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紫外部二次微分吸収スペクトル解析法による炭酸イオン共存下における炭酸水素イオンの直接定量

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(1)

紫外部二次微分吸収スペクトル解析法による

炭酸イオン共存下における炭酸水素イオンの直接定量

桐  山  哲  也

(1996年10月3日 受理)

Direct Determination of Hydrogen-carbonate ion in the Presence of Carbonate ion by Ultraviolet Second-derivative Spectrophotometry

Tetsuya KIRIYAMA 炭酸イオン共存下における炭酸水素イオンの,紫外部二次微分吸収スペクトル解析法による直接 定量法を検討した。 炭酸水素イオンの吸収スペクトルを,波長190nmから260nmにおいて測定し, Delta3における 二次微分スペクトルを描かせ,波長196nmの吸光度を測定することにより,検量線を書く。炭酸 イオンの一定量を含む,炭酸水素イオン濃度を種々変化させた溶液の吸収スペクトルを解析したと ころ,炭酸イオンの妨害もなく炭酸水素イオンを定量できることがわかった。また,本方法におい て,カリウムイオンの影響はないことがわかった。本方法は試料の吸収スペクトルを測定するのみ で良く,簡便でしかも直接定量できる方法である。

1.描

論 これまで天然水中の炭酸水素イオンの含有量は, pH4.8アルカリ度を目安として求められてき た1)2)このアルカリ度は,メチルレッドープロモクレゾールグリーン混合指示薬を用いる酸塩基 滴定法を利用するため,炭酸成分のみを測定しているのではないが,天然水中にはこれ以外の酸塩 基成分の含有量が少ないため,その存在を無視してきた。より厳密な炭酸水素イオンの定量は,読 料をアルカリ性にし,含有されるすべての炭酸を炭酸イオンとした後,塩化ストロンチウムを加え, 炭酸イオンを炭酸ストロンチウムとして沈殿させる。この炭酸塩を溶解するに必要な塩酸量を測定 し,試料のpHと炭酸の酸解離定数から炭酸水素イオンの濃度を求める方法である3)。しかし, この方法は炭酸水素イオンを直接定量する方法ではない。 炭酸水素イオンの直接定量法としては,イオン選択性電極を用いる方法4)5)イオン排除クロマ ト-電気伝導度検出器を用いる方法6)などがある Pigottは7),イオン選択性電極を使って,炭酸 鹿児島大学教育学部化学教室

(2)

鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第48巻(1997) 水素イオンと炭酸イオンの同時定量法を報告した。また,これらの方法を用いて,雨水8),河川 水9),血液・血祭・胆汁などの生体などの生体分泌液10)環境試料11)12)ミルク13)などの中の炭酸 水素イオン濃度の定量を行った報告もある。 炭酸水素イオンと炭酸イオンは溶液の液性によりお互いに変わり得るものであり,また,大気中 に存在する微量の二酸化炭素が混入することにより,その量が変動する。そのため炭酸水素イオン を正確に測定するには,迅速にしかも化学的操作を必要としない方法が求められる。 近年,開発された紫外部微分吸収スペクトル解析法は,試料の紫外部における吸収スペクトルを 測定し,その吸収スペクトルを微分し,微分したスペクトルを解析することにより,迅速かつ化学 的操作をせずに,試料中の特定の成分を定量するものである。これまで,本法を用い標準試料中の 硝酸イオン14)硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの同時定量15)9 の報告はなされている。しかし,本 法による炭酸水素イオンの定量の報告は未だ見当らない。そのため紫外部微分吸収スペクトル解析 法による,炭酸水素イオンの定量条件を検討したところ,紫外部吸収スペクトルをDelta3で二次 微分した微分スペクトルを解析することにより,炭酸イオン共存下の炭酸水素イオンを定量できる 条件を兄いだしたので報告する。

2.実    験

2. 1試   薬

炭酸水素イオン標準溶液:硫酸デシケ一夕中で乾燥した特級炭酸水素ナトリウム約  を精秤し, 水に溶解後, 100m」メスフラスコに移し標線まで希釈した.

2. 2 装   置

分光光度計:日立228A形ダブルビーム分光光度計を使用し た。セルは光路長1皿の石英セルを使用した。

2. 3 測 定 法

二個の石英セルに水を入れ,フロッピーデスクにスペクトル 解析Part 3 (微分)をセットし,通電する。進み具合をデスプ レイに表示しながら,自動的にウオーミングアップと,ベース ラインの校正をさせる。測定条件設定画面に切り替え,測定条 件を表1の通りに設定する。最初の画面に返し, "Spectrum analysis (Part 3) の画面を呼び出す。手前のセルに試料を 入れ,吸収スペクトルを描かせる。微分演算画面でOder (微分 の吹数)を2, Delta (微分計算を行なうために取るデータの幅) 表1.分光光度計の設定条件 Mode Abs Range    -0.1/0.1 Scan Spectrum

Scan speed Medium WL range 260/190n

Baseline Normal Cycle time Omin Rep Scan 1 Slit      2.0nm

Response Fast Light source D2 only Recording Sequential

WL scale lOnm/孤 Line Solid

(3)

を3にし,デスプレイ上で微分計算をさせる。その結果をプリントさせる。 3 結 果 と 考 察 3. 1吸収スペクトルの測定 炭酸水素ナトリウム溶液と炭酸ナトリウム溶液の吸収スペクトルを測定した結果を図1に示す。 すなわち 5.11×10"4モル/Bの炭酸水素ナトリウム溶液および1.27×10"モル/Pの炭酸ナトリ ウム溶液の吸収スペクトルを,それぞれ単独に測定した結果である。炭酸水素ナトリウムは240nm 以下に,炭酸ナトリウムは220nm以下に共に鋭い端吸収を示し,両者に大きな差は認められない。 そのため,吸収スペクトルの測定のみで炭酸イオンと炭酸水素イオン混合溶液中の炭酸水素イオン を定量することはできない。 図1.炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムの吸収スペクトル 書一川■_-HHH=JuUnJ ●合川l 一丁川L' fm

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3. 2 微分スペクトルと測定条件 炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの吸収スペクトルの1次微分した結果を図2に示す。なお 微分計算を行なうとき,その近傍の値をどのくらいの幅を取って,計算させるかにより結果が異な る。その幅はDeltaの値により決まり, Deltaの値が大きくなるとその幅が大きくなる Deltaの 値を2から7迄変えながら,その微分計算を行ない,その結果を図2に示した Deltaの値が大き くなると,微分スペクトルは負の値を大きくしていきながら,極小値を示さなくなる。また,スペ 図2.炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムの一次微分スペクトル -,4 巾 -I I l - iB8 I -- I - 一ノ野 ′ i m      甘 X・T的ォIW m m Y-raniI -.15/.15      Deriva【iye 9rdtr kIta C打 start      払Corim start く         〉

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(4)

鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第48巻(1997) クトルの最終値が長波長側にずれてくる。一次微分スペクトルの場合,炭酸水素イオンと炭酸イオ ンのどちらも正の値を取らない。 次に,二次微分スペクトルを図3に示す Deltaの値が大きくなると,微分スペクトルは大きく 変化する。炭酸水素ナトリウムのスペクトルは炭酸ナトリウムのスペクトルよりも複雑で,吸収極 大,および極小が3回にわたって表れる。炭酸ナトリウムの微分スペクトルのうち, Deltaの値3 以下で正から負に変化し, 196nm付近で0.000の値を取る。一方,炭酸水素ナトリウムはDeltaの 値3で,正の値を取る。その値は,同じDeltaの他の波長よりも大きな値である。三次以上の高次 の微分スペクトルの結果はかなり複雑なものとなり,分析のためには不向きである。そのため,戻 酸水素ナトリウムを定量するための条件として, 260-190nmの吸収スペクトルのDelta 3におけ る2次微分スペクトルの結果を用いることにした。 図3.炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムの二次微分スペクトル 朋i% .ll ゝ ま'8 H ド 「 ■▲ 的, ri 血 2 ォ m < i2凱 肝 , U .l 認 iーモ T 当 } 鮎cort tiu start

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3. 3 検圭緑の作成

炭酸ナトリウムの吸収スペクトルを種々の濃度において測定し, Delta3における2次微分スペ クトルを図4に示す。波長196nm付近で吸光度は0.000となる。炭酸水素ナトリウムの吸収スペク トルを濃度を変えて測定した。そのDelta 3におれる2次微分スペクトルを図5に示す。炭酸水素 ナトリウムのDelta3における2次微分スペクトルと炭酸ナトリウムのDelta3における2次微分 スペクトルをかさねあわせると図6のようになった。波長196nmにおける炭酸水素ナトリウムの吸 光度を記録紙のピークの高さで測定し,その測定値と炭酸水素ナトリウムの濃度との関係は,ほぼ 直線となった。 図4.炭酸ナトリウムのDelta3における 二次微分スペクトル 一日 - - , ; I 一 I I l -I - I -● ■ t ● -I 2 ` ○ ll l -ト -t ■ -I ■ -I L ● 2 3 9 上 ト ド I 盟 仙 境 ●■● -L tt 1 I H . 日 I I J

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(5)

図6.炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムのDelta3における二次微分スペクトル I ■8 I 8 1 -I 鞘 r n

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3. 4 炭酸ナトリウム存在下における炭酸水素ナトリウムの定圭

炭酸ナトリウム0.640mgと炭酸水素ナトリウムめ0.890mg, 1.78mg, 2.67mgを含む溶液の吸収スペ クトルを二次微分し,その吸収スペクトルを解析し,吸光度を求め,先の検量線から炭酸ナトリウ ム量を求めたところ添加量と良い一致を示した。その結果を表2に示す。回収率は定量的であった。 表2.炭酸ナトリウム中の炭酸水素ナトリウムの定量 炭 酸 水 素 ピ ー ク の 高 さ 添 加 し た 炭 酸 炭 酸 水 素 ピ ー ク の 高 さ ナ ト リ ウ ム, m g c m ナ ト リ ウ ム , m g ナ ト リ ウ ム , m g c m 0 .8 9 0 1 ●4 0 .6 4 0 0 .8 9 0 1 ●1 1 .7 8 2 ●4 0 .6 4 0 1 .7 8 2 ●3 2 .6 7 3 ●9 0 .6 4 0 2 .6 7 3 ●9 3. 5 カリウムの影響 ナトリウム塩をカリウム塩に変え 2.3の実験を行ない, Delta3における2次微分スペクト ルを解析した,そのDelta3における2次微分スペクトル図7に示す。ナトリウム塩と同じように 波長196nmにおける吸光度を測定することにより同じように定量することが出来る。また,回収は 定量的であり,塩の違いによる差異は認められないので,カリウムイオンの妨害は無い。 図7. 占5, ■ IIII-II llII-Il-i II II-I■■1I 廿 I ,,. ト十 卜 一[醐 ● 1 日 ▼▼●■ー l■■リ ー - H l H I ォ r● L , ⊥ I IL 逮 汁 は -I It 韻 f H 描 I !!!inl ! l 「 ■ I I" ! I● m i ● I サ ! 一ト I r ● ▲● 日 ● il I - ● I - ● ■ 車 蝣H ■ ●t I ト … 壬●il 守 - 一 ▲一一 ■ 臼 !! ! ! 蝣 ! , ● ● I L ● ● ⊥ I「 ‥洋 ■l n L ■● I ∴ L I 午 ト -● 一 ● 1-ーi t ..J ● - l 1● ● V I 「-+> 十 I r ●ヾl - - ∴ い ○ i 写 ○ 」 I 1 I ● ● ;Ie e●十 「 ■■ト t - I 鮎 J . l●一- t ド r ■十 ■ ■ I-■ー ● ●■ . .l il一 I ●■ : I I I -- - I ● ) -- .! i■ ● こ i -. . ●■● 2 5 3 一 ■ 一 ー 1 , ●I- T ■t ‥亡 ● 描 I 「 ■ -●」i - ● ゝ -■ . . 蝣 蝣 蝣 工 管 ..L ● -I エ ー ■ 一 、l T ▲ ト I m . ド I ト●i. ■●● lZ 「 .T 壬 I I Il l 一● r 」 I r il . し●卜 I n -「 - ! U症 ●甫 I ■- 損 料 i- n n " l i ■→ ● I -㍗ T I I I l ヰ- I l l l llr- I I u I ◆ -一▲I 拠 出 一一● , 十 描 廿 . f l I T ■ ■14: Il L ▲ ▲ ● 一 一 ■

(6)

鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第48巻(1997)

文     献

1)日本分析化学会北海道支部編: "水の分析〝第4版, pl62 (1994), (化学同人).

2)厚生省生活衛生局水道環境部監修: "上水試験方法〝 1985年版, p215, (日本水道協会). 3) JIS K 0101,工業用水試験方法(1991).

o U. Oesch, D. Ammann, W. Simon:Clin. Chem., 32, 1448 (1986). 5) U. Oesch, E. Malionwska, W. Simon:Anal. Chem., 59, 2131 (1987). 6) K. Tanaka, J. S, Fritz:Anal, Chem., 59, 708 (1987).

7) J. D. Pigott:Anal. Chem., 61, 638 (1989).

8) J. L. Cocksedge:Warren Spring Laboratory, [ReportjLR, LR657 (CS) M, pl8 (1988). 9) K. Hayakawa, K. Nomura, M. Miyazaki, Anal. Sci., 7, 967 (1991).

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323(1989).

13) J. F. Cerda'n, M. Peris - Tortajada, R. Puchades, A. Maquieira:FreseniusJ. Anal. Chem.,● ●

344, 123 (1992).

14) J. Simal, M. A. Lage, I. Iglesias:J. Assoc. Off. Anal. Chem., 68, 962 (1985). 15) N. Suzuki, R. Kuroda:Analyst, 112, 1077 (1987).

参照

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