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シャトルコミュニケーションの質的データ分析法に関する研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

シャトルコミュニケーションの質的データ分析法に

関する研究

著者

斐品 正照

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第18971号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00126496

(2)

博士論文

シャトルコミュニケーションの質的データ分析法に関する研究

(3)

平 成 3 0 年 度 東 北 大 学 学 位 審 査 論 文 ( 博 士 )

シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 質 的 デ ー タ 分 析 法

に 関 す る 研 究

東 北 大 学 大 学 院 教 育 情 報 学 教 育 部 教 育 情 報 学 専 攻

斐 品 正 照

2019 年 3 月

(4)

要 旨

本 研 究 の 目 的 は , シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ( S C ) の デ ー タ を

対 象 に し た 新 た な 質 的 デ ー タ 分 析 法 を 開 発 す る こ と で あ る . そ の

理 由 は , 従 来 の 分 析 法 を S C の デ ー タ に 適 用 す る 場 合 に は , い く つ

か の 問 題 が あ る か ら で あ る .

本 研 究 で は , S C を 2 人 ( な い し 少 人 数 ) の 間 で 非 同 期 か つ 交 互

に 1 通 の メ ッ セ ー ジ を 送 り 合 う こ と と 定 義 す る .例 え ば ,手 紙 / 電

子 メ ー ル を 使 っ た ペ ン パ ル と の 文 通 や ,1 冊 の ノ ー ト / 電 子 掲 示 板

( あ る い は ブ ロ グ ) を 使 っ た 友 達 と の 交 換 日 記 , そ し て , 1 枚 の 紙

カ ー ド / S C 用 の オ ン ラ イ ン シ ス テ ム を 使 っ た 授 業 で の 受 講 生 と 教

員 と の 間 の や り と り が あ る .

筆 者 は , S C の デ ー タ を 対 象 に し た 分 析 法 は , 以 下 に 示 す 事 項 を

明 ら か に す べ き と 考 え て い る .

S C の デ ー タ に 記 録 さ れ て い る も の は 対 話 で あ る . そ の た め , ま

ず , 2 者 間 で や り と り さ れ た 話 題 の 流 れ ( 話 題 展 開 ) を 全 て 明 ら か

に す る 必 要 が あ る .話 題 展 開 と は ,一 方 側 の 話 題 に 対 し て ,他 方 側

の 話 題 が 関 連 し て い る 様 相 で あ る .つ ま り ,2 種 類( 記 入 者 と 話 題 )

の 要 素 か ら 成 る 構 造 体 同 士 が 連 結 し て い る .例 え ば ,受 講 生 A に よ

る 「 質 問 」 と , 教 員 T に よ る 「 解 説 」, そ し て 受 講 生 A に よ る 「 感

謝 」 と い う 3 つ の 構 造 体 が 連 結 し て い る シ ー ケ ン ス を グ ラ フ 理 論

で 表 現 す る と , 以 下 の よ う に な る .

G

(話題展開)

= ( V

(記入者と話題の集合)

, E

(連結の集合)

)

V = {<受講生 A,質問>,<教員 T,解説>,<受講生 A,感謝>}

E = {{<受講生 A,質問>,<教員 T,解説>},{<教員 T,解説>,<受講生 A,感謝>}}

加 え て ,S C は 非 同 期 の 対 話 な の で ,1 通 の メ ッ セ ー ジ の 中 に ,い

く つ か の 異 な る 話 題 が 記 入 さ れ る か も し れ な い .よ っ て ,

1 メ ッ セ

ー ジ の 中 の ど の 話 題 が , そ の 他 の メ ッ セ ー ジ の 中 の ど の 話 題 と 関

(連 結 )し て い る の か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る .

次 に ,1 通 の メ ッ セ ー ジ の 中 で 話 題 を 分 別 し た り ,話 題 の 関 連( 連

結 )を 分 析 し た り す る た め に は ,言 及 内 容 を 全 て 明 ら か に す る こ と

が 必 要 で あ る .言 及 内 容 と は ,1 つ の 話 題 の 中 に あ る 個 々 の テ キ ス

ト の 意 味 解 釈 で あ る .主 部 と 述 部 で 構 成 す る 意 味 で あ る .つ ま り ,

個 々 の 言 及 内 容 は , 2 種 類 の 要 素 ( 対 象 と そ の 状 態 ) か ら 成 る 構 造

体 の こ と で あ る . 例 え ば , あ る テ キ ス ト が ,「 今 日 の 授 業 は , と て

(5)

も 面 白 い 」の 意 味 に 解 釈 さ れ た の な ら ,対 象 は「 今 日 の 授 業 」で ,

そ の 状 態 は 「 と て も 面 白 い 」 と な る .

最 後 に ,当 該 ペ ア の 対 人 関 係 の 進 展 具 合 や ,彼 ら の 対 話 の 特 徴 を

分 析 す る た め に , S C の デ ー タ の 中 の 全 て の 話 題 展 開 の 数 量 , お よ

び 全 て の 言 及 内 容 の 数 量 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る .例 え ば ,言 及

内 容 が 以 前 に 比 べ て 増 え た り , 話 題 展 開 の 連 結 回 数 が 以 前 に 比 べ

て 長 く な っ た り す れ ば , 彼 ら の 対 人 関 係 が 深 ま っ た と 推 測 で き る .

近 年 , 日 本 で は , G T A や S C A T な ど の 質 的 デ ー タ 分 析 法 を 使 っ た

研 究 が 増 え て き た .質 的 デ ー タ 分 析 法 は ,観 察 や イ ン タ ビ ュ ー ,ア

ン ケ ー ト に よ っ て 収 集 し た デ ー タ を 対 象 に し て , そ の 質 的 内 容 を

表 す 中 核 的 な 概 念 を 抽 出 す る .こ れ に よ り ,分 析 者 は デ ー タ に 対 す

る 偏 っ た あ る い は 間 違 っ た 解 釈 を 避 け る こ と が で き る .

し か し な が ら , G T A や S C A T な ど の 既 存 分 析 法 は , S C の デ ー タ を

分 析 す る こ と に 適 し て い な い . な ぜ な ら , 既 存 分 析 法 を S C の デ ー

タ に 適 用 す る 場 合 に は ,以 下 の 問 題 が あ る か ら で あ る .ま ず ,既 存

分 析 法 は ,話 題 展 開 を 分 析 で き な い .そ し て ,全 て の 言 及 内 容 を 明

ら か に で き な い 可 能 性 が あ る .加 え て ,抽 出 し た 概 念 の 適 切 な 数 量

の 確 認 が で き な い .

そ こ で , 本 研 究 で は , S C の デ ー タ を 対 象 と し た 新 た な 質 的 デ ー

タ 分 析 法 の 開 発 を 目 指 し た .そ の た め に ,本 研 究 で は ,筆 者 は 以 下

の 3 つ の こ と を 行 っ た . ま ず , S C の デ ー タ を 記 録 す る た め の 媒 体

の 要 求 を 明 ら か に し て ,S C 媒 体 の " i C o n v e r s a t i o n " を 実 装 し て 使 用

し た . 次 に , S C の デ ー タ を 対 象 に し た 新 た な 質 的 デ ー タ 分 析 法 の

" K e y P a S S " を 開 発 し た . 最 後 に , i C o n v e r s a t i o n を 使 っ て 取 得 し た

デ ー タ に K e y P a S S を 適 用 し て , 抽 出 し た 概 念 を 用 い た 分 析 の 可 能

性 を 検 証 し た .

本 論 文 は ,5 章 で 構 成 さ れ て い る .1 章 は 序 章 で あ る .2 章 で は ,

S C 媒 体 の 要 求 と , S C 媒 体 の i C o n v e r s a t i o n の 実 装 と 評 価 に つ い て

述 べ る .3 章 で は ,S C の デ ー タ に 既 存 の 質 的 デ ー タ 分 析 法 を 適 用 す

る こ と の 問 題 点 と , 本 研 究 で 開 発 し た 分 析 法 の K e y P a S S の 概 要 に

つ い て 述 べ る . 4 章 で は , K e y P a S S で 抽 出 し た 概 念 の 分 析 の 可 能 性

に つ い て 述 べ る .そ し て ,5 章 で は ,本 研 究 の 結 論 に つ い て 述 べ る .

(6)

目 次

要 旨

... i

目 次

... iii

図 表 の 目 次

... v

1 章

序 論

... 1

1.1

本 研 究 の 背 景

... 1

1.1.1

シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン

(SC)と そ の 質 的 内 容 の 分 析 .... 1

1.1.2

質 的 デ ー タ 分 析 法 と は

... 3

1.1.3

SC の デ ー タ に 既 存 分 析 法 を 適 用 し た 際 の 問 題 点 ... 5

1.2

本 研 究 の 目 的 と 課 題

... 8

1.3

本 論 文 の 構 成

... 9

2 章

シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 媒 体 の 実 装

... 11

2.1

は じ め に

... 11

2.2

背 景 と 課 題

... 12

2.2.1

取 得 す る

SC の デ ー タ に 関 す る 背 景 と 選 択 ... 12

2.2.2

本 研 究 の 課 題

... 13

2.3

SC の 媒 体 の 要 求 分 析 ... 14

2.4

SC の 媒 体 の 仕 様 と 実 装 ... 17

2.4.1

SC の 媒 体 の 仕 様 ... 17

2.4.2

実 装 し た

SC 媒 体 の iConversation の 概 要 ... 19

2.5

実 装 し た

SC 媒 体 を 用 い た 実 践 と 評 価 ... 23

2.5.1

評 価 実 験 の 概 要

... 23

2.5.2

SC 媒 体 の 実 践 結 果 と 取 得 し た デ ー タ の 確 認 ... 24

2.5.3

X 教 員 対 象 の ア ン ケ ー ト 調 査 ... 25

2.6

考 察

... 28

2.7

ま と め

... 29

3 章

シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 分 析 法 の 開 発

... 30

3.1

は じ め に

... 30

3.2

改 良 の た め の 要 件 分 析 と 開 発 方 法

... 30

3.2.1

既 存 分 析 法 を 改 良 す る た め の 要 件 分 析

... 31

3.2.2

SC の デ ー タ を 想 定 し た 質 的 デ ー タ 分 析 法 の 開 発 方 法 ... 34

3.3

質 的 デ ー タ 分 析 法

KeyPaSS の 提 案 ... 36

3.3.1

提 案 分 析 法 の 手 続 き と 分 析 シ ー ト の 概 要

... 36

3.3.2

提 案 分 析 法 に お け る 手 続 き の 分 解

... 38

(7)

3.3.3

提 案 分 析 法 に お け る 要 件 を 満 た す 手 続 き

... 38

3.4

提 案 分 析 法 の 評 価 実 験

... 42

3.4.1

提 案 分 析 法 の 評 価 項 目

... 42

3.4.2

提 案 分 析 法 を 適 用 す る

SC の デ ー タ ... 44

3.4.3

提 案 分 析 法 の 評 価

... 45

3.5

考 察

... 56

3.6

ま と め

... 58

4 章

提 案 分 析 法 の 可 能 性 の 検 証

... 60

4.1

は じ め に

... 60

4.2

キ ー ワ ー ド に 関 す る 分 析 の 可 能 性

... 60

4.3

対 話 パ タ ー ン に 関 す る 分 析 の 可 能 性

... 63

4.4

考 察

... 65

4.5

ま と め

... 66

5 章

結 論

... 67

謝 辞

... 69

参 考 文 献

... 70

研 究 業 績

... 73

Abstract ... 75

付 録

... 77

(8)

図 表 の 目 次

図 1 - 1 本 論 文 の 構 成

... 10

図 2 - 1 「 大 福 帳 」 の 実 物 ( 一 部 ) の 写 真

... 15

図 2 - 2 ロ グ イ ン 機 能 の イ ン タ フ ェ ー ス

... 20

図 2 - 3 タ イ ミ ン グ の 制 御 機 能 の イ ン タ フ ェ ー ス ( 教 員 用 )

... 20

図 2 - 4 メ ッ セ ー ジ 関 連 の イ ン タ フ ェ ー ス ( 受 講 生 用 )

... 21

図 2 - 5 授 業 終 了 時 の ア ン ケ ー ト 調 査 機 能 の イ ン タ フ ェ ー ス

... 22

図 2 - 6 記 録 さ れ た S C の デ ー タ の 一 部 ( 抜 粋 )

... 25

図 3 - 1 カ テ ゴ リ 名 ・ 特 性 ・ 次 元 の 枠 組 み の 例

... 32

図 3 - 2 K e y P a S S に お け る 分 析 の 手 続 き

... 36

図 3 - 3 K e y P a S S の 分 析 シ ー ト と 記 入 例 ( 抜 粋 )

... 37

図 3 - 4 確 認 シ ー ト ( キ ー ワ ー ド ) と 記 入 例 ( 抜 粋 )

... 39

図 3 - 5 記 入 者 ・ 話 題 の 集 合 お よ び 連 結 の 集 合 の 枠 組 み

... 41

図 3 - 6 確 認 シ ー ト ( 対 話 パ タ ー ン ) と 記 入 例 ( 抜 粋 )

... 42

図 3 - 7 対 話 パ タ ー ン ( シ ー ケ ン ス ) の 時 系 列 的 変 化

... 53

図 4 - 1 キ ー ワ ー ド の 時 系 列 ・ ペ ア 間 で の 比 較

... 61

図 4 - 3 キ ー ワ ー ド ( カ テ ゴ リ ) の 合 計 値 の 時 系 列 的 な 比 較 ( 担 当 教 員 )

.... 62

図 4 - 2 キ ー ワ ー ド ( カ テ ゴ リ ) の 合 計 値 の 時 系 列 的 な 比 較 ( 受 講 生 た ち )

. 62

図 4 - 4 対 話 パ タ ー ン の 時 系 列 ・ ペ ア 間 で の 比 較

... 64

表 1 - 1 既 存 分 析 法 を S C の デ ー タ に 適 用 し た 際 の 問 題

... 5

表 2 - 1 先 行 研 究 で の S C の 媒 体 の 形 式

... 14

表 2 - 2 授 業 記 録 の 抜 粋

... 24

表 2 - 3 授 業 で 取 得 し た S C の デ ー タ

... 25

表 3 - 1 既 存 分 析 法 を 改 良 す る た め の 要 件 分 析

... 31

表 3 - 2 既 存 分 析 法 の 比 較

... 35

表 3 - 3 提 案 分 析 法 を 試 行 し た 結 果 の 概 要

... 44

表 3 - 4 対 話 パ タ ー ン を 構 成 す る 要 素 ( 話 題 ) 毎 の 集 計

... 46

表 3 - 5 抽 出 さ れ た キ ー ワ ー ド の カ テ ゴ リ 名 と 特 性

... 47

表 3 - 6 0 回 連 結 の 話 題 展 開 の 集 計 結 果

... 48

表 3 - 7 1 回 連 結 の 話 題 展 開 の 集 計 結 果

... 49

表 3 - 8 2 回 以 上 連 結 の 話 題 展 開 の 集 計 結 果

... 50

(9)

表 3 - 9 キ ー ワ ー ド ( カ テ ゴ リ 名 ) の 時 系 列 的 な 比 較

... 51

表 3 - 1 0 キ ー ワ ー ド ( カ テ ゴ リ 名 ) の ペ ア 間 で の 比 較

... 54

(10)

1章

序論

本 章 で は ,本 研 究 の 背 景 を 述 べ ,本 研 究 に お け る 対 象 の 現 状 と 関 連 研 究

を 概 観 す る .ま た ,本 研 究 の 目 的 と 課 題 を 示 す と と も に ,本 論 文 の 構 成 に

つ い て 述 べ る .

1.1 本研究の背景

1.1.1 シャトルコミュニケーション(SC)とその質的内容の分析

本 研 究 で は , シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ( 以 下

SC)を,2 人(ない

し 少 人 数 ) の 間 で 非 同 期 か つ 交 互 に

1 通のメッセージを送り合うことで

あ る ,と 定 義 す る .例 え ば ,手 紙 / 電 子 メ ー ル を 使 っ た ペ ン パ ル と の 文 通

や ,

1 冊のノート/電子掲示板(あるいはブログ)を使った友達との交換

日 記 , そ し て ,

1 枚の紙カード/SC 用のオンラインシステムを使った授

業 で の 受 講 生 と 教 員 と の 間 の や り と り , と い っ た

SC が挙げられる.

上 記 の 中 の 1 つ で あ る「 授 業 で の 受 講 生 と 教 員 と の 間 の や り と り 」の 具

体 例 と し て は ,「 大 福 帳 」等 と 呼 ば れ る 紙 媒 体 ,あ る い は 電 子 媒 体 を 使 っ

た 実 践 が あ る

[1]-[5]

. 例 え ば , 織 田 (

1999)

[2]

に よ る 「 大 福 帳 」(

A4 判の

厚 紙

1 枚)を使った実践では,まず,授業の終了時に,個々の受講生が自

ら の 大 福 帳 に

1 通のメッセージを記入する.次に,次の授業までに,教

員 が 個 々 の 受 講 生 の 大 福 帳 に

1 通のメッセージを記入する.そして,次

の 授 業 の 開 始 時 に , 個 々 の 受 講 生 が 自 ら の 大 福 帳 に 記 入 さ れ た 教 員 か ら

1 通のメッセージを読む.以上を毎回の授業で繰り返す.

筆 者 は ,上 記( ペ ン パ ル と の 文 通 ,友 達 と の 交 換 日 記 ,受 講 生 と 教 員 と

の 間 の や り と り )の よ う な 様 々 な

SC のデータを対象にした「質的データ

(11)

分 析 法 」,言 い 換 え る と「

SC のテキストの質的内容を分析する方法」は,

以 下 に 示 す

I1~I3(I:Issue)の 3 つの事項を満たすべきと考えている.

I1:デ ー タ 内 の 全 て の 言 及 内 容 を 対 象 に ,そ の 言 及 内 容 を( で き る 限 り )

網 羅 的 に 明 ら か に す る

I2:デ ー タ 内 の 全 て の 話 題 展 開 を 対 象 に ,そ の 話 題 展 開 を( で き る 限 り )

網 羅 的 に 明 ら か に す る

I3: 言 及 内 容 ( I1) と 話 題 展 開 ( I2) の 数 量 を 明 ら か に す る

I1~I3 の 3 つの事項について,以下にその詳細を述べるが,説明の都

合 上 ,

I1 と I2 の順序は前後する.

ま ず ,

SC のデータに記録されているものは対話であるから, 2 者間で

や り と り さ れ た 全 て の 話 題 の 流 れ( 話 題 展 開 )を 対 象 に ,そ の 話 題 展 開 を

( で き る 限 り ) 網 羅 的 に 明 ら か に す る 必 要 が あ る ( I2). 話 題 展 開 と は ,

一 方 側 の 話 題 に 対 し て ,他 方 側 の 話 題 が 関 連 し て い る 様 相 で あ る .つ ま り ,

2 種類(記入者と話題)の要素から成る構造体同士が連結している.例え

ば ,受 講 生

A による「質問」と,教員 T による「解説」,そして受講生 A

に よ る 「 感 謝 」 と い う

3 つの構造体が連結しているシーケンスをグラフ

理 論 で 表 現 す る と , 以 下 の よ う に な る

.

G

(話 題 展 開 )

= ( V

(記 入 者 と 話 題 の 集 合 )

, E

(連 結 の 集 合 )

)

V = {<受講生 A,質問>,<教員 T,解説>,<受講生 A,感謝>}

E = {{<受講生 A,質問>,<教員 T,解説>},{<教員 T,解説>,<受講生 A,感謝>}}

加 え て ,

SC は非同期の対話なので,1 通のメッセージの中に,いくつ

か の 異 な る 話 題 が 記 入 さ れ る か も し れ な い .あ る 話 題 の 場 合 に は ,他 の メ

ッ セ ー ジ の 中 の 話 題 に 関 連( 連 結 )せ ず に ,一 方 的 に 発 信 し た 状 態 で 完 了

す る か も し れ な い .一 方 で ,別 の 話 題 の 場 合 に は ,関 連( 連 結 )し た 話 題

が 複 数 回 の や り と り の 中 で し ば ら く 続 く か も し れ な い .よ っ て ,

1 メッセ

(12)

ー ジ の 中 の ど の 話 題 が ,そ の 他 の メ ッ セ ー ジ の 中 の ど の 話 題 と 関 連

(連結)

し て い る の か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る .

次 に ,上 記 で 述 べ た よ う に ,

1 通のメッセージの中で話題を分別したり,

話 題 の 関 連( 連 結 )を 分 析 し た り す る た め に は ,全 て の 言 及 内 容 を 対 象 に ,

そ の 言 及 内 容 を ( で き る 限 り ) 網 羅 的 に 明 ら か に す る こ と が 必 要 で あ る

( I1). 言 及 内 容 と は , 1 つ の 話 題 の 中 に あ る 個 々 の テ キ ス ト の 意 味 解 釈

で あ る .主 部 と 述 部 で 構 成 す る 意 味 で あ る .つ ま り ,個 々 の 言 及 内 容 は ,

2 種 類 の 要 素 ( 対 象 と そ の 状 態 ) か ら 成 る 構 造 体 の こ と で あ る . 例 え ば ,

あ る テ キ ス ト が「 今 日 の 授 業 は ,と て も 面 白 い 」の 意 味 に 解 釈 さ れ た の な

ら ,対 象 は「 今 日 の 授 業 」で ,そ の 状 態 は「 と て も 面 白 い 」と な る .も し

SC のデータの中の言及内容を全て明らかにできなければ,1 通のメッ

セ ー ジ の 中 の 話 題 を 分 別 で き な か っ た り ,話 題 の 関 連( 連 結 )を 分 析 す る

際 の 精 度 が 落 ち て し ま っ た り す る こ と が 予 想 さ れ る .そ の 場 合 に は ,分 析

し た 話 題 展 開 の 適 切 さ に も 疑 問 が 生 じ て し ま う .

最 後 に ,当 該 ペ ア の 対 人 関 係 の 進 展 具 合 や ,対 話 の 特 徴 を 分 析 す る た め

に ,

SC のデータの中の全ての話題展開の数量,および全ての言及内容の

数 量 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る ( I3). 例 え ば , 言 及 内 容 が 以 前 に 比 べ て

増 え た り ,話 題 展 開 の 連 結 回 数 が 以 前 に 比 べ て 長 く な っ た り す れ ば ,対 人

関 係 が 深 ま っ て い る こ と が 推 測 で き る . 質 的 内 容 に 加 え て そ の 数 量 的 確

認 を 可 能 に す る こ と は ,

SC の様相を客観的に捉えるために重要と考える.

1.1.2 質的データ分析法とは

近 年 ,日 本 で は「 質 的 デ ー タ 分 析 法 」を 使 っ た 研 究 が 増 え て き た

[6]

[7]

既 存 の 質 的 デ ー タ 分 析 法( 以 下 ,既 存 分 析 法 )

[6]

[11]

は ,主 に 観 察 や イ ン

(13)

タ ビ ュ ー ,ア ン ケ ー ト 等 の デ ー タ を 分 析 対 象 に 想 定 し て い る .既 存 分 析 法

で は ,デ ー タ 内 で 着 目 し た 語 句 ・話 の 流 れ の 意 味 ・文 脈 を 解 釈 し ,そ れ に 適

す る 概 念( コ ー ド )を 付 す 手 続 き を 繰 り 返 す「 ジ ェ ネ ラ テ ィ ブ・コ ー デ ィ

ン グ 」

[11]

を 行 っ て , 最 終 的 に は 収 集 し た デ ー タ の 質 的 内 容 を 表 す 中 核 的

な 概 念 を 抽 出 す る .こ れ に よ り ,分 析 者 は デ ー タ に 対 す る 偏 っ た あ る い は

間 違 っ た 解 釈 を 避 け る こ と が で き る .

代 表 的 な 分 析 法 と し て ,

GTA(Grounded Theory Approach)(ストラ

ウ ス

&コービン版)

[8]

M-GTA

[9]

GTA(戈木版)

[7]

,そ し て

SCAT

[6] [10][11]

が 挙 げ ら れ る .詳 細 な 手 続 き は 少 し 異 な る も の の ,デ ー タ を セ グ メ ン ト 化

し て か ら ,オ ー プ ン・コ ー デ ィ ン グ と 軸 足 コ ー デ ィ ン グ ,選 択 コ ー デ ィ ン

グ の

3 種類のコーディングを行うことは概ね共通している.

GTA を提案したストラウス&コービン(1990)

[8]

に よ る と , ま ず , セ

グ メ ン ト 化 で は ,デ ー タ を 内 容( 例 え ば ,語 句 や 文 )毎 に 分 解 す る .次 に ,

オ ー プ ン・コ ー デ ィ ン グ で は ,デ ー タ 内 の 各 セ グ メ ン ト を 比 較 し な が ら そ

の 意 味 を 解 釈 し て ,そ の 解 釈 に 適 し た 概 念( コ ー ド )を 検 討 す る .そ し て ,

軸 足 コ ー デ ィ ン グ で は ,コ ー ド 間 の 因 果 関 係 の 繋 が り を 推 測 し て ,そ の 繋

が り 毎 に 分 類 す る .最 後 に ,選 択 コ ー デ ィ ン グ で は ,軸 足 コ ー デ ィ ン グ で

分 類 し た コ ー ド 群 の 取 捨 選 択 や 縮 約 を 繰 り 返 し て 中 核 的 な 概 念 を 書 き 出

す .場 合 に よ っ て は ,デ ー タ 内 で 繰 り 返 し 出 現 す る パ タ ー ン( 中 核 的 な 概

念 の 組 合 せ )を 探 し 出 す .さ ら に 可 能 な 場 合 に は ,理 論( デ ー タ 内 に 限 ら

ず デ ー タ 外 で も 有 効 な 現 象 の 捉 え 方 ) も 導 き 出 す .

と こ ろ で ,こ の 既 存 分 析 法 と 一 見 似 て い る 分 析 法 と し て ,会 話 分 析・デ

ィ ス コ ー ス 分 析( あ る い は 談 話 分 析 )が あ る .し か し な が ら ,こ れ ら の 分

析 法 と 既 存 分 析 法 と で は , そ も そ も 目 的 が 異 な る . 鈴 木 (

2007)

[12]

に よ

(14)

る と ,会 話 分 析 と は ,実 際 の 会 話 の デ ー タ か ら ,そ の 中 で の や り と り に お

け る 規 則 を 見 い だ そ う と す る 方 法 で あ る .ま た ,デ ィ ス コ ー ス 分 析 と は ,

何 か を 説 明 し て い る デ ー タ( 話 し 言 葉 と 書 き 言 葉 の い ず れ も 対 象 )か ら ,

そ の 説 明 の 仕 方 が 従 っ て い る 規 則 を 見 い だ そ う と す る 方 法 で あ る . つ ま

り ,既 存 分 析 法 は ,デ ー タ の 質 的 内 容 と し て の 概 念 を 抽 出 す る こ と が 目 的

で あ る が ,一 方 で ,会 話 分 析・デ ィ ス コ ー ス 分 析 は ,デ ー タ を 説 明 す る 規

則 を 探 し 出 す の が 目 的 で あ る

1

. 本 研 究 で は ,

SC のデータの質的内容と

し て の 話 題 展 開 と 言 及 内 容 を 概 念 と し て 抽 出 す る こ と が 目 的 で あ る の で ,

既 存 分 析 法 の 目 的 と 一 致 す る .

1.1.3 SC のデータに既存分析法を適用した際の問題点

し か し な が ら ,既 存 分 析 法 は ,

1.1.1 で述べた I1~I3 の事項を満たすこ

と が で き な い の で ,

SC のデータを分析することに適していない.SC の

デ ー タ を 分 析 す る 場 合 に 既 存 分 析 法 が 抱 え る 問 題 の 原 因 と そ の 結 果 を 表

1-1 に 示 し て , 以 下 に そ の 詳 細 を 述 べ る .

ま ず ,

「 I1:デ ー タ 内 の 全 て の 言 及 内 容 を 対 象 に ,そ の 言 及 内 容 を 網 羅 的

に 明 ら か に 」の 事 項 に 関 す る 問 題 の 原 因 と 結 果 に つ い て 述 べ る .既 存 分 析

法 で は ,分 析 の 対 象 と し て い る 観 察 や イ ン タ ビ ュ ー ,ア ン ケ ー ト 等 の デ ー

タ の 中 に 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 が 無 い か , あ る い は 少 な い こ と が , 既 存 分

1

鈴 木 (

2007)

[12]

は ,

GTA など の 質 的 デー タ 分 析 法 と, 会 話 分析 ・ デ ィ ス コー

ス 分 析 と の 違 い に つ い て は , 多 変 量 解 析 に お け る 主 成 分 分 析 と 因 子 分 析 の 違 い の

よ う な も の で あ る と 説 明 し て い る . こ の 場 合 , 質 的 デ ー タ 分 析 法 が 主 成 分 分 析

に , 会 話 分 析 ・ デ ィ ス コ ー ス 分 析 が 因 子 分 析 に 例 え ら れ て い る .

な お , 栗 原 (

2011)

[13]

に よ れ ば , 主 成 分 分 析 と は , 観 測 変 数 か ら 主 成 分 を 合 成

す る 手 法 で あ り , 複 数 の 観 測 変 数 を 単 純 化 す る も の で あ る . 因 子 分 析 と は , 観 測

変 数 に 共 通 す る 因 子 を 探 し 出 す 手 法 で あ り , 観 測 変 数 の 背 景 に あ る 何 ら か の 共 通

性 を 設 定 す る も の で あ る .

(15)

表 1-1

既存分析法を SC のデータに適用した際の問題

SC データの質的内容の

分析法が満たすべき事項

既 存 分 析 法 を SC の デ ー タ に 適 用 し た 際 の 問 題

原 因

結 果

I1: デ ー タ 内 の 全 て の 言 及

内 容 を 対 象 に , そ の 言 及 内

容 を 網 羅 的 に 明 ら か に

解 釈 不 明 な 言 及 内 容 の

確 認 手 続 き を 定 め て い

な い

解 釈 不 明 な 言 及 内 容 が

多 く 残 る 可 能 性 が あ る

I2: デ ー タ 内 の 全 て の 話 題

展 開 を 対 象 に , そ の 話 題 展

開 を 網 羅 的 に 明 ら か に

分 析 す る 手 続 き が 無 い

分 析 が で き な い

I3: 言 及 内 容 (I1) と 話 題 展

開 (I2)の 数 量 を 明 ら か に

同 様 の も の を 同 じ 概 念

で 抽 出 す る 手 続 き が 無

同 様 の も の を 異 な る 概

念 で 抽 出 す る リ ス ク が

あ る ( 数 量 的 確 認 が で

き な い )

析 法 の 手 続 き 上 の 暗 黙 の 前 提 と な っ て い る と 考 え る .例 え ば ,観 察 や イ ン

タ ビ ュ ー の 場 合 に は , デ ー タ の 記 録 時 に 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 が あ っ た と

き に は ,そ の 都 度 確 認 で き る .ま た ,観 察 や イ ン タ ビ ュ ー の 後 で 解 釈 不 明

な 言 及 内 容 が あ っ た と き に は , 再 び 観 察 や イ ン タ ビ ュ ー を 行 っ て 確 認 で

き た デ ー タ を 追 加 す る .よ っ て ,デ ー タ の 中 に 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 が 無 い .

ま た ,ア ン ケ ー ト の 場 合 に は ,被 験 者 の 回 答 の 中 に ,解 釈 不 明 な 言 及 内 容

が 出 現 す る こ と を 少 な く す る た め に ,あ ら か じ め 質 問 項 目 を 厳 選 し て ,回

答 を 選 択 方 式 に 設 定 す る .加 え て ,選 択 方 式 の 回 答 を 補 完 す る 目 的 で ,回

答 の 理 由 を 記 述 し て も ら う 自 由 記 述 を 設 定 す る こ と が 多 い .よ っ て ,デ ー

タ の 中 に 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 は 少 な い .一 方 で ,

SC のデータの場合には,

分 析 者 が

SC に参加していないため,データの記録時に解釈不明な言及内

容 を そ の 都 度 確 認 す る こ と は で き な い .ま た ,

SC でのやりとりの内容は,

通 常 は

SC の参加者が自由に設定するので,解釈不明な言及内容の出現を

分 析 者 が あ ら か じ め 少 な く す る こ と は で き な い .よ っ て ,デ ー タ の 中 に 解

釈 不 明 な 言 及 内 容 が あ っ た と き に は ,

SC のデータを補完できそうな他の

(16)

デ ー タ (

SC のデータ以外の関連した記録,SC の参加者へのインタビュ

ー の 記 録 ) を 確 認 す る 手 続 き が 明 示 さ れ て い る 必 要 が あ る .

し か し な が ら ,既 存 分 析 法 で は ,解 釈 不 明 な 言 及 内 容 の 確 認 を 可 能 と す

る 手 続 き は 定 め ら れ て い な い .そ の 結 果 ,

SC のデータに適用した際には,

他 の デ ー タ を 確 認 し な い こ と が 原 因 で , 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 が 多 く 残 る

可 能 性 が あ る .こ の た め ,「 I1: デ ー タ 内 の 全 て の 言 及 内 容 を 対 象 に ,そ

の 言 及 内 容 を 網 羅 的 に 明 ら か に 」 の 事 項 を 満 た す こ と が 難 し く な る .

次 に ,

「 I2:デ ー タ 内 の 全 て の 話 題 展 開 を 対 象 に ,そ の 話 題 展 開 を 網 羅 的

に 明 ら か に 」の 事 項 に 関 す る 問 題 の 原 因 と 結 果 に つ い て 述 べ る .

SC のデ

ー タ の 場 合 に は ,

1.1.1 でも述べたように,データ内のメッセージを跨ぐ

話 題 の 関 連( 連 結 )を 分 析 し て ,

2 者間でやりとりされた全ての話題展開

を 対 象 に , そ の 話 題 展 開 を 網 羅 的 に 明 ら か に す る 必 要 が あ る .

し か し な が ら ,既 存 分 析 法 で は ,

1.1.2 で述べたように,データから主

要 だ と 解 釈 で き る 質 的 内 容 を 取 捨 選 択 し て 中 核 的 な 概 念 と し て 抽 出 す る .

よ っ て ,そ も そ も 既 存 分 析 法 に は ,

2 者間でやりとりされた話題展開を明

ら か に す る 手 続 き が 無 く ,既 存 分 析 法 を そ の ま ま 適 用 す る だ け で は ,メ ッ

セ ー ジ を 跨 ぐ 全 て の 話 題 の 関 連( 連 結 )を 分 析 し て ,デ ー タ 内 の 全 て の 話

題 展 開( 記 入 者 と 話 題 の 集 合 ,お よ び 連 結 の 集 合 )を 対 象 に 分 析 す る こ と

自 体 が で き な い .こ の た め ,

「 I2:デ ー タ 内 の 全 て の 話 題 展 開 を 対 象 に ,そ

の 話 題 展 開 を 網 羅 的 に 明 ら か に 」 の 事 項 を 満 た す こ と が で き な い .

最 後 に ,

「 I3:言 及 内 容 (I1)と 話 題 展 開 (I2)の 数 量 を 明 ら か に 」の 事 項 に

関 す る 問 題 の 原 因 と 結 果 に つ い て 述 べ る .

SC のデータの場合には,当該

ペ ア の 対 人 関 係 の 進 展 具 合 や ,対 話 の 特 徴 を 分 析 す る た め に ,

SC のデー

(17)

に す る 必 要 が あ る .

し か し な が ら ,既 存 分 析 法 は ,デ ー タ の 質 的 内 容 を 表 す 概 念 を 抽 出 す る

こ と 自 体 が 目 的 で あ り ,抽 出 し た 概 念 の 数 量 的 な 確 認 は 想 定 し て い な い .

同 様 の も の を 同 じ 概 念 で 抽 出 す る 厳 密 さ は 無 く て も よ く , 同 様 の も の を

同 じ 概 念 で 抽 出 す る た め の 手 続 き が 無 い .そ の 結 果 ,既 存 分 析 法 に は ,同

様 の も の を 異 な る 概 念 で 抽 出 す る リ ス ク が あ り , 抽 出 し た 概 念 を 数 量 的

に 確 認 す る こ と が 困 難 で あ る . こ の た め ,「 I3:言 及 内 容 (I1)と 話 題 展 開

(I2)の 数 量 を 明 ら か に 」 の 事 項 を 満 た す こ と が で き な い .

1.2 本研究の目的と課題

以 上 の こ と か ら ,本 研 究 で は ,様 々 な

SC(例えば,ペンパルとの文通

や ,友 達 と の 交 換 日 記 ,そ し て ,受 講 生 と 教 員 と の 間 の や り と り )の デ ー

タ を 対 象 に し て ,既 存 分 析 法 で は 困 難 で あ っ た

I1~I3 の 3 つの事項を満

た す ,新 た な 質 的 デ ー タ 分 析 法( 以 下 ,提 案 分 析 法 )を 開 発 す る こ と を 目

的 と す る .

筆 者 は , こ の 目 的 を 達 成 す る た め に は , 以 下 に 示 す ① ~ ③ の

3 つの課

題 が あ る と 考 え る .

課 題 ① : 実 際 の SC デ ー タ を 取 得 す る 必 要 が あ る

課 題 ② : SC デ ー タ を 対 象 に し た 新 た な 分 析 法 を 開 発 す る 必 要 が あ る

課 題 ③ : 抽 出 し た 概 念 を 用 い た 分 析 の 可 能 性 を 検 証 す る 必 要 が あ る

ま ず ,

SC のデータは,プライバシー等の被験者保護の見地から,他の

研 究 者 か ら 譲 ら れ る よ う な も の で は な く , 本 研 究 と し て 被 験 者 に 同 意 を

得 た 上 で 新 た に 取 得 す る 必 要 が あ る ( 課 題 ① ).

(18)

次 に ,

1.1.3 で述べたように,SC のデータに既存分析法を適用した際

に は い く つ か の 問 題 が 引 き 起 こ さ れ る こ と が 予 想 さ れ る が , 既 存 分 析 法

の 手 続 き の 全 て に 問 題 の 原 因 が あ る 訳 で は な い .本 研 究 で は ,既 存 分 析 法

を 基 盤 に し て 一 部 の 手 続 き を 改 良 す る こ と で 提 案 分 析 法 を 開 発 す る ア プ

ロ ー チ を 採 用 す る .そ こ で ,

3 つの事項(I1~I3)を満たす分析法を開発す

る た め に は ,既 存 分 析 法 の 手 続 き の 何 処 に 問 題 の 原 因 が あ り ,そ の 改 良 の

た め の 要 件 は 何 か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る .そ し て ,そ の 要 件 を 満 た す

よ う に 提 案 分 析 法 を 開 発 す る 必 要 が あ る ( 課 題 ② ).

最 後 に ,提 案 分 析 法 に よ っ て 抽 出 し た 概 念 が ,既 存 分 析 法 で は 想 定 し て

い な か っ た 数 量 的 確 認 を 可 能 と で き た な ら ば , 具 体 的 に ど の よ う な 分 析

が 可 能 と な る の か ,つ ま り ,提 案 分 析 法 の 分 析 の 可 能 性 を 検 証 す る 必 要 が

あ る ( 課 題 ③ ).

そ こ で ,本 研 究 で は ,ま ず ,課 題 ① を 解 決 す る た め に ,

SC のデータを

収 集 す る た め の 媒 体 の 要 求 を 明 ら か に す る . そ し て , そ の 要 求 を 満 た す

SC 媒体の"iConversation"を実装して,実際に授業で使用して評価を行

う .

次 に ,課 題 ② を 解 決 す る た め に ,既 存 分 析 法 を 基 盤 に し て 一 部 の 手 続 き

を 改 良 す る 要 件 を 明 ら か に す る .そ し て ,そ の 要 件 を 満 た す 新 た な 質 的 デ

ー タ 分 析 法 の "

KeyPaSS"を開発して,その評価を行う.

最 後 に ,課 題 ③ を 解 決 す る た め に ,

iConversation を使って収集したデ

ー タ に

KeyPaSS を適用して抽出した概念を用いて,その分析の可能性を

検 証 す る .

(19)

1.3 本論文の構成

本 論 文 は ,

5 章で構成されている.本論文の構成を図 1-1 に示す.

1 章(本章)は序章である.

2 章では,SC 媒体の要求と,SC 媒体の iConversation の実装と評価に

つ い て 述 べ る .

3 章では,SC のデータに既存分析法を適用することの問題点と,本研

究 で 開 発 し た 提 案 分 析 法 の

KeyPaSS の概要について述べる.

4 章では,iConversation で収集したデータに KeyPaSS を適用した結

果 を 用 い て , そ の 分 析 の 可 能 性 に つ い て 述 べ る .

そ し て ,

5 章では, 本研究の結論について述べる.

第1章

序論

第2章

シャトルコミュニケーション

の媒体の実装

第3章

シャトルコミュニケーション

の分析法の開発

第4章

提案分析法の可能性の検証

第5章

結論

図 1-1 本論文の構成

(20)

2章

シャトルコミュニケーションの媒体の実装

本 章 で は , 実 際 の シ ャ ト ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン (

SC)のデータの取得

を 目 的 と し て ,ま ず ,

SC の媒体の要求を明らかにする.そして,その要

求 を 満 た す

SC の媒体の実装と使用,およびその評価について述べる.

2.1 はじめに

SC のデータは,プライバシー等の被験者保護の見地から,他の研究者

か ら 譲 ら れ る も の を 使 用 す る の で は な く , 本 研 究 と し て 被 験 者 に 同 意 を

得 た 上 で 新 た に 取 得 す る 必 要 が あ る .そ の た め ,本 研 究 で は ,

1.1.1 で挙

げ た

SC の具体例の中から,「授業での受講生と教員との間のやりとり」

に 着 目 し て , そ の デ ー タ を 新 た に 取 得 す る .

し か し な が ら ,「 授 業 で の 受 講 生 と 教 員 と の 間 の や り と り 」に 関 す る 先

行 研 究

[1]-[8]

で は , 授 業 に お け る

SC の実践事例が報告されていても,SC

の 媒 体 は 様 々 な 形 式 の も の が 使 用 さ れ て い る .そ の た め ,本 研 究 に お い て

SC の媒体の要求分析を行い,その要求を満たす SC の媒体を実装してか

ら , 実 際 の 授 業 で 使 用 す る 必 要 が あ る .

そ こ で , ま ず ,

SC としても適切なデータが記録できて,かつ,SC デ

ー タ の 取 得 に 協 力 し て く れ る 協 力 者 に と っ て も 適 切 な

SC が行える媒体

の 要 求 を 明 ら か に す る .次 に ,そ の 要 求 を 満 た す よ う に 本 研 究 で 開 発 し た

SC の媒体の実装について述べる.そして,その実装した SC の媒体を用

い た 実 際 の 授 業 に お け る 実 践 に つ い て 述 べ る .最 後 に ,実 装 し た

SC の媒

体 の 使 用 結 果 と ,協 力 者 を 対 象 と し た ア ン ケ ー ト の 結 果 に 基 づ き ,要 求 と

取 得 し た デ ー タ の 評 価 に つ い て 述 べ る .

(21)

2.2 背景と課題

本 研 究 で 取 得 す る

SC のデータに関する背景と選択,および本研究の課

題 に つ い て 述 べ る .

2.2.1 取得する SC のデータに関する背景と選択

近 年 , 研 究 対 象 と な る 被 験 者 の プ ラ イ バ シ ー 等 の 保 護 が 重 視 さ れ る よ

う に な っ た

[9][10]

.同 様 の 見 地 か ら ,

SC のデータは他の研究者から譲られ

る も の を 使 用 す る の で は な く , 本 研 究 と し て 被 験 者 に 同 意 を 得 た 上 で 新

た に 取 得 す る 必 要 が あ る .

近 年 ,日 本 の 大 学 で ,授 業 に お け る

SC,つまり「授業での受講生と教

員 と の 間 の や り と り 」を 行 う 実 践 が 増 え て い る

[1]-[8]

.そ こ で ,本 研 究 で は ,

こ の

SC に着目して,そのデータの取得を目的に掲げた.なぜなら,この

SC は,1.1.1 で挙げた SC の具体例の 1 つであることと,分析対象とし

て も 適 切 な デ ー タ( 比 較 的 長 期 間 に わ た る

SC であること,かつ,同じ期

間 の 複 数 ペ ア 分 の

SC があること)が得られるからである.

授 業 に お け る

SC は,2 人 1 組(受講生と教員)のペア内で,非同期か

つ 交 互 に 1 つ の メ ッ セ ー ジ を 送 信 す る こ と を 定 期 的 に 繰 り 返 す . 具 体 的

に は , 授 業 の 終 了 時 に , 各 受 講 生 が 教 員 宛 に

1 通のメッセージを送信す

る .そ し て ,次 の 授 業 開 始 時 に ,教 員 が 各 受 講 生 か ら の メ ッ セ ー ジ に 対 す

る 各 返 答 を 送 信 す る .以 上 の や り と り を 授 業 期 間 中 に 繰 り 返 す .よ っ て ,

例 え ば ,週 1 回 の ペ ー ス で 合 計 1 5 回 の 授 業 で あ れ ば ,1 セ メ ス タ ー( お

よ そ 3 ヶ 月 間 ) に わ た る

SC のデータが得られる(単純計算では 30 通の

メ ッ セ ー ジ ). そ し て , そ の ク ラ ス の 受 講 生 が

10 名であったなら,同じ

(22)

期 間 に 同 じ 授 業 を 受 け た

10 ペア分の SC のデータが得られることになる

( 単 純 計 算 で は

30 通×10 ペア=300 通のメッセージ).このことは,SC

の デ ー タ を 対 象 に し た 新 た な 分 析 法 の 開 発 を 目 的 と す る 本 研 究 に と っ て ,

提 案 す る 分 析 法 で デ ー タ 内 の 様 々 な 質 的 内 容 を 分 析 で き る か ど う か の 検

証 の 可 能 性 を 高 め る の で , 大 き な 利 点 で あ る と 考 え る .

2.2.2 本研究の課題

た だ し ,「 授 業 で の 受 講 生 と 教 員 と の 間 の や り と り 」の デ ー タ を 取 得 す

る た め に は , 以 下 の

2 つの課題がある.

ま ず ,先 行 研 究

[1]-[8]

で は ,授 業 に お け る

SC の実践事例が報告されてい

る .し か し な が ら ,先 行 研 究 に お け る

SC の媒体は,共通する点が多いも

の の ,詳 細 を 見 る と 様 々 な 異 な る 形 式( 媒 体 の 種 類 ,記 入 者 と そ の タ イ ミ

ン グ ,媒 体 の 機 能 )が あ る .そ の た め ,ど の よ う な 形 式 の 媒 体 を 用 意 す れ

ば , 適 切 な

SC のデータを記録できるのかが不明である.

次 に ,授 業 で の

SC のデータを取得するためには,当該授業の担当教員

か ら の 協 力 と ,受 講 生 の 承 諾 を 得 る こ と が 必 要 で あ る .特 に ,授 業 の 運 営

面( 受 講 生 の 状 態 把 握 や ,受 講 生 へ の 助 言 等 )か ら 見 て も 役 立 ち そ う な

SC

で あ る と い う ,担 当 教 員 か ら の 認 識 を 得 る 必 要 が あ る( そ の 結 果 ,受 講 生

に と っ て も , 学 習 意 欲 や 授 業 内 容 の 理 解 等 を 向 上 さ せ る こ と に 間 接 的 に

役 立 つ こ と を 期 待 す る ).

以 上 の

2 つの課題を解決するためには,SC の媒体の要求分析を行い,

そ の 要 求 を 満 た す

SC の媒体を実装する必要がある.

(23)

2.3 SC の媒体の要求分析

先 行 研 究

[1]-[8]

に お け る

SC の媒体の形式(媒体の種類,記入者とタイミ

ン グ , 媒 体 の 機 能 ) を 比 較 し た も の が 表 2-1 で あ る .

表 2-1

先行研究での SC の媒体の形式

先 行 研 究

媒 体 の 種 類

記 入 者 と タ イ ミ ン グ

媒 体 の 機 能

鈴 木 (1997)

メ モ 用 紙 な ど

(毎 回 用 意 )

① 授 業 終 了 時 : 受 講 生

② 次 の 授 業 ま で : 教 員

・ 受 講 生 の 記 入 場 所

・ 余 白 に 教 員 の 記 入

織 田 (1995a 等 )

野 崎 ら (2016)

専 用 カ ー ド

「 大 福 帳 」

① 授 業 終 了 時 : 受 講 生

② 次 の 授 業 ま で : 教 員

・ 受 講 生 の 記 入 欄

・ 教 員 の 記 入 欄

(履 歴 確 認 可 )

須 曽 野 ら (2006)

専 用

ウ ェ ブ サ イ ト

「 電 子 大 福 帳 」

① 授 業 終 了 時 : 受 講 生

② 次 の 授 業 ま で : 教 員

③ 随 時 (BBS):

他 受 講 生 ,教 員 ,TA

・ 受 講 生 の 記 入 機 能

・ 教 員 の 記 入 機 能

・ 履 歴 表 示 機 能

・ BBS

向 後 (2007)

e ラ ー ニ ン グ の

テ ス ト 機 能 流 用

「 e 大 福 帳 」

① 授 業 終 了 時 : 受 講 生

② 次 の 授 業 ま で :

教 員 /メ ン タ ー

・ 受 講 生 の 記 入 機 能

・ 教 員 /TA の 記 入 機 能

(履 歴 確 認 不 可 )

鈴 木(

1997)

[1]

は ,メ モ 用 紙 な ど の 紙 媒 体 を 使 っ て

SC を実践している.

毎 回 の 授 業 に お い て , 各 受 講 生 に

B5 判の白紙を 1 枚だけ用意させてお

き ,授 業 の 終 了 時 に ,そ の 紙 に 受 講 生 の 氏 名 と 授 業 で の 疑 問 や 意 見 ,注 文

な ど の メ ッ セ ー ジ を 書 か せ て 提 出 さ せ て い る .そ し て ,教 員 は ,各 受 講 生

か ら 提 出 さ れ た 紙 に 書 か れ た メ ッ セ ー ジ を あ ら か じ め 読 ん で 返 答 を そ れ

ぞ れ 書 き ,次 の 授 業 開 始 時 に 各 受 講 生 に 返 却 し て い る .な お ,や り と り さ

れ る 紙 は , 基 本 的 に は

1 回毎に更新されるので,個々の紙媒体に記録さ

れ て い る メ ッ セ ー ジ の 履 歴 は

1 往復分となる.

織 田 (

1995a,1995b,1998,1999)

[2]

[5]

あ る い は 野 崎 ら (

2016)

[8]

は ,「 大 福 帳 」( あ る い は 「

S-T シャトルカード」)と呼ぶ SC のための専

用 の カ ー ド(

A4 判の厚紙 1 枚,図 2-1 を参照)を使って SC を実践して

い る .カ ー ド に は ,受 講 生 の 氏 名 と 授 業 の 感 想 や 提 案 を 書 く 記 入 欄 ,お よ

び 教 員 か ら の 返 答 の 記 入 欄 が 設 け ら れ て い る . そ の カ ー ド を 各 受 講 生 に

(24)

配 り ,授 業 の 終 了 時 に ,そ の カ ー ド に 各 受 講 生 か ら の 感 想 や 提 案 な ど の メ

ッ セ ー ジ を 書 か せ て 提 出 さ せ て い る .そ し て ,教 員 は ,各 受 講 生 か ら 提 出

さ れ た カ ー ド に 書 か れ た メ ッ セ ー ジ を あ ら か じ め 読 ん で 返 答 を そ れ ぞ れ

書 き ,次 の 授 業 開 始 時 に 各 受 講 生 に 返 却 し て い る .な お ,カ ー ド は 毎 回 同

じ で あ り ,そ こ に 毎 回 メ ッ セ ー ジ が 追 記 さ れ る の で ,全 て の 履 歴 が 記 録 さ

れ る .

須 曽 野 ら(

2006)

[6]

は ,上 記 の「 大 福 帳 」を ウ ェ ブ ブ ラ ウ ザ か ら 利 用 で

き る よ う に し た 専 用 ウ ェ ブ サ イ ト の「 電 子 大 福 帳 」を 使 っ て

SC を実践し

て い る .基 本 的 に は 上 記 の「 大 福 帳 」の 形 式 を 踏 襲 し て お り ,個 々 の 教 員

と 受 講 生 と の メ ッ セ ー ジ の 履 歴 を 表 示 す る 機 能 も 備 え て い る .た だ し ,受

講 生 に よ る メ ッ セ ー ジ の 記 入 時 に は ,電 子 掲 示 板(

BBS)への公開も選択

で き る よ う に な っ て い る .受 講 生 が こ の 機 能 を 選 択 し た 場 合 に は ,そ の 受

講 生 の メ ッ セ ー ジ に 対 し て , 教 員 だ け で は な く ,

TA(ティーチング・ア

シ ス タ ン ト )や 他 の 受 講 生 が ,随 時 メ ッ セ ー ジ を 記 入 で き る よ う に な る .

つ ま り ,受 講 生 と 教 員 の

1 対 1 の SC ではなく,1 対多のコミュニケーシ

ョ ン に な る .

図 2-1 「大福帳」の実物(一部)の写真

(出典:http://ravel.edu.mie-u.ac.jp/~susono/ckaizen-u/daifuku.htm)

(25)

向 後 (

2007)

[7]

は ,

e ラーニング用システムのテスト機能を流用して,

そ れ を「

e 大福帳」と呼んで SC を実践している.受講生がテストの回答

欄 , そ し て 教 員 が そ の 回 答 に 対 す る コ メ ン ト 欄 を 利 用 し て メ ッ セ ー ジ を

記 入 し て い る . た だ し ,「 大 福 帳 」 や 「 電 子 大 福 帳 」 の よ う な 個 々 の 受 講

生 と 教 員 と の メ ッ セ ー ジ の 履 歴 を 表 示 す る 機 能 は 備 え て い な い .

以 上 の 先 行 研 究 を 踏 ま え て ,本 研 究 で は

SC の要求分析の結果を以下に

示 す よ う に 考 え た . 引 き 続 き , 表 2-1 を 参 照 し な が ら 詳 細 を 述 べ る .

【 要 求 1】 メ ッ セ ー ジ の 記 入 者 と そ の タ イ ミ ン グ

① 授 業 の 終 了 時 : 受 講 生

② 次 の 授 業 ま で : 教 員

【 要 求 2】 受 講 生 と 教 員 の 各 々 の 媒 体 の 機 能

・ メ ッ セ ー ジ の 記 入 機 能 + 相 手 と 交 わ し た メ ッ セ ー ジ の 履 歴 表 示 機 能

【 要 求 3】 媒 体 の 種 類

・ 電 子 媒 体

ま ず ,要 求

1 については,全ての実践で行われている SC におけるメッ

セ ー ジ の 記 入 者 と タ イ ミ ン グ で あ り ,こ の や り と り は

1.1.1 で述べた本研

究 の

SC の定義にも合致する.しかしながら,須曽野ら(2006)

[6]

の 実 践

だ け は , 受 講 生 に よ る メ ッ セ ー ジ の 記 入 時 に ,

BBS への公開も選択でき

る よ う に な っ て い る . そ の 結 果 , 受 講 生 と 教 員 に よ る

1 対 1 のやりとり

に 加 え て ,

1 対多のやりとりが含まれることになる.これは,本研究の SC

の 定 義 を 拡 張 し た 複 雑 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に な る た め , 要 求

1 からは

除 外 し た .

次 に , 要 求

2 については,向後(2007)

[7]

以 外 の 実 践 で 用 い ら れ て い

SC の媒体が持つ機能である.鈴木(1997)

[1]

に よ る 実 践 で は ,個 々 の

紙 媒 体 に 記 録 さ れ て い る メ ッ セ ー ジ の 履 歴 は

1 往復分ではあるが存在す

る .一 方 で ,向 後(

2007)

[7]

の 実 践 で は ,相 手 と 交 わ し た メ ッ セ ー ジ の 履

(26)

歴 を 確 認 で き な い 媒 体 を 使 用 し て い る が ,メ ッ セ ー ジ の 記 入 時 に ,こ の 履

歴 を 確 認 で き る よ う な 機 能 を 盛 り 込 む べ き だ っ た と 考 察 し て い る .

最 後 に ,要 求 3 に つ い て は ,先 行 研 究 を 時 系 列 的 に 見 て ユ ー ザ ー( 特 に

教 員 )の 要 求 が ,紙 媒 体 か ら 電 子 媒 体 に 変 化 し た と 推 測 し た か ら で あ る .

具 体 的 に は ,紙 媒 体 の 場 合 に 生 じ る 毎 回 の 授 業 で の 配 布・回 収 の 作 業 と ,

筆 記 具 を 用 い た 記 入 の 手 間 の 両 方 を 削 減 す る 利 点 が あ る と 考 え た .

2.4 SC の媒体の仕様と実装

2.4.1 SC の媒体の仕様

本 研 究 で は ,2.3 で 述 べ た 要 求 1~ 3 を 踏 ま え て ,SC 媒 体 の 仕 様 を 以 下

に 示 す よ う に 決 定 し た . な お , < > 内 に は 対 応 す る 要 求 を 示 し た .

【 仕 様 1】 ウ ェ ブ ア プ リ ケ ー シ ョ ン と し て の 実 装

< 要 求 3 の 「 媒 体 の 種 類 : 電 子 媒 体 」 に 対 応 >

・PC や タ ブ レ ッ ト ,ス マ ー ト フ ォ ン の ブ ラ ウ ザ を 使 用 し た 利 用 を 想 定

( ア プ リ ケ ー シ ョ ン を 事 前 に イ ン ス ト ー ル す る 必 要 が 無 い )

【 仕 様 2】 ロ グ イ ン 機 能 と タ イ ミ ン グ の 制 御 機 能

< 要 求 1 の「 ① 授 業 の 終 了 時:受 講 生 」と「 ② 次 の 授 業 ま で に:教 員 」

に 対 応 >

・ 個 々 の 受 講 生 と 教 員 の 判 別 の た め の ロ グ イ ン 機 能

・ 要 求 1 の ① と ② の タ イ ミ ン グ の た め に , 授 業 日 程 に 合 わ せ た 制 御

機 能 ( 教 員 用 )

【 仕 様 3】 メ ッ セ ー ジ の 記 入 機 能 と 履 歴 表 示 機 能

< 要 求 2 の 「 受 講 生 と 教 員 の 各 々 の 媒 体 の 機 能 」 に 対 応 >

・ 受 講 生 用 : 過 去 に や り と り し た メ ッ セ ー ジ を 見 な が ら , 自 ら の

メ ッ セ ー ジ を 記 入 で き る よ う に ( 特 に , 直 前 の 教 員 か ら の

メ ッ セ ー ジ を 参 照 し な が ら )

・ 教 員 用 : 過 去 に や り と り し た メ ッ セ ー ジ を 見 な が ら , 自 ら の

メ ッ セ ー ジ を 記 入 で き る よ う に ( 特 に , 直 前 の 受 講 生 か ら の

メ ッ セ ー ジ を 参 照 し な が ら )

(27)

【 仕 様 4】 授 業 終 了 時 の ア ン ケ ー ト 調 査 機 能

< 要 求 1~ 3 に は 無 い が , 協 力 者 の 要 望 を 踏 ま え て 新 た に 追 加 >

・ 授 業 /学 習 /教 員 に 関 す る 7 件 法 の 印 象 調 査

ま ず , 仕 様

1 については,PC 教室でのパソコンの使用や,2012 年当

[11]

急 速 に 普 及 し つ つ あ っ た ス マ ー ト フ ォ ン や タ ブ レ ッ ト を 普 通 教 室 で

使 用 す る こ と も 視 野 に 入 れ た .

次 に ,仕 様

2 については,仕様 1 に伴ってウェブアプリケーション(以

下 ,ウ ェ ブ ア プ リ と 記 す )を 利 用 す る 際 の 個 人 認 証 が 必 要 に な っ た こ と と ,

授 業 進 行 の タ イ ミ ン グ に 合 わ せ た 利 用 内 容 の 制 限 ( 授 業 の 開 始 時 と 終 了

時 で メ ッ セ ー ジ が 記 入 で き る ユ ー ザ ー を 入 替 )が 必 要 だ っ た か ら で あ る .

そ し て ,仕 様

3 については,要求 2 をそのまま採用し,SC としての対

話 が 適 切 に 行 え る よ う に し て い る .

最 後 に , 要 求 1 ~ 3 に は 無 か っ た も の を 仕 様

4 として新たに追加して

い る .こ れ は ,授 業 で の

SC を実践する教員として,X 大学の X 教員に対

し て 協 力 を 依 頼 し た と き に , 要 望 と し て 受 け た も の で あ る .

そ の

X 教員は,X 大学における授業で既に SC を実践していた.その

SC は「学習シート」と呼ぶ紙媒体の A4 判用紙を SC のツールとして使

用 し て い た .こ の 学 習 シ ー ト に は ,授 業 開 始 時 の 学 習 意 欲 と 授 業 終 了 時 の

満 足 度 を

5 件法で記録する欄と,授業や教員に対する意見や質問を自由

に 記 述 す る 欄 が 設 け て あ る( そ の 欄 の 余 白 に 教 員 か ら の 返 答 も 記 述 ,余 白

が 無 い 場 合 に は 当 該 受 講 生 に 対 し て 直 接 電 子 メ ー ル を 送 信 す る ).

X 教員を選定した理由は,まず,既に授業での SC の経験を持つ教員で

あ る こ と .次 に ,そ の

SC では,X 教員は毎回必ず全受講生が記録した学

習 意 欲 と 満 足 度 ,お よ び 自 由 記 述 欄 の 記 述 を 確 認 し て ,全 受 講 生 に 対 し て

(28)

個 々 に 返 答 し て い る こ と . さ ら に は , そ の 授 業 は

100 人以上が受講して

お り ,毎 回

SC に丸一日を費やしていること.以上のことから,X 教員は

受 講 生 と の

SC を丁寧に行っていることが予想され,本研究で取得する

SC のデータとして適切なものが得られると判断した.

2.4.2 実装した SC 媒体の iConversation の概要

本 研 究 で は ,

2.4.1 で述べた仕様 1~4 を踏まえて,SC の媒体を実装し

た . 筆 者 ら は こ の

SC の 媒 体 を 「 iConversation 」

(interpersonal-Conversation system for teacher - learner human relations,以下 iCon

と 記 す

)と名付けた

[12]

. な お ,

iCon の概要については付録 A として掲載

し た の で 参 照 さ れ た い .

( 1) 仕 様 1 の 実 装

iCon は,ウェブアプリとして実装し,サーバー側(MacOS サーバ)に,

複 数 の プ ロ グ ラ ミ ン グ 言 語(

HTML,CSS,JavaScript,PHP,MySQL)

を 用 い て 開 発 し た .ク ラ イ ア ン ト 側 か ら の ア ク セ ス に つ い て は ,ブ ラ ウ ザ

Firefox を使用した場合には問題無く動作することを確認した(他のブ

ラ ウ ザ だ と 一 部 の イ ン タ フ ェ ー ス で デ ザ イ ン が 崩 れ る 不 具 合 を 確 認 し た .

ブ ラ ウ ザ の 仕 様 の 違 い と 推 測 し た が , 詳 し い 原 因 は 不 明 だ っ た ).

( 2) 仕 様 2 の 実 装

iCon のログイン機能のインタフェースを図 2-2 に示す.個々の受講

生 と 教 員 は ,事 前 に 個 別 に 配 布 さ れ た ID と パ ス ワ ー ド に よ り ,

iCon にロ

グ イ ン す る .

受 講 生 の 場 合 に は , 授 業 の 開 始 時 に , 教 員 か ら の メ ッ セ ー ジ を 読 む た

め に ロ グ イ ン で き る が , こ の タ イ ミ ン グ で は メ ッ セ ー ジ を 記 入 す る こ と

(29)

は で き な い .一 方 で ,授 業 の 終 了 時 に は ,ロ グ イ ン し て 教 員 へ の メ ッ セ ー

ジ を 記 入 す る こ と が で き る .

図 2-2 ログイン機能のインタフェース

教 員 の 場 合 に は , 授 業 終 了 時 か ら 次 の 授 業 の 開 始 時 ま で に , 個 々 の 受

講 生 か ら の メ ッ セ ー ジ を 読 ん で , 個 々 の 受 講 生 へ の メ ッ セ ー ジ を 記 入 す

る こ と が で き る .ま た ,教 員 は 随 時 ,授 業 日 程 と 授 業 進 行 に 合 わ せ た メ ッ

セ ー ジ の 記 入 の タ イ ミ ン グ を 制 御 す る た め の 制 御 機 能( 教 員 用 )も 利 用 す

る こ と が で き る . そ の イ ン タ フ ェ ー ス を 図 2-3 に 示 す .

図 2-3

タイミングの制御機能のインタフェース(教員用)

( 3) 仕 様 3 の 実 装

iCon のメッセージの記入機能と履歴表示機能について,受講生用のイ

ン タ フ ェ ー ス を 図 2-4 に 示 す . こ れ ら は , ス マ ー ト フ ォ ン の メ ッ セ ー ジ

ア プ リ の デ ザ イ ン を 参 考 に し て ,各 機 能 を 1 つ の 画 面 上 に 配 置 し た .な お ,

教 員 用 も こ れ ら 機 能 の 部 分 に つ い て は 同 じ デ ザ イ ン で あ る が , 仕 様

4 の

ア ン ケ ー ト 調 査 機 能 で の 個 々 の 受 講 生 の 回 答 を 確 認 す る 機 能 等 を 追 加 し

た デ ザ イ ン と な っ て い る . 詳 細 は , 付 録 A を 参 照 さ れ た い .

(30)

ま ず ,受 講 生 と 教 員 が 交 わ し た 過 去 の メ ッ セ ー ジ は ,時 系 列 的 に 交 互 に

並 べ る 形 式 ( チ ャ ッ ト ・ シ ス テ ム の よ う な 形 式 ) で 図 2-4 中 の (イ )に 示

す 領 域 に 表 示 す る よ う に し た . メ ッ セ ー ジ が 授 業 回 数 と 年 月 日 と と も に

表 示 さ れ て お り ,常 に 最 新 の メ ッ セ ー ジ( 直 前 の 相 手 か ら の メ ッ セ ー ジ )

が 最 終 行 に 追 加 表 示 さ れ る . 全 て の 履 歴 が 表 示 さ れ て い る わ け で は な い

が ,領 域 の 大 き さ は そ の ま ま に ,ス ク ロ ー ル さ せ る こ と が 可 能 な の で ,ス

ク ロ ー ル バ ー に よ り 縦 方 向 に ス ラ イ ド さ せ る と , 過 去 の 全 て の メ ッ セ ー

ジ が 確 認 で き る よ う に な っ て い る .

図 2-4 メッセージ関連のインタフェース(受講生用)

次 に , メ ッ セ ー ジ の 記 入 機 能 に 関 し て は , 図 2-4 中 の (ロ )に 示 す 領 域

に 入 力 で き る よ う に し た .

1 行あたり全角文字で 18 文字(半角で 36 文

字 )入 力 で き ,最 大 で

12 行(合計 216 文字)分の領域が表示されている

が ,さ ら に 文 字 を 追 加 す る こ と も 可 能 に し て い る .そ の と き は ,領 域 の 大

(イ)履歴表示機能

(ロ)メッセージの記入機能

(31)

き さ は そ の ま ま に ,メ ッ セ ー ジ が ス ク ロ ー ル し て い く の で ,ス ク ロ ー ル バ

ー に よ り 縦 方 向 に ス ラ イ ド さ せ る と

1 通のメッセージの全体を確認でき

る .な お ,送 信 時 に こ の メ ッ セ ー ジ の 中 に テ キ ス ト が 一 切 入 力 さ れ て い な

い 場 合 に は ア ラ ー ト を 表 示 す る .

( 4) 仕 様 4 の 実 装

iCon の授業終了時のアンケート調査機能のインタフェースを図 2-5 に

示 す .こ れ は 受 講 生 専 用 の 機 能 で あ り ,メ ッ セ ー ジ の 記 入 機 能 へ の テ キ ス

ト の 入 力 を 完 了 し て 「 次 へ 」 の ボ タ ン を 押 し た 後 に 表 示 さ れ る .

図 2-5 授業終了時のアンケート調査機能のインタフェース

こ の 調 査 項 目 は ,当 該 授 業 の 担 当 教 員 と 筆 者 が ,あ ら か じ め 検 討 し た .

当 該 授 業 回 の 授 業 に 対 す る「 意 欲 」,当 該 授 業 回 の 授 業 内 容 に 関 す る「 興

(32)

味 」と「 理 解 」の

2 項目,当該授業回での教員に対する「親しみ」と「好

意 」 の

2 項目,当該授業回の総合的な「満足度」の合計 6 項目を調査項

目 と し て 選 択 し た .な お ,送 信 時 に こ の 回 答 が 未 入 力 の 項 目 が あ っ た 場 合

に は ア ラ ー ト を 表 示 す る .

2.5 実装した SC 媒体を用いた実践と評価

実 装 し た

SC 媒体の iCon を用いて実際の授業で実践を行い,SC の媒

体 の 要 求 と 取 得 し た デ ー タ の 評 価 を 行 う .

2.5.1 評価実験の概要

( 1) 評 価 実 験 の 目 的

SC の媒体の要求は適切であり,取得した SC のデータは適切だったか

ど う か を 明 ら か に す る .

( 2) 評 価 実 験 の 対 象

評 価 実 験 の 対 象 は 以 下 の 通 り で あ る .な お ,こ の

iCon を用いたデータ

の 記 録 と そ の 分 析 は , 受 講 生 と 担 当 教 員 の 双 方 か ら 予 め 承 諾 を 得 て い た

た め ,

X 大学の規定に基づき学術研究倫理審査は受けていない.

・ 科 目 :

X 大学の 2014 年度

2

の 秋 学 期 開 講 科 目 「 情 報 表 現 」

・ 授 業 期 間 :

2014 年 10 月 7 日~2015 年 1 月 27 日

・ 教 室

PC 教室(1 人 1 台の PC,OS:Windows,ブラウザ:Firefox)

SC 媒体:iConversation

2

2012 年度と 2013 年度の授業でも iCon を使用して SC のデータを記録した

が , シ ス テ ム の 不 具 合 や 利 用 の 手 違 い に よ り ,

iCon を使用できなかったり,

デ ー タ が 記 録 で き て い な か っ た り し た 授 業 回 が あ っ た . 本 研 究 と し て は , こ の

よ う な デ ー タ で は ,

SC のデータの質的内容の分析(特に話題展開とその数

量 ) に 影 響 が 出 る と 判 断 し た た め , 本 論 文 で は 全 て の

SC のデータがきちんと

記 録 で き て い る

2014 年度のものを採用した.

表  1-1 既存分析法を SC のデータに適用した際の問題  SC データの質的内容の 分析法が満たすべき事項  既 存 分 析 法 を SC の デ ー タ に 適 用 し た 際 の 問 題原 因結 果 I1: デ ー タ 内 の 全 て の 言 及 内 容 を 対 象 に , そ の 言 及 内 容 を 網 羅 的 に 明 ら か に 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 の確 認 手 続 き を 定 め て いな い 解 釈 不 明 な 言 及 内 容 が多 く 残 る 可 能 性 が あ る I2
図 H-2.対話パターンの時系列的な変化(B 組)
図 H-4.対話パターンの時系列的な変化(D 組)
図 H-7.対話パターンの時系列的な変化(G 組)

参照

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