社会移動の数理分析
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(2) 2. 原. 純. 輔. の世代の社会的地位が,いろいろな意味で,本人(千)の社会的地位獲得のための出発点 とみなしうるからである.. また,社会的地位ほ,それぞれの地位に対する評価や報酬(権力,財力,満足感)と結 びついて,上下にランクづけられるものが多い(たとえば身分,階層,企業内の職位など)0 これらの社会的地位における移動は,垂直移動(上昇移動,下降移動)とよばれる。ラン クづけが不可能な社会的地位における移動を,これに対して,水平移動とよぶ。 この社会移動現象は,社会学における基本的な研究主題の一つである。というのほ,以 下に述べる諸問題とかかわって,それが,現代社会の動向に重要な関連をもっているから である。 ( 1)社会的地位の配分過程. 全体社会の社会構造は,さまざまに分化した社会的地位. と,それらの地位に対して,なんらかのメカニズムが働らいて人員が配置されることによ ってつくられている。社会移動は,この社会的地位への人員配置の過程,あるいは,個人 への地位配分の過程であり,社会移動の研究とほ,配分(配置)のメカニズムの研究にほ かならない1)。. (2)民主主義と機会均等. 自由と平等とは,近代社会のかかげた理想であるが,民主. 主義がその政治的表現であるとすれば,社会移動の機会均等,つまり,門地とか家柄, るいほ,親の職業や財産などにかかわりなく,それぞれの社会的地位につく可能性が,. あだ. れにも平等に開放されていることは,その社会的表現である。しかも,機会の均等ほ,. 安. 定した民主主義の前提の一つであって,社会移動の機会が事実としても開放されており, そのことが文化的にも肯定されている社会では,現存の政治秩序は人々に受容されるだろ うが,逆の場合には,. (特に下層階級の人々の)不信を避けられないだろうゎ.. (3)地位病の蔓延. 上昇移動(出世)が文化的に箕讃きれている現代社会では,人々. は,上昇移動への自己の欲求や周囲の期待,あるいは,下降移動への不安によって,たえ ず緊執こさらされているoこのた軌地位病とよべるような,さまざまの病理的現象(班 い人間関係,有名学校への進学熱,パーソナリティのゆがみや神経症,自殺,アルコー ル・麻薬中毒など)が無視しえぬものになっているB). (4)産業化の条件. 低開発国における産業化(近代化)達成のための主体的条件の一. つとして,第一次産業から第二・三次産業への移動,および,より多くの収入・権力をと もなう,より高い地位への上昇移動という,社会移動への人々の動機づけ(欲求)が,質 本・技術の投下という客体的条件とともに,決定的に重要であることが指摘されている4'。 b)社会移動分析と数学 社会移動の分析,とくに数学的分析における基本的データほ,表1.1のような社会移動 表である.ここで,. 81-8hほ社会的地位の指標,たとえば職業カテゴ'u. -をあらわしてい. るo各カテゴT) -は,単に地位の異同を示す場合もあれば,有意味な順序に並べられてい る場合もある。また各カテゴリーに一定の数値が与えられることもある.時点Ⅰ, Ⅱは, 年代あるいは年齢をとって,世代内移動を問題にすることもできるし,世代,つまり, Ⅰ に親の世代, Ⅱにその子の世代をとって,世代間移動を問題にすることもできるo.
(3) 3. 社会移動の数理分析. 表IJl社. 会. 移. 動. 表. (実数). この社会移動表自体,あるいは,これと他の社会学的諸変数との関連を対象にする,社 会移動の数学的分析として,われわれほ,以下の三つの種類を区別することができるだろ う。. (1)社会移動の測定. 個人の水準では,個人あるいは集団の移動の方向や距離に対し. て,社会の水準でほ,社会全体の移動量・流動性・機会の開放度などに対して,一定の数 値を与えようとするものである。比較的初歩的な数学が用いられることが多いけれども, 回帰分析,マルコフ連鎖などの技法が用いられる場合もある。 社会移動およびそれに関連する諸変数をとりあげ,回帰 (2)社会移動の多変量解析 分析,判別分析などの多変量解析を行なう。 社会移動過程を,マルコフ連鎖などの数理モデルを (3)社会移動の数理モデル分析 用いて表現することにより,説明して行こうとするo (1)測定についてほ,詳しい解説書も存在するので5',以 これら三つの分析法のうち, (2)多変量解析, (8)数理モデル分析について,具体的な分析例を紹介す 下,本稿では, るとともに,その問題点を検討して行きたい。. §2.社会移動の多変量解析 &)職業経歴パターンの潰走要因 属性の多変皇解析と数量化理論 社会調査のデータにもとづいて,社会移動の分析を行なおうとするとき,その目的が現 状の単なる記述である場合ほともかく,現象の説明あるいは予測が目的である場合には・ どうしても多変量解析技法の導入が必要となる.しかし,他方,社会調査データの多変量 解析を行なおうとするとき,大きな障碍が存在するoそれは,回帰分析とか相関分析とい う多変量解析においては,一般に,変数の値(変量)は間隔(距離)尺度(intervalse乱Ie) によって与えられねばならないが,社会学的変数については,間隔尺度による測定が困難 である場合が多いのである。 例えば,先に述べたように,職業移動は,社会移動のうちでも特に重要なものであるが, その多変量解析には,それぞれの職業の測定(数量化)が必須であるoこの職業的地位に 関しては,その職業に一般に与えられている威信の高さ,平均収入などが指標としてとら.
(4) 4. 原. 純. 輔. れ,その値を地位の測定値とすることが多いoしかし,このことによって,職業的地位の 意味するもののうちから,欠落してしまう側面ほ大きく,あくまで近似として用いられる べきであろう。 これに対して,質的変数(属性)を扱う属性の多変量解析技法が,これまで存在しなか ったわけではないが8',それらほ,一般に,同時に処理しうる属性(変数)の数が,極め て限定されるという欠点をもっているoただ,属性の多変量解析のうちでも,林. 知己夫. が開発した数量化理論についてほ,この欠点をある程度克服しているということができ, 事泉近年,心理学,社会学をはじめ,非常に多くの分野で用いられるようになってきて いる。. 数量化理論(quantification. theory)は,林がガットマン(Guttman,. L.)の予測の理. 論丁'から出発して,体系化させたもので,定性的属性の各カテゴリーに適当な数値を与え て,定量的変数と同様に多変量解析を施す,独創的な理論である。 いま・. n人の個人(個体)の, R個の属性(変数)に関するデータがあるといよう. R個の属性ほ・それぞれkj個の択一的な選択肢(カテゴ.)-)から成っているoここで, 個体iが属性3'に関して, k番目のカテゴリーに反応する(選択する,含まれる)とき. には1・他の(k,-1)個のカテゴリ.一に反応したときには0,という値をとる,. 8i(3・k)なる. 量を導入する。すなわち, (カテゴリーkに反応したとき). ∂i(3'k) -. i:. (k以外のカテゴリーに反応したとき). いま, R;k-1,. Rl国のそれぞれの属性の,. k,個のそれぞれのカテゴリーに対し,. xjk(3・-1,-,. ・・・,k,.)なる数値を与えるとき,個体に対する新しい合成変数を,. ∂i(3・k)を用い. て, R. (2.1). αi. -. i・)A. ∑∑ ∂i(3'k)xjk 31. A. と定義するo数量化理論ほ,このときのウェイトxJkの与え方に関する理論であるo以下 でほ,この数量化理論を用いて,職業経歴パタ-ソの分析を試みてみたい. 数量化理論ほ,問題状況により,いくつかのモデルに分けられるが,ここで用いようと するのほ,一般に,第Ⅱ類といわれているモデルであるo. これは,. R個の属性(規定要. 因)に関する知識を用いて,それぞれの個体がT個の分類(職業経歴パターンの類型) のいずれに属するかを判別するoいわゆる判別の問題を解くためのモデルである。つまり, (2・1)式で定義した合成変数αiに関して,級(分類)内分散を最小に,級(分類)間分 散を最大にするように,すなわち,分類区分とαiとの相関比で(あるいほワ2)が最大と なるように,. R. x]kの値を決定するのであるoこれは,説明変数を∑k,個のダミー変数と j=1. する重判別分析と等しい。 さて,野望を最大にするxJkを求めるには,ワ2をxuvで偏数分し,それぞれを0とおけ ばよい。すなわち,.
(5) 5. 社会移動の数理分析. 盟.=o. (u-1,-,R,. ;.I-.,... v-1,-・,ku). これを書きかえれば,. 監-甲濫. (2・2' ここで,. 6b乏ほ級間分散,. o乏は全分散であるoそして,この(2・2)式ほ,最終的には, HX-り乏FX. (2.3). H,. という行列の形で表わされる.ただし,. Fは,それぞれ(kl+k乞+・・・+kR)次の正方. 行列で,. [huv(jk,],F-. H-. [fuv(i-,一言nl-nuv]. なお, 1. ,. ∑ hug(jk) ,.,_、エgt(jk)gt(uv) A -. f言i. i. ここで,. gt(3'k)は,第t群の中で属性jにカテゴリ属性jにカテゴ.)-kで反応した総数であるoまた,. -言njknuv kで反応した個体の数,. n31kほ・. fug(lm)は,属性uのカテゴ7)-. mに同時に反応する個体の総数であるo vぉよび属性lのカテゴリXは, a,Fと同じ次数の列ベクトルで,. であるが,. (2.3)式をさらに変形して, F-IHX-り乞X. とすれば,り急を固有値とする行列F-1Hの固有ベクトルであるから,これを解いて求め られるのである8)0. 職業経歴パターンの規定要田 一生の問に,人々は,さまざまの職業移動を行なうoその職業経歴パターンは,千差万 別であろうが,例えば個人の職業経歴を最初についた職業(初職)と現在の職業(現職) 1973年の全国調査 とで代表させるならば,比較的少数の類型にまとめることができる。 によれば,わが国の成人男子ほ,平均1.9回しか職業移動を行なっていないので○),初職 と現職とで代表させることは,それ程無理ではなかろう。ここでは,こうして得られた職 1969年,東京都23区内で, 業経歴パターンと,それを規定する要因との関連を, 59才の男子を対象に,筆者らが行なった調査データを用いて検討してみよう。 職業経歴パターンを構成するための職業カテゴリーとしては,自営業主,ノンマニュア ル(専門・管理・事務・販売10)),マニュアル(熟練・半熟練・非熟練),農業の4分類を. 20-.
(6) 6. 原. 純. 輔. 表2・1職業経歴パターンの規定要因(自営業初職). データ:. :第1次元. 1969年,束京都23区,男子787人. とったoただし,農業に属する著は,初職,現職とも極めて少数だったので,あらかじめ これを除外し,残りの3分類について,初職と現職を組合せると, 歴の′iタ-ソが得られる。. 8x-3-9個の職業経. このパターンの規定要因としてほ,さまざまのものが考えられるが,ここでは,父親の 学歴,父親の主な職業(父職),本人の学歴をとりあげるのが適当であろう.事実,次項 で紹介する調査データを用いて,初職,現職,父の学歴,父職,本人の学歴,および,こ れと関連が強いと考えられる17変数について,筆者がクラスター分析11'を試みたところ, 最初の5変数のみが,唯一の強固なクラスタ-を形成した○さらに,サムプルの年齢が異. なっており,初職-現職の問の時間,および,その年代的背景も大きく異なっていると考 えられるので,年齢を,また調査地点が東京都23区に限られているので,出生地を要因 として加えた.. 以上の5要因について,数量化理論第Ⅱ類を適用するわけであるが,コンビュ_タ.プ ログラムその他の制限から,サムプルを初職によって三分し,それぞれについて適用した。.
(7) 7. 社会移動の数理分析. 第ⅠⅠ次元. 罪-次元 R4. データ:1969年東京都23区男子787人. 図2.1現職合成変数aの分布状況 (自営業初職). Ji;i. .データ:1967年東京都23区男子793人. 図2・2職業的地位獲得の因果モデ′㌣. 結果ほ,いずれも相関比が低く,あまり判別にほ成功していないo表2・1は,その中で ち,ある程度の判別を示した,自営業が初職の場合の結果であるo ここで,ウエイトガ).kほ,平均0,分散1となるよう規準化して示してあるoまた, 紘,表には第1次元のみ示されているが,第2次元についても求軌各個体について, れぞれの次元のウエイトを用いて合成変量αiを算出し,その現職別の分布状態を示した、 のが,図2.1である。. これらによる分析の結果は,以下のようにまとめられるだろうo ( 1)初職が自営業の場合でも,判別成功率および合成変数の分布状態から明らかなよ ぅに,三つの現職を確実に判別することは不可能であるoただし・三つの現職を,自営業 +ノソマニュアルとマニュアルとに分けると,その2群間の判別力は,かなり高い。 (2)データの特性を考慮して加えられた要因についてみると,年齢(職業経歴の長さ) は,所属カテゴリーによるウエイトの開きは大きくはないけれども・偏相関係数の順位は 1位であり,統制要因として有意味である。出生地の規定力は,最下位であるo (3)年齢,出生地以外で,所属カテゴリ-によるウエイトの開きが大きいのは,学歴 と父の主職であり,特に学歴は,独自の判別寄与率を示す偏相関係数の値も高いo現職の 自営業+ノソマニュアル対マニュアルの判別に関して・ウエイトの符号(正負)杏,合成 変数の分布状態と対照すると,学歴についてほ低学歴の暑が・父の主職についてほ,マニ ュアルおよび農業の場合が,自営業からマニュアルへ移動する傾向が強いといえるo (4)相関比が0・56と,そう高いとほいえないことに関しては,ニとおり.の解釈が成 り立つだろうo第一には,職業の分額が粗すぎて,もっと細かい分額であれば現われたで ぁろう職業経歴のパターンが,消されてしまっているということが考えられるo第二には・ ここにあげた以外の規定要因の効果が考えられるoそのような要田としてほ,個人の能 か性格とか,職業上の業績などが,先ず検討されるべきであろうo. X. ■そ.
(8) 8. 原. 純. 輔. (5)われわれほ,偏相関係数に関して,これを因果的に解釈したいという誘惑にから れるoすなわち,職業経歴′くターンの直接的規定力とみなすわけである。しかし,これは 正しくない。なぜなら,数量化理論第Ⅱ類のモデルでほ,規定要因間相互の因果関係につ いてほ,何ら考慮されていないからでぁるo例えば,隼の主職と本人の学歴の問には,ち. し存在するとすれば,主職-学歴という一方的因果関係のみが考えられるが,その場合, 学歴という要因を(も)コントロ・ニんして主職の偏相関係数を求めることは,因果的にほ, まったくおかしなことになるoその意味で,因果的な解釈が可能なのは,ここでほ,学歴 の場合のみであろう。. 以上,数量化理論による,社会移動の分析について検討した。つぎに,上の(5)と関連 して,変数間の複雑な因果関係を許容する多変量解析のモデルとして,.<ス.アナ1)シス による分析について検討しようo. b)職業的地痘の獲得 パス・アナリシスの手続き. 本項でほ,.ミス・アナリシスによる社会移動の分析を紹介しよう. ,<ス・アナリシスは, 多変量因果モデルにおける変数間の因果関係に対し,統計調査データにもとづいて一定の 数値を与えようとする技法で,遺伝学老ライト(Wright, 午,社会調査データの分析に広く用いられている.. S・)らによって開発され12,,近. この技法は,重回帰分析の一種であるけれども,つぎの点で,一般の重回帰分析とほ異 なっている。. (1)変数値ほ,数量化理論の場合とは違い,間隔尺度によって与えられ,すべて標準 化(standardization)して用いられる.. (2)扱われる因果モデルに関してほ,重回帰分析一般の仮定に加えて,つぎのことが 仮定されるoすなわち,モデル内の任意わ2変数間の因果関係は,直接的にも間接的にも -方(向)的でなければならず,サイクルとかフィードバック・システムなどほ,一般に 許容されない。 図2・2ほ,以下で用いられる因果モデルであるo. ここで片矢印ほ,直接的な因果関係 の存在18)とその方向を示しているが14',図の左側の変数ほど因果的に優先していることが わかるoまた・ XlとX2ほ外生変数(exogenous variable)であるが,外生変数間の関 係ほ,因果関係ではなく相関関係とみなされ,図でほ,弓塾の両矢印によって示されてい るo. R8-R6ほ残差変数(residual. variable)である.. 以上のはかは,パス・アナリシスほ,一般の重回帰分析とほぼ同じと考えてよい。そこ で,図2・2の因果モデルにもとづき,それぞれの内生変数(endogenous. variable)につい. て,因果的優先順位によって逐次的に回帰方程式(重回帰方程式)を立てれば, X8. (2・4). X4 X8. -. P$1Xl+p8皇X2+p8RR3. -. P41Xl+p4乏X2+p.BX8+p4RR4. -. P61Xl+p6皇X2+p与8X8+p84X4+p6RR8. となるoここで,各変数ほ標準化されているから,. 2変数間の直接的因果関係の大きさを.
(9) 9. 社会移動の数理分析. 示すパラメータPijも,一種の標準化された偏回帰係数である.このPi]は,直接パス Riほ残差変数であり, 係数(direct path coefncient)とよばれるoまた, piRほ残差パ ス係数(residualpath coefRcient)とよばれる.これらのパラメータほ,通常の重回帰分 析の手続きによって求めることができる16). 3式にX8を,それぞれ両辺 っぎに, (2.4)式の第1式にXlおよびX2を,第2, に乗じて期待値をとれば,各変数ほ標準化されているので,. (2.5). ここで,. (2.5)式の第1,. (2. 6). r8さ-. r13. -. P81+p8乞r12. r23. -. P81rl乞+p8芝. r84. -. P41r18+p4望r28+p48. r36. -. P占1r18+p8乏r23+p58+p古4r34. 2,. 3式を第4式に代入して整理すれば,最終的には,. P83+pb4P48+p古1P81+pb2P32+pさ4P41P81+p84P4乏P8乏 + p51rl乏P82+ p6急r乏1P31+ p紬P41rl皇P8乞+ p古4P4皇r21P81. が得られる。 ところで,この(2.6)式の右辺と,図2・2の因果モデルとを比較してみると,各項は, 変数間の因果関係によってX8とX6との問に引き起こされた関係の経路(path)に対応 し,その関係の大きさを示していることがわかる。ここで,第2項以下の各項は,複合パ 2変数間の単純相関関係ほ, path coefncient)とよばれる.つまり, ス係数(compound 因果経路(causal. path)別の関係に分割されるのであるo 2変数間の単純相関関係は,直接効果(directeirect), また,これを因果的に解釈すれば,. 間接効果(indirect effect),擬似効果(spurious effect)の三つに分割されるといえるo XB?X6という注目する2変数間の すなわち, (2.6)式において,直接パス係数p占Bは, X8→ X8のX8に対する直接効果の大きさを, p84P43ほ, 直接的因果関係,すなわち, X4を経由した間接効果の大きさを表わしている18'.さらに残りの各項 X2を経由した関係,すなわち,先行 Xsよりも因果的に優先(先行)する変数Xl,. x4→X8という, 紘,. 変数によって説明される一種の擬似効果といえるo 以上のことをまとめれば,. く単純相関係数〉-〈直接パス係数〉+く複 合. パ. ス. 係. 数〉. -く直接効果〉+く間接効果〉+く擬似効果〉 効 果〉 (total effect)+く擬似効果〉 -く全 となる。変数間の相関関係を,いくつかの因果関係に簡単に分割できるという点が,パ ス.アナ1)シスの一番の特徴であり,長所である1T)o 職業的地位の獲得 社会の中で,人々は,さまざまの職業的地位を占めているけれども,その職業的地位を 獲得する過程ほ,どのような要因のどのような規定を受けているのだろうか。富永健一は, 1967年,やほり東京都28区の成人男子を対象にした調査データに,パス・アナリシス を適用して,この職業移動の過程分析を行なっている18)o.
(10) 10. 原. 純. 輔. ここでの究極的従属変数は,今度は,職業経歴の′<ターンでほなく,現在の職業的地位 であり,これを含めた5変数について,図2.2の因果モデルが構成されている.先に述 べたごとく,各変数ほ間隔尺度値でなくてほならないが,職業的地位(現職,初職,父職) についてほ職業威信スコアが,学歴(父,本人)についてほ最終卒業学校のレベルによっ て適当な数値が与えられている。図2.2の矢印上の数字は,こうして求めた,全サムプ ル(個人)に関する直接パス係数であり,矢印の太線,細線,破線の区別ほ,係数の大き さを示したものである。. この結果から,つぎのような事実が指摘できるだろう。 (1)現職に対する直接効果(直接的影響力)ほ,初職によるものがとびぬけて大きく, 最初の職業的地位の違いが,現在の職業的地位を規定する度合は,極めて大きい。 (2)学歴の現職に対する直接効果ほ,極めて小さく,ほとんど無視しうる.学歴の直 接効果は,初職獲得時に集中的にあらわれる。 (3)父の学歴の初職および現職への直接効果ほ,ほとんど無視しうる.父職の初職, 現職への直接効果も,比較的小さい。これに対して,この二つの要因の,本人の学歴への 影響は強い。 (4)いずれの内生変数に関しても,残差パス係数が極めて大きい。これは,この因果 モデルが変数間の因果関係をうまく説明しえていないことを示している。しかし,富永ら 紘,これについて,職業的地位の獲得過程での,因果モデルにとり入れられた父親の社会 的地位(職業や学歴であらわされる)や本人の学歴という,後になって取り替えることが 不可能な各個人の属性の影響が比較的小さいこと,すなわち,職業経歴の中での各人の業 績や能力の影響が大きいことを示すものだ,と主菜している19)。 以上の点については,しかし,直接効果(直接パス係数)のみにもとづく指摘であって, 間接効果についてほ考慮されていない。また先の職業経歴パターンの分析でも明らかにな った,サムプルの年齢の違いによる,初職→現職の移動期間,および,年代的背景の影響 Al (20-29才), が除去されていない.そこで,サムプルを年齢によって, A雪(80-39 才), As. (40-54才),. A.. (55才以上)の4グループに分割して,パス・アナ1)スを行な. い,現職への効果に関してまとめたのが表2.2である。 この結果から,先の全サムプルについて指摘した事実ほ,以下のように特定できるだろ う。. (1)いずれの要田についても,. A.は,他の3グル-プにおいてみられる一貫したパ A4グループに関しては,退職,および,それに伴なう. ターンから外れているo これほ, 転職という,一種の撹乱要因が入ってくることによるのであろう.そこで,ここでほ, Al-A8に特に注目することにする。 (2)初職の現職への効果ほ,いずれの年齢層についても大きい。しかし,年齢の上昇 とともに,その効果は小さくなって行く。. (3)学歴の現職への直接効果は,全サムプルについてほ,無視しうる程小さかった。 しかし,年令層の上昇とともに大きくなり,. A8,. A4についてほ,決して無視できない..
(11) ll. 社会移動の数理分析 表2.2. デ-メ:. 年齢:. Al. 職業的地位獲得-の効果比較. 1967年,東京都23区,男子793人 (20-29歳), A乞(30-39歳)I. A8. (40-54歳),. A4. (55歳以上). また,間接効果(X8→X.-XB)を含めた全効果も,いずれの年齢層でも大きく・しかも・ 年齢の上昇とともに増大する。 (4)父の学歴および職業の現職-の直接効果ほ,いずれの年齢でも小さいoしかし, 全効果は,年齢の上昇とともに増大し,特にABの場合には,無視できさいoなお,表に は示さなかったが,これら2要田の本人の学歴-の効果には,年齢による差異がほとんど みられなかった。. 以上の点から明らかなように,年齢層別にみると,現職に対する父親の社会的地位や本 人の学歴など,いわゆる属性的要因の効果は,年齢の上昇とともに増大し・特にA8にお いて大きくなることがわかる。しかし,その場合でも,それ以外の要因による残差パス係 数ほ, 0・8内外とかなり大きく,わが国の都市社会が,世襲社会とか学歴万能社会という ような状態ではないことは,明らかであろう。.
(12) 12. 原. 純. 輔. §3・社会移動の数理モデル a)士族と平民の社会移動 マルコフ連鎖と社会移動 社会移動の分析のための数理モデルとして,もっともなじみ深いのは,有限マルコフ連 鎖モデルであろうo表1・1の社会移動表におけるfijを,それぞれ行和恥で割れば, 2時点間の推移確率行列が得られるが,この推移確率行列が時間的に不変であるとみなせ るならば,社会移動過程をマルコフ連鎖として扱うことが可能になる。そして,マルコフ 連鎖の定理醐を適用して,将来トレンドや不変分布などを求めることにより,その社会に おける社会移動の特徴を,記述し予測することができるだろう21'. 例えば・表3・1ほ,. 1965年の全国調査データから得られた,世代間職業移動の推移確. 率行列と職業分布比率の予測値であるoここでは,. (1)ノンマニュアルな職業従事者の比 率が増大し続けるのに対して,農林漁業従事者の比率は急激ほ急激に減少する, (2)マニ ュアルな職業従事者の比率ほ,いったん増大し,その後,漸減,横ばいに転ずる,という 興味深い事実が予測されている。 しかしながら,マルコフ連鎖モデルは,社会移動の数理モデルとしては,いくつかの重 大な欠陥をもっていることに注意せねばならない22'oそれらのうち,特に重要な点ほ,以 下の二つである。. (1)推移確率丁定の仮定. マルコフ連鎖でほ,時点の推移確率が時間的に不変である ことを仮定しているoこの仮定ほ・特に世代間移動に関してほ,まったく非現実的である。 表3・1職業分布の将来予測 (1)推移確率行列 --一T. l. ■. l. _. .__. l (2)将来分布比率. データ:. 1965年,日本,男子2158人.
(13) 13. 社会移動の数理分析. 1世代は紛30年と考えられるけれども,そ. 1段階の間隔,. なぜなら,世代間移動でほ,. の推移確率が何段階′(世代)にもわたって不変であるとは,とても仮定しえないからであ るo. (2)移動過程の内生的決定. マルコフ連鏡モデルによれば,社会移動過程はもっばら 内生的に決定されると仮定する.これほ,例えば職業移動であれば,いわば職業市場にお ける供給要因のみを考慮して,需要要田をまったく無視していることになるo. しかし,令. 日のいかなる社会にあっても,程度の差はあれ,まだ,職業需要が無限大でそれを考慮す る必要がないという状況ではない.むしろ,職業分布は職業移動にとって外部から与えら れる,つまり,職業分布によって推移確率が与えられると考えるべきである。 ただし,以上のこ′とから,社会移動にマルコフ連鎖モデルを適用することが,すべて無. 意味であるということにほならないだろう。われわれほ,むしろ,つぎに紹介する分析例 のように,その目的を限定することが重要なのであり,そのことによって,充分,有意味 な結果を引き出しうると考えている。 士族と平民の社会移動. わが国において,封建的身分制度が廃止されてから,約100年が経過し,身分制度の 影響ほ,現在でほ,まったく存在しないように思われるoしかし,種々のデータは道の事 実を示しており,士族の子熟ま平民の子孫に比して,階層的に上層に偏っている.安田三 郎は,こり族籍の社会階層に対する影響が,明治百年の今日でもなお存在しているという 事実の説明の一つとして,マルコフ連鎖モデルを用いている23). ここで,明治維新から世代後の時点で,上層に所属する老(添字h)と下層に所属する 老(i)の割合を,士族出身者(8)および平民出身者(c)について,別々の確率ベクトルで あらわすならば, Ys'n) Yc(n). -. -. 【vhs(n),V古G(n)】 [vhc(n),VIc(n)】. ただし,. (3.1) であり,ここで問題は,. Phs(n)+vIs(n). -. vhe(n)+vIc(n). -. 1 1. vh8(n)とvhc(n)との大小ということになるo. 次に,身分差別廃止後の,両出身者にとって最も平等な社会移動の状態を想定してみよ うoそれは,すべての個人が士族出身,平民出身にかかわりなく,同一の推移確率行列 子の階層 ′-・-ノ\------ヽ. 上層 P-父の階層. 下層. に冨[…: pphl;]. に従って移動する場合である。このとき, (3.2). Ys(n+1). -. Ys'n)P.
(14) 14. 原. 純. Yc(n+1). 輔. TTe(n)P. -. という関係が成立する.. さて,社会移動においてほ,一般に,地層からの移動率(流入率)よりも,自層の固定 率の方が大きい.つまり,推移確率行列Pにおいて, (8.8). phh>plh. が仮定できる.なお,ここでは,当然,推移確率行列Pが一定という,現実には成立し ない仮定が設けられるけれども,. (3・3)式の仮定が成立する限り,議論の本質に影響ほな. い。そして,この仮定は,ほとんどあらゆる社会におい七,経験的に成立する。. とこちで,明治維新直後を初期状態VG'0', TTc(0'とするならば,前時代における武士の 地位の優位性から, (3・4). vh8'0). >vhc(0). であったと考えられる。ゆえに(3.1)式より, (3・5). vhs(0). >0. -vhc(0)-vlc'0)-v.s'0). この(3・5)式の第1辺,第2辺に,. (3.4)式を辺々相乗ずると,. (vhs(0)-vhe(0). ) phh > (vIc(0) -v.B(0). ) plh. これを整理して, (3.6) ところで,. vh8(0)phh+VIB(0)plh>. vhe'0)phh+Plc(0)plh. (3.2)式より vhs(1) vhe(1). -. -. vh8(0)phh,+vIB'0)plh vhc(0)phh+vIc(0)plh.. これを(3.6)式に代入すれば, (3.7). vhs(1). >vhe(1). が得られる。つぎに,. (3A)式に代えて, (3.7)式を初期条件としてvh.(2)とvhe(2)の大 小を比較するという作業を繰り返して行桝f, (8.3)および(3.4)が成立する限り,一般 に, vh8(A). >vhe(n). となり,仮に推移確率行列Pが士族出身であるか平民出身であるかに無関係であっても, 士族出身の方が上層に属する老の比率が高くなることを否定できないのである. しかし,段階(経過低代)数nが十分大きくなれば, 領の定理により,. Vs(n), TTe(A)ほ,有限マルコフ連. TTh'0), Vc(0'とは無関係に,共通の不変分布に近づくから,士族と平民. の間の不平等が消滅することほいうまでもない。. ところで,この不平等の消滅の速さ,つまり,不変分布-の収束の速さは,. Pの最大の 固有根1lとその次の大きさの固有板l2の比l2/llの大きさに,主として依存するoマル コフ連鎖の状態数が2(h,i)のときにほ, ).1-1 l乏-. であるから,. Plc-Phl. -. Phh-Plh.
(15) 15. 社会移動の数理分析 1乞/1l -. Pll-Phl. Phh-Plh. =. ここでl2/}lが最小となるのは, phh=Plh. pll-Phl,したがって, の場合である。すなわち,. PEhl;] p-[ZI:. という,親の地位(上層,下層)に関係なく,子の移動の機会が完全に均等な,完全平等 移動の社会が実現されれば,わずか1世代経過の後には,士族出身,平民出身の間の不平 等は,消滅するのである。 b)教育と社会移動 移動パターンの外生的決定 前節における二つの多変量解析でも明らかにされたように,現代社会の社会移動にとっ て,本人の教育(学歴)は,非常に重要な要因となっているo ところで,この教育の重要性は,次の二つの側面から考えることができるo第一に,教 育は,現在の地位配分が個人の社会的出自(親の社会的地位)と直接的に結びつくことを 妨vf,,各人の能力に適した訓練と配置とを可能にする.もし,学校教育体系がまったく存 在しないとしたら,それは,親の社会的地位によって決定的に制約されるだろうQしかし, 第二に,教育がその社会における地位配分を決定的に制約するという状況は,学歴(偏重) 社会として非難される。教育程度(学歴)は,個人の多面的な能力の一面を表わしている にすぎない。にもかかわらず,それが重視されすぎるということは,学歴が親の社会的地 位と同じように,一種の取り替えることのできない属性として,本人の能力とはかかわり. なく,地位配分の原理となっているからであるoまた,この教育を受ける機会が,琴の社 会的地位に決定的に制約されているとすれば,教育ほ,むしろ,個人の社会的出自と現在 の地位配分との,媒介要因に転化するであろうo ここでほ,この教育と社会移動との関連を.ブ-ドン(Boudon,. R・)が提唱している数. 理モデル24)を用いて,検討してみようo. (1)世代間移動. いま,簡単のために,社会的地位,教育程度とも,. 〔高〕〔低〕の2. カテゴリーから成っているとすれば,父の社会的地位(父地位),その子供の教育程度(千 (1) (2)の二つのク 教育)および社会的地位(子地杜)の関係は,基本的には,表3・2 ロス集計表によって表わされる.ここで,当然, (3.8). a2・-b・2. al・-b・1,. である。 ここで,. A` Bt. -. 【ai}]. at. -. [ai.]軸. [bi5]. bt. -. [bi・]dig. ,. -. ,. と行列で表示すれば(但し,添字tは第t世代を表わす),父地位→子教育の推移確率行 列凡,子教育-子地位の推移確率行列S,は,それぞれ,.
(16) 16. 原 表3.2. 純. 輔. 父地位×子教育×子地位. (1)父地位×子教育. (比率). (2)子教育×子地位. (比率). Rl. at 1AI. -. St. bt-lee. -. となるoしたがって,父地位-子地位の世代間移動の移動パタ-ソ(推移行列) (3.9). pl. -. -. -. Ptは,. atRtSt. at(a&ー1At)(bt 1Bt) Atbt 1Bt. となるoこの(8・9)式ほ,既にカールソソ(Carlsson,. G.)によって提示されていたもの. である空6)o. (2)移動パタ-ソ. 先のマルコフ連鎖モデルでほ,移動パターン(推移確率行列). は,内生的に決定されることを仮定しており,それが,社会移動のモデルとしての重大な 欠陥となっていた.そこで,このモデルにおいてほ,移動パタ-ソPn具体的にほ, Btほ,需要あるいほ供給要因としての,地位分布および教育(程度)分布によって決定 されるものとするo. いま,それを, (3.10). At. -. Bt. -. g(at,a'l) h(bt,b′t). と表現することにする。但し,ここで, a古′. b{. -. -. 【a.i]dig [b・i]dig. とする。. AゎBtの′iターン決定のメカニズムほ,次のとおりである.先ず, (i)全ての個人は,可能ならば,より高い教育,および,より高い地位を得たいと考. P. Aゎ.
(17) 17. 社会移動の数理分析 えている,. (ii)しかし,より高い父地位,より高い教育を保有している者の方が,より高い教育, より高い地位の獲得にあたっては,相対的に優位にある, ということを飯定する.佼定(ii)については,具体的内容が問題になるo. ここでは・例. ぇばAさに関しては,それを,父地位が〔高〕である者に対して,一定の比率xで子教 育の〔高〕が先ず確保されて,. α11が決定され,子教育〔高〕の残り,すなわち, α・1-αll. が,父地位〔低〕の者に割り当てられる,と考えることにする。 ところで,父地位〔高〕の者,つまりα1・が,管,同じ確率で子教育〔高〕に入る可能 al・より大. 性を持っているかというと,そうでほないo子教育〔高〕の収容能力a・1が, きい場合(a・1>al.)には,問題ほなく,. xnl・に子教育〔高〕が割り当てられるoしかし・. α1.がα.1の収容能力を上回る場合(臥1<α1・)にほ, α1.-α・1. ほ,必然的に子教育〔低〕が割り当てられるので, -. a;‡al.-(al.-all)). Xa・1. に子教育〔高〕が割り当てられることになる。 以上をまとめれば, all. -. Xmini. (al・,a・1). 父教育分布. a′t-1-bt-1. 第 ト1世代 b′ト1. 父地位分布(父本人の). Ft∼1・・・・・.・・・・・・・.・・・・・・..I.'''. 第t世代. 子. 地. 分. 位. i. Ft・. b't. 布. ● ■ ■ ■. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. 図3.1社会移動パタ-ソの規定要因間の連関. ● ●. ●. -. ●、■. -. ●. ●. ●. ■. ●. ●. ■. ■ -. ●.
(18) 18. 原. 純. 輔. Btについても,同様に, bll. -. y. mini(bl"b.1). となる。 そして,. all,. bllが決定すれば,他の部分も自動軌rこ決定されるので乏6',結局,. (3.10). 式ほ,具体的には, (3.10). a(i,ll. ,. Xmini. (a(t,1・・a(i,・1). y mini. (a(i)1,,a(t).1). =. b(i)ll. -. を決定することに外ならない。 (3)時間的要因 bゎb'lと,. a′". 移動パターンPt-Pl十1の変化を説明するために,すなわち, a*1,. (i)人口再生産率 ここで,. at,. bt'l,. a;・1を関係づけるために,以下の3要因を導入するo a;・1, Fl-[f(i)i/f(i)】dig. f't'iは地位(i)別人口再生産率,. f'l'は総人口再生産率である。地位により, 人口再生産率に差異があれば,父本人の地位分布比率b;11と,その子供の社会移動の出 発状況としての父地位の分布比率atとは,等しくほならない. (ii)生徒収容数増大率. Et. [e(t)i/e(i)]dig. -. ここで,. eHiは,教育水準(i)別生徒収容数増大率, これほ,社会全体としての学歴分布の変化を説明する。 Yt (iii)地位成員数増大率 [v(t"/v(i)]dig. eくt)ほ総生徒収容数増大率である。. -. ここで,. v't)ぜは地位(i)別成員数増大率, v(わほ総地位成員増大率であるoこれほ,育 要要田としての地位分布比率b'の変化を説明するo具体的には,職業需要の変化などを 考えればよい。 以上と他の要因との関係ほ,図3.1に示されている.すなわち B't_1Ft_1 bt_1Et_1 b'l_1Vt_1. これらを,. -. -. -. a&. bt. -. a′l. b't. (3.10)式に代入すれば, Al. (8.ll). gib;_1Fl_1,bt_1Et_1‡ h(bt-1Et_1, bl_1 Yt_1). -. Bt. -. となる。また,これは, i-1. Al. -. H. t-1. F."a(o). g‡b;o) h(a(., n=o. t-1. Bl. -. H. n-0. とも表わされるoここで,. F,. E,. En,a(.). H n=oL t-1. H n=o. V'が,時間的に不変と仮定できるならば. At Bl. -. -. g(a;.)Ft,a(.)El) h(a(o)Et,a(.) Vt). となる。. さらに,これらの結果ほ,. (3・9)式に代入して用いることができる。.
(19) 19. 社会移動の数理分析. 教育水準の上昇と世代間移動 この移動モデルの適用法は,ブ-ドンにより,いろいろ示唆されている2ア).ここでは, 地位構造の中での,教育構造の急激な変化,具体的には教育水準の急上昇と,世代間移動 との関連を検討してみよう。. ここで,社会的地位の指標としてほ,職業をノンマニュアル,マニュアル(農業を含む) に二分して用いることにする。そして,全体的にみて,ノンマニュアルの方を高い地位と 考えることは,一応,許されるであろうoまた,このノンマニュアルな職業につながる教 育程度(学歴)として,高校卒以上を考え,中学卒までとで二分する。図3・2に太い曲 線で示されているのは,わが国における男子のノンマニュアル比率および高校進学率の推 定値である望8)o これらの地位構造,. 、教育構造を所与として,先の移動モデルを適用するわけであるが, ここでは,簡単のために, 表3.3. (比率). 1930年-1960年の世代間移動. ). 師L@*尊. 固 1)Vtt' )ソづシナ. 5. (2). (3). ∩. o19001950西暦年.2000. 園3.2. H. ■■■■■-∩. 世代間の地位連関QTの変化.
(20) 20. 原. 純. 輔. F-I. (但し, Zほ単位行列) と仮定する.これにより,ある世代の地位分布b{は,その子に関する父の地位分布a1.1 bE,. に等しいとみなせる.また,. bアで表わされるb,. b'の変化ほ, a, b'の推定値が得 られているので,適当な時点の値を,直接,読みとればよい。以上の結果,ここでの考察. にほ,. (3・11)式でほなく,. (3.10)式が用いられることになる. 1世代を約30年とすれば,例えば, 1980年における地位分布,その子 の世代の1960年における地位分布は,図3.2のそれぞれの時点のノンマニュアル比率 さて,いま,. から得られるo とめられるoまた,. そして,これらと世代間移動のパタ-ンとの関係ほ,表3.8のようにま A,. Bについての(3.10)式ほ,一般にT年に関してほ, ^T. -. g(aT_80,a'T_30) h(bT_80,b'Tl となり,これを(3・9)式に代入して,表3.3のpiJを要素とする移動パターンPTが得 BT. -. られる。. この移動.'ターンにおける,父と子の地位の連関ほ,ユール(Yule,・ Q,すなわち, QT-. G.U.)の関連係数. PllP2忠一Pl色P21. PllP皇乞+ pl皇P丑1. によって測定する.図8・2に折れ線で示されているのが, 10年毎に求めた, QTの変化である.. T-1910-2000年について,. ここでの考察ほ,以下のようにまとめられるだろう。 (1)父地位→子教育,子教育-子地位の関連が最大の場合,すなわち,. a,. yがとも. に1の場合を考えてみよう(なお,ここでほ,簡単のために, a,yほともに一定とする。 以下でも同様である).このときのQの変化を示したのが,図3.2の折れ線の(1)であ るoここでのQほ,予想どうり高く,連学率とほぼ平行な変化をするが,進学率が上限 に近づき,上昇のカーブが緩くなると,その子の世代からほ,急速にQが低下すること がわかる。. (2)上の(1).ほ,非常に極端な例であったが,より現実的な, いう場合のQの変化をみたのが,.折れ線の(2)であるo. a-.70,y-.80と. ここでも,. (1)の場合とほぼ. 平行な変化を示すが,完全に平行でほない点が注目されるoなお,ここでも,途中からQ は低下するが,このときには,父の地位の子の地位に対する影響は,ほとんど無くなる。 (3)上の二つの場合のQの変化にほ,地位構造,教育構造の双方の変化の影響が考 えられるoそこで,社会的地位を,職業でほなく,単なる上層,下層として,その分布を 常に.5つまり, (一定) とした場合のQの変化をみたのが,折れ線の(3)である(但し, al・-a皇・-b・1-a.2-.5. こでほ,. a-.7,y-.8)o. Qほ,ほとんど0の点から,はぼ進学率の変化と平行して上昇するが,進学率が. 上層比率(・畠)を越えた世代の子の世代では,. Qほ再び0まで低下し,その後,また急上. こ.
(21) 21. 社会移動の数理分析. 昇することが明らかになった。 以上,ここで検討したのは,極めて単純な移動モデルであったが,地位および教育力テ yの変化の導入などを行 ゴ1)一数の拡大,サムプルの年齢層による分割,パラメ-タX, なうことにより,さらに複雑な展開が可能となるだろう29). 注. 2). T.B.,. Bottomore,. Elites. and. Society,. C・A・. Watts・. 1964,綿貫譲治訳,エ1). 岩波書店, 1965参照。 3). Packard,. Ⅴ., The. Status. Seekery,. 7). The. W.E.,. Mcore,. L., The. Guttman,. Impact. Quantification. Personal. predi6tion. Ad3・u8舌mont,. of. a. Prentice-Hall・. 1971;. 1965,井関利明訳,産業化の社会. of Attributes, Research Science. of 8)数量化理論については,詳しくは・安田三郎,前掲書(1969);竹内 析の基礎,東洋経済新報社, 1972などを参照o 1974,. p・. 9)職業研究所,日本人の職業経歴,職業研究所, 10)販売のうち,小規模企業従業者ほ,マニュアルに含めたo ll)クラスタ-分析については,安田三郎,前掲書(1969)参照o Annals Coefncients・ of Path 12) Wright, S., The Method 1934,. Struoture8. R・,Mathematical. Boudon,. in. Class. Social. -トと社会・. 薫訳,地位を求める人. 1959・野田一夫・小林. McKay・. 1960参照。 of lndustry・ 的影響,慶応通信, 1971参照o 5)安田三郎,社会移動の研究,東京大学出版会, Social Mobility, EIsevier, 1973参照o of 1969参照o 6)安田三郎,社会統計学,丸善, 々,ダイヤモンド社,. 4). 1971・. 進編,階級と地域社会,中央公論社,. 1)富永健一,社会移動の過程分析,富永健一・倉沢 pp. 133-89参照。. P・ Horst. Council,. 1941,. (ed・)I The pp・. 319-48o. 啓・柳井晴夫,多変量解. 4o. 0f. Statisties・. Mathematical. 161-2150. pp.. 13)すべての変数間に必ずしも直接的因果関係が存在しなければならないわけではないo 14)ここでは,太線,実線,破線等の区別は,無視してよいo 15)残差変数も標準化されていることを仮定しているので,残差パス係数piRは, piR. -ノ珂. Xiの墓相関係数であるo で与えられる.ここでriは, Jここでの場合のように,一つとほ限らないo 16)間接効果にあたる項の数は,必ずしも, 純輔・安田三郎,社会学における統計的手 17) ′ミス・アナリシス適用上の問題点についてほ,原 213, 1973, pp・ 119-36参照o 法の展開,応用統計学, 18)富永健一,前掲論文。 Duncan, The AmerioanOooupational Blau, PIM・ and O・D・ p・ 151; 19)富永健一,前掲論文, Structure,. Wiley,. 1967o. 20)マルコフ連鎖の定理については,例えば, chain8, Van Nostrand, 1960参照。. Kemeny・. J・G・. and. J・L・. Smell,. Finite. Markov. 21)適用例については,蘇純輔,マルコフ連鎖と社会移動,安田三郎鼠数理社会学,社会学講 1973, pp・ 79-114参照o 座17,東京大学出版会, 純輔,前掲論文,参照。 22)原 23)安田三郎,前掲書(1971)0 Boudon, R.,前掲書. Strueture・ GWK Gleerup, 1958・ Social G= Social Mobility and 25) Carlsson, 26) 2×芦クロス集計表の自由度は1であるからoカテゴ.)-数が増大すると,このように単純には 24). いかない。. 27). Boudon,. R.,前掲書.. 5・.
(22) 22. 原. 純. 輔. 28)具体的な推定方法についてほ省略するが,資料としては,総理府統計局編,わが国の人口,紘 理府統計局・ 1972;総理府統計局罷職業別就業者構成の時系列分析,総理府統計局, 文部省,学制百年史,帝国地方行政学会, 1972;富永健一,社会移動の趨勢分析1955-1965 年,社会学評論, 21-1, pp. 2-24などを用いた。 29)本稿は,加筆補正のうえ,田中靖改編,人間科学の数理,筑摩書房'1975に収録の予定である。. 1974;.
(23)
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