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資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界

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Academic year: 2021

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(1)Title. 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界. Author(s). 石沢, 澈. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 17(1): 1-15. Issue Date. 1966-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4321. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 第1 7巻 第1号. 北海道教育大学紀要 (第一部B). 昭和4 1年6月. 資本主義発展の分析用具としてのマルクス. 経済学の効用と限界 石. 沢. 轍. 北海道学芸大学旭川分校歴史研究室. Toru 1もH i i i i 【 lzAWA : Ut t t esand Limi softhe M[arxian Economics i l on the Developmen七 of Cap l as an Analyt i i t caI Too a sm. 目 序 説 1 近代経済学とマルクス経済学との相違 代経済学が長期動態の展望論を欠く 2 近’ 理由について 3 シユソペ【ターの経済学 マルクス経済学の資本主義分析用具とし ての効用 1 マルクス主義の魅力の源泉 2 マルクス経済学は, 長期資本主義運動 法則の分析論 a 歴史主義的な長期動態論の強み b 前期資本主義成立期のイギリス経済 の分析理論 c 前期資本主義発展過程の構造の分析 用具としてのマルクス経済学 3 マルクス経済学説の中で, 今日も問題 ときれる価値をもつ経済理諭の内容分析. a 剰余労働及び剰余価値論一労働価値 b 資本集中の法則と労働窮乏化の理論 { } 利潤率低下の理論 m 資本主義発展の分析用具としてのマルク ス経済学の限界性 1 現時点における先進資本主義国の変貌 1. 1. 序. 次 の事実 a 自由主義的資本主義社会の前提 b 社会正義の理念の成立 c 資本家・経営者の分離と労働組織の 強化 d みえざる資本 e サラリーマン階級の増大 f 国民所得層の拡大 g 社会主義国家について 2 マルクス経済学固有の限界性 a 自由放任主義的資本主義の分析 b 簡単肉体工場労働者の経済学 c 簡単工場生産過程分析の経済学 I V マルクス経済学を止揚した長期動態分析 の経済学の要望E経済学の相互補完的立場 1 近代経済学からマルクス経済学への接. 近 a. J. ロ ビ ンソ ンの場 合. b P, スウィージーの場合 2 経済学説の限界性 a 社会階級性よりみたる経済学の分類 b 経済活動の分野別分析による分類 c 各経済学の時代的意義 3 各経済学の相互補完的立場. 説. 近代経済学と マルクス経済学との相違. 資本主義発展史の分析用具という観点からみた場合の, 近代経済学とマルクス経済学の特色の 相違について, 概観する, 近代経済学は, 一般的にい って, 資 に主義の短期の微視的静態分析 が 主 であるから, 資本主義発展の長期的な展望, 或いは亘視的動態分析の理論に欠ている, j, ロ ビンソンは, 近代経済学は, 経済の静態分析では, 精密な理論であるが, マルクス理論.

(3) . 石. 沢. 徹. の中に豊かにもりこまれた長期動態の分析が欠けているとのべている, それ故に, 彼女はその著 ) 「マ ル ク ス 経 済 学」 の 序 文に1 , 「か れ (マ ル ク ス) の理 論 の 実 際 の 理 解 と,. マ ルク ス によ っ て. 提起された長期発展の大問題を解決するため, かれの理論を応用することとは, 経済学を有用な 科学な らしむる綱領の基礎を提供 しているものと思われる」 とのべ, その方法論と しては, ケイ ンズの有効需要理論が, 資本主義の運動法則を解明するための手掛りを与えるものであるか ら, マ ル ク ス 経 済 学 が 問 題 と した 問 題 を, ヶイ ソ ズ 理 論 を 足 場 と して 解 明 して み よ うと の べ て い る.. この言葉か らも, 近代経済学が長期的動態の理論に欠けていることはみとめ られる. P, ス ウ ィ ー ジ ← は, 初 め ケ イ ン ズ 理 論 を 中 心 と して 近 代 経 済 学 を 学 ん だ が, 後 にマ ル ク ス 経. 済学について研究 し, 「資本主義発展の理論--マルクス経済学の諸原理」 を著 した. この著書 について, ドッ ブは評していうには, 「本書は, マルクス の資本主義分析の概要を, かれの価値 および剰余価値論によ って解明 し, こ の解明を二十世紀 の世界の主要な特徴の検討と結びつける という長所をもつ, 一つのいちじる しい特徴は, 著者がたんに分析の教程と しては, マルクスの 諸理論には興味を寄せない点である. 資本主義社会の歴史的過程--運動法則を解明するための ) と 指 摘 して い る, 模 型 と して の, マ ル ク ス 理 論 の妥 当 性 い か ん に 主 た る 関 心 が 注 が れ て い る」2. スウィ榊 ジーは, マルクス理論の個別的 な問題よりも, 近代社会の経済的運動法則を明らかにし よ うと して い る こ と に関 心 を も っ て い る こ と を 指 摘 して い る. ス ウ ィ ー ジ ー も, 「資 本 主 義 発 展. の理論」 (中村金治訳) の序説に, 「経済問題に関係が あると広く みなされている社会関係につ いて, 経済学者といわれる人が, 体系的な探求を避けていることは, いまや明白であるといえよ う. また, われわれが社会と称するものを形成する人間と人間との複 雑な諸関係全体において, 経済的要因の演ずる役割を解明 するという, より大きな任務をはたすには, 近代経済学のとる 基 3 ) 社会関係につい て, 近代経済 本的見解が不適当であることは, なおい っそう明らかであろう」 学が体系的な探求をさけ, また方法論と してもその任でないことは明 らかであるという. 「近代経済学の中心的教義や信条にたい して, それが人間関係にかんする真 の社会科学と して ) 即ち, 経済 学が社 4 は, 欠陥が あるという観点か ら, それの細密な検討に着手することである」 会科学の一つであるならば, 複雑な人間関係や社 会関係を除外 した近代経済学は, 社会科学と し て 欠 陥 が ある. そ れ 故 に, ス ウ ィ ー ジ ー は, マ ル ク ス 主 義 経 済 学 に転 じた と い う.. 2. 近代経済学が長期的動態の展望論を欠く理由につい て. p 【 ザ ン ヌ 学 派 - - レオ ン ・ ワ ル ラ ス によ っ て 創 始 さ れ た ロ ー ザ ン ヌ 学 派 は, 一 般 均 衡 理 論 を. も って特色とするが, それは静学的均衡分析といわれる, ヒックスは一般均衡理論の完成者とい われる が, 価格・需要・供給な どを中心に, 徴視的分析の最高峰といわれる, 純粋経済学の方法 論を, 一定の条件の中に限定する, 需要量・供給量・ 価格・労賃・利子とい う経済的数量とその 運動 のみを取扱うを経済学 の任務と した. その際に, 当然, 人口・欲望・技術・政治などいう経 済をとりまく周辺的条件は与件と して, 即ち, 変 らざるものという想定の下に研究 し, 経済法則 ) 5 を明 らかにす べきものと した. そ して, この方法論こそ は, 純粋経済学と考えた. オ ー ス トリ ア 学 派 - - メ ン ガ ー, ウ ィ ー ザ ー, ポ エ ー ム ・ バ ヴ ェ ル ク らは, 効 用 分 析 を 中 心 と. する限界効用 の原理をもとにして, 経済学の体系化をはか らんと した. ダイヤモン ドは水よりも 何故に高価であるかというような問題を, マルクスの労働価値説 の方法によ らずに, 主観的価値 観 によ っ て解 決 した が, そ の 点 では マ ルク ス よ り も 適 切 な解 明 だ と い わ れ る, 他 方, メ ン ガ ー の. きイヒで, 歴史学派 は 古典経済学を批判 し, 経済学 出た頃の経済学界 は, 歴史学派経済学の隆盛= の理論の成立を危くする勢であった, メ ンガ は,. かかる歴史学派 の態度を反駁 し, 経済理論の - 2 ー.

(4) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界. 復位を求めて戦 った, 歴史研究の必要はみとめるが, そこからは何らの理論も, 法則も導き出さ れない, 故に, 理論・法則の発見のためには, 抽象化による演釈法によ らねばならぬと し, 理論 分析と歴史記述を峻別 し, 経済学は理論分析を主とするが, 歴史記述はその補助的役割を果すも のであると した. その結果は, 経済学は, 静態学的な, 短期的分析に終始し, 資本主義の命運 に 6 ) 関する歴史的展望を全く欠く に至 った. ケ ン プ リ ッ ヂ 学 派 -- ケ ン プリ ッ ヂ 大 学 の マ ー シ ャ ル に 始 ま り, ビ グー, ケイ ン ズ へ と 発 展 し. た経済学である, マーシャ ルは, 需要供給の法則を基と して, 均衡価格理論に, 短期と長期の概 念を導入 した. マーシャ ルのいう長期とは, 生産設備の増減をみる期間をいうの であって, 資本 主義の長期的動態分析を指すものではない, その意味で, マーシャ ル理論とても, 静態的分析 で ある, メ ン ガー と 異 っ て, マ ー シ ャ ル は 歴 史 学 派 経 済 学 に 対 して は, 対 立 的 で は な か っ た が, 資. ) マーシャ ルのあとをついだ ピグーは, 現資本主 7 本主義の歴史的展望を課題とは考えなかった. 義体制の中 で, 富の再配分が達成できるかをテーマと し, 当面の資本主義社会の課題を解決せん と したのであるが, ケイ ンズの場合は, 現資本主義体制下の失業問題の解決策をテーマと した, ケイ ンズの 「長期理論」 なるものが, 我々がここで問題と しているような長期的動態理論でない こ と につ い て は, 杉 本 栄 一 氏 が 論 じて い る と こ ろ で あ る, 「こ の よ う な 長 期 理 論 は. 実 は 生 産 お. よび所得水準を一定と して構成された貨幣論における 短期理論に対する意味の長期理論であるに す ぎ ず, い まだ な お 技 術 の 一 定 と い う仮 定 に束 縛 さ れ て い る, そ の 意 味 に お い て, シ ュ ン ペ ー タ. 生産設備の新設やその変 8 ) と 化に附随するすべての長期現象を考慮 していないか ら, 巨視的静態論のそしりを免れない」 ー も 批 判 して い る よ う に, ケイ ン ズ経 済 学 は, 一 般 理 論 に お い て さ え. 批 評 して い る, 3. シュンペ ータ ーの経済 学. 広 い 意 味 で の p ー ザ ン ヌ 学 派 に 属 す と い わ れ, オ ー ス トリ ア 学 派 の 後 継 者 と も い わ れ る シ ュ ン ペ ー タ ー は, 上 述 の 経 済 学 者 と 異 っ て, 異 色 の ある 理 論 を 展 開 して い る, シ ュ ン ペ ー タ ー は, ワ. ルラスの価格理論には, 最大の賛辞を表 したが, その経済学は, 静学的・微視的分析であって, 静態的過程 に対 してのみ 適用 できるが, 長期的動態論を欠く を遺憾と し, 独自の資本主義動態論 を創唱 した, 資本主義を資本主義ならしめるものは, 企業家の新結合による. 新商品, 新生産方 法の導入, 新市場, 新原材料の開拓, 新経済組織の達成などの新 しい結合による. 資本主義発展 の機動力は, 衆に先んじて新結合を試みる企業家の行動 によ るものであり, 資本主義経済を動か ) 8 す力は, 企業家の経済行動によると した. 日本資本主義の発足を, 明治維新にありとするな らば, 三井の三野村利左衛門, 住友の広瀬宰 平, 三菱の岩崎弥太郎, 日本資本主義育ての親の渋沢栄一, 五代友厚などは, 資本家ではなく, シュ ンペ ーターのいう企業家であった, 福沢諭吉は, 「文明論之概略」 巻五に, 経済の発達のた めには, 蓄積資本が企業家によ って, 投資されなければならぬことを論じ, 従来の豪商は, ただ 蓄積するのみで投資企業するを知 らないことを批判 している. 近江商人の如きは, 巨万の富を有 しな がら, 新時 代に即応 した企業活動ができなくて没落 しているものが多い, またシュ ンペーターは, 資本主義の発展の歴史を,マルクス の資本家と労働者の二大階級の階級 斗争による歴史的発展とはみず,資本家, 企業家, 地主, 労働者の四階級 があり, 階級斗争よりも 階級協調の歴史であるとみる. 日本資本主義の発展は,階級協調とまではいえないと しても, 階級 斗 争 の歴 史 で あ っ た な どと は い え な い, ミ ー ゼ ス が「理 論 と 歴 史」の 中 で, 印 度 の カ ス ト制 を 引 い. l o ) て, 階級とは何であるかを論 じているが,歴史が二大階級の対立の歴史であるとは断 じえない. - 3 -.

(5) . 石. 沢. 撤. 資本主義の将来については, マルクスは資本主義は行詰り失敗 して, 社会主 義 に向うというに 対 して, シュンペ ーターは, む しろ, 資本主義は連続的発展のうちに, 資本主義とは異った他の 社会類型, 広い意味での社会主 義に到ると みている, 資本主義の終鴇のある べ きを予告する点で は, マルクスと同 じであるが, 成功の中に転形するとみる. 今日の先進資本主 義国が, 福祉厚生 国家を理想と しているのみ でなく, そのために国家 が多大の努力を払 っている現状は, シュ ンペ ー タ ー 理 論 の正 しさ を う ら づ け る も の が あ る,. 資本主義についての長期的展望をもつシュンペーターの経済学が, 広く 民衆的なものにならな いのは, 企業家の活動につい ては深い理解があるが, 工場労働者の立場については, あまり深い 理解 がみ られず, 広く労働階級や社会運動家の支持がえられないためであると思われる, マルク ス経済学に比 して, シュ ンペ ーターの経済学は, 変貌をとげつつある先進資本主 義国の社会を分 析する経済学である ために, 労働者階級への同情的分析が感ぜ られないか らである. シュ ンペーターの理論は別と して, 多くの近代経済学者には資本主義の長期動態分析 の理論が み られ な い の は, 先 に の べ た 通 り で あ る,. n. マルクス経済学の資本主義分析用具と しての効用. マルクス主 義の魅力の源泉 .像 マルクス主 義が, 経済学と しては批判 しつく されたにもかかわ らず, 大衆に魅力をもたれ, 1. 力 を 発 揮 して い る 最 大 の 理 由 は, シ ュ ソ ペ ← タ ー や カ ー ル ・ レ ビ ッ ト が い う よ う に, そ の予 言 者 的 宗 教 性 によ る, シ ュ ン ペ ー タ ー は, 「マ ルク ス 主 義 は 宗 教 で あ る. 信 奉 者 にと っ て は, そ れ は. 第一に人生 の意義を体現 し, かつ事件や行動を判断する絶対的基準となる究極的目的の体系を与 え, 第二に, 救済計画と人類 ない し, その特定部分が救い出さるべき罪悪の予示とを含むかよう な目的 へ の指針を与える, さらにすすんで, マルクス主義的社 会主義も, また, 墓穴のこなたに 天国を約束 する宗教の一派に属するものと明記 しえよう」=) マルクスは, ュ ダャ的な予言者宗 教の精神をうけつ ぎ, 地上に神の国を約束する御利益宗教である. マルクス の経済学が純粋に科 学的なものならば, 現在みるようなマルクス理論よりも, もっと完全であったと しても,「決 して マルクス理 論のかち得たよ うな歴史的意味におけ る不朽性を獲得 しなかったであろう」 という. ) の 中 で, マ ル ク ス の そ れ が, 2 カ ー ル・ レ ビ ッ トは, 「歴 史 の 意 味」1. ュ ダャ の 予 言 者 的 宗 教 性 を. もっていることを論 じ, 予言者的であり, 終末論的であり, メ シヤ主義的であることを説明して いる, マルクス主 義の魅力は, 予言者宗教からうけつ ぐ宗教性, しかも現世御利益的な宗教性に あることは明 らかである, 共産党は, 宗教であり, 思想団体であり, 政党であり, 秘密警察であ り, 軍隊が一体化 したものである, そこから恐ろ しい力が発揮される, マルクス主義の第二の魅力は, その唯物史観による歴史解釈で ある, 小泉信三氏は 「近代経済 9 マルクスの個々の経済観は, 分析的にみれば, すべて先人よりうけつい だもの ( 1 思潮概観」 で, であり, 剰余価値論 の如きも, 先人の説くと ころで, マルクス が付加したものは, ただ唯物史観 のみ で ある と い う,. 歴 史 の 経 済 史 的 解 釈 に つ い て は,. ケ ン ブ リ ッ ジ 大 学 の バ タ ー フ ィ ル ド教 授. ) 歴史をとかく 精神的 にみる人には, マルクス理論は読む価値があるが一 唯物的にしかもの 1 4 は, を み れ な い 人 には, 害 に な る と の べ て い る. マ ル ク ス が 歴 史 を, ど の 程 度 に, 経 済 的 に解 釈 す べ しと い っ た か に関 して, セ リ グマ ン は,「歴. 1 5 ) の中で, マルクス自身は, 決して, 歴史の動因を, 経済的要因が唯一の要因 史の経済的解釈」 と は 主 張 して い な い と して, マ ル ク ス ・ エ ン ゲ ル ス の 晩 年 の 論 文 を 引 用 し 論 証 して い る, 最 初 の.

(6) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界. 頃の論文では, 誤解を与えるような女もあったが, 歴史は決 して経済的要因によ ってのみ動かさ れる も の でなく, 他 の 要 因 も み と め て い る と 弁 じて い る, 1, ベ ル リ ン の 「カ ー ル ・ マ ル ク ス」 ) マ ルク ス の 真 意 が あ や ま ら れ て, マ ル ク ス は 迷 惑 で あ る と い っ て い た こ と を あ げ て い 6 伝 でも,1 る,. なお, レーニ ンによ っ て発展させ られた帝国主義論は, 後進国や植民地であった国々 にと っ て は, 民族的団結の強固な思想的武器となっている, しかし, ここでは, マルクス経済学の経済学 としての価値, 経済動態の分析用具と しての価値を問うのが, 本論文の目的である, 2. マルクス経済 学は, 長期資本主 義運動法則の分析論である,. a. 歴史主 義的な長期動態論の強み. 7 ) イ デ オ ロ ギ ー や政 我 々 が マ ルク ス 経 済 学 を 問 題 と す る の は, j. ロ ビ ン ソ ン と 同 じよ う に,1. 治的意見を除外しての, マルクス経済学そのものの価値を問題と しようと思うのである. マルク ス経済学は, 資本主義の運命に関 して強い関心をもっているので, その叙述の是非は別と して, 資本主義の長期の発展史についての分析に詳しい, それのみ でなく, 叙述の方法 が, 倫理的, 即 ち, 社会正 義の主張のための論文というよりも, 資本主義の歴史的発展の事実の中に, 分析の結 論を見出さんとしている態度 が, 今日においても, 歴史的考察において, 価値あるものを残 して いるからである, 小泉信三氏も, 「マルクスは, 現行制度の倫理的是非はとわず, ただそれが発 展の道程上, 其自体の内に包蔵せらるる矛盾のために, 必ず崩壊すべき約束を担うとすると同時 ) もの 1 8 に, 共有的社会組織は現行制度の崩壊の時には, すでに胎内に成就 していると主張する」 であると解説している. 資本主義の倫理的批判ではなしに, 歴史的考察につとめていることに, ある意味において真実を含んでいると思われる, 繁栄から, 不況・恐 慌へ と発展 してい ったある 時期の資本主義の経過の解明については, 真実が含まれている, シ ュ ン ペ ータ ー は, マ ル ク ス に つ い て の べ て い る, 「マ ル ク ス の 理 論 に 関 す る か ぎ り, そ の 判 決 は マ ルク ス に と っ て は 不 利 な も の で ある, マ ル ク ス は しば しば 誤 謬 を 犯 した. だ が 彼 に た い す. る反対者もまた正 しかったわけではない, またマルクスが個々の点で行なった貢献も酌量してや らなければな らない. このマルクスにたいする判決をくつがえそうとする気持を人々 がいだくと した ら, そ れ は つ ぎ の 理 由 に もと づ い て い る, マ ル ク ス が どれ ほ ど理 論 的 誤 謬 を 犯 した と して も,. なおそれをく つ がえすに足る 一つの偉大な業績をもっているからである. それは自律的に歴史的 1 9 ) 要するに, 資本主義経済体制 時間の中に進行するような経済過程の理論という考え方である」 が, 全体 と して, ど うい う 運 命 を と る か と い う 問 題 を, マ ル ク ス が と り あ げ て い る こ と が, マ ル. クス理論の長所だというに ある. 近代経済学者の取扱っていない問題を取扱っているということ である. しか し, 近代経済学者の中にも, かかる問題について研究 しようとするものもあらわれ て きた, ケイ ン ズ 学 派 の 中 の 人 た ち で, マ ル ク ス を 研 究 した 人 た ち - - た と え ば J. ロ ビ ン ソ ン や ク ラ. イン一一は, マルクス 経済学の最大の特長である資本主義の運動法則の発見という課題に 大きな 魅力を感 じた, 近代経済学の理論は, ケイン ズ経済学を除けば, 微細な問題に関するもので, 悪 くいえば遊戯にふけ っているために, 現実感覚を失っている, マルクス経済学の分析方法は あら けづ りである が, それだけに資本主義の本質をえぐりだそうとする理論は, すぐれた 長所をも っ て い る と 考 え た,. 正統派経済学者たち が, 資本主義制度を, 自然の永遠の秩序の一つと して受けと っているに対 - 5 -.

(7) . 石. 沢. 撒. して, マルクスは, それを過去の封建経済から, 来るべき社会主義経済への, 過渡的な段階とみ ることによ って, 資本主義の歴史的変化の動態に鋭い関心を示 して いる, 正統派経済学者が, 資 本主義制度を, 自然の永遠の秩序とみ, その法則は自由放任主義に あるが, 自由競争の中に, 自 然の調和がもた らされると したろに, マルクスは, 自由放任, 自由競争の経済の発展の必然の結 果として, 資本家と労働者の間に, 利害の対立が生 じ, 恐慌・失業の激化の中に, 階級斗争は 緊 追化し, 資本主義は崩壊 して, 社会主義社会に至ると, 資本主義へ の死の宣 告を与え, 同時に資 0 2 ) の中で, 古典経済学の 本主義経済学の死を警告 した, アソリ・ ドゥエは, 「経済思想の危機」 危 機 を 宣 した と こ ろ に, マ ルク ス の 意 義 が ある と の べ て い る,. b. 前期資本主義成立期のイ ギリス経済の分析理論. マルクス経済学は, 上述のような長所をもっていると ・しても, 如何なる時代の, 如何なる国の 資本主義にも, 超時間的, 超空間的に適用 しうる分析用具でないことを明 らかに しておく 必要が ある. ス ミ ス ・ リ カ ル ドウ の1840~60年 代 のイ ギ リ ス は, 自 由 競 争 の 全 盛 期 で あ り, マ ルク ス の. 1 860・70年代は, イ ギリス資本主義の世界史的発展をとげ, 自由競争の発展の極限の段階 で, 世 界市場の恐慌にも見舞われるという時代であった. スミス・リカル ドゥの古典経済学は, 旧社会 か ら解放されつつあっ た新興 ブルジョ ア ジー, 即ち, 産業資本の利益を代弁するものであり, そ の意味で資本主義発展のための思想的武器であったが, マルクスの時代は, 18 25年以来, 不況や し 労働階級も次第に階級的自覚をもち 恐慌は周期的に勃発 , は じめ, 労資間の争議も激化 し, 1857年には世界市場の恐慌に見舞われるという, 資本主義の前途に暗い影を投 じは じめ, 資本主 義体制自体への反省が広まりつつあった 時代である. 同時に, 資本主義的秩序を, 絶対的, 窮極 的形態とする古典派経済学そのものが, 理論的に疑われ始めた時代でもあった. ア ダム,スミス のい った 「みえざる手」 による調和は現実に疑われ, マルクスは 「資本論」 によ って, 古典経済 2 1 ) 学に死の宣 告を した. しか Lリ 同 時 に, マ ル ク ス の時〉代は, G, コ ー ル や W. ス タ ー ク が の べ て い る よ うな時 代でも 0 ) に, マ ル ク ス が 資 本 論 を 完 成 しえ な か っ た あ っ た. G, コ ー ル は, 「社 会 主 義 思 想 家 の 歴 史」2. のは, 1 9世紀中葉以降に起った新 しい変化, 新中間層の増大, 労働者階級の生活水準の向上とい う事実に直面 して, マルクス がそれまで抱いてきた古い教条, 中間層の不断の消滅, 労働者階級 の絶対的窮乏化等の理論 で, 資本論第一巻を書いてきたが, 今やその理論をもって解明 しえぬこ とを感 じて, 資本論の完成を放棄 した. だから, 資本論全体は, 19世紀中頃までに発展 した資本 主義制度をのべたものであって, 「マルクスの晩年に生じた事柄は, その大部分が無視されてい る」 マルクスは古い経済学と資本主義の過去の現実に固執 しす ぎて, 19世紀中葉以降の新 しい経 済の現実に盲目であったので, 資本論を完成 しえなかったという. 3 ) の 中 で, た と え ば マ ル クス の 労 働 価 値 説 は, 先 輩 のス ミ ス . W. ス タ ー ク も, 「経 済 学 史」2. リカル ドウの時代には妥当であっても, マルクスの時代には, すでに資本構成が各企業間に相違 をきた しており, 単純な労働価値説では説明できない状況に あった, マルクス自身もそれに気が ついて, 第三巻で生産コス ト理論をもって補強せんと したが, 第一巻と第三巻の間に矛盾を生ず るに い た っ た. そ れ は と に かく と して, コ ー ル は マ ルク ス の 資 本 論 は, 経 済 理 論 と して は, 陳 腐. なもので, 非科学的なものであり, 学ぶべき価値の少いものであるが, 1 9世紀中頃までの, イ ギ リス資本主義発展の歴史記述という意味では, 称賛すべき精確なものであると考えて いる. 以上のべてきたことを, 資本主義分析用具と して, 日本資本主義発展の歴史などを考慮に入れ て, 概念化 してみると, 次の如く いえるであろう. マルクス経済学は, 前期資本主義成立 期の動 - 6 -.

(8) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界. .至上の状態と理念 しているが, 自 態についての運動法則を分析するものである, 自由放任主 義を 企業の独占と弱小企業の危機 由競争の結果は, 強大な , 相対的過剰生産による恐慌と失業者の輩 出という現象を生じ, 金融信用制度は, 援助を必要と している産業活動を助けるまでの組織と力 をもつまでにはいた らず, 労働階級は階級的に自覚をもち始めたとはいえ 未だ充分に組織労働 者と しての力をもたず, 低賃金・長時間労働に甘ん じ, 資本家は社会的責任に無自覚な時代につ いての, 鋭いメスたるを示 している, 日本資本主 義発展史上, 女工哀史や足尾銅山鉱毒事件や蟹 工船が書かれ大正末年より昭和初期にかけての, 不況・恐慌に見舞われ, 日本資本主義も崩壊の 前夜かと思われた時代の分析と しては, 適切なメスであると考えられる, 同時に, マルクス経済 学の重要な特色は, 後にも論述するが, 簡単労働を主と した, そのよう な労働者が, 工場生産活動の主体をな している時代の, 簡単肉体的工場労働 階級の利益と社会的 公平を主張する経済 学である, 経営者の側からいうと, 主として中規模の, 所有者兼経営者の企 業が優勢な, 前期資本主義時代に見出される型の経済の分析である. 企業家に理解のあるシュン ペーター の経済学と異り, マルクス経済 学は, 労働階級の社会的犠牲の存続する限りは, その理 諭は生きつ づけるであろう, そのような事情 が存 しなく なる時には, マルクス 経済学は, 陳腐な 古い歴史的文献と して, 塵に まみれることになる. サラリーマ ン階級の多い, 今日の先進資本主 義国では, それ が革 命的勢力を生み出す力とはな らなくな ったのは, そのような事情によると解 さ れ る.. c. 前期資本主義発展過程の構造の分析用具と してのマルクス経済学 自由競争.自由放任主義の下における資本主義は, その本来の性格と して, 発展過程に おいて, 労働者の搾取は必然である, 資本家は, 競争の過程で, 資本の蓄積と投資によ って, 企業の拡張 策をと らざるをえない, 企業が今日のように巨大化せず, 金融信用制度も充分に発達せず, 従っ て労働者の賃銀を低く し, 設備の拡張をせざるをえず, またそれが可能 であった, かかる時代に は, 労働者の生活の窮乏化や, 恐慌, 失業者の輩出が必至であることを, 経済的運動法則として, 必 至 で ある と 解 明 した こ と は意 義 の ある こ と で あ る, シ ュ ン ペ ー タ ー も, 「マ ル ク ス が 資 本 主 義. 発展は, 資本主義社会の基礎を破壊するということを主張するにとどまるかぎり, なおその結論 84 7年に啓示されている は真理たるを失わないであろう. そしてその真理 がすでに疑いもなく, 1 こ の ヴ ィ ジ ョ ン を 私 が あ えて 深 遠 な も のと 呼 ん だ と して も, そ れ は け っ して 誇 張 で は あ る ま い, そ れ は 今 日 で は あた り ま え の こ と に な っ て い る. そ れ を あ た り ま え の こ と に した 最 初 の 人 は, グ 4 ) ス タ フ ・ シ ュ モ ラ ー で あ っ た」2 しか し, マ ルク ス は, 資 本 主 義 に つ い て の, そ のよ うな 運 動 法 則 を 明 らか に した 時 に, 「自 由. 放任主義の社会経済体制の下での資本主義」 という前提 条件のあること, その前提条件が変 るこ とのあることについて, 充分に自覚 していなかったことが, 資本主義の運命についての予想を誤 り, 彼の追従者をして, 非科学性に走 らせる結果を招いている, マルクス学説によれば, 国家は 修正資本主義的な政策をも ってしては, 資本主義の体制的な矛盾を取除くことはできない, 政府 自 身 が ブ ル ジ ョ ア 政 府 だ か らだ と い う. しか し, 現 実 に は, て は あぶ な い と 知 り つ つ 走 る ほ ど愚 か では な い,. ブ ル ジ ョ ア 政 府 と て も, 暴 走 して い. マルクス経済学説の中で, 今日も問題とされる価値をもつ経済理論の内容分析 マルクス経済学は五つの原則にたっているといわれる, 集中の法則, 剰余価値論, 二階級斗争 3. 論, 不況の過剰生産理論, 社会革命論である, 二階級斗争論, 社会革命論は, 腿吏認識論であり, 政 治理 論・で ある か ら, こ こ で は 問 題 に しな い,.

(9) . 石. a. 沢. 徹. ) 5 剰余労働及び剰余価値論--労働価値説2. 剰余価値論は, マルクス理論の要めの石といわれる, マルクス前に説かれていたが, マルクス はそれを唯物史観によ り, 階級的立場か ら搾取であると規定 した. ジイ ド・リス トは, 剰余価値 を所有階級が賃銀階級から搾取 して いることを, 社会学的に批判するの でなく, 経済学的に説明 6 ) 労働は 価値の唯一の源泉であり, 尺度 であるか ら 商品の価値は投下労働量によ 2 せんと した. , てきまる 生活に必要な必要労 労働者 は 働時間を働き その上に剰余労働時間 を働く, この剰 っ , , 余労働時間が, 剰余価値を生み出す. 資本家は, この剰余労働を搾取 したという. マ ル ク ス の 労 働 価 値 説 そ の 他 に つ い て, ポ エ ー ム ・ バ ヴ ェ ル ク は, 「マ ル ク ス 学 説 体 系 の 経. )なる著述で, 最も決定的な批判をした. マルクスの資本論第一巻と第三巻 では矛盾がある 2 7 錆」 . それぞれの資本では, 有機的構成が異っている. 可変資本と不変資本との構成の割合が異っ てい る. 軽工業部門 では, 一般に機械にたいする労働者の割合が相対的に多 いが, 重工業部門では, 高度に機械化されており, 従業員の割合がきわめて少 い, マルクス労働価値説か らいえば, 当然 に軽工業部門は利潤は高く, 重工業部門 では低いことになる. 然るに現実には逆である. 労働力 の少い方が利潤率が高い. 現実の資本利潤は従業員の数や搾取率には関係なく, 投下資本に対す る一定の比率で生れている. マルクスは, この矛盾について第三巻で答 えんと して苦心した. 第 三巻の説明は, 平均概念の濫用がみ られる, また, 交換価値をもつものは, 多様に あるのに, そ の対象を, 労働生産物に限定してし ・る. 簡単労働と複雑労働の関係に ついては, 循環論法に陥り, 需要供給の法則では, 都合のよい時は利用 し, 都合の悪いときは引込めている, と批判する. ケイ ン ズ 学派 の 人 々 は, マ ル ク ス の 労 働 価 値 説 を 全く 否 定 す る, マ ル ク ス か ら何 か を 学 ば ん と して い る 1. ロ ビ ン ソ ン で さ え も, 労 働 価 値 説 は マ ル ク ス の 中 に なく て よ い も の で ある. そ れ は. 経済理論では なく 宗教的信条であると批判 している. ケイ ンズ学派の人々の労働価値説の批判点 に つ い て ま と め て み る と, 1, 人間の労働は, 科学的に計算できないもの であり, 労働量は精密 には測 られないのに, それを可測的に取扱っている. 2, 利潤は搾取によるとせば, 搾取される 労働者の多いほ ど利潤率はよいはずである, しかるに, 実際は, 機械化のおくれた雇用労働の多 い産業が, 利潤率が低い, 科学的であろうとする近代経済学は, 労働価値説を頭から相手に しな. い, 近代経済学は, 商品の価値は, 労働だけ や, 資本の生産力か らのみ生れるとは考えない. 土 地・自然・資本・労働という生産に役立つものの結合の努力から生れる, 従 って, 剰余価値は, 土地・労働・資本の三つの合成か ら生 .れると考える, マルクスの労働価値説の困難性は, マルクス がその理論の適用の限界を明瞭に しなか ったこと に ある, ほぼ同 じ資本構成の下で, 工場生産に おける簡単肉体労働が生産工程で主役を演 じてい る時イヒの, 簡単な肉体労働の生産活動についての, 著 しい歴史的傾向と限定すればみとめ られる こ と で ある. 一 日 の 労 働 者 の労 働 が, 8時間も しく は 6時間労働でよいものを, 1 2時間労働を,. しかも悪条件の労働環境の下で働かされるということは 明 らかに搾取である. 企業家はいるいろ の新要素を結合 して, 利 潤を生み出す努力をするが, 企業の報酬が剰余価値のうち同%を占める べきかは測定は困難である, 企業家の, ぅべき報酬は, プラスの時とマイナスの時が ある. 企業家 の 企業 計 画 の ミ ス や, そ の 他 の 事 情 に よ っ て, 欠 損 や 倒産 の 場 合 に は, マイ ナ ス で あ る. しか し,. 企業が欠損 したか らとい って, 労働者のぅべき労賃は, 引下げられたり, 未払いにさるべきでは ない. 労働者には関係のないことである. 剰余価値の生じた場合に, 企業家 は どれだけを得べき 8 ) 企 業 家 の 手 に 入 る 総体 利 益、を, 1 も の か を 決 定 す る こ と は 困 難 で あ る, バ イ ・ ヒ ウ ェ ッ トは,2 ,. 借入れ資本か らの収入と企業家の仕事によるもの, 2, 管理労働への報酬, 3, 純利の三つに分 - 8 ー.

(10) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界 け てし・る.. マルクスは労働を, 簡単な肉体労働のみを考え, 複雑労働を, その中に解消 して考えている. 「商品の価値は, その労働が現在の生産能率水準 (社会的必要労働) に一致する限り, その商品 に含まれた労働量に比例すると主張する, 彼らはともにこの労働量を時間で測り, 異質労働を単 9 ) しか し, 資本主義の発達と高度化によ って, 智識 2 一基準に還元するのに同一の方法を用いる」 や技術, それを育成する教育 が, 価値を生み出す大きな経済的要因となってきたことか ら, 簡単 労働の生み出す価値は, いよいよ少なくなってきた, それ故に, ドラッカーは, 「今日の社会の 生産的労働とは, 智識と理念をはた らかせること, つまり手ではなくて, 知力を働かせることで 3 0 ) という. 今日では, 経営担当者の養成や技術者の養成が, きわめて生産力向上のために ある」 は重要である. 従って, マルクス の労働価値説は, 技術革新の甚しくなか った, 簡単労働を主と した労働が, 生産の主たる役割を演 じていた時代 の分析と しては, 妥当性をもっていた, ) 1 b, 資本集中の法則と労働窮乏化 の理論3 3 3 ) 資本主義の体 剥奪の法則である. 資本集中の法則または マルクスの主要なもう一つの説は, 制では, 資本が少数の資本家の手に集中されてゆく, シュンペーターは, マルクスの「集中理論」 の 予 言 性に つ い て 称 賛 して い る, 「マ ル ク ス の時 代 の情勢を思い合わせるな らば, 大企業の出現 を予 言 す る と い う こ と だ け で も, た しか に 一 つ の 偉 業 で あ っ た, しか も マ ル ク ス は こ れ 以 上 の こ. とをな しとげている. 彼は巧みに資本集中を蓄積過程に結びつけた, というよりは, む しろ, 彼 は集中を蓄積過程の一部と して, しかもその事実上の型の一部分と してのみならず, その論理の 一 部と して も認 識 して い た, マ ル ク ス は こ れ に 引 き つ づ い て 生 ず る 結 果 の あ る も の に つ い て は,. 正 しく理解 していたが, その結果の他のものについては, 少なくとも一方的な, あるいは歪曲さ 3 ) れ た 方 法 で しか 理 解 してい な か っ た」3. ) 否定的な資料をもって, 「集中の法則」 を批判した. 大企業はその数 3 4 ベ ルンシュタイ ンは, と力を増大しているが, 統計上では, 小産業・小商業は, む しろ増加している, 何か新しい企業 を見出している, 財産が少数者の手に集中されるというのも, 統計的には逆 である. 資本家の割 合は多く なっている, 株式会社も, 無数の者の手に 財産を散布する役割を果 している. マルクス のいうような不況や恐慌な どを通じての, 大企業への相対的な資本の集中化の傾向は, 大正末より昭和初期の恐慌期には, 日本資本主義は 著 しい傾向を示 したが, このような資本集中 の傾向も, アメリカ・イ ギリス・ ドイツ・日本など, それぞれの国情で異り, 代表的資本主 義国 アメ リ カ ,イ ギリ ス では,. ) アメ リ カ の 経 3 5 ドイ ツ ・ 日 本 よ り は, は る か に 集 中 化 の 傾 向 は低 い,. 済 学者 サイ モ ン ズ は, 独 占 は 容 易 に 治 療 の可 能 な 皮 膚 病 で あ る と して い る,%) ア メ リ カ では, 自. らの手で, 反トラスト法を制定する民主的傾向をもっている. 資本集中の法則の裏は, 労働窮乏化論である. マルクスは, 資本が少数の資本家の手に集中 し て, 中小企業は没落 してゆき, 労働者の生活は窮乏化 してゆく という. しか し, これについても, 実 際 の統 計 上 では, む しろ, 向 上 して い る, シ ュ ンペ ー タ ー も, マ ル ク ス の 窮 乏 化 論 は, 事 実 に. 艮統計を附会したり, または, 相対的窮乏化の意味 あわないことを指摘し, マルクス主義者 が賃金 前は, 決 して低下の傾向を示 する賃銀・俸給の相対的分け り しているが 総所得に対 に解釈した , 7 ) して い な い と 批 判 して い る.3. 資本主 義は, 生産力を高めて, 労働者の生活は向上 していることは, 統計上にあらわれた事実 である. しかし, エ ンゲルス が, 十九世紀初期に, 英国でみたイギリス労働者階級 の姿は, マル クスのいうよ うな資本制経済下の労働窮乏化 のモデル・ケースであり, 当時の状態をよく 描写し.

(11) . 石. 沢. 徹. 3 8 ) 二 十 世 紀 の 現 状 か らみ る と き は, 修 正 す る 必 要 が あ り, カ ウ ッ キ ー ・ ベ ル ン シ ュ タ イ て い る.. ンの修正論が生れるのは当然である, 日本資本主 義の発達過程でも, 戦前の独占資本形成期に い たる時期の分析と しては首肯させるものがある, 前期資本主義の理論と して限定 してみ 、れば, そ の分析にもかなりの真実性のあることがわかる, 十ブむ世紀 の 英 国 の 労 働 事 情 を 語 る も の と して は, マ ル ク ス 説 は 正 しい と み て よ い が, そ れ では. 何故に, マルクス の法則が貫徹されなかったかについて の解明こそは 重要 である, ス トレッチ- ) 100年 間 の ヨ ー ロ ッ パ の 労 働 事 情 を み る と 労 働者 の 分 配 の 比 率 は, 二 倍 増 に 達 L 9 は,3 ・て い る. ,. マルクスの窮乏化法則が貫徹されなか ったのは, 政治からの働きかけ, 即ち, 民主主 義の力であ る, 代議制度や労働階級の民主的な圧力がこの法則の貫徹を抑えた, 第二次大戦後は, 労働階級 の力は 一層強くなったと説明 している. 我々歴史家のみるところと全く 一致 した説明である, 0 ) c. 利 潤 率 低 下 の 理 論4. 資本家 は搾取した価値を, 資本へ転化し, かぎりなく 資本の蓄積へとむけ, 企業の拡大を試み る, 資本は相互に激烈に利潤をめぐって競争を展開 しているので, 大規模に機械を採用 し, 資本 の有機的構成は, 加速度的に高度化されてゆく, マルクス の理論によれば, 剰余価値は可変資本 から生れ不変資本から生れない. 故に, 不変資本の割合 が大となると, 利潤率は次第に低下して ゆく, もちろん利潤率低下を阻止す るために, 生産力の改善が行われる. 労働強化と労働日 の延 長, 価値以下への労賃の引下げ, 不変資本の諸要素の低廉化, 相対的過剰人口, 外国貿易の発展 な どが, 利潤率低下を阻止する要因である, しか し, 一般的利潤率は, マルクス理 論では, 剰余 価値率 (一人の労働者からの搾取率) が変 らぬから, 必然的に逓減 してゆくという, J, ロ ビ ンソ ンは, マ ル ク ス の 利 潤 率 低 下 理 論 は, マ ル ク ス の 他 の 理 論, 労 働 窮 乏 化 論と 矛 盾. する. マルクスは剰余価値率を一定と している, すると資本構成の高度化に伴 って, 生産力の上 昇につれて, 当然労働者の実質賃銀も上昇するは ずである, 実質賃銀 が上昇することが事実であ れば, マルクス の労働窮乏化論と矛盾する, マルクス 式利潤率低下論をとれば, 労働窮乏化論を ずてねばならぬ. 4 1 ) 資本主義の有機的構成は, 第一大戦までは高度化 J, M. ヂルマンの統計的研究によれば, 9年までは, ブぐ体水準に近く, 利潤率は し, それ以後は高度化の徴候はみせず, 剰余価値率は191 91 9年以後は, 剰余価値率は, 上昇の傾向にある. ヂルマソはいう, 低下の傾向を示 している, 1 我 々 の研 究 を1919年 ま で で止 め る と, マ ル ク ス の理 論 は 完 成 さ れ る が, 1919年 以 後 に な る と, 乗り. 余価値率の急激な上昇傾向があり, かつ利潤率の上昇の傾向がある. よ って考えるに, マルクス 919 の利 潤率低下の理論は, 1 91 9年前の資本主 義の動向については正 しいものがあると しても, 1 年以後の, 独占資本主義梁メヒでは, 利潤率低下の傾向を阻止する不況対策と しての, 不況カルテ ル, 不 況 トラ ス トの 発 達 に よ っ て, 低 下 の 傾 向 を 阻 止 して い い る と 考 え られ る, かく して, マ ル ク ス の 説 は, 1919年 前 の 一 般 的 傾 向 と み る 場 合 に は, 是 認 さ れ る も の が あ る の で は な い だ ろ う か,. m 1. 資本主義発達史分析用具としての, マルクス 経済学の限界性. ) 2 現時点における先進資本主義国の変貌の事実4. 現代はサラリーマンの時イヒであるといわれる, マルクス経済学では, 労働者の必要労働時間を 可測性 のものと したが, それは主と して簡単肉体労働を考えてのことであ って, 今日のサラリー マンの労働は, 高度の知識と科学技術を要するものであるから, その労働の必要労働時間は不可 測性のものである, サラリーマンは小市民的と批 評されているが, 若き日は簡単労働’的仕事に従 - 10 -.

(12) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界. 事 していても, 長 じては会社や社会の管理者, 少くとも中間管理者になる階級である, 現代の先 進資本主義国は, 如何にマルクスの時 代の資本主義と違ってきたかの変貌の事実を概 観 し て み る.. a. 自由主義的資本主義社会の前提. 自由主義的資本主義経済社会は, 不自由な, 拘束的な封建経済社会体制を打破 して, 経済界の 自由競争・自由放任を経済政策の原則と した, 国家は経済界の自由競争に干与 したり介入 したり すべきではなく, 夜警の番人をすれを よ い, ア ダ ム ・ ス ム ス に よ れ ば, 経 済 界 は 自 由 競 争 ・ 自 由 放任の中にも, 「みえざる手」 によ って, 調和に達するものである, 経済 の発展には, 自由主義 経済の必要なるを主張 した, 日本では福沢諭吉が, 自由自在論を主張 した, b 社会正義の理念の成立 自由主義経済の下に, 経済は大いに発達 してきた. だがア ダム・スムスの予想に反 して, 経済 界の自由放任主義の結果は, 調和に達するよりも, 恐慌の度 ごとに, 利益を独占する独占資本が 発達 し, 中小企業は没落 し, 失業者は増大するという社会矛盾が起 った, それに伴 って労働 運動 や社会運動が激化 し, 識者 や政府の間か らも, 社会政策を 実施するは当然であると考えるように なっ てきた, 経済は自由放任に任せるべきではなく, 自由主義とい っても, 経済の自由の運動の ままに まかせて, 人間はそれについてゆく のではなく, 人間が経済 の運動を, 自由に操縦すべ き であると考えるに至 った, この理念によれば, 国家は夜警の番人の役目よりも, 積極的に経済社 会の動きを指導 し, 計画的に社会福祉を達成すべ きものであり, そのような責任を負うものであ 4 3 )政 ると考えるようになった. サムエルソンは, 現代の資本主義を, 混合資本主 義体制とよぶ. 府が経済機能を果すことがましてきたからであるという, 反トラス ト法の制定, アメリカのニュ ・デール政策, 恐慌をさけるための, ケイ ンズ主義による有効需要の換起のための財政投融資 政策, 社会政策・社会保障制度の充実は, すべて国家の責任のあるところと考えるようにな った, c 資本家と経営者の分離と, 労働組織の強化 資本主義経済社会体制は, これまでの通念によれば, 資本家が蓄積資本をもち, 何か利益とな るような事業を起 し, 労働者を雇い, 生産 し販売するもので, 資本家とは企業と財産について, 全く これを自由に処理 し, 執行 しうる所有権をもち, 労働者の採用と解雇も自由にできるものと 考えられ, 従って社会構造も, 資本家と労働者という二大階級の対立的構成の如くにみ られてい た,. 然るに, 今日アメリカでは1 0万人の株主 があり, これらの資本家は会社を少 ,800万から2 ,00 しも自由にすることはできない, 大会社を動か しているものは, 管理職といわれる, 資本家な ら 4 ) 企 業 家 と 資 本 家 を 区 別 して い る サ ラ ざる, 少 数 の 経 営 陣 の 手に あ る, バ イ ・ ヒ ュ エ ッ ト も,4 ,. リーマン重役や社長が掌握 している, 生産担当の任にあるものは, 高度の技術の知識をもつ技術 陣であり, 管理経営の任にあるものは, 高度の経営と管理の知識をもつ経営陣と事務組織である, 労働者についても, その採用と解雇, 賃金の引下げ, 引上は, 労働組合との契約によるので, 会 社の自由にはな らない, 会社は, 国家 や同業組合団体からの干渉や強制によって自由ではない, d みえざる資本 上述のことと関連するが, 大企業の資本には, 「特許と工程」 という, みえざる特殊な資本が ある, 簡単にいえば, その会社の科学技術者の組織と, 工程管理の組織とである, 日本では, み えざる資本と しての, 科学技術組織と工程管理組織とを, 重視する理念が確立されていないよう だ,. - 11 -.

(13) . 石 e. 沢. 撤. サ ラ リ ー マ ン1階級 の 増 大. かっては, 農民層を別と して, 資本家・労働者 の二大階級の構成 が, 社会を構成 しているもの と 思わ れ て い た が, 今 日 で は, サ ラ リ ー マ ン 階 級 が, アメ リ カ で は90% を 占 め る に 至 り, 英 ・ 仏 ,西独な どでは, 60~70%を占めるといわれる, これ らのものは, 事務的・技術的な特別の知識 をもち, 取締役とか社長という会社の責任者・経営者陣は, これから多く輩出し, 少くとも中間 管理者は彼らの手のと どくところにある, 大企業ほど, 社長・重役陣は, 資本家な らざるサラリ ーマン階級 の所属のものが多くな ってきた, サラリーマ ンは, 従来のような, 簡単肉体的労働の みでは量 られない, 高度の科学技術的知識と, 事務的・経済 的・経営的知識をもち, 経営陣への 参加も可能な階級である. 国家企業の場合も同 じである, これ らの養成にあた っているものが, 教育界である. これも今日では巨大化され, 教育機関も, 生産に大きな役割を果 している. f 国民所得層 の拡大 国民所得という点でも, これまでは少数の資本家の手に利益が吸収され, 労働階級は窮乏の一 途をた どり, 資本主義は崩壊するものと思われていた が, 植民地を失ったにもかかわらず, 国民 000万人の間に分 所得は増大 し, 広く国民の間に分配されてきた, アメリカでは1 ,800万から2, 配されている, 日本でも同 じ傾向をたどりつつある, のみならず, 今日では, 先進資本主義国の 貿易の相手は, 同 じ先進資本主義国同 志 であり, 貿易の大半を占めている. 生活程度も, 日本の 場合をみても, 広い層が向上 している, 米・英では生活程度は向上 し, 高度化 し, 革命的衝動の 温床を少く している. g 社会主 義国について 一枚岩的共産圏も, 中ソ対立が自覚され, ソ連は生産向上と発展をはかるため, 米ソ共存政策 をとり, 資本主義利潤方式をとり 入れんとさえしている, マルクス 経済学固有の限界性 マルク ス経済学が, 先項にのべたような変 貌の事実をみとめようと しないのは, マルクス経済 学固有の限界性を示すものである, 如何なる経済学も, そうであるように, 一定の抽象化方法を 2. とる場合に, 「中心的な仮説」 を前提とするからである, マルクス 経済学の 「中心的な仮説」 が 何であるかをみよう, a. 自由放任主義の資本主義分析. マルクスは資本主義は本質的に自由放任主義であり, 政府は ブルジョア階級を代表するから, ブルジョ ア階級の利に反するような政策はな しえないと考えている. しかるに先進資本主義国で は, 労働法を制定 し, 社会立法を始め, 社会保障制度, 社会保険制度をつくって, 勤労大衆の生 活を守るを当然とするようになってきた, マルクス が, 資本主 義は自由放任主義が絶対不変の性 格であると仮定 していたところに, 彼の経済学の限界性がある, b. 簡単肉体工場労働者の経済学. 4 5 )資 封象 し, T マ ルク ス 経 済 学 は, ス ウィ ー ジ ー も 指 摘 して い る よ うに, 資 本 = 労 働 関 係と してヰ. 本論第一巻 は, すべてこの抽象化方法に従 ってとかれている, 即 ち, 生産関係を, す べて簡単肉 体工場労働 り者の立場で, 抽象化 している. 従 って, 労働とは可測性のものであると把握される, 工場労働者階級の立場からみ, その利益と権利を主張する経済学である, 最も労働者階級の自覚 4 6 ) シュンペ においてとかれた経済学である. F, ケネーの経済学は農業経営者の経済学であり, ーターの経済学が企業家の経済学であるとするならば, マルクスの経済学は, 徹底 した意味での, 簡単肉体工場労働者 の経済学である, マルクスは, 商業については全く理解 がなく, 詐偽・附着 - 12 -.

(14) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界 4 7 ) マ ル ク ス 経 済 学 が, 今 日 の サ ラ リ ー マ ン の 経 済 学 で な い こ と は 自 明 で あ と しか 考 えな か っ た, る,. c. 簡単工場生産過程分析の経済学. マルクスは, 工業生産の領域に生起する資本=労働関係の形態を, 近代資本主義社会にと って 4 8 ) ア ダム・ス ミ ス の 最 も深 い も のと して と ら え, 商 品 の 分 析 も, こ の 抽 象 化 に よ っ て 説 明 した, の場合は, 鍛 台屋 で ピ ンを つ く っ て い る 製 造 工 場 が, 経 済 分 析 の 基 礎 と な っ て い る よ うに, マ ル. クスの場合は, 繊維製造業 (軽工業) の, 簡単作業の繰返 しの製造工場 が, 経済分析の基礎とな っている, かかる工場生産過程の, 局部的分析からみた 経済観を, すべての経済現象に拡大 し, すべてをその観点から分析せんと した, したが って, 農業生産活動における 土地の意義はみとめ られず, 同 じく商品の分析とい っても, 企業家が従事する企業活動 の面が全く理解されない, 需 要供給の著 しく作用 し, 価格形成を行なっている市場の問題や, 消費者や公正取引委員会などの 行なう経済活動については, マルクスは全く無理解である, 要するに, 企業活動, 交換経済活動, 消費者の経済行為などについては, 適切な把握 がみ られず, 簡単労働の工場生産労働者 の生産過 程の中からみた偏った経済学である, W マルクス 経済学を止揚した長期動態分析の 経済学の要望--経済学の相互補完的立場 近代経済学からマルクス経済学へ の接近. 1. i, ロ ビ ン ソ ン の 場 合 j. ロ ビ ン ソ ン は, ケイ ン ズ学 派 の 人 で あ る が, 「経 済 生 活 の 近 代 に お け る 進 展 に 強 い られ て, a. ……自由放任の資本主義の作用を安易な気持でながめたが っていた 経済学者の態度を一変せ しめ ) と し, マ ル ク ス が 提 起 した 問 題 9 られ た, か れ らは マ ル ク ス か ら大 い に 学を な け れ ば な らな い」4. のあい まいな点を, 近代経済学の有効需要の分析法に よって解明 し, 資本主 義の運動法則の研究 の 基 礎に しよ うと い う, マ ルク ス 学 説に つ い て の, 個 々 の ロ ビ ン ソ ン夫 人 の 批 判 と 分 析 は 省 略 す る, b. p, ス ウ ィ ー ジ ー の 場 合 ス ウ ィ ー ジ ー は, ケイ ン ズ理 論 を 学 び, 後 に マ ルク ス 経 済 学に 転 じた, 近 代 経 済 学 に 欠 け て い. る, 資本主義の歴史的・長期的展望の理論を, マルクスの一つの典型にならって作りだそうと し た. 「近代社会の経済的運動法則を明 らかにすること」 がポイ ントであるが, マルクスは資本= 労働関係という抽象化の方法によ って行なった, しか し, 抽象化された理論は, 現実にあてはめ るには, 広範囲の修正が必要であり, マルクス理論の法則とは, 傾向とでも解 すべきものである ) 0 5 と い う. ロ ビン ソ ン やス ウ ィ ー ジ ー が, マ ル ク ス 経 済 学 の 中 か ら動 態 理 論 を 学 ば ん と す る の は よ い が,. マルクス 経済学の社会史的, 歴史的位置づけを明瞭に しようと していないこと が, マルクス経済 学の法則の意味を正 しく把握できないように している. 2. 経済学説の限界性. 歴学派を別と して, いずれの経済 学も, 一定の条件設定の下での理論である, 政 治体制が変 ら ず, 従って経済政策 が変 らず, 外国との関係が変 らず, 技術革新が行なわれず, 人口 の増加率 が 変 らないとい うような前提条件の下での理論である, ローザンヌ学派の純粋経済学の方法論は, 人口, 欲望, 技術, 政治などいう経済をとり まく周辺的条件を与件と して, 変 らざるものとの想 定の下に, 需要量, 供給 量, 価値, 労賃, 利子という経済的数量とその運動のみを取 扱うものと - 13 -.

(15) . 石. 沢. 徹. 1 ) 静 態 経 済 学 に つ い て, 労 働 及 び 資 して い る. アメ リ カ の 理 論 経 済 学 派 の 巨 頭 J, ク ラ ー ク は,5. 本の量が一定, 生産様式の改善が停止, 資本の合同 が止み, 消費者の欲望が変動 しないという仮 定の下に生ずる価値, 賃銀, 利子等についての, 静的自然率を求めるにあると した, 一定の条件 の仮設の下に, 経済理論をたてんとするのは, 理論経済学に共通の傾向である, しか し, すべて の経済学が, 階級的傾向や, 時代的限定, 国民的利益擁護という傾向をもっている, そこで, 即 席的ではある が, 経済学の分類の一試案を提供する. a. 社会の階級性よりみたる経済学の分類 ケネーの経済学は, 農業経営者の経済学である, ヶネーは, 「土地は富の唯一の源泉に して, 富を増加するのは 農業のみである」 とい った, マルサス 経済学は, 地主階級擁護の面を もってい る. リカル ドゥの収穫逓減の法則は, 資本主義的農業者の経済法則であるといわれる, ア ダム・スムス以前の重商主義者の経済学やスミスの自由貿易論は, イ ギリスの商業・貿易業 者の経済学であり, リス トの保護貿易主義は, ドイツの商業・産業家の経済学である, シュンペ ーターの経済学は, 企業家の経済学, ドラ ッカーの経営理論は, 企業経営者・サラリーマンの経 済学である. スウェーデンのウイクセルの経済学は, 社会福祉のゆきとどいた安定 した社会で生 活する利子生活者の経済学. ポエーム・ バ ヴェルクの経済学も金利生活者の経済学に近い, ハイ エクの経済学は, 銀行業者の経済学. マルクス 経済学は, 簡単工場労働者の経済学. b 経済活動の分野別分析による分類 農 業 生産 部 面 の 分 析 で は, ケ ネ ー, マ ル サ ス, リ カ ル ドウ, 企 業 活 動 部面 の 分 析 では, シ ュ ン. ペーター, 工場生産過程部面の分析では, マルクス. 流通過程部面の分析では, メ ソガー, ジェ ヴオ ソ ズ, ポ エ ー ム ・ バ ヴ ェ ル ク の 経 済 学, ワ ル ラ ス やマ ー シ ャ ル も 含 む, 消 費 活 動 部 面 の 分 析 では, ポエ ー ム ・ バ ヴ ェ ル ク や ピ グー, ケイ ン ズ, ヒ ッ ク ス, バ レー ト の 経 済 学 がす ぐれ て い る,. c. 各経済学の時 代的意義. 封建制経済を打破 し自由主義経済の確立期のア ダム・スミス, 農業本位より工業本位に脱皮す る過程期のマルサスとリカル ドウ. 英国自由主義経済優勢期のミル, それに対抗する ドイツのリ ス ト, アメ リ カ の レイ モ ン ド, フ ラ ン ス の フ ェ リ ェ. 労 働 階 級 拾 頭 期 の マ ル ク ス や社 会 主 義 者, 資 本 主 義 擁 護 と 社 会 主 義 擁 護 の 対 立 時 代 の, マ ー シャ ル, ジ ェ ヴオ ソ ズ, メ ン ガ ー, ウイ ー ザ ー, ポ エ ー ム ・ バ ウ ェ ル ク, ワ ル ラ ス らに 対 して, 後 者 は ベ ル ン シ ュ タ イ ン, レー ニ ン, ホ ブ ソ ン, カ ウ ッ キ ー, ヒ ル フ ァ ー デイ ン グ ら. 現 代 先 進 資 本 主 義 国 の 経 済 学 に は, サ ム エ ル ソ ン, ヒ ッ ク ス の 新 厚 生 経 済 学, ハ ロ ッ ド, ロ ス トウ, ク ラ ー ク らの 成 長 経済 学, レオ ン チ ェ フ の 計 量 経 済 学, ドラ ッ カ ー の 経 営 経 済 学 が 入 る,. 3. 各経済学の相互補完的立場. それぞれの経済学が, 理論の構成にあた って, 抽象化の方法をとるために, 階級的, 局部的, 時代的, 国民的限定をうけるのである. 上述の分類方法は, 一応の, 即席的な分類であるが, も っと詳細な研究によ って訂正 し, それぞれの経済学を, 歴史的時代と国民的性格と局部的経済部 5 2 ) そのためには, 面を明確に位置づけて, より高次の相互補完的観点にたつことが要請される. 歴史学派経済学の協力をえる必要がある, 杉本栄一氏の経済学説史の序章に, 筆者ののべんとす ると同一意見を見出 したのでそれを引用 して澗筆する, 「それは 経済の理論と歴史とは, たがいに有機的に関連 している, という根本的な考え方か ら, それぞれの経済学説を, それが生いた った社会の, 全体と しての歴史状況に昭応させて理解する ) 5 3 という型の経済学史である」 - 14 -.

(16) . 資本主義発展の分析用具としてのマルクス経済学の効用と限界 註 1) J 9) 原著序. s(戸田・赤谷訳 p c .3) ,Robinson: an essay on Marxian Economi ,17) ,4 l i td ta 2) P,Sweezy: The theory of Capi l s eve opment(中村訳 p.37), 3) p,8, 4) p.9, 45) p.16, 50) 序. 5) 近代経済学研究会編 :マルクスとケイ ンズ, 白杉庄一郎 : 経済学史概説 p,336, 46) p.73, 6) 波多野鼎: 現代の経済学 p.1-30, p,31-104, 7) p,161一212, 9) p,213-268, 51) p,105‐160. 8) 杉本栄一 : 近代経済学史 p.168, 53) p.6, i i l i 9) } sm,Soc 1)p 9)p a sm and Demo 0, ra c c y(中山東畑訳, 上) ,Schumpeter: Capital ,6 ,8 ,1 ,1 24) p .40 ,79 .62, , 29) p , 33) p,61 , 37) p i f l t i t l e de r Wi 同 上 : Theor twi s cha chen Bn r ck ung(中山, 東畑訳) t 10) Ludwig Von Mi se s: Theory and Hi s o t γ,p ,102-158 . 1L6wi ing m Hi 1 Marx) th: Mean t 12) Kar s ory (Kar 13) 小泉信三: 近代経済恩潮概観 p.69 .58 , , 18) p d: Hi i i l t 14) H, ButterHel t s s ory) at an Hi ory and Human Re on (marx ion of Hi i l t t 15) E.Se ory erpr clnt e at s gman: The Economi . in: Kar l I Marx 16) lsaiah Ber ,p・122 , i 20 se del ) Hen「i Denis: La Cr a pensge 賞c onomi que(松浦訳) 2 1) 内田・小林5編 : 経済学史講座1(経済学史の基礎) i l 22) G.Co tory ofSoc i t Thought p s e: A Hi al s .300 . W.Stark : The Hi 4 t s c s ory of Economi p , , 52) p.1-2 , . 5. 23 ) 25 ) 26) 27) 28) 30) 3 1) 3 4) 3 5 ) 3 6) 38) 3 9 ) 40) 4 1). 資本論第一巻参照.. de and Ri Gi ine Ec i t st: Hi s r or e des Doct on omi que(宮川訳, 下春 p.205, 32) p,205, Bるhn t -Bawerk: Zum Abshl l uss des Marxs chen S s en(竹原訳) y Bye and Hewe t t: The Economi c Pr oces s .636 ,637 , 44) p . ,p P. Drucker: The Prac i t ee of Ma na gement(現代経済学研究会訳). 資本諭, 第1巻23章 「資本蓄積の一般法則」. i i in; Di ia i demo 1 E.Berns 1 1 t e r smus und di a ‘ rat e e voraus et zungen deS soz e au王 gaben der Soz. (金原訳) 経済学新大系m (独立) 第1章 (独占の形成と発展) immons: Economi H.S i i l c Po cy f ora Free soc eヒ y , i l F. Enge l t enden K1 a s sein Bng and. s: Di e Lage der arbe i t l J a sm, .Strachey: Contemporary Capi. 資本諭第三巻第三篇 「利潤率低下の傾向の法則」. ing Ra lman : The Fa l l l J t eof pro賃t , . Gi t t: 同上著 p 42) Bye and Hewe t の河野・服部訳 「資本主義の将来」 s sa e r .34 , p 636: Robert Fo f Ma l e: l rx wereto Return: 宮 崎 及び J ,Timbergen の清水訳 「新しい経済」: Adorf A. Ber. 義一の 「近代経済学における現代資本主義観」 を, 綜合し, まとめた. son: Economi 43) P.Samuel c s .p ,37 . 47) 資本論第2巻4篇第20章 (商人資本に関する歴史的考察) 48) 資本論第1巻第1章商品 : 経済学批判第1章商品.. - 15 一.

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参照

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