健康と食生活-ビタミンCの補足
佐 藤 雅 子(1994年10月17日 受理)
Health and Nurition-Supplementation of Vitamin C Masako SATO 平均寿命が長くなったことは喜ばしいことであるが,他方では,高齢化が急速に進行する中で,高 齢化による医療費の国民負担の増大の問題が深刻になっている。したがって,各個人が疾病を免れよ り高い健康度を維持して天寿を全うすることは,本人はもとより,社会全体にとっても大きな利点を もたらすことであり,大いに期待されることである。加令に伴って,細胞レベルで,続いて各種の臓 器レベルで機能の低下が徐々に進行するが,加令による免疫機能の低下も大きく,高齢者では種々の 疾病に握りやすくなる。たとえば若者では肺炎に握って命を失う例はまれであるが,高齢者では少し ばかりの不注意から肺炎を患い命を失う例は多い。最近,ビタミンCを多量摂取すると免疫機能が高 まることに新たな観点から興味関心が寄せられ,免疫機能を高めるために必要なビタミンC摂取量に ついて検討されている。現在,ビタミンCの生理的必要量は一日60mgと考えられているが,免疫機能 を高めるためには,この必要量の10倍以上の摂取が必要ではないかと論じられている。すなわち, 600mg以上のビタミンCを摂取することが望ましいことになり,この量を毎日摂取するには相当な工 夫と努力が必要である。ビタミンCには免疫機能を高める以外に,ストレスに対する抵抗力を高めたり, ビタミンAやカロチン,ビタミンEと共に制ガン効果があることもよく知られており1-5)統計学から 3人に1人はガンに握り, 4人に1人はガンで死亡すると言われ,死因の第1位はガンであるような 現在の状況においては6),高齢者だけでなく若者にとってもビタミンCを生理的必要量の一日60mgの 摂取に留まることなく,多量摂取することは意義あることと考えられる。 バイオテクノロジーの技術により野菜や果物の季節感が薄れ,年間を通して多種の商品が市場に 出廻っており15-20年前の野菜や果物の供給状況とは大きく変化し,また,外国から輸入される 野菜や果物の種類やその量が増加するなど,食程の供給状況ははるかに豊かになっている。厚生省 の国民栄養調査の結果では,ビタミンCの摂取量は所要量を充分上廻っていると報告されている7)。 しかし,橋詰が血液中のビタミンCを測定した結果,生理的必要量に充たない潜在性のビタミンC 欠乏者の比率は, 20-40%であったと報告されている8)。また,吉田らは,現在市販されている野 菜や果物のビタミンCは,四訂成分表と比較して低い値を示す傾向が強いと報告している9) 12)。そ の他,ビタミンCは,保存や調理加工中の損失も他のビタミンに比して高いので13,14)結果的には 国民栄養調査の結果に反して,潜在性のビタミンC欠乏者の比率は高いと考えられる。 ビタミンC補給の方法として,化学合成品のビタミンC剤を利用すれば, 600mg以上のビタミンC
100 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第46巻(1995) は容易に充足されるが,総合的に各種ビタミン,ミネラル,食物センイなどの栄養状態を高める意味で, 出来るかぎり食品から補給するのが望ましい。そこで, 600mg以上のビタミンCの摂取量を積極的に 食品から補給することを目指して,調理操作におけるビタミンCの損失の問題,効果的な保存の方法 ㌔ など,ビタミンCを効果的に摂取する方法を検討した。 実 験 方 法 1.ビタミンCの定量方法15,16) ビタミンCは2,4-ジニトロ′フェニールヒドラジン法により定量した。還元型ビタミンCはインド フェノールで酸化した後,ヒドラジンと反応させ,生成したオサゾンを氷冷下で85%硫酸を添加し て溶解し, 540nmの吸光度を測定した。酸化型ビタミンCは,インドフェノールを添加することな くヒドラジンと反応させ,同様にして比色定量した。このようにして得られた総ビタミンC値と醍 化型ビタミンC借の差から,還元型ビタミンC値を算出した。 2.試料の調製 1)試料 路地栽培で旬の時期の新鮮な果物および野菜:みかん,トマト,いちご,えだまめ, ほうれん草を試料とした。購入した後直ちに流水で洗浄し,蒸留水で数回すすぎ,ろ紙で表面の水 滴を拭い,可食部を使用した。 2)加熱処理 各試料は細胞を破壊しないように,いちご,えだまめはそのまま,あらかじめ 器内温度を80℃以上に加熱した蒸し器の中敷きの上の平皿にのせ,蒸し時間は5分間とした。みか んは果皮を取り除くことなく個体のまま加熱し,中心部の温度が80℃に達した後更に5分間加熱し, 合計で15分間の蒸し時間とした。ほうれん草は∴試料の重量の100倍量の1 %食塩水を沸騰させた 中で40秒間ゆでた後,直ちに冷水で冷却して使用した。えだまめについては,電子レンジで加熱し ても形状の崩れが問題にならないので,電子レンジを使用し, 1.5分間高周波加熱を行った。 3)ミキサー処理 いちごは果実のまま,トマトは果皮を,みかんは果皮およびひょうのうを 取り除き,それぞれ果肉のみ,ほうれん草は2倍量の水を加え,それぞれ,ミキサーで高速撹拝し た。ミキサーの撹拝時間は,試料全体が均一になるよう,試料の一個体の大きさが異なるので,み かんとほうれん草は20秒,トマトといちごは30秒とした。 4)冷凍保存 5種類の食品を以下の方法で3-6カ月冷凍室で冷凍保存した。 (1)新鮮な試 料を購入後水洗して直ちに丸ごと冷凍保存した。 (2)新鮮な試料の果皮や種皮を取り除くことなく そのまま丸ごと加熱処理した後,冷凍保存した。 (3)冷凍中,組織が破壊して内部の液汁が流出す るようなトマトとほうれん草は,加熱処理した後,ミキサーで撹拝して冷凍保存した。 (4)可食部 のみミキサーで撹拝しジュースにしたものを冷凍保存した。各々の試料について,冷凍保存中の空 気中の酸素による酸化を防ぐため,それぞれ一回のビタミンCの分析に必要な分量ずつ密閉容器
(タッパーウエア)に小分けにし,冷凍室で保存した。解凍時,空気中の酸素による酸化を防ぐた め,各試料は密閉容器に入れたまま,夏は約30分,冬は約60分,流水で解凍し,ビタミンCを測定 した。 1 実 験 結 果 1.ヒドラジン法によるビタミンCの検 量曲線 ビタミンCの結晶IOOmgを5%メタリ ン液に溶解したものを標準液とし,イン ドフェノールで酸化して, 540nmの吸光 度を測定した。得られた検量曲線(Fig. 1)から,ビタミンCの濃度と吸光度の 関係式を求め,各条件における食品のビ タミンC量を算出した。 2.食品中の総ビタミンCと還元型ビタミンC U I U Q b C I B O O U B Q J O S q V ti co d 4 2 o d 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 Ascorbic acid ( mg )
Fig. 1 Calibration curve of ascorbic acid
実験に使用した5種類の食品および他の4種類の食品は,いずれも新鮮なものを使用した。 Tablelに示すように,総ビタミンCに占める還元型ビタミンCの比率は90%前後であり, 、酸化型
ビタミンCの比率はわずかであった。
Table 1. Total ascorbic acid and L-ascorbic acid in the various foods
Food Total ascobic acid L-ascorbic acid D-ascorbic acid L/T
mg /lOOg S trawbery Ora喝e Persi mmon Lemon Tom ato Soybeans S pi nach Ni gaun Green tea oin<o¥o¥nvom ●-;^^^^v-4*oco lj-^t*-hen狐8P ●●● ●●岨」S 78月サoTtooen^-) c4in打破m脚 cn-r-oo vd ca io m-.vo ^ ● v o c o o ¥ i n d c o c j o o i n ● ■ ● ● ● ● ■ # # # . % % / o c o > h i n t o -w o ノ 2 ● ● ● ● ● ● ● ● ● 那 o N 那 o n o n o ¥
102 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第46巻(1995 吉田によると,最近,市販されている野菜のビタミンCを四訂成分表と比較すると,低値を示す ものが増え,例えば夏期のほうれん草のビタミンCは冬期の30%以下のものもあると報告してい る10)。この実験に使用したほうれん草は冬期の旬のものを分析したが,四訂成分表17)の半分程度に 過ぎなかった。野菜のビタミンCは品種によっても大きく異なることが報告されており,トマトで はビタミンC含量の多い品種と少ないものの差は25-30%であるという報告もある11)。また,熟度 80%程度の未熟期の野菜果物を収穫して市場に出荷する傾向,その他,カット野菜の普及や輸入野 菜の増加が高まっているので,摂取する野菜のビタミンCは相対的に低下していると考えられる。 個人によって,ビタミンCの供給源として利用する食品の種類はかなり異なっており,ビタミン Cは果物にしか含まれていないと考えている傾向もみられるが,緑黄色野菜のビタミンC含量は高 く,したがって緑茶のビタミンC含量も高い。日本の食習慣として緑茶を飲用する文化があるが, 最近の若者には利用される頻度が少ないようである。緑茶を飲用する人達はガンに雁りにくいとい われており,ビタミンCの補給と関連していると考えられるので,利用することが望ましい。にが うりのビタミンCも高く,最近健康食として広く利用されており,油妙めにして加熱して食する場 合には, lOOmg程度のビタミンCが容易に摂取出来るという利点がある。その他,さつまいもやじゃ がいもなどのいも類のビタミンC含量も高いので,これらも積極的に活用すると, 60mg以上のビ タミンCの摂取は容易に実現出来ると考えられる。 3.加熱とビタミンCの安定性 加熱操作は前述のように,試料の組織を損傷することなく,試料の組織全体が加熱された状態に なるよう,加熱時間および方法を調製し,加熱前後のビタミンCを測定した。実験に使用した各食 品の加熱前の総ビタミンCに占める還元型ビタミンCの比率は約90%であり,酸化型ビタミンCは わずかに存在する程度であった。酸化型ビタミンCについては,ビタミンC効力のない2, 3-ジケ ト-グロン酸も含まれ,また,その効力は還元 型ビタミンCの約半分であると考えられてい る。したがって,実際にビタミンCの健康にお よはす効果をみる場合には,還元型ビタミンC (L-アルコルビン酸)の量が直接関係するの で,以下,酸化型ビタミンCは図示していない。 加熱による還元型ビタミンCの残存率は, Fig.-2に示すように高く,もっとも損失が大 きかったいちごにおいて,加熱後の還元型ビタ ミンCの残存率は加熱前の還元型ビタミンCの 69%であった。しかし,いちごと同じように5 分間加熱した後のえだまめの還元型ビタミンC ( 叫 0 0 1 \ 叫 i n ) p x o B o i q i o o s B -q ロ Control 田 Heating
Orange Strawbery Spinach Soybeans
Fig. 2 Effect of heating on L-ascorbic acid concen-tration in the various foods
の残存率は,加熱前の97%であった。えだまめについては,電子レンジで1.5分間高周波加熱を行っ た。電子レンジによる加熱後のえだまめの還元型ビタミンCの残存率は94%であり,蒸し器で蒸し たものとほとんど同じであった。みかんは15分間蒸し器で蒸したが,還元型ビタミンCの残存率は, 加熱前の還元型ビタミンCの91%に相当し,加熱によるビタミンCの損失は小さかった。また,沸 騰水中で45秒間加熱したほうれん草の加熱後の還元型ビタミンCの残存率も約90%であり,損失は 小さかった。 ビタミンCは加熱により失われると考える人が多く,ビタミンCの損失を考慮して野菜サラダの 形で生食する傾向が強いが, Fig. 2のように,いちご以外は加熱後の還元型ビタミンCの残存率 は約90%で高い。この実験では必要以上の加熱を避け,食用に適する範囲の食品全体に熱が通る最 低条件に加熱時間を設定し,食品は果皮や種皮を取り除くことなく,丸ごと蒸した。そのため,還 元型ビタミンCの残存率は約90%を示したとも考えられる。同じ加熱操作でも,煮物やゆでたもの では,加熱中,ビタミンCが煮汁やゆで汁に溶出するので,煮汁やゆで汁を利用すると■残存率60-80%になるが,これを利用せず,加熱したほうれん草やキャベツのみ利用するとビタミンCは30% 程度まで低下するという報告がある1:i)。また,豆類のように,種皮の存在によると考えられるが, 同じ条件で加熱してもビタミンCの残存率は高く,ほとんど損失がみられない食品もあり,実際問 題としては様々な要因が関与しているので,個々のケースに応じて調理操作を工夫するとビタミン Cの損失は大部分防ぐことが可能であると考えられる。食品によっては,例えばキャベツの生のま ませんぎりにしたものの一回の摂取量は30g程度であるが,加熱したものでは容積が20%程度に少 なくなるので4-5倍量のキャベツを摂取することが可能である。ビタミンCの損失を小さくする ような加熱条件を検討すれば, 60mg程度のビタミンCを容易に摂取することは可能である。 4.ミキサーによる摸拝とビタミンCの安定性 前述のように,ミキサーで20-30秒撹拝した 後の還元型ビタミンCの残存量と,ミキサーで 撹拝する前の還元型ビタミンCの量をFig. 3 に示している。みかんとトマトについては,ミ キサー処理後の還元型ビタミンCは,いずれも 未処理の還元型ビタミンCの約90%に相当し, ミキサーで撹拝してもビタミンCの損失は小さ いと考えられた。しかし,いちごのミキサー処 理後の還元型ビタミンCは,未処理の還元型ビ タミンCの60%まで減少し,ほうれん草におい ては,ミキサー処理後の還元型ビタミンCは未 処理の還元型ビタミンCの45%であった。ミキ ( 叫 0 0 1 \ 叫 u i ) p p B o i q j o o s B -q 8 S Control 四 Mixing
Orange Strawbery Spinach Tomato
Fig. 3 Effect of mixing on L-ascorbic acid concen-tration in the various foods
104 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第46巻(1995 サーで処理した後のビタミンCの損失が小さかったみかんとトマトでは,ミキサー処理後の酸化型 ビタミンCの増加がほとんど見られないのに対し,ビタミンCの損失が大きかったいちごやほうれ ん草では,酸化型ビタミンCの増加が大きく,みかんやトマトの約2倍であり,ミキサーで撹拝中, 酸化されたと考えられる。 食品をミキサー処理した後のビタミンCの残存率は,食品の種類や撹拝時間によって大きく異な る14)。撹拝時間が短い方が残存率は高いので,必要以上に長く撹拝しないことが望まれるが, 1分 程度の撹拝で組織はほとんど細かく粉砕され,この程度の時間であればミキサーで処理してもビタ ミンCの残存率は高い。しかし,食品の種類については,組織にビタミンC酸化酵素やその他多種 の酸化酵素が存在し,それらの酵素活性が異なるので,ミキサー処理した後のビタミンCの残存率 は大きく異なると考えられる。この実験において,みかんとトマトではビタミンCの残存率が高かっ たのに対し,いちごやほうれん草では低かった。また,これらミキサーで撹拝した後のビタミンC の損失の方が,加熱によるビタミンCの損失よりも大きかった。加熱によるビタミンCの損失は小 さいので,短時間の熱処理をした後,ミキサー処理をすると,ビタミンCの損失は小さくなる。に んじんのβ-カロチンも生のものよりも加熱した方が利用率は高くなり(未発表),その他,加熱に よりビタミンC酸化酵素を失活させることも可能であるので,野菜を生で食するだけでなく,加熱 調理する利点を見直すことが肝要であると考えられる。ミキサーで撹拝する操作は他の調理操作と 比較して簡単であるので,食品の組み合わせを工夫して5-7種類の食品をミキサーにかけジュー スにすると,簡単に50mg程度のビタミンCが摂取出来,その他,カロチン,食物センィ,ミネラ ルなど,不足しやすい栄養素が一度に充足され るので,積極的に活用すると効果的である。 Fig.4はミックスジュスを調製した時の, 還元型ビタミンCの経時的変化を示している。 30分後, r還元型ビタミンCは半減している。ビ タミンCは細胞の中に存在し,細胞膜はじめ果 皮や種皮などによって空気中の酸素による酸化 から保護されているが,ミキサーで撹拝して組 織を破壊すると,それだけビタミンCは酸化さ れやすくなるので,ジュースは要時調製し,調 製後は出来るだけ早く摂取することが望まれ る。 ( 叫 0 0 1 \ 叫 u i ) p p B o i q j o o s B -q O Time ( hour )
Fig. 4 Effect of keeping time on L-ascorbic acid concentration of mix juice
5.冷凍保存によるビタミンCの安定性
前述の方法で冷凍した5.種類の食品について,冷凍保存中の還元型ビタミンCの変化を追跡した。 Fig. 5のように,食品の種類や保存条件によって,還元型ビタミンCの残存率は大きく異なった。
5種類の食品の中でみかんの冷凍保存中の還元型ビタミンCの残存率は,もっとも高く,新鮮物の まま丸ごと冷凍保存したものの6カ月保存後の還元型ビタミンCの残存率は88%であった。また, 加熱処理した後冷凍保存したみかんや,ミキサーで撹拝した後冷凍保存したみかんの, 6カ月保存 後の残存率はそれぞれ76%, 70%であり,みかんはいずれの方法で冷凍保存しても,ビタミンCの 残存率は高かった。みかんの個体全体を丸ごと冷凍したものの外観はやや歪みが観察され,食味は 新鮮物に比べると深みのない単純な味であり,新鮮物に比べると幾分遜色が感じられたが,ジュー スとして利用する場合には問題点は感じられなかった。えだまめでは,生の新鮮物の種皮を取り除 くことなく冷凍したものの6カ月保存後の還元型ビタミンCの残存率は57%であった。これに対し, 加熱した後,冷凍したものは6カ月保存した後も還元型ビタミンCは80%であり,えだまめでは加 熱による還元型ビタミンCの損失が小さいため,保存2-6カ月は加熱処理して冷凍保存したもの の残存率の方が,生のまま冷凍保存したものの還元型ビタミンCの残存率よりも高かった。最近市 販されている冷凍のえだまめは,収穫後直ちに熱湯処理したものが多い。この実験から,これらの 商品はビタミンCの含量は高いと考えられるので,利用の増加が望まれる。いちごについては, ( 叫 0 0 1 \ 仙 i n ) p i D B o i q j o o s B -q 0 0 0 3 2 1 0 o o o o o L O C O C M t -( s O O T \ 叫 u i ) p i o B o x q l o o s B -q 35 30 25 20 15 10 5 0 0 1 6 0 1
Freezing period (month )
0
Freezing period ( month )
(1) Raw food (#), (2) Heating f血d (□), (3) Heating and mixing food(日), (4) Mixin畠food(△), Fig. 5 Storage period by freezing and L-ascorbic acid concentration in the various foods
106 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学編 第46巻(1995) 生のまま冷凍したものの還元型ビタミンCの残存率は,保存3カ月で半分以下になり6カ月後は 35%まで減少した。ミキサー処理した後,冷凍したいちごの還元型ビタミンCの残存率はさらに小 さく,保存1.5カ月で20%以下に, 6カ月後は10%以下まで減少した。これに対し,加熱処理した 後冷凍したいちごの保存中のビタミンCの残存率は高く,保存3-6カ月においては,保存前の生 のいちごの還元型ビタミンCの約50%が残存していた。生のまま冷凍保存したほうれん草の還元型 ビタミンC残存率は,保存1カ月で30%以下に, 3カ月で10%以下に減少するなど, 5種類の食品 の中ではもっともビタミンCの残存率は小さかった。 、ミキサー処理して冷凍保存したほうれん草の ビタミンCの残存率はさらに小さく, 1カ月後で10%以下まで減少した。ところが,加熱処理して 冷凍保存したほうれん草では,ビタミンCの残存率は高く,保存3カ月においても75%の残存率で あった。 このように,ビタミンCの安定性については,野菜や果物の種類によって同じ保存条件でも大き く異なる。それぞれの食品の特徴を把握して対応すれば 2-3倍程度高いビタミンCレベルを維 持することは可能であるので,単純な一般論で対応しないことが肝要であると考えられる。バイオ テクノロジーの技術により年間を通して多種の商品が市場に出廻っており,また,外国から輸入さ れる野菜や果物の種類や量が増加して,食料の供給状況は豊かになっている。しかし,端境期の問 題や予測されない気候の変動に伴う生産量の減少の危険性など無視出来ず,また,社会の構造変化 から女性が社会で仕事に従事する傾向が高まっていろので,調理に費やす時間の短縮化が期待され る現状にあって,冷凍保存によって,食品のビタミンCレベルを高く保持して利用することは,ど タミンCの摂取レベルを高めるのに一つの役割を果すものと考えられる。 厚生省の国民栄養調査の結果では,ビタミンCは所要量を十分充たしていると報告されている7) が,一方では,血液中のビタミンCレベルが生理的必要量に充たないグループが20-40%存在する という報告があり、8),血液中のビタミンCレベルが低いグループにおいて,ガン,脳血管障害,感 染症の雁病率が血液中のビタミンCレベルが高いグループの比率よりも高いことが報告されてい る。現在,免疫機能を高めるに必要なビタミンCの摂取量について論議されており,生理的な必要 量の10倍以上でないかと考えられているので,もっとビタミンC摂取を高める努力をすることが, 高齢に達した時の健康を高く維持するのに必要であると考えられる。 参 考 文 献 1)荒川信彦,倉田忠男:水溶性ビタミンービタミンC,ビタミンハンドブック(2)日本ビタミン学会編, 171-191 1989) 2)村田 昇,鈴江緑衣郎:ビタミンと医学-ビタミンC,ビタミンハンドブック(5)日本ビタミン学会編, 16ト174 1989)
3) Kitagawa, Y. Role of vitamin C in basement memmbrane synthesis and cell differentiation. Vitamins Biofactors in Life Science, (ed. Kobayashi) 157-160 (1992)
4)鈴江緑衣郎:栄養学雑誌,ビタミンCと癌栄養学雑誌 42, 159-166 (1984)
5)広畑富男,富田純史,古野純典:栄養・食物と癌,栄養学雑誌 49, 185-191 (1991) 6)食程・栄養・健康, 172-180 (1994
7)平成4年度国民栄養調査成積一栄養素等の摂取状況,国民栄養の現状 29 40 1994) 8)橋詰直孝:ビタミンCの潜在性の欠乏状態 ビタミン, 60, 4.ト406 (1986 9)吉田企世子,森 敏,長谷川和久,西沢直子:肥料の違いによる裁培トマトの還元糖,有機酸およびビ タミンC含量,日本栄養・食程学会誌, 37, 123-127 (1987) 10)吉田企世子:変わりゆく野菜のビタミンC,ビタミン広報センター 68,ト3 (1992) ll)吉田企世子:日本食品標準成分表と野菜の成分,食程・栄養・健康, 88-95 (1994) 12)鯨 幸夫:有機栽培野菜と普通裁培野菜のビタミンCおよび糖質含量について,日本栄養・食程学会誌, 47, 148-151 1994 13)森本喜代:栄養学雑誌 20, 16-22 (1962) 14)山崎妙子,大宝明:栄養と食程 9, 194 (1964) 15)稲垣長典:ビタミン学実験法-ビタミンC,日本ビタミン学会編, ll-13 (1985) 16)佐藤雅子:ヒドラジン法によるビタミンC定量におよぼすタンニンの影響,鹿児島大学教育学部研究紀 要, 23, 20-29 (1972) 17)四訂日本食品成分表,医歯薬出版(1990)