ベトナム初の銑鋼一貫製鉄事業に本格参画する台湾
・中国鋼鐵 -- その背景と狙い (分析リポート)
著者
保倉 裕
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
242
ページ
37-46
発行年
2015-11
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00003077
分析リポート
ベトナム初の銑鋼一貫製鉄事業に本格参画する台湾・中国鋼鐵
―その背景と狙い―
保倉
裕
● は じ め に ベトナムは二〇〇〇年代に入り 国際的連携を深化させながら着実 な経済成長を示し(参考文献⑪、 二 二 一 ~ 二 二 二 ペ ー ジ )⑴ 、 従 来 の軽工業と一次産品中心の経済か ら重化学工業化を開始する段階に 入りつつある。その象徴的なプロ ジ ェ ク ト と し て 溶 鉱 炉( 高 炉 )・ 転炉を備え鉄鋼の大量生産を行う いわゆる銑鋼一貫製鉄所の建設が ベ ト ナ ム 北 中 部 ハ テ ィ ン( Ha Tinh ) 省 ヴ ン ア ン( Vung Ang ) 特区で現在進められており、二〇 一六年前半での稼動開始が見込ま れている。 このプロジェクトは一〇〇%外 資の直接投資によるもので、台湾 の総合化学企業・台湾塑膠工業公 司( 台 湾 プ ラ ス チ ッ ク、 Formosa Plastics Corp. 略 称「 台 プ ラ 」) を 中心とする台プラ・グループによ り 二 〇 〇 八 年 に 設 立 さ れ た For -mosa Ha Tinh Steel Corp. (略称 「FHS」 )が運営主体である。そ の第一期計画は主要設備は高炉二 基、転炉三基、熱間圧延(熱延) ライン(年間生産能力五三〇万ト ン )、 線 材 二 ラ イ ン( 一 二 〇 万 ト ン )、 年 産 粗 鋼 七 〇 七 万 ト ン、 総 投資額一一〇億ドル、第二期完成 時には年産粗鋼二〇〇〇万トン、 総投資額二〇〇億ドルといわれる 壮大な計画である ⑵ 。 二〇一〇年にこのFHSプロジ ェクトに台湾を代表する鉄鋼企業 で あ る 中 国 鋼 鐵( China Steel Corp. 略 称「 C S C 」) が 五 % 出 資 し 参 加 し た ⑶ 。 台 プ ラ・ グ ル ー プは台湾最大の民間企業グループ であり、その発展は一九五四年に 政府がPVC(ポリ塩化ビニル) の生産を台プラ創業者の王永慶に 委託し同社がカーバイド法での生 産を開始したことに始まる。一九 八六年にはナフサ分解に参入(六 軽計画)し石油化学の上流能力を 拡充、その後の大きな発展の基盤 を 築 い た ⑷ 。 王 永 慶 は 基 礎 産 業 で ある鉄鋼業への参入にかねて熱意 を持っていたと伝えられるが、台 湾内での参入は実現しなかった。 FHSは台プラとしては永年の懸 案の実現ともいえよう。しかし大 規模銑鋼一貫製鉄所の建設・操業 には専門的知識と経験が不可欠で あり、中国鋼鐵の参画は必然であ ったと考えられる。しかしCSC は二〇一五年二月にこの出資比率 を二五%まで拡大する方針を発表 した。この二五%出資が完了する とCSCとしての出資額は一一億 ドルを上回るものと推定され、こ の方針は同社のFHSプロジェク トへの本格参画を意味するものと 理解され大きな注目を集めた。 このプロジェクトとCSCの出 資比率拡大方針に関しては二つの 疑問が湧いてくる。 第一は、ベトナムの鉄鋼需要の 現状は量・質両面でFHSの計画 する銑鋼一貫の近代製鉄所の生産 力を吸収するには不十分なのでは ないかという点である。ベトナム では特に薄鋼板類の需要が拡大し ているがその製造の素材となる厚 めの鋼板を生産する熱間圧延設備 が存在しない。この面では、熱間 圧延設備およびそこに素材である 鋼を供給する銑鋼一貫の必要性が あることは確かではある。しかし その需要の内実をみると、建材関 連の用途が大半であり自動車産業 などは育っておらず、今後の内需 拡大を見込むとしても中国をはじ めとする安値輸入材との競合もあ り、ベトナム内需による吸収には 限界がある。したがってFHSプ ロジェクト稼動後の販路としては 輸出への依存度が高くなるのでは ないかと想定されるのである。 第二は、そうしたリスクのある プロジェクトになぜCSCは本格 参画することにしたのかという点である。この方針選択はCSCの 中長期的戦略に基くものと考える べきであろう。したがってこの問 題を考えるには、CSCの持つ鉄 鋼企業としての特性と市場環境を 確認しその戦略を推定してゆくこ とが必要となる。 ベトナム鉄鋼業を深く研究して いる川端の最新の報告はベトナム 鉄鋼業の現況と問題点を現地調査 も含め詳細に論じたものであるが、 そこで同氏が今後の研究課題のひ とつとして挙げているのが進出元 の外資の認識と意図に関する分析 である(参考文献③、三二~三三 ペ ー ジ )。 正 鵠 を 得 た 指 摘 と 感 じ る。筆者はそうした問題意識をも って、二〇一五年三月に訪台し鉄 鋼関係者や学界のこの分野の専門 家と意見交換を行った。 本稿は、その結果も踏まえFH Sをひとつの事例として海外直接 投資をその主体側の視点から分析 し、投資の実態をより明確にしよ うと試みるものである。具体的な 内容としては、まずCSCの中長 期的戦略を推定する。次にベトナ ム鉄鋼業の現況を概観し、全般的 過剰生産能力と熱延材の輸入依存 という生産能力の不均衡の下での FHSによる熱延材生産の合理性 を確認する。最後にFHSの計画 の持つ問題点を考察し、そこに本 格的に参画するCSCの意図を同 社の戦略の文脈のなかでどのよう に理解すべきかについて見解を述 べる。 ● 鉄 鋼 製 品 生 産 の 特 質 検討を進める前提として鉄鋼生 産の基本的工程とその特質を確認 しておく。鉄鋼の製造工程は銑鉄 を生産する製銑工程、銑鉄を酸素 で還元し炭素含有量を減少させ鋼 を生産する製鋼工程、鋼を熱間で 圧 延 す る 熱 延 工 程、 そ の 熱 延 材 を 冷 間 で 圧 延 す る 冷 延 工 程、 さ ら に メ ッ キ や 塗 装、 溶 接 な ど を 施 す 表 面 処 理・ 加 工 工 程 か ら な っ て い る。 こ の 工 程 で 鋼 ま で は 製 造 工 程 の 半 製 品 で あ る が、 熱 延 材 は 鉄 鋼 使 用 産 業 向 け の 鉄 鋼 製 品 と し て 販 売 さ れ る が 同 時 に 次 工 程 で あ る 冷 延 向 け の 半 製 品 と し て の 性 格も併せ持っている。 製 銑・ 製 鋼 工 程 は 鉄 鉱 石 を 原 料 と す る 高 炉・ 転 炉 に よ る 銑 鋼 一 貫 の 大 量 生 産 方 式 と 鉄 屑 を 原 料 と す る 電 気 炉( 電 炉 ) に よ る 少 量 生 産 方 式 ⑸ と が あ り、 鉄 鋼 製 品 と の 対 応 関 係 で は 銑 鋼 一 貫 は 板 類( flat products )、 大 形 の 形 鋼、 管 類 な どを、また電炉は棒鋼、形鋼、線 材 と い っ た い わ ゆ る 長 モ ノ( long products ) を 製 造 す る の に 適 し た 生産方式である。 鉄鋼生産の特質としては、技術 が設備に体化している度合いが高 いこと、銑鋼一貫の場合は初期投 資額が大きいため規模の経済の影 響が大きいこと、製品の品質管理 が製鋼から圧延・表面処理までの 一貫管理によって達成されること、 などを挙げることができよう。 ● 台 湾 鉄 鋼 業 の 相 対 的 劣 位 台湾の鉄鋼業はアジア有数の水 準にある。しかし日本、韓国との 比較では相対的劣位にあるといわ ざるを得ない。その状況は生産能 力、品質の両面でみられるが、こ れは具体的な数字で確認すること ができる。まず生産能力面では図 1のとおり粗鋼生産量で日本・韓 国を下回っている一方で、半製品 輸入量は図2のとおり韓国を上回 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 1995 2000 2005 2010 2013 台湾 韓国 日本 (1,000M/T) 図1 粗鋼生産量推移
(出所) 東南アジア鉄鋼協会(以下、SEAISI)発行 Steel Statistical Yearbook各年版より筆 者作成。 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000 1995 2000 2005 2010 2013 台湾 韓国 日本 (1,000M/T) 図2 半製品輸入量推移
ベトナム初の銑鋼一貫製鉄事業に本格参画する台湾・中国鋼鐵―その背景と狙い― っていた。これは台湾の製鋼能力 の量的不十分さを端的に示すもの である。 次に品質面での比較として、冷 延鋼板生産全体のなかでの加工度 の高い用途に使用される高張力鋼 板用が中心と考えられる合金鋼の 比 率 ⑹ を と っ て 比 較 し て み る と 図 3のとおり明瞭な差異が確認でき る。台湾の合金鋼比率は統計上把 握できないレベルである。 台湾のこうした相対的劣位は、 台湾を代表する鉄鋼企業であるC SCの問題そのものであり、以下 に説明するように、CSCにはこ うした相対的劣位から脱却する対 策を講ずる強い必要があったので ある。 ● C S C の 体 質 強 化 の た め の 対 策 CSCグループは台湾唯一の銑 鋼一貫の鉄鋼企業である。同社は 一九七一年に設立され、当初は政 府出資四五%の計画であったが、 民間よりの出資が難航し結局一九 七七年に国営企業に改組した。一 九八二年には年産粗鋼三二五万ト ン、八八年には同五六五万トンの 体制を整え台湾の鉄鋼業を代表す る存在となった。CSCはアジア 有数の鉄鋼企業ではあるが、先発 の日本の鉄鋼企業やCSCとほぼ 同時期に設立された韓国POSC O(一九六八年に実質国営で設立、 一九七六年に年産粗鋼二六〇万ト ン、七八年に五五〇万トン体制) との比較では生産量・品質ともに 劣 位 に あ っ た と い わ ざ る を 得 な い ⑺ 。 こ の 背 景 と し て は 造 船・ 自 動車といった鉄鋼消費産業が台湾 で 大 き な 発 展 を 示 さ な か っ た こ と ⑻ 、 ま た 一 九 九 〇 年 代 初 頭 よ り 政府の出資比率は漸減し一九九五 年には五〇%を割り民営化が実現 し た ⑼ も の の、 そ れ ま で 永 く 企 業 としての活動に諸々の制約があっ たこと ⑽ 、などが考えられる。 したがって民営化後のCSCと してはそうした日本・韓国の鉄鋼 企業との比較での相対的劣位から の脱却が大きな戦略目標となった ものと考えられる。二〇〇〇年代 に入るとCSCは二つの戦略を鮮 明にした。ひとつは台湾内におけ る自社グループの拡充と製鋼・熱 延という鉄鋼生産の上工程生産能 力の量的・質的改善である。いま ひとつは台湾内での上工程拡充に 対応して、熱延材使用工程である 冷間圧延(冷延)以降の下工程部 門への直接投資をベトナムを含む アジア圏で積極化したことである。 これらの施策はCSCがアジア圏 を中心に海外展開を推進する戦略 に基くものであり、ここで検討し てゆくCSCのFHSへの取組み もこうしたCSCの戦略の文脈の なかで考察すべきものと考える。 ⑴台湾内でのグループの拡充と生 産体制・設備の強化 CSCは台湾内で有力鉄鋼企業 を傘下に収めグループとしての陣 容を強化するとともに、それらの 企業の設備の有効活用および新規 設備投資により特に熱延材の生産 力および製鋼能力の強化を実現し た。中鴻鋼鐵および中龍鋼鐵はそ の主な事例である。 中 鴻 鋼 鐵( Chung Hung Steel ) は 燁 隆( Yieh Loong ) グ ル ー プ の 鋼 管・ 板 類 製 造 会 社( 燁 興 企 業)であったがCSCが二〇〇〇 年に同社を系列化し、二〇〇四年 に 現 在 の 社 名 に 変 更 し た ⑾ 。 C S Cは同社の熱延ライン(一九九七 年稼動、工場は高雄)を有効活用 し戦力化するために二〇〇三年に 日本の住友金属工業(当時。以下、 住金)と連携し住金和歌山製鉄所 の製鋼工程を分社化し「住金鋼鐵 和歌山」を設立、そこからこの熱 延ライン向けにスラブを安定供給 す る 体 制 を 構 築 し た ⑿ ( 年 間 供 給 量一八〇万トンと推定される) 。 中龍鋼鐵 (
Dragon Steel Corp.
) は 柱 裕( Kuei-Yi ) 企 業 と い う H 形鋼生産の有力電炉鉄鋼企業(工 場は台中)にCSCが二〇〇四年 に資本参加し現社名に変更したも のである。二〇〇八年には同社を 完全子会社化し熱延を稼動させ、 二〇一〇年に一基目の高炉(CS C 5 号 高 炉 )、 二 〇 一 三 年 に は 二 基目の高炉(CSC6号高炉)を 稼動させ銑鋼一貫の工場に様相を 図3 冷延鋼板生産のなかでの合金鋼比率 (出所) 図2に同じ。 0 1 2 3 4 5 6 7 2000 台湾 韓国 日本 (%) 2005 2010 2013
一変させた。現在の主要設備は高 炉 二 基( 年 産 能 力 五 〇 〇 万 ト ン )、 転炉三基、電炉一基(一〇〇万ト ン) 、熱延(四〇〇万トン) 、形鋼 ( 六 〇 万 ト ン ) で、 二 〇 一 四 年 の 粗鋼生産実績は六〇八万トンであ る。筆者は二〇一五年三月に台中 の同社を訪問し工場をみる機会を 得たが、特にその熱延ラインは主 要先発国と比較しても装備面では 遜 色 な い 水 準 の も の と 考 え ら れ る ⒀ 。 こうしたCSCの台湾内での体 制の整備により、台湾の粗鋼生産 量の増加とインゴット・半製品の 輸入減少の傾向は明確になってい る( 図 1、 図 2 参 照 )。 ま た こ う した対策によりCSCの台湾内で の比重も高まっており二〇一三年 時点での設備ベースの生産能力で みるとCSCグループは粗鋼で五 六・ 八 %( 炭 素 鋼 で は 六 一・ 一 %) 、 H 形 鋼 で 四 〇 %、 厚 板 で 八 三・八%、熱延コイルで八三・二 %、冷延コイルで四三・五%のシ ェアを占めるに至っている ⒁ 。 ⑵アジア圏での積極的な直接投資 の推進 一方、CSCは台湾内で強化さ れた熱延材の生産能力を吸収する とともに企業としての発展を図る ために、アジア圏に冷延以降の工 程を中心とする直接投資を積極的 に推進しマレーシア、ベトナム、 インドに進出した。 マレーシアでは、CSCは二〇 〇〇年に台湾・彦武企業が同国に 設立の冷延・亜鉛メッキ・塗装の 工場 ( Ornasteel Enterprise Corp. ( M )Sdn.Bhd. ) に 出 資 し ⒂ 、 CSC Steel Sdn. Bhd. を設立。二〇〇四 年には同社を一〇〇%子会社化し た。現在の生産品目は冷延材、亜 鉛メッキ材を中心に年間生産能力 は五〇万トン、その素材となる熱 延材はCSCより供給されている。 インドでは無方向性電磁鋼板の 製 造 に 進 出 し 二 〇 一 一 年 に China Steel India Pvt. Ltd. を 設 立、 グ ジャラート ( Gujarat ) 州で焼鈍 ・ 塗装ラインを設置、年間生産能力 は二〇万トンとされ二〇一五年の 生産開始を予定、その素材となる 冷延材はCSCより供給される。 また将来はここに冷延ラインを設 置し冷延材・亜鉛メッキ材を生産、 その素材の熱延材をCSCより供 給するという構想もある。 ベトナムでは二〇〇九年に冷延 材の製造に進出した。この投資は 日本との合弁であり、規模も大き く、成長市場ベトナムでの拠点構 築というCSCの戦略上の観点か らも重要性の極めて高いプロジェ クトである。このベトナムでのプ ロジェクトの意味を検討するに際 してはベトナムの鉄鋼業の状況を 把握しておくことが必要である。 そこで以下ベトナム鉄鋼業の状況 を概観し、それを踏まえてCSC のベトナムでの冷延工場およびF HSの状況と意味を考察すること としたい。 ● ベ ト ナ ム 鉄 鋼 業 の 状 況 ベ ト ナ ム の 鉄 鋼 需 要 は 二 〇 〇 〇 年 以 降 急 速 に 拡 大 し、 そ の 鋼 材 見 掛 消 費 量( 生 産 + 輸 入 -輸 出 ) は 年 間 一 二 〇 〇 万 ト ン に 近 づ い て い る。 電 炉 方 式 で 生 産 さ れ る 長 モ ノ で は 過 剰 生 産 能 力 状 態 と な っ て い る。 板 類 に つ い て も 冷 延 能 力 は 過 剰 と な っ て い る が ベ ト ナ ム 国 内 に 熱 延 ラ イ ン が 存 在 し な い た め 板 類 の 需 要 の 伸 び が 熱 延 材 の 輸 入 増 加 を も た ら す 構 造 と な っ て い る ⒃ 。 以 下、 こ れ ら を デ ー タ で 確認してみる。 ま ず ベ ト ナ ム の 鋼 材 見 掛消費量の推移とASEAN主要 国のタイ、インドネシアとの相対 観 を み る と ⒄ ベ ト ナ ム は 二 〇 〇 〇 年代に入り急速に消費量を拡大し 二〇一三年時点では一一七七万ト ンとなりインドネシア(一二六九 万トン)と拮抗する規模となって い る( 図 4) 。 こ れ は ベ ト ナ ム が 一九九〇年代前半から後半まで毎 年八~九・五%の高い経済成長率 を遂げ、二〇〇〇年代に入っても 五~八%の着実な成長を示してい 図4 鋼材見掛消費量推移
(出所) SEAISI 発 行 Steel Statistical Yearbook 各 年 版(1990年 は WorldSteelAssociation 発 行 Steel Statistical Yearbook による)より筆者作成。
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 1990 ベトナム タイ インドネシア (1,000M/T) 1995 2000 2005 2010 2013
ベトナム初の銑鋼一貫製鉄事業に本格参画する台湾・中国鋼鐵―その背景と狙い― ることの反映である。またこれに 加えてベトナムが二〇〇〇年代半 ば以降、鋼材多消費型の経済構造 に変化してきたことも増加の要因 と考えられる ⒅ 。 次にベトナムの需給を長モノ類 と板・管類に分けて分析してみる。 まず長モノの分野では二〇〇〇年 代初頭から需要が急増したが生産 もそれに対応して増加している。 東 南 ア ジ ア 鉄 鋼 協 会( South East Asia Iron and Steel Institute 以 下「 S E A I S I 」) の デ ー タ に よれば長モノ用半製品であるビレ ッ ト( billet ) の 製 造 会 社 は 二 七 社あり、その合計年間生産能力は 一一四三万トンとされることから 稼 働 率 は 二 〇 一 三 年 実 績 で は 四 七・九%となり、完全な過剰能力 体質である。また同年の見掛消費 の 内 容 を み る と 棒 鋼( bar ) が 六 五 %( 生 産 で は 八 〇 %) 、 次 い で 線 材( wire rods ) が 三 〇 % と い う構成である。以上より長モノの 主な需要は建築・建設分野と考え られる。 一方、板・管類の消費量は長モ ノにやや遅れて二〇〇五年以降急 速に増加し、二〇一三年時点では 長モノと拮抗する規模に増大して いる。これに対応し板類の下工程 である冷延および亜鉛メッ キ工程の能力も着実に拡大 している。SEAISIの データによれば二〇一三年 時 点 で 冷 延 で 八 社 ⒆ 、 亜 鉛 メッキで二一社あり、その 稼働率を算定すると冷延五 八・ 一 %、 亜 鉛 メ ッ キ 六 四・ 五 % と な り ⒇ 長 モ ノ 同 様の過剰能力体質となって いる。品目別には亜鉛メッ キ鋼板のほか塗装鋼板、溶 接管などの需要増加もみら れ 、 需 要 の 中 心 は 建 材 分 野と推定される。冷延材は 大半がこれら表面処理鋼板 の素材として使用されてい るものと推定される。 この冷延以降の工程に素材を供 給する熱延ラインがベトナム国内 に存在しないため、需要の拡大は そのまま熱延材の輸入増(二〇一 三年の鋼材総輸入約九〇〇トンの 五 五 % ) に 結 び つ い て お り、 中 国よりは汎用材が、また日本、韓 国よりは相対的に高級材が輸入さ れている。この生産工程能力の不 均衡がベトナムの鉄鋼業にとって 最大の構造的問題であり、FHS がこうした状況を背景にしたプロ ジェクトであることはいうまでも ない。 では次に、こうしたベトナム鉄 鋼業の状況のなかでCSCが主導 する冷延工場および本格参画する FHSの果たす役割を考察してい く。 ● C S C に と っ て の ベ ト ナ ム 冷 延 工 場 ( C S V C ) の 重 要 性 CSCは二〇〇九年に住金など と 合 弁 で China Steel Sumikin Viet -na m Joint Stock Co. ( 以 下、 「 C S V C 」) を 設 立、 冷 延 材 生 産 に 参入した。当初の株主構成は台湾 側六五%、うちCSC五一%、日 本側三五%は住金三〇%、住商五 % で あ っ た 。 C S V C の 資 本 金 は五・七四億ドル、総投資額は一 一・五億ドルである。二〇一三年 に バ リ ア ・ ヴ ン タ ウ( Ba Ria-Vung Tau ) 省ミーサン( My Xuan )工 業団地に在る工場で冷延が稼動、 年間生産能力は公称一二〇万トン、 実態としては一〇〇万トンと推定 さ れ る。 設 備 は POSCO Vietnam の冷延工場とともにベトナムで二 ハノイ ヴンアン 銑鋼一貫製鉄所建設地 (運営主体:FHS、 2016年稼働開始予定) ホーチミン ミーサン CSVC 工場 (2013 年稼働開始) (出所) 編集部作成。
つだけの連続式(タンデム)圧延 機を持つ優れた装備力の工場であ り 、 生 産 品 目 は 熱 延 酸 洗 材( 年 間 生 産 能 力 二 〇 万 ト ン )、 冷 延 材 (五〇万トン) 、亜鉛メッキ材(三 〇 万 ト ン )、 電 磁 鋼 板( 二 〇 万 ト ン)で、素材である熱延材はCS Cと新日鉄住金から供給され二〇 一四年実績は各々四七万トン、二 〇万トンと推定される。このCS Cからの供給は実態としては中龍 鋼鐵よりの供給である 。 CSVCの運営については、台 湾と日本の技術格差の存在を感じ させる分断管理の状態がみられる。 すなわちCSVCの冷延設備は四 系列からなっているが、酸洗・冷 間圧延ライン(PLTCM)と電 磁鋼板ライン(ACL)の二系列 はCSC側の管理・操業、連続式 焼鈍ライン(CAL)と溶融亜鉛 メッキライン(CGL)の二系列 は新日鉄住金側の管理・操業と明 確に分担が分かれている。現時点 では操業開始から年数も短いこと もあろうが、管理職はCSCから 六〇~八〇人、新日鉄住金から三 〇~四〇人規模の要員が派遣され ている。ベトナム現地では七〇〇 ~八〇〇人規模の採用がなされて おり、そのうち八〇%が生産現場 の業務に従事している 。 このようにCSVCは日本との 合弁による幅広い製品品目を持ち、 生産規模も大きく、高品質対応も 可能であり、アジア展開戦略の拠 点としてCSCにとって極めて重 要性の高いプロジェクトなのであ る。より具体的にいえば、二つの 側面が指摘できる。すなわち第一 は周辺国への輸出も視野に入れた 高級用途向け製品の供給拠点とし て 、 そ し て 第 二 に は F H S の 熱 延材を吸収し規模の経済を支える 販売の尖兵としての役割である。 したがってCSCにとっては、C SVCを自社の主導の下に維持・ 育成することは同社のアジア展開 という戦略の不可欠の要素であり、 またFHSへの参画とも不可分の 関係にあるのである。 ● C S C の F H S へ の 本 格 参 画 の 背 景 こうした状況を踏まえCSCの 視点に立ってFHSへの本格参画 の背景を考察すると、その背景は 次の三つの要因にまとめることが できると考える。 ⑴CSCにとっての進出先として ベトナムの必然性と重要性 第一にCSCの進出先として、 ベトナムは消去法的選択として最 も合理性がある。アジア圏での本 格進出の戦略拠点を考えれば鋼材 消費量の大きいタイ、インドネシ ア、ベトナム、マレーシアが考え られるが、タイは需要が品質面で 高度化しており日本・韓国の市場 支配力が強い、またインドネシア はPOSCOが銑鋼一貫で進出済 みである。マレーシアは二〇一三 年で見掛消費量が一〇〇〇万トン に到達はしたが、急速な伸びはな く国内での供給体制の整備も進ん でいる。したがってベトナムはC SCにとっては本格進出先として 最も適合しているものと考えられ る。 第二にベトナムの地理的有利性 である。台湾との海上輸送は三~ 五日であり、CSCの進出先であ るマレーシア、将来の輸出市場で あるタイ、インドネシアとも近接 しておりCSCのアジアでの事業 展 開 の 上 で 地 理 的 に 適 合 し て い る 。 第三にベトナム政府のFHSへ の支援姿勢も重要な要因と考えら れる。CSC関係者の理解によれ ば、ベトナム政府はFHSを国家 事 業( National Project ) と し て 支援しており、FHSをベトナム で認可する唯一の銑鋼一貫として おり税制面、港湾使用・輸送など での優遇措置を供与している模様 である。こうした政府の支援姿勢 は二〇一〇年前後に実現寸前まで ゆきながら着工に到らなかったP O S C O の 銑 鋼 一 貫 プ ロ ジ ェ ク ト と の 差 異 が 際 立 つ。 こ の 背 景 としては、FHSの立地場所であ るハティン省がPOSCOプロジ ェクトのカンホア ( Khanh Hoa ) 省に比べ貧困な地域であり中央・ 地元両政府の支援が得られ易いこ と、さらにベトナムで事業実績の ある台プラが政府関係者との厚い 人脈を持つこと、を挙げる見方が ある 。 ⑵CSVCの重要性と自由貿易協 定のCSCにとっての不利益 CSCにとってCSVCは海外 展開の拠点として極めて重要なプ ロジェクトであり、CSCはこれ をCSC主導の下に維持し発展さ せねばならぬという強い意欲を持 っている。この観点に立つとCS CのFHSへの参画という方針は 合理性のあるものとして理解でき る。 第一はCSVCへの熱延材供給 者としての立場の維持である。前 述のとおりCSC(実際は中龍鋼
ベトナム初の銑鋼一貫製鉄事業に本格参画する台湾・中国鋼鐵―その背景と狙い― 鐵)は四七万トン(二〇一四年実 績)の熱延材をCSVCに供給し ているが、ベトナム国内で熱延材 の生産がないことから輸入関税は 無税である。しかし国内に熱延の 供給者が現れれば最低でも五~七 % の 輸 入 関 税 施 行 と な ろ う 。 A SEAN内またASEANと中国 との自由貿易体制の枠外にいる台 湾はこの輸入関税設定で決定的に 不 利 な 影 響 を 受 け C S C の 現 行 商権は大きな打撃を受けることは 必至と考えられる。CSVCへの 熱延材供給者としての立場を失う ことはCSVCへの影響力の大幅 な減殺を意味する。FHSへの参 画は同社よりCSVCへの熱延材 供給という形でCSCの影響力を 維持する手段となるものと考えら れるのである 。 第二はローカル・コンテンツの 問題である。CSVCは自社の量 的・質的に高い生産能力とベトナ ム国内の建材向け汎用材中心の市 場との不整合を打開するため、周 辺国への輸出に活路を見出すこと と な ろ う。 そ の 場 合 に は ロ ー カ ル・コンテンツの要求を満たさね ばならず、熱延材の国産化が実現 すればCSVCがその熱延材を使 用することは必須となる。したが ってベトナム国内の熱延材生産に 参画しておくことはCSCにとっ て重要なのである 。 第三に、うがった見方としては、 FHSが将来は冷延材生産に進出 しCSVCの基盤を脅かす可能性 がありCSCにはこの抑止の必要 性があるとする見解もある 。 第四にCSVCについて、二〇 一〇年に枠組み合意がなされた台 湾=中国間の両岸経済協力枠組み 協議(ECFA)の影響を指摘す る 専 門 家 の 意 見 も あ る 。 E C F Aにより台湾内市場が鉄鋼製品に おいても中国に侵食される可能性 があり、CSCにとってはアジア 圏への展開拠点としてCSVCの 重要性が今後ますます高まるとの 見方である 。 ⑶FHSの経営者の変化 FHS側幹部との人的関係でC SC側にとって好ましい変化が生 じた。これはCSCにとって本格 参画の直接的な契機となったもの と思われる 。 第一はFHSの幹部の交代であ る。二〇一四年七月に在任一年程 度で辞任したFHS前社長の林信 義は元・高級官僚であるがCSC との関係は必ずしもよくはなかっ た と い わ れ る。 そ の 後 任 の 現 社 長・陳源成はCSCの前社長であ り、台プラの意向による社長就任 ではあるがCSCとの意思疎通が 円滑となり、CSCとしてはFH Sでの同社への理解が深まるとの 認識ができてきたものと思われる。 第二は台プラの姿勢の変化であ る。台プラは従来自社主導の銑鋼 一貫実現に執着しておりCSCの 影響力の拡大に警戒感もあったが、 同社の事業多角化や海外事業経験 の積み重ねを経て近時は自社の圧 倒的株式シェアにこだわる姿勢が 弱まったともいわれており、CS Cの株所有比率の拡大には格別の 抵抗を示さなかったといわれる。 CSC関係者によれば、CSCは FHSプロジェクトに参画した二 〇一〇年時点で二〇%の出資を行 う方針であったが、台プラとの関 係から五%の出資にとどまったと のことである(二〇一五年三月三 日、CSC関係者へのインタヴュ ー) 。 ● 結 語 CSCのFHSプロジェクトへ の本格参画の背景と狙いについて CSC側の視点に立って考察して きたが、そこから明らかになった 点を次のように確認しておきたい。 第一に、CSCがFHSプロジ ェクトの抱える量・質両面でのリ スクを認識したうえ敢えて参画す るのは、CSCの日本・韓国との 比較での相対的劣位からの脱却と いう基本戦略に基づくものである。 CSCはFHSを同社がアジア圏 で展開している諸プロジェクトへ の、そして近隣の成長市場への将 来の供給基地として活用する可能 性を踏まえて参画したのであり、 FHSをCSCのアジア戦略の一 環として捉えているということで ある。 第二に、CSCのアジア戦略の 拠点としてのCSVCの重要性か ら、FHSへの参画の判断におい てCSCのCSVCに対する影響 力の維持という観点が大きな比重 を占めるものであったということ である。 第三に、したがってCSCのF HSへの出資比率二五%への拡大 は方針の「変更」ではなく、FH S側経営陣の交代や姿勢の変化を 契機としてCSCが本来目指して いた方向が追求できるようになっ たと理解するほうが的確であると いうことである。 最後にFHS稼動後の影響と問 題点について想定上の考察をして
おきたい。 第一はFHSおよびCSVCの 目指す製品品質の方向の問題であ る。現時点ではFHSはベトナム 内需の実態を考慮し汎用材の生産 に集中する方向である。しかしC SVCへの供給や輸出の必要が生 じた場合、品質一貫管理の必要か ら高級材の要望を受ける可能性が 高い。二〇一五年七月末に日本の 銑鋼一貫企業JFEスチール(以 下、 「JFE」 )がFHSへの五% 出 資 の 方 針 を 公 表 し た 。 こ の 参 画には、自動車向けなどの高級材 生産を考慮したFHS社内、特に 台プラ側の意見が背景にあるもの と推測される。JFEの存在は、 FHSプロジェクト内でのCSC の影響力を相対的に弱める。特に JFEが将来その出資比率を拡大 するような場合には、CSCは影 響力維持のためにさらなる出資比 率拡大を含めた対抗策を迫られる 可能性もある。つまりFHSの目 指す品質の方向は参画する企業間 の出資比率構成にも影響を及ぼす 可能性のある問題なのである。 第二はCSC自体の販路への影 響である。FHSが将来仮にCS VCや、さらにはCSCのアジア での進出先に熱延材を大量に供給 することとなれば、これは台湾で 拡充した熱延能力のアジア圏での 吸収という方向に逆行するもので ある。ただ一方で台湾内での熱延 の装備力向上も既に触れたとおり である。したがってこうしたケー スでのひとつの想定としては、C SCは一段の熱延材の品質向上に より台湾内需への供給増を図り、 ス ラ ブ( slab ) を 中 心 と す る 半 製 品の輸入抑制に努めることである。 仮にこの想定が現実となった場合 に は、 日 本 か ら の ス ラ ブ 輸 入 な どの現行の構造に大きな変化が生 じることもあり得ることから、F HSの稼動後の動向は国際的な供 給枠組みの再編にもつながる可能 性を持つのである。 ( ほ く ら ゆ た か / 東 京 音 楽 大 学 理事、早稲田大学ベトナム総合研 究所招聘研究員) 《注》 ⑴ トラン(参考文献⑪)はドイモ イ(一九八六年)以降のベトナ ムの経済発展は、対外関係に焦 点を合わせてみると、二〇〇〇 年前後から第二段階に入ると分 析し、その特徴を地域化とグロ ーバル化としている。なおベト ナムの二〇一四年の一人あたり 名目GDPは二〇五二・八ドル、 二〇一五年見通しは二二三三ド ルである(参考文献⑰) 。 ⑵ FHSプロジェクトの内容は参 考文献③(二六~二八ページ) に詳述されている。 ⑶ CSCは役員一名の派遣も行っ た( 役 員 総 数 は 一 二 名 )( 二 〇 一五年三月三日、CSC関係者 へのインタヴュー) 。 ⑷ 台プラの発展経緯については参 考文献⑧(一七九~一八六、一 九七ページ)に詳しい。 ⑸ 鉄屑以外に直接還元によるDR I( Direct Reduced Iron ) や 小型高炉による銑鉄を原料とす ることもある。 ⑹ S E A I S I 統 計 の Class No. 51 0 ( C ol d-R ol le d Sh ee t & Strip ) に 対 す る 同 513 ( H S コ ード 7225.50, 99, 7226.92 )の比率。 ⑺ 川端(参考文献①)はPOSC O、CSCの発展経緯を欧米・ 日本のそれとの比較において、 政府の関与のもとでの「圧縮さ れた発展」として質的に同一の グループに位置づけられる、と の認識を示している(五〇ペー ジ) 。 ⑻ 劉進慶(参考文献⑭、一二八ペ ージ/同⑮、二四ページ)は造 船の発展の不十分さを鉄鋼の発 展の阻害要因として挙げている。 佐藤幸人(参考文献⑥、一〇〇 ~一〇七ページ)は金属製品・ 機械産業が、自動車に代わる鉄 鋼消費産業として台湾鉄鋼業の 質的発展に貢献し得る可能性を 指摘している。 ⑼ CSCは一九八九年に第一陣の 民営化候補企業とされ、政府出 資比率は一九九一年五月には九 一・三二%に低下、一九九五年 三月には四七・八一%と五〇% を割った。なお二〇一五年三月 時点では二〇%である。 ⑽ 予算承認までの長い所要時間、 新たな施策への既得権益層から の政治家を通しての妨害工作な どがみられた(二〇一三年七月 一七日、中国鋼鐵・管理部門関 係 者 へ の イ ン タ ヴ ュ ー) 。 な お CSCの国営企業としての非効 率性については劉文甫(参考文 献 ⑯、 八 三 ペ ー ジ )、 ま た 国 営 企業の一般論という形であるが CSCの董事長であった趙(参 考文献⑨、八一~八三ページ) による指摘もみられる。 ⑾ 参考文献⑥ (九四ページ) にこの 経緯の背景も含めた説明がある。 ⑿ 住金・CSC両社は住金鋼鐵和
ベトナム初の銑鋼一貫製鉄事業に本格参画する台湾・中国鋼鐵―その背景と狙い― 歌山(二〇一二年の新日鉄住金 の成立にともない「日鉄住金鋼 鐵和歌山」と社名変更)の持株 会社「東アジア連合鋼鐵」を設 立(当初出資比率は住金六二・ 〇五%、住商四・九五%、CS C三三%。現行比率は新日鉄住 金六五%、住商四%、神戸製鋼 所 二 %、 C S C 二 九 %) 。 こ の 経緯は参考文献⑦(二八~二九 ページ)に日台のビジネスアラ イアンスという視点からの詳説 がある。 ⒀ 熱延ラインは加熱炉三基(四〇 ス ラ ブ 処 理 可 能 )、 サ イ ジ ン グ、 粗ロール二基(№1が二ロール、 № 2 が 四 ロ ー ル ) 、 仕 上 げ ロ ー ルは№1~4がペアクロス、№ 5~7がワーク・ロール・シフ トで、平均コイル単重二〇トン (最大三五トン) 、設備はすべて 日本製である(二〇一五年三月 四日、訪問調査) 。 ⒁ 参考文献㉑(一二六~一二七ペ ージ)より筆者算定。 ⒂ 彦武企業に関する経緯について は参考文献⑥(九四ページ)を 参照。 ⒃ 川端 (参考文献②) はこの熱延不 在の業態をひとつのビジネスモ デルという視点で分析している。 ⒄ アジア各国の鉄鋼業に関しては 参考文献⑩に詳細な需要分析が ある。また保倉(参考文献⑬) はASEAN主要国の鋼材輸入 の内容を分析している。 ⒅ 一人あたり鋼材消費量をみると 二〇〇〇年時点ではベトナム三 四・ 〇 キ ロ、 イ ン ド ネ シ ア 二 二・七キロであるが、二〇〇七 年では各々一〇九・六キロ、三 一・二キロ、二〇一三年では一 二九・八キロ、五一・三キロで あ る( 参 考 文 献 ⑳ )。 な お 川 端 ( 参 考 文 献 ③、 六 ~ 七 ペ ー ジ ) は 一 人 あ た り G D P 鋼 材 消 費 ( 鋼 材 集 約 度 ) が 高 い と の 指 摘 を行い、また佐藤創(参考文献 ⑤、一一ページ)も同様の指標 を用い「工業化戦略によるキャ ッチアップを目指した国」の特 質、との分析を示している。 ⒆ 川端(参考文献③、二二~二五 ページ)は鋼板類セクター主要 企業として一二社を挙げる。 ⒇ 川端 (参考文献③、二五ページ) はベトナム鉄鋼協会のデータか ら二〇一三年の稼働率として冷 延六〇・三%、メッキ五八・四 %という数字を示している。 二〇一四年六月のSEAISI 会議でのベトナム鉄鋼協会の報 告による。 参考文献⑱より筆者算出。なお、 参考文献⑲によって算出すると 五一%となる。 この株主構成は二〇一二年の新 日鉄住金の成立にともなう変更 に加えFHSも参画することと なり、台湾側六〇%、うちCS C五一%、FHS五%、日本側 四〇%は新日鉄住金三〇%、住 商五%、日鉄住金物産五%と修 正された。なお台湾側の株主構 成は参考文献⑦(三二ページ) に詳しい。 参考文献③(二四ページ)に需 要の背景を含め詳説されている。 二〇一五年三月四日の中龍鋼鐵 でのインタヴューによる。 CSVCの操業・管理の関連は、 二〇一五年三月三・四日のCS VCプロジェクト担当のCSC 関係者へのインタヴューによる。 CSVC製品の品質水準に関す るCSCの意図としては、当面 は汎用材が中心となるがベトナ ム国内でもエアコンなどの家電、 コンプレッサーなどに用途を拡 げ、逐次周辺国のより高級な用 途への供給に参入するとしてい る(二〇一五年三月三日、プロ ジェクト担当のCSC関係者へ のインタヴュー) 。 CSC関係者は、インドも含め FHSよりアジアのCSCの進 出先への熱延材供給の可能性に 言及している(二〇一五年三月 三日、FHSプロジェクト担当 者へのインタヴュー) 。 二〇一〇年時点でのPOSCO プロジェクトの状況は参考文献 ⑫(一〇三~一〇六ページ)を 参照。 二〇一五年三月三日、FHSプ ロジェクト担当のCSC関係者 へのインタヴューによる。 CSC関係者の見通し(二〇一 五年三月三日、FHSプロジェ クト担当者へのインタヴュー) 。 日本・韓国は品質面から一定の 競争力は維持できようがCSC はその点で劣位にある。 二〇一五年三月三日、FHSプ ロジェクト担当のCSC関係者 へのインタヴューによる。 二〇一五年三月三日、FHSプ ロジェクト担当のCSC関係者、 および三月六日の鉄鋼分野に詳 しい研究者へのインタヴューに よる。 二〇一五年三月六日、鉄鋼分野 に詳しい研究者へのインタヴュ ーによる。
ECFAについては参考文献④ に詳説されている。 第三・第四は二〇一五年三月六 日、鉄鋼分野に詳しい研究者へ のインタヴューによる。 人的関係の変化はCSC関係者 が最も強調していた要因である。 二〇一五年七月三〇日にJFE より公式発表された(二〇一五 年七月三一日付け『日本経済新 聞』および『鉄鋼新聞』 )。 二〇一五年四月より、日鉄住金 鋼鐵和歌山より中鴻鋼鐵へのス ラブ供給量が年間一八〇万トン から一二〇万トンに減少し、東 アジア連合鋼鐵のCSC出資シ ェアも現行の二九%から約一九 %に減少することが報じられて いる(二〇一五年三月三〇日付 け『鉄鋼新聞』 )。 《参考文献》 ① 川端望『東アジア鉄鋼業の構造 とダイナミズム』ミネルヴァ書 房、二〇〇五年。 ② ―――「タイ・ベトナム鉄鋼業 におけるビジネスモデル――冷 延鋼板製造企業の事例を中心に ― ― 」『 TERG Discussion Pa -per 』 No.263 、 東 北 大 学 大 学 院 経済学研究科、二〇一一年。 ③ ―――「市場経済移行下のベト ナム鉄鋼業――その達成と課題 ― ― 」『 TERG Discussion Pa -per 』 No.335 、 東 北 大 学 大 学 院 経済学研究科、二〇一五年。 ④ 魏聡哲・呉淑妍(池畑裕介訳) 「 両 岸 自 由 貿 易 化 に お け る 台 湾 中小企業の発展モデルにかかる 分析」 (『問題と研究』第四〇巻 三号、二〇一一年) 。 ⑤ 佐藤創「キャッチアップ型工業 化論と鉄鋼業――〔ガーシェン クロン vs.ハーシュマン〕をめぐ って」 (『アジア経済』一二月号、 二〇一四年) 。 ⑥ 佐藤幸人「台湾鉄鋼業の成長お よび高度化のメカニズム――自 動車産業に依存しない発展のプ ロ セ ス と 可 能 性 ――」 ( 佐 藤 創 編『アジア諸国の鉄鋼業――発 展と変容』アジア経済研究所、 二〇〇八年) 。 ⑦ ―――「日台ビジネスアライア ンスの達成と新たな展開」ジェ トロでの講演資料、二〇一四年 五月一五日。 ⑧ 瞿宛文( Chu, Wan-wen )「石油 化学産業の産業政策――産業の 生成とデモンストレーション効 果 ――」 ( 劉 進 慶・ 朝 元 照 雄 編 著( 朝 元 照 雄 訳 )『 台 湾 の 産 業 政策』勁草書房、二〇〇三年) 。 ⑨ 趙 耀 東「 公 営 企 業 」( 高 希 均・ 李 誠 編、 小 林 幹 夫・ 塚 越 敏 彦 訳) 『台湾の四十年(下) 』連合 出版、一九九三年。 ⑩ 鉄 鋼 産 業 基 盤 戦 略 調 査 委 員 会 『 平 成 二 五 年 度 ア ジ ア 産 業 基 盤 強化事業(アジア地域における 鉄 鋼 産 業 基 盤 戦 略 調 査 ) 報 告 書』JFEテクノリサーチ、二 〇一四年。 ⑪ トラン・ヴァン・トウ『ベトナ ム経済発展論――中所得国の罠 と新たなドイモイ――』勁草書 房、二〇一〇年。 ⑫ 保倉裕「ベトナム鉄鋼業の現況 と 発 展 の 方 向 」( 早 稲 田 大 学 ベ トナム総合研究所編『東アジア 新時代とベトナム経済』文眞堂、 二〇一〇年) 。 ⑬ ―――「ASEAN諸国の鉄鋼 業」 (『海外事情』一〇月号、拓 殖大学海外事情研究所、二〇一 四年) 。 ⑭ 劉進慶「産業――官民共棲の構 図 」( 隅 谷 三 喜 男・ 劉 進 慶・ 凃 照彦『台湾の経済――典型NI ESの光と影――』東京大学出 版会、一九九二年) 。 ⑮ ―――「産業組織と産業政策」 ( 劉 進 慶・ 朝 元 照 雄 編 著『 台 湾 の産業政策』勁草書房、二〇〇 三年) 。 ⑯ 劉文甫「公営企業の民営化政策 と そ の 展 開 」( 渡 辺 利 夫・ 朝 元 照雄編著『台湾経済入門』勁草 書房、二〇〇七年) 。 ⑰ IMF, World Economic Out -look Database, April 2015 ( ht tp s:/ /w w w .im f.o rg /e xt er -nal/pubs/ft/weo/2015/01/ weodata/index.aspx ). ⑱ South East Asia Iron and St eel Ins titut e, St ee l St ati st ic al
Yearbook, various issues.
⑲ Vietnam Steel Association, Vietnam Steel Industry 2013
and Outlook for 2014, 2014
(二 〇一四年六月一〇日のマレーシ アでのSEAISI総会での説 明資料) . ⑳ W or ld S te el A ss oc iat ion , S tee l Sta ti sti cal Y ear bo ok , V ar iou s issues. ㉑ 台湾鋼鐵工業同業公会『二〇一 四年台湾鋼鐵年鑑』二〇一四年。