アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み : 北海道教育大学札幌校 芸術体育教育専攻 音楽教育分野の事例をもとに
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み ― 北海道教育大学札幌校 芸術体育教育専攻 音楽教育分野の事例をもとに ―. 石 出 和 也 北海道教育大学札幌校音楽教育学研究室. A Study on Exploring the Creation of Rubrics for “Academic Skills” at Hokkaido University of Education ― Based on the First-Year Experience in the Class of Music Education ―. ISHIDE Kazuya Department of Music Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究の主目的は,北海道教育大学における初年次教育の1つである「アカデミックスキル」 について,その評価指標となるルーブリックを構想することである。平成27年度前期に実施し た「アカデミックスキル」を手掛かりとして,講義内容,講義方法および学習成果物を遡行的 に吟味し,「要約文型のレジュメ作成についてのルーブリック」「図解型のレジュメ作成につい てのルーブリック」「レポート作成についてのルーブリック」の3つを試作した。「アカデミッ クスキル」はレジュメやレポート,プレゼンテーションなどの学習成果物を多く伴うことから, 本来的に学習過程が可視化されやすい講義である。従って,ルーブリックを導入することで得 られる利点は多いと考えられる。今後,実際にこれらのルーブリックを試行していく中で,そ の利点・改善点を追究していく予定である。. 1.本研究の目的と性格. 名を対象として実施した「アカデミックスキル」 を手掛かりとして,講義内容,講義方法および学. 本研究の主目的は,北海道教育大学における初. 習成果物を遡行的に吟味する。そこから得られた. 年次教育の一環である「アカデミックスキル」の. 成果や課題を踏まえてルーブリックを試作し,平. 講義について,その評価指標となるルーブリック. 成28年度以降の同講義への導入を目指す。そのこ. を構想することである。平成27年度前期に札幌校. とにより,「アカデミックスキル」の講義内容と. 芸術体育教育専攻 音楽教育分野の1年次学生9. 講義方法を精緻化するとともに,指導と評価の整. 343.
(3) 石 出 和 也. 合性を図ることが期待できる。. スの質のレベルを規定する「規準」を示すもので. すでに指摘されているように,教育実践に先. あり,場合によっては,評価される特定のパフォー. 立ってルーブリックを作成する場合,それはあく. マンスに典型的な行動や形跡である「指標」を含. までも実際の授業に対する「暫定的な仮説」であ. むこともある7)。. る1)。そのため,実際的な評価指標の作成におい. 本研究では「アカデミックスキル」に関するパ. ては, 「評価のための表づくり」と「授業実践か. フォーマンス評価として,主に⑴文献講読に関わ. らの洗い出しや解答例の収集」を表裏一体の関係. るレジュメ作成と,⑵レポート作成の2つに焦点. にあるものとして捉え,両者を往還させることが. 化してルーブリックを構想したい。. 重要となる2)。本研究は平成27年度の講義内容, 講義方法および学習成果物をもとにして,平成28. ⑵ 「アカデミックスキル」の概要. 年度以降に使用する評価指標を作成するというも. 表1は,本研究が検討対象としている平成27年. のであり,年度を超えて学習成果物からルーブ. 度前期「アカデミックスキル」の授業計画である。. リックを構想するため,必然的に「授業実践から. また,以下は本講義の一般目標である(いずれも. の洗い出し」という研究方法上の立場を採ること. シラバスより抜粋)。. になる。. 2.本研究の焦点 ⑴ 本研究におけるルーブリックの概念規定 学習評価には大きく分けて, 「どのように学習 したか」や「何ができると思っているか」を学生 自身に答えさせる「間接評価」と, 「何ができるか」. この「アカデミックスキル」は,これからの 大学生活において,主体的・創造的に学んでい くための基礎力を身に付ける授業です。大学で の学びを「見る」 「聴く」 「書く」 「読む」 「考える」 「調べる」「探す」「整理する」「伝える」などの いくつかのトピックに分節化して捉えつつ,そ れらを「きちんとしたレポートを作成する」と いう到達点へと統合させます。. を学生自身に提示させる「直接評価」の2つがあ る3)。後者の「直接評価」に含まれる評価方法の. ノートテイキングや文献の読み方など,「アカ. 1つが「パフォーマンス評価」――ある特定の文. デミックスキル」が扱う内容の一部には,確かに. 脈のもとで,様々な知識や技能などを用いて行わ. 「学び方についてのリメディアル教育」という側. れる人のふるまいや作品を,直接的に評価する方. 面も含まれるだろう。だが, 「アカデミックスキル」. 法――であり4),そこでは学習者に対して何らか. の目的は,あくまでも大学での学び方を修得する. の「パフォーマンス課題」が与えられる。それを. ことである8)。リメディアル教育と隣接してはい. 評価者が評価していく際に用いるツールの1つ. るが,「アカデミックスキル」が目指している学. が,ルーブリックである。. び方の修得は,これから始まる大学生活での学び. ルーブリックとは,いわゆる「目標に準拠した. の軌跡の出発点となるものであり,初年次教育と. 評価」にふさわしい評定尺度として開発された評. リメディアル教育は一線を画すべきであろう9)。. 価指標であり5),一般的には評価基準表という形. 上に示したように,今回の「アカデミックスキル」. をとる。主にパフォーマンス(作品や実演)の質. では「大学での学び方」ひいては「学術研究の基. を評価するために用いられ,一つ以上の「基準(次. 盤となるような能力」の獲得を目指し,最終的な. 元) 」とそれについての「数値的な尺度」によっ. 到達点を「きちんとしたレポートを作成すること. てマトリックスが構成され,それぞれのセルの中. ができる」とした。初年次教育であることを踏ま. 6). には, 尺度の中身を説明する「記述語」が入る 。. えれば,レポートの内容面に学術的な独創性を要. それぞれのセルに入る「記述語」はパフォーマン. 求することはできないとしても,初年次教育であ. 344.
(4) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 表1 「アカデミックスキル」の授業計画 第1回 書く技術① ―講義を記録する(ノートテイキングの基本)― 第2回 書く技術② ―講義を記録する(ノートテイキングの工夫)― 第3回 書く技術③ ―授業観察の方法(ノートテイキングの応用)― 第4回 読む技術① ―アカデミック・リーディングの基本― 第5回 読む技術② ―アカデミック・リーディングの工夫― 第6回 考える技術① ―思考を生み出すための方法― 第7回 考える技術② ―思考を拡げるための方法― 第8回 レポート作成の技術① ―アカデミック・ライティングの基礎(レポートの形式と内容)― 第9回 調べる技術① ―アカデミック・ライティングのための情報検索方法― 第10回 調べる技術② ―「書く」ために「読む」― 第11回 レポート作成の技術② ―情報整理の方法― 第12回 ディスカッションの技術 ―意見・根拠・例示・反論・統合― 第13回 レポート作成の技術③ ―読み手を想定したレポート構成を考える― 第14回 伝える技術① ―レポートに基づくプレゼンテーション(前半)― 第15回 伝える技術② ―レポートに基づくプレゼンテーション(後半)―. るからこそ, テーマ設定の仕方や文章構成の方法,. 「図解型のレジュメ」を扱った。. 資料からの引用方法や註による補足の仕方,基本 的な文体などに留意したレポート作成を経験させ. ⑴ 「要約文型のレジュメ」の作成. ることが重要であると考える。. 以下は,要約文型のレジュメ作成の演習に使用 した3つのテクストである。いずれも5ページ以. 3.レジュメについてのルーブリック. 内の短いテクストであり,レジュメ作成の入門期 に適していると考えた。また,これらは同一の文. 第1回と第2回では,大学の講義におけるノー. 献の中から選んだものではあるが,文章の構成を. トテイキングの基本事項や工夫点を扱い,続く第. 読み取るための練習として,タイトルや本文の構. 3回はノートテイキングの拡張・応用として小中. 成などの特徴がそれぞれ異なっているものを選ん. 学校での授業観察における授業記録の取り方を. だ11)。. 扱った10)。ここでは第4回~第5回と第8回~ 第9回の講義内容である,レジュメ作成の演習に ついて報告し,そのルーブリック構築の可能性に. 1. 渡辺裕「ハンディなにするものぞ―新しい表 現を求めて―」『考える耳―記憶の場,批評の 眼―』春秋社,2007年,pp.90-94.. 2. 渡辺裕「 『標準』は変容してゆく」 『考える耳 ―記憶の場,批評の眼―』春秋社,2007年, pp.31-35.. 3. 渡辺裕「トロンボーンを吹く女子学生―音楽 におけるジェンダー論の射程―」『考える耳― 記 憶 の 場, 批 評 の 眼 ―』 春 秋 社,2007年, pp.81-85.. ついて検討する。 大学における学びの場面では,ゼミや授業など の文献講読に臨む準備としてレジュメを作成した り,文献調査の個人的な記録の蓄積としてレジュ メを作成したりすることが多い。あるテクストの 内容を整理・要約してレジュメを作成する技法 は,大学での学び方を身に付けていく上で,必要 不可欠のものであると言えよう。第4回~第5回. さらに,同時期に学生が受講している文献講読. では,テクストの内容を文章として整理・要約さ. の講義で同一の著者による文献を使用していたこ. せる「要約文型のレジュメ」について扱い,第8. とから12),文献を捉える視点が「何の本」から「誰. 回~第9回では,テクストの内容を図や矢印,ベ. の本」へ――「タイトル」から「著者」へ――と. ン図などの視覚的効果を用いて整理・要約させる. 拡大することを期待したのも選定理由の1つで. 345.
(5) 石 出 和 也. あった。実際の講義時には,「どこかで見たこと がある名前だ」 「この著者は知っている」などの 反応が見られた。このように「書き手が誰である のか」に着目させることは,インターネット等の 情報を参照する際の留意点にも繋がるものであろ う。インターネット上の情報を直接的な研究対象 とする場合を除き,原則として,書き手が明示さ れていない文章を学術的な論考の「根拠」にする ことはできない。初年次教育においても,そのこ とを学生に対し明確に伝える必要があるだろう。 この演習に際して学生に示した主な条件は,以 下6点である。なお,上記1~3のそれぞれのテ クストについて,レジュメ作成の期間は1週間と した。 ①A4用紙1枚(1行40字×30行が目安)にま 図1 要約文型のレジュメの例. とめる。 ②講義名,提出日時,自分の名前,学生番号, 所属などを必ず明記する。 ③レジュメ作成の対象となっているテクストの 情報(著者,タイトルなど)を明記する。. ところで,ルーブリックには,記述語の内容に 相当する典型例が「パフォーマンス事例」として 添付される場合もある13)。例えば以下は,キー. ④形式段落に従い,各段落の「内容についての. ワードやキーセンテンスが的確に取捨選択されて. 要約文」と「見出し」を含む構成表を作る。. いる要約文であり,ルーブリックの中の評価観点. ⑤キ ーワードやキーセンテンスを適切に抽出. ⑨を達成しているパフォーマンス事例であると判. し,テクスト全体の要約文を作る。. 断した。. ⑥分からない語句の意味や疑問点など,本文の 内容以上の情報を脚註で付加させる。 実際に得られた学習成果物は,合計27枚の要約 文型のレジュメである(図1はその一例) 。それ らのレジュメの形式と内容を吟味した結果に,添 削指導を行っていた際の筆者の判断過程を再現し て重ね合わせると,次頁の表2のようなルーブ リックを構想することができる。評価観点①~⑤ にはレジュメの形式面に比重を置いた到達目標を. 楽器のイメージには男女の性差が結びついて おり,そのことはそれぞれの楽器の本質的な性 格によるものであるかのように考えられてきた。 このことは,ジェンダーという問題に関わる。 これまで自明と思われてきた女性観や「女性ら しさ」の感覚が,歴史的に形成された「文化」 であり,その意味や位置づけを考え直すための 共通の土台をすっ飛ばして,自らの感覚が歴史 や社会を超越した普遍的なものであるかのよう な議論に塗り込めてしまうとすれば,「文化を破 壊」する「過激」な暴論ではないだろうか。. 配置し,⑥~⑩にはレジュメの内容面に比重を置 いた到達目標を配置した。. ルーブリックを用いる際には,このような典型 例を添付することにより,授業者と学習者が評価 観点についての達成条件を確認・共有することも 可能である。ただし,具体的なパフォーマンス事. 346.
(6) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 表2 要約文型のレジュメ作成についてのルーブリック 到達レベル. 評価観点. 4. 2. 1. ①. 指定された分量が守られて 指定された分量から見てや 指定された分量から見てや 指定された分量から見て大 いる。 や超過している。 や不足している。 幅に超過または不足してい る。. ②. 自分の名前と所属,提出日 時,講義名の4つがすべて 正確に書かれている。. 自分の名前と所属,提出日 自分の名前と所属,提出日 自分の名前と所属,提出日 時,講義名のうちいずれか 時,講義名のうちいずれか 時,講義名のうちいずれか 3つが正確に書かれている。 2つが正確に書かれている。 1つのみ正確に書かれてい る。. ③. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)がすべて正確であ り,それらの表記方法も適 切である。. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)はすべて正確であ るが,それらの表記方法に 不備が見られる。. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)のうち,1つが不 正確である。. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)のうち,2つ以上 が不正確である。. ④. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが無く,作成した文章に ついてきちんと推敲するこ とができている。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが1か所見られるが,作 成した文章について概ね推 敲することができている。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが2か所見られ,作成し た文章についての推敲がや や不足している。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが3か所以上見られ,作 成した文章についての推敲 が大幅に不足している。. ⑤. レジュメ全体を通して,話 し言葉にならず,学術的な 文章に相応しい表現でまと めることができている。. レジュメ全体を通して,話 し言葉になっている部分が lか所見られるが,おおむ ね学術的な文章に相応しい 表現でまとめることができ ている。. レジュメ全体を通して,話 し言葉になっている部分が 2か所見られるが,学術的 な文章に相応しい表現でま とめようとしている。. レジュメ全体を通して,話 し言葉になっている部分が 多く見られ,学術的な文章 に相応しい表現でまとめる ことができていない。. ⑥. 形式段落数に基づいて,テ クス卜の全体構成を正確に 区分けすることができてい る。. 形式段落数に基づいて,テ クストの全体構成をおおむ ね区分けすることができて いる。. 形式段落数の把握に誤りが あり,テクストの全体構成 を区分けすることができて いない。. 形式段落数の把握に著しい 誤りがあり,テクストの全 体構成を区分けすることが できていない。. ⑦. 各段落のキーワードやキー センテンスを適切に抽出し, 簡潔な文章でまとめること ができている。. 各段落のキーワードやキー センテンスは適切に抽出し ているが,簡潔な文章でま とめることはできていない。. 各段落のキーワードやキー 各段落のキーワードやキー センテンスの一部を袖出す センテンスの一部を抽出す ることができているが,簡 ることができている。 潔な文章でまとめることは できていない。. ⑧. 全ての段落に関して,各段 落の内容を反映させた,端 的な見出しを付けることが できている。. 全体の約8割の段落に関し て,各段落の内容を反映さ せた,端的な見出しを付け ることができている。. 全体の約半数の段落に関し 各段落の内容を反映させた, て,各段落の内容を反映さ 端的な見出しを付けること せた,端的な見出しを付け ができていない。 ることができている。. ⑨. キーワードやキーセンテン スなどの要約に必要な情報 が的確に取捨選択されてい るとともに,テクストの結 論を正確に読み取って要約 文に含めることができてい る。. キーワードやキーセンテン スなどの要約に必要な情報 が取捨選択されているとと もに,テクストの結論をお おむね正確に読み取って要 約文に含めることができて いる。. キーワードやキーセンテン スなどの要約に必要な情報 はある程度取捨選択されて いるが,テクストの結論を 要約文に含めることはでき ていない。. キーワードやキーセンテン スなどの要約に必要な情報 が取捨選択されておらず, テクストの結論も要約文に 含めることができていない。. ⑩. 分からない語句の意味を調 ベて補足したり,疑問点を 追加したりするなど,脚註 を用いて本文の内容以上の 情報を付加させることがで きている。. 分からない語句の意味を調 べて補足したり,疑問点を 追加したりするなど,脚註 を用いて本文の内容以上の 情報を付加させているが, それらの内容にやや不備や 逸脱が見られる。. 分からない語句の意味を調 べて補足したり,疑問点を 追加したりするなど,脚註 を用いて本文の内容以上の 情報を付加させているが, それらの内容に著しい不備 や逸脱が見られる。. 分からない語句の意味を調 べて補足したり,疑問点を 追加したりするなど,脚註 を用いて本文の内容以上の 情報を付加させることがで きていない。. レジュメの基本的形式. テクストについての 構成表. テタストについての 要約文. 情報の付加. 3. 例を添付せずに学習者の状況を把握するのか,そ. 演習は継続した。その際に使用したテクストは『幼. れとも添付することよって到達目標への意識づけ. 児期』(岡本夏木著,岩波書店,2005年)の序章. を強めるのかは,その講義過程でのねらいに応じ. 部分(pp.2-19.)である。. て使い分けるべきであろう。その後の第6回~第 7回では,レジュメ作成の技法とは異なる学習内. ⑵ 「図解型のレジュメ」の作成. 容に移行したが(本稿の4.「子ども」について. レジュメ作成の対象となっているテクストにつ. の探究 において後述する),学生個々人に対する. いて,その内容を視覚的に整理・要約して伝達す. 添削指導という形で,要約文型のレジュメ作成の. るためのレジュメを,今回のアカデミックスキル. 347.
(7) 石 出 和 也. では「図解型のレジュメ」と呼ぶことにした。第. は,第14回~第15回の「伝える技術」(視覚的効. 8回~第9回では,子ども理解に関する入門書・. 果を用いたプレゼンテーションの技法)に向けた. 概説書の中から,以下に示す2つのテクストを使. 予備的段階の1つでもあった。. 用して,その作成方法の要点について学ばせた。. ここで実際に得られた学習成果物は,合計18枚. 次頁の図2は,学生が実際に作成したレジュメで. の図解型のレジュメである。それらのレジュメの. ある。. 形式と内容を吟味した結果に,添削指導を行って いた際の筆者の判断過程を再現して重ね合わせる. 1. 吉田甫「子どもは計算ができるか―不思議な 数5(幼児期後期)―」 『よくわかる乳幼児心 理学(やわらかアカデミズム・わかるシリー ズ) 』ミネルヴァ書房,2008年,pp.164-165.. 2. 稲垣佳世子「擬人化は子どもが生物界を理解 するのに役立つか」 『よくわかる乳幼児心理学』 ミネルヴァ書房,2008年,pp.168-169.. と,表3のようなルーブリックを構想することが できる。 ⑶ 記述語と尺度についての検討 ここまで,「要約文型のレジュメ」と「図解型 のレジュメ」についてのルーブリックを試作して きた。ルーブリックは,客観的な評価指標を目指. 元のテクストを再び文章として構成していく要. すものである。けれども,記述語の中に程度をあ. 約文型のレジュメとは違い, 「図解型のレジュメ」. らわす表現(「おおむね」 「十分」 「ある程度」など). は,元のテクストに含まれる情報を全体像として. が含まれる場合には,評価がぶれてしまうことも. 一挙に示すことができる。つまりこの2種類のレ. ある14)。例えば表2と表3のルーブリック中の. ジュメは,それぞれ受け手(読み手)の関与の仕. 評価観点①のように,言語表記のみでは曖昧さが. 方が異なる。そのため,この「図解型のレジュメ」. 残ってしまう場合には,記述語の内容を図3のよ. 表3 図解型のレジュメ作成についてのルーブリック 到達レベル. 評価観点. レジュメの基本的形式. 情報の取捨選択と 視覚的効果の工夫. 348. 4. 3. 2. 1. ①. 指定された分量が守られて 指定された分量から見てや 指定された分量から見てや 指定された分量から見て大 いる。 や超過している。 や不足している。 幅に超過または不足してい る。. ②. 自分の名前と所属,提出日 時,講義名の4つがすべて 正確に書かれている。. 自分の名前と所属,提出日 自分の名前と所属,提出日 自分の名前と所属,提出日 時,講義名のうちいずれか 時,講義名のうちいずれか 時,講義名のうちいずれか 3つが正確に書かれている。 2つが正確に書かれている。 1つのみ正確に書かれてい る。. ③. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)がすべて正確であ り,それらの表記方法も適 切である。. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)はすべて正確であ るが,それらの表記方法に 不備が見られる。. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)のうち,1つが不 正確である。. レジュメ作成の対象となっ ている文献・資料の情報(著 者名,表題,出版社,出版年, 該当頁)のうち,2つ以上 が不正確である。. ④. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが無く,作成した文章に ついてきちんと推敲するこ とができている。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが1か所見られるが,作 成した文章について概ね推 敲することができている。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが2か所見られ,作成し た文章についての推敲がや や不足している。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが3か所見られ,作成し た文章についての推敲が大 幅に不足している。. ⑤. キーワードやキーセンテン スなどの必要な情報が的確 に取捨選択されているとと もに,テクストの結論を正 確に読み取ってレイアウト に含めることができている。. キーワードやキーセンテン スなどの必要な情報が取捨 選択されているとともに, テクストの結論をおおむね 正確に読み取ってレイアウ トに含めることができてい る。. キーワードやキーセンテン スなどの必要な情報はある 程度取捨選択されているが, テクストの結論をレイアウ トに含めることはできてい ない。. キーワードやキーセンテン スなどの必要な情報が取捨 選択されておらず,テクス トの結論もレイアウトに含 めることができていない。. ⑥. 文章による説明と,視覚に 訴えかける要素(図,記号, 矢印など)の両方をバラン ス良く使用しており,分か りやすいレイアウトを構成 することができている。. 視覚に訴えかける要素(図, 記号,矢印など)の使用量 がやや多いものの,全体と しては分かりやすいレイア ウトを構成することができ ている。. 視覚に訴えかける要素(図, 記号,矢印など)の使用量 が過剰であるか,または不 足しており,分かりやすい レイアウトを構成すること ができていない。. ほとんどが文章による説明 であり,視覚に訴えかける レイアウト構成を工夫する ことができていない。.
(8) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 補集合などに相当する領域に順位づけを行ってい くことも1つの方法だろう。. 図4 記述語への順位づけの例. 図2 図解型のレジュメの例. 今回のルーブリックは,3段階や5段階ではな く4段階として構想し,「4」を最も高い評価と した。たが今回の研究の範囲内では,レベルを何. うに視覚的に補うなどの方法も考えられる(今回. 段階に設定すべきかについて,その根拠を明らか. は「不足」と「超過」を等価なものとはみなさず,. にするまでには至っていない。今回構想したルー. 「不足」よりも「超過」の方に高い評価を与えて. ブリックを実際に試行していく中で,検討を重ね. いる) 。. たい。. 4. 「子ども」についての探究 大学での学び方にとって必要となる様々なスキ ルを修得する際は,具体的事例を通して学ぶこと で学生の学習効果が向上すると考えられる。今回 はレポートを作成するための種々のスキルを学ば 図3 記述語の内容を補うための図. せる際,そこで扱うコンテンツ(内容・話題)と して「子ども理解」に関わるものを設定した。第. また,記述語の文章構造についても,いくつか. 6回~第7回の「考える技術」を身に付ける過程. のタイプに分けて検討することができる。最も単. では,「子ども」についての探究活動を位置づけ. 純な記述語の例としては,表2と表3の②④があ. ることで子どもへの興味関心を喚起し,学生が自. る。これらは,定規や温度計の目盛りのように,. 分自身のレポートのテーマを見出すことができる. 一次元的な段階を持つ記述語のタイプである。一. ような講義設計を行った。. 方で, 例えば表2と表3の③のように, 「正確さ“か つ”表記方法」や「正確さ“または”表記方法」. ⑴ 「子ども」についてのマインドマップの作成. といった集合論的な包含関係とした記述語のタイ. レポートのテーマ決定に向けた起点として,第. プもある。このタイプの記述語では,図4のよう. 6回ではマインドマップの作成に取り組んだ。セ. に2つの条件(この場合は「正確さ」と「表記方. ントラル・イメージには図像的なものではなく,. 法」 )を集合に見立てて,その共通部分や差集合,. 「子ども」という言葉を設定し,絵や色,形など. 349.
(9) 石 出 和 也. の視覚的効果は用いずに作成させた。図5および. ではない。それらはあくまでも「自分が考える子. 図6は,提出された手書きのマインドマップを筆. どもの印象」であり,「子どもについての事実」. 者がデータ化したものである。作成されたマイン. が書かれているわけではない。そのことがむしろ,. ドマップの全体的な傾向としては,中央の「子ど. レポート作成に向けて「事実かどうかを調べる」. も」 から直接伸びるメイン・ブランチの先には「元. という次の作業段階に向かうための動機づけにな. 気」 「純粋」などの一般的な印象が書かれている. ると考えられる。. ことや,ブランチの末端に進むとエピソードが具 体的になっていたり,自分自身の記憶や体験・経 験を重ね合わせたりしていることなどが挙げられ る。今回は講義時に作成したものを各自が持ち帰 り,後日内容を追加して提出するという手順を採っ たため,同一の時間的条件のもとで仕上げられた ものではない。従って単純に数値を比較すること はできないが,メイン・ブランチの数と出現した 要素の数を参考として示すと表4のようになる。 図5 マインドマップの例① 表4 マインドマップの内容 学生. A. B. D. E. F. G. H. I. ブランチの数. 9. 10 13 15. 7. 6. 12. 6. 6. 要素の数. C. 20 47 24 92 48 24 25 37 18. マインドマップと似た特徴を持つ概念マップや ウェビングの場合は, 「整理法」として用いられ る例と「連想法」として用いられる例があり, 「連 想法」として用いられる際は挙げられた言葉(要 素)の数を定量的に評価することに加え,挙げら. 図6 マインドマップの例②. れた言葉の偏りからその学習者の知識の範囲や興 味・関心の重点を探ることが可能である15)。マ. ⑵ KJ法による「子どもの特徴」の整理. インドマップについても,メイン・ブランチの本. 第7回では,マインドマップの記述内容を精選. 数や要素の数に「○個以上/○本以上」などの量. して付箋紙に書き出し,「自分たちが思い描く子. 的条件を設けることによって,学習者の思考を活. どもの特徴」をKJ法によって整理した17)。マイ. 性化させることは可能だろう。また,授業者は,. ンドマップは主に個人的な思考の産物であると同. マインドマップに出現した要素を見つめること. 時に,拡散的な思考を促すツールである。一方. で,学習者の思考の方向性を把握することもでき. KJ法では,グループ活動によってお互いの思考. る。そのためマインドマップには,レポート作成. を共有したり交換したりする中で,拡散している. に向けた診断的評価としての機能があると言える. 情報を収束させながら整理していく思考が要求さ. だろう。. れる。今回は9人の受講学生を3人ずつ3つのグ. さらに,放射思考に基づくマインドマップは, 16). 思考を拡げるためのツールであるから. ,この. 作業段階では質的な真偽や妥当性が問われるもの. 350. ループに分け,模造紙上でKJ法を行った(図7)。 KJ法によって作成した図は,その後グループご とにデータ化した(図8)。.
(10) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 図7 KJ法による「子どもの特徴」についての整理. 図8 KJ法によって作成した図をグループごとにデータ化したもの. 351.
(11) 石 出 和 也. なお今回のアカデミックスキルでは,マインド. うなものがあるのかを調査させ,各自が「子ども」. マップやKJ法を,最終的なレポート作成に向け. 「遊び」「好奇心」「成長」「発達」などの自分自. た起点・経過点として位置づけていた。そのため,. 身の興味関心に関連する用語の意味を再確認し. 本研究ではルーブリック構築の対象とはしなかっ. た。その後は文献資料の探索を行い,そこから得. たが,今後はこれらについても,ルーブリック構. た知識を情報カードに書き留めていく作業を続け. 築の可能性を検討したい。. ながら,レポートの研究テーマを絞り込んでいっ た。以下は,今回の受講学生が最終的に設定した. ⑶ 「子どもの特徴」の文章化. レポートのテーマである。. 個人的思考であるマインドマップと,集団的探 究であるKJ法を経たのち,再び学生一人ひとり がKJ法の内容を振り返り,「自分が考える子ども. ○学 校教育と家庭教育において音楽教育は存在する のか. の印象」について文章化した。以下は,その一例. ○子どもの個性と表現. である(実際の文章から一部を抜粋した)。. ○家 庭は子どもの人格形成にどのように影響するの か. 「子どもの特徴」については, 「単純」であり 「純粋」であること,さらに「好奇心が旺盛」 であると考えた。まず,好奇心が旺盛であると いうことから, 「学びにつながる何か」が生まれ る。なぜなら, 「覚えたことをすぐに実践する」, 「何事にもよく疑問をもつ」といった学びにつ ながることが子どもの特徴として挙がったが, これは好奇心があるからこそではないかと考え るからだ。さらに性格面においても「元気で明 るい」 「笑顔」 「よくしゃべる」という子どもの 特徴も,好奇心が旺盛なこととつながっている と考えた。…(中略)…子どもの特徴として「遊 びをすぐに思いつく」 「外遊びをよくする」など たくさんの「遊び」をするということが挙げら れた。しかし遊びの中でも, 「寄り道をしてしま う」など悪いこと・危険なこともしてしまうた め, 「家族との決まり事が多い」など家族関係の 特徴も挙げられた。…(後略)…. ○子どもの年齢の定義について ○子 どもの成長・発達における個人差に対処するた めには何が重要か ○運動遊びによって発達する力 ○子 どもは何に対して好奇心を抱き,それがどのよ うに学習意欲と結びつくのか ○遊 びの中の音楽―子どもの成長とわらべ歌の関わ り― ○子どもは遊びを通して,何を得ていくのか. このテーマ設定の段階でチェックポイントとな るのは,レポートの作成日数や入手可能な資料に 基づき,探究可能な焦点化されたテーマとなって いるかどうかである。表5のルーブリック中の⑥ には,そのことを反映させた。. こうした作業を通して子どもに対する興味関心. 引き続き授業者側からは,レポートを作成する. を喚起したり,あるいは子どもの特徴についての. ための基本的な方法として, 「序論」 「本論」 「結論」. 疑問を抱かせたりしていった。ただし,この段階. という標準的な構成に則って書くこと,「事実」. はあくまでも「自分が考える子どもの印象」に留. と「意見」を区別して書くこと,特に「事実」に. まっており, 「子どもについての事実」が確認さ. ついて記述する部分では「引用」を意識的に行う. れているわけではない。. こと,などを指導した。加えて,註の主な目的と しては「出典・引用の提示」「補足的説明」の2. 5.レポートについてのルーブリック. つがあること,さらに,註の主な種類には「脚註」 と「後註」があることなどを,具体的な例を示し. そこで,北海道教育大学の附属図書館を利用し. ながら伝えた。. て「子ども理解」に関係の深い事典類にはどのよ. このレポート作成課題に際しては,上述した基. 352.
(12) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 本的な方法に加え,より具体的な条件として次の. 価指標よりも,むしろ「授業を理解しているか」. 5点を学生に示した。. 「自分の頭を使って考えているか」といった,教 育的な観点から評価すべきであろう18)。図10お. ①分 量はA4用紙(1行40字×30行が目安)5 枚以上20枚以内とする。 ②講義名,提出日時,自分の名前,学生番号, 所属などを必ず明記する。 ③提出期日までの間に授業者からの添削指導を 最低2回受ける。 ④引用文献・参考文献を用いて,事実と意見を 区別した書き方をする。 ⑤学術的な文章作成の練習として,脚註による 補足説明を4か所以上付ける。. よび図11に示したのは,実際に提出された9つの レポートからの抜粋である。レジュメについての ルーブリックを試作した際と同様に,仕上げられ たレポートを吟味した結果に,添削指導を行って いた際の筆者の判断過程を再現して重ね合わせて 構想したものが,表5のルーブリックである19)。 具体的な試作の手順としては,まず,提出され た9つのレポートについて,脚註の使用や図表の 挿入,引用の仕方や文献表の添付などの,主に形 式面を確認した。表5のルーブリック中の⑪~⑬. . には,そうした形式面を注視した結果を反映させ. 全15回の講義の中では,実際のレポート作成に. た。次に,引用文の意味をきちんと把握している. 向けてできる限り「精密な計画」を作らせることに. かどうかや,事実(文献から得た情報)と意見(自. 主眼を置き,第15回の講義までにレポートのアウト. 分の考え)をきちんと区別しているかどうか,レ. ラインを 「計画書」 として作成させた。第15回では,. ポートの全体的な内容構成が練られているかどう. その「計画書」に基づくプレゼンテーションを実. かなど,主に内容面についての確認を行った。表. 施した。この「計画書」には,テーマとその時点. 5のルーブリック中の⑦~⑩には,そうした内容. で入手している文献資料,序論・本論・結論のそ. 面を注視した結果を反映させている。. れぞれの部分の概要,その時点で想定している結 論などを含めることを主な条件とした(図9) 。 実際にレポートを書く作業は,第15回の講義終 了以降,7月下旬~8月中旬にかけて取り組ませ (提出期日は2015年8月20日とした) ,この間,授 業者からの添削指導を受けながら仕上げていくと いう手順をとった。表5のルーブリック中の⑤に は,添削指導の条件に関わるものを位置づけた。 完成したレポートは冊子としてまとめて,後期に 受講学生全員に配付した。なお,今回提出された レポートについては,表紙を除く頁数が最も多い ものは10頁であり,最も少ないものは5頁であっ た(単純平均は6頁であった) 。また,レポート作 成に際して使用している参考文献・引用文献の数 を見ると,最も多いものは14件の文献を使用して おり, 最も少ないものは3件の文献を使用していた。 学部レベルのレポート課題では,学術論文で求 められるような高度なクオリティを要求すること は困難であるから,「オリジナリティ」などの評. 図9 レポート作成に向けた計画書の例 (全体の中から一部を抜粋した). 353.
(13) 石 出 和 也. 図表などを用いた本文内容の視覚的補足 脚註を使用した補足説明. 文献表(引用文献・参考文献)の添付. 図10 実際のレポートの例(一部抜粋)~脚注・図表・文献表など. 354.
(14) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 研究テーマを設定した理由への言及 三グループに分かれて KJ 法を行ったわけであるが,全グ ループが同じキーワードをいくつか挙げていた。その中で私 が特に気になったワードが“好奇心”である。…(中略)… そこで,「好奇心はどういうものであるのか」「それが学習意 欲とどう関係するのか」ということを知るため,”子どもは 何に対して好奇心を抱き,それがどのように学習意欲と結び つくのか”という疑問を研究設問とすることにした。. レポートの全体的な内容構成への言及 まずは,好奇心の定義を確認し,どのようにして好奇心は 生まれるものなのかを述べる。その後に,学習意欲の定義, 子どもの学習意欲と好奇心,最後に本題の”子どもは何に対し て好奇心を抱き,それがどのように学習意欲と結びつくのか” ということについて述べたい。. 引用文献の使用. …桜井(2003)は,「好奇心とは新奇な刺激を求める傾向 (欲求)のことであり,2 種類に分けてとらえることができ る。一つは自分の知らないこと,珍しいことを知るために情 報を収集しようとする「拡散的好奇心」で,もう一つは,自 分が興味を持ったことを深く探求,認識するために新たな情 報を収集しようとする「特殊的好奇心」である(p.14.)」と 述べている。自分の知らない対象の情報を収集しようとする ことだけでなく,興味を持った一つの事柄について理解を深 めようとするのも好奇心なのだ。…(後略)…. 図11 実際のレポートの例(一部抜粋)~テーマ設定や内容構成への言及,引用文献の使用など. 355.
(15) 石 出 和 也. 表5 レポート作成についてのルーブリック 到達レベル. 評価観点. 4. 3. 2. 1. ① 指定された分量が守られて 指定された分量から見てや 指定された分量から見てや 指定された分量から見て大 いる。 や超過している。 や不足している。 幅に超過または不足してい る。. レポートの 基本的形式. ②. 自分の名前と所属,提出日 時,講義名の4つがすべて 正確に書かれている。. 自分の名前と所属,提出日 自分の名前と所属,提出日 自分の名前と所属,提出日 時,講義名のうちいずれか 時,講義名のうちいずれか 時,講義名のうちいずれか 3つが正確に書かれている。 2つが正確に書かれている。 1つのみ正確に書かれてい る。. ③. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが無く,作成した文章に ついてきちんと推敲するこ とができている。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが1か所見られるが,作 成した文章について概ね推 敲することができている。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが2か所見られ,作成し た文章についての推敲がや や不足している。. 誤字脱字や漢字変換ミスな どが3か所以上見られ,作 成した文章についての推敲 が大幅に不足している。. ④. レポート全体を通して,話 し言葉にならず,学術的な 文章に相応しい表現でまと めることができている。. レポート全体を通して,話 し言葉になっている部分が 1か所見られるが,おおむ ね学術的な文章に相応しい 表現でまとめることができ ている。. レポート全体を通して,話 し言葉になっている部分が 2か所見られるが,学術的 な文章に相応しい表現でま とめようとしている。. レポート全体を通して,話 し言葉になっている部分が 多く見られ,学術的な文章 に相応しい表現でまとめる ことができていない。. ⑤. レポートを作成する過程で, 授業者による添削指導を2 回以上受けており,かつ, 定められた期間内にレポー トを提出することができた。. レポートを作成する過程で, 授業者による添削指導を2 回以上受けているが,定め られた期間内にレポートを 提出することができなかっ た。. レポートを作成する過程で, 授業者による添削指導を1 回しか受けていないが,定 められた期間内にレポート を提出することができた。. レポートを作成する過程で, 授業者による添削指導を1 回しか受けておらず,かつ, 定められた期間内にレポー トを提出することができな かった。. ⑥. テーマが焦点化されており, 作成日数と文献・資料から みて追究可能なものとなっ ている。. テーマがおおむね焦点化さ れており,作成日数と文献・ 資料からみて追究可能なも のとなっている。. テーマがやや漠然としてお り,限られた作成日数の中 で追究可能なものとするた めには,文献・資料の再整 備を要する。. テーマが漠然としており, 作成日数と入手できている 文献・資料からみて追究可 能なものとはなっていない。. ⑦. 読み手に対して,調査の目 読み手に対して,調査の目 読み手に対して,調査の目 読み手に対して,調査の目 的や動機がきちんと伝わる 的や動機がおおよそ伝わる 的や動機が伝わりにくい序 的や動機が全く伝わらない 序論となっている。 序論が書かれている。 論となっている。 ように, 序論が書かれている。 ように,. ⑧. 引用文を使って事実を述べ る部分と,自分の意見を述 べる部分が明確に区別され ている。. 引用文を使って事実を述べ る部分と,自分の意見を述 べる部分がおおよそ区別さ れている。. 引用文を使って事実を述べ る部分と,自分の意見を述 べる部分があまり区別され ていない。. ⑨. 文献・資料からの引用に際 して,その引用文の意味が 正確に理解されている。. 文献・資料からの引用に際 して,その引用文の意味が おおむね正確に理解されて いる。. 文献・資料からの引用に際 文献・資料からの引用に際 して,その引用文の意味が して,その引用文の意味が やや不正確に理解されてい 誤って理解されている。 る。. ⑩. 結論が明確に述べられてお り,かつ,結論に至るまで の文章も論理的に構成され ている。. 結論に至るまでの文章は論 理的に構成されているが, 結論部分はやや不明瞭であ る。. 結論は明確に述べられてい 結論が不明確であり,かつ, るが,結論に至るまでの文 結論に至るまでの文章も論 章には論理的に構成されて 理的に構成されていない。 いない部分もある。. ⑪. 本文内容の補助となるよう な図や表などが,適度に挿 入されている。あるいは, 本文内容の補助となるよう な図や表などは挿入されて いないが,本文内容はおお むね理解可能なものとなっ ている。. 本文内容の補助となるよう な図や表などが挿入されて いるが,不必要な図や表が 多く挿入されており,煩雑 になっている。. 本文内容の補助となるよう な図や表などが不足してい るために,本文内容がやや 理解しにくくなっている。. 本文内容の補助となるよう な図や表などが全く挿入さ れていないために,本文内 容が理解困難なものとなっ ている。. ⑫. 脚註による補足説明が4か 所以上付けられており,そ れらの内容についても妥当 なものとなっている。. 脚註による補足説明が4か 所以上付けられているが, それらの内容の中には,妥 当性を欠くものが含まれて いる。. 脚註による補足説明が1~ 3か所程度付けられており, それらの内容についても妥 当なものとなっている。. 脚註による補足説明が1~ 3か所程度付けられている が,それらの内容の中には, 妥当性を欠くものが含まれ ている。. ⑬. レポートの末尾部分に引用 文献表が付けられており, 表記内容・表記方法も正確 である。. レポートの末尾部分に引用 文献表が付けられているが, 表記内容・表記方法が一部, 不正確である。. レポートの末尾部分に引用 文献表が付けられているが, 表記内容・表記方法の約半 分が不正確である。. レポートの末尾部分に引用 文献表が付けられているが, 表記内容・表記方法のほと んどが不正確である。. 提出期日 および添削指導. テーマ設定について. 序 論. 事実と意見の区別. 引用文についての理解. 結 論. 図 表. 脚 註. 引用文献表. 356. 引用文を使って事実を述べ る部分と,自分の意見を述 べる部分が渾然一体となっ ている。.
(16) アカデミックスキルについてのルーブリック構築の試み. 6.まとめにかえて. 多いと言えるだろう。 他方,「アカデミックスキル」以外の講義や演. そもそもルーブリックによる評価は,学習者に. 習において,ルーブリックがどの程度有効である. 対する最終的な評価として確定させることが目的. のかは,現時点では定かではない。講義や演習の. なのではない。ルーブリック中の「2」「1」に. 性格によっては,何かを感じ取ることや何事かに. 相当するような事例をできるだけ生じさせないよ. ついて考え抜くなど,体験的な理解そのものが重. うに,形成的評価として指導過程を工夫・展開さ. 視される学びの場面もあるだろう。そうした場面. せていくことこそが重要であろう。つまりルーブ. においては,ルーブリックによる言語的な規準・. リックは,講義設計や添削指導などのあり方と表. 基準によって区切ることで,学習者の豊かな学び. 裏一体なのである。例えば表5のルーブリックの. を矮小化させてしまう危険性もある。今後,学士. ③などについては,筆者が添削指導を行う過程で. 課程教育の全体像の中でルーブリック導入の可能. 指摘し,そのつど修正させているため,基本的に. 性を検討していく際には,その適用範囲を精査す. は(最終的には)全員が「4」を満たすことにな. る必要があると考える。. るのである。本稿では,「添削指導を行っていた 際の筆者の判断過程を再現して重ね合わせる」と. 附 記. いう表現を繰り返し用いてきた。講義設計やそこ での学習成果物を振り返ってルーブリックを構想. 本稿は北海道教育大学・平成27年度大学教育開. することは,通常は「身体知」となっていること. 発センター研究事業に採択された研究に基づいて. の多い授業者自身の評価観や指導観を,言語化し. おり,その研究成果の一端を報告するものである。. ていく作業でもあるだろう。 今回の研究では,平成27年度前期に札幌校芸術. 註および引用文献. 体育教育専攻音楽教育分野の1年次学生を対象と して実施した「アカデミックスキル」を手掛かり. 1)西岡加名恵「第2章 教育評価の方法」田中耕治編. として, 「要約文型のレジュメ作成についてのルー. 著『新しい教育評価への挑戦 新しい教育評価の理論. ブリック」 「図解型のレジュメ作成についてのルー. と方法 第Ⅰ巻 理論編』日本標準,2002年,pp.3597.引用はp.55.. ブリック」 「レポート作成についてのルーブリッ. 2)田中耕治「第1章「目標に準拠した評価」を生かす. ク」の3つを試作した。これらはいずれも試論的. 教育実践 1「目標に準拠した評価」が実践に提起し. に構築したものであるから,その利点や改善点に. ていること」田中耕治編著『教育評価の未来を拓く-. ついては,平成28年度以降,実際に試行していく 中で確認し,継続研究として稿を改めて報告する. 目標に準拠した評価の現状・課題・展望-』ミネルヴァ 書房,2003年,pp.12-25.引用はpp.15-16. 3)松下佳代「パフォーマンス評価による学習の質の評. 予定である。. 価―学習評価の構図の分析にもとづいて―」『京都大学. 「アカデミックスキル」はレジュメやレポート,. 高 等 教 育 研 究 』 第18号,2012年,pp.75-114. 引 用 は. プレゼンテーションなどの学習成果物を多く伴っ ており,本来的に学習過程が可視化されやすい講 義である。また,「アカデミックスキル」はいわ ゆる大人数講義ではないことから,授業者と学習 者がルーブリックを共有しながら指導過程・学習. pp.77-78. 4)松下佳代『パフォーマンス評価―子どもの思考と表 現を評価する―』(日本標準ブックレットNo.7)日本標 準,2007年,pp.6-7. 5)田中耕治編著『教育評価の未来を拓く-目標に準拠 した評価の現状・課題・展望-』ミネルヴァ書房, 2003年,p.253.. 過程を効率化させていくことにも適していると考. 6)前掲書3) ,引用はp.82.. えられる。その意味では, 「アカデミックスキル」. 7)前掲書1) ,p.88.. にルーブリックを導入することで得られる利点は. 8)「アカデミックスキル」という講義の目的について,. 357.
(17) 石 出 和 也. 北海道教育大学「教養教育見直しについての答申」(教 養教育見直しワーキンググループ/平成22年10月)で は,以下のように説明されている。. 基本的な方法を確認してから作業に臨んだ。 境愛一郎,中西さやか「子ども理解の方法としての KJ法―子どもの遊びの姿から学びを可視化する―」 『子. ・ 「アカデミックスキル」の目的(「授業内容」)を「大. ども理解のメソドロジー-実践者のための「質的実践. 学での勉強の仕方」の修得,すなわち大学で学ぶ上. 研究」アイディアブック-』ナカニシヤ出版,2012年,. で最低限必要とされる技能・力量を獲得することに おく。 ・ 「大学での勉強の仕方」とは, 「読む」 「書く」 「調べる」 「課題を見つける」 「まとめる(考える)」 「発表する」. pp.19-34. 18)前掲書14) ,p.105. 19)レポート作成に関するルーブリックの構想にあたっ ては,以下を参考にした。. 「聴く」等であり,本授業では文章の読み方・書き方,. スティーブンス他『大学教員のためのルーブリック. 文献・資料収集の仕方,図書館の使い方,課題の立. 評価入門』佐藤浩章監訳,井上敏憲,俣野秀典訳,玉. て方,レポートやレジュメの書き方,発表の仕方・. 川大学出版部,2014年.. 聴き方などに関する基本的な力の形成をめざす。 9)山田礼子「学生の特性を把握する間接評価:教学IR の有用性」『工学教育』61⑶,2013年,pp.27-32.引用 はp.31. 10)教員養成大学の初年次教育では,小中学校において 授業観察を行う機会も多い(北海道教育大学教育学部 札幌校の場合は「基礎実習」がこれに相当する)。今回 は「書く技術」の中にそうした授業観察・授業記録に ついての基本的事項も含め,ノートテイキングの応用 として位置づけた。 11)例えばテクスト1は,メインタイトルが本文全体に 渡って示されている事例を暗示しており,サブタイト ルは文章の結論を象徴的に表すものとなっている。ま た,文章の結論はテクスト全体の中心部に位置してい る。他方テクスト2の場合は,タイトル自体が本文に おける主張(結論)を表している。本文中で述べられ ているのは,いずれも事例であり,結論という形で明 確に主張が示されているわけではない。このように, 今回は同一の著者によるテクストを選定したが,文章 の構成を読み取りながらレジュメ作成を行うための練 習として,タイトルや文章構成などの特徴が異なって いるものを意図的に配置した。 12)「アカデミックスキル」でレジュメ作成の技法につい て学んでいた同時期に,その対象学生である1年次学 生は,文献講読とディスカッションを主体とした別の 講義も受講していた。この講義では以下のテクストを 使用した文献講読を行っていた。 渡辺裕『聴衆の誕生-ポスト・モダン時代の音楽文 化-』(中公文庫857)中央公論新社,2012年. 13)前掲書1),p.90. 14)成瀬尚志「レポート評価において求められるオリジ ナリティと論題の設定について」『長崎外大論叢』第18 号,2014年,pp.99-108.引用はp.99. 15)前掲書1),p.61. 16)吉田敦也「4.マインド・マッピング」立田慶裕編『教 育研究ハンドブック』世界思想社,2005年,pp.40-51. 17)KJ法については以下を参考資料として配付し,その. 358. (札幌校准教授).
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