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生産における非技術的変化と組織

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生産 における非技術的変化 と組織

Ⅰ は じめ に ⅠⅠ 生産 のオー トメーシ ョン化 と労働の変質 ⅠⅠⅠ 非技術 的変化の もたらす組織的影響

生産過程 と労働過程の紐帯 としての「管理

おわ りに

は じめ に 本稿 は,先 に明 らかにした論文 「生産現場のマ イクロ ・エ レク トロニクス化 と生産関係の変革」 (『国民経済』Na148,1983.7)に続 くものである。 今 日,生産 現場で展開 されている, マイクロエ レク トロニクスを中核 とす る変化は,経営管理 に 多 くの課題 と対応を生起せ しめて きた。それ らの 中で特 に注 目しておかなければならないのは, マ イクロエ レク トロニクス化が, ライン化の困難 な 生産過程, それゆえに資本集約型ではな く,労働 集約型の職能依存度の高い企業 として,専門的受 注生産を担 っていた,多品種少量生産工場 にもた らした変化で ある。その技術的変化の方 向性は, 従来の機械 か らなる,財あるいはサー ビスの生産 システムが,新たに電子工学 との結合によって一 段 と機械的 自律性 を高め る ところにあ り

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弾力的製造 システム) はその典型 とい うことがで きるであろ う。 労働集約型 で営 まれて きた受注的 ・組立加工産 業や第三次的産業の分野で,技能の客観化,技能 の ソフ ト化, プログラム化が進み,それによって 装置産業型 の工程を確立す る技術的基盤が,マ イ クロエ レク トロニクス技術によって碓立 されて き た。 しか しこの よ うなマイクロエ レク トロニクス 技術によって もた らされ るものは,「多能工」化(自 動車産業にお いては

,7

0

年代後半か ら 「ジ ョブ ・ p-チ-シ ョソによる多能工化」 によ り,人員削

減 と労働強化が一段 と強め られ, トヨタ日工 ・堤 工場第二機械課に よると, どの職場で も,少人化 をすすめ るための 「多能工」の養成が管理 ・監督 者 の重要 な任務 とされ,組の 「多能工」化率 目標 が1年 目60パーセ ン ト, 2年日80パ ーセン ト, 3 年 目

1

0

0

パ ーセン トと決め られ

,

7

9

年度末 に課平均 で55パーセ ソ トの実績をあげた とい う。1))ではな く,専門的技能の一般化である。 この ことは 「コンピュータによる生産管理 シス テムの導入は,労働者の生産活動の全 てを コー ド 化 し,ルーテ ィン化す ることを前提 とす る。 超小型 コンピュータに よる生産管理 の職場化 は,労働者の生産活動の コー ド化を とお して,企 業 におけ る労働者 の位置を, コー ド化 した ポケ ッ トの

1

つに閉 じ込 めることになる。 いまや, これ らの性格が大規模 ライン生産のみ な らず,中 ・小の フレキシ ビリテ ィを問題 とす る 多品種少量生産の企業においてさえ顕著になって きている。 いまや職場にまで下 された『管理作業』 は,すでにシステムとして与 えられている"所与" の条件の中だけで,最善の 『解』を求め ることを 労働者に求め,所与の城は,そのシステムの完全 さゆえに落城はあ りえないのである。 このよ うに労働者は,全ての職域で情報 におけ るフォーマル ・システムの一員 として,その 『操 作員』 とな るのであ る

」2)ことを見 て も明 らかで あ る。 このよ うな,マイクロエ レク トロニクス技術 に よって もた らされ る専門的技能の一般化 は,労働 者 の労働過程のなかでの 「主体」の回復を決 して 許 さず,かえって労働のなかの精神労働的側面を 喪失 させてい くことになるのである。 ところで 日本における技術,技能の とらえ方は, 武谷三男,星野芳郎両氏の技術論以降,技術を客 観的法則性の意識的適用 として とらえ,技能を技 術化 してい くことに人間の知の役割をみつ けだ し

(2)

てきた。それに対 して労働をひとつの 「存在の形 式」 として とらえよ うとしている内山節氏の 「私 は技術 よ りもそ の技能的部 分 を重視す るのであ る。経験 によって蓄積 されてい く判断, コツ,実 際労働を人間的 な行為 に していた ものはこの技能 的側面だ ったのではなか ったか。あるいは技術 も またつねに技能 的発 想 に支 え られ る ことに よっ て,形成 されて きたのではなか ったか。 ゆえにもしこれか らの 日本の労働過程のなかで 産業横断的に技能の客観化,その ソフ ト化, プロ グラム化がすすむ とすれば,それは人間労働の大 きな崩壊 にはか な らない よ うに思われ るのであ る。」3)とい う主張 には, 日本の戦後技術革新 をつ らぬ く

,

「労働のなかの技能的側面や精神的側面を 不断に客観化 し工程化す ることによって,商品の 生産過程を労働過程か ら自立 させていた ことを歴 史的な 目標に定 めて きた。 この 目標を一歩ずつ現 実化 して きた歴 史」4)を見 る うえでの視座 を与 え て くれ るもの といって よいであろ う。 本稿は, これ らマイクロエ レク トロニクスを中 核 にす えた今 日の技術革新が,生産過程の何を変 えそれによって労働過程 にいかなる変化を もた ら しているかを明 らかに し,現代の経営管理が直面 している課題 に接近 しよ うとす るものである。

生産 の オ ー トメーシ ョン化 と 労働 の変質 林正樹氏によれは,生産のオー トメーシ ョン化 の現代 的特 徴 は次 の2つ の側 面 か ら考 察 され る,5)とい う。

1

現代のオー トメーシ ョンは,単 なる機械化 や一般的な 自動化 (作業機-機械体系-専用 自動故械体系) とは区別 されなければな らな い。 現代の生産の 自動化は,作業 (加工 ・組立) お よび搬送機械が 自動制御機能 と結合 して

1

つの生産技術 システムとなった。 これを可能 にした ものは,電子機械産業における半導体 素子の発達 を基礎 として, コンピュータと産 業用 ロボ ッ トおよび

NC

工作機械 とが結合 し た 「自動制御扱能 と直結す る複合 自動機械体 系

」(

CNC;Co

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)の成立である。 自動機械体系 による 「点の 自動化」か ら, 工程 と工程を結ぶ 「線の 自動化」への飛躍的 進展。 2 現代のオー トメーシ ョンにもとづ く工場制 度の特徴。 i)生産過程の技術的関連 にもとづ く結合生 産の垂直的 ・多角的発展 とそれによる生産 の大規模化 ・高速化 ・連続化 ・自動化の実 現。 ii)資本主義的商品 ・サー ビス生産の税域が 生産 と消費のあ らゆ る領域に拡大するとと もに,生産過程の技術的結合関係が強化 さ れる。 作業労働 ・事務労働 ・技術労働 ・管理労 働は,それぞれの内部 においてだけでな く, 相互間の結合関係お よび労働者相互間の協 力関係の重要性を高め る。 iii)巨大 な資本投下 を可能 な らしめ るため に,一定 の利潤率を維持す るための特別 な 管理技法が必要 となる。

i

v)

オー トメーシ ョンによる 「工場結合体」 -の発展は,他面

1つの歴史的 な生産形 態の諸矛盾の発展」「その解体 と新形成 とへ の唯一の歴史的な道」を最後 まで登 りつめ るものである。 生産技術 システムと経営管理技術 システムと は,資本主義企業の指導原理 としての営利 -刺 潤追求原則によって結合 されている。経営管理 技術は,利益計算管理技法 と組織管理技法に大 別 され る。 生産の自動化に対応す る組織管理技法は,坐 産の標準化

(IE,OR,SQC,VA,VE

など)を推進 し,教育訓練技法 (TW I,

OJ

T

など) によって標準化への労働者の適応を高 め, さらに小集団活動

(ZD

運動

,QC

サーク ル, 自主管理,職務拡大, ジ ョ7〇・ロー テー シ ョンなど)によって標準化やオー トメー ション 化 その ものに労働者 を 「自主的」・組織的に協力 させ ようとす るものである。 小集団活動は

,

「労働 の人間化」策 と宣伝 され ているが

, IE

による生産の標準化を前提 とし てさらに補完す るものにす ぎない。

(3)

前記の要約 に見 られ る主張は,批判経営学の立 場 か らなされた現代のオー トメーシ ョン化 に対す る本質的批判 の視座 として,その代表的なもの と い うことがで きるであろ う。 氏の理解 に よれは,今 日の生産における技術的 変化 は 「工程 と工程を結ぶ 『線の 自動化』の実現」 を中心 として生起 している, とい うことになる。 この 「線の 自動化」が

1

つの作業領域 に止 ること な く,その前後へ と伸張を開始す るとき 「作業労 働 ・事務労働 ・技術労働 ・管理労働相互間の結合 関係および労働者相互間の協力関係の重要性をい ち じるしく高め る」 ことを結果す ることになる。 これ ら生産技術的結合や労働の社会化は,資本 に よる労働の組織化の 「目的的」性を示 してお り, 資本の集積 ・集中に伴 う独占利潤の追求 目的によ って規定 されているといえよ う。 それゆえに,その生産技術的結合や労働の社会 化 も 「資本主義的生産様式の下では,企業 目的の 決定 に際 してあ らゆる社会的利益は資本所有者 の 利益- 利潤 の極大化- に従属す る。 この 目的 に対 しては,科学技術開発 の課題は本質的,必然 的 な もので はな くな り,景気 に左右 されるもの と な る。資本主義競争の下では,科学技術進歩は不 可避的に生 じるが, しか し各具体的企業,特 に販 売市場で独占的地位を占めている大企業に とって は,それは利潤の維持 と増大の必要条件 ではない。 このため, 目的の優先順位の決定においては,料 学技術開発の課題 は,悪意的な もの とな り,技術 革新 は他の選択肢 を もつ よ うな諸施策 の うちのひ とつ とみな され る」6)限界性 を必然 とせ ざるを え ない。 独占利潤の追求 目的に規定 され,その特徴を生 か しきっていない限界性を有 しつつ も,企業 によ って実現 される経営過程全体は 「クロー ズ ド・シス テム」

7

)として綿密に分析 され る。「線の 自動化」が 伸張せ られ

,

「目的的」に 「クローズ ド」され る現 代の生産組織はそれだけで 「巨大化」 し, コンピ ュータの潜在能力の完全な利用のため に,企業 の 目標を再検討 しなければな らな くなる。か くして, コンピュータを物神化 し,それに社会的変化の発 生における主要な役割を,帰せ しめることになる。 ところで, この よ うな状況下で生産現場に働 く 作業労働者の労働は,いかなる変質を受けつつあ るのであろ うか。 雇用促進事業団雇用覇業総合研究所 による実態 調査報告は,CNC工作機械導入による横械工 の 職務内容の変化について,次の実態を明 らかに し ている。 CNC工作燐概が導入された職場における機械工の職務内容の変化8) 旧型熟練工の機械加工 1.加工手順 ・治工具の決定 2.治工具等の準備 3.治工具 ・ワークの取 りつけ,調整 4.加工 (機械のコン トロール) 5. ワークの取 りはずし 6.切 り粉の清掃 CNC工作機械 1.プログラミング ・治工具の開発 2.プログラミング,治工具の修正 3.治工具等の準備 4.治工具 ・ワークのとりつけ,調整

5.

テープの設定 6.コン トローラーの調整 7.監視 8. ワークのとりはずし 9.切 り粉の清掃 1.は技術者が分担するが,2.以 下は監督者,一般技能者が担当 ここでは,機械の コン トロール とい う校械工 の 本来的職能が, テープによるコン トロール とその 調整 ・監視 とい う,付随的監視労働に変化 したこ とを示 してい る。 一般技能工の識務内容 としてほ,汎用機使用の場 合の技能が必要 な こと, マイクロエ レク トロニク ス椀器お よびプログラ ミングの知識が必要 にな っ た こと,加工工程 の自動化 によって生 じた余裕時 また,報告 書は,CNC工作機械導入に際 して, 間を利用 して多機種生産や保全への職務拡大が可

(4)

能 となった こと, プログラ ミングの修正はそれほ ど修得困難でない こと,な どが確認 された。 と報 告 している。 マイクロエ レク トロニクスを主役 とす る,生産 のオー トメーシ ョン化は

,FMS,CNC

の導入 に見 られ るよ うに,その技術的変化 は労働者に蓄 積 されていた最後 の技能 を も無用化 して しま っ た。その生産 システムは,労働者の技能を 「陳腐 化」 したのではない。「無用化」 したのである。 資本に蓄積 された 「管理」の情報 によって組立 て られた生産のシステムは,労働者が所有す る「技 能」 とは対立す る。なぜ ならば,内山氏によって 明確に指摘 されているよ うに,資本制生産様式は, 労働のなかの技能的側面や精神的側面を不断に客 観化 し工程化す ることによって,商品の生産過程 を労働過程か ら自立 させてい くことを歴史的な 目 標 に定めて きたのであ り,9)その ことによって,全 的存在形式 としての労働を支 える技能 と対立 して きたか らである。 労働者に蓄積 された過去の労働によって形成 さ れた技能が,精神労働 としての 「管理」の側面を 形成す ることは,現代においては もはや存在 しな い。少な くとも, コンピュータが経営管理 に登場 してか らは,図式は塗 り替 えられたのである。 ・客観的法則性の意識的適用 としての技術の最高 形態が,経営の コンピュータ 1)ゼーシ ョソの中で 希求 され ることによって もた らされたのは,「意思 決定論」を核 とす る経営技術的応用への高度化で ある。 ここで求め られるものは,労働者の生産活 動全ての コー ド化であ り,ルーテ ィン化である。 それは,管理者,技師,監視員の労働 のル ーテ ィ ン化 とフ ォーマル化 の過程で あ り, コン ピュー タ ・システムの付属物に転化す る過程であ る。 これは,経験 に よって蓄積 されてい く判断, コ ツ,実際労働を人間的な行為 にしていた 「技能」 と対立す る。 自律的機械 システムによる生産の 自動化は,人 間の労働を「疑似的労働

「シュ ミレーシ ョン労働」 に変質 させ るモメソ トを,強力に打 出 して きた と いえる。 ノン・テクノロジカル・チェンジ

非 技 術 的 変 化 の もた らす組 織 的影響 前節 においては, コンピュータを中心にして展 開 されている生産のオー トメーシ ョン化を,生産 過程 における技術的変化 として位置づ け,それに よって受 けている労働過程 の変質について分析を 試みて きた。 しか し,今 日生起 しているこれ ら諸問題は, こ の よ うな問題設定では解 けない側面を有 している ことは論をまたない。た しかに,その技術的変化 は,高木仁三郎氏が 「現場 の ロボ ッ トによる人間 の置 き換 え とい うのと,人間その ものの ロボ ッ ト 化 とい うのは同時的に進 んでいる現象ではないか と思います。つ ま り,あ る種 の ロボ ッ トに置 き換 えられ るとい うことは,人間 自身が ロボ ッH とし ているとい うことをも意味す るわけだ し,そ うい う気がす るのです。だか ら, これは どこまでいっ て もそれは続いてい くのであって,人間による ロ ボ ッ ト的 な労働 とい うのが ロボ ッ トによって置 き 換 えられ る。それによって雇用の問題 は別に して 人間が労働の苦 しさか ら解放 され るとい う側面 は ないのではないか」10)と蓋 然的 に指摘す る程度 に 達 している。 この ことはまた,中岡哲郎氏毎指摘す る 「ロボ ッ トと人間 との比較 とい うことにな ります と,一 一人問のほ うが遥かに高級 な動作がで きるわけで す。- そ うい う状況で人間 とロボ ッ トが一緒に 働 くとい うことになると, ロボ ットがで きない こ とを人間が分担す るとい うことになるわけです。 ところが,人間が分担す る ことは- 機械工学的 には極めて高度な動作であ るけれ ども,人間的 に は決 して高度 な作業ではないわけです。そ こが非 常 に問題 になるところなのです。」11)とい う側面 を も合わせ有 していることに,我 々は注意を払わ な ければならない。 高木,中岡両氏の指摘 は今 日の技術的変化が, それによって引 き起 こされ る変化 によって影響 を 受ける 「人間」の側に,すでに,それを受け入れ る積極的変質の起 ってい ることを示唆 している。 生産過程の技術的結合関係が強化 され るに とも なって,それぞれの生産労働部門相互間の結合関 係を も強め,最終的には労働者相互の結合関係を - 13

(5)

0-も深め,最終 的 には労働者相互間の協力関係を深 化 させてい くことはすでに明 らかにした ところで あ る

。L.

カ ミングス とJ.グ リー ンポ ー ムの分 析12)は,この よ うな,技術の支援の もとに行われ る 変化の多 くは

,

「非技術的革新」の内容を もつ生産 の標準化 ・単 純化 ・専 門化 ・効率化 として進展す るこ とを明 らかに している。 今 日の経営管理の主要 な主題の 1つは,経営組 織の 「合 目的的」全的再統一であるが,その有機 的結合は意思決定のシステムとして構築 され る。 近代的な経営意思決定の枠組 は,その型が定型的 な ものか ら非 定型的 な ものへ の間で分布 して い る。 この うち定型的 なものは,モデルの数学的解 析

(OR)

や シ ミュレーシ ョンによる解決,及 び コソビュータに よるデータ処理に より解決が計 ら れ る。そ して さらに,定型的意思決定については, ル ーチン化 された解決手続を コンビニ一夕にプ ロ グラムしてお くことで,自動化 され うる。しか し, この よ うな意思決定論の予測は,今の ところ実現 しているとはいいがたい。 情報処理の ネ ッ トワークに支 えられた意思決定 システムが, 経営組織全体を覆いつ くすには,特 に組織の下位部門における自動化が重大性を持つ ことはい うまで もない。組織が巨大化す るとき, 意思決定の伝達 に敵際が生 じがちになることは良 く知 られてい る所である。伝達のスピー ドを上 げ るためには,下位組織 に与 えられ る意思決定の権 限を定型的 な もの,ルーチン化 され るものに限定 しなければな らない。 しか し意思決定 に ともな う 困難 は,それがいかに下位組織におけるものであ る として も,常に非定型的なものを含み,定型的 な もので も, そのモデルアプローチには難点の多 いのが現状である。 この問題 の今 日的状況下での解決を計 ろ うとす れば,生産 における 「非技術的革新」の方法論を, それ以外の部 門,経営の全組織にまで広げてゆか ざるを得な くなる。非生産的労働部門にまで,労 働 の標準化 ・単純化 ・専門化 ・効率化が導入 され る。「情報」を司令官 とす る軍団が通 り過 ぎた労働 現場 には,定型化 された労働 とい うメモ リアル ・ パ ークが出現す る。それは整然 と整備 された,作 業 と意思決定 のネ ッ トワークとして空間を埋めつ くす。 労働者に蓄積 されている非定型的経験が,事務 労働者の管理労働者 の 「技能」 の本質 を形成 して いるものであ るとすれば,作業 と意思決定 のネ ッ トワークとして再構成 され る組織においては, ち はや このよ うな 「技能」は効率を低め るもの とし て存在を拒否 され る.定型化 され,ル ーチ ン化 さ れ る 「情報」 のみが非技術的革新を推進す るもの として,その価値が認め られ るにす ぎな くなる。 労働者はいまや 自由な思考の空間を飛夢羽す ること は許 されない。人間 としての労働者の思考領域そ の ものが,資本活動 の合 目的的性に規制 されつ く す 「場」が出現す るのである。 マイクロエ レク トロニクスは, この組織的再編 成 に手段を与 え,そのテンポを早め るのに貢献 し た。 しか し, この よ うな組織の再編成 ・再統合が スムースに進 んだわ けではない。マイクロエ レク トロニクス化を代表 とす る今 日のコンピュータ リ ゼーシ ョンは,労働者に新たな階層分化 を生 じせ しめ て い る。種々の労働 力調査 に よって も, こ こ数年の就業者数の増減は,専門的技術的織業 と 単純労務者で増加が著 しく,技能工生産工程従事 者は微増 に止 まっていることが認め られ る。 この よ うな技術革新 に支援 された労働の二極分解の深 化 は,一方で本工 と下請社外工 ・パー トタイマー・ アルバイ トとい う2つの労働力市場を出現 させ, それが資本主義内部 の諸矛盾の発展を進めたの も 事実である。 この労働市場 に起 きている変化は,椀械化 され た システムを受 け入れて, 自己をすみずみ までシ ステム化 された椀能 と取 り替 える こ とを認 め る が,その よ うな全体的な人間疎外か ら脱 出す る闘 いを我が もの とす るか, まさに変あ ろ うとしてい る労働の質をめ ぐってのものである。 非技術的変化,最終的にシステム化 は,機械 ・ 技術が人間を置 きか える新 しい次元に入 ることを 目指す ことになる。 ここでの 「人間の置 き替 え」 はかつてのよ うな単純 な省力化 を意味せず,人間 の技能や知能その ものを無用化 して しま うよ うな 置 き替 えである。 意思決定のシステ ム化は,あ らか じめ作成 され た プログラムの中にインプ ッ トされた,それゆえ の予測可能範囲の中に,労働者の思考 と行動を封 じ込め る。今や労働者は限定 された存在 としての

(6)

み意味を持つ.機械化 されたシステムによって構 成 され る組織 においては,そのシステムを使い得 る側 にある少数 の人間が, システムの所有 してい る科学技術を 自己その もの として他の側を コン ト ロールす る。 「規律 とい うこ とばが,支 配者 と被 支 配 者の あいだの,集団意志実現の継続的 ・恒常的関係を 指す ものであ る とすれば,規律 とい うことを どう 理解 した らいいだ ろ うか。た しかにそれは,命令 を受動的に,無抵抗で うけいれることではな く, 委託 された任務 を機械的に執行す ることで もなか ろ う.- 規律 とは,実現すべ き方針の意識的で 明確な消化であ ると理解せねはならぬ

「同時に 規律は,個性や 自由を抹殺 しは しない。『個性 と自 由』の問題は,規律 とい う事実にたい してでな く, 『規律を命 じる権力の源泉』 にたい して立 て られ る。 この源泉が 『民主的』であるな らば,つ ま り 権威が-専門技術機能であって

,

『専断』やそ とか らのお しつけでないな らば,規律は民主的秩序, すなわち自由に とって必要 な要素である。しか し, 専門技術機能 とい うことは,その権威が社会的に (あるいは民族的に)等質の-集団内で行使 され るはあいに云 えることであって,-集団が他の集 団に権威を行使す るはあいは,規律は前者 に とっ ては自主的で も自由で もあろ うが,後者 に とって はそ うではない。」13) そ こで,経営管理 の問題 として 「民主的組織管 理の実現形態 としての 『自主管理』活動」が浮上 して くる

。ZD

運動

,QC

サークル活動 などの「小 集団 自主管理活動」の導入は,まさに資本主義的・ 擬似的で しかあ りえないのだが,それが擬似的で あれはあるほ ど,その導入は徹底 されなければな らない。「小集団 自主管理活動」は一方では擬制化 された 「自主」 の創 出へ向けて,その集団内の労 働の "質"を等質な ものへ と導 く方向性を もつ。 企業内部に張 り巡 らされた これ ら「自主活動集団」 は,集団が小 さければ小 さいほ ど,その集団は専 門技術機能を共有す る等質の集団 としての特質を 発揮す ることになる。その等質小集団の企業内ネ ッ トワーク作 りの成功が,今 日の 「日本的経営」 の特質を形成す る核 となっていることを指摘 して おかなければな らない。 ここか ら先は,定型化 さ れ,ルーチン化 された労働者が

,

「多能工」化 され, ジョブ ・ローテー シ ョンに組み込 まれて行 くのに, さほどの距敵は残 されていない。勿論ここでの「多 能工」化は,本来的な意味での 多能工 の本質 を失 って しまっていることは,すでに見て きたごと( 明 らか である。 「小集団 自主管理活動」の今 日的意味はそれだ けではない。先 に見た よ うに,意思決定 システム は定型化 され得 ない さまざまな内容を包含 してい る。意思決定をル ーテ ィン化 した現代経営組織は, 労働者の内部に蓄若 された非定型 な意思決定能力 を最大限引 き出 し,定型的意思決定 ネ ットワーク を補強 しておかなければならない。「人間の知恵 と コンピュータの迅速 ・膨大な情報処理能力を有効 に結合」させ ることが必要であ り

,

「大型 ネ ッ トワ ークと草の根的 なパ ソコンの普及が- 現代社会 と企業 において,組織変革」14)を必然 な らしめるこ とになる。 しか も,その場合の 「人間の知恵」そ の ものが, コンピュータの 「情報」限界性に規制 されてお り,知恵の許容範囲はすでに資本の ワク の中に厳密 に組み込 まれ て しまって い るのであ る。

生 産過程 と労働 過程 の紐 帯 と して の 「管理 」 今 日の高度 にシステム化 した生産関係において は,従来のよ うに,生産過程の技術的変化が,商 品の生産過程を労働過程か ら剥離 させ てい く, と い う一方向ベ ク トルの理解では,作業 の ロボ ッ ト 化 と人間 の ロボ ッ ト化 が 同時的 に進 行 す る現状 を,正確 に認識 し得 るとはいえない。生産過程の 変革 と労働過程の変質を同時的に進展 させ る要素 としての 「管理」の位置を考察 しなければな らな い。 生産過程の技術的変化 によって促 され る非技術 的変化が,労働過程 に及ぼす影響についての研究 は

,

ノツト「社会主義経営学」における「科学的労働組織」 (HOT)の研究 として1920年代に開始 された。 今 日の ソ連 における 「科学的労働組織」 の研究者 であるべ.p-モ7 15)によると

,

「機械化 と自動化 は,人間の労働条件や生産過程 における人間の役 割 と位置を根本的に変化 させ, 肉体労働 と知的労 働 との関係を も変化 させた。人間 と枚枕 との相互 - 132

(7)

作用の問題 は,技術的進歩の進行 につれてます ま す重要 さを増 した。技術を使用す る場合,その効 率 と確実性は 『人間的諸要因』に よって規定 され ることがわか って きた

「機械や環境 の特性が人 間の特性 と一致す るとい う条件の もとでのみ,労 働過程 の高い効率 と確実性が,そ してまたそれ に 応 じた高い労働生産性が,期待で きる」として「人 間一機械」の問題 は

,

「人間一機械一環境」の問題 に変化 させ る ことによって

,

「人間の労作活動の全 -的な,で きるだけ完全 な,総合的な理解」に進 み得 ることを主張 している。 この ような主張は,労働過程が ともあれ初めて 資本主義的制 約 か ら解 き放 たれたゆ えに 出現 し た

,

「科学的労働組織」の初発的原点での深刻 な論 争 を,総括 しきっているか どうか疑わ しい。 「科学的労働組織」 は本来, テイラー ・システ ムか ら一定の刺激を受 けた とはいえ,その創始者 のひ と り, ア.カ.ガスチ ョフ (モスクワ,中央労 働研究所の指導者)によれば,従手空拳で近代的 生産 を社会主義的に 「組織」す る,非常的方策 と して導入された

O

「F科学的労働組織iを経営 に実際 に導入する最 緊急の課題 としては,労働力の活性 化が認め られ なければな らない。」その具体的方策 は,全面的な機械制大工場化に ともな う, とい う よ りそれを準備す る,労働作業の科学的分析 と合 理的再編にあ った。た とえば 「叩 き」 と 「押 し」 とい う基本的要素の,最適の組み合せの追求であ る。広範な 「労働訓練」計画 として展開 された, この技術学的 な労働力陶冶にたい しては,反 ガス チ ョフの 「労働研究共産主義者暫定 ビュー ロー」 か ら, テイラー リズムへの傾斜 として,いわゆ る 「精神工学」 (今 日では 「労働心理学

)

に依拠 し ての激 しいイデオ ロギー的批判が加え られた。 ガ スチ ョフは, テイラー リズムとは無縁 な,労働過 程 の主体的組織者 としての 「管理」の重要性を唱 えて反論 し,論争 はなかは平行線に終 った。16) 「科学的労 働組織」運動がテイラー ・システム -の賛否をめ く●って両極分解 し, レーニンまでが 労働規律 と労働 の等質化 の非常事態的最低線 とし て, テイラー ・システムを容認 してゆ くなかで, この問題に一 応 の結着 をつけたのが, ソ連の 「社 会主義経営学 」の父 と後 に呼ばれ るよ うになるオ. 7.-ルマンスキーであ る。彼は労働生産性 と労働 強度 との概念の峻別 と対立 を強調 し, テイ ラー ・ システムを肯定的側面 と否定的側面 との二重性 と して,特に, もっぱ ら労働強度引 き上げをはかる テイラーの 「課業」や 「プレ ミアム方式」を鋭 く 批判 した。 17)問題 は,概念的 には ともあれ,技術革 新 と労働組織化を主導す る労働者の人間主体の発 展 を中心 とす る,純粋 な労働生産性の上昇 と,労 働者を機械 の奴隷た らしめ る労働強度の強化 とを 分離,弁別 しうる 「管理」 のあ り方であ る。 生産の主人公,生産力の最大要素 として労働者 を考 える政治的雰囲気がまだ強かった 「科学的労 働組織のイニシアテ ィヴと経営指導のための第

1

回全 ロシア会議

」(

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-2

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日)では, さまざまな論議のす え

,

「会議 は科学的労働組織 の 概念 とテイラー リズムのそれ との同一視 に反対す る」ことが結語 された。18)それは,後者が能率の過 度 の引上げに偏 し,科学的経営組織化の原理に部 分的に しか合致 しないか らである とされた。第2 回会議

(

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日).となると,主題 は経営 合理化な ど実務的諸任務に移 り,労働強度引 き上 げにたいす る強硬 な反対は影をひそめてゆ く。そ の ことは 「管理」 の主体が労働者 自身か ら労働過 程外の官僚 に移行 した ことを意味 しよ う。「技術は 管理 に移行す る。管理の意味は組織に変 り,熟考 された転換 は管理の科学的組織化であ る。」と説 い た ガスチ ョフは無視 され, ソ連的テイラー リズム に歯止めをかけ よ うとした-ルマンスキーも, の ちには「スタノ、ノフ運動 とスタ- ノフ理論」19)にお いて,新技術の導入を生産 と労働の組織改善の上 位 に位置づ ける転換を余儀 な くされ るのである。

ノツ

初期

HOT

」 において追求 された,生産 と労働 の組織化の科学的研究は,今 日までその正 しい位 置を与 えられ ることな く, いわゆる 「労働科学」 にその道を譲 った まま経過 したのであ る。 今 日,生産過程 と労働過程 における変革が,個 々 にそれぞれ分離 した管理技法 によってではな く, 1つの統一 された管理によって,同時的 に全-的 に遂行 され る状況 にあって, この 「生産過程 と労 働過程の紐帯 としての管理」 の究明は急務 とす る 第

1

の課題 といわなければな らないだ ろ う。 - 133

(8)

おわ りに マ イ クロエ レ ク トロニ クス を中核 として進行 し てい る, 財 あ るいはサー ビスの生産 シス テムのオ ー トメー シ ョン化 は,労働 者 の持 つ本来 的な労働 を質 的に均一 な もの として,労働 者の固有 な 「技 能」か ら労働 を解放 す る。一方,解放 された労働 は 「操作月」 の作業 として,操 作対象 を増や す範 囲 において 「多能工

化 す る方 向が,生産 システ ム現場 にす でに準備 されて い る。 この 「多能工 」化 は,現 実 には 「多機 種」 化 と して現 われ, そ こでは,労働 者 の労働 強度 を強化 す るこ とを もっぱ ら としてい る。 「線 の 自動 化」の 実現 を部 分 にお いて補 う補 完的労働 の位 置に まで, 労働 者の労働 を乾 め る役 目を 「多能工」化 は強 力 に担 うこ とに な ろ う。 「管理 」 を紐 帯 として結合 させ られ た生産 過程 と労働過 程 の主 人公 は,今や生産 性 の最 大要素 と して その位 置 を与 え られ たか に見 えるシステム そ の ものの よ うに見 え る。 この システム を 「科 学 的 労働組織」 として再 編 成す る方 法論 を構 築す る努 力が求め られ て いる といえ よ う。 紙数 の限 られた中 で,最後 の章 は問題提起 に止 め ざるを得 なか った。 も とよ り本稿 において展 開 した諸問題 につ いて も, 今後深 め なけれ ばな らな テ クノロジカル ノン ・テ クノロジカル い課題 も多 い。「技 術

「非 技 術」の概 念規定 もその1つであ る。 今後 の課題 としたい。 末尾 で はあ ります が, この度退任 され ました森 直弘,前野良, 中村丈夫先生 には,本学草創 の期 よ り, ま さに教 育 ・研 究 の イロ- か ら, 懇切 な る ご指導 を賜 わ りました こ と心か ら感謝 申 し上 げ ま す。 この拙文 が 諸先生 の学恩 に報 い る ものに値 い しないこ とは も とよ り自覚 してお ります O今 後 の 研攻 の時 を与 え られ ます こ とを祈 るのみ です。 (注) 1)鈴木雄三 "多能工化 とジ ョブローテーシ ョンに - 13 4-よる柔軟な職場づ くり"、「IEJ1980、 5,p, 22-28 2)拙稿 ー生産現場のマイクロ ・エレクトロニ クス 化 と生産関係の変革"

r国民経済J 1983、7, p.44 3)内山 節 "日本的労働過程の成熟 と衰退"、「経 済評論」1984、 1,p.88 4)同 上 5)林 正樹 "生産のオー トメーシ ョン化の進展 と 管理技法および作業労働の特質

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「産業技術の 新展開 と経営管理の課題」1983、9,p.82-85 6)ミリネル ・チジ ョフ編 ァメリカのマネジメン トと科学技術進歩"、「現代アメ リカ経営管理論 批判」1978,稲村 穀訳,p.259-260 7)M.Henderson,"ManagerialInnovationsof

JohnDiebold"1965、 p.61 8)雇用促進事業団雇用職業総合研究所 「マイクロ エ レク トロニクスの雇用 に及ぼす質的影響 に 関す る研究報告書」1983, より作成 9)内山 節 「労働の哲学」1982 10) "技術革新 と人間"「技術革新 と現代社会」(チ ュリス ト総合特集No.32)p.14 ll)同 上,p.15

12)"Non・TechnologicalChenges:Standardiza・ tion, Simplit丘cation, Specialization and Speed-up"、「TheUnionforRadicalPolitical EconomicsJJan、1968,p.57-59 13)アン トニオ・グラムシ,"有機的集中制,民主的 集中制,規律"、「グラムシ選集」邦訳, 6巻p. 129-130 14)森 健一 "技術革新の経営-のインパ ク ト"、 「産業技術の新展開 と経営管理の課題」1983、 9,p.228 15)B.JloMOB.【3proI10Mllh・allHOT" 「CollllaJlllCT lltleCh・11銃Tpy皿」No.8,1969

16)ど.Baumgarten、「Arbeitswissenschaft und PsychotechnikinRusslandJ1924,p.32-36 17)同 上,p.37-41

18)同 上,p.56

19)0.A.EpllaHCHlllvl、 「CTaXaHOBCKOeユBlけポeHlle H

参照

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