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複数コホートの大学1回生 : 4回生の縦断データから見た大学生活充実度の学年変化

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複数コホートの大学1回生 : 4回生の縦断データか

ら見た大学生活充実度の学年変化

著者名(日)

坂田 浩之, 佐久田祐子, 奥田 亮, 川上 正浩

雑誌名

大阪樟蔭女子大学研究紀要

3

ページ

29-37

発行年

2013-01-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1072/00003828/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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大阪樟蔭女子大学研究紀要第 3 巻(2013) 研究論文

複数コホートの大学 1 回生~4 回生の縦断データから見た

大学生活充実度の学年変化

心理学部 臨床心理学科 坂田 浩之

心理学部 ビジネス心理学科 佐久田祐子

心理学部 臨床心理学科 奥田 亮

心理学部 発達教育心理学科 川上 正浩

要旨:大学生活が十分に機能するためには、大学生自身が大学生活に主体的にコミットし、充実感を感じることが重 要であり、大学教育を向上させるためには、大学生活充実度を適切に測定し、大学生活充実度を規定する要因を明ら かにすることが必要である。そこで本研究では、先行研究(奥田・川上・坂田・佐久田,2010a)の知見を踏まえて、 1 回生~4 回生を対象に大学生活充実度尺度、その修正版、および大学生活充実度尺度短縮版(SoULS-21)を実施し、 大学生活充実度が学年進行に伴いどのように推移するのかについて、4 年度分の 1~4 回生の縦断データから分析を行 なった。その結果、4 回生時に充実度全般が最も高まることが明らかになり、奥田他(2010a)の知見の妥当性が支持 された。また、学業に対する満足感については、コホートによって学年変化が異なることが明らかにされ、カリキュ ラムやプログラム、学科編成、あるいはコホートの特性によって影響される可能性が示唆された。 キーワード:大学生活充実度、学年変化、縦断データ、コホート、大学満足度 問題 個人のライフサイクルにおいて大学生時代は、様々 な経験を通して、自分らしさや自分とはどのような人 間かについて考える時期であり、社会に出るための準 備期間として位置づけられる(及川・坂本,2008)。 このことに関連して、吉本(2004)は、社会的自立 に関わる日本の大学の機能について、日本と欧州 11 カ国(イギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、 スウェーデン、スペイン、チェコ、ノルウェー、フィ ンランド、フランス、ドイツ)の高等教育第一学位(学 士相当)取得後 3 年を経過した者を対象に行った調査 から検討している。すなわち、どの国の高等教育修了 者にも必要とされているのは、“問題解決の能力”“話 しことばによるコミュニケーション能力”“綿密性・細 部に目配りする能力”“プレッシャーの下でも仕事がで きる精神力”などであり、日欧で異なる構造を持つも のとして、日本では特に“仕事への適応能力”が重視 され、ドイツおよび他の欧州諸国で“独力で仕事がで きる能力”が重視されている。また、日欧 12 カ国の中 で、日本の卒業年齢が最も若く、それと相関して、大 学知識の活用度が最も低い。これらの背景として、日 本では、標準就学年限を逸脱しないように迅速に学校 教育を駆け抜け、その後に特定領域の幹部人材へ向け て、企業内で独自の訓練を作り込み、なおかつ企業内 でジョブ・ローテーションと試行錯誤の機会を提供す るという長期間の幹部人材養成が行われるという教育 と訓練の 2 段階型モデルが展開されていることがあ る。このような日本型幹部人材養成への移行を踏まえ た学士課程教育とは、企業社会で仕上げる第二段階に 向けた、キャリア選択への第一段階の教育であり、それ は各人のキャリア設計を明確にしていく過程である。 大学生時代がこれらの機能を果たすためには、大学 生活にある程度適応し、満足を感じることが必要であ り、さらには、適応しきれていない部分や不満足な部 分を抱えつつも大学生活に主体的にコミットし、充実 感を感じることが重要な意味を持つことになるであろ う。たとえば、大野・茂垣(若原)・三好・内島(2004) は、先行研究を概観し、充実感尺度の得点とアイデン ティティ得点との間に有意な正の相関が認められるこ と、アイデンティティ・ステイタスにおける達成群、 もしくはコミットメントの高い群(現在自己投入群な ど)が他の群に比較して充実感が高いことを明らかに

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している。また、山田(2009)は、同志社大学高等教 育・学生研究センターが実施している JCIRP(Japan Cooperative Institutional Research Program)の日本 版大学生調査(JCIRP College Students Survey ; JCSS)を用いた国公私立 4 年制大学 8 校の学生 3,961 人を対象とする調査の分析結果から、学生のラーニン グ・アウトカムを上昇させるには、大学生活全体が充 実するような学生のエンゲージメントが不可欠である ことを論じている。 一方で、近年、大学への適応の困難な学生が増加し ているとの指摘がある(e.g. 谷島,2012)。学生相談 機関の調査においては、大学生のおよそ 1%程度が不 登校問題を呈することが明らかになっている(荒井・ 石田・大塚・岡本・兒玉,2011)。牧野(2001)によれ ば、1 度でも“大学に行きたくない”と思ったことの ある学生に対してその理由を調べたところ、“眠いか ら”“疲れているから”“授業がおもしろくないから” “大学が自分が期待していたものと違うから”の順で理 由があてはまる度合いが高いことが明らかにされてい る。同様に、1 度でも“大学を辞めたい”と思ったこ とがある学生に対してもその理由を調べたところ“大 学が自分が期待していたものと違うから”“授業がおも しろくないから”“大学でやりたいことが特にないか ら”“他にやりたいことがあるから”の順に理由が当て はまる割合が高いことが明らかにされている(牧野, 2001)。 このように大学への適応が困難な学生が増加してい る背景として、最近の学生の大学生活が非常に多忙に なっていることが考えられる。溝上(2004)は、1990 年代以降大学生の授業出席率が軒並み上昇していると ともに、最近の大学生活は一般的に非常に多次元にわ たり忙しいものとなっており、大学生達は自覚的・無 自覚的に大学生活の限られた時間を、“授業に出席する 私”“クラブをする私”“アルバイトをする私”“ゲーム をするのが好きな私”などさまざまな“私”に分割し て、その有機的連関をはかりながら生活していると指 摘している。そして、そのような最近の大学生達が大 学生活が充実しているかどうかという質問に答えると きには、システム全体を構成する各要素としての“私” の按配を相対的に評価するという(溝上,2004)。この 説に従うならば、最近の大学生において大学生活充実 度を高めるためには、大学生活の構成要素を偏りなく、 バランスよく充実させないといけないため、非常にデ リケートで困難な調整が必要となる。 しかし、学生の大学生活を支えることは、そこでの 適応感を高めるだけではなく、その後の人生をも間接 的にサポートすることにもつながるとの指摘もある (石倉・吉岡,2004)。そうした意味では大学での充実 感は、入学後に大学“に”適応することのみならず、 持続的に適応感を持ち続ける、あるいは充実感を持ち 続けることに大きな意味があると言えよう。 以上より、大学生活充実度を適切に測定すること、 また大学生活充実度が何によって左右されるかを明ら かにすることは、大学教育を向上させ、大学生時代の 意義を十分に機能させていくために必要なことである と考えられる。特に、近年の大学へのアクセスのユニ バーサル化に起因する学生集団の変化、すなわち、入 学時に高い選抜のメカニズムが機能している大学以外 では、学生確保を目的とした入試方法の多様化が進ん だこともあいまって、学業成績や大学生活の目的、学 習意欲といった面でばらつきの大きい学生集団を抱え ることになった(岡田・鳥居,2011)ことが、大学生 活充実度を適切に把握し、大学教育を向上させる必要 性を高めていると考えられる。このような問題意識か ら、筆者らは大学生活充実度の研究に着手し、大学生 活充実度の作成と大学生活充実度に影響する要因の検 討、大学生活充実度を高める教育プログラムの開発を 行ってきた。 大学生活充実度、およびそれに影響する要因は、個 人によっても、大学によっても、また時期によっても 異なる。たとえば、Benesse 教育開発研究センター (2008)は入学難易度が高い大学ほど大学全般に対する 満足度が高いことを明らかにしており、木村(2012) は大学によって大学満足度の構造が異なることを示唆 している。そこで、本研究では、大学生活充実度が 4 年間の大学生活の中でどのように推移するのかを明ら かにし、そこから、大学生活充実度に影響する要因に ついて検討することを目的とする。 大学生活の中で、その適応や充実感がどのように推 移するのかについては、これまでにも様々な研究がな されてきた。たとえば大学への適応感や満足感におけ る学年変化に注目した研究も認められる。 そのひとつとして片倉・土田(1993)は、単科の看 護短期大学の 1 年生から 3 年生を対象に、学生(短大) 生活と適応に焦点を当てて調査を行っている。その結 果、学年ごとの傾向に注目すると、1 年生は、学習を 含めて何事に対しても積極的・意欲的に取り組もうと いう向上心が強く、学生生活に期待するものも多く適 応行動がみられる。2 年生では、学生生活全般に適応 してきているものの、今まで以上の変化を求めようと

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する意欲が低下しており、3 年生は、学生生活におけ る充実感・満足感を得るために、何事に対しても積極 的に取り組みたい気持ちがある反面、長期間に及ぶ臨 地実習のため、精神的・肉体的なゆとりが持てず不満 が強い傾向があることを明らかにしている。 また大学生が学生生活において感じている不安の種 類や水準を測定するために開発された大学生活不安尺 度(藤井,1998)の下位尺度について、学年変化を検 討した田中・菅(2007)は、大学不適応においてのみ 学年差を見いだし、4 年生において 1 年生よりも大学 不適応尺度の得点が低いことを報告している。 教育学部に所属する学生に対して大学生活に関する 縦断的調査を実施した吉田・橋本・安藤・植村(1999) は、1 年次は大学進学に伴い皆が多くのイベントを経 験するが、2 年次になると個人差が生じてくることを 示している。 木村(2012)は、JCIRP での上級生用調査 JCSS の 2005 および 2007 のデータセット(それぞれ、8 大学 3,961 人、16 大学 6,228 人)と新入生用調査 JFS(JCIRP Freshman Survey)の 2008 のデータセット(163 大 学 19,661 人)を用いて大学満足度の学年変化を分析し た結果、1 回生から 2 回生のところで大学満足度の大 きな落ち込みが見られ、3 回生・4 回生と上がるにつれ て、大学満足度が回復していく傾向にあることを明ら かにしている。 筆者らの研究においても、上記の大学生活充実度尺 度を用いた過去の一連の調査によって 1~4 回生を対 象としたデータが幾つか得られている(e.g. 川上・坂 田・佐久田・奥田,2005,2007,2008,2009)。 奥田・川上・坂田・佐久田(2010a)では、それま でに収集した大学生活充実度のデータについて大学 4 年間の差異あるいは経年変化という観点からまとめて 分析を行い、大学生活充実度の学年差・学年変化につ いて検討している。その概要は次の通りである。すな わち、複数年度の女子大学生 1~4 回生の横断および縦 断データを分析した結果、4 回生時に大学生活充実度 全般が最も高まる。その理由として、大学生活の最終 段階へ到達したことによる見通しの良さ、卒業論文へ の取り組みによる高度な専門知識の修得、登校日数の 減少からくる学内での無理な人間関係からの解放と いった要因や、3 回生末頃から 4 回生秋頃までに盛ん に行われる就職活動において自己分析を通じて改めて 大学生活の意義を確認する機会を持った学生が多数い る可能性がある。一方、1 回生~3 回生に関しては、特 に 2 回生から 3 回生にかけての大学生活充実度の推移 について、データによっては 2 回生から 3 回生にかけ て大学生活の充実度が学業や交友関係、不安の面など でポジティブに変化する結果とそのような変化の見ら れない結果が得られたが、2 回生から 3 回生にかけて 充実感が高まるのか否かについて、引き続き大学生活 充実度のデータを継続的に収集して、2~3 回生間の充 実感の推移を確認することが課題である。また、大学 生活充実度の 1 回生~4 回生の推移とそれを左右する 要因を明らかにするためには、コホート差も考慮して、 より具体的な学生への教育内容やカリキュラムとの関 連を調べていくことが必要である。さらに、1 回生か ら 2 回生にかけての大学生活充実度には、ほとんど変 化がないという結果が示されているが、各下位尺度の 4 学年間の差異のグラフにおいて 2 回生を底とした U 字あるいは逆への字型の曲線を描いているものが少な くない。4 月から 7 月までの間に大学新入生の不適応 感が有意に増大するという報告(水野・田積・炭谷・ 多胡,2007)や、筆者らの過去の研究(佐久田・奥田・ 川上・坂田,2007)でも、1 回生時は入学当初から時 間が経過するにつれて、大学に対する“フィット感” が一部の学生において低下することを示唆するデータ もあり、初年次教育などとも関連して 1 回生から 2 回 生にかけての大学生活充実度の推移の詳細について検 討を加える余地がある。 以上のことから、本研究では、奥田他(2010a)の 課題を引き継ぎ、複数コホートの縦断データを用いて 大学 1 回生~4 回生の大学生活充実度の推移を明らか にするとともに、その推移を左右する要因についても 検討する。 目的 複数コホートの大学 1 回生~4 回生の縦断的データ から大学生活充実度の 4 年間にわたる推移を検討し、 奥田他(2010a)で得られた知見の検証を行う。 方法 調査時期 2005 年から 2011 年にかけて、1 回生時は 5 月、2 回生時以降は 10~11 月時点における縦断的調査 を実施した。 被調査者 大阪樟蔭女子大学心理学科および心理学部 に属する、入学年次が 2005 年~2008 年の女子大学生 が調査に参加した。このうち 4 年間にわたる 4 調査時 点すべてに参加した学生(2005 年度 56 名、2006 年度 33 名、2007 年度 36 名、2008 年度 36 名、計 161 名) の被調査者のみを分析の対象とした。

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質問紙 大学生活充実度尺度(川上他,2005)および “不安” に関する質 問を 3 項目増やした修 正版、 SoULS-21(奥田・川上・坂田・佐久田,2010b)を用 いた1) 手続き 質問紙を複数の授業内にて配布し、被調査者 にその場で回答を求めた。質問紙は授業ごとにまとめ て回収した。 結果 入学年度と学年による大学生活充実度の 4 年間にわた る学年変化の相違 入学年度(2005~2008 年度)と測定学年次(以下、学 年;1~4 回生)を独立変数、SoULS-21 の下位尺度であ る大学へのコミットメント(以下コミットメント)、交友 満足、学業満足2)を従属変数とした 2 要因分散分析を行っ た(Table 1~3)。その結果、SoULS-21 の 3 つの下位尺 度全てにおいて 1%水準で学年の主効果が見られた (F(3,471)=4.61;7.80;19.78;p<.01)が、入学年度の主 効果は見られなかった。学年の主効果について多重比較 (Bonferroni 法)を行った結果、コミットメントでは 2 回生よりも 4 回生が、交友満足では 1~3 回生よりも 4 回生が、1%水準で有意に得点が高かった。 また学業満足にのみ 1%水準で有意な交互作用が見ら れた(F(9,471)= 3.25 ; p<.01)。そこで入学年度(2005~ 2008 年度)の各水準において、学年(1~4 回生)の単純 主効果の検定を行ったところ、2005 年度入学生において は 1~3 回生より 4 回生の方が 1%水準で有意に高く、 2006 年度入学生においては 2 回生より 1・3・4 回生が、 また 3 回生より 4 回生の方が 1~5%水準で有意に高かっ た。2007 年度入学生では 1・2 回生に比べ 3・4 回生が 1 ~5%水準で有意に高く、2008 年度入学生では 1 回生よ り 2~4 回生の方が 1~5%水準で有意に高かった(以上、 Table 4)。 さらに学年(1~4 回生)の各水準において、入学年度 (2005~2008 年度)の単純主効果の検定を行ったところ、 1 回生と 4 回生においては、どの入学年度間にも有意な 差は見られなかった。2 回生では 2008 年度入学生の学業 満足が 2005~2007 年度入学生よりも 1~5%水準で有意 に高く、3 回生では 2005 年度入学生よりも 2007・2008 年度入学生の方がそれぞれ 5%、1%水準で有意に高かっ た(Table 5)。 以上より、入学年度と学年による大学生活充実度の学 年変化については次のようにまとめることができる。ま ず大学へのコミットメントや交友関係、学業への満足は 入学年度(コホート)に関わらず、全体として 4 回生時 入学年度 1回生 2回生 3回生 4回生 全体 2005 3.38 3.05 3.17 3.48 3.27 ( n = 56 ) 2006 2.97 2.79 3.10 3.08 2.99 ( n = 33 ) 2007 3.23 3.21 3.39 3.28 3.28 ( n = 36 ) 2008 3.36 3.31 3.30 3.41 3.34 ( n = 36 ) 全体 3.25 3.09 3.23 3.34 3.22 ( n = 161 ) 主効果 F 値 入学年度 2.31 n.s. 学年 4.61 1% 2 < 4 1.60 n.s. 交互作用 Table 1 入学年度・学年(独立変数)とコミットメント(従属変数)の二要因分散分析 学年 入学年度 1回生 2回生 3回生 4回生 全体 2005 3.83 3.75 3.75 4.07 3.85 ( n = 56 ) 2006 3.96 3.90 3.95 4.16 4.00 ( n = 33 ) 2007 3.99 3.97 4.12 4.14 4.06 ( n = 36 ) 2008 3.81 4.05 4.06 4.26 4.05 ( n = 36 ) 全体 3.89 3.90 3.94 4.15 ( n = 161 ) 主効果 F 値 入学年度 1.53 n.s. 学年 7.80 1% 1,2,3 < 4 1.03 n.s. 交互作用 Table 2 入学年度・学年(独立変数)と交友満足(従属変数)の二要因分散分析 学年 入学年度 1回生 2回生 3回生 4回生 全体 2005 3.37 3.27 3.32 3.76 3.43 ( n = 56 ) 2006 3.48 3.22 3.49 3.70 3.47 ( n = 33 ) 2007 3.36 3.39 3.67 3.81 3.56 ( n = 36 ) 2008 3.40 3.72 3.82 3.76 3.67 ( n = 36 ) 全体 3.40 3.39 3.54 3.76 3.53 ( n = 161 ) 主効果 F 値 入学年度 1.89 n.s. 学年 19.78 1% 3.25 1% 交互作用 Table 3 入学年度・学年(独立変数)と学業満足(従属変数)の二要因分散分析 学年 2 回生<4 回生 ** **p <.01 1,2,3 回生<4 回生 ** **p <.01 ** **p <.01 **

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に最も高まっている(Figure 1~3)。2 回生時には大学 へのコミットメントが最も低調であった。 こういった学年進行(1~4 回生)による推移は、大学 へのコミットメントや交友満足についてはコホート差が 見られなかったが、学業満足については入学年度によっ て違いがあった。入学初期(1 回生時)はどの年度でも 違いがないが、2 回生になると、2005・2007 年度入学生 では 1 回生と同程度、2006 年度入学生は 1 回生より低下 しているが、2008 年度入学生のみ学業満足が上昇すると いう、年度(コホート)間で異なる結果になっている。3 回生では、2005 年度入学生は 1・2 回生と変わらず、2006 年度入学生は 1 回生程度に回復し、2007 年度入学生は上 昇している。そして 4 回生においてはいずれの年度入学 生も学業満足度が高水準となり、再度コホート差がなく なっている(以上、Figure 3 参照)。 学業満足の学年変化が年度コホート間で異なる要因 全体として 1~2 回生時より 4 回生時の方が大学生活 充実度が高まる現象が各年度で見られることは、問題 の部分で述べたように田中他(2007)等の先行研究と も一致した結果である。ただ、学業満足において 4 回 生に向かって値が上昇するプロセスが年度(コホート) によって異なっている。特に、2008 年度入学生は 2 回 生において学業満足が上昇し、それが 4 回生まで維持 されている点で、他の年度と違った学年変化を辿って いるといえるであろう。 そこで、特に 2008 年度学生が 1~2 回生(2008~2009 年度)にかけて経験したことで、学業満足の上昇に関 わるような要因について、考えうるものを以下に 3 つ 挙げる。 1. 所属組織の改編 調査対象となった学生のうち、2008 年度入学生のみ 学科にコース選択制度が導入され、2 回生進学時に専 SS df MS F 値 2005年度入学生 8.45 3 2.82 12.51 ** 2006年度入学生 3.71 3 1.24 5.49 ** 2007年度入学生 5.18 3 1.73 7.66 ** 2008年度入学生 3.77 3 1.26 5.58 ** **p <.01 Table 4 各入学年度( 2005~2008年度 )入学生 における 回生要因の単純主効果検定 回生 SS df MS F 値 1回生 0.33 3 0.11 0.28 2回生 5.53 3 1.84 3.95 ** 3回生 6.23 3 2.08 4.42 ** 4回生 0.21 3 0.07 0.19 **p <.01 Table 5  各回 生 ( 1~4回生 )における入学年度要因の 単純主効果検定 Table 4 各入学年度(2005~2008 年度)入学生におけ る学年要因の単純主効果検定(学業満足) Table 5 各学年(1~4 回生)における入学年度 要因の単純主効果検定(学業満足)

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門領域の異なる 4 コースのいずれに配属されることに なった。どの専門領域に進むかは学生自らが判断し選 択することになっていたため、その決断を行うことで、 その後の学業に対する関心や積極性、満足感が高まっ た可能性があると考えられる。 2. カリキュラムの変更 2008 年度入学生の 2 回生配当科目のうち、それまで 必修であった 3 つの実習科目が選択必修となった。こ のため、学生の科目選択の自由度が幾分高まったと考 えられる。 3. 帰属感高揚プログラムの開始 2008 年度から 1 回生を対象に、学科に対する帰属感 を高揚させるプログラム(以下、帰属感高揚プログラ ム)を実施している。このプログラムは、学生生活や 学科での学びに関して先輩である在学生・卒業生が振 り返りコメントするというインタビューVTR と、学 科教員の鼎談によって構成されている。1 時間 30 分の 単発プログラムであるが、大学生活充実度に対して一 定の影響があることが報告されている(e.g. 川上・坂 田・佐久田・奥田,2012)。プログラム内では、大学で 学ぶことの意義について先輩や教員が語るという内容 が含まれており、入学初期から低下しがちである学業 に対するモチベーションの回復につながっていること が窺え、それが 2 回生時の学業満足感の上昇につな がっているとも考えられる。 1. については、翌年度に心理学科から心理学部(入 学時から 3 学科に分かれている)に改組されたため、 コース選択を 2 年次に行うのは後にも先にも 2008 年度 入学生のみがした経験となった。2. のカリキュラムの 変更は、現在までほぼ状況は変わっていない。3. の帰 属感高揚プログラムも現在まで継続して毎年実施され ているため、2008 年度以降の入学生に共通の経験であ る。よって 2009 年度以降の入学生の 4 年間の学年変化 について見ていくことで、上記の 1~3 のどれが 2 回生 時に学業満足を上昇させた要因として有力であるかを ある程度判断することが可能となるであろう。 奥田他(2010a)で得られた知見の検証 最後に、本研究の目的である、奥田他(2010a)で 得られた知見の検証について述べる。 まず、“4 回生時に大学生活充実度全般が最も高ま る”ことは今回も確認された。前回と異なる母集団を 対象に短縮版尺度(SoULS-21)を用いて調査しても 同様の結果だったことから、これが少なくとも本学心 理学部(学科)においてかなり普遍的な現象であると 言ってよいであろう。 2~3 回生にかけての大学生活充実度の学年変化に ついて、“肯定的な変化が見られる年度とそうでない年 度がある”、すなわち年度によって異なることは、学業 満足において今回の分析でも確認された。そのため、 やはり年度間で違いが生じる要因の検討が必要とな る。 1~2 回生にかけて“ほとんど変化ないが、4 年間で 2 回生時が最も底になるグラフがしばしばある”点に ついては、大学へのコミットメントにおいて、あるい は 2005~2007 年度入学生の学業満足に関してはその 通りであったが、交友満足や 2008 年度入学生の学業満 足ではそのような現象が見られず、今回の結果からは 必ずしも支持されないことが示された。問題の部分で 述べたように、大規模データを用いた木村(2012)で は、1~2 回生のところで大学満足度の大きな落ち込み が見られ、3 回生・4 回生と上がるにつれて、大学満足 度が回復していく傾向にあることが明らかにされてい る。しかし、この学年変化に関しては統計的な検定が なされておらず、また、大学によっては 1~2 回生のと ころで大学満足度に有意差が認められなかったことも 明らかにされている(木村,2012)。したがって、1~2 回生の大学充実度の変化に関しては今後さらに研究の 蓄積が求められる。 結論と今後の課題 本研究では複数コホートの縦断データを用いて大学 1 回生~4 回生の大学生活充実度の学年変化を検討し た。その結果、大学生活充実度尺度・SoULS-21 を構 成するコミットメント、学業満足、交友満足の3つの 下位尺度得点において、少なくとも 1・2 回生時点と比 較して、4 回生(卒業年次)においては、その得点が 向上していることが示された。学業満足については、4 回生に至るまでの学年変化が入学年度によって異なる 可能性が示されたものの、4 回生時に高得点を示して 卒業していく点については、すべてのコホートにおい て共通している。これは、“大学生”そのものの学年進 行に伴う成長や成熟のためであると解釈することも可 能であるし、本学における大学教育が功を奏した結果 であると考えることもできる。 一方で、学業満足に関してはコホートによる学年変 化の差異が認められたが、コミットメント、交友満足 に関してはコホートによって学年変化の差異が認めら れなかった。また、全体として大学生活充実度にコホー トによる差異は認められなかった。これらのことは、 大学が準備するカリキュラムやプログラム、あるいは

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学科編成など教育する側の対応によって、大学生活に おける充実感に大きな差異は生じさせないが、学業に 関する満足に関しては、教育する側の対応によって早 く高めることができることを示唆している。また、本 研究において、統計的に有意とはならなかったものの、 コミットメントや交友満足についても、学年進行と入 学年度との交互作用、すなわちコホート差の傾向が見 て取れる(Figure 1・2)ことに着目するならば、でき る限り早い段階でコホートの特性を掌握し、それに対 応する適切な教育的取り組みを行った場合に、大学生 活充実度の学年変化、さらには大学生活充実度全体が 改善されるという可能性も否定できない。教員とのコ ミュニケーションが、学習意欲を高め、学習意欲が(学 習の充実感に強く影響する)大学生活の満足度を高め る一方、友人とのコミュニケーションは大学生活の満 足にあまり影響しないという知見もある(見館・永井・ 北澤・上野,2008)。したがって、大学生活充実度を高 め、大学生時代を十全に機能させるためには、カリキュ ラムやプログラムなど教育システムとしての大学教育 を整備するのはもちろんのこと、教員による大学生へ のきめ細かい教育的な配慮や大学生とのコミュニケー ションが求められることが推測される。 4 回生時の充実感から、結果良ければ…というわけ にはいかないのが教育である。今後も本研究のような 定期的・継続的な大学生活充実度の測定とその分析を 蓄積し、より効果的な大学教育のありかたを探求・開 発していくことは重要であろう。 注 1)2005~2007 年度調査では、川上他(2005)の大学 生活充実度尺度を使用し、2008~2009 年度調査で は、修正版を使用し、2010~2011 年度調査では、 SoULS-21 を使用した。 2)コミットメント、交友満足、学業満足の得点は、 SoULS-21 の下位尺度得点の算出方法(奥田他, 2010b)に従い算出した。もう一つの下位尺度で ある“不安のなさ”については、2007 年度までは 大学生活充実度尺度内での項目数が不足していた ため年度間の比較ができず、本研究の結果分析か らは割愛した。 引用文献 荒井佐和子・石田弓・大塚泰正・岡本祐子・兒玉憲一 (2011).不登校大学生に対する大学教員の視点と 支援 広島大学心理学研究,11, 339-347. Benesse 教育研究開発センター(2008).学生満足度と 大学教育の問題点 2007. 藤井義久(1998).大学生活不安尺度の作成および信頼 性・妥当性の検討 心理学研究,68, 441-448. 石倉健二・吉岡久美子(2004).大学生活における心身 の健康に関する調査-留学生と日本人学生の適応 と ヘ ル パ ー 志 向 性 - 長 崎 国 際 大 学 論 叢 , 4, 225-232. 片倉久美子・土田幸子(1993).本学における学生生活 の適応に関する実態調査 岩手女子看護短期大学 紀要,1, 89-98. 川上正浩・坂田浩之・佐久田祐子・奥田亮(2005).新 入生オリエンテーションに関する研究(1) 日本 心理学会第 69 回大会発表論文集,1251. 川上正浩・坂田浩之・佐久田祐子・奥田亮(2007).大 学生活充実度における学年差に関する研究 日本 教育心理学会第 49 回総会発表論文集,71. 川上正浩・坂田浩之・佐久田祐子・奥田亮(2008).大 学 生 活充 実 度に おけ る 学年差 に 関す る 研究 (2) 日本教育心理学会第 50 回総会発表論文集,193. 川上正浩・坂田浩之・佐久田祐子・奥田亮(2009).大 学 生 活充 実 度に おけ る 学年差 に 関す る 研究 (3) 日本教育心理学会第 51 回総会発表論文集,576. 川上正浩・坂田浩之・佐久田祐子・奥田亮(2012).心 理学部における帰属感高揚プログラム「心理学と 私」大阪樟蔭女子大学研究紀要,2, 105-112. 木村拓也(2012).大学満足度の学年変化とその規定要 因の探索-項目反応理論(IRT)と Interruptive Structural Modeling(ISM)を用いた分析 ク オリティエデュケーション,4, 73-92. 牧野幸志(2001) 大学生の不登校に関する基礎的研 究(1)-大学生の不登校と退学希望の理由の探索 - 高松大学紀要,36, 79-91. 見館好隆・永井正洋・北澤武・上野淳(2008).大学生 の学習意欲、大学生活の満足度を規定する要因に ついて 日本教育工学会論文誌,32, 189-196. 溝上慎一(2004).現代大学生論-ユニバーシティ・ブ ルーの風に揺れる 日本放送出版協会 水野邦夫・田積徹・炭谷将史・多胡陽介(2007).大学 新入生の大学適応を促進する授業プログラムの検 討 聖泉論叢,15, 125-140. 及川恵・坂本真士(2008).大学生の精神的不適応に対 する予防的アプローチ-授業の場を活用した抑う つの一次予防プログラムの改訂と効果の検討- 京都大学高等教育研究,14, 145-156.

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The Transition of University Life Satisfaction through the First Year

to the Fourth Year in Longitudinal Data of Four Cohorts

Faculty of Psychology, Department of Clinical Psychology

Hiroyuki SAKATA

Faculty of Psychology, Department of Business Psychology

Yuko SAKUTA

Faculty of Psychology, Department of Clinical Psychology

Akira OKUDA

Faculty of Psychology, Department of Developmental and Educational Psychology

Masahiro KAWAKAMI

Abstract

To take full advantage of the function of university life, it is important for students to commit their own

university life and to get contentment to the university. And also to improve university education, it is

necessary to investigate and clarify the determinants of university life satisfaction. So in this study, based on

earlier studies (Okuda, Kawakami, Sakata, and Sakuta, 2010a), we investigated transition of university life

satisfaction of students through the first year to the fourth year with four cohorts using Scales of University

Life Satisfaction, its modified version and shortened version (SoULS-21). The results showed that university

life satisfaction gets highest score generally in their fourth grade, and which is consistent with the results

showed in Okuda et al. ( 2010a). Also, the results showed that the transition of study satisfaction varies

depending on the cohorts, which may be caused by their curriculum, university program, organization of

department, and characteristics of the cohort.

Keywords : university life satisfaction, difference between the years, longitudinal data, cohorts, university

satisfaction

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参照

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