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IRUCAA@TDC : 東京歯科大学の「がん治療」への取り組み

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

東京歯科大学の「がん治療」への取り組み

Author(s)

金子, 譲

Journal

歯科学報, 109(2): 126-129

URL

http://hdl.handle.net/10130/1859

(2)

はじめに 「がん(悪性新生物)」による日本人の死亡率は 30.4%(平 成18年)で あ り,死 因 と し て は 心 疾 患 (16.0%)と脳血管障害(11.8%)の2∼3倍で,第1 位となっている。とくに30歳代から年齢が高くなる にしたがって「がん」の占める割合が増加する。 「がん」は医療人としての重要な疾患であると同時 に,われわれ家族のまた自身の重大な疾病でもあ る。 国は平成18年6月に「がん対策基本法」を法律と し,がん対策を総合的かつ計画的に推進する施策を 開始した。東京歯科大学市川総合病院(安藤暢敏病 院長)が平成20年2月に千葉県の推薦による「千葉 県がん診療連携拠点病院」に厚労省から指定を受け たのは本法律に基づいたことである。さらには,東 京歯科大学大学院歯学研究科(栁澤孝彰研究科長)が 平成20年1月に文科省から「がんプロフェッショナ ル養成プラン」に選考されたことも本法律の目的の ための施策の一環である。 東京歯科大学は幸いにして,「がん」に対するこ のような国家的な政策の一端で直接貢献できること となった。ここに至ったのは前者では市川総合病院 における医療の質向上への歴代病院長はじめ教職員 の絶え間ない努力によって地域住民の信頼が得られ ていたからである。後者は本校口腔外科学講座にお ける診療・研究での長年の実績があったからであ る。上記「拠点病院指定」と「がんプロ選考」とに 先駆け,大学は市川総合病院に「東京歯科大学口腔 がんセンター」(山根源之センター長)を平成18年7 月に開所した。「口腔がん」においてこれら3者が 互いに強い連携をもって進むことが今後の「口腔が ん」医療と大学の発展につながるに違いない。 本特集にあたって,学長として関与した「口腔が んセンター」設置と「がんプロフェッショナル養成 プラン」採択までの前段階,つまりこれらを行おう とした大学の意思を記しておきたい。 ⑴ 口腔がんセンター 口腔がん治療のセンター化構想は,野間弘康名誉 教授の現役時代に顕著に示された本大学口腔外科学 講座の優れた診断・手術と,不幸にも他臓器への転 移によって必要となった医学的管理とが,一貫して どちらも質のよい医療として患者さんに提供できる ための方策として考えられたものである。術前に患 者が有している全身的な疾患の問題が,市川総合病 院に口腔がんセンターを設置する主因ではなかっ た。それは,私の千葉病院での現役20年間での経験 により,患者の基礎疾患のために最終的に全身麻酔 の適応とならなかったり,術後に原疾患が増悪して 難儀した症例は私の記憶に無いほどであったからで ある。この問題は,千葉病院の内科,口腔外科,そ して歯科麻酔科の協調により,周術期管理に大きな 問題が残らなかった実績があったからである。 3病院に来院する口腔がん患者総数は年間100例 を越すので,これらを一元管理することが,東京歯 科大学の口腔がん治療の進展に資するに違いないと いうのが第2の理由である。しかし,3施設は,そ れぞれの施設の状況に適合させた診療方式を既に作 り上げているので,これらのうち適切かつ望ましい 事柄は残して既述の大きな目的に沿った運営方式が 好ましいと考えた。つまり,口腔がん患者が常に集

1.東京歯科大学の「がん治療」への取り組み

金 子

学 長 126 ― 24 ―

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学的医療を必要とするわけではないので,千葉病 院,水道橋病院のがん患者をすべてセンターで行う ということではなく,センター機能が必要とされる 患者の適応を決めておけばよいわけである。特に口 腔外科学講座としては千葉病院での臨床の質の維持 は,医局員・学生・その他の教育・研修のためにも 重要である。これは後継者の獲得・育成に欠かせな い。 以上は,市川総合病院に「口腔がんセンター(仮 称)」の設立に当たっての学長としての考えであっ たので,その後学長就任にあたって設置した3病院 長会議(石井拓男千葉病院長,畠 亮市川総合病院 長,柿澤 卓水道橋病院長)の第1回目(平成16年6 月10日)に口腔がん治療に関することを議題として もらった。3病院長会議は,直ちにワーキンググ ループ(「口腔癌等の治療に関するワーキンググ ループ」座長畠病院長)を作り,この答申を平成17 年1月に学長が受けた。本答申では現状の問題点と 今後の取組み,特に千葉病院,水道橋病院に来院し た患者を口腔がんのセンターで手術・治療をするに あたって,口腔がんの病態や全身状態に関する基準 が提示され,さらに検討するとされた。 そして,平成17年1月に口腔頭頚部がんセンター (仮称)設置を第494回講座主任教授会に学長が諮り 了承を得た。 平成17年6月からは「東京歯科大学口腔頭頚部が 図1 千葉日報(平成18年7月1日付) 歯科学報 Vol.109,No.2(2009) 127 ― 25 ―

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んセンター(仮称)開設準備委員会」が市川総合病院 を中心に千葉病院,水道橋病院メンバーで構成され 山根源之委員長のもと熱心な討議が重ねられた。セ ンターの名称は第1回開設準備委員会では「東京歯 科大学口腔頭頚部がんセンター」と仮の会議名にさ れたが,頭頚部に広げた「がんセンター」にするか どうかは第1回の席上同委員会での討議議題として もらった。早々にセンターでの対象は「口腔がん」 患者と決められた。このため第3回の同委員会(平 成18年3月27日)では,「東京歯科大学口腔がんセン ター」に委員会の名称変更がなされている。また, 髙野伸夫都立大塚病院口腔科部長がこの年の4月か ら本学口腔外科学講座教授となり口腔外科診療科部 長として就任したので,内山健志教授と交代し新任 委員となり,柴原口腔外科学講座主任教授とともに 同委員会メンバーとして活動した。 平成17年11月にはセンター施設の見積もりも提出 され,ハード,人員等のソフトの準備も進み,平成 18年7月1日に「東京歯科大学口腔がんセンター」 は山根源之センター長,2名の常勤口腔外科医,1 名の歯科衛生士のスタッフとして診療を開始した (図1)。なお,東京歯科大学としてあるのは,市川 総合病院に設置してあるが千葉病院,水道橋病院の 術者を受け入れることを同センターが前提とした診 療体系を意味するからである。そして,その7月5 日には,見学会,開所式とともに懇親会が畠前病院 長のもと市川総合病院で行われ,今は亡き井上 裕 前理事長が出席され熱心に見学された(図2)。 同センターは開所2年半になり,多くの他科医師 の協働によって実績を積んでいる。予測された,ま た新しく出てきた問題も多いと思うが,「口腔がん プロフェッショナル」の臨床拠点ともなりその役割 は増している。設置趣旨を外すことなく運営してい ただきたい。歯科医師が主体となる口腔がん治療と 咀嚼,嚥下,発音,審美にかかわる機能形態再建な どにおいても市川総合病院の医学的機能を生かした 中で,口腔がん患者の QOL 向上のために集学的医 療を実践し,歯科医学・歯科医療としての oncho-logy の追究・確立をしてもらいたい。 ⑵ 口腔がんプロフェッショナル養成プログラム 平成19年4月12日付けで「平成19年度が ん プ ロ フェッショナル養成プランの公募要綱の変更」が国 公私立大学長宛に通知された。変更は「[対象]医 学の大学院博士課程(修業年限4年)の学生への教育 を対象とした取組」の箇所の「医学の」が「医学・ 歯学の」となったことである。平成19年度文部科学 省予算に本プログラムが新規に計上され,平成19年 3月20日に本プラン等の公募要領説明会が開催され た。本学から千葉病院関係者が出席したが,歯学研 究科が除外されているので応募は無理だとの報告で あった。 しかし,口腔がんは歯科領域として現に対応され ていて,東京歯科大学では「口腔がんセンター」を 設置して,その質向上に医科歯科協働して取り組ん でいることからも本プログラムに参加が叶わないも のだろうかという思いが筆者には強かった。本校の 永井隆夫事務局長はこの意をもって文部科学省担当 課である医学教育課に面会し,歯学のなかでの口腔 がんの教育研究診療の実態等を説明し,公募要領上 で歯学を除外しているのは政策上合理的な理由がな く,不適切であるので要領を変更し,歯学研究科に ついても医学同様に対象とされたい旨の申し入れを 行った。これを文部科学省が受けての上記の変更通 知になったと筆者は解釈している。 そこで,本プログラムへの対応に関して学長,研 図2 口腔がんセンター見学会 (平成18年7月5日) 右端 故 井上 裕前理事長, 左から2人目 畠 亮前市川総合病院長 本学におけるがん治療の取り組みに関する現状と将来 128 ― 26 ―

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究科長および口腔外科学講座,事務局等の下で検討 を重ねた(平成19年4月2,6,20日)結果,口腔が んで歯科がイニシアチブを取れる対応をするのが適 切であるということで,平成19年度申請を目標に パートナーの大学について検討し,さらにある看護 大学学長にも面会をしたが,検討開始が遅れていた こともあり,いずれにも乗り切れず公募締め切り (平成19年5月8日)前に申請を断念した。 本プログラムへの申請状況は単独2件,共同22件 で,選定はすべて共同申請の18件56大学と5月末に 発表された。 平成19年暮れに文部科学省より新規参入として同 プログラム応募の諾否を返答せよとの知らせがあ り,口腔外科柴原教授指導の下,片倉 朗講師が精 力的に作成 し た 申 請 書 を 持 参 し(平 成20年1月9 日),医学教育課(三浦公嗣課長,三枝広人課長補佐 ほか)のヒアリングを受けた。翌日には本校が参加 を希望した南関東グループの担当大学である北里大 学医学部を訪問し岡安 勲大学院医療系研究科長, コーディネータの増田 卓教授に本校大学院として の育成プログラムの説明を片倉講師が行い,学長, 栁澤研究科長が口腔がんセンターを含めて大学なら びに大学院の現状,永井事務局長が事務体制を説明 して理解を得た。その後,本グループ7校のコー ディネータ会議と大学院研究科長会議を経て信州大 学とともに本校の参加が認められた。本大学院で は,そこで2月に平成20年度の大学院募集に「口腔 がん専門医養成コース」を加え,この募集のための 単独のポスターを作製し全国歯学部・歯科大学に配 布した。この間短期間であったが,市川総合病院安 藤病院長,慶応大学医学部医学研究科長岡野栄之教 授,同校コーディネータ故久保田哲朗教授の多大な ご支援を頂いた。 本プログラムでは後述されているように歯学部大 学院での育成の特徴を明確にしてあり,歯科衛生士 と歯科技工士,また歯科医師へのインテンシブコー スも計画して口腔がん医療へ歯科界としての貢献が できることを意図している。口腔がんプロフェッ ショナル育成には市川総合病院,口腔がんセンター の協力なくしては成り立たないことから,大学院生 の受け入れ講座である口腔外科学講座,オーラルメ ディシン・口腔外科学講座,口腔健康臨床科学講座 の主任教授は本プログラムコーディネータである片 倉准教授とともに円滑な運営に留意し社会的な責務 として進んでもらいたい。 本プログラムの採択は歯学部大学院歯学研究科と しては唯一であるので,北里グループでの育成推進 はもとより全国の歯学研究科への連携に発展してい くことが望まれる。さらには,(社)日本口腔外科学 会,日本口腔腫瘍学会等とともに医科関連学会との 連携が必要となるであろう。なお,本学大学院研究 科としては本コース院生の学位論文に関する検討が 緊急の課題として残されている。 歯科学報 Vol.109,No.2(2009) 129 ― 27 ―

参照

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