み の態度 ・興味 の育成 と学習材作 り、に分け ることがで きるよ う。すなわち、1)総
体的方法 に よる読 み の規則 の発 見a)例
文 と変化b)音
素 の位 置測定 と表 記 の識 別c)正
書法 の適 用2)書
き方の練 習d)書
き方3)読
み の規則 の応用c)新
出語 の探究f)置
換4)黙
読法、音読 法 の練 習g)対
話形式 の読みh)黙
読i)息
の まとま りj)イ
ン トネ ーシ ョン5)読
み の態度・興味の育成 と学習材作 りk)学
校 内郵便1)読
み の アルバ ム とな るであろ う。 この うち、総体的方法 の特色 を よく表 している 具体的 に示 す。1)と
3)の
系列 の活動 をa)例
文 と変化 ここでは、学習する音綴 を含む語を、総体的に把握する。 歌やお話、あるいは子 どもたちの口頭表現の中か らと りあげた例文、すな わち音声の上では熟知 していて意味内容 もよく分か っている生 き生 きとした 表現か ら出発 し、それを表記 した文字の まとま り全体を読む。 この段階では、 文字や音綴 と発音を対応 させ ることはない。 さらに、大 きなカー ドに単語を 書いた ものを用意 し、 これ らを並び変えた り、置 き換えた りして、総体的に 習得 した文の最初の探究を行 う。 た とえば、Jacqueline la maitresse ulle rose a apportd
とい うカー ドを用意す る。ば らば らに並べ られた カー ドを例文通 りに並べる ところか ら始める。 (Jacquelme a app■ ё une rose a la maiけesse.)
次に、主語のカー ドを変えた り、相手のカー ドを変えた りした文を作 る。 この とき、文を作 る子 どもたちは、それを発音せず、並べおえてか ら他の子 どもたちに読 ませ る。 この場合では、
3項
目のカー ドが何枚 もあれば、幾つ もの文が作れ、そのなかに習得すべ き音綴が含 まれているようにすれば よい。 音素[a]に
対 して表記o,a.6を
習得 させたいのであれば、次のようなカー ドを用意 して並べ変え、置 き換えをさせてみ る。Jacqueline 主語を変 える Natacha Anne
papa
a apport€ une rose
LDXE.L4
lme bague des abricots un koala la ma■resse 相 手 を変 え る Natacha Anne papala maitresse des geteaux Jacqueline
この よ うな置 き換 えで、
[a]の
語 順 、語 中、 語 尾 で の 出現 と、3種
の表 記 が子 どもたちに提 示 された ことにな る。b)音
素の位置測定 と表記の識別 ここでは、ひ とまとまりの単語の音列の中か ら、学習す る音素を聞 き分 け、その位置を確かめ る。 また、その音素の位置 と文字列中の表記 とを対 応 させ る。いわば、表記単位を切 り取 る耳の訓練である。 最初は識別 しやすい語頭 と語尾の指摘か ら始める。 このとき、その音が 単語の最初に聞 こえたならば、鉛筆を机の左に置 き、最後ならば右に置 く と決めてお く。た とえば、[m]の
学習で、くmare■e〉 ならば鉛筆が左に、 くpomme〉
な らば右に置ければ よい。次に、線を引 き、音節の数 に合わ せて区切 る。何番 目の音節で聞 こえたか、鉛筆を置いて指摘 させるのであ る。 ここか らすすんで、音節の位置 と表記を対応 させる。19課では、[i]
が課題 とな っている。 この音綴には 〈an〉 〈am〉 〈en〉 〈em〉 がある。 こ れ ら四つの音綴に導 くのに、つぎの ような手順を踏む。 語 音 分 素 分 綴 単 発 線 音 線 音 (deValt) [dova] ――――●― [a] ――――●― an (leS Champ) [le И] ―――-0-― [a] ―――-0-― an (COntent) [kCta] ―――-0-― [a] ―――-0-― en (le temp) [10薇] ―― ― [5] ― ― ― ern
c)正
書法 の適用 この段階では、既習の音綴 を もとに、その分析を とお して、耳で聞いた 音 を正 しく表記 す る方法 を学ぶ。分析の観点は、音 との対応、文法的性質 に もとづ く形態 の分類、語彙 の うえか らの比較 であ る。 音素 と表記 の対応 は対照表 に整理 す る。該当す る表記が教材 となるにつ れ 、表 は充実 してゆ く。 この表 を作 りなが ら、一つの音素が複数 の表記 に 対応す ること、そ して、一 つの表 記が複数 の音素 に対 応す る こ とを、子 ど もた ちに気 づかせ る ことが重 要 で ある。 そ して、「 そ の音 を表す には どの 文字を使 った らよいのか」 と子 どもたちが思 うよ うになれば、それが「 正 書法学 習の入 口」になるのである。 〔表2〕 〇0
Mots-cl€s 〔0]m
枷
e
n
¨
dev'aIlt les champs contetrt le temps 音 素、表記、 教材文 中 の キ ー ワー ドを整理 した表 まず単語の発音 を聞かせ、習得す る音素が どこで聞 こえたか、子 どもたち に線分の上で指摘 させ る。その印の下に、先生が発音記号を書 き、 また新 たに線分を引 く。その上 の、音素の位置 に該当す る ところに印をつけて、 そ の下に、ただ しい表記を書 くのであ る。 文字 の習得が、一方で音列か ら該当す る表記単位を切 り取 る手助けにな る よ うな文字、仮名文字を習得す る場合 とはちがい、非常 に丁寧な指導 と いえる。 これは、 フランス語の場合、文字の習得が、音綴 の表記の習得 と その まま一致 しないか らである。次に、その聞 き分け、取 り出 した音を何 らか の印で表す こと、すなわち音綴 とい うことを体験す る。その うえで、 記 号 (文字)を
用 いた音綴 の表記を学ぶのであ る。〔表3〕 Verbes lls regardent IIs s'amusent Vous chantez (F6minin) Elle est contente Ell est haute.
(Singulier) un champ un garQon (Pluriel) des champs deux garqons 第3の観点は、語彙である。品詞を変えた り、主語を変えることで、あ る語が形態を変化 させ る。それ らの語を並べてみることで、発音 されない 文字があることや、共通す る形態をもつ語が、同 じ性質の変化をす ると、 同様の形態になることなどに気づかせることができるだろ う。次の例のイ タ リックの語では、いずれに も黙字、すなわち単独で読む場合には発音 し ない語尾 の子音字があ り (t,x)、 これ らは、音声か らの観点では気づ き
に くい。
[o]の
表記は 〈hau〉 で よいのか、くhaut〉 でなければな らない のか、[si]は 〈si〉 〈s 〉の どちらなのか。女性形には、つ ま り、第2の 観点で学んだ ことを応用すれば、男性形に くe〉 を付加 した場合の発音に は [0■]と
[t]が付け加わ る。[k■a]も
女性形になれば [k工at]で
あ る。名詞や動詞 の場合でも、男性形 の発音に [t]が付加 される。 こうし (Masculin) ll est content. ll est haut. 既 習 の語 が充分多 くな って きた ら、文 法的 な性格を もとに、それ らの語 を関係付け、違 いを比較 し、観察す るそ うに導 いてゆ く。 まず最初 は、動 詞 を と りあげ る。学習 した語 の中か ら、動詞 を主語 とともに書 き抜 いて表 に し、人称の変化が動詞の語尾に共通の変化を示す こと (■s:‐e虻,Vous: ―ez)を
観 察す る。次 に、名詞 と形容詞 について、性に よる形態 の違 いが、 二 番 目に数 に よる形態 の違 いが よ くわか る ように、表 をつ くる。 この とき、 主語 の違 い と語尾の違 い (■:cOntent haut,Elle:contente haute)の 関連 付けや 、冠詞 を手掛 か りに して、語尾 の違 ヽヽ
(un:champ gar,on,des
(detx):champs國
`ms)を
整理す る ことを体験 す る。 こ うして、話 し言 葉 のなか で獲得 され ていた文法 を利用 しつつ、正書法の規則に接近す るの である。 Noms―Ad]ectiヽた発音 の比較か ら、男性形 の末尾には、発音は され ないが表記 と しては 〈t〉 が必要 である ことが導かれ る。〈SⅨ 〉〈DetⅨ 〉 も同様 であ る。 これ
らの黙 字つ いての理解 は、たん にそ う書かねば な らない とい うこ とでな く、 た とえば 〈de haut en bas〉 を、 自然 に リエ ゾンさせ て [d∞taba]と読 め るよ うな、音読 の基本的な方法にもかかわ るのであ る。
語彙 の リス ト Il est ttκ′.Elle est haute.La hautetr.
Cο″′θ″′.Contente.Contenter.Le contentement. S″.Si ёme. 2)lθ″″.1)ellxiёme. 以上の よ うに、音声の側面か ら、文法 の側面か ら、語彙 の側面か ら、既 知 の語 とその表記を比較 ・対照 し、音綴 の分析 を し、そ こか ら表記 の規則 を発見的に獲得 してゆ く。所与 の規則を覚え こむのではな く、言語 の科学 的 な探 究 の過 程 なの であ る。 そ の指導 は、「 子 ど もた ちを経 験 的 に導 くこ と」に主眼がおかれ、観察、関係付け、規則化な どが、学習活動 を ささえ る基 本操作 とな っているのであ る。 こ うした指導は さらに上級学年 に も継 続 され、 た とえば動詞 の表 は中学 年 で完成 させ る よ うにな ってい る。
e)新
出語の探究 とf)置
換c)新
出語の探究は、微妙な段階である。総体的方法の有効性が、a) ∼c)ほ
どには、説得的ではない ようである。 ここでの 目標は、既知の単 語をもとに新出語を読む ことである。た とえば 〈VO 〉〈oiseau〉 〈nolr〉〈eau〉 (pomt〉 〈beaut6〉 な どを参照 して くpOreau〉 が読めれば よいので ある。 ところが、 この際に有効な学習活動が どのように組織 され るのかに ついては、「 子 どもたちを自由に探索 させ、あ ま りに も早 くか ら文字 の解 読作業に閉 じ込めてはな らない」 とヽヽうだけである。仮に、くposireau〉 を 〈p〉 〈Oi〉 〈r〉 〈eau〉 に分割 し、それ らの音綴の学習か ら出発 して、構 成的に くpOireau〉を発音す る
([p]+[Wa]+[r]+[0])こ
とも可能である。 これが解読(d`Cttiage)で
あ り、解読 では新出語が読めない とい うことはない。つま り、ある語の発音 とい う点では、総体的な学習が方法的に 優れているとはいいきれない。
Foucanbenは
、「現在 の ところ、子 どもた ちに、 どのように読み方を教えるべ きか分か らない。・・・子 どもたち一 人一人の活動を展開 させるような、教師の援助の仕方は、見つか っていな い」(R″陸κЙ餐 ″′″′燃 sz7′'"sal″"″
″′″ ″ ″″″″)と
率直に述べ ている。 しか し、Freinetが、実際に子 どもたちの読み方を教 えた経験を踏 まえ て、「 読み方の指導 に深 く関わ るようにな り・・・経験に基づ く手探 り状 態のなかで総体的方法あるいは分析的方法を用いてみた」(L夕″″″:γ滋 ′滋)と
述べているのはなぜだろ うか。「 かつての教師の最大の関心事は、 子 どもたちが きちんと読むかわ りに、でた らめをい うのをどうや って防 ぐ かであった」 とChan leuxは 書いている (I″ ル磁 ″ ′′'′ω″)。 この事情は現在でもかわ らないが、そ うしたでた らめな読み方が、文字の解読に固 執することによって起 こることは言 うまで もない。ひたす ら、解読にこだ わるあま りに、文の読みとして、つ ま り、意味の統一体 として読む とい う ことがないが しろになったのである。黙読法・音読法の練習において も、 つねに文が念頭におかれているのは、この点の反省にたつ ものだろ う。 「 重要なのは、読む とい うことが、理解するとヽヽうことに他ならない と い う事実なのであ る」。文字や音綴 にだけ引 きつけ られ ることな く読 んで ゆ くには、た とえば文脈な ども有効に働かせ ることが求め られ る。Fou― canbertは、「 理解 し予測す ること、次にこんな語が来そ うだ とうい う直観 は、読み方の決定的要因である。・・・ 〈le〉 の後に何を予想す るだろ う。
〈triStelnent〉 では なヽヽし、〈Viennet〉 で もなヽヽし、〈Ce〉 で も 〈inai―
Son〉 でもない」 と、文脈や既知の語の文法的性格な どを手掛か りとして、 総体的な読みが成立す ることを指摘 している。そ して、LObrotは 、は っ きりと「 総体的方法は、文字の解読は結局解読に しかす ぎず、子 どもたち の読みは総体的な活動にかかわ るものであることを、いっそ う強調 しなけ ればならない」に,″
)と
いう。文という総体的なまとまりを相手 として、 読むことは展開されるべきである。 したがって、たとえば、くLa petiteme demande un bonbon a m imamm〉 の くdemmde〉 の読み方が分か ら ない として も、 文の内容 は分か るであ ろ うし、そ の文 脈か ら、 また、既知 の 〈Papa de Nttadla〉 〈devant〉 や
Omman〉
か ら くdemande〉 の読み は導かれ る。 結 局、そ の段階 は、既 に よ く分か ってい る音 声上 の要素 と表記上 の要素 を、 自らが発見 した操作に よって構成 され るのだろ う。 この とき先生 の役 割 は、 こど もた ちが比較 ・対照 し、分類 し、整理 で きる よ うに手助 けす る こ とである。 あ くまで も子 どもたちが、 自力で新 しい語の読み方を発見 し なければ な らないのであ る。f)置
換 は、 この ときの学習 の成果 を よ り確か な もの と し、 さらに拡張 す るためにお こなわれ る練習活動 であ る。 A sa sa m 勢 sa lade に li lon bot B m p n b n n n n al . a . al . alAの
ように複数の文字を置 き換えることや、Bの
ように1文字だけ置 き換え るなど、 クラス全体で、 さらに子 どもたち一人一人で、練習す る。既知の語 か らは じめて、話 し言葉の うえだけで知 っていた語の表記をつ くってゆ くの である。 以 上 が 、CHANTEPAGEに
お け る音 綴 指 導 の要 点 で あ る。CHAN‐
TEPAGEで
は、総体的方法 に立 ち、音綴 の規則 の習得 と自ら読教方 を発見 してゆ く力を養 うこ とに 目的 があ る といえ よ う。 そのため、子 どもたちの活 動 を主 に し、 その活動 を とお して身につけ る学習 内容 に一貫性 を もたせ るた め、 フランス語 についての科学的 な探究活動 を基盤にすえている。そ して、 発見的 な活動 と構造 的 な練 習 とを両輸 に して着実 に読 む力を養お うと してい る。 もっとも、方法的にはい まだ克服 されねばな らない課題が残 ってい る。総体的習 得か ら分析 へいた る過程 の精密 さ堅実 さに くらべ、 これを もとと し て新たなテキス トを読んでゆ く過程はい ささか 見劣 りがす る。総体的方法が、 音綴 の指 導 だけでな く読 み方 の構 えをつ くろ うと してい る以上、 この点 につ いて どの ような方法が構想 されてい るか、気にな るところであ る。 これにつ いての考察は次の機会の課題 としたい。
武庫川女子大学言語文化研究所年報 第 6号 (1994)
「 外来語」 についての覚え書 き
田 上稔
1.問
題のあ りか 昨年度の当武庫川女子大学言語文化研究所『言語文化研究所年報』第5号 において、「 国語政策の変遷」 と題す る小報告を行 った。1955(昭
和30)年
代頃まで、国語の統一規格化に、社会全体をあげてひた 走 っていた 日本が、それ とは逆の非規格化、国語の多様化へ と大 きな方向転 換をおこなった、その軌跡を、主 として、国の文字施策を中心に、追跡を試 みてみた。「 当用漢字表」か ら「 常用漢字表」へ と辿 られた、その追跡は、 その作業の前提 として持たれていた仮説を、私に、 よ り強 く妥当づけ るかの ごときものです らあった。規格化か ら非規格化へ と、当時の 日本の社会のい わば雰囲気のようなものの変化の顕在化 として、方言の復権や漢字の復権が、 現象 したのではないだろ うか、 と。 そこで今回は、その1955(昭和30)年
代に、国語に生 した大 きな変化の一 つである「 外来語」の現象を扱 ってみ ようと企ててみた。 もっとも、 この間 題は、既に古 くか ら先学諸氏によって論 じられ、分析が施 されてきた分野で ある。既に詳細で級密な分析結果が、幾多、構築 されている。それ らには、 更に掘 り下げねばならぬ点を、いまだ、残 しているだろ うけれ ど、 と りあえ ず、今回、私の関心は、私の身の回 りの現在の現象へ と向か った。一つには、 アルファベ ット文字の多用。一つには、ひらがなの復権。 ただ し、今回のこの報告は、残念なが ら、暫定的な覚え書きでしかない。 非力なが らも集めたデータのほ とん どが、1月
17日の地震によ り、失われて しまった (注HDDの
データはHDD自
体の圧壊 に よ り、そのバ ックア ップ のMOの
データはMOデ
ィスクの破損に よ り、それぞれ失われた。 自宅の も、 研究室のも、である。 データの保管について、改めて考えさせ られた震災で あ った。)。 辛 うじて残 された僅かなデータをもとに、報告 しようとしていた2_ア
ル フ ァベ ッ ト文字 の多用 について 「 外来語」 の多用 につ いての議論 が盛 んで あ る。 けれ ど、「 外来 語」 とは、 言 うまで もな く、 日本語 の ことであ り、未 だ 日本語 内部 の問題 と してあ るに す ぎなか った。表記 に用 い られ てい る文字 も、 カタカナ とい う日本語 固有 の 文字 であ り、その音 も、開音節化等、 日本語化処理 を経 た もので あ った。 ところが、現在 の私たちの言語環境には、所謂 アル フ ァベ ッ ト文字が溢れ てい る。外国語 を、外来語 として、た とえ意味の切 り捨て とヽヽう不完全な ま まにせ よ、 とにか く、 日本語の中に、いわば消化吸収 して取 り込むに とどま らず、外 国語 を、 外 国語 の文字 の まま、私 た ちは用 いだ した のであ る。否 、 日本語を外国語文字 よって表記す ることす ら、 もはや、珍 しくない。 既 に、 た とえば、1985(昭
和60)年
9月号 の雑誌『 言語』は、「 ヨコ文字 語 総 点検」 とい う特集 を組 み、 この現 象を報 告 して い る。 その中の「 横文 字 がみ んな の もの にな った」 と題す る文章 で、石野博 史 氏 は、「 横 文字 は、 少 な くとも文字 と しての機能 に関す る限 り、す でに完 全に 日本語 の ものにな った」 とい う前提 の もとに、以下 の3つ
の現象を、 日本語 におけ るアルフ ァ ベ ッ ト使用の場 として、分類 し、報告 してい る。1
めだたせ る ポス ター等で、見 る者、読む者の注 目を引 きつけ る効果 を狙 った もの。 いわゆ る「 アイキ ャッチ ャー」 としての役割。2
か ざる 装 飾的 な文字使用。3
ちぢめ る 或 る連 語 の頭文字 を拾 い出 して短 く省略的 に表現す る もの。頭字 語 (acronym)。 この うち、1の
用法については、同誌同号の中で、野末敏明氏「 広告 と横文 字語」に、3の用法については、広永周二郎氏「世界をつな ぐローマ字語」「外来語」についての覚え書 き に、更に詳 しく論 じられている。更に、石綿敏雄氏「情報化社会の突出部」 は、上記
3つ
以外の用法 として、「 かなの略表記 として」等を、報告 してい る。 これ ら諸論、或いは同誌同号以外の様 々な諸報告に もあるとお り、所謂 ア ルフ ァベ ッ ト文字 とい う外国語文字は、 日本語環境の中で、 もはや、あたか も日本語の文字 として用いられている。 これは、明らかに、 日本語が新たに 獲得 した文字環境の多様性であろ う。 日本語がアルファベ ット文字によって獲得 した、新 しい環境 として、本報 告では、 さらに、次の ような事例を報告 し、提案 しておきたい。 た とえば、家電製品の電源 スイ ッチの操作方法表記には、「 電源 入・切」 のよ うに漢字表記を用いた ものの他、「 スイ ッチ オ ン・オフ」の よ うに外来語 カタカナ表記を用いた もの、「
POWER ON・
OFF」 の ように外国語 アルファペ ット文字表記を用いた もの、 とい う
3つ
の タイプが、典型 として、立 て られ る。 この うち、2つ
目の外来語 カタカナ表記を選択 した意図には、当 然、 カタカナ言葉の使用の動機 として石綿敏雄氏が挙げた「 新 しい感 じの表 現」「 高級なイメージ」(『日本語のなかの外国語』1985、 柴田武編『 現代 日 本語』1976)を
目標 とした ものがあるだろ う。「 外来語が実際に高級な もの を指す機会が多 く、そのために外来語 自身が高級なイメージを もつ傾向があ った」(前掲『 日本語のなかの外国語』)た
め、商品の高級感の演出のために、 意図的に、外来語 カタカナ表記が選択 されていることは、否めない事実だろう。そ して、その延長線上に、「
POWER ON・
OFF」 の ような、外国語をアルファベ ット文字で表記 したものが位置づけられてよいのだろ う。 外国語のアルファベ ット表記には、けれ ど、そ ういった、高級感の演出以 外に、もう一つ、別の側面を指摘 しておけるのではないだろ うか。すなわち、 「 意味」の積極的な切 り捨てである。 先の家電製品の電源スイ ッチに戻 るならば、スイ ッチの操作方法の説明表 記には、当然、「意味」が伴わなければ、 まずは、困る。 どの ような操作が、 どの ような結果を もたらすのか、その説明が、具体的な「 意味」を伴 って、 使用者に伝わ らなければ、電源の入切操作方法の説明 とい う実用には、耐え
る人間の多様である製品の場合、その説明表記の目的逹成のためには、抽象 的であ っては説明の用を果たさず、具体的「意味」を伴 うことが、まずは、 必要 となるだろ う。 けれ ど、その操作を、一旦、習得 した後は、 どうだろ う。初めての場合に は必要であった、「 意味」を伴 う説明が、逆に、煩わ しく感 じられて くる。「 記 号」に関す る研究に よる様 々な知見に したがえば、人間は、文化の中で、「 意 味」無 しには生 きられない と同時に、「 意味」の過剰 に も耐え られない存在 であ るらしい。 日常用いる家電製品の、手慣れた操作に、いちいち、既知の ものである「意味」を伴 う説明を受け取 ることを余儀な くされるのは、心地 よい ものでなかろ う。操作方法が何 らかの理 由でわか らな くなった場合には、 再び、説明を受け取れな くては困るが、それ までは、 自己主張せずに控え目 に背景化 していて くれればあ りがたい。そ うい う目的に、表意文字 よりも表 音文字は合致 している し、 カタカナよ りも更にアルファベ ッ ト文字のほ うが 適任であるのではなかろ うか。「 意味」の積極的な切 り捨て・背景化 とい う、 この機能は、石綿敏雄氏の「婉曲な表現」(前掲『 日本語のなかの外国語』) として既にカタカナ言葉の段階で発揮 されているものの更なる延長なのだろ う。 さらに、 もう一つの側面を指摘 してお きたい。 日本語環境におけ る、た と えば「
OPEN」
とい う表記は、「0」「P」「E」「N」4つ
の文字か ら成 る「言 語」であるよ りは、む しろ、「OPEN」
とい う形の所与の直感的視認に便利 な「記号」 としてある、 と考 えられる。 日本語 としての「OPEN」
は、それ 自体が既に一つの記号なのだ。 戸村幸一氏の指摘 (雑誌『 言語生活』1984年 (昭和59)年
7月号「 外来語 を積極的に使 うことについての是非について」)に
あるとお り、漢字を用い た表記が、開場、開城、開店、開間、開封、等 々、様 々な「 開」を区別可能 であ り、従 って、その区別の可能性に、我 々は否応な く応接 し判断 しなけれ ばな らないのに対 して、 日本語におけ る「 オープン」「OPEN」
は、そ うい った区別を最初か ら中和 し、棚上げに した ものである。その区別の可能性を、「 外来語」 につ いて の覚 え書 き 我 々は最 初か ら回避す る ことが可能 であ る。分節化 され細 分化 され た意味 の、 そ の一つ一つ の深み の よ うな ものや、分節化 され た意味 の緻密 な構 成 に よっ て新たな意味を紡 ぎ出す ような ことには、最初か ら関心を示 そ うとしない存 在 なのだ。意 味 の世界 を捨象 した外来語 は、それが カタカナ表 記 であ って も アル フ ァベ ッ ト表記であ って も、 きわめて直感的なのだ といえ よ うか。 そ して、 街 に溢 れ る ア ル フ ァヘ ッ ト表 記 は 、IN、
OUT、
ON、 OFF、TO、 FOR、 UP、
DOWN、
OPEN、 CLOSE、DE等
、構 成音節 数 (拍数)の少ない外来語 を、文字 自体の形 の更なる単純 さを利用 してアル フ ァベ ッ ト 表記 を与 え、 カタカナに よる表記 よ りも、更 に直感的に視覚的認識 を容易 に した もの と考 え られ る。た とえば、道路沿いの店舗や駐車場等への車両の導 入案内に好 んで用い られ てい る、それ らは、したが って、文字である よ りは、 む しろ、記号 と呼ばれ るべ きであ ろ う。 アル フ ァベ ッ ト文字 の、 日本 への帰 化 の在 り方 の一 つ と しての、 こ うした視覚的記 号化 は、既 に カタカナ言葉 に おいて指摘 されてい る「 装飾的用法」に連続す るもの として、位置づけ られ るだろ う。
3.ひ
らがなの復権について カタカナ言葉 の「 氾濫」、アルファベ ット文字の進入 といった現象 と、一 見、相反するかのごとき現象 として、ひらがなの復権を指摘 しておきたい。 近年の特徴的な現象 として、従来な らカタカナで表記 していたものでも、 ひ らがなで表記 された ものを見かけることが多 くなった。今 とな っては記憶 を辿 り恣意的に しか資料を提出できないけれ ど、た とえば、「 ふ ぁみ リー」 「 あ―ばんふ ぁ―む」「 こんふ ぇくしょな リー」「 こみ ゅにけ― しょん」「 う ぉっちん ぐ」「 きゃっち」などを、街角の広告媒体に見かけることができた。 既に、様 々な指摘のあるように、「新鮮な印象」や「 高級感の演出」な ど が、 カタカナで表記す ることの意義 として、今でも、重 きをな している。語 の論理的な意味内容の新 しさ故に翻訳困難で、カタカナ言葉の形で借用せ ざ るを得ないもの とは違 って、 カタカナで表記 され る外来語、或いはカタカナ とい う文字表記それ 自体に、価値がある。その意味で、カタカナは、まさに、は、それ故に、安定的ではあ り得ない。語の論理的な意味 内容にではな く、 何 とな く有 り難そ うな雰囲気・ムー ドに根拠 を もつな らば、実体のない呪文 であ ることが暴かれ るのは、そ う難 しい ことではない。「 新 しそ うだ」 とい う「 感覚」は、す ぐに感覚閾値に達 しやす く、次 々に、「 よ り新 しいそ うな もの」が提供 され続け られねばな らない。けれ ど、常 に、本 当に、 よ り新 し い ものが提供 され るとは限 らないな らば、やがて、その呪文 の効力が失われ るの も、当然 であろ う。 カタカナが、そ うして陳腐化 した とき、新 たな呪文 として、ひ らがなが登 場す る。「 洋風 」 カタ カナ言葉 を「 和風」ひ らがな文字 で表記す る ことの逆 説 的 な斬新 さに よって、古 くな って効力を失 いかけた呪文が蘇生 しよ うとす る動 きで、それは、あるだろ う。直線を基調 とした カタカナの雰囲気 よ りも、 曲線 を基調 としたひ らがなの雰囲気を、時代が好 んだ とい う事情 も、あるの か もしれない。 そ の、時代の好み とい うことで、関連す るか もしれない現象を、最後に書 き留 め てお きたい。 従来、商 品の名前 には、外来語 カタカナ表記 の ものが好 んで用い られてい た。 日本に古 くか らあ り、 したが って漢字 ・ひ らがな名のあ るものについて も、無理矢理 、外来語 カタカナ表記を与 えて しまった り、 カタカナ表記名を 新 し く作 り出 して しま うことす ら珍 しくなか った。 ところが、現在、私 たち の身の回 りには、た とえば、次の よ うな現象が観察 され る。 ビールの商品名 一番 しば り、吟醸、吟仕込、秋味、春咲 き生、 冬物語 り、はろにが、冴、倍煎、自夜物語、関西風味 テ レビの商品名 画王、帝王、横綱、革命児、社会の窓、ゆ とりに とろん、新世 ビデオの商品名
「外来語」についての覚ぇ書 き サ ッ飛び くらのすけ、美画面、れんたろ う、 ごくらくビデオ、 時短 ビデオ、大広望、 ア レンピー 電話機 の商品 名 光 ルス、 デル フ、 デデ ンノデ ン、黒 デ ン、 と りつ ぎい らず、 ふ やせばわか る た とえ表記が カタカナを用いていて も、その実が和風であるもの も含めて、 商品名 の外来語離 れは、 もはや、例外扱 いで処理 可能 なマスを越 えている。 ただ し、 こ うした「 和風化」は、その範囲に、一定の限度があるよ うで、た とえば、 人 間 の身 体 に対 して直接 用 い る薬剤 の商 品 名 キ ャヘ ジ ン、 ル ル、 エ ス タ ック、´ヽンザ エ ース、 ア ネ トン、 パ プ ロン、バ フ ァ リン 人間の身体に対 して直接用いない薬剤の商品名 タンスに ゴン、 ゴキプ リコロリ、 ゴキカプ リ、 ごきぶ りだんご ゴキプ リホイホイ、水 とりぞ うさん、吸 うばあまん、ムシューダ、 プルー レッ トお くだけ、 の よ うに、 明 らかな差異があ る。酒類 に して も、先 に、 ビールの商品名を挙 げ ておいたが、 これ が ウ ィスキ ー とか フ ランデ ーにな る と、 まった く様相が 異 な り、和風 名を与 え られ た商 品は きわめ て例外的 で しか ない。同様 に、フー プ ロ機 には和風名の ものがあ るのに対 して、 パ ソコン機 には、少な くとも本 体商品 では、和風 名 の ものは、 ない。 所謂 バ カチ ョンの簡単 カ メラや使 い捨 ての カメ ラには和風名が溢れてい るが、
1眼
レフの所謂高級 カメラには、や は り、ない。 また、4輪自動 車 の よ うに、全 く和 風名 の見あた らない もの も あ る。か つ て「ASUKA」
(飛鳥)と
い う車が発売 され ていたのを記憶 してい るが、少な くとも、現在は、ない。 逆 に、かつ ては和風名 が使われ てお りなが ら、現在 は カタカナ名ばか りに「 峰」 な ど とい う命名 の もの もあ った筈 なの に、 現在 は、私 の知 る限 り、
TVの
CMを
流 した り、一般 の 自動販売機 に並んでいる もの と しては、皆無 である。 カタカナ言葉が、「 高級感 」や「 新鮮 味」 を演 出 し、非 日常 の世 界 へ の解 放 ・飛翔 の記 号 である側面を もつ とすれば、以上 の よ うな商品名現象は、一 つ の説明を付け ることが可能 となるのではなかろ うか。現実の世界 での、そ の商品の具体的「 実効」を訴 えることが期待通 りの結果を もた らす と想定 さ れ る商品 と、仮想的世界で、イメージに訴え ることが効果的な商品、或 いは、 現実 を避 け現実 を意図的に朧化 し仮想的世界で しか主張で きない商品 と。 ま た、 さらには、時代 ・社会の好みの反映 とい った ことも、関与 しているのか も しれ ない。武庫川女子大学言語文化研究所年報 第 6号 (1994)
Elegant Englishへ
の序曲
平 岡 照 明 1066年 のNormm Conquestに
よって イギ リス人は首に「 輌」 をかけ られ、 以後 ′ルマ ンデ ィを基盤 とす る北 フランス文化圏に包含 され る事になつた。 そ の結果ME全
史 を通 じて `SuperStratum'と して フ ラ ンス語 (ラ テ ン語) の絶対優位 さは不動 の もの となつた とい うのが通説であ るが、究索 してみ る とその枯凋は意外に早 い時機 に始 まった と推断 され る。 1204年 イ ングラン ドの貴族は フランス・ ノルマ ンデ ィの世襲的所領地 を失 うとい う事件 が起 こ った。 この事 件 を契機 に脱 北 フランス文 化 とい う意識 が ア ング ロ=サ
クソン人 の胸底に至微 なが ら彫済 として生 まれ たR
12世 紀末Jocelin of Brakelmdはα屁磁 ο′珍を著わ し、至知 ・諄深 の士Sam‐
sOn(Abbot of Bu,St.Edmunds)に
ついてHe knew how to read literature in English most elegaatly, and he used to preach in English to the people,
but
in tlte speech ofNor-folk
where he was born and bred.と祖述 している
Qこ
の記述は英語発展の過程を考慮す る上 で極めて重要I
dowrite in my nahrall
English toungue, bycause thoughI
make thelearned
my judges, which understand Latin,yet
I
meane goodto
the un-leamed, which understand but Eaglish, and he that understandsLatir
verywell,
cal
understald Englishfarre
better, iJ hewill
confessethe truetl,
though he thinks he have the habite aJld can I-atin
it
exceeding well.-
るのは英語史上は17世 紀の熱烈な砕辞 を待たねばな らないが、 さ りとて愚浅 の花言 として無視す る事は出来ない。Smitll(4)によれば12世 紀には貴族の家 庭生 活 にお いて英語が話 され る事 があ った とい う。Ladyと 称 され る人 た ち の間で も英語は母語 として存在 し、 フランス語 は専 ら`ge ilS hOmmeS'に と って不可欠 な嗜教だ った とい って も過言 ではない。確 に フランス語 は`pres―
tige'と`SOphiStiCation'を持 つが 、通常の社交 の場 では乏少た りとも気取 った
言語 であ る。Robert Of Glouces"rは
0は
い,σ′′でFor u:1less a mm knowsFrench,he is mOught Of litle¨ cOunt.と 的実 にその相憶 を要略 している。 ともあれ時代が進 むにつれ てnl■ng Clasの人 は` nttla prdessona'ま で も
英語 で代用 しよ うとい う思弁が数輩 に忽卒 として生 まれ て くる。
Edward■
1世 も英語 を熟知 していた し、Rchard ll世 もWat Tylerの反乱 の時には英語 を使 って 自らの計慮を国民に極陳 している。
Jocelinや 上記 の所説 の亀鏡 とな る資料 として14世 紀 に書かれたSレ “
励 И′α(2(『人生 の鏡』
)を
引用す るIn
English tongeI
schal sow telle,sil
sewtth
me so longewil
dwelle.No Latin
wil
I
speke no waste,But English, y'at men vse mast,
,at
can eche man Ynderstande,y'at
is born in Ingelande;For ipat langage is most chewyd,
Os wel among lered os lewyd.
Latylr, as
I
trowe, can nalleBut 7o, 7at haueth
it
in scole tane,And somme can Frenshe