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超カスプ表現の構成―GL2 の場合を中心に

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(1)

超カスプ表現の構成―

GL

2

の場合を中心に

時本一樹(東京大学大学院数理科学研究科)

     

はじめに

F を非アルキメデス局所体とする.G = GLn(F )の既約表現はm≤ nなる GLm(F )の(既約)超カスプ表現*1 と放物型誘導を用いて記述でき,その記述 のされ方も簡明である*2.その意味で,既約表現の分類にとって,超カスプ表 現はbuilding blockの役割を果たす.本稿の目的は,「Gの任意の既約超カス プ表現は中心を法としてコンパクトな開部分群の有限次元表現からコンパクト 誘導によって得られる」という定理*3の証明をn = 2の場合に概説することで ある.この主張自体はGが任意の簡約代数群でも意味を持ち,実際,GLn(F ) を含む,ある程度一般の群で成立することが知られているが,本稿ではほとん ど触れない. 第 1 節ではコンパクト誘導表現によって超カスプ表現を構成する際に基 礎となるintertwiningの概念とその性質を述べる.有限群の表現論における Mackeyの既約性判定条件の類似の定理1.3によって,intertwiningについて のしかるべき条件を満たす表現のコンパクト誘導表現は超カスプ表現となる. 第2節では定理1.3の最初の適用例を述べる.第3節では,chain orderと呼 *1超尖点表現とも呼ばれる.英語ではsupercuspidal representation. *2[阿部][近藤]を参照のこと. *3実際には,開部分群や有限次元表現は具体的に構成され,誘導表現としての表示のある意味 での一意性も述べられる(4.3節や定理5.20を参照のこと).

(2)

ばれるA = M2(F )の開部分環やそれに伴うGの開部分群の系列を定義する. 開部分群の指標の一部はA の元によって記述される.第4節では,Aの元に 対し,minimalという性質を定義し,それらに伴う指標の持つよい性質を用い て,さらに超カスプ表現を構成する.超カスプ表現を与える有限次元表現は比 較的簡単な条件で定義できるが,それを詳しく調べ,具体的に記述することも なされる.第2節と第4節で構成された超カスプ表現が実質的に全ての超カ スプ表現を尽くすこと(exhaustion)は第5節で述べる.そこで定義される用 語では,それぞれの節で構成された超カスプ表現は(normalized) levelが0の もの,(それらを除く)minimalなものにあたることもわかる.超カスプ表現 を適当なコンパクト開部分群に制限した際にどのような既約表現に分解するか を調べる手法が鍵になる.第6節では,本文の内容に関係する補足的な事柄, 主にGL2 でない場合の上記の定理について述べたが,GL2 の場合と比べては るかに複雑な上,筆者の理解が未熟なこともあり,大雑把でまとまりのないも のになってしまった. なお,本稿の準備にあたっては,サマースクールでの講演と同様,非常に詳 しく丁寧に書かれた[BH06](特に第11節から第17節)を大いに参考にした. 証明を省いたところも多いが,話の流れをわかりやすくすることを目指したつ もりである.省略した議論は[BH06] の適切な箇所を参照していただきたい. また,第4節は[Ca84], 第5節は[HM89], [Bl87], 第6節は[BK93], [He91] もあわせて参考にした.

謝辞

今回のサマースクールは,講演の準備,事前勉強会,サマースクール当日, 本稿の準備など,それぞれの段階で,筆者にとって実に多くのことを学ぶ機会 となりました.企画・運営し,筆者に講演するよう声をかけてくださったオー ガナイザーの方々に心から感謝いたします.また,本稿の執筆が大幅に遅れた ために多大なご迷惑をおかけしたことを改めてお詫びいたします. 本稿の初稿の一部を読み,いくつもの有益なコメントをくださった高田芽味

(3)

さんにも感謝いたします.

記号および用語

本稿を通して,以下の記号および用語を用いる. F を非アルキメデス局所体,v : F× → Zを正規付値,oを付値環,pを極 大イデアル,kを剰余体,UF = o× を単数群,UFn = 1 + pn (n > 0)を高次単 数群とする.素元ϖ∈ F を1つとり,固定する.一般に,有限次拡大体E/F に対しても,vE, oE, pE, kE, UE, UEn, ϖE など,添え字をつけて同様の記号 を用いる.kの標数をp,濃度をqとおく. A = M2(F ), G = A× = GL2(F )とおき,Z ⊂ Gをその中心とする. 1次元表現のことをしばしば指標と呼ぶ.一般に局所副有限群H のスムー ズ指標のなす群をHˆ やH^で表す.H の半単純スムーズ表現(σ, V ),既約ス ムーズ表現(τ, W )に対し,στ -isotypic component と表す.特に, τH の自明表現である場合,VH = Vτ とも表す.

1

intertwining

と超カスプ表現

定義 1.1 H1, H2 ⊂ G を 閉 部 分 群 ,σ1, σ2 を そ れ ぞ れ H1, H2 の 既 約 ス ムーズ表現とする.この時,g ∈ Gσ1 を σ2 と intertwine するとは, HomH1g∩H2 g 1, σ2) ̸= 0であることをいう.ここで,H1g = g−1H1gであり, σ1gσ1 のgによる共役として定まるH1g の表現である.σ1 とσ2 がGにお いてintertwineするとは,あるg ∈ Gσ1 をσ2 とintertwineすることを いう. 一般の設定で定義したが,普通H1, H2が開部分群で,σ g 1, σ2がH g 1 ∩ H2の表 現として半単純である場合のみを考える.実際,以下では,H1, H2 はコンパ クト開部分群,または(Zを含み)Z を法としてコンパクトな開部分群である ため,この条件は満たされる.

(4)

命題 1.2 H1, H2 ⊂ Gをコンパクト開部分群,またはZ を法としてコンパク トな開部分群,σ1, σ2 をそれぞれH1, H2 の既約スムーズ表現とする.σ1 と σ2 があるG の既約スムーズ表現(π, V ) に含まれると仮定する( すなわち, Vσi ̸= 0 (i = 1, 2)と仮定する ).この時,σ 1とσ2はGにおいてintertwine する. 証明. πが既約であることから, V =g∈G π(g)Vσ1 =g∈G 1g−1 が成り立つ.したがって,あるg∈ Gについて,標準準同型1g ,→ V → Vσ2 が自明でない. 超カスプ表現の構成にとって,次の定理が基本的である. 定理 1.3 H ⊂ GZ を法としてコンパクトな開部分群,(σ, W )H の既 約スムーズ表現とする.g ∈ G に対し,gσ をintertwineする*4こととgH に属することが同値であると仮定する.この時,コンパクト誘導表現 (π, V ) = indGHσ は既約超カスプ表現である. 証明. まず,π の非自明な行列成分であってZ を法としてコンパクトな台を 持つものが存在することを示す.w ∈ W に対し,fw ∈ V を,Supp fw = H, fw(1) = w なる唯一の元として定める.H の表現の標準的な埋め込み W → V, w 7→ fw を通して,W ={ f ∈ V | Supp f ⊂ H }とみなせる.同様 に,H の表現の標準的な埋め込みW∨ → indGH(σ∨)→ IndGH(σ∨)を通して, W∨ = { ϕ ∈ IndGH(σ∨)| Supp ϕ ⊂ H }とみなせる.一方,H ⊂ Gが開部分 群であることから,G不変なペアリング V × IndGH(σ∨)→ C, (f, ϕ) 7→H\G ⟨f(g), ϕ(g)⟩dg *4g∈ Gσσintertwineする,ということ.

(5)

(ここで,⟨·, ·⟩WW∨ の間のペアリングであり,積分はH\Gの上のG 不変測度による)は,Gの表現の同型IndGH(σ∨) ∼= V∨を誘導する([高瀬, 命 題2.6.1]).よって,0 ̸= f ∈ W ⊂ V , 0 ̸= ϕ ∈ W∨ ⊂ IndGH(σ∨) ∼= V∨ に対 して,G → C, g 7→ ⟨π(g)f, ϕ⟩H に台を持つπ の非自明な行列成分を定 める. ここで,次のよく知られた事実を思い出す. • Gの既約スムーズ表現は許容表現である. • G の既約許容表現が,非自明な行列成分であって台がZ を法としてコ ンパクトなものを1つでも持つなら超カスプ表現である. これらによって,定理は(π, V )の既約性を示すことに帰着された.有限群の 表現論の場合と同様に π|H = ⊕ HgH ∈H\G/H indHH∩Hg−1 σ g−1 なる分解が示され(Mackey分解),ゆえに仮定から HomH(W, Vσ) = HomH(W, V ) = ⊕ HgH ∈H\G/H HomH∩Hg−1(σ, σ g−1 ) = ⊕ HgH ∈H\G/H HomHg∩H(σg, σ) = EndH(σ) が成り立つ.よって,HomH(W, Vσ) の次元は 1,すなわちW = Vσ とわ かる. G部分空間0̸= X ⊂ V を任意にとる.Frobenius相互律より,

0̸= HomG(X, V )⊂ HomG(X, IndGHσ) = HomH(X, σ)

であるから, ̸= 0. ゆえに,X ⊃ W = VσVGの作用によってW で 張られるので,X = V . したがって,V は既約.

(6)

2

level 0

の表現の構成

まず,Gのコンパクト開部分群をいくつか定義する.K = GL2(o)とおく. K からGL2(k)には標準全射がある.この標準全射によるGL2(k)の標準的 なBorel部分群B(k)(上三角行列のなす群)の逆像をI ⊂ K とおき,同様に B(k)の冪単根基N (k)(対角成分が1の上三角行列のなす群)の逆像をI1 と おく.最後に,標準全射の核をK1とおく. I = ( UF o p UF ) , I1 = 1 + ( p o p p ) , K1 = 1 + pM2(o) となる.特にK1 ⊂ I1 ⊂ I ⊂ K である. 定理 2.1 (π, V )Gの既約スムーズ表現とし,VK1 ̸= 0であると仮定する. この時,次のいずれか一方が成立する. (1) K の既約スムーズ表現λであって,K/K1 = GL2(k)のある既約カスプ 表現*5λの引き戻しであり,Vλ ̸= 0であるようなものが存在する. (2) VI1 ̸= 0である. (1)の場合,πは超カスプ表現であり,λを延長するようなZKの既約スムー ズ表現Λを用いて,π ∼= indGZKΛと表される. 証明. K1 はK の正規部分群であるから,KVK1 に作用し,VK1 はK1 の 上で自明なK の既約スムーズ表現の直和である.VK1 に含まれるK の既約 表現を1つとりλ とおく.誘導されるGL2(k)の表現λ がカスプ表現ならば (1)が成立し,そうでない時 (2)が成立する.次の補題はカスプ表現の定義と Cartan分解から比較的容易に従う. *5GL2(k)の既約表現(λ, W )がカスプ表現(尖点表現)であるとは,不変部分WN (k)がゼ ロであることをいう([原下,補題3.4]も参照のこと).

(7)

補題 2.2 σ1, σ2 をGL2(k)の既約表現とし,K への引き戻しをそれぞれσ1, σ2 とおく.σ1 はカスプ表現であると仮定する.この時,以下が成立する. (1) σ1 とσ2 がGにおいてintertwineするなら,σ1 ∼= σ2である. (2) g∈ Gσ1 をintertwineするのとg∈ ZK は同値である. 命題1.2と補題2.2 (1)によって,(1)と(2)は同時には成立しない. (1)が成立すると仮定する.πに含まれるZK の既約表現 Λでλ を延長す るものをとれば,Frobenius相互律によって,indGZKΛ → πが誘導され,補題 2.2 (2)と定理1.3によってこれは同型である.

3

chain order

と指標

定義 3.1 A のchain order AとはM = M2(o), I =

( o o p o ) のいずれかと G共役なAの開部分環のことをいう. ここでは,M, IをAのchain orderの標準型と呼ぶことにする.定義から, Aの任意のchain orderは標準型のうちの一方とG共役であり,chain order の性質の証明はしばしば標準型の場合の具体的な計算に帰着される. • A のJacobson 根基を PA とおくと,PA は単生成である.生成元を ΠA とおき,Aの素元という. PM = ϖM = Mϖ, PI = ( p o p p ) = ( 0 1 ϖ 0 ) I = I ( 0 1 ϖ 0 ) であるから,ΠM = ϖ, ΠI = (ϖ 00 1)ととれる. • pA = PeA A によって,eA ∈ Zを定める.eM = 1, eI = 2である. • UA = UA0 = A× とおく.n≥ 1に対し,UAn = 1 + PnA とおくと,UAnUA の正規部分群である.n≥ 0に対し,UAnGのコンパクト開部 分群である.KA = UA· ΠZA ⊂ Gとおくと,KA はUAn (n≥ 0)の正規

(8)

化群であることが示せ,Z を法としてコンパクトなGの開部分群であ る.自然な短完全列 1→ UA → KA eA 2 v◦det −→ Z → 0 があり,素元ΠA をとるごとに半直積分解KA = UA⋊ ΠZAが定まる. UM = K, UM1 = K1, KM = ZK, UI = I, UI1 = I1 であり, UM0 ⊃ UI0 ⊃ UI1 ⊃ UM1 ⊃ · · · ⊃ UMn ⊃ UI2n ⊃ UI2n+1 ⊃ UMn+1 ⊃ . . . (∗) が成立する. ここで述べたchain order やそれに関連する概念の定義はややぎこちなかっ たかも知れないが,次のようにlattice chainを用いて定義することもできる (chain orderという名称の由来もわかる).この定義の方が便利なことも多い. 定義 3.2 A, Gを通常のやり方でV = F2 に左から作用しているとみなす. V のlattice chain L = {Li}i∈Z とは,Zで添え字づけられたV のlatticeの

減少列であって,任意のx∈ F× と任意のi∈ Zに対してxLi ∈ Lが成り立つ

ようなもののことをいう.あるlattice chain Lを用いて,A = ∩iEndo(Li)

と書けるようなAの開部分環AをAのchain orderという.

定義3.1 と定義3.2 が同じものを定義していることを確かめておく*6L

V のlattice chain,Aを L から定まる A の chain orderとすると,lattice chainの定義より,あるeL ∈ Z>0が存在して,任意のx∈ F× と任意のi∈ Z

に対して xLi = Li+v(x)eL が成立する.dimkLi/Li+eL = 2に注意すれば,

eL = 1 またはeL = 2であり,それぞれの場合にL は適当なg ∈ Gを用い て{g(pi⊕ pi)}i∈Z, {g(p[i/2]⊕ p[(i+1)/2])}i∈Zと表されることがわかる(ここ *6見かけ上の定義は異なるが,実はこれらはAhereditary orderと呼ばれるものでもあ

(9)

で,[·]は整数部分を表す).よって,Aは定義3.1の意味のchain orderであ り,eL = eA が成り立つ.逆に,定義3.1 の意味のchain order A に対し,

A =∩iEndo(Li)なるlattice chain Lがとれる.このことは上の議論の逆を

たどってもよいし,実は,A安定なV のlattice全体(を適切に添え字づけた

もの)がlattice chainになっていることが確かめられる.特に,このようなL

のとり方は(添え字づけをずらすことを除いて)一意である.

LV の lattice chain,A を L が定める A の chain order とすると, PnA =∩iHomo(Li, Li+n),KA ={ g ∈ G | gL ∈ L (∀L ∈ L) }が成り立つ.

命題 3.3 E ⊂ AF 部分代数であって,E/F が二次拡大体であるようなも のとする.この時,Aのchain order A⊂ Aであって, ⊂ KAが成り立つ

ようなものが一意に存在する.V のoE-lattice全体(を適切に添え字づけたも

の)がAを定めるV のlattice chainとなる.また,eAはE/F の分岐指数に

等しく,KA = E×UAであり,x∈ E× に対し,xA = P

vE(x)

A が成り立つ.

証明. E ⊂ A の埋め込みは V に 1 次元 E ベクトル空間の構造を定める. w ∈ V \ {0}とすると,L = { piEw | i ∈ Z }w のとり方によらず,V の oE-lattice全体の集合となる.LV の lattice chainであり,L が定める

chain order Aは ⊂ KAなる条件を満たす.一意性を示そう.L′ を,任意 のx ∈ E× と任意のL ∈ L′ に対しxL ∈ L′ であるようなV のlattice chain とすると,[UE : UF] < より各 lattice L ∈ L′UE の作用で安定で, oE = o[UE]に注意すれば,oE-latticeであるとわかる.すなわちL′ ⊂ L. 一 方,L′ の仮定から,全てのoE-latticeがL′ に属することがわかる.よって, L ⊂ L′ も得られた.後半の主張は,xpi Ew = p i+vE(x) E wから従う. 次が成り立つことは容易に確かめられる. • 0 < m < n ≤ 2mの時,UFm/UFn → pm/pn, xUFn 7→ (x − 1) + pn は 同型. スムーズ指標 ψ : F → C× であってKer ψ ⊃ p, ̸⊃ oなるものを1 つ

(10)

とる.この時,F → ˆF , a 7→ aψは同型(Pontryagin双対*7に関する

F の自己双対性).ここで,aψ(x) = ψ(ax)によって, ∈ ˆF を定め る.また,この同型によって,任意のn∈ Zに対し,p1−n(F/pn)^, F/pn と(p1−n)^ の間にそれぞれ同型が誘導される. よって,次の命題が従う. 命題 3.4 m, nを0≤ m < n ≤ 2m + 1を満たす整数とする.この時, p−n/p−m → (UFm+1/UFn+1)^, a + p−m7→ ψaF は同型.ここで,ψF a(x) = ψ(a(x− 1))によって写像ψFa *8を定める. Aとその chain order A ⊂ Aに対しても同様の事実,とりわけ次が成り立つ ので,命題3.4の類似(命題3.6)が従う. 命題 3.5 スムーズ指標ψ ∈ ˆF は上の通りとし,A ⊂ Aをchain orderとす る.この時, A → ˆA, a 7→ aψA

は同型.ここで,aψA(x) = ψ(tr ax)によってaψA ∈ ˆAを定める.また,この

同型によって,任意のn∈ Zに対し,P1A−n(A/PnA)^, A/PnA と(P1A−n)^ の間にそれぞれ同型が誘導される. 命題 3.6 m, nを0≤ m < n ≤ 2m + 1を満たす整数とし,ψ ∈ ˆF , A ⊂ Aは 上の通りとする.この時, P−nA /P−mA → (UAm+1/UAn+1)^, a + P−mA 7→ ψa は同型.ここで,ψa(x) = ψ(tr a(x− 1))によって写像ψaを定める. *7局所副有限群の指標についてスムーズ性と連続性が同値であることやFがコンパクト群の 合併であることに注意する. *8ψF a という記号からはどの群の指標とみなしているかがわからない.以下,あいまいな場合 には,定義域を明示する.

(11)

この命題によって,指標の性質はしばしば剰余類や代表元を使って述べられ る.例えば次が成り立つ. 命題 3.7 i = 1, 2 に対し,mi, ni を0 ≤ mi < ni ≤ 2mi+ 1を満たす整数, Ai ⊂ Aをchain order,ai ∈ P−nAii とする.この時,以下は同値である. (1) g∈ GUm1+1 A1 の指標ψa1 をU m2+1 A2 の指標ψa2 とintertwineする. (2) g−1(a1+ P−mA1 1)g∩ (a2+ P −m2 A2 )̸= ∅が成立する. 証明. (1)の条件は任意のx∈ g−1Pm1+1 A1 g∩P m2+1 A2 についてψ(tr a1gxg −1) = ψ(tr a2x)が成立することと同値で,ψ(tr a1gxg−1) = ψ(tr g−1a1gx)である から,この条件はさらに(g−1a1g− a2)ψA ( A/(g−1Pm1+1 A1 g∩ P m2+1 A2 ))^ と同値である.(A/(g−1Pm1+1 A1 g∩ P m2+1 A2 ))^ ∼= g −1P−m1 A1 g + P −m2 A2 である から,この条件は(2)と同値である.

4

minimal

表現の構成

4.1

minimal

定義 4.1 α ∈ G \ Z が(F 上の)minimal元であるとはE = F [α]⊂ Aが体 であり,n =−vE(α)とおく時,E/F が完全分岐でnが奇数であるか,E/F が不分岐で剰余類ϖnα + p E が剰余体の拡大kE/kを生成することをいう. α∈ G \ Z をminimal元とする.この時,定義4.1の記号で,E/F は2次拡 大であり,命題3.3により ⊂ KA なるAのchain order Aが一意に存在 し,α ∈ P−nA が成り立つ.ここでは,このようなAをα に伴うchain order と呼ぶことにする.

補題 4.2 α ∈ G \ Z をminimal元,A⊂ Aをchain orderとする.この時, α∈ KA ならばAはαに伴うchain orderである.

(12)

き,E/F が分岐拡大ならばα0 = ϖ(n+1)/2αとおく.すると,oE = o[α0]で

ある.v(det(α0)) ≥ 0より,α0 ∈ A だから,oE ⊂ A,ゆえにUE ⊂ UA を

得る.ϖ, α0 ∈ KA と合わせて, ⊂ KA.すなわち,Aはαに伴う chain

orderである.

補題 4.3 α ∈ G \ Z をminimal元,A⊂ Aαに伴うchain orderとし,記 号は定義4.1の通りとする.この時,任意のβ ∈ α + P1A−nはminimal元で, βに伴うchain orderはAである. 証明. β ∈ α + P1A−nを任意にとる.補題4.2によって,β がminimal元であ ることを示せば十分.まず,eA = 1の場合を調べる.α0 = ϖnα, β0 = ϖnβ とおく.α が minimal 元であることから,α0 のA/PA における像は k 上 の2 次拡大体を生成するが,β0 − α0 ∈ PA だから,β0 についても同じこ とがいえる.このことからF [β0] = F [β]F 上の不分岐2 次拡大体である ことも従うので,β はminimal 元である.次に,eA = 2 の場合を調べる. α0 = ϖ(n+1)/2α, β0 = ϖ(n+1)/2β とおく.vE(α0) = 1であるから,α0 の 特性多項式は Eisenstein でv(det α0) = 1, v(tr α0) ≥ 1 である.よって, β0 ∈ α0 + P2A = α0 + ϖA = α0UA1 より,v(det β0) = 1, v(tr β0) ≥ 1を得 る.ゆえに,F [β0] = F [β]F 上の完全分岐2次拡大体でvF [β](β) =−nと わかり,β はminimal元である. 超カスプ表現を構成するにあたって,minimal元に関する以下の2つの性質 が重要である.

補題 4.4 α, β ∈ G \ Z をminimal元とする.これらに伴うchain orderが等 しいと仮定し,それをAとおく.この時,g∈ Gβ = gαg−1を満たすなら ばg∈ KAである.

証明. Aを定めるlattice chainをLとおき,F [α], F [β]の整数環をそれぞれ oα, oβ とおく.oα とoβgによる共役作用でうつり合うから,L ∈ Lを任

(13)

任意であったから,g∈ KA である. 補題 4.5 α ∈ G\Zをminimal元とし,記号は定義4.1の通りとする.g∈ A, k ≥ 1とする.この時,αgα−1 ≡ g (mod PkA)であるためには,g∈ oE+ PkA であることが必要十分である. 証明. αはoE の元と可換であり,共役作用でPkA を安定にするから十分性は 明らか.必要性をkに関する帰納法で示す.k ≥ 2に対し合同式が成り立つと する.帰納法の仮定から,g∈ oE+ PkA−1 である.g∈ PkA−1 であるとしてよ い.g = ϖk−1E g0 とおくと,はじめの合同式はαg0α−1 ≡ g0 (mod PA)と同 値で,g0 ∈ oE + PA ならば g ∈ oE+ PkA であるから,結局,k = 1の場合 の主張に帰着された.この場合は,chain orderの標準型を用いた計算で示す ことができる(A/PA への共役作用を考える.eA = 1の時はα ∈ UE である としてよく,一方,eA = 2の時はαE の素元であるとしてよい.詳しくは [BH06, 16.2 Lemma]を参照).

4.2

minimal

元と超カスプ表現

以下,本稿の終わりまで,スムーズ指標ψ ∈ ˆF であってKer ψ ⊃ p, ̸⊃ oなる ものを1つ固定する.0≤ m < n ≤ 2m+10 < nかつ[n/2]≤ m < nと同 値であるから,命題3.6によって,minimal元α ∈ G\Zn =−vF [α](α) > 0 を満たす時,UA[n/2]+1/UAn+1 の指標ψα が得られる.上の2つの補題で示され たminimal元αの性質はψα のよい性質(定理4.6)を導き,定理1.3を用い た超カスプ表現の構成の新たな例(定理4.9)を与える. 定理 4.6 α ∈ G\Zをminimal元とし,記号は定義4.1の通りとする.n > 0 とする.g∈ Gに対し,以下は同値である. (i) gUA[n/2]+1の指標ψαをintertwineする. (ii) gUA[n/2]+1の指標ψα をnormalizeする(すなわち,(U [n/2]+1 A ) g = UA[n/2]+1かつ(ψα)g = ψα が成り立つ).

(14)

(iii) g∈ E×UA[(n+1)/2].

証明. まず,(i)と(ii)の同値性を示す.(ii)から(i)が従うことは明らか.逆 を示すために次の補題を用いる.

補題 4.7 α, β ∈ G \ Z をminimal元とする.これらに伴う chain order が 等しく,さらに−vF [α](α) = −vF [β](β) > 0が成り立つと仮定する(等しい chain orderをA,等しい値をnとおく).この時,g∈ GUn A の指標ψα|Un A をψβ|Un A とintertwineするならば,g ∈ KA であり,特にこれら2つの指標 はgによって共役である. 証明. g∈ GUAnの指標ψαψβ とintertwineするならば,命題3.7から, g−1(α+P1A−n)g∩(β +P1A−n)̸= ∅である.γ ∈ g−1(α+P1A−n)g∩(β +P1A−n) とすると,補題4.3によって,γgγg−1に対して補題4.4を適用でき,g∈ KA が従う. (i)を仮定する.特に,gψαUAnへの制限もintertwineするので,補題 4.7によって,g ∈ KA である.よって(U [n/2]+1 A ) g = U[n/2]+1 A だから,g

ψα をnormalizeする.以上で,(i)と(ii)の同値性が示された.

次に,(ii)と(iii)の同値性を示す.(iii)⇒(ii)は省略する(g∈ E× の時は, 命題3.7から直ちに従う.g ∈ UA[(n+1)/2]の時は,類似だがより面倒な,補題 4.13 (1)の証明を参照).(ii)⇒(iii)を示すためにg∈ Gψα をnormalizeす

ると仮定する.特に,UA[n/2]+1をnormalizeするからg∈ KAであり,また,命 題3.7によって,g−1αg + P−[n/2]A = α + P−[n/2]A である.KA = E×UA であ るからg∈ UA としてよい.以上から,「g ∈ UA, g−1αg ≡ α (mod P−[n/2]A ) ならば,g ∈ UEU [(n+1)/2] A 」を示せばよいが,合同式の条件は αgα−1 ≡ g (mod P[(n+1)/2]A )と同値であるから,これは補題4.5から従う.よって,(ii) と(iii)の同値性が示された. 次の定理は定理5.20の証明まで用いないが,本小節の流れに沿うものなので, ここで述べておく.

(15)

定理 4.8 α, β ∈ G \ Z をminimal元とする.補題4.7と同様に,これらに伴 うchain orderが等しく,さらに−vF [α](α) =−vF [β](β) > 0が成り立つと仮 定する(等しいchain orderをA,等しい値をnとおく).この時,UA[n/2]+1 の指標ψα, ψβGにおいてintertwineするためにはこれら2つの指標がUA のある元の作用によって共役であることが必要十分である. 証明. 十分であることは明らか.必要性を示すためにg ∈ GUA[n/2]+1 の指 標ψαψβ とintertwineすると仮定すると,補題4.7によって g ∈ KA で ある.KA = F [α]×UA であるから g = xu (x ∈ F [α]×, u ∈ UA)とおくと, ψαg = ψαu, (UA[n/2]+1)g = (UA[n/2]+1)u = UA[n/2]+1 が成り立つから,定理が従 う. α ∈ G \ Z をminimal元とし,記号は定義4.1の通りとする.n > 0とす る.定理4.6を参考にして, = E×U [(n+1)/2] A とおく. ⊂ KA はZ を法 としてコンパクトなGの開部分群である. 定理 4.9 記号は上の通りとする.Λ を の既約スムーズ表現であって UA[n/2]+1への制限がψα を含むものとする.この時,次が成立する. (1) ΛのUA[n/2]+1への制限はψα-isotypicである. (2) indGJαΛは既約超カスプ表現である. 証明. ΛUA[n/2]+1 への制限は既約表現の直和に分解し,それらは全て によって共役である.一方,定理4.6 の(iii)⇒(ii) より,ψα によって normalizeされる.ゆえに(1)が示された.g ∈ GがΛをintertwineするな らば,(1)よりUA[n/2]+1 の指標ψα もintertwineする.よって,定理 4.6 の (i)⇒(iii)より g ∈ Jα である.よって,Λは定理1.3の仮定を満たし,(2)も 従う.

(16)

4.3

C(ψ

α

, A)

の構造

α ∈ G \ Z をminimal元とし,記号は定理4.9の通りとする. C(ψα, A) ={ Λ | Λの既約スムーズ表現で,U [n/2]+1 A への制限がψαを含む.} とおく.本小節では,C(ψα, A)を詳しく調べる.まず,次の命題は容易であ るが,定理5.20の証明で用いられるのでここで述べておく. 命題 4.10 記号は上の通りとする.Λ1, Λ2 ∈ C(ψα, A)Gにおいて inter-twineするなら,Λ1 = Λ2 である. 証明. g ∈ GがΛ1 をΛ2 とintertwineするならば,定理4.9 (2) の証明と同 様に,定理4.6の(i)⇒(iii)からg ∈ Jα である.Λ1, Λ2は の表現だから, これはΛ1 = Λ2を意味する. n が奇数の場合は,[(n + 1)/2] = [n/2] + 1 であり,n が偶数の場合は, [(n + 1)/2] < [n/2] + 1である.この事実から,C(ψα, A)の様子はnの偶奇 によって異なる*9 命題 4.11 nが奇数であるとする.この時,任意のΛ∈ C(ψα, A)は1次元表 現である.

証明. 任意に Λ ∈ C(ψα, A)をとる.定理 4.6 の(iii)⇒(ii)より,Ker ψα

の正規部分群であり,また,定理4.9 (1)より,ΛはJα/Ker ψα の表現と みなせる.主張を示すためには,Jα/Ker ψα が可換であることを示せばよい. UA[(n+1)/2]/UAn+1 = UA[n/2]+1/UAn+1 は可換だから,x ∈ E×, u ∈ UA[(n+1)/2] に対し,[x, u] = xux−1u−1 ∈ Ker ψα が成り立つことをいえばよい.しかし, *9本小節の以降の議論は,主定理(定理5.20)の証明には不要だが,興味ある話題だと思わ れるし,証明の手法は本節の他の部分と共通する部分が多い.また,ϵ因子の計算に用いら れること,Gがより一般の場合には,C(ψα, A)にあたるものは通常このような考察を経て 定義されることなどから,理論上も重要である(第6節も参照のこと).

(17)

u∈ UA[(n+1)/2] = UA[n/2]+1より,これはψα(xux−1) = ψα(u)と言い換えられ るから,再び定理4.6の(iii)⇒(ii)より従う. n が偶数の場合を調べよう.まず,n = 2m, Jα1 = Jα ∩ Uα = UE1UAm, Hα1 = UE1UA[n/2]+1 = UE1UAm+1とおく.Hα1 ⊊ Jα1 である.以下では,UAm+1の間に次のような部分群 UAm+1 ⊂ Hα1 ⊂ Jα1 ⊂ F×Jα1 ⊂ Jα. を補助的に考えることでΛ∈ C(ψα, A)の性質を調べる. UAm+1⊂ Hα1 UAm+1 の指標ψα1 の指標 θ に延長することができ,ま た,ψα を含む1 の既約表現は1次元表現に限られる.このことは,nが奇 数の場合と同様にHα1/ Ker ψαが可換であることから従う. Hα1 ⊂ Jα1 上のようなHα1 の指標θに対し,それを含むJα1 の既約表現ηθ は 同型を除いて一意に存在し,ηθq次元表現である.また,ηθ1 への制 限はθ-isotypicである.これらの事実は,2つの補題から従う.1つ目はいわ ゆるHeisenberg群*10の表現に関する補題である. J を有限群,H ⊂ J をその中心的な部分群とし,Q = J/Hが可換であると 仮定する.この時,写像J × J → H, (x, y) 7→ [x, y] = xyx−1y−1がアーベル 群の交代写像*11 [ ] : Q× Q → Hを誘導することが確かめられる. 補題 4.12 記号および仮定は上の通りとする.χH の指標として,χ◦ [ ] : Q× Q → C× が非退化であると仮定する*12.この時,J の既約表現r χであっ てχを含むものが同型を除いて一意に存在する.また,H への制限は χ-isotypicである.さらに,Qの位数をcとおく時,(cは平方数であり,)rχ√c次元表現で,IndJHχ ∼= r⊕ c χ が成立する. *10中心による商が可換であるような有限群を(有限)Heisenberg群と呼ぶことがある.ま た,補題4.12を(有限)Stone-von Neumannの定理と呼ぶことがある.いずれにして も,このような有限群の表現論は比較的容易である. *11すなわち,Z双線型であり,かつ任意のx∈ Qに対して,[x, x] = 1が成立する. *12容易にわかるように,χが非退化な交代形式を誘導するためには,H⊂ Jが中心であるこ とが必要である.特に,χの中心指標である.

(18)

非退化交代形式の極大等方的部分群P ⊂ Qを1つとり,その逆像をP˜ ⊂ J とおき,χP˜への延長χ˜をとると, = IndJP˜χ˜である(詳細は,例えば, [Bp97] Exercises 4.1.4 - 4.1.8参照). H = Hα1/ Ker θ, J = Jα1/ Ker θ, χθ の誘導するH の指標として,補題 4.12を適用することでηθ の存在やその性質が示される.これらが確かに補題 4.12の仮定を満たすことは次の補題から従う*13 補題 4.13 記号は上の通りとする.この時,次が成立する. (1) 1 の指標θ をnormalizeする.特に,Ker θ の正規部分群 である. (2) Hα1/ Ker θJα/ Ker θにおいて中心的である. (3) 写像Jα1× Jα1 → C×, (x, y)7→ θ([x, y])が誘導するJα1/Hα1 の上の交代形 式は非退化である. 証明. (1)を示そう.H1 α/ Ker ψαJα/ Ker ψαにおいて中心的であることを 示せばよい.[UE1, E×] ={1}は明らかで,[UAm+1, E×]⊂ Ker ψαは命題4.11

と同様に定理4.6の(iii)⇒(ii)より従う.[UAm+1, UAm] ⊂ UAn+1 ⊂ Ker ψα

よい.[U1

E, UAm] ⊂ Ker ψα は,定理4.6 の(iii)⇒(ii)の証明と同様に次のよ

うに示される.任意のx ∈ p1E と任意のy ∈ PmA に対し,[1 + x, 1 + y] Ker ψα であることを示せばよいが,[1 + x, 1 + y] ≡ 1 + (xy − yx)(1 −

x +· · · + (−1)m−1xm−1) (mod UAn+1)に注意すれば,ψα([1 + x, 1 + y]) =

ψ(tr α(xy− yx)(1 − x + · · · + (−1)m−1xm−1)) とわかり,一方,i ≥ 0 に 対してψ(tr α(xy− yx)xi) = ψ(tr(xiαx− xi+1α)y) = 1 だから,これもよ い.よって,(1)が示された.(2)は(1) から直ちに従う.(3)を示すには標 準的な同型 J1 α/Hα1 = PmA/(pmE + P m+1 A ) に注意する.x, y ∈ P m A に対し,

θ([1 + x, 1 + y]) = ψα(1 + xy− yx) = ψ(tr(αx − xα)y)だから,命題3.5に

よって,(3)は補題4.5に帰着される.

(19)

Jα1 ⊂ F×Jα1 上のようなJα1 の既約表現ηθF×Jα1 の既約表現ρに延長す ることができ,また,ηθを含むF×Jα1 の既約表現はこのようにして得られるq 次元表現に限られる.このことは,が中心的であることから明らかである. F×Jα1 ⊂ Jα 上のような F×Jα1 の既約表現 ρ の既約表現 Λ に延長す ることができ,また,ρを含む の既約表現はこのようにして得られるq 次 元表現に限られる.このことは次のようにしてわかる.補題4.13および補題 4.12によって,ηθ をnormalizeし,ゆえにρもnormalizeする.一方, nは偶数ゆえE/F は不分岐だから,Jα/F×Jα1 は位数q + 1の巡回群である. したがって,正規部分群の既約表現の延長に関する,いわゆるClifford理論に よって,ρ の既約表現に延長できる.

5

exhaustion

本節では,Gの超カスプ表現が,本質的には定理2.1および定理4.9によっ て構成されるもので尽くされることを述べ,本節までの議論とあわせて主定理 (定理5.20)を得る. はじめに,少し本筋からは外れるが,G より話が単純な,F 上の四元数 体 D の乗法群の表現の場合を概観しておく.AG には tr : A → Fdet : G → F× なる準同型があったのと同様に,D には被約トレース Trd : D → F および被約ノルム Nrd : D× → F× なる標準的な準同型 がある.vD = v ◦ Nrd : D× → Z は付値の公理を満たし,その付値環 oD = { x ∈ D | vD(x) ≥ 0 } ∪ {0}Dの開部分環をなす.その極大イデア ルq = { x ∈ D | vD(x) ≥ 1 } ∪ {0}は単生成な両側イデアルで,その生成元 をΠD とおく.poD = q2であり,剰余環kD = oD/qF の剰余体k上の2 次拡大体である.UD = o×Dとおき,n≥ 1に対しUDn = 1 + qn とおくと,こ れらはいずれもの正規部分群である.命題3.6と同様に次が成立する. 命題 5.1 m, nを0≤ m < n ≤ 2m + 1を満たす整数とする.この時, q−n/q−m→ (UDm+1/UDn+1)^, a + q−m 7→ ψaD

(20)

は同型.ここで,ψaDは, ψaD(x) = ψ(Trd a(x− 1))なる写像である. 定義4.1と類似の要領でminimal元の概念も定義される. 定義 5.2 α ∈ D×\ F×が(F 上の)minimal元であるとは,E = F [α]⊂ D, n =−vD(α)とおく時,nが奇数(かつE/F が完全分岐)であるか,(nが偶 数かつ)E/F が不分岐で剰余類ϖn/2α + pEが剰余体の拡大kE/kを生成す ることをいう. 補題4.3と同様にminimal元は次の性質を持つ. 補題 5.3 α ∈ D× \ F× をminimal元とし,記号は定義5.2の通りとする. この時,任意のβ ∈ α + q1−nはminimal元である. 定理4.6と同様に次が成立する. 定理 5.4 α ∈ D× \ F× をminimal元とし,記号は定義5.2の通りとする. n > 0とする.g∈ D×に対し,以下は同値である. (i) gUD[n/2]+1の指標ψDα をintertwineする. (ii) gUD[n/2]+1の指標ψD α をnormalizeする. (iii) g∈ E×UD[(n+1)/2]. Gの場合と異なりUD[n/2]+1 の正規部分群であるため,上の定理の(i) と(ii)の同値性は明らかである.いずれにしても,定理4.9と同様に上の定理 から次が従う. 定理 5.5 記号は定理 5.4 の通りとする.Λ を JαD = E×UD[(n+1)/2] の既約 スムーズ表現であってUD[n/2]+1 への制限がψD α を含むものとする.この時, indDJ α Λは既約である. Gの場合と異なりは中心を法としてコンパクトな群であるから, の スムーズ表現の任意の行列成分の台は中心を法としてコンパクトであることに 注意する.

(21)

さ て , の 既 約 ス ム ー ズ 表 現 (π, V ) に 対 し ,そ の level を ℓD(π) = min{ n ∈ Z≥0 | VUDn+1 ̸= 0 } に よ っ て 定 め る .任 意 の の ス ム ー ズ 指 標 χ に 対 し ,ℓD(π) ≤ ℓD(π ⊗ (χ ◦ Nrd)) が 成 立 す る 時 ,π は mini-mal で あ る と い う .ℓD(π ⊗ (χ ◦ Nrd)) ≤ max{ℓD(π), ℓD(χ ◦ Nrd)} で , ℓD(π) ̸= ℓD(χ ◦ Nrd) なら等号が成立するから,ℓD(π) = ℓD(χ ◦ Nrd) な るχ のみ考えればよいことになる. のスムーズ指標χに対しても,その levelをmin{ n ∈ Z≥0 | UFn+1 ⊂ Ker χ }によって定める.被約ノルムの計算 によって,χのlevelがl ≥ 1の時,命題3.4,命題5.1の記号でχ|Ul F = ψ F c ならばχ◦ Nrd |U2l D = ψ D c であり,ℓD(χ◦ Nrd) = 2lとわかる. n = ℓD(π) > 0とする.VU n+1 D ̸= 0への Un D の表現は指標の直和に分解す るが, の既約スムーズ表現に対し,そのlevelがnより真に小さいことと UDn 不変部分が非自明なことの同値性に注意すれば,πがminimalでないこと とあるc∈ F についてπUn Dへの制限がψDc を含むことは同値であるとわ かる.一方,定義から,α ∈ q−n\ q1−n について,α /∈ F + q1−n であるこ ととαがminimalであることは同値だから,π がminimalならば,πUDn への制限はあるminimal元α についてψD α を含む.ゆえに,ある β ∈ q−n, β ≡ α (mod q1−n)について,πUD[n/2]+1への制限はψβDを含み,補題5.3 よりβ もminimalである.よって,πJβD = F [β]×UD[(n+1)/2] への制限は 定理5.5の形の既約スムーズ表現Λを含む.Frobenius相互律によって,π は 定理5.5の形の誘導表現とわかる. 任意のπは適当なスムーズ指標でtwistすればminimalな表現となるので, より容易なℓD(π) = 0の場合についての同様の考察*14と合わせると,π は1 次元表現でなければ,真部分群から誘導されることが従う. 超カスプ表現でないものが存在することからも予想されるように,以下で概 観するGの既約スムーズ表現 (π, V )についての議論はもっと複雑になるが, *14 D(π) = 0 の時は,πUD1 の作用が自明なF×UD の指標 ξを含む.ξ の 指標に延長できるなら,π はそのような指標の 1つに他ならず,延長できないなら, π ∼= indDF××U である.

(22)

levelと関係するV の部分空間へのコンパクト開部分群の作用からπ の情報を 引き出す点は共通している.

5.1

normalized level

fundamental stratum

定義 5.6 Gの既約スムーズ表現(π, V )に対し,そのnormalized level *15

ℓ(π) = min {

n/eA A : chain order, n∈ Z≥0, VU n+1 A ̸= 0 } で定める. M, Iから定まる開部分群の包含関係(∗)に注意すれば,ℓ(π) = 0πが定理 2.1の仮定を満たすことは同値である*16

定義 5.7 Aのstratumとは,Aのchain order A⊂ An∈ Z, a ∈ P−nA から なる3つ組(A, n, a)のことをいう.共通のchain orderを持つ2つのstratum (A, n, a1), (A, n, a2)が同値であるとは,a1− a2 ∈ P1A−nが成り立つことをい

う.一般の2つのstratum (A, n, a), (B, m, b)に対し,g ∈ G(A, n, a)(B, m, b)とintertwineするとは,g−1(a + PA1−n)g∩ (b + P1B−m)̸= ∅が成り 立つことをいう.

命 題 3.6 に よ っ て ,n ≥ 1 な る Astratum (A, n, a) は ,指 標 ψa

(UAn/UAn+1)^ を定め,このようにして得られる指標は,(A, n, a) の同値類 にしかよらない.命題3.7によって,n, m ≥ 1なる2つのstratum (A, n, a), (B, m, b) に対し,g ∈ Gψaψb と intertwine することと g ∈ G

(A, n, a)(B, m, b)とintertwineすることは同値である.

定義 5.8 Astratum (A, n, a)がfundamentalであるとは,剰余類a+P1A−n が冪零元を持たないことをいう.

*15depthともいう.

*16コンパクト開部分群U ⊂ Gとその既約スムーズ表現(σ, W )に対し,Vσ̸= 0ならば,任

意のg ∈ Gに対し,Vσg ̸= 0である.よって,以下で,議論に現れるchain orderは標

(23)

命題 5.9 Astratum (A, n, a)に対し,以下は同値である. (i) (A, n, a)はfundamentalでない.

(ii) あるr > 0に対し,ar ∈ P1A−rnが成り立つ.

(iii) 次のいずれかが成立する.

(a) a ∈ P1A−nである.

(b) (eA, n) = 1であって,α = (0 10 0)とおく時,あるg ∈ Gに対し,

(gAg−1, n, gag−1)は(M, n, ϖ−nα)または(I, n, ϖ−(n+1)/2α)と 同値である.

(i)⇒(ii)は,任意のϵ ∈ P1A−n について,ar ∈ P1−rn

A と(a + ϵ)r ∈ P 1−rn

A が

同値であることから明らか.(ii)⇒(iii)はchain orderの標準型の計算から従 うが詳しくは省略する.(iii)⇒(i)は明らかである.

Gの既約スムーズ表現(π, V )Astratum(A, n, a)について,n≥ 1で あり,πψa ∈ (UAn/UAn+1)^ を含む時,単に,π(A, n, a)を含むという.

定義より,ℓ(π) > 0ならば,πℓ(π) = n/eAなるAstratum (A, n, a)

含む. 定理 5.10 (π, V )Gの既約スムーズ表現とする.この時,以下が成立する. (1) π がfundamental stratumを含むためには ℓ(π) > 0であることが必要 十分である. (2) ℓ(π) > 0であり,πAstratum (A, n, a)を含むとする.この時,次 は同値である.

(i) (A, n, a)はfundamentalである. (ii) ℓ(π) = n/eA が成り立つ.

証明. (1)の十分性は,(2)の(ii)⇒(i)から従う.(2)の(ii)⇒(i)を示すための 鍵となる補題は次である.

(24)

chain order Bとm∈ Zであって,次を満たすものが存在する. a + P1A−n ⊂ P−mB , m/eB < n/eA.

命題5.9 (iii) にある,fundamentalでないstratumの表示を用いて,具体的 に構成できる*17

さて,fundamentalでないAstratum (A, n, a)πが含むとする.補題 5.11の条件を満たすBとm∈ Zをとると,PA1−n ⊂ P−mB よりUB1+m ⊂ UAn であり,a ∈ P−mB よりψa|U1+m

B は自明である.よって,ℓ(π)≤ m/eB < n/eA

とわかり,(2)の(ii)⇒(i)が従う.

残りの主張を示すためには,Astratum (A, n, a)がfundamentalである

時,a + P1A−nの任意の元の固有値の付値の最小値は−n/eA であることに注意

する.実際,b∈ a+P1A−nとすると,命題5.9の(ii)⇒(i)よりb′ = beAϖn∈ A

A/PA における像は冪零でないことから,b′ の固有値の付値の最小値は0 であると確かめられる.(2) の(i) を仮定する.この時,ℓ(π) > 0 の仮定か らℓ(π) = m/eB なるAstratum (B, m, b)が存在するが,既に示したこと によって,(B, m, b)はfundamentalである.命題1.2によって,(A, n, a)(B, m, b)Gにおいて intertwine し,どちらもfundamental であるから, 剰余類の元の固有値の付値の最小値に注目すればn/eA = m/eB = ℓ(π)を得 る.よって,(2)の(i)⇒(ii)が示された.ℓ(π) = 0と仮定する.この時,πAstratum (M, 1, 0)を含むが,0 + M = Mの任意の元の固有値の付値は 全て非負である.さらに,πfundamental stratum (A, n, a)を含むとする

と,a + P1A−n の任意の元の固有値の付値の最小値は−n/eA < 0であるから, これは(M, 1, 0)(A, n, a)G においてintertwineすることと矛盾する. よって,(1)の必要性が示された. *17次のような証明もある(詳しくは,[HM89]または[Bl87]を参照).Aを定めるlattice chainLへのa + P1A−n⊂ Aの作用を用いて,ある標準的な操作でLを修正することに よって,補題の包含の条件を満たすようなBとmを得る.それらが,補題の不等式の条 件を満たすことを示すのに,命題5.9の(i)⇒(ii)を用いる.

(25)

5.2

simple stratum

と超カスプ性

定理5.10 (2)とM, Iの定める開部分群の包含関係(∗)から,n = ℓ(π)∈ Z>0

の時,πeA = 1 なるfundamental stratum (A, n, a) を含む*18.よって,

以下では(eA, n) = 1なるfundamental stratum (A, n, a)のみを考える.

定義 5.12 (A, n, a)をfundamental stratumとする.eA = 2でnが奇数の

時,(A, n, a)はramified simpleであるという.eA = 1の時,a′ = ϖna ∈ A

A/PA ∼= M2(k)における像の特性多項式fa′(T ) (̸= T2)がk[T ]において

既約であるか,相異なる2つの1次式の積に分解するか,1次式の2乗の形を しているかに応じて,(A, n, a)はunramified simple, split, essentially scalar であるという.(A, n, a)がramified simpleまたはunramified simpleである

時,単にsimpleであるともいう. 上の定義において,いずれの性質もfundamental stratumの同値類にしかよ らない.また,eA = 1の時,定義に現れる特性多項式は素元ϖ ∈ F のとり 方によるが,問題にしている性質はϖ ∈ F のとり方によらない.上三角化可 能性との関係にも注意しておく.例えば,fundamental stratum (M, n, a)が unramified simpleでないこととあるg ∈ UM と(s /∈ p またはt /∈ p なる) s, t, u ∈ oが存在して,g−1ag ≡ ϖ−n(s t0 u) (mod P1M−n)が成り立つことは 同値である. 本節の冒頭で述べた の表現に対する定義と同様に,Gの既約スムーズ 表現(π, V )がminimalであるとは,任意の のスムーズ指標 χに対して ℓ(π)≤ ℓ(π ⊗ (χ ◦ det))が成り立つこととする. 定理 5.13 ℓ(π) > 0とする.この時,以下が成立する. *18以下の定義とその直後の注意からすぐにわかるように,この時,VUMn+1 ̸= 0かつ)

VUI2n+1 ̸= 0であることとπsimpleでないfundamental stratumを含むことは同値

(26)

(1) 定義 5.12の4種類のうちいずれか1種類の fundamental stratumがπ に含まれる.

(2) (a) πがessentially sclalar stratumを含むこととπがminimalでない ことは同値である.

(b) πがsplit fundamental stratumを含むこととπがminimalでかつ 超カスプ表現でないことは同値である.

(c) πがsimple stratumを含むこととπ がminimalでかつ超カスプ表 現であることは同値である.

証明. (1)を示す.定理5.10 (1)と定義5.12 の前に述べたことより,π がい ずれかの種類のfundamental stratumを含むことは明らかである.π が異な る2 つ以上の種類の fundamental stratum を含まないことについては,定 理5.10 (2) より,ℓ(π) /∈ Zかどうかによってramified simple stratum を含

むかどうかが決まるので,ℓ(π) ∈ Zの場合のみを考えればよい.この場合, π に含まれる 2 つのfundamental stratumをとると,それらはG において intertwineすることから定義5.12の特性多項式が等しいことが従うので,こ れらのfundamental stratumは同じ種類である. (1)によって,(2)を示すには(a) と(b) のみを示せばよい.まず(a)を示 そう.の場合と同様に, のスムーズ指標χに対し,一般にℓ(π⊗ (χ ◦ det)) ≤ max{ℓ(π), ℓ(χ ◦ det)}で,ℓ(π) ̸= ℓ(χ ◦ det)なら等号が成立し,ま た,χのlevel がl ≥ 1の時,ℓ(χ◦ det) = l で,χ|Ul F = ψ F c (c ∈ F )なら χ◦ det |Ul M = ψc であることに注意する.π がminimalでないと仮定する. 上で述べたことから,n = ℓ(π)∈ Zである.π ∼= σ⊗ (χ ◦ det), ℓ(σ) < nとす ると,定理5.10 (2)より,σ(M, n, a)の形のfundamentalでないstratum を含み,χ|Un F = ψ F c (c ∈ F ) とすると,π(M, n, c + a) を含む.命題 5.9 (ii)によって,a′ = ϖnaM/PM ∼= M2(k)における像は冪零であり,

c∈ p−n\ p1−n であるから,このstratumはessentially scalarである.逆は 同様に(より容易に)示される.

(27)

stratumを含むなら超カスプ表現でないことだけを示す*19π split

funda-mental stratum (A, n, a)を含むと仮定する.A = M, a = (a1 0 0 a2 ) (a1, a2 p−n, a1 ̸≡ a2 (mod p1−n))としてよい.超カスプ表現のJacquet加群による 定義によって,次の命題を示せばよい. 命題 5.14 N = ( 1 F 0 1 ) , T = ( 0 0 ) とおき,VNN の作用に関す るπの余不変商とする.この時,VNψa|Un M∩T を含む. 証明. UMn の指標ψaξ,標準全射V → VN の核を V (N ) =⟨π(u)w − w | u ∈ N, w ∈ V ⟩とおく.標準準同型 → V → VN が自明でないことを示 せば十分であるから, ⊂ V (N) と仮定して矛盾を導く.j ∈ Z に対し, Nj = ( 1 pj 0 1 ) とおく.[中村, Lemma 1.3]によれば,任意のv∈ Vξに対して, あるj ∈ Zが存在して, Nj π(u)w du = 0 (∗∗) が成り立つ.一方,十分大きなj ∈ Z (例えば,Nj ⊂ Ker ξ を満たすような j)に対して,(∗∗)の左辺の積分は消えない.さらにπ が許容表現であること に注意すれば,任意のw ∈ Vξ に対して(∗∗)が成立するようなj ∈ Zの最大 値j0 が存在する.特に, ∫ Nj0+1 π(u)w1du̸= 0 なるw1 ∈ Vξが存在する. 補題 5.15 t = (ϖ 0 0 1), Y = UMn ∩ t−1U n Mtとおく. (1) tξをintertwineする(すなわち,ξ|Y = ξt|Y が成立する). (2) ξt| Y を含むUMn の任意の既約スムーズ表現は1次元表現である. *19逆を示すには放物型誘導によって得られる表現に含まれるstratumの種類を調べる必要が あるが,これは容易である(Mackey分解を用いるとよい).また,この主張は主定理(定 理5.20)の証明で使わない.

(28)

(3) Φ ={ ϕ | ϕUMn の指標, ϕ|Y = ξt|Y }とおく.この時,任意のϕ∈ Φ に対して,x∈ N0が存在して,ϕx = ξ が成立する. (2)はY ⊃ UMn+1 であることと(1)からすぐにわかる.(1), (3)は,命題3.7 などによって,指標の問題を剰余類の問題に言い換えることで,容易に示され る. w2 = π(t−1)w1 ∈ Vξ t とおけば, ∫ Nj0 π(u)w2du = π(t−1) ∫ Nj0 π(tut−1)w1du = cπ(t−1) ∫ Nj0+1 π(u)w1du̸= 0 が成り立つ(c̸= 0はある定数).補題5.15 (2)によって,w2 ∈ Vξ t ⊂ Vξt|Y = ⊕ϕ∈ΦVϕ であるからw2 = ∑ ϕ∈Φwϕ (wϕ ∈ Vϕ)と表せ,ある ϕ ∈ Φにつ いて Nj0 π(u)wϕdu̸= 0 が成り立つ.一方,補題5.15 (3)によって,あるx∈ N0 についてξ = ϕx で ある.w3 = π(x−1)wϕ ∈ Vϕ x = Vξ とおけば,Nj0 π(u)w3du̸= 0 であり,これはj0のとり方に矛盾する.

本節で考察したsimple stratumの概念と第4節で考察したminimal元は次の 命題によって結びつく.

命題 5.16 写像(A, n, α) 7→ αAのsimple stratumの集合から G\ Z

minimal元の集合への全単射を定める.

証明. はじめに,命題5.9によって,Astratum (A, n, α)がramified simple であることとeA = 2かつnが奇数でϖ(n+1)/2α ∈ AがAの素元であること

(29)

が同値なことに注意する*20

(A, n, α)をsimple stratumとして,α∈ G \ Z が確かにminimal元である ことをみる.eA = 2の時,上で注意したこととchain orderの標準型を用い

た計算からϖ(n+1)/2α ∈ Aの特性多項式はEisenstein多項式であることがわ かり,特にα∈ G \ Z はminimalである.eA = 1の時は定義から直ちにわか

る.逆写像は,minimal元α ∈ G \ Z に対して,αに伴うchain order (補題 4.2) A, n = −vF [α](α) によって定まる3つ組(A, n, α) を対応させることで 定義される.これが確かにsimple stratumであることは上で注意したことと 命題3.3から従う. 次の命題は,ℓ(π) = 0の場合の定理5.13の類似である(ℓ(π) = 0ならπ は minimalであることに注意する). 命題 5.17 ℓ(π) = 0とする.この時,eA = 2なるchain order A ⊂ Aについ てπU1 A の自明な指標を含むことと πが超カスプ表現でないことは同値で ある. 証明. 定理2.1によって,VI1 = 0ならπは超カスプ表現である.逆の主張は 次の補題から従うが,この補題の証明は省略する(命題の証明に必要な単射 性については[BH06, 14.3 Proposition]を,全射性については[BK93, (7.3.2) Theorem, (8.3.9) Lemma]を参照). 補題 5.18 πI1 において自明な I の指標 ξ を含むと仮定し,VNN の作用に関する π の余不変商を表す.この時,標準全射 V → VN は同型 → (VN)ξ|I∩T を誘導する.

*20命題5.9 (ii)によって,Astratum (I, 2m− 1, α) (m ∈ Z)ramified simpleであ ることはϖmα + P2 I= ( 0 1 ϖ 0 ) ( a1 0 0 a2 ) + P2 I (a1, a2∈ o)と表した時,a1a2∈ pで あることと同値なことがわかる.このことを用いて確かめられる.

(30)

5.3

主定理

前小節までの議論で,Gの任意の既約超カスプ表現がZ を法としてコンパ

クトな開部分群の有限次元表現から誘導されることは実質的に示されている が,その表示の一意性に関する主張を含む,より詳細な定理を述べるために次 の定義をする.

定義 5.19 Gcuspidal type (A, J, Λ)とは,Aのchain order A, 開部分群 J ⊂ KA, J の既約スムーズ表現(の同型類)Λ からなる3つ組であって,次 のいずれかの条件を満たすもののことをいう. (1) eA = 1, J =KA であり,Λ|UA はUA/U 1 A = GL2(k)の既約カスプ表現 の引き戻しの形をしている.

(2) あるsimple stratum (A, n, α), n > 0が存在し,J = Jα, Λ∈ C(ψα, A)

である.

(3) ある のスムーズ指標χに対し,(A, J, Λ⊗ (χ ◦ det))は(1)または (2)を満たす.

定理 2.1と定理4.9より,(A, J, Λ)Gのcuspidal typeとすると,πΛ =

indGJ Λ はG の既約超カスプ表現である.上の定義の(1) または(2) の性質 を満たすcuspidal type (A, J, Λ)に対し, のスムーズ指標 χ のlevel が ℓ(πΛ)以下である時,またその時に限り,(A, J, Λ⊗ (χ ◦ det))が再び(1)また

は(2)の性質を満たすことが確かめられる.また,Gのcuspidal typeの集合 には,各成分への作用(A, J, Λ)7→ (g−1Ag, Jg, Λg)によってGの共役作用が 定まる.

定理 5.20 (A, J, Λ)7→ πΛ = indGJ Λによって,Gのcuspidal typeの共役類

の集合からG の既約超カスプ表現の同型類の集合への全単射が誘導される.

また,定義5.19の(1)または(2)の条件を満たすcuspidal typeの共役類の集 合の,この全単射による像はGの既約超カスプ表現のうちminimalなものの

参照

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