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技術革新の産業組織論的実証分析

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技術革新の産業組織論的実証分析ee

明  石  芳  彦

工 は じ め に  産業組織論におけるこれまでの実証分析の1つの中心的なテーマは「集中度 一利潤率」仮説である。いま,市場が完全競争的であるとき,特定産業の利潤 率が他の産業利潤率に比較して高ければ,資源(企業=資本)のスムーズな参 入が誘発される。この過程は,利潤率の産業問格差が存在する限り進行し,競 争均衡時にはそれらの均等化が達成される。もしも特定産業における高利潤が 「一定期問」を越えて維持されるとすれば,それは資源の自由な移動を防げる ような(参入障壁)要因が存在するか,そして(または)そうした状況を継続 せしめるような市場支配力を有した少数企業(独占的要素)が存在することを 意味している。このとき,一定期問を越えて高利潤を獲得できる原因は,多く の実証分析の中で企業の市場支配力,特に代理変数としての集中度に求められ てきた。しかしながら,例えば,1970年ごろまでの日本の経験にみる限り,集 中度要因(「集中度一利潤率」仮説)が市場需要の成長率,技術革新など他の 要因を全く排除してしまうほど強力に作用したとは認められていないように思   ユ  われる。そこでわれわれは,時間の流れを伴った局面での利潤率が単に市場支 配力のみではなく,例えば投資とか技術革新の効果などその他の要因に依存す る部分もあっただろうと考える。設備投資を媒介とするかどうかは別として,  *小稿の作成に当って,神戸大学の新野幸次郎教授,足立英之教授,山口犬学の安部一  成教授から有益なご指摘をいただいた。記して感謝します。ありうべぎ過誤は言うま   でもなく筆者に帰する。  1)例えば,植草〔27〕第9章(特に.pp.307一一11, pp.326・一35)を参照。

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      う それは技術革新の成果としての「革新利潤」である。  産業組織論における技術進歩・革新の取扱い(その定義は一様でない)は, ミクロ経済学における理論的アプローチと,若干の仮説の検証を中心とした実 証的アプローチとに分れる。けれども,このテーマがもつ固有の難しさなどの ため,それら2つのアプローチが密接に連動して展開されているとは言い難 し『∼。本稿の目的は,そうした問題には直接触れることなく,戦後日本の実態に ついてこれまでなされてきた実証的アプローチの方法と結果を展望し(∬節), 若干のプリミティヴな仮説を実証的に検討する(皿節),そして今後の分析を 進める上での問題点を整理する(IV節)ことである。

皿 従来の分析

 本節では,]1−1で従来の中心的な命題である「シュンペーター仮説」の内 容とその成立の当否を実証的に検討し,:n:一2では戦後日本の技術革新の動向 をも考慮した「技術導入・研究開発一→成長性」の論理を吟味する。さらに, 豆一3では生産関数を用いた技術革新・進歩分析の方法と若干の計測結果を示 しておく。そして,■一4では以上の実証的アプローチのかかえる問題点を指 摘する。  豆一1 「シュンペーター仮説」の実証的な検討  かつてシュンペーター〔22〕は技術革新(イノベーション)の内容とその規 定要因を詳細に分析している。その論点は次の2つの仮説に要約されるだろ う。   (1)技術革新に対する努力またはそれに基づく成果が,企業規模の拡大以 2) ここでいう技術革新とは新製品の開発と製法上の改善を意味する。そして技術革新  の成果はそれらの全ての効果を含むものとする。しかし,ある革新の成果がどの時点  の資源投入に対応するのかを特定化できないという難点はもちろん残されている。ま  た,小稿で取扱う技術進歩はその率(rate)に関するものであって,方向(direction)  とか型(type)などに関する分析は捨象されている。これらの論点については, Ma・  nslleia k⊥bJ, bcnerer LZI,」chap.15 を参照0 3) これらを展望したものとして,例えば.小田切〔18〕がある。

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      技術革新の産業組織論的実証分析  117  上の比率で増加するかどうか(またはそれと同一,それ以下の増加比率か)。  つまり,技術革新活動に関する大規模企業の優位性(規模の経済性)が存在  するのかどうか。さらには,その優位性がある企業規模までは存在していて  も,その水準を越えると消滅するというように,技術革新活動を行なう上で  の企業の「最適規模」が存在するのかどうか。   (2)市場構造が独占的または〔完全〕競争的であることと,技術革新活動  の活発さの程度とは対応関係にあるのかどうか。または,市場集中度が高い  ほど革新活動は不活性化されるのかどうか。 これらの仮説がもつ含意についてのヨリ詳細な検討は越後〔7〕,〔8〕に譲り, それらの仮説についての日本における実証分析の結果を整理してみよう。  〔A〕先づ,仮説(1)については主として次の3本の推定式によって計量的な 検討がなされている。     R :aeS+bo    ln R=a+P ln S     R ・a且5+a2S2+α353+b且 ここで記号は

    R喋膿=臨監研究員数など)

(皿一1) (皿一2) (ff−3)     5=企業規模変数=売上高(他に,総資産,付加価値額,従業員数,       自己資本など) である。また,(ff−1)式は単純回帰,(工1−2)式は変数間の増加率の弾 力性を調べる対数線型回帰, (豆一3)式はSの増大に伴うRの増加程度の変 化の仕方,つまり変曲点(とくに,最小最適規模を示す域値)と最大または最 小値(上限または下限規模)を調べる重回帰式である。  日本のサンプルによる計測は,今井〔13〕,植草〔25〕,〔26〕,土井〔5〕, 〔6〕,箱田・井口・田中〔12〕,明石〔1〕がある。それらの分析結果を総合 すると,(1)単純回帰式についてはいずれも正の相関を示している。(2)弾力性 分析について,製造業全体の分析からは,規模一投入のとき,1965∼79年β=

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 118 彦根論叢第219号 1.0∼1.1(74年のみ0.99)であり,投入活動に関しては企業規模問の革新活動 上の格差は見出されてない。他方,規模一産出のとき,1965∼75年についてβ は0.53から0.91,そして79年に0.95と一貫して上昇化傾向であった。個別産業 分析からは,規模一投入のとき,大まかな特徴として,1965・67・69・72年の 各年次に比べて,74∼79年においては化学が1以下へ,鉄鋼が1以上へとそれ ぞれ逆転している。また,規模一産出のとき,72年に全ての産業においてβ〈1 だったが,79年には11産業中8産業においてβ>1となっていた。そこで,特 許出願件数は製造業全体では企業規模の拡大につれて逓減的にしか増加しな い。けれども,個別企業についてみると,70年代の前半は製造業全体と同様だ ったが,後半には大規模企業ほど出願件数が増加するという関係に移行してい ることが明らかとなる。最後に,(3)3次式による変曲点規模の変動(物価調整 量の値)に関しては72年と79年を比較して製造業全体でみると,投入側(研究 費)では変曲点の大幅な縮小が,また産出側(特許数)については逆にその拡 大が見出されている。前者は企業規模の拡大に関して研究費がヨリ多く支出さ れるような領域が縮小したことを意味する。また,後者は企業規模に関する特 許という成果効率の改善,もしくは規模拡大に関する特許出願活動が活発化し た結果であると考えられる。  〔B〕 次に,仮説(2)について検討してみよう。仮説(2)の実証分析については その成果変数の選択の問題をはじめとして,今だ明確な接近方法さえ見出され ていないように思われる。そこでの難しさは,特定市場における「競争の程 度」をいかに把握するか,にある。換言すれぽ,技術革新の実現を促がす「革 新インセンチィヴ」に連結させうるような「競争」要因をどのような代理変数 に求めることが適切か,という点である。産業組織論においては「市場集中 度」が文字通り,市場構造の形態の上での「競争の程度」を示す変数である。 ただし,それは特に産業利潤率の規定要因として伝統的な価格理論から抽出さ れた変数であり,そのままの形で技術革新をめぐる競争の程度をどれだけ反映 しているのかは必ずしも明白でない。け’れども、技術革新を示す変数が「集中 度」によってどれほど規定されるかを実証的に検討することもこの種の問題に

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      技術革新の産業組織論的実証分析  119 対する第一次的接近法として有意義であろう。この「集中一技術革新」仮説を 具体的に計測した研究として,植草〔26〕,〔27〕,ケイブス・ウエクサ〔4〕 がある。  植草モデルを要約して示すと,次のような関数関係となる。    T=α一yβS+γC       (][正一4)    ム         ム      ム       ム      ハ    h=ノ竃(hzアs,ん,(フ,・R,R・P,7「im,PS)       (lll−5)    ム        ム       ム    h=ノ亀(fe, C, PS, PI))       (1[一6) ここでの記号は次のとおり。T=技術革新変数={R(研究費), NR(研究員 数),RP(保有特許件数), TI(外国技術導入に対する対価支払額), TB (=TJ+国内技術導入に対する支払額)}, S ==売上高, C=売上高集中度=       ぎ{CRx(.ヒ位x社売上高集中度=Σs、, Si=売上高で測った第i社の市場シェ ア),MCRx+1,y(上位x+1社からツ社までの売上高シェア和の上位の社集中        ム度に対する「限界的な」集中比率)},h=△h/h(他の変数についても同様), h==VA(付加価値)/N(従業員数),ゐ=資本集約度== K(有形固定資産)/ N,Tim =技術導入件数, PS=VA/NE(事業所数)コ最小最適規模の代 理変数(規模の経済性指標),一PD=製品差別化指標=AD(広告支出)/S。  (皿一4)式は被説明変数として,前述の各種の技術革新変数(ただし「成 果」変数はRPのみで,他は「行動」変数とみなしうる)を採っている。植草 氏はこの式に基づき,1970∼71年について21産業のク・ス・セクションで回帰 分析を行なっている〔26〕。その結果,売上高の係数βのみが有意に正であっ た。それが示すことは,企業規模の大きさと革新行動とが比例関係を有してい るという(八一1)式の内容に等しい。また,集中度の係数γが有意でなかっ た点について植草氏は,①高集中産業には停滞的産業が多く,そこでは技術革 新による「革新利潤」の達成よりも市場支配力による「独占利潤」の実現がは かられていること,②産業ごとの「技術機会」の豊富さによる「産業特性」を 考慮する必要があること,を挙げている。しかし,これらのことはさらセこ,③ 集中度で示される市場構造の非競争性の強さが革新行動の競争度とは別次元で あることを示唆しているのかもしれない。

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 (皿一5),(1:一6)式の計測は,それぞれ,1958∼67年,99業種と1961∼75 年,84業種に関する線型のクPス・セクション分析である(データは期首・期末 問の増加率,または特定年次の値;ケイブス・ウエクサ〔4〕第7章,植草〔27〕 pp.384∼86参照)。計測の結果,有意な係数を示した変数は(三一5)式につ   ム      ム       ム いてhvs(正), MCRg,20(負), R(負), RP(正), PS(正)であり,(五一6)      ム 式についてk(正).PD(負)であった。そこで,植草モデ・レの計測結果から 確i認されたことは,中堅企業群の増加(MC−Rg,2。),直ちに成果につながらな       ムい研究開発費の伸び(R),広告〔売上高比率〕(PD)などが不効率要因として 働いたこと,保有特許数(RP)がロイヤルティー収入などを通じて,他に規模        ム      ム の経済性指標(PS)と1人当り資本の増加率(々)などが効率性促進要因とし        ムて作用していたこと,である(アメリカの労働生産性増加率妬βの経済的意味 は不明である)。  合一2 「技術導入・研究開発一→成長」仮説  次に検討される仮説は戦後日本の高成長に対する企業の技術革新行動の影響 力もしくは企業の技術革新への取り組み方に関する行動仮説である。それは, 新技術の獲得の仕方に関して日本がおかれていた環境を考慮に入れ,その上で 日本の研究開発行動を位置づけることを狙いとしている。  技術革新行動を考えるばあい,第1に新技術の外部からの導入か自己開発か を決定しなければならない。日本のばあい,導入と開発のコスト,新技術獲得 後の市場化・商品化の確実性などを考えあわすと,導入による方が有利である とみなされてぎたし,事実,最近年あるいは現在に至るまで外国技術の導入が 活発である。そこで日本の技術革新はある意味で「導入一辺倒」もしくは「技        4) 術タダ乗り」方式だと言われる。そうすると日本の研究開発は果して全く何ら 4)技術導入と研究開発の位置づけに関連しては,小林〔14〕,Peck=Tamura〔19〕,  中村〔16〕特に第2章,斎藤〔20〕第41章の議論が参考となる。特に,そのときの解  釈の上で,技術導入には新規分と継続分とがあり,支出総額の大きさはそのうちの後  者の方がヨリ大きな部分であること,導入契約の各種条件の性格が反映される点など  に留意する必要があろう。「戦後日本の技術導入と研究開発の動向」に関しては稿を  改めて論ずる。

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      技術革新の産業組織論的実証分析  121 の効果をももっていなかったのか。または,独創的な発明などは生み出さない が,導入技術を専ら商品化・市場化するために実施してきたことにな:るのか。 さらには,成長との関係はどうだったのか。こうした問題意識から後藤〔10〕, 〔11〕はとくに日本の研究開発の位置づけを模索し,オダギリ〔17〕は企業の 支払う技術革新のための支出がもつ積極的な意味を実証的に分析している。  後藤は「技術導入(TI)一→研究開発(RD)一〉経済成長(G)」という因果:的 な構図を描く。彼は,若干の実証分析の結果から,アメリカの技術集約的産業 のジョイント・ベンチャー企業の例でRDとTIが負の相関関係にあった点       さ  と比較して,日本のRD−TJは正の相関関係にあることに注目する。そして, 結果としての高い経済成長を顧みて,日本の技術導入と研究開発は補量的に関 係しつつ,①技術導入は国内研究開発を喚起させる役割を果してきた,②国内 研究開発支出は導入技術の改良・市場化・再輸出などの点で十分に有効的だっ た,という論理を展開している。  オダギリは同じようなモチーフを「企業成長論」的な観点から実証分析して いる。オダギリ・モデルは    G=・9(E)      (皿一8)    R/s=ψ1(G,R/s_i)      (]工一9)    P/S=ψ2(G,P/S.i,R/S)      (皿一10) ただし,G=1966∼80年の売上高(S)成長率(≡△S/5), E=技術革新支出= {R,P(ロイヤルティ支払額)}である(一1の添字は1期間前の値であること を示す)。(皿一8)式は企業成長論における成長費用の支出と成長の関係を示 している。(皿一9),(11−10)式はR/S,P/Sの継続性,またそれらとG との相互連関性を調べるための推定式である。 5) このような比較方法が後藤仮説の「傍証」資料となるかどうかは議論の余地がある  けれども,アメリカの分析結果はFriedman, Burg&Duncan〔9〕により,日本  のそれはBlumenthal〔2),〔3〕による。特に,後老の計量分析は,1966年次10産  業,73年次14産業のデータによるTI/N=a(RD/N)+うという推定式において.δ=  0.281,0.231である。

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 計測は1966∼80年置問に東証一部上場で主要な合併のない370社・13業種(集 計データ)について,1969∼72年(前期とよぶ),77∼80年(後期とよぶ)の R/S,P/Sの平均値をデータとした分析である。それはさらに,「革新的産業」 (各産業のR/Sの製造業平均値を上回る4業種;化学,医薬品,電気機器, 精密機械)と「非革新的産業」 (それ以外の9業種)のサブ・グループについ て行われ℃,・る。そこでの主要な結論は,以下のとおり。 (豆一8)式より, (i)「革新的産業」においてはR/sはGと正の有意な関係を示したが,その係 数は前期の方が大きかった。(ii)成長率(G)は「革新的産業」では後期のP/s と, 「非革新的産業」では後;期のR/Sと,負の有意な関係を示した。また両 産業ともに㈹その成長率は前期のP/sとは負の符号(ともに非:有意)を示し, (耳一10)式より,㈹後期の.P/Sは同じ期のR/Sと正の関係を示した(「非 革新的産業」のみで有意)。これらの分析結果から,高成長期の日本の上場 (大法人)企業のうち,革新的産業ではR/Sの増加により成長を高めたこと (「非革新的産業」では逆),P/Sは両産業にて負の効果を示したこと, R/S とP/Sが補完性を示したこと(ただし,後期の「非革新的産業」についての み有意)がわかった。  皿一3 生産関数アプローチ  経済学における技術進歩の取り扱いは,「生産関数アプローチ」とよびうる 方法に集約される。つまり,例えばコブ=ダグラス型の生産関数を想定する と,生産に関する規模の経済性が働くかどうかを判定した上で,その成立・不 成立に応じて,

   Y=F(K, N, t) =:AKaNPert (ll 一11)

 Y/Nf1ih=A(K/N)αert・・Akc「ert       (皿一12) と表わせる。(9−12)式に示されるように,規模について収穫一定のばあい, 労働生産性の水準(h)は1人当りの資本の大きさ(k)と「技術進歩要因」(γ) によって規定される,という明瞭な関係に表わされる。そして,主にこれらの 式を用いて外生的な「技術進歩率」の大きさが測定されるのである。けれど も,その大きさは周知のように,資本,労働によって説明できない誤差項の大

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       技術革新の産業組織論的実証分析  123 きさであること,すなわち実際には規模の経済性,技術進歩,その他「学習効 果」などの効率性要因一X効率一等々から構成されていることにも注意し なければならない。  生産関数による技術進歩の実証分析は,〔個別〕産業レベルを中心として数 え切れないほどある。ここでは,それらの中から製造業全体を産業別に(同一 の方法で)計測した若干の研究に限定し,その分析結果を整理してみよう。は じめに,渡部・荏開津〔28〕は産業データによる技術進歩要因の計測,その構 成内容の検討を1952∼61年の製造業!4業種について行なっている。そして,(1) 生産増加に対しては資本ストックの増加と外国から輸入された技術進歩が主要 な役割を果したこと(労働投入量・資源再配分の効果は微弱),しかも(2)その 投資と技術進歩とはある時期に補完的な関係にあり,「新しい型の機械」を導 入し据えつけるという形での設備投資を続けることによって資本の質的向上 (体化された技術進歩)が促進されたこと,また,(3遽れは1955∼62年,とく        も に1959∼62年に急激に行なわれたが,それ以前(1952∼55年)にはむしろ単な る生産能力の拡大のための投資とか「体化されない技術進歩」も相当あったこ と,などが明らかにされている。  その後の分析として,篠原・浅川〔24〕,新庄〔23〕がある。それぞれ,企 業データにもとつく産業(集計値)レベルの研究であり,前者が1960∼71年, 21業種・154社,後者が1972年忌,14業種・約1000社である。そこでのクロ ス・セクション分析によると,(i}双方ともに少なくとも規模に関する収穫i逓増 ぱなく(a一 ±i BK.1 i’ r’v),規模の経済性は働いていない。㈲拉痢進歩の大きさは資 本〔変化の大きさ〕と分離できなく,それゆえ〆項の単なる付加によっては       、 うまく測定できない(趣と〆のマルチコの可能性),さらに㈹んの伸びは鳶 の伸び方に依存していて,資本設備に「体化された技術進歩」による説明が求 められていることなどを共通に示唆している点が興味深い。  9−4 分析上の問題点  以上,従来の分析の結果をみても,技術革新に関する投入一成果変数の選 定,さらにはそれらの問の対応関係はあまり明確に整理できていないように思

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われる。そこで,従来の実証分析の中で技術革新の代理変数として用いられて きた諸変数の性格を検討しておこう。  (a)技術革新の成果指標  これまで用いられてきた技術革新成果の指標として,出願特許件数労働生 産性またはその上昇率,当該産業または企業の成長率,さらには利潤率,費用 低下率などがある。出願特許件数については特許に関する数と質の対応の程度 が必ずしも保証されていない。労働生産性上昇率・成長率について,通常は生 産関数を用いて資本投資率との関係を基軸に考察されている。そして,利潤 率,費用低下率は通常「集中度一利潤率」仮説によって説明され,集中度以外 の説明要因としても,それが技術進歩,規模の経済性,その他の(X効率)要 因などのどれに求められるべきかは確定できない。  (b)技術革新の投入指標または規定要因  従来の分析においては,企業規模(売上高;S),集中度(C),資本集約度 (K/N≡k),研究費(R),保有特許件数(RP),技術導ズ件数(Tim),一事業所 当りの市場出荷額(PS),広告集約度(A/S)などが用いられていた。これらの 変数は(A/S,RP, kなど決定しにくいものもあるが)大まかに分けて, C, PS, A/Sなどの市場構造要因, R, T、 m, Rl), kなどの技術革新行動に関わ る変数,そしてSというその他の企業規模変数に分類できるかもしれない。  ここで注意しなければならないことは,これらの変数がそれぞれ,ある特定 の成果変数と強い対応関係を有しているかもしれない点と,市場の構璋劣行動 の側面を表わすいくつかの変数の中から推定式の中にどの変数を採用するか, そのとき市場の構造と行動のいずれの側面をヨリ重要視するか,という点であ る。 皿 実 証 分 析  本節では,皿一1で若干の検討すべきプリミティヴな:仮説を提出し,関数型 のモデルに表わす。皿一2では実証分析に使用した変数データの出所と作成方 法を示し,皿一3では実証分析の結果を示す。

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      技術革新の産業組織論的実証分析  125  皿一1 検討すべき仮説とモデル  前節で述べたとおり,技術革新成果の代理変数として何が最も適切かは必ず しも同意をみないだろう。そこで以下での実証分析においては労働生産性,       の        PCM,成長率についての計測を順次行なってみる。そして,これらの成果変 数を説明する変数に,市場の構造を反映する変数として集中度もしくは産業成 長率を用いた。また,市場の行動変数として設備投資,技術導入および研究開 発などの支出額を用いた。つまり,われわれは技術革新をめぐる行動変数の検 討という観点から,現行の生産条件を改善すると予想される物的設備投資と技 術革新投資という広義の投資活動変数を積極的に採り入れて実証分析を行なっ てみる。逆に,もしも革新の成果変数として労働生産性を用いるとすれば,上 述した生産の関係から資本投入量の役割を無視することは理論的に考えても適 切な処置ではないと考える。ただし,そこに研究開発・技術導入などの変数を 付け加えることの経済学的な意味は,以下のようになろう。すなわち,いま労 働生産性を資本投入量がある一定の程度説明できるとするとき,それによって は説明されつくさない残りの部分が技術導入,研究開発などによってどれ位説 明されるか(定数項のシフト要因の分解),ということを計測することである。 もっとも,そうした作業の前に,相関係数などの大きさからどの変数が第1番       ア  目の説明力を示しているかを確認する必要があることは言うまでもない。こう して,われわれの計測するモデルにおいては,物的資本投資,研究開発費,技 術導入費などを主要な説明変数とみなしている。そして,その上で,市場の構 造的要因を示す変数,つまり市場集中度,もしくは市場成長率がパラメーター 的に追加投入される。  さて,検討すべきプリミティヴな仮説として,以下の3つを考える。 6) 公告特許数のデータを用いるためには,当面入手可能な個別企業ごとの申請件数を  産業レベルに集計した値を用いなければならない。準備などの理由により,小稿では  割愛せざるを得なかった。 7) しかし,そもそも,そのときの前提条件であるコブ;ダグラス型生産関数が成立し  ているかどうかは,別の次元の問題として検討される必要はある。この点について新  庄〔23〕参照。

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 (1)新技術の獲得が設備投資の導入に伴ってなされるとすれば,その投資の 大きさ(1)と技術革新麦出(R,P,またはT)とは相互にどのような関係に あったのか。投資の活発だった60年代は技術導入(P)と投資(」)が強い関係 をもち,投資率の低下した70年代はそれらが無関係になったのか。        ム  (2)次に,技術革新の成果指標(h,PCM,9F)に対して,設備投資および 技術関連支出(ろR,PまたはT),市場構造要因(C,9t)などの変数がも つ説明力はどの程度の大きさか(符号の詳しい内容は後述)。また,植草氏の 分析結果はわれわれの計測期問についても成立するかどうか。  (3)技術:革新の行動・成果変数は, 「市場」における独占性の強さ(市場集 中度)とは有意な対応関係をもっていないのではないか。  〈実証分析の推定モデル〉  上で提示した論点を実証的に検討するために,われわれは以下に示されるよ うなプリミティヴな関数関係を設けてみた。ただし,計測は各式とも線型であ り,アド・ホックな:相互規定関係を特定化していないものもある。

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    ム  ム   ム       ム PCM=φ(k,R,PorT;Cor gr)      ム  ム  ム       ム   9=ψ(fe,R,PorT;C) 皿一2 実証分析の対象とデータ・サンプル われわれの行なった計測は, (皿一1a) (皿一1b) (wt−2) (皿一3) (皿一4)       SIC2桁(一部3桁)分類の14産業を対象と したクロス・セクション分析である。分析期間は高成長;期末の1968∼72年と石 油危機後の最近年76∼80年である(簡単化のため,それぞれを期間1,2とよ

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      技術革新の産業組織論的実証分析  127 ぶ)。各変数のデータは後述するとおり,各;期間の成長率または算術平均値:な どに加工される。ただし,「技術革新」の内容は製品革新,工程革新などに区 分しない。また,資本一労働間の集約性の深化(方向性)も考慮しない。        8)  次に,実証分析に用いた変数データの内容と出所は以下のとおりである。   hヨVA/N==従業員1人当り付加価値額   々≡K/N=従業員1人当り有形固定資産額(年末現在高)   1・=(Kt。4−Kt)/4=設備投資額(彦=1968,76年)  N=年間月平均常用労働者数  認二陣4/NE=事業所当りの付加価値額で「最適規模」を示す代理変数 以上のデータは〔D−8〕(産業編)による。ただし,hを除けば,1968∼72 年,76∼80年についてそれぞれ従業員20人以上,30人以上の事業所の値を用い 9) た。          AIO)   g == {gi, gF} 11iS  8)データの出所リストは次のように一覧表示される。   〔D ユ〕『法人企業統計季報』大蔵省証券局(企業財務課)編   〔D−2〕 『外国技術導入年次報告』科学技術庁編   (D−3〕 『会社年鑑』日本経済新聞社   〔D−4〕 『科学技術白書』科学技術庁編   〔D−5〕 『科学技術研究調査報告』総理府統計局編   〔D−6〕 『経済統計年報』日本銀行統計局編   〔D−7〕 『企業経営の分析』三菱総合研究所   〔D−8〕「工業統計表』(産業編)通産省(大臣官房)調査統計部編   〔D−9〕 『日本統計月報』総理府統計局編   〔D−10〕 『日本統計年鑑』総理府統計局編   〔D−1!〕 「有価証券報告書」  9) hのデータについてのみ,その期間が1969一一72年,77∼80年の値を用いた。また,   ゴム・精密機械の2つの産業は物価指数デフレーターの制約から,70∼72年を期間1   とした。 10)添字1,Fはそれぞれ,産業レベル,大企業レベルの値であることを示す。 PCMに   ついても同様。また,変数Xのt年からt+m年までの(m+1)年間の成長率分は,   物価デフレート後に.(X(t“m)/x(t)〕1/mから求めた。

(14)

  S={Si=〔D−8〕の製造品出荷額, S7=〔D−7〕から分析期間を通じて    合併,決算月の変更等を考慮した後の上場している大半の企業の売上高    を業種別に合計した値}   R=社内使用研究費(支出額)   P=技術輸入の対価支払額(総額)   T・iiR+P=技術革新支出額  NR=研究本務者数  Tim=技術導入件数(総数) これら技術革新活動を示す変数は〔D−5〕に依ったが,それらは全てデータ 出所の分類上,2∼3桁分類の産業レベルの値である。また,技術貿易データ の制約により,1971∼72年,76∼80年を期間1,2とした。  C=CR 10=業種別(2,3桁)の上位10社売上高集中度(;期間1は〔D一       ユ    5〕の値を,;期間2は〔D−3〕,〔D−11〕な:どを用いて計算した値) PCM=(売上高一製造原価)/売上高={PCM■は〔D−8〕, PCM刃は〔D       12)   一7〕の値} 11)技術革新行動を示す変数のデータ上の性格から,それに対応させて2桁レベルの   「集中度」を用いる。けれども,その集計値に含まれる企業の「多様化」活動の性質  などを考慮すると,使用者(筆者)の意図したとおりに市場の競争の強さを反映して  いるかどうか,問題なしとしない。 12) われわれは,通常利潤指標として用いられている営業,経常,純(または当期)の  各利潤よりも,分析の対象が生産構造の改良度に関する限り,「売上総」利益の方が  その内容を最も適格に表わす指標だと考えている。それは以下の理由による。この   「売上総」利益iは「売上高」から主に当期製造原価や在庫変化分から構成される「売  上原価」を差し引いた大きさである。これに対してsそこから運送費,広告宣伝費,  役員報酬.研究開発費などを含む「販売費・一般管理費」を差し引いた大きさが「営  業」利益である。これから営業外の収益および費用(例えば,金融資産の運用損益  受取配当金など)を差し引いた大きさが「経常」利益であり,そして更に特別損益を  差し引いた大きさが税引前「当期純」利益である。このように,各利潤指標について  控除または追加要因が加わるばあい,その企業全体としての「収益性」とか為替レー  トの変化の効果とかをみる目的ならばともかくも,生産構造の変化に関する代理変数  としては,それぞれ不適切な内容を含んだ調整(各種損益の控除・付加)が多すぎる  という見方をとるからであるe

(15)

      技術革新の産業組織論的実証分析  129  物価デフレーターとしては,Y4, Sについて〔D−6〕または〔D−9〕 の製造業部門別投入一十出物価指数,Kについて〔D−6〕の投資財物価指        13) 数,そしてRとPについては〔D−4〕の研究費デフレーターを用いた。  隅一3 実証分析の結果

 (皿一1a)式

 単純回帰分析:RとPの問には二期聞について線型・対数線型とも有意な正 の関係(全て1%水準;以下,企て両側検定)が見出された。けれども,Rと 」の関係は期聞2のみで弱い正の関係(20%水準で有意)を示したにすぎない (このとき,定数項が1%水準の有意性を示していて,他の変数の存在が示唆 されていた)。また,集中度Cと他の変数との係数は全て負の符号を示したが, 全て非有意であった〔表1(a)〕。  重回帰分析:表1(b)にみられるように,Rに対して期間1にP,期間2にP と1が正の符号を示した。また,Pに対してRは2つの期間ともに正,1は期 間2に負の符号を示した。そこでRとPはそれぞれの期間に正,Pと1とは期 間2に負の関係をもつことが分った。

 (皿一1b)式

 ム     ム  RとP,Cとの関係は全て期間2についてのみ有意であった。それらの関係        ム     ムを要約すると,表工(c)のようになり,ここでもRとPの関係が確認された。し    ム     ム       ム   ム      ム かし,Rとfe,また同様に, P, Tと々とはいずれも有意な関係が存在するこ とを示さなかった。  (Pt一 2)式  前節で検討した植草モデル〔(皿一5)式〕を用いて計測した結果は,植草         ム       ム 氏の分析と同様,kとPSが有意な説明力を示した〔表豆(a)〕。とくに,期間       ム      ム 1について,hはfeと負の有意な関係を示した(定数項部分も1%水準で有 意であった)。 !3) Pについては〔D−6〕または〔D−9〕の投入物価指数を用いた計算も平行して  行なった部分もあるが,「経済学的な意味」を考慮して研究費デフレーターを用いた  ケースのみを検討する。

(16)

130 彦根論叢第219号 表 [ 被説明 説 明   変 数 定数項 決定係数 変 数 期間 R P 1 cst. }R2 (a) R 1 5.352④ 34,333 .613 (4.650) (0.185) 2 7.077④ 242,244 .572 (4.283) (1.085) P 1 0.120④ 36,185 .613 (4.650) (1.403) 2 0.854×10−1⑤ 12,841 .572 (4.283) (.505) R 1 .137 437,721 一〇.043 (.685) (1.198) 2 1.229(d) 869.197④ .161 (1.867) (3.564) P 1 0.271×10 1 73,264 一〇.013 (0.915) (1.358) 2 一〇.480×10F2 84.689⑤ 一〇,083 (0.059) (2.783) T 1 .164 510,985 一〇,037 (.732) (1.248) 2 1,224 953,886@ .121 (1.671) (3.515) (b> R 1 5.372④ 一〇,823×10F2 44,152 .578 (4.321) (0。062) (.177) 2 7.152④ 1.263④ 263.470(d) .814 (6.563) (4.074) (1.788) P 1 .117④ .110×10 1 21,986 .590 (4.321) (.573) (.606) 2 .111④ 一〇.142⑧ 一12.115 .760 (6.563) (3.223) (.589) (c) C 貧 ? cst. 一R2 〈R 1 一〇.300×10−3 一〇.573×10−1 .426 ,698 一〇,063 (.194) (1.041) (.601) (.853) 2 .140×10曽2(d) .377⑤ .196 0,453 .514 (2.130) (3.111) (.496) (1,035) (注)(a)、(b)の定数項の単位は70年価格の千万円。R2は自由度調整済の決定係数。()内はt値。   また、④は1%水準、⑤は5%水準、◎は10%水準、(d>は2G%水準の帰無仮説の棄却率(両   側)を示す。以下の表についても同様。

(17)

  技術革新の産業組織論的実証分析  13! 表  ]1 説       明       変       数 定数項決定係数 被説明 マ 数 期間 f C 食 ユlm 倉 → 禽 C5し 頁2 {a) → ︷:  一〇582⑤ @(3.316) 黶Z.451×10−1 @(LO87) 0120×10“ @(.389) D946×104 @(1168) 0781×1D−1 @(1007> 黶Z.382×10H1 @(1664) 一〇601×10−5 @(.344) D285×10喝 @(794) 5!1④ i3652> U16.④ i23563) 1.095④ i3942) D475④ i9,419) 638 X83 〔b) → ︷: 一G573⑤ @(3328) 黶Z.524×10−1 @(1.536) .282×10弓 @(.739) S8DX10■4 @(712)  106 i1288) P22×10−2 iG46)  101×1071 @ (673) 黶Z317×10m↓〔d @ (2200) 561④ i389G) U14④ i29π4) ,976⑤ i3239) S77④ i11778) ,653 C988 〔c〕 →

︷1

 一〇566④ @(3212) 黶Z.553×10‘1 @(1501) 0.831×1G−4 @(243) U42×10−4 @(qg6)  0157×10旧1 @ (580) 黶Z416XIO冒1◎ @ (2409) 0459④ i3384) U29④ i28754) 1206 S78 640 X87       ム  また,そこでのTimをPに代えた修正モデルについても計測結果は同様      ム       ム       ム      ム だったが,Pが期間2に弱い説明力を示した〔表五(b)〕。さらにRとPをT        ム(R+Pの増加率)に代えたモデルではTも負の有意な関係を示したこと〔表ll:        ヘ       ム (c)〕,が異なる点であった。けれども,hについてRとCの個別的な説明力は 見出しえなかった。  (皿一3)式  産業ベースの収益率(PCM,)は,期間1について各変数とあまり有意な関       ム係があるようには思われない@が有意性は微弱ながら負の関係を示したが)。          ム       ム 期間2については,kと正, Rと負の関係が見い出された〔表皿(b)〕。他方, 大企業ベースの収益率(PCMe)に関するとき,期間1はいずれの変数も非有       ム      ム 意,期間2はkと正,Rと負という関係が確認された〔表出(c)〕。  (皿一4)式       ム  産業ベースの成長率(9t)は,2つの期間を通じて,期闘2のfeが有意な関 係を示したのみであった〔表皿(d)〕。他方,大企業ベースの成長率(g”)は期       ム    ム間Wl全ての技術革新変数 とくにP, Tと有意な正の関係を示した。逆に,         ム 期間2についてはんとの有意な正の関係が確認された〔表皿(e)〕。そこで,オ ダギリ・モデルの分析結果とは多少異なる内容が引き出されたことになる。  さて,これまでの分析から明らかとなった点は,表IV(a)に要約されている。       ムその限りでは,技術革新変数とくにRの説明力がぜい弱であるという印象を

(18)

132 彦根論叢第219号 表  皿 被説明変数 期間 ? → 食 貧 C cst. R2 (a) → 1 一〇,620◎ 一〇103×10一ユ 1840◎ .266 (2.593> (.638) (6.411) 1 一〇.614◎ 一〇218×10−L 一〇.106×10−1 1847③ .193 (2.392) (、190) (.617) (5.999) (b) PCMI

︷:

一90,881〔d} i1.887) W3.164◎  11,670 @(.565) 黷R0.549〔d} 113,884〔d) i2,112) 黷R3.208 ,1Q7 C381 (2502) (18套5) (,857> PCMI 1 一78,937 20,551 3,937 85,488 145

(1.640) (956) (1.218) (1482) 2 81000◎ 一25.665 一4.474 一31,736 .326 (2.288) (1095) (β08) (780) 〔c〕 PCMF

︷:

一44,891 i.998) U6.689◎ 一〇。892×10 1 @(L113) @一〇.106ω 76,740 i1.514> 黷S6,150 090 R93 (2.253) (2.160) (1530) PCMF

︷:

一75,284 i1.720) U8.438◎  22877 iL219) 黷R4.470◎ 82,532 i1.683) 黷P4,190 .108 S38 (2.407) (2.433) (.428) PCMF 1 一63.465 31,665 3,896 54,432 .169

(1.470) (1.644) (1.344) (1052) 2 70.666◎ 一39.497〔d} 4605 一15706 391 (2.338) (!.974> (.372> (.452) (d) 91

︷:

 .271 i1.300) P.002④ .166 iL784) @.105 .204×10曽1 iL458) @一〇.112  .602◎ i2.406) D413×10−1 .191 U54 (4.727) (.750) (1,288) (169) (el 9F 1 。851×10−2 .159(d) .513×10−1④ .853④ .542

(0.047) (L959) (4.193) (3.908) 2 1,196④ .171 一〇.129 一〇,216 .693 (5.148> (1.115> (1.356) (809) 9F 1 .635×10−1 ,480×10−1④ .917④ .503

(.343) (3.841) (4.128) 2 1.243④ 一〇,206×10 1 一〇167 ,673 (5247) 、(.423) (,610) ぬぐい切れない。しかし,それらの技術革新に関する諸変数の効果が投入と同 じ期間内には検出されないで,「一定期間」のラグを伴って現われると考える こともできる。そこでラグの長さについての理論的な根拠はないが,われわれ は上で使用したデータに基づいて,期間1の投入変数と期間2の成果変数との 対応関係を調べてみた。その分析結果は表Vに要約されているが,この追加的 な分析から以下のことがらが明らかとなった。  (皿:一1)式に関して,技術変数(R,P)は同じ期間にはもちろん期間1

(19)

技術革新の産業組織論的実証分析  133 表  w 期 間 1 期  間  2 ラグを付けた時 (a)革 →  〈

nk

 <     <

ヨP,OT

1+)C 新 成 PCMI

oCMF

№h  〈i一)k

mO

mO

  A      〈  <      <        < ゥ)k,①p,㊥T     〈   (+)R 果 9F  <       <        < №o,ωR,㊦T  〈№  〈

iDR

(b)説 →

eorNO

㊦ (一)or NO 明変数 食倉 〔+>or NO №盾秩@NO (∋or NO i一)or NO ㊤① の符 → ㊥or NO

eorNO

㊦ 号 c

No

(一)or NO (+)or NO (注)回帰係数の符号を取り囲む○は1・5・10%水準,()は20%水準の有意性を示す。   また,nOは説明力をもたなかったことを示す。 表  V 被説明 説 明 変 数 定数項 決定係数 変  数 ︿kエ ︵T1 ’、q1 〈Pエ C1 cst. 一R2 〈h2 0,104×10唱2〔d) L103④ .197 (2.047) (42.087)

PCMF2

5.944◎ 4,010 .238 (2.247) (.635) PCMF2 16,056 6.331◎ 一7.635 .190 (.853) (2.247) (.341) PCMF2 一89,118(d) 9,837 109.486◎ .150 (2.073) (.534) (2。275) PCMF2 一64.524 4.823(d) 80,803 。343 (1.713) (1.898) (1.787) 912 .284(d) .741④ .177 (1.946) (4.583> 9F2 .359(d) .652④ .223 (2,177) (3.566) 9F2 .421◎ ,238×10−1 .554◎ .208 (2.328) (.878) (2.570) 9F2 一〇.592 .428⑤ 1。257⑤ .308 (1.568) (2.643) (2.973) (注)添字1,2はそれぞれ期間1.2の値であることを示す。

(20)

から2についても,相互に強い正の関係を有していた。しかし,1は(たとえ 有意性を示すとしても)同じ期間についてのみ有意な関係を示した。また, ム       ム      ム       ム

Rとkとは互いに説明力をもたなかった。さらに,kに対してはPもCも全

く有意な関係を示さなかった(分析結果は省略)。         ム  (皿一2)式のhに関しては,期間1のCが有意性は弱いながらも,正の符 号を示したことが特筆に値しよう。しかも分析を単純回帰から重回帰へ移す と,期間1のCが十分な有意性を示すことも明らかとなった。他方,植草モデ      ム      ム ルにおいてTにラグを付けて計測してみてもTの説明力は非有意のままであ        ムり,同じ期のPSの強い説明力という結果は変わらなかった。       ム       ム  (]1−3)式のPCMについて,大企業ベースのとき, PとTが正の有意 な関係を示したことは注目に値する。これは技術革新変数が収益構造の改善に 対して何らかの効果をもつまでに「一定期間の経過」を要することを反映した ものであろう。       ム  (皿一4)式の9について,大企業ベースのとき,Rの係数が統計的に非有 意から有意へと変わった。   付表(a) 製造業の稼動率 指数       付表(b) 使用したサンプル・データの平均値 年[稼動率 1968  69  70  71  72  73  74  75  76  77  78  79  80 101.0 102.1 1eo.0 94. 5 95.0 100.6 9L 4 81.2 87.9 82.3 89.9 96.4 97.1 期 間 へん ︿ん ︿R ︿P ︿T

c

19臼

1.103 1 1.150 1.058 1 1.013 1.105 1.084 1.234 1.022 1.149 1.080

期間PCMF 9■

gF

︿θ

!2

22.3 17.9 1.122 1.056 1.103 1.049 1.149 1.080 O. 985 1.024 43.5 34.! 経済企画庁調査 三編『経済要覧』 より作成。

(21)

技術革新の産業組織論的実証分析  135 IV 分析結果の要約  以上での実証分析の結果は以下のように要約されよう〔表IVも参照〕。        ム  (1)Rと1は絶対額(level)では同じ期間に正の関係をもっているが, Rと く       14) kという増加率(rate)でみると全く相関が示されなかった。  また,RとPについては相互の期間のいかんを問わず全て1%水準で有意で あり,強い「補完的関係」が確認された。    ム       へ  (2)勧こ関して,feは期間1に負の有意な関係を示し,他に説明力を示す変 数もなかった。こうした事態は1つの例として,次のようにも解釈できよう。

い・剛・)は弄一一羨芸寿から・一・・毒・・と示・れ・。ただ

し,Y*=正常生産能力,θ=設備稼動率,τ=資本係数。時間について対数微

分してA一蝋を得・二野)・ここ3・9騨年の鯨響・

各変数の現実の変化を調べてみると,んは正,θは負,々は負となっていた。し たがって,上の式が成立していたとすれば,ηが大きく下落した,すなわち資        ム      ム      ム 本係数が大きく低下したことがh =f(々)においてf’<0(kの回帰係数が負) の原因であると考えられよう。  (3)PCMに対して,期間1は有意な説明力をもった変数がなく,期間2は ム       ム      ゆ  リ       ム      ム kが正,Rが負の符号を示した。また,ラグをつけるとPとTが正の符号を 示した。そこでこの分析の期問に関しては,期間1の技術変数がその成果変数 (PCM)に対して「一定期間のラグ」をもって正の効果を発揮すること,物 14)ただし,k=K/N(資本集約度)であり,1=dKと同じ構成ではない。けれども,  従業員1人当りの資本(K/N)と研究者1人当りの技術革新変数(R/NR, P/IVR,  T/2VR)をlewel, rateについて回帰分析してみてもこれらの結果は変わらなかった。  統計的に有意だった唯一の計測結果は期間!について,以下のとおり。   P/NR=O.518×10−21/N@一一〇.105×10−2 R2=O.886        (10.125) (O 191) 15) これらの議論は,われわれが計測に用いたデータから作成した付表1,2に基づ  く。ただし,その表からも明らかなとおり,期間1の9は期間2に比べて高い水準に あ・.また,b一夢/・洗(伽4/efi)1/・(t一・8.・76年)より.」<・⇔6〈・である。  kについても同様。

(22)

 136 彦根論叢第219号        的設備投資は正の関係をもっていること,が明らかとなった。        ム       へ  (4)9について,期間1では大企業ベースのときにのみ,PとTが正の有        ハ意な説明力を示した。また,期間2は産業ベース,大企業ベースともkと正の        ム関係にあった。さらに,ラグを付けると,木企業ベースのときにRが正の関係 を示した。これらのことから,期間1は技術革新変数,期間2は物的投資が成 長率に対して相対的に強い説明力をもっていたと考えられよう。  次に,この分析で用いた説明変数が各式で示した符号を期間ごとに整理して みよう。それは表W(b)のように示される。この表とこれまでの分析結果の内容 とをあわせて考慮すれば,その含意は以下のようである。  (5)期間2の「革新成果」に対して期間1は技術革新変数が,期間2は設備 投資がそれぞれ正の貢献をしたと解釈しても大きな間違いではないだろう。ま た,そのとき,技術革新変数は「一定期間」のラグを伴って正の効果を発揮す るのではないかということも示唆された。かくて,それらの変数は観察される 期間の性格に応じて,異なる意味をもっていることが確認されたといってもよ いだろう。  ㈲ 集中度については,ほとんどのばあいに有意味な説明力をもっていない        ムことが示された。若干の例外として,期間2について一PCMeと負, Rと正,        ム期間1のCが期間2のkに正の符号・の3つのケースが「(棄却率)20%水準 の有意性」を示した。これらの計測結果は・少なくとも集中度と利潤率,技術 革新との関連性に関する従来のロジックによっては十分に説明されつくさない        のことを示唆しているように思われる。  最後に,今後の研究のために残された課題を掲げることによって結びに代え たい。 16) しかし,ここで利用できる「一定期間」のラグを与えた期間1の研究開発支出と,  期間2の投資との説明力を試算的に比較した限りでは,後者の方が強かった。 17) また,研究老(NR)1人当りの支出に関する追加計算から,期間1,2について  それぞれ唯一の有意な結果を得た。すなわち,         ム          期間1 (P/NR)=一G.209 x IQ−IC③十!.104@  R2=O,403    {期間、(細。。搬、。,、C◎一。.鰍、。,1 R、一。.、224        (1.002)       (2.180)

(23)

      技術二三の産業組織論的実証分析  137  (1>われわれが用いた「市場集中度」の指標は,技術革新変数のデータの産 業分類・入手可能性の関係で(一部3桁を含む)2桁のレベルであり,それぞ れの産業の売上高上位10社の企業データの集計値であった。このデーータと公正 取引委員会の公表している集中度データ(産業分類では6桁を基準とする)と の対応関係をチェックしておく必要がある。  ② 技術革新,とりわけ研究開発支出(R)の効果は「一定期間」のラグを伴 って現われることが示唆された。よって,Rに関するラグの大きさ,ラグ分布 関数の特定化と推定が必要である。それはまた,好況・不況の両局面を含むと いう意味での「長期」均衡における産業利潤率を取扱うときのタイム・スパン を越えることになるかもしれない。  (3)われわれの分析におけるRはフロー変数であった。けれども,Rのスト ヅク変数に対応するものを考慮することも興味深いであろう。Rが一定のスト ック量に達したとき,それが累積的な効果をもつようになることも考えられ る。  これらの諸課題を考慮しつつ,革新活動の投入一成果の規定要因とそれらの 相互関係をヨリー層整理する必要がある。       参 考 文 献 〔1〕 明石芳彦「企業規模,研究開発および特許・実証分析」『六甲台論集』第28巻第2  号,1981年7月。 (2) Blumenthal, T., “Japan’s Technelogical Strategy” Jour. of Development Econo−  mics, vo1.3, no.3, Sept.ユ976. (3) 一, “A Note on the Relationship between Domestic Research and Deveiopment  and lmports of Technology”, Economte Dewelopment and Cultural Change,vol. 27  noJ 2, Jan. 1979. (4) Caves, R. E. & Uekusa, M., lndustrial Organixation in Japan, Brookings lnst−  itution, !976. (5〕 土井教之「企業規模,野曝支配力および研究開発」『経済学論究』 (関西学院大)  第31巻第3号,1977年10月。 〔6〕一, 「企業規模と研究開発活動一産業別計測  」『経済学論究』第32巻第1  号,1978年4月。 〔7〕越後和典『寡占経済の基礎構造』新評論,1969年。 〔8〕 一, 「望ましい技術進歩と産業組織」『東回経済』臨増,近経シリーズ,1972年

(24)

  9月20日。 〔9〕 Friedman, P., Berg, S. V.,&Duncan,工,“External vs. Internal Knowledge   Acquisition=∫oint Venture Activity and R&DIntensity”Jozar.げEconomics   and Business, vol. 31, no. 2, winter, 1979. 〔10〕 後藤晃「日本の技術進歩と研究開発」『現代経済』no.43, Summer.1981. 〔11〕一,「戦後日本の技術革新一その特質をさぐる」『東洋経済』累増,近経シリ   ーズ,no.59,1981年12月10日。 〔12〕 箱田昌平・井口富夫・田中美生『日本における企業規模と研究開発』,近畿大学世   界経済研究所,1980年。 〔13〕 今井賢一「情報,技術,企業規模一展望と若干の実証一」,今井・村上・筑井   編『情報と技術の経済分析』所収,日本経済研究センター,!970年。 〔14〕小林好宏「研究開発と産業政策」,加藤・中村・新野編『経済政策(3)一旧本の産   業政策』第7章,有斐閣,1971年。 (15) Mansfield, E., /ndustrial Research and Technological lnnowation, W. W. Norton   &C◎.,1968,村上・高島訳『技術革新と研究開発』,日本経済新聞社,1972年。 〔!6〕 中村静治『戦後日本の技術革新』,大月書店,1979年。 (17) Odagiri, H., “R & D Expenditures, Royalty Payments, and Sales Growth in   Japanese Manufacturing Corporations”, lnstitute of Socio−Economic Planning,   Discussion Paper Series No. 123 August, 1981. 〔18〕 小田切宏之「研究開発と技術進歩の経済分析』『東洋経済』臨増,近経シリーズno.   59,!981年12月10日。 09) Peck, M. J., & Tamura, S., “Technology” in Patrick, H., & Rosovsky, H,, eds.   Asia’s New Giant: How the Jmpanese Eeonomy W”orfes, Brookings lnstitution,   1976,金森久雄監訳『アジアの巨人・日本皿貿易・産業組織・技術』日本経済新聞   社,1978年。 〔20〕斎藤優『技術移転論』女眞堂,1979年。 (21) Scherer, F. M., lndustrial Market Structure and Economic Performance, Rand   Mcnally, 1970. 〔22〕Schumpeter, J・ A・, Capitalism, Socialism and 1)emoeraeツ, Harper&Row,1942,中   山・東畑訳『資本主義・社会主義・民主主義』第3版,東洋経済新報社,!965年。 〔23〕 新庄浩二「企業規模,収益1生,生産性」『国民経済雑誌』第141巻第3号,1980年3月。 〔24〕篠原三代平・浅川清志「技術進歩の産業別計測」『経済分析」第48号,1974年7月。 〔25〕植草益「研究開発」J「寡占産業の市場成果の計量的分析』所収,公正取引委員会,   !973年a。 〔26〕一,「産業組織とイノベーション」,土方・宮川編『企業行動とイノベーション』   日本経済新聞社,1973年b,(〔27〕に再録)。 〔27〕一,『産業組織論』筑摩書房,1982年。 〔28〕渡部経彦・荏開津典生「技術進歩と経済成長一戦後日本の製造工業を中心とする   1つの試論一」,嘉:治元郎編『経済成長と資源配分』,岩波書店,1967年。

参照

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