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Title
技術の社会的形成概念に基づく公共技術支援政策形成
に関する研究
Author(s)
林, 隆之; 平澤, 泠
Citation
年次学術大会講演要旨集, 12: 271-276
Issue Date
1997-09-26
Type
Conference Paper
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/10119/5635
Rights
本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す
るものです。This material is posted here with
permission of the Japan Society for Science
Policy and Research Management.
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2, 概念的枠組み : 技術の社会的形成 前述のような 観点から科学技術を 見る場合、 科学技術内部のみを 考慮するのではなく、 科 学 技術と社会との 相互関係に注目しなければならない。 このような流れの 一 っとして「技術の社会的形成 (The Social Shaping of Technology) 」と総称される 概念があ る。 この概念は
近年の技術史・ 技術社会学や 技術革新の経済学などの 各分野の研究から 生まれたものであ る。 「技術の社会的形成」 とは、 端的には技術決定論や 科学技術のリニアモデルなどの 既存の 技術モデルを 否定する概念であ ると言える。 このようなモデルでは、 研究開発が基礎・ 応用 開発と順にステージをすすみ、 それによって 生まれた新たな 技術がマーケットを 通して普及 し 、 社会変化を引き 起こしていくというように 一方向的に考えられている。 そのため、 この モデルにおいては、 技術のインパクトは 議論されるが、 技術の性質や 発展方向は技術内在論 理 に支配されているものとして 議論の対象とはなりえない。 このようなモデルに 対して、 これまでも研究開発内部のリニアモデルについては 技術経営 論から多くの 批判がなされ、
た
チェーン・リンク ド ・モデルなど 新たなモデルも 提唱されてき 」。 し 力 し 近年の技術史・ 技術社会学における 「技術の社会構成主義」や「アクター・ ネ、 ッ トワーク・アプローチ」、 また経済学における「テクノエコノミック・パラダイム」や「 技 術の進化論的アプローチ」 などの研究は「技術の 社会的形成」 という新たなモデルを 共通し て提出している。 そこでは、 既存のモデルで 考えられるような、 技術世界と社会との 間の明 確 な境界というものは 否定され、 すべてのステージにおいて、 技術が技術的要素のみならず、 経済・政治・ 地理などの様々な 社会的要因により 形成・選択され、 また、 逆に新たな技術に より選択環境も 変化していくという 複雑なモデルを 考えることが 出来る。 本研究では、 この 「技術の社会的形成」 という概念を 技術政策や技術経営の 分野へ展開さ せることを一つの 目標とする。3. 研究対象 : 公共技術
そこで、 本研究の対象には、 上述のような 技術と社会との 相互関係に注目した 政策が必要
であると考えられる「公共技術」を 取り上げる。 本研究では、 公共技術を表
1に示されてい
るような公共経済学で 考慮される「公共性」の 要件を 1 つ 以上満たしており、 そのために、マーケットメカニズムにのって 自律的に発展および 変更されることが 難しく、 政策的支援を
必要とする技術 群と 考える。要件は 、 大きく分けて「市場の 失敗」と呼ばれる 社会全体の効率性に 関わるものと、
効率 性 とは異なる、 理念や価値などを 中心としたものに 分けることができる。市場の失敗はさらに
5つぼ内分することができる。 まず、 第一に技術自体が 公共財であ
るものがあ る。 これには、 防衛技術や通信・ 交通インフラ、 さらには科学的知識なども 考慮
することができる。 第二に、
たとえ私的 射 ではあっそも、
環境汚染などのマイナスの
影響を不特定の人々に 及ぼす「負の 外部性を有する 技術」があ り、 逆に環境保護技術や 代替エネ、
ルギー技術などのようにプラスの 影響を不特定に 及ぼす「正の 外部性を有する 技術」というも
のがあ る。 第三には、 エネルギー技術などのように 自然独占が発生し、 競争的環境が 生まれ
ず、 技術開発が進展しにくい 場合があ る。 第四には、 複数の技術間の 関係として、
「不完備 な市場」が考えられる。 例えば補完的な 技術において 両者が他方の 開発が進展するのを
待っているようなケースであ る。 そして、 最後には、 技術と社会との 関係として、 ユーザ一に技
術に関する情報が 伝わらないためにニーズが 顕在化しなかったり、 逆にマイナスの 影響に対
する反対運動が 起きなかったりするような「情報の
失敗」と呼ばれるケースが 考えられる。
一方、 このような効率性とは 離れたところで、 まず、 医療・福祉技術のような 公平や平等
といった分配上の 理念から政府の 政策が必要とされる 技術 群 が存在する。そして、 最後には、 安全技術など 個人がたとえ 求めなくても、 政府のパターナリズムによ
り提供されるべきであ る価値財と考えられる 技術が存在する。
以下、 このような公共技術を 支援する政策を「インセンティブ チェーン・モデル」を 用 いて、 形成する方法を 考えていく。 表 . 1 公共技術 理上村
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技術
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技術
術術
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衛害境力完療
社会
防金環
補4. インセンティブ・チェーン・モデル このような公共技術を 支援する政策を 形成するためのモデルとして、 インセンティブ ,チ エーン ・モデルを提案する。 それは次のように 定義できる。 すな ね ち、 「あ るアクタ一の 作 勤め アウトプットが 、
別のアクタ一の
作動のインプ ット となるような 関係の連鎖」 がインセンティ プ チェーンであ る。 このチェーンは、 (1) 閉じたループを 形成するも のと、 (2) そうでないものの 2 種類を区別することができる。 (1) の場合には、 それは一つのオートポ I イエーシス・システム ( インセンティ プ ・チェーン 、 ンステム ) を形成すると 考えられる ( 図 1 几 その
祐一,
時に、 システムは自律的に 維持・発展を 行うことが 図 1 インセンティ プ ・チェーン 可能となる。 このように、 インセンティブを 構成素とするシステムを 考慮することにより、 技術開発に 関係するアクタ 一だけでなく、 一般市民などの 異なる性質を 有する多様なレベルのアクター をネットワークの 中で一つのシステムとして 考慮することができるようになる。 さらに、 企 葉組織などによる 前提的な境界設定を 行うことを回避することができるとともに、 システム の作動に伴い 随時新たなアクターを 取り込むことや、 別のシステムとの 結合を行うことが 可 能 であ る。 このモデルを 用いた政策設計の 方向としては、 政策設計者が、 特定の技術の 開発や普及に 関 わるアクターおよび、 それらアクターがその 技術システムの 中で果たすべき 機能を同定 し、 各 アクターが作動することが 互いに別のアクタ 一の作動を誘因するというように、 アクター 間の インセンティブが 連鎖するような 政策設計を行う。 公共技術のように 研究開発および 普 及 が自律的に進まない 技術は、 チェーンが途中で 切れていたり、 逆 方向のインセンティブ ( す なわちディスインセンティブ ) が 存在する事によりループが 形成されていないと 考えられる。 そのため、 現在のインセンティブの 状況を分析し、 インセンティブの 無い箇所、 弱い箇所に はそれらを導入・ 強化するような 政策を考案するとともに、 逆にディスインセンティブ と な っている箇所に 対しては、 それを取り除くか 迂回するようなインセンティブのルートを 形成 することが望まれる。 インセンティブの 種類としては、 システムの特徴 や 、 考慮するアクタ
一のレベルや
機能に よって多種多様なものを 考 えることができる。 例えば 表 2 セクターレベルでのインセンティブの 例 後の事例で述べるような、 産・官・ 学 ・ 民 といった セ クターレベルでは、 科学的 知識や技術的人工物・資金
といったものが、 それぞれ のアクタ一の間のインセン
ティブ と 見なすことができ5.
事例研究∼血気自前車 以下、 具体的な事例として 電気自動車の 支援政策を取り 上げ詳しく説明する。 電気自動車は、 地球環境保護のための 技術の一 つ であ り、 「正の覚部性」 を有する代替技 術であ る。 電気自動車は 戦後何度か研究開発の 波があ り、 現在もカリフォルニア 規制に端を 発する新たな 波の真っ最中であ るが、 現在のところ、 日本ではわずか 2500 台の電気自動車 が保有されているにすぎない。 そのため、 より一層の研究開発および 普及が常に叫ばれてき た 。この電気自動車の 支援政策をインセンティブ・チェーン
モデルを用いて 考える。 まず最初に、 電気自動車開発に 関わるアクターを 同定する。 ここでは、 議論を簡単なもの にするため、 産、 官、 学、 民というセクタ 一のレベルで 考えることにする。 次に 、 各 アクタ 一のシステムの 中での機能・ 役割を定義する。 これら 各 アクターは、 電気自動車の 開発・ 普 及 というシステムにおいて、 民は「需要・ 購入」 であ り、 産は 「製品開発」 であ るというよ う に、 それぞれが 固有の機能を 有し ていると考えられ る。 そして、 これ ら 各 アクタ一の作 動が別のアクタ 一 の作動を誘因する ようなインセンテ ィブの連鎖が 存在 するかを分析する。 もし、 図 2 の理想 的 状態のように、 民 ( 社会 ) からの 専門知識に基づく 政策提言 公敵 研究 技明 田 &D)究 資源 政府 ( 調整 ) 大学 補助金 ( 基礎研究 ) フラス 、 ラクチヤ 一 親 %,J 政策提 こ 補助金 社会的ニ一 研究 資 明確表現 死結果 耳学的知識 ) 高 サービス製 ,,び ) 供給
研究所 産 乗 社会
㏄
ぁ D) I ( 製品供給 ) ( 需要、 購入 )購入 ( 対価 ) ニーズが明確に 表 現されることで、 官 (
政府
) の規 図 2 電気自動車のインセンティブ・チェーン ( 理想的状態 ) 制・推進政策が 後 押しされ、 さらにそれにより 産 ( 産業 ) において電気自動車やその 構成技術 ( バッテリ一等 ) の 研究開発がすすみ、 その結果、 高いサービスを 提供する製品が 民へと供給され、 逆に購入者 であ る民はそれを 購入し対価を 支払うというようにインセンティブの 連鎖が閉じたループを 形成していれば、 研究開発や普及は 自律的に進むことが 可能であ る。 しかし、 実際にはこの 図 のような理想的状態ではなく、 電気自動車の 研究開発や普及を 促すインセンティブが 弱か っ たり、 ループの中に 逆の方向のインセンティブ、 つまり、 ディスインセンティブが 存在し ていると考えられる。 例えば、 図 3 で太い実線で 示されているように、 電気自動車の「価格の 高さ」は民の 購入 活動への大きなディスインセンティブとなっており、 またそれに対応して「市場が 未確立で 安定した十分な 収益が見込めない」ことは 産の研究開発活動へのディスインセンティブ と なっている。 また、 これまでのガソリ ン 車への研究開発 投資を無駄にしな いための 「既存の 技術パラダイムの 維持」 というディ
スインセンティブ
も大きく存在し、 新たな代替技術で あ る電気自動車の 自律的な発展の 障 害となっている。全開
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( 需要、 購入 )㏄
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( 製甘も Ⅰ 共ネお ) 市耳 の 未 立 一方で、 各インセ ンティブについて 図 3 電気自動車のインセンティブ・チェーン ( 現実状態 ) 見ても、 多くのも のが非常に弱い 状 況 にあ ると考えられる。 このようにチェーンが 切断されているために、 自動車技術はガソリ ン自動車において 「ロックイン」状態となり、 別の代替オプションを 開発することができな い 状態でいる。 そこで、 電気自動車の 研究開発や普及を 支援する政策としては、 これらディ スインセンティブを 消去したり、 もしくは、 ディスインセンティブのルートを 迂回するよう な 政策を考案し、 さらには弱いインセンティブを 強化する政策を 考えることが 必要となる。 そこで、 実際に幾つかの 政策オプションを 考えてみる。 まずは、 各 ディスインセンティブ の 消去を考える。 一つ目のディスインセンティブであ る 「既存のガソリン 車パラダイムの 維 持」 を消去するためには、 一つぼはカリフォルニア 規制に見られるような 官から産への 「 厳 しく長期に固定された 規制」 というものを 考えることができる。 ロー・エミッション・ ビ一 クルではなく、 ゼロ・エミッション・ビークルというような 厳しい規制を 課すことによって、 必然的に研究対象をロックイン 状態のこれまでのガソリン 自動車の枠内から 電気自動車へと 移すことができる。 また、 当然このような 規制への反発は 想定されるので、 規制を長期に 固 定することによって 産セクタ一の 側に研究開発のための 十分な猶予期間を 与え、 また電気自 動 車の市場を約束することにより 産のディスインセンティブを 消去することが 可能となる。 これ以外にも、 産への補助金なども 考えることはできるが、 その場合は市場の 形成が約束さ れず依然として 大きなディスインセンティブが 存在する。 そのため、 このような補助金など の策は規制を 補助する政策として 考えられるべきであ ろう。 また、 官づ学 づ産 と 迂回するこ とにより、 官からの補助金で 学に重点的に 基礎的研究を 行わせ、 その結果を産へ 与え、 産の 研究開発を誘因するという 政策オプションも 考えることができる。 次に、 「高い価格」というディスインセンティ プ に対しては、 購入者への助成や 優遇措置、 また逆にガソリン 車への課税などによる 選択環境の変化が 考えられる。 これと対応する 「 市 場 が未確立で安定した 収益が見込めない」というディスインセンティ プ に対しては、 例えば、チすブセ
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w* ・m
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