古典籍貴重図書データベース構築のための情報構造
分析 : 図書館における電子情報提供の質的改善を
めざして(3.2 第3回情報シナジー研究会, 3. 研究
活動)
著者
大原 理恵, 石垣 久四郎
雑誌名
年報
巻
4
ページ
117-120
発行年
2005-05
URL
http://hdl.handle.net/10097/48515
古典籍貴量国暮データベース構築のための情報構造分析
一国暮館におけるt子情報提供の貫的改善をめざして一
大原理恵 石垣久四郎 東北大学情報シナジーセンター学術情報研究部搾術情報分室) あらまし 大学図書館においては,古典籍貴重図書は電子化公開に適した資料と考えられており,東北大学附属 図書館においても公開が推進されている.しかし,古典籍の性質上学術的に信頼できるデータベース を作成・提供するためには改善すべき点が多い.そこで, A I R (能動的情報資源)の概念を導入し, 近世(江戸)版本の出版広告を利用したデータベースの構築を試みることとした・ 1貴王国暮とその電子的公開の類型 貴重図書は,古さ・稀少性・美術性などの点から,高い働直が認められた資料で,資料保護のため原 物の閲覧利用は制限されている.一般に古典籍は貴重性が高く,利用に制約がある一方で,著作権上の 問題がないため,電子化による公開には適切な資料と考えられている・ 東北大学附属図書館では,すでに貴重図書あるいは古典籍の電子的公開を行っているので,これを紹 介しながら,その特徴と問題点を確琵する. (1)展示型 画像+解説 貴重書展示室 http://www. 1 ibrary・ tohoku・ac・jp/kichosho/kicho/kicho/kichosho ・ html 貴重書展示室 附属図書館の代表的資料を一般向に紹介したもの.労 力・経費ともに負担が比較的少なくて済み,多くの図書 館で行われている方式である.必要な情報を凝縮して伝 えることができ,画像や解説の内容次第では研究者にも 利用価値があるものにすることが可能である. (2)書架型 目録+全画像 狩野文庫画像データベース http://W2. 1 ibrary・tohoku・ac ・jp/kano/kano_top・html 和算資料全文画像データベース(和算ポータル) http://W2 ・ 1 ibraTy・ tOhoku.ac・jp/wasan/ 狩野文庫画像データベース 和算資料全文画像データベース素朴な意味での電子図書館に近いもので,十分な点数があれば,どこからでも図書館の本が自由に閲覧 できる,という高い満足感が得られる.しかし現状では,経費の問題もあり,どの図書館でも恒常的に 推進できるわけではない. (3)総合型 目録+画像+解題+参考文献+リンク集 -夏目淑石ライブラリ http://vw. library.tohoku・ac・Jp/col lect/soseki/index ・html 夏目瀬石ライブラリ ある対象(この場合は「夏目淑石」)について総合的 な情報が得られる.利用者側の満足感は高くなるが, 提供側の負担が大きい.また,高度な情報を提供し ようとすれば,著作権処理の問題などが生じる. 2古典籍電子化の間庖点 古典籍の電子的情報提供は,従来の書籍による提供と比較すると,信頼性・満足感の点では及ばない ところがある.たとえば,附属図書館で貴重図書に指定されている資料を全て電子画像で公開するとし よう.図書館側の負担は小さいとはいえないが,それでも利用者は両足するとは限らない. 貴重図書に指定されるほどの作品であれば,すでに複製が出版されている鎗合も少なくない.しかも, 複製を出版する場合,本来あるべき良好な状態のものを選択して(場合によっては復元して)提供して いるため,学術的に信掛性が高いものとなる.図書館では,原則として所蔵資料に限定した提供になる ので,それができるとは限らず,利用者は,信頼できる資料か否かを自身で確かめなければならない. また,落丁などがある場合,他機関にある資料から補おうとしても,電子化資料の場合は,そのルール や倫理が確立しているとは言い難い. 継統性も問題になる.数年後・数十年後でも,出版された書籍同様,電子化資料は支障なく利用でき るのか,という点に関しては,まだ利用者に不動盛を持たれている. 経費面でも問題がある.印刷された書籍に代金を支払うのは,当然であると考えられている.しかし, 電子化資料の利用が有料であることに,利用者が納得するかどうか疑問である.有料にできないとすれ 雌是供者側の負担が大きくなる. 以上の問題点は,もちろん将来は解決される見込みがあり,本来電子化特有の問題ではない.出版に よる複製であっても,手近にある資料を安易に選び,評価は利用者が各自やってください,というので 樹言頼はされない.しかし,通常は関係者が注意しているであろうから,そうした事態は避けられる. 要するに,電子化資料では現在のところ,品質保証・質的向上のためのシステムが形成されにくい状況 にある. 3賞的改善の拭み一出版広告の活用による 古典籍のデータベースを作成する場合,特に問題となるのは,情報の空白やずれである.著者がわか らない,年代がずれている,といった事態はしばしば起こる.利用者は自己の持つ知識で,空白やずれ を埋めたり修正したりしながら,目録を「読み取って」行く. 知識を持っている利用者は,その知識の秩序に添っていない情報提供に不満を覚え,知識が十分では ない初心者は,ずれのある情報に振り回される. 現在学術情報研究部で取り組んでいる, A I R (能動的情報資源)は,色念的にはこの舌典籍の問題 に対応するのに適している. A I Rの理念を適用すれば,従来利用者に委ねられていた「自己の持つ知 識で空白やずれを埋めたり修正しながら」という部分を情報資源が支援することになる. 118
情報資源のより効果的な活用を指向するデータベース化
情報責滞自体の構造・機能を強化
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龍h的fM責Ji : AIR ( A亡dve ln血t7TutlOn Resource )
・利用支撫知轟/機能を情報*霧と共に一括讐糠・ f理 ・各NRは利用支緩知徽/機能を用いて能b的.自立的にh作 これは古典籍データベースのさまざまな面-の応用が考えられるが,今回はまず,実用化の可能性が 高いと思われる,近世(江戸)版本の出版広告を利用したデータベースの構築を試みることとした.江 戸日新七の版本の末尾などには,その本を出版した香車(本屋)の目録が備わっていることがあり,版本 研究の重要な資料とされている.附属図書館の貴重図書のなかに,出版広告(蔵板目録)を版本から取 り外して集成したもの(書林蔵版書目 伊-4-363 ・諸家著述目録雪有香 伊-4-364)があるが,貴重図 書であるために活用が困難な状況にある.これを電子化し,附属図書館が所蔵する古典籍の目録部分を 追加すれば,所蔵資料のみで研究資料として十分な点数を確保できるものと思われる.また,広告・蔵 板目録収載資料で附属図書館が所蔵している資料を関連付ければさらに利用価値は高くなる. 出版広告(蔵板目録)を利用した資料の関連付けの一例を,狩野文庫画像データベースを用いて示す. 絵本天の川 蔵板目錬 絵本書牧師載積目録 絵本天の川は,末尾の蔵板目録によれば,寛政九年に 書韓和泉屋源七が出版したようにみえる.この蔵板目録 に収録されている絵本詞乃花と絵本誓聴節には,やはり 同様の蔵板目録が備わっている.しかし,絵本軸節の それは書孝明石屋伊八の蔵板目録である.和泉屋源七と 明石屋伊八の蔵板目録は酷似しており,この二者には密 接な関係があることがわかる. 絵本飼乃花 蔵板日録 淋触.描韓鞄i舶虜 幾組1,勲奴,/三%I拠麦桝棚 勧毅 古今狂歌袋 広告
また絵本誓晩節の序文から,蔦屋重三郎が刊行に関係していたのではないかと推測される.さらに蔦 屋重三郎の刊行した古今狂歌袋の出版広告には,絵本詞乃花が掲載されており,同書が喜多川歌麿の絵 本であることも確認できる.この流れを図で示すと次のようになる.