第2節
総合学習「BIWAKO TIME」
1.研究主題によせて 受験競争の過熱化や偏差値偏重の教育が問題とな った1970年代以降,学習指導要領改訂のたびに「ゆ とり教育」「生きる力」への方針転換が図られ,教科 内容・時数の大幅削減,総合的な学習の創設などが 進められてきた。しかし一般的には学力低下を危惧 する声も多く,「ゆとり教育」や「総合的な学習」が学 力低下を招いているとする論調も根強い。 そこで,本校が昭和58年度から実践を積み重ねて きた総合学習「BIWAKO TIME」が,生徒にとって どのような学習効果をもたらしているのか,調査・ 検証することが本研究のねらいである。 以下,現在の「BIWAKO TIME」の概要について 説明するとともに,今年度の「BIWAKO TIME」の 実践,学習効果検証のための研究と成果について述 べることとする。 2.総合学習「BIWAKO TIME」の概要 「BIWAKO TIME」の学習は,20年以上に及ぶ長 い歴史を持ち,本校が全校体制で臨む学習である。 環境・郷土を題材とした「学び方」を学ぶ調査研究型 の総合学習であり,必修教科等の学習で得た知識や 体験を新たに認識し,より高度な知識体系へと再編 化することを目的としている。 以下,具体的に「BIWAKO TIME」の学習につい て紹介する。 (1)異学年合同 1年生から3年生までが入りまじった研究グループ 。 , , を構成させる そして 各学年ごとの目標を設定し グループ内でも目標に合うように役割分担をさせ る。 この学習形態により,下級生が上級生から自然と 「学び方」を学べるように配慮している。 (2)領域別の学習 生徒は「自 然 」 , 「 人 と , , 自然」 「人」 , 「人と社会」 「社会」の5つ の 領 域 に 分 か れ , 担 当 教 師 と と も に 研 究 を 進 める。教師1名あた り約30名の生徒を担 当する。 (3)サテライト 自然 自然 人人 「BIWAKO 「BIWAKO TIME」のTIME」の特徴特徴 1つの 1つの領域領域に所属に所属 社会 社会 人と 自然 人と 自 然 人と 社 会 人と 社会 興味・関心から、1つの領域を選択 図1 領域別の学習 コンピュータ・図書・電話等,生徒の学習をサポ ー ト す る 教 室 (サテライトル ーム)を設け, B I W A K O 「 」の時間中 TIME は自由に利用す ることができる ようにする。 , 。 各サテライトルームの役割は 表1の通りである 図2 サテライトルーム 表1 サテライトルームの役割 ベースルーム ベースルーム 分科会教室 分科会教室 サテライトルームの活用 サテライトルームの活用 サテライトルーム サテライトルーム 職員室 職員室 「BIWAKO 「BIWAKO TIME」のTIME」の特徴特徴 サテライトルーム サテライトルーム 情報 情報図書図書室室 サテライトルーム サテライトルーム 理科 理科室室 サテライトルーム サテライトルーム 家庭科室 家庭科室 サテライトルーム サテライトルーム コンピュータ室 コンピュータ室 「BIWAKO TIME」 (情報図書室) 図書 調べたい内容について書籍を調べたり,先輩の残した学習成果( グループファイル )を閲「 」 覧したりできる。 「グループファイル」とは,収集したパンフレットや資料を研究過程に沿って綴じ込んでい った一種のポートフォリオである。これを配架(3年保管)し,数に限りのある郷土資料を補 ったり,前年度までの成果や課題を調べさせて,研究がより深まるようにさせたりして活用し ている。 利用者には「なんとなく調べにくる」グループが多いので,申請書に具体的に何を調べたい のかを書かせたり,カウンターから積極的に声をかけたりしている。また,BT開始前の4月 に効果的な情報の検索方法について一斉学習(初歩的なレファレンス演習)を行うなど,利用 指導も行っている。 (コンピュータ室) コンピュータ , , インターネットを活用して情報を収集したり 調査活動を通して集めたデータを加工したり 発表のためのプレゼンテーション資料を作成することができる。 家庭で調べられる内容は,事前に調べておくよう指導し,グループで協力して調べなければ ならないことを中心に利用させるようにしている。 インターネットから得た情報をそのまま移し替えるような研究にならないように,BT開始 前の4月に効果的な情報の検索方法について一斉学習を行っている。また,目的意識を持って 活動させるために,申請書を詳しく記入させたり,一台あたりの利用人数を制限するなどの事 前指導を行っている。さらに,活動の様子を1グループずつ評価して,その都度,各分科会担 当者に返している。 (家庭科室) ものづくり 調理実習や被服製作,模型作りを行うことができる。 おもに「D人と社会」「E社会」領域のグループが利用することが多く,本年度は,滋賀の伝統 料理を作ったり,滋賀のおみやげとしてお菓子を作るなど,調理実習を行うグループや,ろう そくを作るために利用したグループがあった。 実習が安易なものにならないように,分科会の担当者と連携を取りながら,準備物や実習の 方法について指導した上で,利用させるようにしている。特に,滋賀の伝統料理を作る場合, 必要な食材(湖魚など)を買い付けに行くところから生徒にさせて,食材そのものの入手が簡 単ではないことも体験させるようにしている。 (理科室) 実験 理科室は本年度より開設したサテライトルームである。これまで,各分科会の担当者で指導 していた実験指導や理科的な研究に関わるアドバイスを一括して行う目的で開設した。 「A自然」「B人と自然」領域のグループが利用することが多く,研究そのものの方向性につい ても相談することが多かった。 例年,琵琶湖の水を採取して,パックテストを行ったり,顕微鏡でプランクトンを観察した りするグループが多数ある。本年度は,鍾乳石を作ったり,ブルーギルの胃の内容物を調べた り,ヨシを使った浄水,地元のマンガン鉱山のマンガンで電池作りをするグループなど多様な 実験が繰り広げられている。そのため,次の準備物を揃えさせたり,事故のないように十分配 慮して指導を行っている。 (職員室) 渉外 職員室では,校外学習に向けて電話やメールでアポントメントをとったり,サテライトルー ムの利用や物品の利用に関わる申請書を書いたりするグループの指導を中心に行っている。 電話をかける場合は,ワークブックに聞きたいことや話す内容をあらかじめ記入させ,その 内容について事前に指導している。 校外学習が集中する時期には,対外的な連絡をとるグループが多く,その支援に追われるこ とが多い。 人と出会ったり,新しい体験をしたりすることで研究を深めようとするグループの活動を支 援するためにも,校外学習の目的を確認し,明確にさせるようにしている。(4)中間発表会 学習の折り返し地 点である夏休み前の 時間に,生徒がお互 いに現在の調査研究 活動のすすみ具合を 確認し合い,今後の 課 題 と そ の 解 決 方 法 について助言し合う。発表会はポスターセッション の形式で行う。 (5)領域別発表・全体発表 領域ごとの発表を 経て,各領域代表に よ る 全 体 発 表 を 行 う。 領域別発表は保護 者も参観し,これま での成果を評価して もらう。 , , また 環境に関わった特に優秀な研究については 後日,県民環境学習のつどいに附属中学校代表とし て参加することとなった。 (6)学習日程 夏休みをは さんだ約40時 間の学習であ り,長い時間 を 使 っ て 1 つ の課題にじっ くりと取り組 むことができ る。 校外学習の機会が持てるよう,午後2時間連続で 学習することが多い。表2は,今年度の学習日程で ある。 本年度は,生徒の活動の様子を公開し,日頃の活 動が具体的にどのような形で行われているのか参観 していただいた。 公開は,6月30 日 に 行 い , 調 査 研 究 の 方 向 性 が 定 ま り , 校 外 で の 学 習 を す で に , 行ったグループ 中 間 発 表 に 向 け て 準 備 を 行 う グ ループなど多様な 姿を参観していただけるようにした。 写真1 中間発表会 写真2 領域別発表会 写真3 校外での学習 写真4 発表のリハーサル風景 (7)「BIWAKO TIME」の成果保存・活用方法 学習において,個人で学習を記録するワークブッ 時数 日時 学習内容 備考 1・2 4 月 28日 B T と は ( 1 年 BTのねらいや学習の進め (金) 生) 方についての説明を聞く。 3・4 5 月 1 日 BT基礎 サテライトルームの利用の (月) 仕方や効果的な情報収集の 方 法 に つ い て の 学 習 を 行 う。 5・6 5 月 16日 BT基礎 効果的なまとめ方について (火) 全員で講話を聞く。 7・8 5 月 17日 全体ガイダンス 全員でガイダンスを聞き, (水) 希望する領域を決定する。 9・10 5 月 19日 領 域 オ リ エ ン テ 領域ごとに別れ,基礎学習 (金) ーション を行う。 ・ 5 月 日 研究テーマ決定 研究テーマを決定する。 11 12 24 (水) ・ 6 月 2 日 グ ル ー プ 決 定 ・ グループを決定し,具体的 13 14 (金) 企画書作成 な研究計画を立てる。 ・ 6 月 6 日 調査研究活動1 15 16 (火) ・ 6 月 9 日 調査研究活動2 校外での活動がやりやすい 17 18 (金) 日。 ・ 6 月 日 調査研究活動3 校外での活動がやりやすい 19 20 20 (火) 日。 ・ 6 月 日 調査研究活動4 校外での活動がやりやすい 21 22 26 (月) 日。 ・ 6 月 日 調査研究活動5 教育研究発表協議会 23 24 30 公開 (金) ・ 7 月 4 日 調査研究活動6 25 26 (火) ・ 7 月 7 日 中間発表会 これまでの調査研究活動の 27 28 (金) 成果を発表すると共に,こ れからの課題を確認する。 ・ 7 月 日 中 間 発 表 会 の 反 発表会の反省をもとに,夏 29 30 10 (月) 省 , 夏 休 み の 計 休 み の 活 動 の 計 画 を 立 て 画 る。 夏休み 領域担当の先生と相談し,夏休みを利用した調査・研究 活動を行う。 ・ 9 月 5 日 夏 休 み の 活 動 の 夏休みの活動の成果をまと 31 32 (火) ま と め と , 今 後 め,今後の学習の計画を立 の計画 てる。 ・ 9 月 7 日 調査研究活動7 夏休みまでの調査研究活動 33 34 (金) で 足 り な い 点 を 補 う と 共 に,発表の準備をする。 ・ 9 月 日 調査研究活動8 校外での活動がやりやすい 35 36 12 (火) 日。 ・ 9 月 日 調査研究活動9 37 38 13 (水) ・ 9 月 日 調査研究活動 発表のリハーサルを行う。 39 40 15 10 (金) ・ 9 月 日 領域別発表会 41 42 20 (水) 9 月 日 領域別反省会 発表会の反省をし,領域代 43 22 (金) 表を決定する。 ・ 9 月 日 全体発表会 44 45 26 (火) 9 月 日 反省とまとめ 今年の研究をしっかりまと 46 27 (水) め,今後の学習につながる ようにする。 ・ 月 3 日 3年間のまとめ 自分の3年間の「BT」を 47 48 10 (火) (3年生) 振り返り,まとめる。 ・ 月 日 3年間のまとめ 49 50 10 10 (火) ・ 月 日 3年間のまとめ 51 52 10 12 (木) ・ 月 日 3年間のまとめ 53 54 10 13 (金) 表2 本年度の学習日程
ク 以 外 に , 写 真5のように, グ ル ー プ ご と に 収 集 し た 資 料 等 を 整 理 す る た め の フ ァ イ ル を つ く っ て い る 。 フ ァ イ ル に は 収 集 し た資料の他,発表時の原稿やOHPシート,写真, FDやMO等でデータも保存させている。 これまでの ファイルは情 報図書担当の 協力の下,写 真 6 の よ う に 領域ごとに分 類し,学校図 書館に保管さ れている。 さらに,ファイルが保管されている書架のそばに は「BIWAKO TIME」で利用する,郷土滋賀に関す る図書もあわせて設置するなど,生徒が研究の参考 と な る 資 料 を 検 索 し や す い 環 境 を 。 整えている フ ァ イ ル は 現在約300冊 保 管 し て い る。 3.今年度の生徒の研究活動 今年度の研究グループは,全55グループである。 また,各領域・各グループの研究テーマは【表3】 の通りである。どのグループも上級生のリーダーシ ップのもと,大変興味深い研究成果をあげることが できた。 表3では,領域名をAからEのアルファベットで 示している。 A領域は「自然」,B領域」は「人と自然」,C領域 は「人」,D領域は「人と社会」,E領域は「社会」をそ れぞれ示している。 本年度の傾向としては A領域「自然」 D領域「人, , と社会」への希望が多く,分科会数が3つとなった。 グループによっては,2年生がリーダーとなると ころもあったが,3年生が分科会全体のリーダーと して他グループの支援も行っていた。 写真5 グループ別ファイル 写真6 分類されたファイル 写真7 資料を検索する生徒 上記の研究グループの中で,各領域代表として選 出された研究グループとそのテーマ名は次の通りで ある。 NO テーマ NO テーマ A11 ミニ琵琶湖をつくろう C21 食からみた滋賀 物からみた滋賀 A12 植物のエナジーパワー C22 伝統と未来
A13 鮎 一匹 600円 C23 The Addressers of the PEACE~平和発信人 ~
A14 外来魚と固有魚の環境適応能力 C24 ペットと人間の共存 Search for Limestore cave in Shiga!! We are the Craftsman
A15 D11 飴細工
A21 滋賀の山々 D12 飴細工職人<魂> A22 空の色,気候が琵琶湖に与える影響 D13 ヘル滋~賀~ヘルシーを求めて~ A23 ハゲ山は語る D14 湧き水のなぞ?! A24 School's Trees D15 Let's おみやげ調査隊 A25 湖と陸 D16 近江屋下~滋賀をつくる~ A31 川や湖の生物と水質との関係 D21 琵琶湖の水と景観 A32 河川の水質調査 D22 世界で活躍する近江商人~商人と企業家~ A33 水が土と植物に及ぼす影響 D23 海外から伝わった食べ物 A34 ヨシの浄化作用とその理由PARTⅡ D24 滋賀のSweets調べ隊! A35 雲洞谷のマンガン喫茶 D25 知られざる滋賀の特産物 B11 温故地震~過去・現在・未来~ D26 現在の滋賀から見た世界に駆ける近江商人 B12 守れ,人類!~瀬田川洪水をくい止めろっ! D31 国友四史 ~
B13 Let's cleanly human life D32 穴太衆と忍者
B14 EARTH+PEOPLE=OUR SHIGA D33 琵琶湖に眠る秘宝~琵琶湖真珠の謎~ B21 自然が自然を救う~科学の力で水質改善~ D34 琵琶湖周航の歌の心 B22 何が今の琵琶湖を作ったのか D35 伝統産業 B23 湧き水に関わる人と伝説 D36 黒壁 in 長浜 B24 Heartful Nature~心を豊かにする自然~ E11 昔から変わらない物,変わる物 C11 商店街に未来はあるか!?~商人パワー大集 E12 全ての人に住みやすい社会 結~ Shiga's future C12 がんばれ滋賀県~これからの未来に向かって E13 ~ C13 EDUCATIONAL SPIRIT IN 滋賀 ~教育 E14 滋賀の城のつくりと戦術 魂~ C14 探せ!作れ 住みよい街!! E15 滋賀ディズニーランドを作ろう!! C15 校歌に隠された滋賀への想い 表3 今年度の研究テーマ一覧
A領域:A25 「湖と陸」 B領域:B11 「温故地震 ~過去・現在・未来~」 C領域:C11 「商店街に未来はあるか!? ~商人パワー大集結~」 D領域:D31 「国友四史」 E領域:E13 「Shiga's future」 全 体 発 表 会 で の 様 子 は 次 の よ う な も の で あ る。 A25「湖と 陸」は,滋賀 の 森 林 の 現 状を身近な山 に出かけて調べた。 さらに,森林を守ることがどのように琵琶湖と関 わっているのか調査し,県民ひとりひとりに何がで きるのか提言した。 B11「温故地震~過去・現在・未来~」は,滋賀の 活断層について調べて,古くから日本にある家屋の 免震機能や災害から身を守る方法について調査した ことを織り交ぜながら防災を呼びかける発表を行っ た。 C11「商店街に未来はあるか ?~商人パワー大集! 結 ~ 」 は , 大 津 市 内 の 商 店 街 と ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト で そ れ ぞ れ 1 0 0 人 に ア ン ケ ー ト を 実 施 し , 結 果 か ら 推 察 さ れ る 内 容 に つ い て 発 表 し た。人と人と のつながりや 今後の商店街 の発展にとっ て何が大切な のか,自分た ちの求める地 域像などについ 琵琶湖森林づくり条例の目的
森林
森林所有者 県民 管理 公益森林
森林所有者・県民 管理 さまざま な 恩恵 利益 これまで これから スーパーを利用する理由 22% 8% 4% 32% 29% 4% 1% 自宅に近い モノが安い 品質がいい 品数が多い 駐車場がある 広い その他 スーパー編 図3 A25「湖と陸」発表資料 図4 C11「商店街に未来はあるか!?」 発表資料 写真8 C11グループの校外学習 て意見をまとめた発表で,緻密な研究成果があげら れていた。 D31「国友四史」は,国友一貫斉について調べ,当 時の歴史的背景や人々の暮らしまで踏み込んで調査 した。歴史的な事実から現代に生きる我々が学ぶべ きことは何か考え,興味深い発表を行うことができ た。 Shiga's E 1 3 「 」 は , 滋 future 賀の経済や環境 について広い視 野で調査し,提 言をまとめた。 いずれのグル ープも大変興味 深い内容であっ た。 また,全体発表会の場では,他のグループも自分 たちの研究と結びつけて質問したり,意見を述べた りしており,熱気のある発表会となった。 4.今年度の重点的取り組み 今年度は,これまでの経験を生かした上で,さら に生徒の学習が深まるように以下の2点について重 点的に指導を行った。 ①「BT基礎」の設定 ②領域での共通指導方法の確立 以下,今年度の重点的取り組みについて具体的に 述べることとする。 (1)「BT基礎」の設定 近年,調査研究活動の初めの段階で,生徒がコン ピュータを利用して,さまざまな検索を行うことが 多くなった。 しかし,検索した内容を深く吟味することなくそ の後の調査研究活動のよりどころとすることが多 く,情報を鵜呑みにした結果,研究そのものが誤っ たものになることがあった。 また,異学年合同のグループで活動する際,3年 生と1年生で情報収集に関する知識の差が大きく, 単に情報を集めるという作業に多くの時間がかかっ てしまい,本来研究したい内容までうまくたどり着 けないグループもあったことから,今年度は特に情 報収集や情報の吟味,さらに効果的な情報発信など 「情報」に関する点に絞って基礎学習の場を設けるこ ととした。 学習を設定したのは,「BIWAKO TIME」全体の ガイダンスを行うより前である。1学年全体を対象 とし,学校図書館を会場にして各学年計4時間の指 【図5】D31「国友四史」発表資料導を行った。 授業者は,サテライトルーム担当の教師である。 図書やコンピュータでの情報検索・情報収集には どのような違いがあるのか,情報を効果的に収集す るためにはどのような工夫をすればいいのかという 内容については図書室サテライトの教師が指導し, 情報の比較や情報源の確認などによる情報吟味につ いては,理科室サテライトの教師が指導した。 また,情報の効果的な発信については,滋賀大学 の宮田仁先生に講演をお願いした。講演の中で教え ていただいた情報発信に関わるAIDOMAの考え 方は今年度の全体発表会でも発揮された。 これまでも本校の情報生活科では,情報に関する 様々な学習を行ってきたが,「BIWAKO TIME」に 必要な知識に特化して行った「BT基礎」は,情報生 活科で学んだ知識を統合する意味合いもあり,調査 研究活動の深化に大きく影響したと考えている。 (2)領域での共通指導方法の確立 こ れ ま で , 各 領 域 で は 担 当 す る 教 師 の 裁 量 に よ っ て さ ま ざ ま な 指 導 方 。 法がとられてきた 1時間ごとの運営 の 仕 方 に も ば ら つ き が あ り , 生 徒 は 毎年異なった方法で学習を進めることとなった。 そこで,今年度は領域の指導方法をある程度パタ ーン化し,共通して運営することとした。 共通としたのは,以下のような点である。 ①どの領域でも,初めと終わりは全グループをベー スルームに集合させ,現在の研究の進行状況や課題 について交流する場を持つこととする。グループリ ーダーに毎回報告させ,教師や他のグループからア ドバイスを受けさせる。 ②毎時間の活動 場所を各グルー プリーダーに板 書させ,担当の 教師以外でも全 てのグループの 活動状況を把握 できるようにす る。 ③各領域の教師同士が情報を交換し,領域全体で指 導をしていく体制をとる。 上記のような指導を共通して行うことで,指導の 一貫性が生まれた。また,より多くの教師がひとつ 写真9 領域での指導の様子 写真10 理科室サテライトでの実験 ひとつのグループの活動状況を把握することができ るようになり,細かい支援もできるようになった。 さらに,生徒にとっては同じ領域の他グループがど のような研究を行っているのかわかるようになった ため,どのグループも他との違いや共通点を意識し ながら研究を進めることができた。 5.総合学習「BIWAKO TIME」の学習効果検証 昨年度,「BIWAKO TIME」の学習効果検証を行 うために在校生・卒業生を対象としたアンケートを 実施した。今年度も昨年度に引き続き,在校生を対 象にカリキュラム評価アンケートを実施した。 以下,アンケートの内容と特に昨年度と比較して 顕著な違いが見られた点について述べることとす る。 アンケートは,すべての学習を終えた直後に実施 した。 図6 「BIWAKO TIME」の指導案
A 学習評価 (1:はい 2:いいえのどちらかで答えてください) 1 あなたは,昨年度までの生徒の調査結果や制作 物を参考にして学習を進めましたか。 , , , 2 あなたは 上級生から教えてもらったり また 下級生に教えてあげたりしましたか。 3 あなたは,男女間で学習の協力をしましたか。 4 あなたは,同じベースルームの他のグループの 学習内容を参考にして学習活動をしましたか。 5 あなたは,同じベースルーム以外の班と情報交 換をしたりして学習の交流を行いましたか。 6 あなたは,昨年度の自分の学習成果(一年生の 場合は小学校で習ったこと)と,今年度の学習 内容を関連させましたか。 7 あなたは,学習の途中でわからなかったことが あったら他のベースルームの先生などに質問し たり,指導をしてもらったりしましたか。 8 あなたは,発表会で,他の領域の発表内容と自 分の班の学習内容とを比較して関連のあること を発見しましたか。 BIWAKO 9 あなたは,教科で学んだことを「 」の時間で生かすことがありましたか。 TIME 10 あなたは 「, BIWAKO TIME」を通して 「私, は郷土の滋賀県に住んでいるんだ 」という実。 感を持ちましたか。 11 あなたは 「, BIWAKO TIME」を通して 「今, まで自分の郷土について知らないことがたくさ んあった 」という実感がありましたか。。 12 あなたは 「, BIWAKO TIME」を終えた今,来 年度の学習で(三年生の場合は,今後の学習に おいて)調べてみたいことがありますか。 13 あなたは 「, BIWAKO TIME」を通して,びわ 湖の課題や重要性,生活との結びつきなどにつ いての発見がありましたか。 14 あなたは,自分なりの考えで学習を進めたりま とめたりしましたか。 15 あなたは 「, BIWAKO TIME」を通して 「今, まで,なにげなく考えていた郷土について新し い驚きがあった 」と感じましたか。。 16 あなたは 「, BIWAKO TIME」で,新しい学 び方や発表の仕方を習得しましたか。 Aの学習評価の中で,昨年と比較して「はい」の占 める割合が高くなったのは,項目4の「あなたは,同 じベースルームの他のグループの学習内容を参考に して学習活動をしましたか。」についてである。 昨年度は 「はい」と答えた生徒は約4割 「いいえ」, , と答えた生徒は約6割であったのに対し,今年度は 「はい」と「いいえ」がほぼ同じ割合になった。 , , , これは 今年度 グループ同士で情報交換したり アドバイスをしあったりする場面を毎時間持たせた ためではないかと推測される。 しかし,「はい」と答える割合が極端に多くならな かった点にも注目すべきであろう。理由については 今後も研究を深める必要があるが,おそらく他のグ ループと違うオリジナリティーのある研究を目指す 姿勢の表れではないかと考えられる。 B カリキュラム評価 ( ) 17 時間数について 1~4の中から選んでください 1.「BIWAKO TIME」は廃止して他の活動 の時間にしてほしい 2. もっと少なくしてほしい 3. もっと増やしてほしい 4. 今のままでよい 指導について (1:はい 2:いいえのどちらかで答えてください) 18 教師からの指導は,自分で分からないことが出 てきたときだけの最小限のものでいい。 19 調査・研究の進め方などについて,授業形式で 十分に指導してもらいたい。 20 学習目標のたて方,テーマの選び方,学習の仕 方,まとめ方と発表の仕方などについて常時細 かく指導してほしい。 21 学習の進め方についての詳しい解説をのせた学 習ガイドブックが必要だ。 22 学習活動のよしあしについて教師から意見や評 価を言ってほしい。 班編制について(1~4の中から選んでください) 23 異学年混成の班について 1. 混成にはなりたくない 2. テーマが同じであればなってもよい 3. できればなりたい 4. ぜひ異学年の人と学習してみたい 24 男女混成の班について 1. 混成にはなりたくない 2. テーマが同じであればなってもよい 3. できればなりたい 4. ぜひ男女で協力して学習したい 25 班人数について 1. 個人研究をしたい 2. 二人がいい 3. 三人から五人がいい 4. 六人以上がいい 26 領域の志望について 1. 第一志望だったので積極的に学習した 2. 第一志望だったが積極的になれなかった 3. 第一志望でなかったので積極的になれなか た 4. 第一志望ではなかったが積極的に学習した 上記Bのカリキュラム評価の中で,昨年度と大き く変わった項目はなかった。項目17で8割の生徒が 「BIWAKO TIME」の学習をこのままの時間数で設 , , 定してほしい さらに増やしてほしいと答えており より充実した研究を行いたいという意志が各学年と もに見られた。 項目22については,「はい」と答えた割合が7割近 くにのぼった。自分たちの研究の方向性について客 観的な評価を求めていると考えられ,今後領域内で の指導方法や評価の場面をどのように設定していく
べきかという新たな課題を我々に示唆している。 C 学習要因(1~4の中から選んでください) 27 あなたの班の学習成果 1. 目標をほぼ達成して成功した 2. いくつか課題が残ったが,やや成功した 3. 改善すべき点も多く,やや失敗した 4. 目標を達成できず失敗した 28 上の質問に関連して 「成功した」または「や, や成功した」と答えた人は成功の要因を 「や, や失敗した」または「失敗した」と答えた人は 失敗の原因を,下から三つ選んでください。 1. 班のリーダーシップがよかった(悪かった から) ( ) 2. 班の協力性がうまく保てた 保てなかった から 3. 班の学習態度が積極的(消極的)だったか ら 4. 班のメンバーが友好的(非友好的)だった から 5. 資料が豊富にあった(少なかった)から 6. 教師の適切な指導が得られた(得られなか った)から 7. 研究テーマの選択が適切だった(適切でな かった)から 8. 学習計画をうまく立てることができた (できなかった)から 9. 校外の人々の援助を受けることができた (できなかった)から 10. 資金が十分あった(なかった)から 11. 学習時間が十分あった(なかった)から 12. やりたいことがはっきりしていた (していなかった)から 13. 学習の仕方が十分身に付いていた (いなかった)から 14. その他( ) Cの学習要因については,8割近い生徒が自分た ちのグループの学習成果を評価している。項目27で 1ないし2と答えた生徒がほとんどで,多くの生徒が 学習に充実感・達成感を感じられたようである。 成功の理由としては,「目標がはっきりしていた」 「低学年のみんなが積極的に活動してくれた」「役割 分担がしっかりできた」などがあげられていた。注 目すべきは「1,2年生の活動が積極的であった」と記 述する3年生が多かった点である。 これは,今年度から行っている「BT基礎」の影響 ではないかと考えられる。1,2年生に,研究に必要 な基礎知識が身に付いたということが推測されるの と同時に,一定の動機付けにもなったであろうこと がうかがい知れる。 今後,「BT基礎」の内容をどのように精選し,積 み上げていくかが「BIWAKO TIME」の研究を深め る鍵になりそうである。 6.最後に 昨今の論調で は,総合学習の 存在意義そのも のが過小評価さ れがちである。 学習後すぐに数 値による測定が 可能な側面のみ を取り上げる傾向 が顕著であるともいえる。 総合学習「BIWAKO TIME」が始まり,今年度で2 3年になる。23年間かけて育まれた学習の土壌は本 校の財産である。 総合学習が10年,20年という長い期間を経た時に どのような成果が得られるのかを見据えた研究が今 後も不可欠であり,本校が担う役割は大きいと考え る。 今後も引き続き,総合学習「BIWAKO TIME」の 学習効果検証を行っていくとともに,近視眼的な学 力論争に対して一石を投じ,日本の教育の方向性に 大きな示唆を与える取り組みを続けていきたい。 (白石 牧恵) 写真11 琵琶湖岸での学習風景