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地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開 : 生徒会による鉄道存続運動と中高一貫教育における特設科目の事例からの考察

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Academic year: 2021

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(1)Title. 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開 : 生徒会による 鉄道存続運動と中高一貫教育における特設科目の事例からの考察. Author(s). 武田, 泉. Citation. へき地教育研究, 60: 123-135. Issue Date. 2006-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1208. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開 ─ 生徒会による鉄道存続運動と中高一貫教育における特設科目の事例からの考察 ─. 武. 田. 泉. (北海道教育大学岩見沢校助教授). 本稿ではまず,地域に根ざした特色ある高校の教育活. はじめに. 動について,今日教育行政がどのように問題意識で取り. 今日的な地域課題として,地方における過疎化が挙げ られ,状況は深刻化の一途を呈している。地方部におけ る教育問題としては,学校の統廃合による廃校の危機が. 組んでいるかについて,北海道教育委員会提供資料によ り,概観することにする。 次に,地域に根ざし教科に位置付けた特色ある教育活 大雪基礎. まず指摘される。他方交通問題に目を転じても,モータ. 動として,中高一貫教育における特設科目. リゼーションの進展による地方交通の衰微,とりわけ路. 他を教育課程で基幹的科目として位置付けている北海道. 線バスを含め,地方鉄道の廃止問題は規制緩和による需. 立上川高校(道内上川支庁上川町)について取り上げる。. 給調整条項の撤廃に連動した鉄道事業法の改定で認可制. さらに,教科外の活動による地域に根ざした特色ある. から届出制へと撤退の自由が拡大したため,全国的にも. 教育活動の事例として,生徒会による鉄道存続運動であ. 存続の危機に立たされている地方鉄道は少なくない。道. る,茨城県内の. かしてつ応援団 (事務局. 県立小川. 内では,北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線が目下廃. 高校,小川町)と ちん電守ろう会(日立電鉄の存続を. 止届出がなされ,廃止手続きが進展している状況である。. 求める高校生連絡会)(事務局. 今日,そうした地方鉄道・ローカル線の最大の顧客が運. 田市)の つの事例を取り上げ,検討していくことにす. 転免許を持たないいわゆる. 交通弱者 ,すなわち高齢. 者と高校生であることは,数十年前から知られている。 そうした意味ではむしろ教育問題だとされている (青木, )。しかし,教育の視点からは,地方における通学. 県立佐竹高校,常陸太. る。 その上で,本稿で取り上げた教科内外の特色ある教育 活動事例から,いかなる今日的な課題があるか探ってい くことを目的としている。. 交通問題は従来あまり取り組まれていないと言えよう。 地域と教育課題との関わりについてのもう一つの観点 として,地域立脚型教育活動が挙げられる。教育・教科 内容としての地域に根ざした教材・テーマの意識的選択. .教育行政サイドの施策としての地域立脚型 教育活動. については,総合学習としての好個なテーマでもあり,. まず,教育行政サイドが教育施策として地域に根ざし. 様々な実践報告はなされている。しかし,現代の政治的. た(つまり地域立脚型)教育活動についてどのように把. な要素も含めた社会的課題,主として社会科的なアプ. 握しているかについて,文部科学省や北海道教育委員会. ローチによる地域に根ざした教材・テーマの実施につい. の施策について触れておきたい。. ては,重要性が高いにも拘らず,その論議はまだまだ十. 文部科学省のホームページでは, 地域に根ざした教. 分とは言えない。ここでは,生徒が主体的に社会的活動. (学校行 育 としては,学校ボランティアによる奉仕活動. に関与しうるのは,発達段階からして高校生以降とする. 事),地域コミュニティの復権に向け地元との交流,地. ため,主たる研究対象を地方部の高等学校とすることに. 域の人材育成や人材活用の面から外部講師を招いての特. する。. 別授業,体験重視の環境学習,等が取り上げられている。.

(3) 武 田. 泉. また教育制度面では,中高一貫教育校における新たな. 情報発信のため,必要に応じてネットワーク会議や推進. 取り組みが重点的に取り上げられている。とりわけ,本. 会議がもたれており,文部科学省の政策への対応として. 稿でも取り上げる上川高校は注目すべき事例として文部. も配慮がなされている。. 科学本省でも認識されている。 次に教科内容面としては,資料. これら教育行政サイドからの施策の展開では,人材育 を取り上げながら見. ておきたい。. 成や特定科目,地域連携等がテーマとなっており,地域 に根ざした教育活動の観点からの把握としては,地理学 的な観点も踏まえて再構成する必要もある。本稿では,. 資料. 中教審の社会・地理歴史・公民専門部会でのこれま でに出された主な意見(平成 年 月 日現在). 昔は,暗記することと,考えることを両立した生徒が 今より多くいたように思う。全体の学力が低下しているの ではないかと感じる。地域について総合的に学び,地域や. 中教審専門部会委員が提起した 力の育成 や. 地域・郷土問題の解決. モータリゼーションによる産業変革とい. う時代背景の下での地域理解. の観点から,以下の諸事. 例を検討していきたい。. 郷土の問題を解決できる力の育成が必要である。 地方では,電車が限られた地域にしかなくほとんどが 自動車での移動である。そのため,郊外型の大規模量販店 が出現し,そこに人が集まり,これまでの中心地がさびれ てきている。産業が大きく変革していることに,社会科の 内容は応えられているのか。. .中高一貫教育における地域に根ざした特設 科目の展開 ─ 上川高校の場合 ─ )上川町の地域事情 ここで取り上げる北海道立上川高校は,道内中央部の 上川支庁管内の上川町の市街にある(図 道の分岐点にも位置し(. 号線・. )。同町は国. 号線,旭川紋別自. 地理等の教科内容に関わる地方の地域事情について,. 動車道(建設中の高規格道路) ) ,層雲峡温泉等の全国的. 中教審でも 地域について総合的に学び,地域や郷土の. にも著名な観光地を有し,日本最大の国立公園である大. 問題を解決できる力の育成が必要性. や. モータリゼー. 雪山国立公園の山麓の町となっている。 同町は歴史的に,. ションや産業の変革に社会科の内容は応えられていない. 明治期の開拓以降国有林を中心に広大な奥地山林を抱え. のでは との意見が出されていることが理解される。. ていた。第二次世界大戦後,洞爺丸台風による大量の風. 次に道内における取り組みについて,北海道教育委員. 倒木処理のための大量伐採を行うべく,同町内には一時. 会の施策について見ておきたい。北海道教育委員会では. は営林署を つも有した時期もあった。しかし,外材輸. 重点施策の一つとして, 夢と活力あふれる高校づくり. 入の進展による拡大造林施策の破綻,森林劣化と環境重. 年度から始まったこ. 視の施業体制への移行による伐採量の大幅減少等によっ. の施策では, 校の奨励校での取り組みの結果,生徒や. て,林業は大きく衰微し,人口減少に拍車がかかってい. 教師のモディベーション向上や地域連携の強化等が図ら. る。今日では環境重視の世相を反映し,大雪山国立公園. れている。このため,先行事例確認のための道内外の視. の自然保護や自然体験への模索が続いているが,地域の. 察訪問も行われている。また,この施策のテーマとして,. 振興策の実現は容易なことではない。さらに,道路の改. 学力向上 , 人材育成(次世代形成・特定分野卓越),. 良・建設は大きく進捗したものの,過疎化の進展も手伝. 推進事業. を推進中である。平成. 新教育創造 の観点が挙げられており,具体的には 学 ,いきいき体験 力フロンティア(学習指導方法の改善) (社会奉仕・自然体験等の充実による実践研究) , アン ビシャス (進路指導・起業意識支援), 人材育成 (. やネイチャー,環境問題への態度育成) , ふるさと. (地域体験活動による郷土愛他の育成) , 特定分野卓越 人材育成 (科学・外国語・専門教育の充実), パイオ ニア (高大連携,中高一貫,単位・定時・通信制の改善, 特色ある学科の設置)等が挙げられている。今日では, 過疎化や入学適齢者数の減少もあり,公立学校といえど も様々な差別化も模索されるようになってきており,学 校によっては求める生徒像(アドミッションポリシー) として入学者選抜で特色を打ち出すことで,学校の特色 化も図られている。なお道教委では,施策効果の掌握や. 図. 上川町(上川高校)の位置.

(4) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. い,. 石北本線をはじめとする公共交通機関の利用者. る敷地に立地していることを生かして,教師を柔軟に運. もモータリゼーションの影響を強く受け,減少傾向にあ. 用している点(例えば,芸術科の中学教師が芸術科目専. る。上川高校生徒の通学に鉄道が利用できるため,同校. 任者の不在な高校へ,もしくは逆に高校教師が中学へ出. の通学範囲は旭川市までの西方向に向いているが,東旭. 向いて指導する),さらには教科毎に特色ある科目を補. 川・当麻・愛別までの利用が中心である。一方で,支庁. 完したり少人数教育のため,スキル学習や基礎学習. 界を越えた網走支庁管内の白滝村方向には,北見峠を越. (. える普通列車の運行は. 往復のみで通学用の普通列車の. 運行は無く,通学者は見られない(武田,. ・ ・. ) 。. )を複数の教員によりティー. ムティーチング形式で取り組んでいる状況等も報告され ていた。同調査の結論としては,上川高校の場合. 地方. 部であり受験エリートの形成はなく,地方における中高 )上川高校(中学)の取り組み. 一貫教育の目指すべき成功事例 として,積極的に評価. このように上川町は,大雪山国立公園を有することか. されている。. ら自然環境や観光面では著名なものの,典型的な過疎地. 本稿ではこうした先行研究を踏まえ,中高連携という. 域である。このため,学齢期人口の減少で高校生も減少. 新たな学校携帯の中で,地域に根ざした特色ある教育課. し,地元高校の存続問題も浮上していた。そうした過疎. 程として独自な地域科目の設定と地理的な教科教育内容. 化への解決策として,特色ある高校の創造を既存校を活. との関連について考えていきたい。. 用した連携型中高一貫教育を模索することになった。 年に道教委から中高一貫教育協力校として指定を受. 同校における高校側での特徴的な学校設定科目として は,必修の 大雪基礎 , 大雪研究 , 生涯スポーツ. けて以降,同町においてこの取り組みが急速に進捗した. が挙げられ,これらは様々な体験活動で中高生が交流す. わけである。. る合同総合学習の中核科目として, 位置付けられている。. 上川高校の取り組みは文部科学省のホームページでも. 特に必修の. 大雪基礎. については,内容的にも北海道. 紹介されており,全国的にも著名な存在となっている様. アウトドア認定制度(北海道庁認定資格)での教科書を. 子が伺える。上川高校の事例は同ホームページ上では,. 用いており,この科目の履修で第一次試験免除の扱いを. 中高一貫教育校の設置状況 (平成. 年度までに設置). 。 として,概要が紹介されている(資料 ). 受けている。なおこの北海道アウトドア認定制度につい ては,その内容面等において様々な議論もある。 その他にも,巡検型現地学習や修学(見学)旅行も兼. 資料. 既設の中学校と既設の高等学校の連携. ・ 年間の一貫した地域・環境学習及び進路学習 ・総合的な学習の時間 大雪基礎 ,学校設定科目 大雪 研究 による中学校の学習の発展 ・中学校における基礎学習タイムの設定など中高の連携に よる基礎学力の充実 ・中高教員によるティームティーチング ・中高合同総合学習における様々な体験活動での中高生の 交流. ねた進路啓発総合学習として,次のような特設科目も設 定されている。 (資料 ) 資料 ・ 大雪地理巡検 ・ 地域環境学習 ・ 地域産業体験. 上川高校における巡検型現地学習 アウトドア宿泊研修(上士幌町,足 寄町方面) 石狩川水質調査 勤労体験・地元産業理解(温泉ホテ ルでの浴室の清掃,配膳). (文部科学省ホームページ掲載文書による). 次に同校の取り組みの詳細を,教育行政論の立場から. 地域や大学と連携をはじめ,上川町の姉妹都市である. 具体的に調査検討した,北海道大学教育学部教育行政論. カナダ・ロッキーマウンテン町との交換訪問や交流への. ゼミによる調査報告から検討していきたい(横井他. 参加もなされている。さらに同校生徒のうち,希望者・. )。. 有志は夏休み中に石狩川流域百. にわたる移動水質調. 同調査では,学校関係者や町教育委員会への聞き取り. 査(写真 )や,大雪山国立公園内で運行されるシャト. をはじめ,生徒や父兄へのアンケートがなされている。. ルバス車内での自然ガイドにも,毎年ボランティアで参. その問題意識としては, 中高一貫教育は果たして受験. 加している。特に後者は,同大雪山国立公園内の町内の. という観点が最も強調されて. 探勝拠点である高原温泉・銀泉台において自然保護を目. いた。そして教育行政論の視点から,中学から高校の接. 的に実施される自動車利用適正化要綱によるマイカー規. 続のあり方としての連携型入学者選抜が,同校では一貫. 制が, 秋の紅葉時期に関連行政機関によって行われるが,. 教育の内容による学習成果発表等を実施することで簡便. その際にマイカー規制のため運行されるシャトルバス車. に高校入試が行われている点や,中高がほとんど隣接す. 内で,来訪者に対して自然解説を行うというもので,同. エリートを形成するのか.

(5) 武 田. 写真. 泉. 発表する生徒たち. 濁度を機器で測定する実演をしている. 写真. 級生有志による. の結果を模造紙で報告. 石狩. 川で出会った藻の不思議 というものもあった。とりわ け各班とも個性を生かして堂々と発表していた姿や,会 場からの質問への受け答えの様子が印象的であった。ゲ スト講師や地元関係者の講評もあったが,来場者は発表 写真. 会の様子に満足したもののように受け止められた。発表. 取材に応える同校生徒. 会に参加してみて,こうした経験は従来型の高校生には 校生徒が一般の人に学習成果を聞いてもらう貴重な舞台. 無い貴重な経験ではないかと,あらためて感じた次第で. となっている。彼らは,夏休み中から自然解説に必要な. ある。そして同校卒業生の進路面でも,環境関連の大学. 知識について研修を積む,とのことである。. に進学したという成果も散見されており,一定の成果が. 筆者は,. 年. 月に同校が実施した. 石狩川水質調. 査発表会 ,すなわち全校的に取り組まれている国際調 環境のための地. 査の一環としての水質調査(. 認められる。 このように上川高校の事例は,地方部の高校改革とし ての成功事例として, かなりの注目を集めたわけである。. 球学習観測プログラム)に参加する機会を得た。当日, 同町市街地の大ホールには同高校全校生徒と同中学 年 生の他に父兄・行政等地元関係者や来賓(大高連携に積 極的な地元私大等)も集まって行われ,地元テレビ局も 取材に来ていた(写真. ・. ・. )。まず,同高校の生. .生徒会による鉄道存続運動 ─ 茨城県内の つの事例からの検討 ─ 次に,高校生徒会による鉄道存続運動が行われた. つ. 委員による開会宣言に引き続き,高校. の事例として, かしてつ応援団 (県立小川高校・県南. グループに分かれてパソコン(パワーポ. 部小川町等)と ちん電守ろう会(日立電鉄線の存続を. イント)を使って壇上に上がって発表した。班の名称も. 求める高校生連絡会)(県立佐竹高校・県北部常陸太田. 徒である 年生全員が. ゆかいな仲間たち班. みそしる班. 上卒のメガネ班. 等ユニークで,各班の方向内容も 濁度. 電気伝導度. 等,内容的にも同一ではないものであった。その他,上. 市等)を取り上げ,具体的に高校生らの活動の軌跡を追 いながら,その活動の特色を地域立脚性の観点から検討 していくことにする。.

(6) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. )茨城県内における地方鉄道問題の展開. 極的な姿勢を呈していた。. 茨城県内では,今日でも他府県と比べ中小私鉄が比較. 一方日立電鉄線は県北に位置し,常北電気鉄道として. )。県内を南北に縦貫する常. 年に部分開業したのを皮切りに,常北太田(常陸太. 磐線は,明治期に幹線日本鉄道海岸線として建設され,. 田市)から常磐線と連絡する大甕(日立市)を経て,鮎. 的多く残存している(図. それは国有化の後,国鉄を経て現在は. 東日本常磐線. の単線電化鉄道である。. 川(日立市)までの,. となっている。常磐線は県内を縦貫しているが,この路. 日立市側の終点の鮎川は,付近に日立製作所関連の工場. 線から外れた諸都市を結ぶべく,地方鉄道がいくつも敷. が比較的多く立地しているものの,中心市街地には至ら. 設された。しかし,中小私鉄の多くは第二次世界大戦後. ない日立市の南部郊外にあり,路線延長計画が中途で挫. のモータリゼーションの中,茨城交通水浜線や筑波鉄道. 折したことを示すものである。この鉄道会社は,日立製. のように廃止に至った路線も少なくない(中川,. ) 。. 年に突如. 作所の子会社となっており,日立電鉄は, として廃止を表明した。 ) かしてつ応援団. の場合. 地元行政のどちらかといえば慎重な状況下,沿線高校 生による活動が開始される。そのきっかけは,生活者と してのごく日常的な問いかけであった。 沿線の学校のうち,まず小川高校(小川町)で,生徒 会アンケートが実施された。同校では. 人に. 人が鹿島. 鉄道を利用しており, かしてつ がなくなったら,マ ジ学校辞めるよ。行けないもん! といった切実な声が 寄せられた。同校の生徒会顧問教員の助言もあり, み んな困っている。これは何とかしないと と同校生徒会 が立ち上がった。そして,沿線の中学・高校生徒会に呼 びかけて かしてつ応援団. を結成し,現在は沿線の高. 校・中学校の 校が参加している。なお,この. かして. つ応援団 の名称が,通常の略語の 鹿鉄 ではなく, か してつ となっているのは,現代の若者の感覚による語 図. 小川高校 鹿島鉄道と佐竹高校 日立鉄道の 茨城県内での位置関係. ・. 呂の良さである, とのことである (巻末資料. )。. そうして生徒会役員を中心とする高校生たちは,県知 事・市町村長等の行政トップへの手紙をはじめ,校内や. 鹿島鉄道線は,常磐線の石岡を起点に鉾田までの霞ヶ 浦北岸の田園地帯を走る で,. の未電化の地方鉄道. 年余りの歴史を有する。鹿島参宮鉄道として開業. 街頭での署名活動,文化祭でのかしてつ研究や支援の企 画,駅の清掃・美化等を展開していったわけだが(写真 ,. ),これらは高校生としてできるごく普通の活動 ,. し後に県南部の地方鉄道の合併で関東鉄道の一員となっ. を繰り広げたつもりであった。以下に資料. たが,収益性の違いから東京から比較的近く通勤圏に入. 手紙とちらしを掲載する(小川高校生徒会,. る常総線・竜ヶ崎線を残した関東鉄道本体からは分離さ. 年. でその )。. 月には,小川高校生徒会が先導した運動が沿. れた。筑波鉄道と共に独立した鹿島鉄道は東京通勤圏か. 線中高生生徒会に広がり,アピールを採択した。署名活. らはずれており,モータリゼーションによる利用者の減. 動でも, おばあさんに. 少という荒波をもろに受けることになった。こうして一 方の筑波鉄道は. 年余りと言う短期間に廃止を決め,. 年にバス転換されている。他方鹿島鉄道は今日まで. 交通手段が無いので,かして. つを残してほしい。頑張って. と言われて嬉しかった. などと高校生が感想を寄せている。次第に地元で有名に なり,やればやるほど褒められる という状況になった。 人分の署名を集め,マ. 存続しているが,それは自衛隊百里基地基地へのジェッ. こうして予想を大きく超える. ト燃料輸送を中心とする貨物輸送が存在したからであ. スコミからも取材を受け,大きく取り上げられるように. 年鉄道から転換される方針とな. なった。この署名を茨城県庁に届けた際,県知事とも面. る。その貨物輸送が. り,鹿島鉄道の存廃問題が一気に表面化したわけである。. 会し懇談の機会も持つまでになった。何もしていなかっ. 当初鹿島鉄道の沿線自治体は, 赤字の民営鉄道会社. たら,かしてつも小川高校(小規模校のため統廃合の可. に税金を投入するのは適当ではない として,支援に消. 能性有り)もなくなるかも。ぼくらが,地域を盛り上げ.

(7) 武 田. 泉. 資料. かしてつ応援団 から日立電鉄沿線の高校への手紙. はじめまして,小川高校で生徒会長をやっております大 枝と申します。このたび,日立電鉄廃線の話を耳にして何 かお力になれることはないだろうかと思い,お手紙をさせ ていただきました。 私達は,鹿島鉄道を応援することを目的とした団体, か してつ応援団 というものを昨年結成し,活動しておりま す。 かしてつ応援団 では,鹿島鉄道存続のために,沿 線の中学校と高校の生徒会が協力して,鹿島鉄道存続運動 をしています。鹿島鉄道も廃線の危機にさらされているこ 年の夏,百里基地向け とを御存知でしたか? 理由は 燃料の輸送が打ち切られたことと, 利用者の減少からです。 このことをきっかけに私達は, かしてつ応援団 を結 成したのです。 かしてつ応援団 として一番大きな功績 を残した活動として,署名活動があります。 年 月に 茨城県に公的支援を求める活動を行い,街頭署名などに取 を越える署名を県知事に届けました。これに り組み, 年から 年までの 年間で,県が 万円, より, 沿線の石岡市・玉里村・小川町・玉造町・鉾田町の 市町 万円補助を出していただけることになり, 村から 億. 写真 小川高校下駅 各種のポスターが貼られている. 年度までの存続が決定しました。 その他には,鹿島鉄道との懇談やビラ配り,駅のクリー ン作戦など様々な活動を行いました。 先日,このような活動を認めてもらい,日本鉄道賞の選 考委員会特別賞を頂きました。 年 月以降の事業継続が決まっているわけ しかし, ではないのでこれからも活動を続けていき,存続へ向け努 写真. かしてつ応援団が描いた小川高校下駅のデザイン. 資料. 小川高校生徒会による県知事・市町村長への手紙. はじめまして。私達は県立小川高等学校の生徒会です。 昨年 月の新聞報道で,鹿島鉄道の存続の危機の話を知 り,校内緊急アンケートを実施した結果,全生徒の が通学に鹿島鉄道を利用しています。また玉里村・小川 町・玉造町・鉾田町在住の者も多く,何らかの形で鉄道を 利用しております。 私たち高校生にとっては,通学に無くてはならない存在 であり,沿線地域の住民のとっては欠かすことの出来ない 交通手段です。 よって鹿島鉄道の廃止は,代替交通機関が無い現状では, 大きな問題です。 広範な関係者の方々が知恵を出し合い,鹿島鉄道を存続 させてください。 お忙しい中,勝手なお願いをしていますが,どうか鹿島. 力を重ねていきたいと思っております。 今までに行ってきた活動をまとめて資料など,いくつか 参考にしていただけるようなものをこの手紙と一緒にお送 り致しますので,もしよろしければ是非目を通して鉄道存 続に向けた活動の一助にしていただけたら幸いです。 私たちも日立電鉄存続へ向け,微力ながら力添えしたい と思っております。 それでは失礼します。 小川高校生徒会会長. 大枝. 岬. という期限付きだが積極的対応へと方針転換し,各種の 協議会が組織され,存続へ向けての具体的支援策の検討 へと向かうこととなった )。高校生のひたむきな活動が 地域社会から好意を持って受け入れられ行政を動かし, 存続方針の決定へと大きな役割を演じたわけである。そ の結果全国的にも注目され,国土交通省により創設され. 鉄道の危機を救うためにも御協力をお願いします。. た日本鉄道賞を受賞し,横浜のホテルで開かれた授賞式 平成 年 月 日. には生徒会役員も招かれ, 小川高校生徒会一同. ローカル放送のみなら. ず全国報道もなされたわけである。 こうして全国的にも紹介されるようになった. て,学校をもっと活発にしたい. と,当時の小川高校の. 生徒会長も感想を述べている。 こうした高校生たちの活動の結果,地元行政も. かして. つ応援団 の活動は,教育行政においても注目されるよ うになり,茨城県教育委員会の教育長による視察,同委. 年間. 員会ホームページにもこの活動の様子が掲載された。そ.

(8) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. の結果,校内において管理職教員にも理解が芽生え,学. 校生の訴えに対しては,電鉄側は公然と不快感を示した. 校内ではこうした活動について,特段の異論が出ること. ともされる。. はなかったとされる。. 結局,日立市と常陸太田市との間の存続への温度差が 埋まらないまま,. ). ちん電守ろう会 (日立電鉄線の存続を求める高. 年. 月,岡山電気軌道から出され. た経営支援提案への公的支援も採用されず,結果として. 校生徒会連絡会)の場合. 電鉄線の存続は正式に断念され,バス転換があっさりと. 日立電鉄の突然の廃止表明ことにより,沿線は慌てて. 決定してしまった。その後はバス代替の手続きが着々と. 存続を模索する動きを呈することになる。しかし,当初. 進められ,日立電鉄は,代替バスとして同社が運行する. から日立市は,存続を模索する常陸太田市や茨城県庁と. 通常の普通便の他に若干の急行バス便の系統の運行とバ. は異なり,廃止・バス転換を容認するような態度を示し. スの通学定期運賃を鉄道並みの割引率にすることを決め. た。その背景には,同市が事実上電鉄の親会社である日. ただけで,翌. 立製作所の 企業城下町. 。 しまった(写真 , ). であり,当該企業本社の意向. に沿った態度を取ったというのが大方の見方である。そ のため住民組織の立ち上がりは遅れ,存続運動もなかな. 年 月. 日をもって鉄道は廃止されて. 廃止 か月後の報道によると,電鉄線から代替バスへ の利用者は. %と. 割減に達し,代替バス離れは,通学. か盛り上がりに欠ける状況が続いた。 そうした中,日立電鉄の存続運動ではむしろ高校生の 活動が先行することになった。それは,前述の. かして. つ応援団 の小川高校生徒会からの手紙が,日立電鉄の 沿線の高校に届いたことをきっかけとして始まるわけで ある。以下にその際の手紙を資料 川高校生徒会,. として掲載したい (小. ) 。. この手紙が佐竹高校の生徒会顧問教員の篠原教諭の元 に届き,生徒にこの問題があることを知らせたわけだが, 背景として小川高校の栗又教諭と佐竹高校の篠原教諭が たまたま知人であったことも,スムーズな活動の開始へ と役立った。生徒会役員も取り組みに賛同し,沿線の各 高校に呼びかけ,日立電鉄線の存続を求める高校生連絡. 写真. 会を結成,佐竹高校が事務局を引き受けた。. 廃止され動かなくなった日立電鉄車両 常北太田駅構内跡. 大人社会の存続運動が低調であった中動き出した高校 生連絡会の活動は,街頭署名の機会等で,一般市民から 深く有り難られた。また,地元マスコミから大いに報道 され,存続運動の存在を大きく印象付けることになった。 こうして電鉄線存続への署名数もと予想を大きく越えた 署名を集め,署名簿は行政に提出した。そして県知事に も面会し要請書も手渡した。また高校生たちは,地元で ヤーヤー. ちん電 (日立電鉄のニックネームで. チン. チン電車 をイメージ)まつりや学習会の企画,及びそ れらの行事の事前の設営・準備,をはじめ沿線住民の存 続団体と共催で,鉄道街づくりサミット を開催する等, 様々な活動を展開させた。 だが,行政の態度は時と共に変化していった。当初は 独自資料を提供するなど存続に積極的であった茨城県庁 も,沿線自治体間の埋まらない温度差を背景に,次第に 存続に消極的となり,高校生連絡会が再度県庁を訪れた 際は,以前の知事ではなくかなり格下の課長が応対した 等,対応が大きく変化していったとのことである。廃止 を承認すべく開催された日立電鉄株主総会会場前での高. 写真. 廃止され使用中止となった日立電鉄の踏切.

(9) 武 田. 定期で,電車の 電車の. 人から. 人から. 人へと半減し,通勤定期は,. 人へと. に激減した。ラッシュ. 泉. である。こうした中,運動に関わった高校生はこの結果 をどのように受け止めたのであろうか。ここで,高校生. 時に積み残し用の車両は 度出番はなかったが,こうし. の感想文を資料. た状況は,電車に比べて割高な運賃,渋滞での遅れが敬. 続を求める高校生徒会連絡会,. 遠されたとみられ,沿線住民はさらなるバスの減便に懸 念を増幅させる状況となっている(. 年. 月. 日付. , で紹介したい(日立電鉄線維持存 ) 。. こうした感想文からは,高校生は. 自分が実際に乗車. するわけではないが,友達が乗ってきており大きな影響 があるとわかった点 を指摘している。また,鉄道廃止. 読売新聞茨城版)。 鉄道廃止の通学への影響は少なからず見られ,まず沿. に落胆はしたものの,大きな達成感を享受することが出. 線の高校進学者の出身中学校の分布に変化が生じた。電. 来,さらには地方鉄道の抱える課題や地域環境問題の具. 鉄線利用を前提としていた日立市から常陸太田市への通. 体的な把握,という点できわめて有意義な学習をしたこ. 学が大きく減少した。また廃止後,在校生はバス通学に 転換したが,前述の通り通学定期は鉄道時代の割引率と 同様とするが,その継続期限は不明であり懸念されてい る。佐竹高校の場合,在校生の. 人(女子生徒)は大き. く迂回して日立市から常陸太田市まで水戸経由(常磐線 水郡線)の. ちん電を守ろう会 参加生徒の感想文. かけがえの無いものを守るため ─ ありがとうちん電,また逢う日まで ─ 佐竹高校 年(生徒会長兼連絡会代表). 渡辺. 博則. での通学に変わったと言う。. こうして日立電鉄の存続運動は,不本意な. 廃止. と. いう結末を迎えてしまった。これは地元の政治構造は保 守王国であり,かつ大企業の企業城下町という特殊事情 がある等の,地元の政治状況の反映が少なくないとされ ている。いわば大人社会の都合で存続が断念されたわけ 資料. 資料. ちん電守ろう会 参加生徒の感想文. 守ろう会 で活動してきた思い出 太田二高 年. 関. 梨乃. 日立電鉄を維持存続できなかったことはとても残念なこ とでしたが, ちん電守ろう会 で行ってきた活動は,私 の高校生活で一番ともいえる思い出を作れました。 はじめは日立電鉄の存在もしらず,ただ人のためになる ことをすることが好きな私は, おもしろそうだ。 そんな 軽い気持ちでちん電を守ってあげたいなという他人事のよ うに思っていました。 それから,校内でアンケートを実施し,通学の足として 日立電鉄線を使用している人がたくさんいて驚きました。 アンケートの結果を日立電鉄本社に提出し,また沿線の高 校や出身中学,街頭で署名活動を実施しました。このよう な中で,自分の気持ちは他人事ではなく,寧ろ自分が起こ した問題のように 存続したい という気持ちが高まって いきました。 更に,県や日立・常陸太田市に公的支援を要請したり, フォーラムやお祭りなどを行った時の達成感は最高でし た。地道な打ち合わせや,夜遅くまでの準備をしてきたか らこそ,達成感も倍になっただろうし,何より頑張ってき たからこそ,今,こうして文章が書けるのだと思います。 一緒に頑張ってきた仲間や先生や,地域の人々との関わ りを持ち,一つの願いに向けて頑張ってきて良かった。私 の高校生活の中で,やりがいのあり,結果はどうあれ,精 一杯のことを行ってきたこの活動と人の出会いは一生の思 い出です。. 年 月 日, 日立電鉄線の存続を求める高校生徒 会連絡会 が結成されました。早いもので 廃線は絶対反 対だ! ,この言葉を合言葉に沿線の各校生徒会は 略称 ちん電を守ろう会 に集まって存続運動に奮闘しました。 卒業を控え,こうした運動に終止符を打つ時が来てしまい ました。 一昨年 ちん電 が廃止になると新聞で読んだ時は, な くなったら寂しい と言うような感想しかありませんでし た。ところが 廃線になるのは私たちが卒業してから,で も,お年寄りと後輩はどうなるのかな と ちん電 を利 用して大沼から太田二高に通う友達に言われたことが私を 変えることになった,初めての利用者なの声でした。それ から何とか ちん電 を残したいと考えていましたが,生 徒会顧問の先生から 存続運動をやろう! という声がか かりました。正に願ったり叶ったりでした。 街頭で,冷たい風に吹かれながら道行く人に存続を訴え る署名活動を行いました。近隣の中学校などにも署名をお 願いし,おかげさまで 万 千を超える署名を集め,提出 することが出来ました。(中略)また県庁や日立市・常陸 太田市役所,日立製作所などを訪問し,緊張しながらも切 実な思いで存続を求めました。提出した要請書に基づいて 橋本昌県知事とも懇談しました。日立電鉄本社にも行き, 存続の熱い熱意を訴えましたが,断固として廃線を進める 対応に対し,怒りを感じました。 夜遅くまで ちん電守ろう会 の仲間と ヤーヤーちん 電祭り について話し合いを重ねた会議のことも忘れられ ません。おかげで大いに盛り上がり,成功を収めました。 これらのことから,ことばでは語り尽くせないほどの多く のことを学ぶことが出来ました。 (中略)ある新聞には 渡 辺は騒動に巻き込まれた… と書かれていましたが,騒動 に巻き込まれたのではなく,飛び込んでいったのです。 (中 略) ちん電 君は思い出の ページに奥深く刻まれて, 永遠に走っているはずだ(でも,なくなるのはやっぱり寂 しい。 )本当にお疲れ様!さようなら,ちん電。ありがとう, また逢う日まで…。(一部趣旨を変えずに短縮 ちん電 して紹介).

(10) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. とが自覚されている(鉄道まちづくり会議編,. ) 。. ネイパル足寄(道立足寄少年自然の家)とされており,. なおこの維持存続の高校生連絡会は,新たに 日立市. 大雪山国立公園の見学場所もその主体は上士幌町内で,. 常陸太田市間の鉄道の復活をもとめる高校生徒会連絡. 折角の町内の国立公園内の様々な拠点については一部を. への改組を. 会. 月. 日の結成総会で決めた。また. 除いて回らないとの説明を聞いた。また一部有志は銀泉. 水郡線沿線の高校に呼びかけ,水郡線サミットも催すと でも紹. だが,最もメジャーで層雲峡からロープウェーで到達可. 介された和歌山県の南海貴志川線での成功例を参考に,. 能な黒岳登山を上川高校では実施していないとのことで. 鉄道復活を支援する応援団(運行事業者)を同連絡会. ある。大雪山では自然保護運動との関連で道路建設にス. 校のホームページで募集,新しい鉄道名称も募る等,今. トップがかけられたり,国立公園と国有林との行政上の. 後も地方鉄道の復権に向けて先陣を切っていくとのこと. 確執等,様々な固有な課題を抱えている。しかしながら. で,全国の鉄道支援運動の中でも頼もしい存在であり続. 上川高校の取り組みにおいては,こうした地域独自の社. けるようである。. 会科的課題の取り扱いと理科的な内容の掘り下げとの間. のことである。. テレビの. 御近所の底力. 台・高原温泉等のシャトルバスのガイドを担うとのこと. に,明確な落差があるのでは,と筆者には思えてならな. .考. い。文部科学省や各教育委員会等の教育行政サイドから. 察. は,理科・サイエンス中心の特設科目によってフロン. )地域に根ざした教育活動での一般的課題. ティアスクールを構想しているケースが多い。これは,. 本稿では,以上のように地方部高校における地域に根. 自然科学分野のような社会的文脈からの解釈の余地が少. ざした教育活動について,中教審専門部会委員が提起し. ない科目の方が無難であるとの判断から,理科が選択さ. た. 地域・郷土問題の解決力の育成. や. モータリゼー. れているのか,等の考察も必要かもしれない。. ションによる産業変革という時代背景の下での地域理. 他方道庁のアウトドア資格認定制度について,専修学. 解 の観点も踏まえ,次のような具体的事例から検討し. 校・大学ではなく高校レベルにおいて一部なりとも試験. た。すなわち,独自の連携型中高一貫教育の一環として. 科目免除を受けるに至っていると言う点では,学校の努. 地域の環境に関する特設科目を設定している上川高校の. 力に敬意を表したい。しかしながらこの資格制度は,ガ. 事例と,地域課題としての地方鉄道存続運動の重要な一. イド中の山岳遭難事故を背景として制定されたものであ. 翼を高校生徒会が担った,茨城県内の かしてつ応援団. るが,果たして道庁が資格認定を行うべきか,資格試験. (小川高校生徒会)と. の内容の妥当性がどうか,等の吟味が不完全なまま導入. ちん電守ろう会 (佐竹高校生. 徒会)の活動事例を紹介しながら,検討してきた。ここ では,これらの事例について,地域論・地理的な(教科. された形跡が存在する。 次に,茨城県内における. かしてつ応援団 (小川高. 校生徒会他)と ちん電守ろう会 (佐竹高校生徒会他). 専門内容的な)観点から,若干の考察を試みる。 まず上川高校の事例では,このような特設科目を設定. による地方鉄道存続への活動事例を紹介したが,両校共. した連携型中高一貫教育による特色化が,独自な教育内. 通な特色としては,高校生が具体的に地域課題に目に見. 容の充実にとどまらず,地方部における高校と地域との. える形で取り組み,地域活性化に資するような活動を. 連携を深め,高校の存続につなげていく目指す上での,. 担った点がまず指摘される。また,いわゆる. 一つの方向性を示しているものと考えられる。この点で. ン ではない普通の生徒が加わったことは,彼らが鉄道. 上川高校の取り組みは高く評価されている。ただしこう. 専門知識等を先入観なく初歩的事項から学習し,学習に. した特色化の実現には,校内おけるに理解ある校長や教. より地域課題に主体的に参画していったのでは,と考え. 職員スタッフの存在をはじめ,地域行政の支援体制,特. られる。また生徒の感想文からも,彼らに対して適切な. に予算面での理解等,様々な推進へのベクトルが重なり. 指導・助言を根気良く続けた顧問教員の存在も大きい。. 合ってはじめて実現する性格のもの,とも指摘される。. さらには,学校内外での校長等管理職の理解も円滑な活. 他方で,上川高校での取り組みの課題としては,特設. 動には不可欠だとされる。幸い茨城県内では県の教育長. 科目を含めた教育内容の主眼が理科的内容が中心であ. 鉄道ファ. を筆頭に理解が浸透しているようである。. り,環境問題の一環としての地域における人間社会の解. ただこちらの課題としては,こうした存続運動が生徒. 明,すなわち社会科的内容取り扱いが若干希薄な点であ. 会役員以外の一般生徒への浸透についてはあまり明確で. る。一般教科の. 地理. と. 大雪基礎. 大雪研究. と. はない点や,地方部でいわゆる一番手の進学校がなかな. どのように関連付けられているのか,また 大雪地理巡. か参加してこない点が挙げられる。 かしてつ応援団. 検 はアウトドア宿泊研修として位置付けられていると. でも,沿線の各学校に呼びかけたものの,学校によって. の説明を受けたが,宿泊地は料金の関係からか足寄町の. は消極的なところもあったとされる。まず地元での進学.

(11) 武 田. 泉. 校の参加はなかなか難しいとされる。受験対策と地域課. 諭は,以下のような学習指導案によって,鹿島鉄道を題. 題への積極的取り組みが相容れないことを如実に物語っ. 材とした授業を行ったという(資料. ) 。. この実践の結果については,明確に伺っていないが,. ているのであろうか。 例えば北海道内の鉄道存続運動の関連では,ある地方. 自らが主体的に関わる地域の具体的課題として,生徒は. 都市の一番手の進学校の校長が署名への協力を渋った,. 大いに興味を抱いたものと推察される。 学習指導案は 歴. との情報も耳にしている。また別の高校では,町内で開. 史 (日本史)での実践はあったが,模索段階にあるの. 催された存続集会で高校生が発言したものの,その後は. ではないだろうか。高校での通常授業では,時間の制約,. 高校側の取り組みはほとんど聞くことはない。ある福祉. 管理者の理解の点から,巡検・フィールドワークは困難. 学級を有する高校では,道内地方鉄道路線. であるのが通例と聞く。特に地域教材との関連が密接な. 科と普通科. 廃止の情報で普通科志願者が. 桁となったともされ,早. 晩高校の存続論議になるのではないだろうか。 さらには地方鉄道存続運動は,地元の. 政治. 地理 ではまだ実践されていないとのことであり,今 後是非とも取り組みがなされることを強く期待したいも. への関. のである。. 与に直結するため敬遠される場合もあり,中学校段階で は,このような運動への参加が困難だともされている。 例えば,鹿島鉄道各駅のトイレが老朽化しても鉄道会社 に建て替えの余裕がない場合は,地元自治体が設置する ことになる。そのため, 駅前に新たなトイレを設置し てほしい ては. と行政へ要請することは,受け取め方によっ. 政治的活動にあたる. として,慎重な姿勢を示す. 中学校が存在したという。 ちん電守ろう会. のケース. では,残念ながら存続へは至らず廃止され,運動の転換 を余儀なくされたわけだが,地方鉄道の抱える課題の把 握,すなわちクルマ社会を見詰め直し,独自に交通環境 問題として地域交通問題を考える,という生きた地域環 境課題として参加した生徒が把握できた点が,最大の成 果だと考えられよう。生徒にとって,たとえ自らが近い 将来運転免許を取得してマイカーに乗るようになって も,地方交通の現状をわきまえた交通行動を取り,鉄道 等の公共交通機関の再生を願う価値観を醸成する可能性 が期待される。例えば交通環境対策については海外での 取り組みが輸入されている。小学生段階で,ダイアリー 形式により各家庭における (土木学会,. かしこいクルマの使い方. )を考えていく取り組みと地方鉄道存. 続運動とは,発達段階の差異のみならず考察の方向性や 行動の性格が異なるものと言える。 地方鉄道存続運動への参画は,具体的な環境問題・課 題の学習,生きた地域課題として身近な問題から実地に 学び,環境問題の一端を身を持って体験できる一連の思 考回路であり行動である。こうした体験は,高校時代の かけがえの無い出来事として人生に大きく記憶され,後 の人生での社会問題・社会認識の構造的理解に繋がる貴 重な体験,とも考えられる。 )社会的地域課題と教科専門としての内容的側面 次に地方鉄道存続運動のような社会的地域課題は,果. 資料. 学習指導案 鹿島鉄道の歴史と現状を学ぶ. 科 目 日本史 分 野 歴史の考察 の中の 地域社会の歴史と文化 実施時間 時間 授業担当者 栗又 衛 実 施 場 所 教室・図書室・コンピューター室 必要な備品・材料 説明用プリント,記入用プリント,ビ デオテープ,ビデオデッキ,カセット テープ,カセットデッキ 生徒が用意するもの 筆記用具 実 施 形 態 クラス単位,必要に応じてグループ単位 実施内容 .鹿島鉄道について,インターネットなどで調べる( 時間) .ビデオ 鹿島鉄道の旅 を視聴し,鹿島鉄道に調べ たことを発表する( 時間) .ワークシート よくわかる鹿島鉄道 に記入しなが ら,進める( 時間) .鹿島鉄道 年の歴史を,日本の近現代史と関連付け て学ぶ( 時間) .鹿島鉄道が地域社会に果たした役割を考える( 時 間) .鹿島鉄道の現状とその解決策を考え,発表する( 時間) 観点別評価 )関心・意欲・態度 歴史の流れと地域の歴史に関心 を高め,意欲的に探求しようとしているか。 )社会的な思考・判断 課題を見出し歴史とのかかわ りを多面的・多角的に考察しているか。 )資料活用の技能・表現 資料の収集・選択・活用と 結果のまとめや発表・討論を行っているか。 )知識・理解 身近な地域の具体的な事柄と関わらせ て,歴史を理解しているか。. .お わ り に. たして教科内容と連携されるものなのであろうか。 か. 不幸にしてイラクで人質事件に巻き込まれた今井紀明. してつ応援団 の生徒会顧問でもある小川高校の栗又教. さんは,著書の中で高校時代を振り返っている。その中.

(12) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. で,単位が足りなくなりそうなのにもかかわらず. 卒業. テストよりや定期試験よりも大切な市民活動がある. と. して早退を申し出た際に, 立命館慶祥高校の担任教諭は, 無理するな. と言って送り出してくれた,とのくだり. が記述されている。ある意味今井さん自身による,今日 一般的な受験重視と社会の現実問題を直視しない高校教 ) 。. 育への痛烈な批判である(今井,. 横井敏郎他(. ). テム研究 ,. 校生の経験は,今井さんのような突出した経験とまでは. 北. 公教育シス. 海道上川町における中高一貫教育実践 ,北海道大学教育学部. ). 今井紀明(. ぼくがイラクへ行った理由. コモ. .. ンズ,. ). 北海道上川高校( 推進事業. 今回取り上げた上川高校や鉄道存続運動に取り組む高. 連携型中高一貫教育の実像. 実践報告. グラム 第 佐藤淳(. 文部科学省指定. 環境のための地球学習観測プロ. 集 ). . 北海道地理学会・東北地理学会. 年. 大雪山旭岳の自然と観光. いかないだろうが,決して通常の高校生活を送っただけ. 度合同秋季学術大会巡検. では手にすることの出来ない現実社会を直視した体験で. に参加して.北海道教育大学大雪山自然教育研究施設. はないだろうか。このような地域に根ざした社会体験が,. 研究報告. 多感な 歳代後半に体験しうるような高校のあり方が, もっと模索されても良いように,今回筆者は強く考えさ. ,. . 未来へ走れ. かしてつ応援団と小川高校生徒会 ). 小川高校生徒会(. せられた次第である。. ちん電守ろう会. 協力を頂いた。特に上川高校の佐藤教諭,小川高校の栗 又教諭,佐竹高校の篠原教諭,北海道教育庁の白鳥指導 主事をはじめとする皆様からは,貴重な情報を提供して. .. 鉄道まちづくり会議編( 緑風出版, 土木学会(. の. )その後,鹿島鉄道は. 年. ). ). かしこい. 土木学会,. 茨城・日立電鉄線. 文部科学省ホームページ. 討すると表明した。このため再度存廃問題が再燃して. 北海道教育委員会ホームページ. ). 茨城県鉄道発達史(上・下) 筑. 波書林. 中川浩一(. ). 茨城の民営鉄道史(上・中・下). ). 転機に来た過疎地域の公共交通.地. 筑波書林. 青木栄一( 域 , 武田. 泉(. ,大明堂. ). 自然保護の関係 業経済研究 武田. 泉(. , ). 地域社会における林業・観光開発と 北海道大雪山国立公園の場合. 過疎地域(へき地)における地域課. 題としての地域振興策.僻地教育研究 武田. 泉(. ). .林. . ,. .. 道内過疎地域における博物館の諸相. と構造転換.僻地教育研究. ,. .. .. .月刊自治研. 鉄道からの支援が困難になったとして廃止届提出を検. 献. 使い方を考えるた. 日立電鉄線存続問題の投げかけたも. 自治労出版センター.. 強く求められている。. どうする鉄道の将来. モビリティマネジメントの手引き. 月中旬に親会社の関東. いる。折角の高校生の活動を無にしない地域の対応が. ). ちん電はみんなの財. . ). めの交通施策 伊藤智毅(. 注. 記録集. .. 産だ. 自動車と公共交通の. いただいた。ここに記して感謝申し上げたい。. 中川浩一(. .. 日立電鉄線維持存続を求める高校生徒会連絡会(. 辞. 本稿を作成するにあたって,関係各位からは格別な御. 文. 鹿島鉄道. わがまちの未来へ走れ. 年の記録. 鹿島鉄道. 謝. ). 小川高校生徒会(. ,. ,.

(13) 武 田. 資料. 泉. かしてつ応援団生徒の描いた募金ちらし(表面).

(14) 地方部高等学校における地域に根ざした教育活動の展開. 資料. かしてつ応援団生徒の描いた募金ちらし(裏面).

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参照

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