1. はじめに 文部科学省は、学校教育を進める上で必要な施設機 能を確保するため、学校種ごとに「学校施設整備指針」 を定めている。その中で学校の植栽については、第 6 章「屋外計画」の第 4「緑地」において「郷土産のも のを中心に,四季の変化,生態,生理等を観察できる ような樹種を選定することが望ましい。」と記載され ており、学校緑化としての機能だけでなく、授業など での活用も想定している(文部科学省大臣官房文教施 設企画部 2016ab、文部科学省大臣官房文教施設企画・ 防災部 2019ab)。 実際に植栽を教材とするためには観察対象となる 樹木の名前が必要となる場合も多いが、一般に広く 認知されている樹木はサクラやクスノキなど限られ ている。一方で、教師自身が植栽樹木等の名前を知 らないことが教材化のうえでの最も大きな課題であ ることも指摘されている(藤吉ら 2008)。このために 学校内に植栽されている植物に特化した図鑑も出版・ 作成されているが、あまり利用が広がっていない(岩 瀬・川名 1991、近田・平野 2009)。また植栽には栽 培品種が使用されることも多く、このことが植物観 察の初心者にとって名前を調べることを難しくして いる。しかしながら、一旦樹名板を設置できると、 植栽は生活科や理科、さらには環境教育などのさま ざまな授業で長期にわたって活用できる有効な教材 となりうる。 和歌山大学教育学部では、生物学実習の一つである 「バイオリテラシー」で生物の野外観察・調査を行っ ている。本実習は 2018 年度末をもって閉講したが、 受講していた学生とともに活動を継続し、次年度以降 も和歌山大学教育学部附属支援学校の植栽調査を行っ た。本稿では、その結果をもとに生徒と行った樹名板 設置活動および、それを活用して行った教育実践につ いて報告する。 2. 学校の植栽調査と整備 植栽の調査結果をもとに、和歌山大学教育学部附属 特別支援学校の高等部 3 年生の生徒 5 名とともに、卒 研究報告・ノート
樹名板を使った環境教育
抄録:和歌山大学教育学部附属特別支援学校の植栽調査を行い、その結果をもとに教材開発およびその実践を行っ た。植栽調査では校内に 32 種(栽培品種のミカン類を除く)の樹木および大型多年生草本があることを確認した。 そして高等部の 5 名の生徒とともに樹名板を設置し、生徒には校内植物マップとそれぞれの植物についての解説文を 作成してもらった。また、知識を定着させるために、ゲーム感覚で植物を学ぶビンゴゲームを考案し、生徒の作成し た解説文を用いて学習する iPad 教材を開発し実践した。実践後の生徒の感想および、樹名板設置前後の植物名認知 度アンケートの結果から、この実践は植物名を入り口として、植物そのものの形態や生態に興味を持ち、探求へのきっ かけとなったことが示された。 キーワード:樹名板、ビンゴ、Scratch、iPad、環境教育、植栽Environmental education using botanical name plates
受理日 令和 3 年 1 月 31 日
梶村 麻紀子
KAJIMURA Makiko (和歌山大学教育学部)中筋 千晶
NAKASUJI Chiaki (和歌山大学教育学部 附属特別支援学校)豊田 充崇
TOYODA Michitaka (和歌山大学大学院教育学研究科 教職開発専攻)宮井 健至
MIYAI Takeshi (智辯学園和歌山小学校)高須 英樹
TAKASU Hideki (和歌山大学教育学部名誉教授・ 和歌山県立自然博物館)業記念プロジェクトの一環として、樹名板の設置と樹 名板の位置を示す校内植物マップ作成を行った。 2. 1. 植栽の調査 和歌山大学教育学部附属特別支援学校は和歌山市内 の中央部に位置し、平地で四方は一般住宅で囲まれて いる。もともと教育学部農業教室および附属農場が あった現在地に昭和 52 年に移転しており、校内に古 木や樹高 10 mを超えるような高木はない。 本調査は、和歌山大学教育学部附属特別支援学校の 校内に植栽されている木本および大型の多年生草本を 対象とし、2019 年 11 月 22 日、2020 年 8 月 3 日の 2 回調査を行った。現地調査は、梶村、宮井および高須 が担当し、種の同定は、最新版日本植物誌である「改 訂新版 日本の野生植物全 5 巻」に従った。 調査の結果、木本 30 種(栽培品種のミカン類を除 く)、大型多年生草本 2 種(カンナ、ハマオモト)の 計 32 種を確認した(表1)。そのうち、クスノキ、ク ロガネモチ、ザクロ、シイノキ、ソメイヨシノ、ナン テン、ネズミモチには各1枚ずつの樹名板が設置済み であった。また、ジャカランダとオリーブは学習活動 の一環として、数年前に生徒たちの手で植えられた。 品種名は不明だが、ビワ、ブドウ、ミカン類、レモン は農業実習で使用するために校内の農園で栽培されて いるものである。 2. 2. 樹名板の設置 樹名板は、植物の解説および QR(Quick Response) コードが記された「QR ラベル ®(アボック社)」を 使用した。この QR コードをスマートフォンやタブ レットで読み取ると、Web 植物辞書「花ペディア ® (Aboc Plant Net プロジェクト)」につながり、分類 や英名、特徴などの情報とともに、花の写真も確認で きる。樹名板の取り付けには、樹形や樹木のサイズに 合わせて、ポール(立看板式)、スプリング(幹巻式)、 ワイヤー(吊り下げ式)を使用した。 植栽の調査結果をもとに、2020 年 9 月 14 日、23 日、 28 日の 3 日間で計 33 枚の樹名板の設置を高等部 3 年 生 5 名と教員 3 人(中筋・高須・梶村)とともに行っ た。はじめに 3 タイプの樹名板の取り付け方法を生徒 に説明を行い、その後、それぞれの植物について取り 付け作業を行った。 作業に際して、名前の由来やその植物を餌とする昆 虫の話や花粉を媒介する動物等について解説するとと もに、実際に幹や葉に触れたり匂いをかいだりしなが ら行った。また、興味を持った生徒からは、食べるこ とは可能か?有毒かどうか?どのくらいの大きさにな るのか?といった質問がよせられた。 取り付け作業は、生徒にとって初めての経験だった ため、最初は教員の指導のもと戸惑いながら取り付けを 行っていたが、すぐに各々の方法を習得し、手早く行え るようになった。慣れてくると、幹のこぶや曲がりを利 用して樹名板の角度を調節したり、樹名板を見る人の立 ち位置から読みやすい方向に向けたりと、生徒たちで話 し合いながら工夫や判断する場面もみられた。 植栽され ている本 数 樹名板 (枚数) 設置済み 今回設置 1 アオギリ 6 1 2 アジサイ sp. 5 1 3 イチョウ 4 2 4 イヌツゲ 10 2 5 ウバメガシ 15 1 6 オオシマザクラ 1 1 7 オリーブ 4 2 8 カイヅカイブキ 12 2 9 カンナ 3 1 10 クスノキ 3 1 2 11 クロガネモチ 2 1 1 12 クロマツ 1 13 コノテガシワ 4 14 サクラ sp. 2 15 ザクロ 1 1 16 サワラ 1 17 シイノキ 1 1 18 ジャカランダ 1 1 19 シラカシ 2 2 20 ソメイヨシノ 5 1 2 21 ツツジ sp.1 10 22 ツツジ sp.2 51 23 ナンテン 1 1 24 ネズミモチ 1 1 1 25 ハナミズキ 1 1 26 ハマオモト 12 1 27 ビワ 1 1 28 フジ 2 1 29 ブドウ 1 1 30 マテバシイ 20 2 31 ミカン類 6 1 32 ヤマモモ 4 2 33 レモン 1 1 計 7 33 表 1 和歌山大学教育学部附属特別支援学校敷地内で 確認した植栽植物および樹名板のリスト 写真 樹名板設置の様子
2. 3. 校内植物マップの作成 樹名板の設置後、生徒一人一人に校内の建物配置図 をわたし、樹名板の付いている植物の植栽場所を地図 上に記録してもらった。後日、各自の記録をもとに全 員で話し合いを行った。現在、校内植物マップの作成 を進めている。 3. ビンゴゲームを利用した学習用ソフト教材の開発 と実践 知識を定着させるために、ゲーム感覚で植物を学ぶ ビンゴゲームを考案した。本実践で行った樹名ビンゴ は、生徒がビンゴのマス目にある植物の樹名板を見つ けてクリックすると、その植物の解説文がポップアッ プするしくみである。解説文は生徒自身が作成するこ とで当該植物についての様々な情報の探求的な学習に つながることを期待した。 3. 1. 解説文の作成 樹名板の付いている植物を 1 種につき生徒 1 人ずつ 担当を決め、1 人 1 台配備されている iPad を用いて 植物の形態的特徴、和名の漢字表記、開花時期などの 情報を各自収集し、解説文を作成してもらった。また 解説文とともに掲載する植物の写真撮影についても生 徒が行った。作成された解説文の内容は、教員が確認 し、一部加筆修正した。 3. 2. 樹名ビンゴの作成 プログラムの条件は以下の通りである。 (1)タブレット端末(iPad)のみで操作できるもの (キーボードやマウスは不要) (2)平易なユーザーインターフェイスとひと目で分か る操作性を実現すること(押し間違えても戻せること等) (3)5 × 5 マス目で縦・横・斜めのいずれかが揃っ たらビンゴとなる (4)ゲーム性を持たせるために毎回ランダムに植物 名が配置されること (5)25 種類の植物名およびその情報が収納できること 以上のような条件を満たすために、MIT(マサ チューセッツ工科大学)メディアラボにて開発され た教育用プログラミング言語 Scratch を用いてビン ゴゲームを作成した(図 1、https://scratch.mit.edu/ projects/441916919)。 Scratch はビジュアルプログラミングツールの一つ であり、8 ~ 16 歳のプログラミング学習用途として 全世界の教育機関で用いられている。教育用とはいえ、 通常のプログラミング言語と同等の機能を有してお り、デジタル教材の開発用途としても活用できる。ま た、この Scratch は、ブラウザ上で動作するため、コ ンピュータ、情報端末(タブレット)をはじめスマー トフォンでも利用可能である。今回の実践では条件 (1)のように iPad での画面操作を想定した。 条件(2)(3)を満たすため、図 2 のような画面 設計をおこなった。スマートフォンのような小さなデ バイスでも植物名を視認でき、操作しやすいように、 画面全体を用いた。また、植物の解説文は、画面が切 り替わって表示するようにした(図 3)。植物名を押
すと、押されたことがわかるように色が変化し、再度 押すと元に戻る。また、条件(4)については、何度 でも挑戦できるように、25 マスに表示される植物名 は毎回ランダムに配置が変わるようにし、ゲーム性を 向上させた。 (5)の解説文の表示は、画像データを表示してい るため、画像ファイルであれば、写真・イラスト・地 図・グラフ等どのような情報でも表示可能である。今 回は、生徒自身が調べ、まとめた解説文のデータを用 いた。つまり、基本プログラムは教員が、表示データ 部分(図 4)は生徒が担っており、教員と生徒による 共同制作プログラム教材ともいえる。 3. 3. 樹名ビンゴの実践 高等部 3 年生の 5 名は学習活動で日常的に iPad を 使用しているため、簡単な操作方法の説明のみで使い 方を理解し活動を始めることができた。全体説明後は 各自、自由に校内を散策して樹名ビンゴを行った。 活動中に、マス目を押すと出てくる解説文を読んで 「自分が書いたやつだ」、「イチョウって恐竜がいた時 代からあるんだ」等の発言があった。また、自分以外 の生徒が作成した解説文を興味深く読んでいる姿がみ られた。さらに、この樹名ビンゴは 1 列マス目が揃う とビンゴの文字がポップアップするしくみになってい るが、ほとんどの生徒が 1 列や 2 列のビンゴだけでは なく、すべてのマス目を押せるよう、熱心に植物探し を行っていた。なかには 2 回目にチャレンジする生徒 もみられた。 図 1 樹名ビンゴの QR コード 図 4 Scratch のプログラムの一部 図 2 ビンゴゲームで表示される画面 図 3 植物の解説文の画面 写真 樹名ビンゴゲームの様子
4. 実践後の生徒の感想 生徒の感想からは、今回の実践によって植物への興 味関心が高まったことが推察される。また、iPad で 行ったビンゴゲームは生徒たちに大変好評であった。 5. 植物名の認知度についてのアンケート調査 樹名板設置活動および樹名ビンゴによる学習効果の 指標として、校内に植栽されている植物の名前を何種 類知っているかアンケート調査を行った。アンケート は生徒が樹名板を設置する前の 2020 年 9 月 10 日、樹 名板を設置した後の 10 月 7 日、樹名ビンゴ実施後の 10 月 29 日に行った。植物は、表1のうち、状態の悪 いものや、栽培品種のため花の形態を見ないと判別で きないものを除く 27 種を対象とした。アンケートの形 態は、27 種の植物名を記載したリストを用意し、名前 を知っている植物に丸を付けてもらう方法で行った。 この活動を始める前は、5 名全員が名前を聞いたこ とがあると回答した植物はオリーブ・ビワ・ブドウ・ ミカン・レモンの 5 種のみで、いずれも果物や食品と して身近なものであった。また、アジサイ、イチョウ、 フジといった小学校の教科書に登場する植物について も知っている生徒は多かった。一方で、ドングリは知っ ているものの、ドングリのなる木であるウバメガシ、 シラカシ、シイノキ、マテバシイについてはほとんど の生徒が聞いたことがないと答えた。 樹名板設置前は、生徒は校内の植栽についてほとん ど名前を知らなかったが、設置作業の後、さらに樹名 ビンゴの活動の後は聞いたことのある植物の名前が増 加し、活動の著しい効果がみられた(表 2)。 学校の授業の一環で樹名板設置をして、同時 にいろんな植物の名前を覚えることができまし た。名前を聞いたこともない植物もあったので 覚えておきたいと思います。そして「樹名ビン ゴ」もすごく楽しくて、見つけていくたびにす ごくテンションが上がりました。(Aさん) 樹名板設置のときは、どの木が何かわからな かったけど、樹名BINGOの説明写真を撮影し ていくうちに覚えられました。樹名板 BINGO はとても楽しく、僕が書いた説明文もあった ので良かったです。小学部や中学部のみなさ んも楽しんでほしいと思いました。樹名もす べて覚えられたので良かったです。(B 君) 最初は木といえばミカンやブドウしか思い 浮かばなかったんですけど、先生がいろんな 木について教えてくださったおかげで、いろ んな知識を蓄える事ができ、貴重な体験にな りました。今後、木について深く知ろうと思 いました。(C君) 色々な樹木の特徴を知ることができて面白 かったです。いろんな人に教えたいと思いま す。樹名ビンゴで隠しコマンドを見つけた時 はスッキリしました。バグもなくサクサク動 きました。(D君) 自分たちで樹名板を設置したりビンゴをやっ たりすることで、植物がどこにあるのか覚えら れて良かったです。ビンゴの解説文には植物の ことがいろいろ書かれていていいと思いました。 植物ビンゴをやって楽しかったです。学校での 植物をもっと知りたいと思いました。(Eさん) 樹名板 設置前 樹名板 設置後 樹名ビ ンゴ後 アオギリ 0 3 5 イヌツゲ 0 2 3 カイヅカイブキ※ 0 3 4 カンナ※ 0 2 4 ザクロ※ 0 3 4 シイノキ 0 1 3 ジャカランダ※ 0 1 3 シラカシ 0 2 4 ネズミモチ 0 2 4 ハマオモト 0 2 3 マテバシイ※ 0 3 4 ウバメガシ 1 3 4 オオシマザクラ 1 4 3 クロガネモチ 1 3 4 ナンテン※ 1 3 4 ヤマモモ 1 5 5 ソメイヨシノ※ 2 4 5 クスノキ※ 3 4 5 ハナミズキ※ 3 4 5 アジサイ 4 5 5 イチョウ※ 4 4 5 フジ 4 5 4 オリーブ※ 5 5 5 ビワ※ 5 5 5 ブドウ※ 5 5 5 ミカン※ 5 5 5 レモン※ 5 5 5 合計 50 93 115 % 37.0 68.9 85.2 表 2 聞いたことのある植物の名前アンケートの結果 各数値は、生徒 5 名中、聞いたことのある人の数。 百分率は 5 名全員が聞いたことがあると回答した場合 の値(135)に対する割合。※を付した植物は本来和歌 山県には自生しない種。
6. まとめ 文部科学省は、特別支援学校施設整備指針の第 6 章 「屋外計画」の中で、校内緑地に関しては共通事項と して 6 項目にわたってまとめている。さらに、「樹木」 については、校地周辺部や校舎そのものへの配慮とと もに、はじめにも述べた郷土産樹種の使用や四季の変 化、生態、生理などの観察にふさわしいものの選定だ けでなく、樹形や植物の特徴に合わせた個体数や配列 まで記述している。しかし、学校の移転に伴って新規 に緑化計画の立案を検討した長島ら(2004)は、多く の学校緑化が教育的な観点ではなく、学校施設の美観 を整えるといった土木工学的発想で進められてきたた めに、樹種選定についても、地域性や学習内容を考慮 した教育的な観点からではなく、見た目の美しさや維 持・管理の容易さが重視されてきたと指摘している。 和歌山市内にある本校でも、イヌツゲ、カイヅカイブ キ、コノテガシワ、ハナミズキ、マテバシイといった、 街路樹等に用いられる環境変化に強いものが約 25% を占めている(個体数比に基づく)。また、和歌山県 には自生しない樹種も多い(表 2)。一方で、和歌山 の紀州備長炭の材料となるウバメガシや、海流散布植 物であるハマオモト、ミカン類やビワといった和歌山 県での生産量の多い植物も植えられており、これらは 地域の環境教育・地域教育の教材として活用すること が可能である。今後、植樹や植栽の植え替えを行う場 合には、教材としての利用という観点だけでなく、和 歌山県に由来のあるホルトノキ、コウヤマキなどの植 物を積極的に選択していくことも考えられるべきであ ろう。 樹名板によって植物の名前がわかると、図鑑やイン ターネットなどを用いて調べることが可能となり、詳 しい情報を得ることができる。また、子どもたちは名 前を知ることで個々の植物を認識し、四季の変化や集 まる昆虫などについて、日常的に遊びながら知識を増 やしていく。このように樹名板の果たす教育的役割は 大きいが、設置するために必要な植物の同定作業には 専門的な知識が必要となる。植物の同定については、 樹木医や造園業者への問い合わせの他、博物館との連 携が考えられる。中学校学習指導要領のうち理科では、 指導計画の作成と内容の取扱いの項目で「博物館や科 学学習センターなどと積極的に連携、協力を図るよう にすること」とある(文部科学省 2017a)。また、小学校、 高等学校、特別支援学校の理科でもほぼ同じ内容が記 載されており、理科教育においては、博物館の積極的 な活用が求められている(文部科学省 2017b、文部科 学省 2019abc)。なお、博物館等では、教育普及活動 の一環として出前授業などの訪問授業を行っている。 例えば、和歌山県立自然博物館では、小中学校等から の依頼に応じて、年間 20 ~ 30 件の出前授業を行って いる。したがって、植物担当の学芸員に学校へ来ても らい、植物の同定と解説を含めた授業を依頼すること も可能である。 本実践で行った樹名ビンゴの実証授業においては、 生徒全員が当プログラム教材の操作に困ることもな く、誤動作もなく取り組めた。また、他の生徒がまと めた解説文に興味を持ち、植物名へのアクセスが促さ れた。さらに、25 あるマス目の中で樹名の位置が毎 回変化するため何度も挑戦するなど、意欲的・主体的 に且つ集中力を維持したまま取り組む様子がみられ た。単に校内の植物名をパンフレットや資料集等の紙 媒体に仕上げるだけでは、このような様子は見られな かったであろうとの担当教員からの言質によって、当 教材の有効性が認められたと考えられる。よって、当 教材の活用によって、「校内の樹木に関する知識・理 解を深め、身近な植物への興味関心を促す」といった 当初の開発目的は実現されたといえるだろう。 Scratch の特徴は「生徒らが当プログラムを理解し、 以後、情報の追加や改変ができる」ことにある。もと もと教育用プログラミング言語であるため、プログラ ム記述を母国語に切り替えることができ、プログラミ ング初心者にも理解しやすい。少なくとも、どこを書 き換えれば、データの変更ができるのかについては容 易に推測できる。したがって、今後は、他校の指導者 はもとより、生徒自身が植物名やデータを入れ替える といった様々なアレンジをしていける可能性がある。 当教材(樹名ビンゴ)は、Scratch サイトにて公開さ れており、Scratch サイト内で「樹名」のキーワード で検索すると表示・実行及び改変が可能となっている。 また、マス目の内容を変えれば他の教科での活用も 可能である。具体的には、春の花の写真をマス目にい れることで「学校のまわりの春の花探し(理科)」や、 学校の建物や教室名を入れて「学校探検(生活科)」 などが考えられる。さらに、児童・生徒が作成した解 説文を用いることで、クラス内や異学年の子どもたち が互いに学び合う学習活動にも応用できる。今後さま ざまな活用方法を考えていきたい。 参考資料・引用資料 ・文部科学省大臣官房文教施設企画部(2016a)、特別支援学校 施設整備指針、p.92-93 ・文部科学省大臣官房文教施設企画部(2016b)、高等学校施設 整備指針、p.63-65 ・文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部(2019a)、中学校 施設整備指針、p.63-65 ・文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部(2019b)、小学校 施設整備指針、p.61-62
・藤吉正明・赤根弘美・栗原耕介・隈本純・堀真奈美(2008)、 神奈川県内の小・中学校における学校内及びその近隣植物の 教育利用に関するアンケート調査、環境教育、18(2)、p.41-47 ・岩瀬徹・川名興(1991)、校庭の樹木 (野外観察ハンドブック)、 全国農村教育協会 ・近田文弘・平野隆久(2009)、ハンディ版 学校のまわりでさ がせる植物図鑑 樹木、金の星社 ・大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015. 改訂新版 日本の野生植物 第 1 巻 . 平凡社 . ・大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2016. 改訂新版 日本の野生植物 第 2 巻 . 平凡社 . ・大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2016. 改訂新版 日本の野生植物 第 3 巻 . 平凡社 . ・大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2017. 改訂新版 日本の野生植物 第 4 巻 . 平凡社 . ・大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2017. 改訂新版 日本の野生植物 第 5 巻 . 平凡社 . ・長島康雄・山田和憲・平吹喜彦(2004)、学校緑化に対する 環境教育からのアプローチ:仙台市立岩切小学校における事 例を通して、宮城教育大学環境教育研究紀要、7、p.75-83 ・文部科学省(2017a)、中学校学習指導要領解説 理科編、学 校図書、p.164 ・文部科学省(2017b)、小学校学習指導要領解説 理科編、学 校図書、p.129 ・文部科学省(2019a)、高等学校学習指導要領解説 理科編、 学校図書、p.130 ・文部科学省(2019b)、特別支援学校中学部学習指導要領 理 科編、学校図書、p.160 ・文部科学省(2019c)、特別支援学校高学部学習指導要領 理 科編、学校図書、p.327