女性雇用者の QOL と職業性ストレスの関係
−正規雇用と非正規雇用の比較による検討−
Relation between QOL and Occupational Stress in Female Employee
–Examining the Differences between Regular and Non-Regular Employee–
五十嵐久人
1),飯島 純夫
2)IGARASHI Hisato,IIJIMA Sumio
要 旨
女性の正規雇用者と非正規雇用者の QOL と職業性ストレスの特徴や関係を明らかにするためアンケート調 査を行った。測定尺度は SF-36,職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)を用いた。115 名に調査票を配付,98 名(非 正規雇用者 62 名,正規雇用者 36 名)の回答を分析に用いた。SF-36 のスコアが低くなったのは,正規・非正 規雇用者の「活力」,正規雇用者の「心の健康」であった。正規雇用者と非正規雇用者で差は認められなかった。 BJSQ のストレス度が高い項目は正規雇用者の「仕事のコントロール度」,「家族・友人からのサポート」,非正 規雇用者の「自覚的な身体的負担度」「職場環境によるストレス」となった。雇用形態に関わらず,BJSQ のス トレス反応に関する下位尺度は精神的健康度低下に有意に関係していることが認められた。これらより,雇 用形態の違いによる特徴を理解し,それらに応じた支援ができる労働環境の構築が必要と考える。This study aims to clarify whether characteristics of QOL and the Occupational stress are different between regular and non-regular employees. The researchers used the Brief Job Stress Questionnaire (BJSQ) and the Short Form 36 (SF-36) to measure the effects of occupational stress on quality of life (QOL). 115 workers were given the questionnaires, and 99 people responded (86.1%). Regarding SF-36, the item “vitality” produced a low score among both regular and non-regular employees, and “mental health” produced a low score among regular employees. About BJSQ, the item which increased stress for regular employees were “controlling the amount of work” and “ support from a family and friends”. The items for non-regular employees were “physical difficulty “ and “workplace environmental stress”. Health care practitioners should take into account the labor circumstances of female employees and apply relevant support.
キーワード 女性雇用者,非正規雇用者,QOL,職業性ストレス
Key Words Female Employee,Non-Regular Employee,QOL,Occupational Stress
受理日:2015 年 1 月 30 日
1) 信州大学医学部保健学科:School of Health Science, Shinshu University of Medicine
2) 日本赤十字秋田看護大学大学院:The Japanese Red Cross Akita College of Nursing
このうち非正規雇用者は 1931 万人と雇用者に占める非 正規雇用者の割合は 3 分の 1 を超える。また非正規雇用 者の約 7 割を女性が占めており1)女性の非正規雇用者は 日本経済・産業を支える重要な労働力である。 非正規雇用は労働時間を選びたい者や一時的に就業を 希望する者など条件によっては都合の良い面を持ってい る。しかし,雇用主の都合で雇用契約を終了されたり, 契約期間の満期に伴い職を失ったりする不安定な雇用形 態でもある。平成 22 年賃金構造基本統計調査2)による と平均月収は正規雇用者に比べて低く,差は大きい。所 得格差は生活水準だけでなく平均寿命と関係していると いう指摘3)4)もあり,健康への影響を無視できない。また,
Ⅰ.はじめに
日本の経済・産業構造の変化の中で,企業は正規雇用 者だけでなく,パートタイムやアルバイト,派遣労働者 など非正規雇用者を広く活用してきた。総務省の労働力 調査1)によれば,2013 年には雇用者が 5564 万人おり,非正規雇用者の健診実施率・保健指導実施率は正規雇用 者に比べ非常に低率5 〜 7)であり,雇用形態の違いによる 健康への支援格差も生じている。 現代社会は,様々なストレスとの共存であり,職域に も特有のストレスが存在している。厚生労働省の労働者 健康状況調査8)によると約 60%の労働者が自身の仕事 や,職業生活に関して強い不安,悩み,ストレスを感じ ている。職業性のストレスは様々な健康問題に影響を及 ぼす要因として健康管理の重要な課題となっている。ま た,ライフステージの中で長い時間を過ごす職域での健 康管理は重要であり,効果的な支援を実施するには,問 題の背景や潜在する関連要因の把握が必要である。 2001 年度より国民健康づくり運動(健康日本 21)が開 始され,すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活 力ある社会とするため,様々な活動が行われており,労 働者の QOL を考えた場合,1日の大半を過ごす労働環 境の影響を切り離すことはできない。 これまで,職業性ストレスに関する研究は多数行われ ているが女性雇用者の QOL との関係について検討され ている研究は少なく9),雇用形態の違いによる比較が検 討されているものは見当たらない。 そこで,本研究では中小企業に勤務する女性雇用者を 対象に,QOL と職業性ストレスの特徴や関係が雇用形 態の違いにより異なるのかを,正規雇用者と非正規雇用 者の比較を通して明らかにすることを目的とした。
Ⅱ.用語の定義
「正規雇用者」とは,使用者と雇用者との雇用関係にお いて,期間の定めのない雇用契約に基づき働いている者。 一般的に正社員と言われる雇用形態の者とした。 「非正規雇用者」とは,正規雇用者に該当しない雇用形 態の者を指し,有期雇用契約に基づき働いている者とし た。具体的には,契約社員,嘱託社員,準社員,臨時社 員,季節社員,パートタイマー,アルバイト,派遣社員, 請負社員などが非正規雇用者にあたる。Ⅲ.研究方法
1. 対象および方法 Y 県内の製造業・運輸業などの中小企業 5 事業所に勤 務する女性労働者 115 名を対象とした。産業医の協力を 得て,事業所の衛生管理担当者に研究概要を説明しても らい,研究協力の意思を示した企業に対してアンケート 調査を実施した。調査票の回収は同封した返信用封筒に 入れ,留置き法とした。調査期間は 2012 年 2 月から 4 月である。 2. 倫理的配慮 質問紙は無記名とし,研究参加は自由意志であること, 個人や事業所が特定されないこと,研究によって得られ たデータは,研究目的以外では使用しないことを明記し, 研究の協力同意は,調査紙の返信を持って得られたもの とした。また,本研究は山梨大学医学部倫理委員会の承 認(受付番号 866),および対象となる事業所から協力の 承諾を得て実施した。 3. 調査内容 基本属性として,年齢,婚姻状況,最終学歴,職種, 勤務形態,希望した雇用形態であるか,過去 3 か月間の 残業・休日出勤,勤続年数,1 週間の平均勤務時間,通 院状況で構成されている。 QOL 測定には,疾患の罹患の有無にかかわらず,健 康状態を包括的に評価する尺度として,SF-36v2(MOS 36-Item Short-Form Health Survey version2: 以降,SF-36)10)のスタンダード版を使用する。SF-36 は①身体機 能,②日常役割機能(身体),③体の痛み,④社会生活機 能,⑤全体的健康感,⑥活力,⑦日常役割機能(精神), ⑧心の健康の 8 つ下位尺度と「健康全般についての 1 年 間の変化」を尋ねる 36 項目で構成される。SF-36 は下位 尺度の結果をもとに「身体的健康度を表すサマリースコア (Physical Component Summary:PCS)」と「精神的健康度を 表すサマリースコア(Mental Component Summary:MCS)」 を求める事ができる。これらは日本国民標準値10)の平均値を 50 とした時の相対スコアで求める事ができ,50 より高い方が良好な状態となる。
職業性ストレスの測定には,職業性ストレス簡易調査 票(Brief Job Stress Questionnaire:BJSQ)11)を用いた。
BJSQ は「仕事のストレス要因」,「ストレス反応」,「修 飾要因」の 3 つの枠組みがある。「仕事のストレス要因」 は 9 下位尺度,「ストレス反応」は 6 下位尺度,「修飾要因」 は 4 下位尺度で構成される 58 項目の調査票である。回 答は「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の 4 件法である。本研究では尺度作成者らによって作成さ れた素点換算表を用い,ストレスが「低い(少ない)」,「や や低い(やや少ない)」,「普通」,「やや高い(やや多い)」, 「高い(多い)」の順に 1 から 5 点を与えた。 4. 分析方法 基本属性の比較には χ2検定,および t 検定を用いた。 SF-36 および BJSQ のスコア比較には,Mann-Whitney U 検定を用いた。PCS および MCS と BJSQ の関係を 確認するため,Spearman の順位相関係数を用いた。 分析には統計解析ソフト IBM SPSS Statistic19.0 を用 いた。
Ⅳ.結果
115 名に対して調査票を配付し,99 名から回収を得た。 回収率は 86.1%であった。回答に欠損のあった 1 名を除 いた 98 名(非正規雇用者 62 名,正規雇用者 36 名)を分 析対象者とした。 1. 対象の概要 非正規雇用者の雇用形態内訳は契約社員 6 名(9.7%), 派遣社員 5 名(8.1),パート・アルバイト 50 名(80.6%), その他 1 名(1.6%)であった。対象の基本属性を表 1 に 示す。「年齢」は正規雇用者 39.3±9.8 歳,非正規雇用者 44.4±14.7 歳となり , 正規雇用者の方が有意に高くなっ た。職種は,正規雇用者で「事務職」,非正雇用者で「運輸・ 通信職」が最も多くなった。「希望した雇用形態であるか」 は「希望したもの」と回答したのは正規雇用者 35 名 (97.2%),非正規雇用者 52 名(83.9%)で差は認められな かった。非正規雇用者も 8 割以上が希望の雇用形態での 就業であった。「勤続年数」は正規雇用者 12.3±8.6 年, 非正規雇用者 9.7±10.1 で正規雇用者の方が有意に長く なった。「1週間の平均勤務時間」は正規雇用者 44.5±6.7 (h),非正規雇用 32.3±10.5(h)で,正規雇用者の方が有 意に長くなった。 2. QOL 尺度について SF-36 の 8 つの下位尺度および PCS,MCS のスコア の比較を表 2 に示す。SF-36 の下位尺度のスコアが低い 項目は,正規雇用者は「活力」43.9±9.4 が最も低く,次い で「心の健康」45.8±9.4,「全体的健康感」46.7±10.3 となっ た。非正規雇用者は「活力」44.6±10.7 が最も低く,次い で「体の痛み」47.5±10.0,「心の健康」47.8±10.2 となった。 「活力」は疲労状況を示しており,正規雇用者,非正規雇 用者共に疲労感を持った雇用者が多い結果となった。ま た,正規雇用者においては「心の健康」のスコアも低く, 神経質で憂鬱な気分の雇用者が多い結果となった。 SF-36 の 8 つの下位尺度においては雇用形態の違いに 表 1 基本属性 項目 正規(n=36) 非正規(n=62) p 値 n (%) n (%) 年齢(歳)※ 39.3±9.8 44.4±14.7 0.000*** (range:19-64) (range:22-64) 婚姻状況(既婚/未婚) 既婚 23 (63.9) 48 (77.4) 0.148 ns 最終学歴 中学 0 (0.0) 5 (8.1) 0.360 ns 高校 22 (61.1) 37 (59.7) 短大・専門学校 11 (30.6) 16 (25.8) 大学・大学院 3 (8.3) 4 (6.5) 職種 管理職 0 (0.0) 1 (1.6) 0.000 *** 生産労務職 15 (41.7) 14 (22.6) 営業・販売職 0 (0.0) 1 (1.6) 事務職 19 (52.8) 5 (8.1) 研究・技術職 2 (5.6) 0 (0.0) 運輸・通信職 0 (0.0) 35 (56.5) その他 0 (0.0) 6 (9.7) 勤務形態 日勤 36 (100.0) 56 (90.3) 0.156 ns 交代制勤務 0 (0.0) 4 (6.5) その他 0 (0.0) 2 (3.2) 希望した雇用形態であるか 希望したもの 35 (97.2) 52 (83.9) 0.051 ns 過去 3 か月間の残業・休日出勤 ほとんどなし 11 (30.6) 34 (54.8) 0.011 * 多少あり 16 (44.4) 24 (38.7) たくさんあり 9 (25.0) 4 (6.5) 勤続年数(年)※ 12.3±8.6 9.7±10.1 0.000*** (range:2.0-26.0) (range:0.5-23.0) 1 週間の平均勤務時間(h)※ 44.5±6.7 32.3±10.5 0.000*** (range:40.0-68.0) (range:6.5-70.0) 通院状況 通院している 10 (27.8) 11 (17.7) 0.243 ns 注) χ2検定 1 セルの期待値が 5 未満の場合 Fisher の正確確率法 ※ t検定 * :p<0.05 *** :p<0.001 ns: not significantよる差は認められなかった。PCS のスコアは正規雇用者 で 53.2±7.1,非正規雇用者で 52.7±8.5 となり,MCS の スコアは正規雇用者で 44.0±9.5,非正規雇用者で 45.4± 10.6 となり共に差は認められなかった。PCS,MCS は 日本国民標準値の平均値を 50 とした時の相対スコアで あり,その値に比べ,正規雇用者,非正規雇用者共に身 体的健康度は高く,精神的健康度が低い対象であった。 また,通院状況と PCS,MCS の相関を確認したところ, 正規雇用者で,通院している者ほど PCS のスコアが有 意に低くなっていた(r=-0.39 p < 0.05)。 3. 職業性ストレスについて BJSQ の下位尺度のスコアの比較を表 3 に示す。スト レス度が高い傾向を示した項目は,正規雇用者において, 仕事のストレス要因の「仕事のコントロール度」3.58± 0.69,修飾要因の「家族・友人からのサポート」4.03±1.11, 「上司からのサポート」3.64±0.83 となった。非正規雇用 者においては,仕事のストレス要因の「自覚的な身体的負 担度」4.11±0.91,「職場環境によるストレス」3.97±1.02, 修飾要因の「家族・友人からのサポート」3.58±1.34 となった。 雇用形態による比較で正規雇用者のストレス度が有意 に高くなったのは,仕事のストレス要因の「仕事のコン トロール度」,「働きがい」,修飾要因の「上司からのサポー ト」,「同僚からのサポート」,「仕事や生活の満足度」と なった。非正規雇用者の方が有意に高くなったのは,仕 事のストレス要因の「自覚的な身体的負担度」,「職場環 境によるストレス」であった。 また,「身体愁訴」と「通院」の相関を確認したところ, 正規雇用者で通院している者ほど「身体愁訴」のスコアが 高くなっていた(r=-0.46 p < 0.01)。 4. QOL と職業性ストレスの関係 PCS および MCS と BJSQ の相関を表 4 に示す。PCS と有意な相関が認められたのは,正規雇用者で「心理的 な仕事の負担(量)」,「心理的な仕事の負担(質)」,「技能 の活用度」,「身体愁訴」となった。非正規雇用者は PCS との有意な相関は認められなかった。MCS と有意な相 関が認められたのは,正規雇用者で「活気」,「イライラ 感」,「疲労感」,「不安感」,「抑うつ感」,「身体愁訴」となっ た。非正規雇用者では「職場の対人関係ストレス」,「仕 事の適性度」,「働きがい」,「活気」,「イライラ感」,「疲 労感」,「不安感」,「抑うつ感」,「身体愁訴」,「同僚から のサポート」,「仕事や生活の満足度」となった。
Ⅴ.考察
研究実施にあたり,非正規雇用者の QOL が低くなる のではないかと想定していたが,正規雇用者と非正規雇 用者の間で差は認められなかった。また,正規雇用者, 非正規雇用者とも日本国民標準値より PCS のスコアが 高く,MCS のスコアは低い値となった。これは調査対 象の特徴か,中小企業で働く女性全体の傾向かについて はサンプル数を増やした検討が必要である。 職業性ストレスについて正規雇用者の方が「仕事のコ ントロール度」「働きがい」「上司からのサポート」「同 僚からのサポート」でストレス度が高くなった。内閣府 の国民生活白書12)によると正規雇用者の疲れやストレ スの主な要因として「仕事量が多い」,「仕事の責任が重 い」,「働く時間が長い」が上位に挙がっており,時間的 拘束が強く,仕事に追われる状況にある。また,「職場 の人間関係が悪い」,「相談する相手がいない」といった 要因も挙げられており,職場内での人間関係の希薄化を 表 2 SF-36 の下位尺度およびサマリースコアの比較 項目 正規(n=36) 非正規(n=62) z 値 p 値 Mean ± SD Mean ± SD 身体的健康度のサマリースコア (PCS) 53.2 ± 7.1 52.7 ± 8.5 -0.15 0.88 ns 精神的健康度のサマリースコア (MCS) 44.0 ± 9.5 45.4 ± 10.6 -0.57 0.57 ns 身体機能 53.7 ± 8.2 52.3 ± 6.8 -1.60 0.11 ns 日常役割機能(身体) 49.4 ± 8.4 50.7 ± 9.4 -1.23 0.22 ns 体の痛み 48.4 ± 9.2 47.5 ± 10.0 -0.12 0.90 ns 全体的健康感 46.7 ± 10.3 48.8 ± 9.1 -0.63 0.53 ns 活力 43.9 ± 9.4 44.6 ± 10.7 -0.43 0.67 ns 社会生活機能 49.8 ± 7.4 49.0 ± 10.0 -0.17 0.86 ns 日常役割機能(精神) 49.9 ± 8.9 50.5 ± 9.5 -0.40 0.69 ns 心の健康 45.8 ± 9.4 47.8 ± 10.2 -0.90 0.37 ns 注) Mann-Whitney U 検定 ns: not significant表 3 BJSQ の下位尺度スコアの比較 項目 正規(n=36) 非正規(n=62) z 値 p 値 Mean ± SD Mean ± SD 仕事のストレス要因 心理的な仕事の負担(量)心理的な仕事の負担(質) 2.97 2.89 ±± 1.04 0.84 2.68 3.02 ±± 0.86 0.88 -0.43 -1.33 0.18 ns0.67 ns 自覚的な身体的負担度 3.00 ± 0.93 4.11 ± 0.91 -5.04 0.00 *** 職場の対人関係ストレス 2.75 ± 1.02 2.87 ± 1.02 -0.50 0.62 ns 職場環境によるストレス 3.03 ± 1.34 3.97 ± 1.02 -3.48 0.00 *** 仕事のコントロール度 3.58 ± 0.69 2.90 ± 0.92 -3.87 0.00 *** 技能の活用度 2.61 ± 0.77 2.34 ± 0.96 -1.49 0.14 ns 仕事の適性度 3.25 ± 0.97 3.15 ± 1.23 -0.62 0.53 ns 働きがい 3.17 ± 0.81 2.73 ± 1.13 -2.42 0.02 * ストレス反応 活気 3.31 ± 1.01 3.19 ± 1.30 -0.30 0.77 ns イライラ感 2.92 ± 1.13 2.95 ± 1.03 -0.15 0.88 ns 疲労感 3.06 ± 1.01 2.82 ± 1.05 -1.00 0.32 ns 不安感 2.72 ± 1.09 2.76 ± 1.08 -0.04 0.97 ns 抑うつ感 2.86 ± 1.10 2.61 ± 1.14 -1.06 0.29 ns 身体愁訴 3.03 ± 1.21 2.76 ± 1.13 -1.12 0.26 ns 修飾要因 上司からのサポート 3.64 ± 0.83 2.77 ± 0.91 -4.09 0.00 *** 同僚からのサポート 2.97 ± 1.00 2.55 ± 0.97 -2.10 0.04 * 家族・友人からのサポート 4.03 ± 1.11 3.58 ± 1.34 -1.58 0.11 ns 仕事や生活の満足度 3.11 ± 0.89 2.66 ± 0.92 -2.09 0.04 * 注) Mann-Whitney U 検定 * :p<0.05 *** :p< 0.001 ns: not significant 表 4 PCS および MCS と BJSQ の相関 PCS MCS 正規 非正規 正規 非正規 仕事のストレス要因 心理的な仕事の負担(量) -0.36 * -0.01 -0.22 -0.23 心理的な仕事の負担(質) -0.35 * -0.16 0.11 0.08 自覚的な身体的負担度 -0.05 0.05 -0.08 0.13 職場の対人関係ストレス 0.02 -0.02 -0.12 -0.32 * 職場環境によるストレス -0.08 0.04 -0.31 -0.22 仕事のコントロール度 -0.09 0.11 -0.19 -0.20 技能の活用度 -0.33 * -0.08 0.12 -0.21 仕事の適性度 0.02 0.05 0.04 -0.49 *** 働きがい -0.11 0.00 -0.08 -0.47 *** ストレス反応 活気 -0.22 0.13 -0.52 ** -0.59 *** イライラ感 -0.11 0.06 -0.68 *** -0.34 ** 疲労感 -0.25 0.22 -0.70 *** -0.59 *** 不安感 -0.29 -0.16 -0.52 ** -0.63 *** 抑うつ感 -0.28 -0.03 -0.66 *** -0.80 *** 身体愁訴 -0.58 *** -0.08 -0.53 *** -0.53 *** 修飾要因 上司からのサポート -0.03 -0.08 -0.22 -0.12 同僚からのサポート 0.19 -0.01 -0.17 -0.36 *** 家族・友人からのサポート 0.04 -0.09 -0.32 -0.24 仕事や生活の満足度 0.21 -0.04 -0.28 -0.29 * 注) Spearman の順位相関係数 * :p<0.05 ** :p<0.01 ***:p<0.001 指摘している。正規雇用者は非正雇用者に比べ勤務時間 が長く,残業や休日出勤が多く,仕事量や内容を自身で コントールする事は難しい状況におかれ,ストレス度を 高めているのではないかと考える。また,個人の業務量 増加は職場内で人とのつながりを持つ時間を抑制する結 果となり,ストレス度が高まっているのではないかと考 える。「仕事や生活の満足度」では,非正規雇用者の方が ストレス度が低いという結果となった。これは,非正規
数など,比較的自身の都合に合わせやすい形態であるな ど,非正規雇用であってもその形態が自身のライフスタ イルに適合している可能性もある15)としている。希望 した雇用形態であると回答した非正規雇用は 8 割を超え ており,自身のワーク・ライフ・バランスに適した勤務 時間や日数で勤務できる雇用形態を選択できたとして も,現状の仕事内容が自身に適していないと感じながら も勤務を続けることでストレス要因となり精神的健康度 の低下につながっているのではないかと考える。 様々な雇用形態の労働者が協働しており,雇用形態の 違いによる特徴を理解し,それらに応じた支援ができる 労働環境の構築が必要である。雇用者自身も様々な職業 性ストレスにさらされている事,それらが QOL や生活 習慣にも影響を及ぼす可能性がある事を認識し,ストレ スに適正に対処できるようセルフケア能力を高めていく ことが必要と考える。
Ⅵ.結論
正規雇用者と非正規雇用者の比較を通して,QOL に ついて差は認められなかったが,職業性ストレスのいく つかの項目で差が見られ,雇用形態の違いによる影響が 生じている可能性が示唆された。また,「ストレス反応」 は精神的健康度低下と関連しており,精神的健康度の向 上の為にもストレス反応が生じる前のストレス対策が必 要である。Ⅶ.研究の限界と課題
本研究では対象数が少なく,結果の一般化には限界が ある。今後はサンプル数を増やした検討が必要である。 本研究では正規雇用でない者を非正規雇用として扱って いる。しかし,非正規雇用には多様な形態があり,その 形態を選択した背景にも着目した検証が必要と考える。 また,雇用形態の違いに焦点を当てた為,職種の影響に ついては検討できていない。職種により職業性ストレス の状況が異なる可能性もあり,雇用形態だけでなく,職 種による影響についても検討が必要と考える。謝辞
調査にご協力いただきました労働者の皆さま,調査票 の配付・回収にご協力いただきました山梨厚生病院予防 医学センターの金子誉先生,そして本研究を行うあたり 御指導頂いた飯島純夫先生に感謝申し上げます。 雇用者の方が正規雇用者に比べ勤務時間が短いことや, 希望した雇用形態である者も 8 割と多くを占めており, 自身のライフスタイルに合った雇用形態を選択した事 で,仕事と生活の調和による満足度が得られ易く,正規 雇用者とのスコアの差となったのではないかと考える。 「自覚的な身体的負担度」「職場環境によるストレス」 においては,非正規雇用者のストレス度が高くなってい た。これは,非正規雇用者では「生産労務職」「運輸・通 信職」が約 8 割という職種構成となっており,身体を使 う業務中心の為,身体負荷量が高いことや,デスクワー クとは異なる労働環境が影響していると考える。 PCS,MCS と関連する職業性ストレスを検討した結 果,正規雇用者のみ PCS と「心理的な仕事の負担(量)・ (質)」,「技能の活用度」との関係が認められた。これは, 正規雇用としての日常業務のノルマや求められるものが 高いにも関わらず,自身の技術を上手く発揮出来ない職 場環境にストレスを感じ,身体的健康度に影響を及ぼし ているものと考える。 正規雇用者において,通院している者ほど PCS のス コアが有意に低く,身体愁訴のスコアが高くなっていた。 通院が必要な程の不調を有している者であり,PCS の スコア低下に影響を及ぼすという事は理解し易い。「身 体愁訴」は頭痛やめまいといった身体的なストレス反応 を測定していることから,正規雇用者は職場のストレス により,身体的な反応が生じ,通院へと繋がっている可 能性が考えられる。しかし,非正規雇用者の PCS や「身 体愁訴」のスコアとの比較では差が無いことから,正規 雇用者と非正規雇用者で通院につながる要因や,身体的 健康度に影響を与える要因が異なる可能性が考えられ, 更なる検討が必要である。MCS ついては,正規雇用者, 非正規雇用者共にストレス反応の枠組みの下位尺度全て と相関が認められ。ストレス反応は,ストレスを受けた 結果であり,雇用形態の違いに関わらず,精神的健康度 を低下させる要因になり得る。女性のストレス対処行動 と職業性ストレスの関係をみた研究13)によると,スト レス対処行動を取る事でストレス反応が低下することが 示唆されている。また,職場ストレスは,それ自体が頭 痛や睡眠障害,食欲低下,うつ病などの身体・精神の不 調をきたす重要な危険因子であるとともに,喫煙や飲酒 など疾病の危険因子を増大させ,更に欠勤率や転職率な ど社会行動面に影響を及ぼす14)との報告もあり,精神 的健康度を維持・向上していくためにも,ストレス反応 が生じる前にストレスを溜め込まない組織的な取組みの 検討と共に,個人のストレスコーピング能力の向上が必 要である。 非正規雇用者では,MCS と「仕事の適性度」や「働きが い」,「仕事や生活の満足度」との相関が見られた。先行 研究によるとパート・アルバイトのように勤務時間や日引用文献
1) 総務省統計局(2014)平成 25 年労働力調査 .
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