生活圏に医療機関のない女性の妊娠期における
セルフケアに関する後方視的研究
國 清 恭 子, 中 島 久美子, 阪 本
忍
荒 井 洋 子, 長 岡 由紀子, 常 盤 洋 子
要 旨 【目 的】 妊娠期の女性のヘルスプロモーションを支援するために, 生活圏に医療機関のない女性の妊娠期 におけるセルフケアの特徴を明らかにする. 【方 法】 沖縄県の離島の黒島, 波照間島に居住する出産後 1 年以内の母親 9 名を対象とし, 半構成的面接法により抽出した妊娠期に行ったセルフケアを, 質的に内容 析した. 【結 果】 離島の女性は自 の 康は自 で管理していこうという意識を持っており, 妊娠期のセ ルフケアとして, 妊娠経過において異常を予防し正常を保つために, 自らあらゆる情報源から情報を得て, 自ら え行動した」という特徴が見出された. 【結 語】 妊娠期の女性のセルフケア能力を高める支援とし て, 女性が意識的に自 の身体と向き合い自 で判断することを促すかかわり, 専門的視点からのセルフケ アについての振り返り, キーパーソンである夫と協働できるような支援, 個別的で具体的な情報提供という 4 つの支援が示唆された.(Kitakanto Med J 2008;58:173∼182) キーワード:ヘルスプロモーション, セルフケア, 妊娠期, 離島 は じ め に 少子化の進行や, 妊娠・出産をめぐる価値観の多様化, 出産の医療化を背景に, 安全性を保証しながらも快適で 質の高い周産期ケアが求められている. 一方, 産婦人科 医師の不足に伴って産婦人科・産科を標榜する医療機関 の数は漸減傾向にあり, 全国的な社会問題となっている. このような不充 な産科医療体制のしわ寄せが子どもを 産む女性に向けられ, お産難民が急増し, 今日では当た り前のように求められている安全性でさえ確保すること が難しい現状がある. このような厳しい周産期医療の情勢において母児の 康を守るためには, ヘルスプロモーションの実践が重要 である. ヘルスプロモーションとは, 人々が自ら 康を コントロールし, 改善することができるようにするプロ セスである. 女性のヘルスプロモーションを えると き, 看護者の役割は女性が自 の 康に対し適切な責任 をもつための技術や支援的な環境を提供することであ り, それにより女性たちは自身の 康に対するセルフケ アが可能となる. 産科医療体制の整備は社会的な急務で あるが, 同時に, 看護者が女性のセルフケアを促進する ような支援のあり方を検討することも重要な課題といえ る. 情報化社会を背景に, 女性たちは妊娠・出産について の一般的な知識に触れる機会は得やすい. その一方で, 少産・少子化や核家族化を背景に,妊娠・出産に関する経 験知は少ない.そのため,多くの女性は妊娠・出産という ものが感覚的に からない状態にあることが推測され る. 知識や関心を持ってはいても, 自 の身体に関心を 向け, 変化を感じとることができなければ, 適切に 康 問題について判断し, しかるべき行動を選択して対処す ることは難しいと えられる. また出産の医療化を背景 に,安全な出産を求めて「産ませてもらう」というお任せ 出産の傾向が顕在化している. ヘルスプロモーションの 実践の支援においては, このような女性のセルフケア能 力が育ちにくい社会背景をふまえたかかわりが必要であ る. 附 は, 保 ・医療・福祉 野の人材や設備面, 通 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科保 学科 2 東京都新宿区信濃町35 慶應義塾大学看護医療学部 平成20年2月18日 受付 論文別刷請求先 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科保 学科 國清恭子機関や通信情報網の発達の面で十 な体制が取れず, 離 島特有の問題を抱えている沖縄県離島町村において, 乳 幼児を持つ母親を対象にアンケート調査を実施し, 妊 娠・出産・育児期の厳しい現状を報告している.アンケー ト調査の自由記載では, 居住する島内に安心して出産で き育児をサポートしてくれる施設がないことへの不安や 不 さの訴えが目立つ一方で, で医療機関のある大き な島へ行かねばならないという環境で子育てを経験し, 親も冷静な判断する力が養われたと思う. 今子どもた ちの『生きる力』が注目されているがそれは私たち世代 の親にも必要なことだと思う. 過剰な程の 利さの中で は本当の意味では『生きる力』は培われないと思う」と いう回答もあった. これは, 容易に医療に頼ることがで きない環境において, 自 の 康は自 で守るという意 識が高まり, セルフケア能力が発揮されやすいことを示 唆している. このような容易に医療に頼ることができな い環境にある女性のヘルスプロモーションに着目し, 自 らの 康を保ち, 予測される 康問題に対処するために, 妊娠期においてどのようなセルフケアを行っていたのか という特徴を明らかにすることは, 女性たちが自 の身 体に意識を向けセルフケア能力を発揮できるような支援 をするための指針になりうると えた. そこで本研究は, 沖縄県の離島に住む女性への聞き取 り調査により, 生活圏に医療機関のない女性の妊娠期に おけるセルフケアの特徴を明らかにすることを目的とし た. 用語の操作的定義 「生活圏」 本研究においては, 対象者が居住する島内を生活圏と した. 「医療機関」 本研究においては, 妊婦 診および を取り扱うこ とができる病産院とした. 「ヘルスプロモーション」 本研究においては, 1986年に発表されたオタワ憲章の 「ヘルスプロモーションとは, 人々が自ら 康をコント ロールし, 改善することができるようにするプロセスで ある」という概念を用いた. 「セルフケア」 坂本 は, ライフスタイルをコントロールする力につ いて, 自 の身体のことを知ること, 身体の変化を観察 すること, 自 の身体の調子を整えておくこと, 自 の 身体を自 でケアすること, 病気になったときには自 のことは自 で説明できることであると述べている. こ れを参 に,本研究においては,妊娠・出産に伴う身体の 変化について知識と関心を持ち, 身体の変化を観察して 身体感覚でとらえ, 正常な妊娠経過をたどれるよう自 で身体の調子を整え, 自 の身体を自 でケアし, 何か 異常の徴候や変化をとらえたならば, その身体感覚につ いて正確に説明できることをセルフケアと定義し, この ような行動を実行する能力をセルフケア能力とした. 方 法 対象者 沖縄県八重山福祉保 所地域保 班の保 師から紹介 された八重山諸島の離島町村 (黒島,波照間島)に在住し ている出産後の母親 9 人であった. 対象選定の条件とし て, ①出産後, すでに離島の自宅に戻ってきている, ②出 産後 1年以内, ③重症な精神疾患の既往がない, または 現在治療中でない, 以上の 3点の条件を満たす者とした. 調査時期 2006年 8月 調査方法 データ収集までの手続きは, 沖縄県八重山福祉保 所 地域保 班の保 師の協力を得て, 八重山諸島の離島町 村に在住する出産後の母親をリストアップしてもらい, 予め送付した研究依頼文を用いて研究参加の依頼をして もらい内諾を得た. その際, いつでも同意を撤回できる 旨を説明してもらった. 調査日に母親と対面した際, 面 接者より改めて文章および口頭にて研究の趣旨・内容を 説明し, 研究参加の意志の最終確認を行った. 研究参加 の同意が得られた場合には同意書へのサインをもらい, ここまでの手続きが終了した時点で, その母親を研究対 象者とした. 最終確認の時点で研究参加の同意を撤回し た者はいなかった. データ収集は, ①妊娠の診断について (妊娠の診断を 受けるきっかけ), ②妊娠中の身体の変化およびセルフケ アの実践について (身体の変化を意識的に感じたか, 康を保つために取り組んでいたこと, 異常を判断したエ ピソードとその対処, セルフケアのための情報源など) などを問うインタビューガイドに基づいた半構成的面接 法で行った. 面接は対象者の自宅で 1時間程度行い, 対 象者の許可を得てテープに録音した. 録音された内容は, すべて逐語的に記録し, 析資料とした. 析方法 データ 析は, Berelson, Bの内容 析 を用いて行っ た. まず, 逐語録から妊娠期におけるセルフケアについ て表現している文脈を抽出してデータ化し, それを記録 単位とした. 次に, 内容が類似している記録単位を集め, 意味内容を変えないよう一文に表現し, それをコードと
した. コードはさらに, 内容の類似性に従って 2段階に 抽象化し, サブカテゴリー, カテゴリーとした. これらの過程は, 析の信頼性を高めるために複数の 研究者によって行った. また, 析結果の信頼性を確認 するために, 母性看護学の研究者 4名に 析を依頼し, Scottの式 に基づく一致率を算出した. 倫理的配慮 本研究はデータ収集に先だち, 群馬大学医学部疫学研 究に関する倫理審査委員会の審査を受け, 承認された. 対象者には, 文書および口頭にて研究目的と内容, 析後のデータの取り扱い, 問い合わせ先等について, さ らに, 面接内容を母子保 担当の保 師に知られること はなく個人のプライバシーは保護されること, 今後保 医療サービスを受ける上で不利益を受けることはないこ とを説明した. また参加の自由と中断の自由について説 明した上で, 研究参加への同意書に署名をしてもらった. 結 果 調査地の生活環境 沖縄本島から南西 400km余りの地点に位置する八重 山諸島は大小 19 の島々からなる. 八重山諸島において 施設は石垣島にある沖縄県立八重山病院のみであ る.調査地の「黒島」は,2006年の人口が 219 人,出生数 が 3人であった. 石垣島までは で 30 の距離に位置 する. 波照間島」は, 日本最南端の島で, 2006年の人口 が 588人, 出生数が 5人であった. 石垣島との距離は 53kmで, 高速 で 1時間, フェリーで 2時間, 飛行機で 30 を要する. 波照間島内には診療所が 1カ所ある. こ れらの離島に住む妊婦は, 診のたびに や飛行機に 乗って通院している. また, 妊娠 37週に入ると, 石垣島 の親戚・知人宅やホテル,または,里帰り先に宿泊して 待機をしている. 対象者の背景 対象者の居住地は, 黒島が 3名, 波照間島が 6名で, そ のうち 6名は県外の出身者であった. 対象者の年齢は 24 歳∼35歳 で 平 年 齢 は 29.0歳 で あ り, 出 産 後 1ヶ月 ∼11ヶ月, 平 して 8.3ヶ月経過していた. 9 事例のうち 5名が初産婦, 3名が 1回経産婦, 1名が 2回経産婦で あった. 定期 診を受けた場所は, 八重山病院が 6名, 島 内の診療所または島内に来る助産師による 診が 3名 で, 出産場所は, 八重山病院が 6名, 里帰り先の病院 (県 外)が 2名,里帰り先の助産院 (県外)が 1名であった.出 産時の準備としては, 八重山病院で出産をした 6名のう ち病院への待機入院が 2名, 石垣島の助産師の自宅にお ける待機が 2名, 石垣島の実家における待機が 2名であ り, 島外へ里帰りをした 3名についてはおよそ 2ヶ月前 に里帰りをしていた. 対象者のうち 2名は双胎妊娠だっ たが, その他は妊娠・出産・産褥経過に異常はなかった. 生活圏に医療機関のない女性の妊娠期におけるセルフケ ア 対象 9 事例のデータから, 女性の妊娠期におけるセル フケアは 202記録単位を抽出した. これらの記録単位を 類した結果, 53コード, 18サブカテゴリーを抽出し, 最終的に【妊娠の気づきや妊娠の経過において自 が感 じたことの根拠づけを行った】,【妊娠中より夫と協力し, 今後の生活に向けての準備を行った】,【妊娠による心身 の変化を受け入れ, 身体の声に素直に従った】,【自らあ らゆる情報源にアプローチし, 妊娠・出産に関する助言 や情報を得た】,【島における妊娠期の生活術や過ごし方 について, 島の人から助言を受けた】,【環境による出産 や 診への支障を最小限にするために, 前もって準備し た】,【妊娠経過を正常に保ち望む出産を実現するために, 取り入れた情報を参 にして自ら行動した】,【妊娠経過 において異常が起こらないように, 自ら え行動した】 という 8つのカテゴリーを抽出した (表 1). カテゴリー 類は一致率 80.7%となり, 信頼性が確保 された. 以下, 各カテゴリーについて, サブカテゴリー ( > で示す) と, そこに含まれた記録単位 (「 」で示す) を 用いて内容を示す. 妊娠の気づきや妊娠経過において自 が感じたことの根 拠づけを行った このカテゴリーは, 妊娠中に自 が感じた心身の変化 や妊娠経過について確信を得たり, 根拠づけを行うため に自ら行ったセルフケアを示した. 2サブカテゴリー, 3 コードに統合された 10記録単位で構成され, 全記録単 位の 5.0%を占めた. 受診前に妊娠の疑いを確信に変えるため, 自ら妊娠 検査薬を手に入れ検査した> は, すぐには調達できない ので, とりあえずそういう時のために一応二個くらいは 持っていた」, 島の友達に ってないものをもらった」, 今まで規則的に生理があったが, 1週間程ずれたためお かしいと思い検査した」と表現され, 島内では妊娠検査 薬を売っておらず, また医療機関をすぐに受診できない ことから, 前もって常備するなど妊娠検査薬を手に入れ る工夫をし, 妊娠を疑った場合には, その疑いを確信に 変えるため受診前に自ら妊娠検査薬で検査するというセ ルフケアであった. 妊娠経過が順調だと判断するため自 の知識と照合 した> は, 自 の知識と照らし合わせて妊娠経過が順調
であるかどうかを判断するというセルフケアであった. 妊娠中より夫と協力し, 今後の生活に向けての準備を 行った このカテゴリーは, 妊娠経過や妊娠による身体の変化 を夫と共有し, 妊娠中より夫と共に出産や今後の生活に 向けて準備を行ったセルフケアを示した. 2サブカテゴ リー, 4コードに統合された 15記録単位で構成され, 全 記録単位の 7.4%を占めた. 今後の生活について夫と話し合い, 具体的にシミュ レーションした> は, 産むことを前提にどうしていくか を何回も夫と話し合った」, 夫と里帰りするメリットと, 石垣島で産むことのメリットを えた」, 家事の 担と かも人のふりをみて我が家の場合はどうだろうとか, シュミレーションした」と表現され, 夫と出産場所の選 択や出産時の対応, 今後どのように生活していくかにつ いて具体的にイメージを膨らませたり, 他の家 を参 にしながら自 たちの生活をシュミレーションするなど して出産や産後の生活の準備を行ったセルフケアであっ た. 夫と妊娠経過を共有し, 協力を求めた> は, お腹の 変化とか母体の変化とかが描いてある絵をペタッと貼っ て, 今ここ, と 2人で見られるようにした」, 夫に妊娠に ついて知ってもらえるように, 自 の体の変化など気づ いたことを何でも言うようにした」, 自 がイライラし ているときはとりあえずいい子いい子してっていう話を した」と表現され, 妊娠に伴う身体の変化を夫にも知っ てもらえるよう自ら説明し, その上で夫にサポートして 欲しいことを伝え, 常に二人で乗り越えられるよう積極 的に夫に協力を求めるというセルフケアであった. 妊娠による心身の変化を受け入れ, 身体の声に素直に 従った このカテゴリーは, 妊娠に伴う不快な心身の変化は生 理的なものとして前向きに受け入れ, 常に自 の身体に 意識を向け身体が要求していることには素直に従うよう にしたというセルフケアを示した. 2サブカテゴリー, 4 コードに統合された 8記録単位で構成され, 全記録単位 の 4.0%を占めた. 妊娠による心身の変化を受け入れた>は,妊娠中のマ イナートラブル, 特につわりやイライラ感に対して, 妊 娠中は仕方ないものでいつかは終わると前向きに捉え, ストレスをできるだけ軽減したというセルフケアであっ た. 身体の声, 要求に素直に従った> は, 身体に任せて 食べられたら食べる, 眠れたら眠るみたいな感じでなる べく身体の要求に従っていた」と, 妊娠に伴う変化によ り今までと同じ生活ができなくなったため, 常に身体の 変化に意識を向け, 身体の要求に素直に従うようにした セルフケアであった. また, 薬飲んじゃだめだって言わ 表1 生活圏に医療機関のない女性の妊娠期におけるセルフケア カテゴリ サブカテゴリ 記録単位数(%) 妊娠の気づきや妊娠経過において自 が 感じたことの根拠づけを行った 受診前に妊娠の疑いを確信に変えるため, 自ら妊娠検査薬を手に入 れ検査した 9 ( 4.5) 妊娠経過が順調だと判断するため自 の知識と照合した 1 ( 0.5) 妊娠中より夫と協力し, 今後の生活に向 けての準備を行った 今後の生活について夫と話し合い, 具体的にシュミレーションした 10 ( 4.9) 夫と妊娠経過を共有し, 協力を求めた 5 ( 2.5) 妊娠による心身の変化を受け入れ, 身体 の声に素直に従った 妊娠による心身の変化を受け入れた 5 ( 2.5) 身体の声, 要求に素直に従った 3 ( 1.5) 自らあらゆる情報源にアプローチして, 妊娠・出産に関する助言や情報を得た 自ら妊娠・出産を経験した身近な人に相談し, 助言や情報を得た 32 (15.8) 自ら本やその他の手段を って,妊娠・出産に伴う身体の変化や異常 について情報収集した 10 ( 4.9) 妊娠・出産に関して気になることを医療者に相談・確認した 9 ( 4.5) 島における妊娠期の生活術や過ごし方に ついて, 島の人から助言を受けた 島の人から妊娠中の養生法や注意点, 島での緊急時の対応について 教えてもらった 11 ( 5.4) 環境による出産や 診への支障を最小限 にするために, 前もって準備した すぐに病院に行ける環境ではないので出産の準備を前もって行った 7 ( 3.5) 悪天候やそれが予測されるときは調整して 診を受けた 4 ( 2.0) 妊娠経過を正常に保ち, 望む出産を実現 するために, 取り入れた情報を参 にし て自ら行動した バースプランを叶えるために, 自ら出産場所について調べ決定した 10 ( 4.9) 医療者から妊娠経過を正常に保つための助言を受け実行した 5 ( 2.5) 島の人からの妊娠中のセルフケアに関する情報を取捨選択して活用 した 13 ( 6.4) 妊娠経過において異常が起こらないよう に, 自ら え行動した 妊娠中の 康を阻害することが予測される要因を排除した 28 (13.9) 康を維持・増進し妊娠経過を正常に保つために,日常生活において 気をつけた 25 (12.4) 妊娠中, 自ら必要性を感じ医療機関を受診した 15 ( 7.4)
れて, 診療所に行かない方がいいんだと思って我慢して たんだけど, ご飯も食べられなくて頭も痛くて吐き気も してたので, これは診療所に行こうと思った」と, マイ ナートラブルや自 の力で対処できる範囲を越えた体調 不良がある時には, 休息を取ったり病院を受診したりす るなど身体の要求に対して素直に従うようにしたセルフ ケアであった. 自らあらゆる情報源にアプローチし, 妊娠・出産に関す る助言や情報を得た このカテゴリーは, 妊娠中に身体の変化や問題を感じ た時など,妊娠・出産に関する知識を得るために,島で妊 娠・出産を経験したことのある人や医療者に自ら相談・ 確認をして助言を得たり, または本やその他の手段を って自ら情報を得たセルフケアを示した. 3サブカテ ゴリー, 10コードに統合された 51記録単位で構成され, 全記録単位の 25.2%を占めた. 自ら妊娠・出産を経験した身近な人に相談し,助言や 情報を得た> は, すでに島で出産を経験した人から, ど ういうふうに産んだのかなどの情報を聞いた」, こうい う狭い地域だから誰が妊娠してるよとか, すぐ情報が伝 わってくるので, 声を掛け合ったりして情報 換をして いた」と表現され,身近にいる妊娠,出産を経験した人に 相談し情報や助言を得たセルフケアであった. また, 離 島では何か問題が起こってからでは遅いので, 常に問題 が起こらないようにしようという意識を強く持ち, 少し でも気がかりなことがあれば周囲の経験者に聞き助言や 情報を得ていた. 自ら本やその他の手段を って,妊娠・出産に伴う身 体の変化や異常について情報収集した> は, 第 1子の時 の経験や知識を再度確認したり, 心身の変化を感じ取り それを確認するため, 自ら本やその他の手段で情報収集 したというセルフケアであった. 一般向けの商業雑誌で はなく看護系の専門書を読むことで, まず自 自身の身 体の仕組みを知り, その上で自 に起きている身体の変 化とその根拠を学習した者もいた. 妊娠・出産に関して気になることを医療者に相談・ 確認した> は, 妊娠中気になることを医療者に相談し助 言を得たり, 自 の知識で判断したことが正しいかどう か医療者に確認をしたというセルフケアであった. 『台 風でさ,出産しちゃうとかある?』と聞いて,うんやっぱ りお腹張るっていうお母さん多いよって言われた」と, 身体の変化と環境との関連性に気づき, 専門知識を持つ 助産師にその根拠や注意点などを確認した者もいた. 島における妊娠期の生活術や過ごし方について, 島の人 から助言を受けた このカテゴリーは, 離島という環境ならではの妊娠期 の生活の知恵や工夫点, 注意点などを島の人に教えても らい, 自らの妊娠生活において参 にしたというセルフ ケアを示した. 1サブカテゴリー, 6コードに統合された 11記録単位で構成され, 全記録単位の 5.4%を占めた. 島の人から妊娠中の注意点や島での緊急時の対応に ついて教えてもらった> は, 波が 3mとかだったら に は乗るな, 飛行機で来なさいと言われた」, に乗ると きは一番後ろで横たわって乗るという情報はみんな教え あう.どこは酔わないよとか」と,身体への負担が大きい 診時の移動手段を利用する際の工夫や, 緊急時にはヘ リを う可能性があることなど離島特有の対応策につい ても島の人から助言を受けたセルフケアであった. 環境による出産や 診への支障を最小限にするために, 前もって準備した このカテゴリーは, 出産や 診のために石垣島まで移 動することに関して, 離島という環境によって受ける支 障を最小限にするため前もって準備や対応を行ったセル フケアを示した. 2サブカテゴリー, 4コードに統合され た 11記録単位で構成され, 全記録単位の 5.4%を占めた. すぐに病院に行ける環境ではないので出産の準備を 前もって行った> は, 島で出産が始まってしまった場合 すぐに病院へ行くことは不可能であるため, 開始前 に待機入院をしたり, 前もって石垣島に渡ったりするな どいつ始まるかわからない出産を安全に迎えるために 行ったセルフケアであった. 悪天候やそれが予測されるときは調整して 診を受 けた> は, 台風が迫っていて台風の間に 診があるとき は, 前の日に の荒れないうちに乗って石垣に泊まって いた」など, 診の日が悪天候で石垣への移動が難しい ときや, 診の日が悪天候になると予測できる場合には, 移動手段の変 や 診日の変 , 事前の調整などをして 対応したセルフケアであった. 妊娠経過を正常に保ち望む出産を実現するために, 取り 入れた情報を参 にして自ら行動した このカテゴリーは, 妊娠経過を正常に保ち自ら望む出 産を実現させるために, 医療者や島の人などから情報収 集し, それを参 に自 に当てはめて え, 行動に移し たというセルフケアを示した. 3サブカテゴリー, 6コー ドに統合された 28記録単位で構成され, 全記録単位の 1,3.9%を占めた. バースプランを叶えるために, 自ら出産場所につい て調べ決定した> は, 自 がどのような出産をしたいか というバースプランを持ち, それを基に自ら出産施設に ついて調べたり周囲の人から聞いたりして情報を集め,
実際に施設を見学して確かめた上で出産施設を決定した というセルフケアであった. 医療者から妊娠経過を正常に保つための助言を受け 実行した> は, 先生に動け動けと言われ, その通り毎日 動いていたら 診でも特に何もなかった」, 腰痛の対処 として, 両親学級に行った時に体操のことを聞いたので 自 で体操をしていた」など, 医療者からの助言を受け ながら, 動静に気を付けたりマイナートラブルの改善を はかるなど, 妊娠経過の異常を予防し正常に保つよう心 がけたセルフケアであった. 島の人からの妊娠中のセルフケアに関する情報を取 捨選択して活用した> は, 島で出産を経験されている方 の話は, 参 になったりならなかったりした」, 色んな ケースがあると思うので, 何か興味もあるし, 自 がそ うだった時はどうするのか,色々参 になる」と,島の経 験者からの情報が自 に当てはまるかどうか, 自 に とって必要か不必要かを判断した上で実際に生活の中で 活かしたというセルフケアであった. また島の年長者か らの慣習的な言い伝えに対しては, ネックレスとかし てたら, 妊娠中はそんなのしてたら臍が絡まるからし ちゃいけないとか, 編み物も臍が絡まるからしちゃいけ ないとか言われた. 言い伝えとかそういうのもあるんだ ろうけど, 確かにこれで首に臍が巻いたら嫌だなと思う とできない」と, 信頼性の低い情報であると判断しつつ も, その言い伝えを守っていた. 妊娠経過において異常が起こらないように, 自ら え行 動した このカテゴリーは, 妊娠経過において異常が起こるこ とのないよう, 自ら対処することの必要性を感じ行動し たというセルフケアを示した. 3サ ブ カ テ ゴ リー, 16 コードに統合された 68記録単位で構成され, 全記録単 位の 33.7%と最も多い割合を占めた. 妊娠中の 康を阻害することが予測される要因を排 除した> は, お腹が張ったときは, 無理せず横になって 休んだり温めたりした」, 仕事場にいても疲れ切る前に 帰るようにした」, 異常について えてるとお腹が張っ たりしちゃうから, なるべく えないようにしていた」, 身体が疲れるから 診の時は石垣のホテルに泊まって いた」など, 心身の 康を維持していく上で悪影響があ ると えられる要因は排除することで異常なく妊娠期を 過ごそうと, 自ら え行動したセルフケアであった. 康を維持・増進し妊娠経過を正常に保つために,日 常生活において気をつけた> は, 歩いたり運動をしたり して,なるべくできることはやった」など,妊娠中 康を 維持・増進するために日常生活において気をつけたり, 妊娠後期には自然な陣痛を誘発するような行動をとった というセルフケアであった. 妊娠中, 自ら必要性を感じ医療機関を受診した> は, 始めは自 で調べて妊娠がわかったので, また詳しく 検査と思って病院へ行った」, 内診時の出血を一回おし るしだと思って病院へ行った」などと表現され, 妊娠の 確定診断や出産の前兆のため, また決まった期間毎に 診を受けることの必要性を認識し, 妊娠経過, 経過 を正常に経過させるために医療機関を受診することが必 要だと判断して自ら受診したセルフケアであった. また, 風邪をひいたときは, 薬を飲んじゃだめだって言われ て, 診療所に行かない方がいいのだと思って我慢してい たが, ご飯も食べられなくなり, 頭痛や吐き気もしてい たのでこれは診療所に行こうと思った」というように, 体調不良時に自 なりに対処していたが, 異常の程度に 応じて医師による診察が必要であると判断した場合に は, 自ら受診をしたセルフケアであった. 察 生活圏に医療機関のない女性の妊娠期におけるセルフケ アの特徴から えられたセルフケアを実現させる要因 本研究で明らかになった生活圏に医療機関のない女性 の妊娠期におけるセルフケアは,【妊娠の気づきや妊娠 の経過において自 が感じたことの根拠づけを行った】, 【妊娠中より夫と協力し, 今後の生活に向けての準備を 行った】,【妊娠による心身の変化を受け入れ, 身体の声 に素直に従った】,【自らあらゆる情報源にアプローチし, 妊娠・出産に関する助言や情報を得た】,【島における妊 娠期の生活術や過ごし方について, 島の人から助言を受 けた】,【環境による出産や 診への支障を最小限にする ために, 前もって準備した】,【妊娠経過を正常に保ち望 む出産を実現するために, 取り入れた情報を参 にして 自ら行動した】,【妊娠経過において異常が起こらないよ うに, 自ら え行動した】であった. そのなかでも, 全記 録単位数に占める割合が多かった【妊娠経過において異 常が起こらないように, 自ら え行動した】,【自らあら ゆる情報源にアプローチし, 妊娠・出産に関する助言や 情報を得た】,【妊娠経過を正常に保ち望む出産を実現す るために, 取り入れた情報を参 にして自ら行動した】 という上位 3つのカテゴリーが全体の 72.7%を占めてい たことから, 妊娠経過において異常を予防し正常を保 つために, 自らあらゆる情報源から情報を得て, 自ら え行動した」という特徴が見出された. このような特徴 を実現させる要因として以下に示す 5つの主体的な意識 と行動, 環境があると えられた. まず 1つめに, 離島の女性は自 の身体に関心を持ち, 自 の身体は自 で管理していこうという意識を強く 持っていることである.園田 は, 病気を治すのは『病院
に行って,お医者さんに診てもらう』というように,医者 の役割であり, 医師に全面的に依存するというあり方が 今日なお根強い」と述べ,さらに,医療者も臨床所見や検 査データに基づいて異常の有無を判断することが客観的 な把握として重視されており, 身体感覚に目を向けるこ とが少ないと指摘している. 本来は生理的現象である妊 娠・出産においても,妊産婦自身が自らの妊娠・出産を医 療者にお任せし, なにかあれば受診すればよいと える 傾向があるため, 身体感覚を意識する機会が少ないと えられる. しかし離島の女性は, 康増進や予防の観点 を重視し, 妊娠・出産にかかわらず普段から身体の変化 に敏感になり日常生活に気をつけていた. また医療者に 頼るとしても, 自 の身体に関心を持って専門書で自ら 学習し, 自 の身体の状態を自 なりに判断し, その判 断を確認する意味で医療者を頼っているという姿も見ら れた. 容易に医療機関を利用できない離島の女性ならで はの特徴であるといえる. 2つめに, 豊富に知識や情報を得ることで自信を持ち, 積極的なセルフケア行動につなげていることである. 【自らあらゆる情報源にアプローチして,妊娠・出産に関 する助言や情報を得た】に示されるように, 離島の女性 は自 の身体を守っていく上での知識や情報を豊富に 持っており, 自 はなんとかなるという安心感や自信を 得ていた. そして, それらの助言や情報は一般的な知識 にとどまらず, 島で妊娠・出産を経験した人からの具体 的で実践的な知恵を含んでいた. 口伝による知恵の伝承 は, 単なるノウハウだけでなく経験者の感覚も同時に伝 えることができるため, より現実的なイメージを伴った 知識を得られ, 活用しやすいと えられる. そのような 知識や情報に裏付けされた自信があるからこそ, 積極的 なセルフケア行動につながるものと えられる. 3つめに, 得た情報を必要性や有用性に って選別し ていることである.宗像 は, セルフケアは,人々が自ら の 康問題を自らの利用しうるケア資源 (家族ケアや専 門家ケアを含む) を活用して解決しようとする保 行動 であり, その解決のためには自己の判断力や実行力が重 要である」, もしある専門家との関わりが, かえって生 命や 康に危険をもたらすと患者が判断し, それが適切 な判断なら, その専門家との関わりを拒否するという患 者の自律性を尊重する姿勢が含まれていなければならな い」と述べている.離島の女性においてみられた,自ら情 報を得るだけでなく, その情報が自 にとって有用かど うかを自 の 康状態や生活に当てはめて判断しその上 で活用している姿は, 本来のセルフケアのあり方といえ よう. 4つめに, 周囲の人との深いつながりを持っているこ とである.【自らあらゆる情報源にアプローチして, 妊 娠・出産に関する助言や情報を得た】の中の 自ら妊娠・ 出産を経験した身近な人に相談し, 助言や情報を得た> というサブカテゴリーが 32記録単位と最も多かったこ とが示すように, 本研究の対象者の全員が自ら周囲の身 近な人に相談し助言や情報を得ることを経験していた. また,【島における妊娠期の生活術や過ごし方について, 島の人から助言を受けた】という背景には, 外に出れば みんなが声を掛け合って自然と情報を共有し, 妊娠した 人がいればみんなが気にかけるという環境があった. そ して, 島の人々の励ましの言葉, アドバイス, 温かい見守 りが安心感や自信を生み, 自 もうまくやっていくこ とができる」と女性たちの背中を押していた. 家 や職 場などでの人との手段的・情緒的なサポートのあるネッ トワークが生き甲 を生じさせ, それがセルフケア行動 を取るべきとする役割意識へ繫がり, それらの意識が積 極的な対処行動と有意に結びつく. このことから, 周囲 の人との深いつながりや良好な人間関係は, 妊娠期の女 性の主体的行動を喚起し, セルフケアを行っていく上で は重要であるといえる. 5つめに, 夫がキーパーソンになっていることである. 離島においては「夫と自 は島では同じ立場で, この感 覚をわかり合える仲間であり,結束が強くなった」「他に 話し合える人がいない」と語った対象者もいた. 離島で 子どもを産み育てていく上で夫の存在の重要性を認識し ているため,【妊娠中より夫と協力し, 今後の生活に向け ての準備を行った】に示されたように, 妊娠経過を共有 し常に夫と相談・決定をしながら夫婦二人で乗り越える という主体的なセルフケアを行っていたと えられる. 以上, 本研究の対象者のセルフケアの特徴から えら れた 5つの要因は, 女性の妊娠期におけるセルフケア能 力を高める要因になりうると えられる. 生活圏に医療機関のない女性から学ぶセルフケアの意味 近年, 出産の医療化に伴い妊娠・出産への医療の介入 が日常化することで, 出産の主体であるはずの妊産婦自 身が医療者に依存する傾向が生み出されている. 一方, 妊娠・出産の特徴として,妊娠・ 経過は生理的に経過 した場合ほとんど医療を必要としないが, 順調な経過が, 母児の生命の危機に するような予測困難な急変によっ て高度な医療を要することもある. これは多くの女性た ちが,自らの妊娠・出産の管理を医療者に「お任せする」 理由のひとつであろう. また園田 は, 症状や異常のあ りなしや, 程度といったことは誰が, 何を根拠として判 断するかということになると, 1つには一般の人々自身 が, 熱があるとか, 疲れるとか, 痛みがあるとか, 気 が すぐれないとかといったことで症状や異常に気づき, 自 覚するというものがある. もう 1つには, 医師や専門的
保 医療従事者が, 臨床所見や検査データなどに基づい て, 症状や異常の有無や程度を診断し, 判断を行うとい うものがあり,今日では後者の方がより『客観的』な把握 であるとして重視されることが多くなっている」と述べ ている.このことも,妊娠・出産する女性が医療者の判断 や助言に依存する傾向に影響していると推測される. このような背景のもとで, すぐに医療機関を利用でき る環境においては, 自 の身体について自ら知り判断す る必要性が低くなり, 何かあれば医療機関へ行けばよい という え, つまり自ら医療機関を受診することが「セ ルフケア」と捉えてしまう可能性もあると えられる. 一方, 離島のような容易に医療機関を利用できない環 境においては, 自 の身体は自 で管理し守ろうという 意識が強くなる. 医療機関へかかることは最終手段であ り, 自 の身体に関心を持ち自ら知る」また, 康問題 が起こらないよう異常を予防し, 正常を保つため自ら え行動する」という意識を持って生活することが前提と なる. 実際に本研究の対象者は, 自 自身の身体の変化 を敏感に察知し, 何か変化を感じたからといってすぐに 受診するのではなく, 感じた変化の根拠を自 で え, わからないことがあれば経験者や医療者に相談・確認し た上で, 自 の身体に何が起こっているのか, 自 は何 をするべきかを判断し行動に移していた. このような過程で女性が自 の身体と向き合い, 自 の身体から発せられる声をキャッチする能力を養い, ま たそこで得た自 の身体感覚や判断を蓄積することによ り, はじめて体験する変化にも柔軟に対応できるような セルフケア能力が養われるのではないかと える. この 過程を経ずにすぐ受診して医療者の判断や援助に頼って しまうと, その時点では問題は解決するだろうが, セル フケア能力の向上に結びつけることは難しい. 宗像 は, セルフケアを患者自身が専門家の協力を得ながらも, 自 で え, 判断し, 選択して, 自己の 康問題にとりくむ こととしている. 医療機関にかかる前段階の自 の身体 と向き合い自 で え行動することが重要であり, それ が本来のセルフケアといえよう. 妊娠期の女性のセルフケア能力を高めるための看護実践 への示唆 本研究結果の実践への示唆として, 妊娠期の女性のセ ルフケア能力を高める次の 4つの援助を提案する. 1. 女性が感じた身体の変化やその感覚について具体的 に引き出し, 意識的に自 の身体と向き合い, 自 で 判断することを促す 自 の身体感覚に意識を向け, その変化を感じとるこ とは, セルフケアを行うにあたって必要最低限の能力で あり, セルフケアの実践とセルフケア能力の向上におけ る大切な要素といえる. この能力を伸ばしていくために, 看護者はまず女性が自 自身の身体に関心を持つような かかわりをすることが必要である. 妊娠経過において, 女性が感じた身体の変化やそのときの感覚をより具体的 に表現することを促し, 明確化してフィードバックする ことで, 女性は自 の身体に目を向けることができ, 変 化を意識的に感じとることができると える. 2. 専門的視点からセルフケアについての振り返りを 行って支持または訂正を行うことにより, セルフケア 能力を高めるように経験の蓄積を促す 女性自身が行ったセルフケアに対して, 看護者として 専門的な視点から女性の判断やセルフケア行動を評価 し, 支持または訂正することも, 女性が正しいセルフケ アを行い, 次回へと応用させていく上で必要であると える. 3. 女性のセルフケア能力を補助, 強化するために夫婦 で妊娠経過を共有し, 康課題に対処するなど, 夫婦 が協働できるように支援する 夫への積極的な働きかけを行なった対象者は, 主人 にフォローしてもらわないとやっていけなくなっちゃう ので, 彼に妊娠に伴う心身の変化を説明しました. 私こ うなるからよろしくみたいな. 泣いてもイライラしても 私はとめられないから気にしないでみたいな感じで」, 彼はちょっとでも私が具合が悪いのが かるとすぐ寝 とけって言うんです. 一日寝れば治って楽だからって. そうやって, がんばってしまう私にブレーキをかけてく れたので, じゃあ寝ようかなとなるべく無理しないで休 養をとるようにしました」と, 心身の変化に対して決し て自 だけで対処しているわけではなく, 夫にサポート を求め, 夫も妻の異変に気づきアドバイスを行なってい た. これは, 夫の存在が精神的サポートとなることはも ちろん, 夫が客観的に女性の様子を観察しフィードバッ クすることで, 女性は自 では気づかなかった心身の変 化を認識することができ, セルフケアへとつなげること ができていたということである. このことから, 妊娠期 のセルフケアの実践において, 夫は女性のセルフケア能 力を補助し, さらに強化する機能を果たしているといえ る. 女性は自 自身の感覚に加えて, 夫からみた客観的 な情報を得ることにで, セルフケア能力を高めることが できると える. 4. セルフケアの実践に結びつくような個別的で具体的 な情報を提供する 対象者は, ただ豊富な知識や情報を得るのではなく, 自 の条件に合い生活の中で必要・有用な情報を, その 内容に応じて選択した対象から得て活用するという, 質 的な情報収集を行っていた. 自 に合った情報を選択し 取り入れることはセルフケアの実践において重要な要素
であり, 看護者の情報提供の仕方いかんで, 自 の身体 に意識を向け自 を知ることができるか, すぐに受診す るか行動が変わってくることもあるだろう. 何かあっ たら病院に連絡をください」, お腹が張ったら休んでく ださい」というように,妊娠・出産に関する知識や方法に ついて概念的に教えたり, 漠然とした助言をするのでは なく, お腹が張るとはどういう感じ方なのかという身体 感覚を含め, こういう状態のときはこうする」といった 具体的な情報提供を行う必要がある. そのためには看護 者自身が,妊娠・出産にかかわる身体感覚について,女性 たちがどのように感じているかという生の言葉を集め, 概念的な教科書上の知識と生の言葉や体験を統合させた 実践的な情報を蓄積していくことが必要だと える. 本研究の限界と今後の課題 本研究のデータは後ろ向き調査によるものであり, 出 産後 1年程度経過した対象者では妊娠期におけるセルフ ケアについて語られなかった内容もあると えられる. より詳細なデータを収集するには, 妊娠期から産褥早期 にかけ数回にわけた縦断的調査を実施するなど, 対象者 の記憶が鮮明なときに調査時期を設定することが望まし い. また, 調査地である沖縄県の離島という地理的な環 境条件により, データに偏りがある可能性がある. 過疎 地域の山間部など別の環境条件で生活圏に医療機関がな い場合には, 異なるセルフケアの特徴があることも え られる. 今後は, 多様な環境や医療機関を容易に利用できる環 境にある女性との相違についても比較調査し, 妊娠期に おける女性のセルフケアに影響する要因の 析やセルフ ケア能力を高めるための支援についてさらに検討してい きたい. 謝 辞 本研究をまとめるにあたり, 快くインタビューに応じ てくださった対象者の皆様, 沖縄県八重山福祉保 所を はじめとする関係者各位に心より感謝いたします. 引 用 文 献 1. 村上明美. 自己の出産に十 満足していると評価した女 性が出産の際に抱いた思い. 日赤看大紀 2001; 15: 23-33. 2. 萩村一美 (編): ニホン・ミック 切り抜き速報 医療と 安全管理 集編 2006; 7: 24-28. 3. 津田 彰 : 康行動のモデル. 日本 康心理学会 (編): 康心理学基礎シリーズ 4 康教育概論. 東京 : 実務 教育出版, 2003: 17-41. 4. 工藤美子 : 女性のヘルスプロモーション.吉沢豊予子,鈴 木幸子 (編): 女性の看護学 母性の 康から女性の 康 へ. 東京 : メヂカルフレンド社, 2000: 138-143. 5. 附美奈子 : 沖縄県離島町村における妊娠・出産・育児に 関 す る 調 査 平 成 16-17年 度 科 研 費 研 究 成 果 報 告 書. 2006. 6. 坂本雅子. 自 の 康を自 でつくれるこども−現代社 会のなかで−. 教育と医学 1997; 45 (8): 1066-1072. 7. Berelson, B: 稲葉三千男, 金圭煥 (訳): 内容 析. 東京 : みすず書房, 1957: 1-79. 8. 舟島なをみ : 質的研究への挑戦. 東京 : 医学書院, 1999 : 42-49. 9. 園田恭一. 康概念とヘルスプロモーション.日保 医療 行動会報 2006; 4: 24-36. 10. 宗像恒次. セルフケアとソーシャルサポートネットワー ク. 日保 医療行動会報 2006; 5: 1-17.
Study on Self-care by Pregnant Women
with No Access to a M edical Institution
Kyoko Kunikiyo,
Kumiko Nakajima,
Shinobu Sakamoto,
Hiroko Arai,
Yukiko Nagaoka
and Yoko Tokiwa
1 School of Health Sciences, Faculty of Medicine, Gunma University 2 Keio University Faculty of Nursing and Medical Care
Objective: The purpose of this study was to clarify the self-care characteristics of pregnant women with no access to a medical institution. M ethods: Nine mothers who lived on remote Okinawan islands and had given birth within the past year were interviewed about self-care during pregnancy by a semi-structured method,and the results were analyzed. Results: The subjects were conscious of their health and had been able to manage it themselves. Obtained information from every source by myself, and thought and acted by myself to prevent problems and to maintain a normal pregnancy : was the reply they selected to describe their self-care during pregnancy. Conclusions: Four supports were suggested by the results of the analysis to improve the self-care ability of pregnant women : promoting women s conscious interest in their body and ability to judge their physical condition themselves, providing an evaluation of their self-care from a professional viewpoint; helping them to be able to get cooperations of their husbands: and providing individual and concrete information.(Kitakanto Med J 2007;57: 173∼182)