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実践編Ⅱ 社会科 自ら課題解決に取り組み、広い視野に立って社会的事象を考察できる生徒の育成

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Academic year: 2021

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Ⅱ 社 会 科 島 武臣 石沢 拓也 関川 暢洋 自ら課題解決に取り組み、広い視野に立って社会的事象を考察できる生徒の育成 1 研究主題の概要 (1) 生徒の実態 社会科では、生徒の現状を次のようにとらえている。 (2) 目指す生徒像 社会科では、生徒の実態をふまえ目指す生徒像を次のように設定した。 ① 課題解決に必要な基礎的・基本的な知識や技能、概念を身に付けている生徒 ② 社会的事象を比較したり関連付けたりしながら、自己の考えを深められる生徒 ③ 自ら積極的に課題を追究できる生徒 ①「課題解決に必要な基礎的・基本的な知識や技能、概念を身に付けている生徒」とは、課題解決の ために必要とされる新しい学習事項を確実に身に付けている生徒である。自ら課題解決に取り組むため には、その解決のために必要な最低限の知識や技能、概念を身に付けている必要がある。ここでは、教 科書や資料集を使いながら、今後課題解決の場面で活用するであろう新しい学習内容を身に付けていく。 生徒がそれらを理解できたかどうかは生徒同士で説明させる場面を設定することで確認する。 ②「社会的事象を比較したり関連付けたりしながら、自己の考えを深められる生徒」とは、社会的事 象を比較したり関連付けたりしながら多角的に考察し、根拠を基に信用性のある結論を形成することが できる生徒である。そのためには、社会的事象を複数の視点から多角的に考察し、事象間を比較したり、 関連付けたりしながら因果関係をとらえ、より広い視野から社会的事象をとらえられるようにする必要 がある。 ③「自ら積極的に課題を追究できる生徒」とは、課題解決のために自ら情報を収集し、それらが解決 のために役に立つかどうかを取捨選択し、情報を関連付けて課題解決を粘り強く行える生徒である。そ のために、学習過程に「調べ直し」や「まとめ直し」の学習活動を位置付ける必要がある。学習課題に 対して、一度きりの調べ学習で答えを出すことでは本当の課題解決の力は身に付かない。また、自分の

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26 -調べたことがどんなことでも正しいと思えば、課題を解決していこうとする意欲も低下してしまう。 (3) 研究の構想 本校生徒の実態と、本校社会科が目指す生徒像をふまえて、以下のような構想で研究を進めていく。 (4) 重点的に取り組む手だてについて 本校生徒の実態と、本校社会科が目指す生徒像をつなぐ手だてを次のように考えた。本年度は、①の 「課題解決に必要な基礎的・基本的な知識や技能、概念を『概観する』段階の設定」と②の「生徒の思 考を深めるための情報・思考の視覚化の工夫」に重点を置き授業実践を進めていく。 ① 課題解決に必要な基礎的・基本的な知識や技能、概念を「概観する」段階の設定 ② 生徒の思考を深めるための情報・思考の視覚化の工夫 ③ 主体的に課題を解決するための「調べ直し」や「まとめ直し」の場の設定 ①課題解決の時に必要な基礎的・基本的な知識や技能、概念を身に付けることができるようにするた めに、題材の学習の始めに「概観する」段階を導入する。課題を自分の力で解決していくためには、最 低限の知識や技能、概念を習得しておく必要がある。例えば、題材「基本的人権の意義」では、基本的 人権の種類について、教科書や資料集を基に、教師が説明をしながら、分類していく。また、地理的分 野や歴史的分野においては年表や白地図、表などに学習内容をまとめていくことで技能面の習得を図っ ていく。そして、生徒同士で説明し合うことで、理解の程度を確認し、習得の状況を把握する。説明が しっかりとできたかできないかで、身に付けられている知識が明らかになり、身に付いていない生徒に ついては学習プリントなどで補充的な指導を行い、課題解決に必要となる知識や概念の定着を図ってい く。 ②課題解決の過程で身に付けた知識はバラバラなものであり一面的なものであるため、深まったもの ではなく信用性に欠ける場合が多い。また、そのような考え方は共感されず、結果的に自分の考えに自

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信がもてなくなってしまう。収集した情報を分類し、 整理することによって、情報同士を関連付けながら因 果関係をとらえ理由付けを明確にすることで社会的事 象に対する多面的・多角的な見方や考え方を養い、理 解を深める必要がある。そのために、右上のような特 性要因図を活用し、①から⑤までの手順で、収集した 情報や課題解決の思考過程を視覚化していく。特性要 因図は情報を整理・分類し、それらの情報同士を関連 付けながら、その因果関係や根拠なる理由付けを行う のに適している。また、収集した情報や課題解決の思考の過程が 1 枚にまとまっているため、他者に分 かりやすく説明したり、思考の過程を何度も確認したりできるため思考を深めることができる。 ③課題解決のために生徒が収集した資料はその解決に役立つものでなく、生徒が情報をそのままの形 でもってくる場合が少なくない。この段階では、その情報は自らが考えを加えたものでなく、情報の切 り貼りである。そこで、ペアやグループになり、情報同士の関連を問うたり、曖昧なところを教師が指 摘したりする「調べ直し」や「まとめ直し」の活動を学習活動に取り入れ、「情報同士の関連はあるか」、 「収集した資料が役立つものか」などの妥当性を吟味する場を必要に応じて設定する。そのことで、生 徒は課題の解決に向け、情報を関連させながら、自己の考えを練り上げる必要性を感じ、自ら課題解決 へ取り組もうとする意欲を高めることができる。 2 実践例 「課題解決に必要な基礎的・基本的な知識や技能、概念を『概観する』段階の設定」や「生徒の思考 を深めるための情報・思考の視覚化の工夫」、「主体的に課題を解決するための『調べ直し』や『まとめ 直し』の場の設定」を設定し、実践した授業の流れは、第3学年の題材「基本的人権の意義」を例にす ると、以下のようになる。

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28 -3 省察と展望 (1) 実践例について ①は課題解決の前の「概観する」段階 で、生徒が課題解決のために必要な新し い知識を身に付けられたのかを聞いたも のである。生徒は、教師からの説明や生 徒同士の理解の確認を通して、課題解決 に必要な新しい知識や技能、概念をおお むね習得して、課題解決に臨んでいると いえる。これは、課題解決の前に新しい 学習内容を概観させることを意識した結 果であると考える。しかし、そう思わな い生徒もいることは、今後は理解の程度 を教師が更に把握し、課題解決の前に必 要となる知識や技能、概念を習得するた めの手だてを充実させていく必要がある と 考える。 ②は、収集した情報や思考の過程を視 覚化したことで自らの考えが深まったか どうかを聞いたものである。「図で表した ことにより情報と情報の関連が見えて、 新たな考えが出しやすかった」、「なぜそ う考えたのかと聞かれた時、その理由を 見つけやすかった」等、図式化すること で自分が調べた情報を関連付けながら考 えを深められたり、自己の考えに対して の理由付けを見つけられたりしたことを実 <生徒が作成した特性要因図> 感している。これは、情報や思考の過程を 図式化することで、課題解決のために収集した情報が視覚化され、分類・整理しやすくなり、それらを 関連付けながら新たな考えを導き出すことができたためだと考えられる。今後は、課題解決に結び付く ための視点の吟味や更に分かりやすく視覚化するために情報を色分けするなどの工夫が必要であると考 える。 ③は、課題解決のためには、調べたことやまとめたことを再構成する必要があるかを聞いたものであ る。実践例を終えた後の生徒の感想では、「自分の調べたことやまとめたことが正しいと思っていたが、 友達との意見交流で間違っている所もあることが分かった」、「調べ直したことで新たな発見があり、よ り課題に対して正しい結論が出せた」などの感想が挙げられた。これは、課題解決の途中で、一度立ち 止まり、自分の調べたことや考えたことを見直す必要があることを実感しているものと考えられる。今 後は、更に自己の考え深まるように、学習過程のどの場面で、調べ直しやまとめ直しを位置付けていく のかを検討していく必要があると考える。 (2) 今後の展望 研究主題「自ら課題解決に取り組み、広い視野に立って社会的事象を考察できる生徒の育成」を目指

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し、前研究の成果と課題を受けて1年目の研究を進めてきた。生徒が課題解決に必要な知識や技能、概 念は課題設定の前に習得させることや情報や思考の過程を視覚化することなどで、収集した情報を比較 したり関連付けたりしながら事象間の因果関係をとらえ、理由を明らかにしながら自己の考えを深めて いくことができたことは成果として挙げられる。今後は、生徒が更に意欲を継続しながら課題を解決し てこうとするための指導・支援を考えていきたい。 <参考文献> 1)安野功 (2008) 『「社会科ノート」による思考力の育成』 東洋館出版社 2)寺本潔・一ノ瀬善崇 (2008) 『図解型板書で社会科授業』 黎明書房 3)駒井伸俊 (2009) 『フィッシュボーンノート術』 フォレスト出版 4)鋒山泰弘・赤沢早人 (2010) 『授業と評価をデザインする社会科』 日本標準 5)市川伸一・鏑木良夫 (2009) 『教えて考えさせる授業』 図書文化

参照

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