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青年期における心理的自立(II) : 心理的自立尺度の作成

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(1)Title. 青年期における心理的自立(II) : 心理的自立尺度の作成. Author(s). 高坂, 康雅; 戸田, 弘二. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 56(2): 17-30. Issue Date. 2006-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/400. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育人学紀要(教育科学編)第56巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.56,No.2. 平成18年2月 February,2006. 青年期における心理的自立(Ⅱ) 心理的自立尺度の作成. 高坂 廉雅・戸田 弘二*. 筑波人学人学院人問総合科学研究科. *北海道教育人学岩見沢校. PsychologicalJiritsuinAdolescence(II) ConstructionofPsychologicalJiritsuScale. KOSAKAYasumasaandTODAKoji* GraduateComprehensiveHumanSciences,TsukubaUniversity *HokkaidoUniversityofEducation,Iwamizawa. 要 旨 本研究の臼的は,①青年の自立の程度を測定する尺度を構成する,②依存性との関連から,構成された自 立尺度の併存的妥当性を検討する,⑨青年の自立と社会的行動との関連を検討する,という3点を通して, 自立概念の構造を実証的に明らかにすることであった.310名の大学生を対象に質問紙調査を行い,以下の 結果を得た.(1)因子分析により5因子を抽出し,これにもとづいて「価値判断・実行」,「自己統制・客観視」, 「現在把握・将来志向」,「適切な対人関係」,「社会的知識・視野」の5つの下位尺度を持つ,計29項目から. なる心理的自立尺度(PsychologicalJiriisuScale;PJS)が構成された.(2)PJSと依存性尺度との偏相関は 理論的に予測された結果にほぼ一致していた.(3)社会的迷惑行動は「自己統制・客観視」によって抑制され, 向社会的行動は「適切な対人関係」と「現在把握・将来志向」によって促進されていた.以上の結果から,. PJSは高い信頼性とある程度の妥当性をもった青年の心理的自立を測定するための尺度であることが確認さ れた.. Key Words:心理的自立,心理的自立尺度,依存性,社会的迷惑行動,向社会的行動. 17.

(3) 高坂 康雅・戸田 弘二. 問 題 自立は青年期の最も重要な発達課題のひとつで. 高校女子において「親への依存性」と「独立性」 が共に高い傾向にあることを,福島(1993a)が,. 特に女子において,自立と依存が矛盾なく存在し. あり(Havighurst,1953),母子分離や心理的離. ていることを示している.以上の研究は自立と依. 乳,依存性,自我同一性などの青年期の諸問題は. 存が対立概念ではなく,むしろ依存することで自. いずれも自立の問題と深い関わりを持っている. 立が促されるという発達的方向を示唆している.. (渡達,1990).本研究では,先行研究を整理し,. これらの知見をふまえると,今日における自立研. ①青年の自立の程度を測定する尺度を構成する,. 究は,単に一人立ちし自分のことは自分でできる. ②依存性との関連から,構成された自立尺度の併. 状態と捉えるだけでは不十分であり,他者との関. 存的妥当性を検討する,⑨青年の自立と社会的行. 係の中での自立を考えていかなければならない. 動との関連を検討する,という3点を通して,自 立概念の構造を実証的に明らかにすることを目的 とする.. (福島,1993b)といえよう.. 次に,これまでの自立概念に関する理論研究を 概観すると,自立概念は単一ではなく,複数の側 面から構成されていることがわかる.例えば,久. これまでの自立研究の概要. 自立概念は,青年期における心理社会的発達の. 世・久世・長田(1980)は発達的な観点から自立 を身体的,行動的,精神的,経済的の4側面に分. 中心的課題として従来より大きな関心がもたれ. 類しているし,上子(1982)は,行動,決定,価. (神谷,1997),あらゆる文脈において用いられ. 値,情動の4側面から自立を概念化している.ま. てきた.しかし,自立概念はこれまでの心理学で. た,渡達(1990)は,まず自立に「消極的自立(他. は必ずしも明確にされておらず,この概念をどう. 者を頼らない・他者に依存しない)」と「積極的. 捉えるかについても研究者間で一致を見ていな. 自立(自己判断・自己決定・自己統制に基づき,. い.これは,自立という用語が日常生活で頻繁に. 時間的展望を持って主体的に自己自身の力でや. 用いられており,その意味する内容がその場の文. る)」という2つの下位概念を設け,さらに自立. 脈に応じて微妙に使い分けられてきたために,概. の枠組として,身体,行動,認知,情緒,価値,. 念としてあいまいで,研究対象となりにくかった. 経済の6側面を分類し,それぞれの側面が「消極. ためと考えられる(吉本,1984;福島,1992など).. 的自立」から「積極的自立」へと発達するとして. ここでは,これまでの自立に関する理論研究や実. いる.高坂・戸田(2003)は,これらの研究に基. 証研究を整理し,自立研究における知見や問題点. づき, 青年期における心理的自立は行動・価値・. を明らかにする.. 情緒・認知の4側面から捉えるのが適切であると. かつての児童心理学や青年心理学では,依存と 独立・自立は対極概念であり,依存から独立・自 立へという発達的方向が仮定されていた.しかし,. し,Tablelのようにそれぞれの側面における 自立を定義している. また,国外の自立研究(ここでは,一般に自立. 江口(1966)は,それまでの研究を整理した上で,. と対応して用いられるindependenceとauton−. 自立を依存行動の質的変化の一側面として位置づ. omyを取り上げた)も,国内同様,自立を複数. け,「人間を信頼し,誰とも暖かい関係を持ち,色々. の側面から捉えようとしている.Douvan&. な人の行動や反応に関心を持っており,特定の人. Adelson(1966)は,autOnOmyを親からの分離. によってすぐに行動が左右される事なく最終的に. 状態という視点から,emOtional,behavioral,. は自分自身で判断が下せる」という自立的な人格. valueの3側面で捉えている.また,Hoffman. に内在する成熟した依存性を提唱した.また,実. 証研究においては,加藤・高木(1980)が,特に. 18. (1984)は,Blos(1979)の分離一個体化理論 に基づいて,independenceをfunctional,emO−.

(4) 青年期における心理的自立(Ⅲ). Tablel 高坂・戸田(2003)による心理的自立の4側面 行動的自立:自らの意志で決定した行動を,自分の力で行い,その結果の責任をとることができるように なること(実行と責任)。. 価値的自立:行動・思考の指針となる価値基準を明確に持ち,それに従って物事の善悪,行動の方針など の判断を下すことができるようになること(価値観と判断)。. 情緒的自立:他者との心の交流をもつとともに,感情のコントロールができ,常に心の安定を保つことが できるようになること(自己統制と適切な対人関係)。. 認知的自立:現在の自分をありのままに認めるとともに,他者の行動,思考,立場および外的事象を客観 的に理解・把探することができるようになること(自己認知と社会的知識・視野)。なお, 外的事象に関する知識を得ることもこれに含むこととする。. tional,attitudial,COnflictualの4つに分類して. これら先行研究で指摘された側面を十分に踏まえ. いる.平石(1995)が,このHo緻nanの研究を「青. るとともに,他者との人間関係,関係性を強調す. 年期の心理的な分離の過程」として紹介している. ることによって,日本における自立概念を実証的. ように,Hoffmanの自立概念は両親からの分離. に捉えることができるものと思われる.. が強調されている.Steinberg(1985)は, autonomyを「健全な独立心」と定義した上で,. 一方,自立概念を扱った実証研究としては吉本 (1984)がある.吉本は自立の条件や自立してい. emotional,behavioral,Valueという3側面か. る人についての自由記述を収集し,それらが自立. ら概念化している.さらに,Noom,Dekovic&. している人間の条件としてどの程度重要かという. Meeus(2001)は,これまでの先行研究をまと. 点から因子分析を行い,「パーソナリティ」,「社. めた上で,autOnOmyにattitudinal,emOtional,. 会的自我の確立」,「外面的堅実さ」,「分離一独立. functionalの3側面を設定している.これらは順. 一孤高」,「社会的存在としての自覚」という5因. に,自分の臼標に対する決定・信粕・耽り組みを. 子を抽出している.また,福島(1992)は自立し. 表している.. ている人の特徴を自由記述で収集し,そこから精. 以上のように,理論研究では,国内外を問わず,. 神的自立と社会的自立という2側面を設定し,そ. 自立概念を複数の側面から捉えており,そこで設. れぞれの側面について実証的に検討している.そ. 定されている側面にも,情緒的,行動的,価値的. の結果,精神的自立には「主体的自己」,「判断・. といったようにある程度共通の枠組みが見て取れ. 責任性」,「親からの心理的分離」,「親との信頼関. る.渡達(1990)が,情緒的・行動的・価値的自. 係」という4因子が,社会的自立には「協調性・. 立の3つの側面は,自立の概念化の枠組として欠. 社会的能動性」と「友人関係の確立」という2因. くことのできないものであると述べているよう. 子が,それぞれ抽出された.さらに,神谷(1993). に,これら3側面は自立の基本的な側面といえよ. は,自立が統合的依存性と独立性という2つの要. う.ところで,Douvan&Adelson(1966)や. 素から構成されると仮定し,この2要素からなる. Hoffman(1984)のように,国外には親からの. 女性の自立尺度を作成している.なお,国外にお. 心理的な分離を強調して自立概念を捉えているも. いて自立概念を実証的に検討した研究は調べた限. のもあるが,国内ではそのような強調はあまり見. りでは見あたらなかった.. られない.これは,日本における自立が他者との. これまでの自立研究の問題点としては,理論研. 人間関係を基盤として発達するもの(福島,. 究に基づいた実証研究が行われていないというこ. 1993b)と捉えているためであろう.したがって,. とがあげられる.そのため,理論研究における自. 19.

(5) 高坂 康雅・戸田 弘二. 立概念の枠組が実証的に適切であるか,つまり実. 結婚など)・生活的自立(家事ができるなど)も. 際の青年が捉えている自立概念と対応しているの. 含めて定義されることが多かったが,本研究では. かは明らかにされていない.吉本(1984)や福島. 青年期の心理的発達に着目していることから,経. (1992)の実証研究では自由記述などを中心に項. 済的・社会的・生活的自立とは区別し,「心理的. 目を作成しているため,青年が持つ自立概念を反. 自立」という語を用いることとする.また,すで. 映しているとはいえるが,自立の概念的な枠組が. に述べたように,国外におけるautonomyやin−. 十分に設定されているとは言い難い.このことは. dependenceが親からの独立・分離を強調しやす. 作成された尺度が自立の特定の側面に偏った内容. いのに対して,国内における自立概念は,親を含. から構成されてしまうことや自立とは直接関連し. めた他者との関連性を重要視していることや,神. ない項目を尺度の中に含む可能性を残している.. 谷(1997)が「欧米でのindependenceの概念が. 実際,吉本では,「外面的堅実さ」がほとんどの. 日本での自立を十分説明しつくしているとは言い. 対象者から「重要ではない」と評価されており,. 難い」と指摘していることから,心理的自立の英. 福島の「親との信頼関係の確立」や「友人関係の. 語表記を“psychologicalJiriisu”とした.. 確立」には自立とは無関係もしくは自立の結果と. Greenberger(1984)は,autOnOmyを「自信. 考えられる項目が多く含まれている(例えば,「心. をもって意志決定,自己統制できること」と定義. を許しあえる人がいる」ことが自立の条件なので. し,また深谷(2000)は精神的自立を当面した問. はなく,自立しているから人と心を許しあえるよ. 題に対して自分で決められる能力が備わった状態. うになると考えるからである).また,神谷(1993). であるとしている.また久世ら(1980)は自立の. では,統合的依存性と独立性という要素を設定し. 過程を「社会化」の過程であるとしている.社会. ているが,これが自立を捉える要素として適切か. 化とは,ある人問がある社会に受け入れられる人. は検討されておらず,また,女性に限定する理由. 間になっていく過程のこと(佐藤,1996)であり,. も明確にされていない.. Greenberger(1984)や深谷(2000)を踏まえる. このように見ると,これまでの自立研究から,. と,その過程において青年は,社会的価値観のも. 自立概念を捉える理論的枠組はある程度提供され. と,様々な問題に対処し,社会適応する能力(意. てはいるものの,それに基づいて自由記述などか. 志決定や自己統制など)を獲得していくことが求. ら項目の収集・作成をし,実証的な検討をすると. められると言えるだろう.高坂(2003)は,これ. いう,一連の手続きが成されていなことが明らか. らをまとめた上で,青年期における心理的自立を. となった.しかし,このような手続きをとること. 「成人期において適応するために必要な心理・社. により,これまで成されてこなかった理論研究と. 会的な能力を備えた状態」と定義している.本研. 実証研究との統合が可能となり,自立概念を包括. 究では,高坂(2003)の定義を用いた.また,理. 的に捉えることができるようになるであろう.. 論的枠組に関しては,先行研究をある程度網羅し ていることから,自立を4側面から捉えている高. 心理的自立の定義. 坂・戸田(2003)の枠組に基づき,研究を進めた.. ここでは,本研究における心理的自立の定義を 行う.これまでに紹介した自立研究のほとんどで は,自立そのものの定義がされていないが,自立. 心理的自立と依存性・社会的行動との関連. 本研究では,心理的自立尺度の併存的妥当性を. の定義化は理論的枠組の設定および枠組の実証的. 確認するために,依存性尺度(関,1982)との関. 検討を適切に行う上でも重要である.. 連を検討する.自立は依存が質的に変化したもの. これまでの発達心理学における自立概念は,経 済的自立(安定した収入)・社会的自立(年齢,. 20. であるという江口(1966)の観点に基づいて,関 (1982)は依存性を依存欲求,統合的依存性,依.

(6) 青年期における心理的自立(Ⅲ). Table2 関(1982)による依存性プロフィールの特徴 欲一統一拒 Ⅰ型 (低一低一低). Ⅱ型 (低一低一高). Ⅲ型 (低一高一低). Ⅳ型 (低一高一高). Ⅴ型 (高一低一低). Ⅵ型 (高一低一高). Ⅶ型 (高一高一低). Ⅷ型 (高高高). 特. 徴. 依存欲求、統合的依存性、依存拒否、いずれも低く、依存性を含めた、対人関係の稀薄さ、 又は、対人関係に対する関心の′トさいことを示す。 依存拒否のみ高い型で、成長過程にある者に多く見られると考えられる。安定感を求めるよ り、独立しようとするいわば、青年期型である。 厳密な意味での、統合された依存性を示す。相互依存的関係を、他者との間にもち、又、 人でも安定し得る、成熟した、依存性の型である。 Ⅲに次いで、成熟した型であると考えられる。依存拒否が高い点で、多少、不安定である可 能性がある。依存不安が高い場合、特にそうである。 依存欲求のみ高く、統合的依存性、依存拒否が低い、という点で、程度の差こそあれ、幼児 に近い型である。いわゆる“依存的”な人だと考えられる。 Ⅲの、丁度逆の型で、適応上、最も問題を含んでいると考えられる。“依存したいのに、で きない”人であり、神経症的な依存性の型である。 女子の依存件の典型と言える型で、一応、安定はしているが、依存欲求が高い点で、成熟し た型とは言い切れない。 多くの矛盾を含んだ型である。現時点では、この型の解釈はなされ得ないが、何らかの不適 応につながると考えられる。. 注)欲=依存欲求,統=統合的依存性,拒=依存拒否. 存拒否の3つに分け,その組み合わせから8つの. している.このことから,自立と社会的行動との. 依存性プロフィール(Table2参照)を考案して,. 関連が予想されるが,これまで自立概念やそれに. 自己肯定感との関連を検討している.その結果,. 類似する概念と社会的行動との関連は十分明らか. 大学生ではⅢ型(依存欲求低一統合的依存性高一. にされてきたとはいえない.そこで,本研究では,. 依存拒否低,以下同様)とⅣ型(低一高一高)が. 自立と社会的行動との関連を探索的に検討するこ. 最も自己肯定的であり,Ⅵ型(高一低一高)が最. ととした.ここでは社会的行動として社会的迷惑. も自己肯定感が低いことを報告している.関. 行動と向社会的行動を取り上げる.社会的迷惑行. (1982)は自己肯定感を人格適応の指標としてい. 動とは「行為者が自己の欲求充足を第1に考える. るが,自立とは適応や成熟した人格に深く関わる. ことによって,結果として他者に不快な感情を生. 概念である.したがって,心理的自立尺度は依存. 起させること,またはその行為」(斎藤,1999). 欲求と負の,統合的依存性とは正の相関が予測さ. であり,向社会的行動とは「外的な報酬を期待す. れる.また,青年期における独立意識の高まりを. ることなしに,他人や他の人々の集団を助けよう. 考慮すると,依存拒否は必ずしも自立の発達を抑. としたり,こうした人々のためになることをしよ. 制するとは言えないことから,心理的自立尺度と. うとする行為」(Mussen&EisenbergrBerg,1977). は相対的に強い相関は認められないであろう.以. と定義されている.自立が社会適応の一指標とな. 上より,依存性プロフィールからは,山型と1V型. ることを考慮すると,心理的に自立している人ほ. が最も自立的であり,Ⅴ型(高一低一低)とⅥ型. ど,社会的に望ましくない社会的迷惑行動はせず,. が最も自立的でないことが予測される.. また社会的に望ましい向社会的行動を多く行うで. また,久世ら(1980)は自立の過程は「社会化」. あろうと予測できる.そこで,心理的自立のどの. の過程であり,個人が他の人々との交流を適して. 側面が社会的迷惑行動を抑制し,向社会的行動を. 社会的に適切な行動パターンを発達させていくと. 促進するのかについて検討する.. 21.

(7) 高坂 康雅・戸田 弘二. 「あまりしない」(3点),「しない」(2点),「全 方 法. くしない」(1点)の7件法で求めた.. 調査対象者 北海道内の国立大学,私立大学に通. 調査時期・実施方法 2002年10月上旬から下旬に. う大学生310名(男性104名,女性205名,不明1名).. かけて,集合調査および留置き調査を行った.. 年齢幅18∼26歳,平均年齢は19.5歳(標準偏差1.4 歳). 結 果. 質問紙構成 ①心理的自立に関する項目 先行研 究(吉本,1984;福島,1992)の質問項目,高坂・. 戸田(2003)における自立概念の4側面それぞれ. 心理的自立尺度の構成 回答分布に偏りがある項目を除去するために,. の定義及び収集した自由記述文などを参考に,57. 心理的自立に関する57項目の平均値と標準偏差を. 項目を作成した.これを高坂・戸田(2003)の4. 算出し,平均値±1標準偏差が評定の上限値また. 側面に分類すると,行動的自立14項目,価値的自. は下限値を越えていないかどうかを確認した(田. 立15項目,情緒的自立15項目,認知的自立13項目. 中,1996).その結果,57項目全てにおいて,評. となる.回答は,「非常にあてはまる」(7点),「あ. 定値がこの基準内にあったことから以後の分析で. てはまる」(6点),「ややあてはまる」(5点),「ど. は全項目を用いて行った.. ちらともいえない」(4点),「あまりあてはまら. まず,57項目の因子構造を確認するために,最. ない」(3点),「あてはまらない」(2点),「全く. ′ト2乗法による因子分析を行った.固有値が1.0. あてはまらない」(1点)の7件法で求めた.. 以上で,固有値の減衰状況から5因子構造が適切. ②依存性尺度 関(1982)による依存性尺度のう. であると判断し,因子数を5因子に指定して最′ト. ち,依存欲求,統合的依存性,依存拒否の3つの. 2乗法・Equamax回転による因子分析を行っ. 下位尺度から10項目ずつ,計30項目を使用した.. た.その際できるだけ単純構造が得られ,各因子. 回答は,心理的自立に関する項目同様7件法で求. に対して負荷量が絶対値で.40以上の項目数があ. めた.. る程度等しくなるように項目の取捨選択を行いな. ⑨社会的迷惑行動尺度・向社会的行動尺度 吉. がら凶子分析をくり返し行った.その結果,最終. 田・安藤・元吉・藤田・廣岡・斎藤・森・石田・. 的に,Table3に示す29項目が残された.29項. 北折(1999)が作成した迷惑認知尺度の中から,. 目に対する5因子解での累積寄与率は49.1%で. 「ルール・マナー違反」の因子と「周りの人との 調和を乱す行為」の因子の一方にのみ負荷が高く,. あった.. 第1因子は“自分が正しいと思った道を突き進. また一般の大学生が日常的に経験しやすいと考え. むことができる’’,“自分一人で物事を決めること. られた項目をそれぞれ10項目,計20項目を選択し. ができる’’など,行動的側面と価値的側面から構. 使用した.また,菊池(1988)の向社会的行動尺. 成されている.自分の価値観に基づいて判断し,. 度から,同様に一般の大学生が日常的に経験しや. 行動できるようになることを表す因子と解釈され. すいと考えられた10項目を選択し,使用した.そ. ることから「価値判断・実行」の因子と命名した.. の際,「手紙」を「メール」にかえるなど,現在. 第2因子は,“感情のコントロールができる’’,“一. の社会状況にあうように,文章を若干変更した.. 時の感情に左右されない’’などの情緒的側面と,. なお,社会的望ましさによるバイアスの影響を抑. “物事を客観的に見ることができる’’,“自分を冷. えるために,社会的迷惑行動に関する項目と向社. 静に見つめ,理解している’’という認知的側面か. 会的行動に関する項目はランダムに配置した.回. ら構成されている.自分の感情をコントロールし,. 答は「よくする」(7点),「する」(6点),「たま. 自分や外的事象を客観的に見ることができるよう. にする」(5点),「どちらともいえない」(4点),. になることを表す因子と解釈されることから,こ. 22.

(8) 青年期における心理的自立(Ⅲ). Table3 心理的自立尺度因子分析結果(最小2乗法・Equamax回転後) FI F2 F3 F4 F5. 項 目 内 容 自分が正しいと思った遺を突き進むことができる(行動). .726. .037. .329. .068. .018. 自分一人で物事を決めることができる(価値). .702. .120. .115. .063. .223. 周りの人に流されずに行動したり考えたりすることができる(行動). .668. .269. .163. .069. .081. 自分のことは自分で判断する(価値). .665. .169. .196. .035. .191. 自分の判断を信じることができる(価値). .655. .180. .165. .161 .142. −.562. .116. 他人からの圧力によって、自分の考えをすぐに変えてしまう(価値). .047. .112. .044. .212. .200. .288. .012. .104. .101. 意見がはっきりと言える(行動). .541. 感情のコントロールができる(情緒). .053. 一時の感情に左右されない(情緒). .131 .690. つい感情にまかせて行動してしまう(情緒). .027. 悲しみ、怒りなどの感情を自分一人で落ち着かせることができる(情緒). .148. .623. .077. .111 .169. .062 .096 .728. .096 .195. −.663 .125. .111 .138. 常に落ち着いている(情緒). .294. .552. .041. .173. 物事を客観的に見ることができる(認知). .172. .518. .186. .091 .224. 自分を冷静に見つめ、理解している(認知). .204. .516. .240. .101 .226. .338. 自分の目標がはっきりしている(価値). .225. .147. .048. 将来のために努力することができる(行動). .247. .056. .669. .155. .163. 将来のことをよく考えている(価値). .032. .029. .626. 自分の短所・長所を知っている(認知). .126. .027 .696. .162. .207. .091 .470. .113. .166. .218. 自分の置かれている立場をわかっている(認知). .087. .246. .204. 友好関係をうまく築くことができる(情緒). .079. .026. .106. .829. .042. 相手の気持ちにあわせて適切に接することができる(情緒). .036. .158. .113. .752. .165. .630. .093. .457. .166. .435. .317. .054. .753. 周囲の人と協調することができる(情緒). .094. .187. .444. .171. 他人の気持ちを思いやることができる(情緒). .004. 状況にあわせた行動ができる(行動). .338. 世間の情勢に詳しい(認知). .107. .065. .033. 色々なことをよく知っている(認知). .155. .148. .161. 社会的に広い視野をもっている(認知). .112. .120. .144. .303. .284. .276. 自分も社会の一員だという認識がある(認知). .087 .052. 社会生活における自分の役割がわかっている(認知). .168. .209. .020 .693. .288. .152. .247. .190. .571. .114. .464. .221 .410. 3.490 3.197 2.556 2.553 2.435. 回転後の負荷昌平方和. .86. α係数. 各因子に負荷の高い項目の平均得点の相関. FI F2. .84. .78. .81 .76 F4. F3. F5. F2 .37** F3. .41**. .31**. F4. .26**. .44**. .45**. F5. .35**. .31**. .44**. .35**. **p<.01. 注)カツコ内は高坂・戸田(2003)の概念的枠組を意味する の因子を「自己統制・客観視」の因子と命名した.. 子を「現在把握・将来志向」の因子と命名した.. 第3因子は,“自分の目標がはっきりしている’’,. 第4因子は“友好関係をうまく築くことができ. “将来のために努力することができる’’,“自分の. る’’,“相手の気持ちにあわせて適切に接すること. 短所・長所を知っている’’など,行動,価値,認. ができる’’など,主に情緒的側面から構成されて. 知の3側面から構成されている.現在の自分の状. いる.周囲の人と協調し他者と適切に関われるこ. 態を理解し,それをもとに将来を考え,努力でき. とを表す因子と解釈されることから,この因子を. ることを表す因子と解釈されることから,この囚. 「適切な対人関係」の因子と命名した.第5因子. 23.

(9) 高坂 康雅・戸田 弘二. は“世間の情勢に詳しい’’,“自分も社会の一員だ. 心理的自立と依存性との関連. という認識がある”など,すべて認知的側面から. 依存性尺度項目について,PJS同様,平均値. 構成されている.この因子は,社会的な知識や社. ±1標準偏差が評定の上限値または下限値を越え. 会的における自分の役割が理解できることを表し. ていないかどうかを確認したところ,いずれも基. ていると解釈されることから,この因子を「社会. 準内であった.そこで,PJSと同様の手続きで,. 的知識・視野」の因子と命名した.. 依存性尺度30項目すべてに対して因子分析(最′ト. 2乗法・Equamax回転)を行った結果,依存欲. 各因子に負荷の高い項目の内的一貫性を確認す るため,逆転項目への回答を修正したうえで. 求8項目,統合的依存性7項目,依存拒否8項目. Cronbachのa係数を算出した(Table3下段参. となり,それぞれの平均値を算出し,依存欲求得. 照).その結果,.76∼.86といずれにおいても充. 点,統合的依存性得点,依存拒否得点とした.. 分な信頼性が確認されたことから,各因子に絶対. PJSの併存的妥当性を検討するため,心理的自. 値で.40以上の負荷をもつ項目の平均値を算出し,. 立得点および5つの下位尺度得点と依存性尺度の. これを下位尺度得点とした(以後,それぞれ価値. 3つの下位尺度得点との相関を算出した.ただし,. 判断・実行得点,自己統制・客観視得点,現在把. 依存性尺度の3尺度得点の問には弱い相関(依存. 握・将来志向得点,適切な対人関係得点,社会的. 欲求一依存拒否:−.17,依存欲求一統合的依存性. 知識・視野得点とする).また,因子分析は直交. :−.38,依存拒否一 統合的依存性:.29)が認め. 回転を行ったが,このようにして得られた下位尺. られたため,他の2つの下位尺度得点の効果を統. 度得点間にはある程度の相関関係があると思われ. 制した偏相関係数を算出した(Table4参照).. たため,下位尺度得点問の相関係数を算出した. その結果,心理的自立得点と依存欲求得点との問. (Table3下段参照).その結果,.26∼.45と下. には弱い負の偏相関(r=−.35)が,統合的依存. 位尺度問にはそれぞれ弱いもしくは比較的強い正. 性得点との問には弱い正の偏相関(r=.36)が,. の相関関係がみられた.さらに,全29項目でα係. 依存拒否得点との問にはかなり弱い正の偏相関(r. 数を算出したところ,.90と十分な信頼性が確認. =.16)が見られた.心理的自立尺度の下位尺度. されたため,29項臼の平均値を算出し,これを心. 別に見ると,依存欲求得点は,価値判断・実行得. 理的自立得点とした.. 点(r=−.52)との問に比較的強い負の偏相関,. 以上の結果から,本研究で作成された心理的自. 自己統制・客観視得点(r=−.24)との問には弱. 立尺度の信頼性は高いと判断し,5つの下位尺度. い負の偏相関,さらに適切な対人関係得点(r=. からなる計29項目を最終的に心理的自立尺度項目. −.11)との問にかなり弱い負の偏相関が見られた.. に決定し,以後,本尺度を心理的自立尺度. 統合的依存性得点は,現在把握・将来志向得点(r. (PsychologicalJiriisuScale;PJS)と呼ぶこと. =.34),適切な対人関係得点(r=.37),価値判. にする.. 断・実行得点(r=.29)との問に弱い正の偏相関, 自己統制・客観視得点(r=.17),社会的知識・. Table4 心理的自立尺度と依存性尺度の偏相関 人数 依存欲求 統合的依存性 依存拒否. 306 306 306. 価● 自● −.52 *料. −.24 *料. 社会識●. −.10 +. −.11*. −.10 +. 心理的自立 −.35 *料. .29 ***. .17 **. .34 ***. .37 ***. .12 **. .36 ***. .07. .13 *. .13 *. .08. .15 **. .16 **. +p<.10 *p<.05 **p<.01 ***p<.001. 24.

(10) 青年期における心理的自立(Ⅲ). 視野得点(r=.12)との問にかなり弱い正の偏. 以上より,心理的自立の5下位尺度のうち,「価. 相関が見られた.また,依存拒否得点は,自己統. 値判断・実行」と「現在把握・将来志向」が依存. 制・客観視得点(r=.13),現在把握・将来志向. 性プロフィールと関わっていること,また,心理. 得点(r=.13),社会的知識・視野得点(r=.15). 的自立全体およびこの2つの下位尺度において,. との問にかなり弱い正の偏相関が見られた.. いずれもⅣ型(低一高一高)はⅤ型(高一低一低). ところで,関(1982)は3つの依存性をそれぞ. やⅥ型(高一低一高)にくらべてより自立的であ. れ独立に検討するよりも3尺度の組み合わせに. るということが明らかとなった.. よって検討する方が適応との関連を理解しやすい. と考え,3尺度得点の高低からTable2に示す8. 心理的自立と社会的迷惑行動・向社会的行動との. つの依存性プロフィールを作成している.そこで,. 関連. 関(1982)にならって,8つの依存性プロフィー. 社会的迷惑行動尺度項目,向社会的行動尺度項. ルを作成し,心理的自立得点および5つの自立下. 目についても,PJS同様,平均値±1標準偏差. 位尺度得点を従属変数に8つの依存性プロフィー. が評定の上限値または下限値を越えていないかど. ルを要因とした一元配置分散分析を行った. うかを確認したところ,社会的迷惑行動尺度項目. (Table5参照).その結果,心理的自立得点お. では6項目が下限値を下回っており,向社会的行. よび価値判断・実行得点,現在把握・将来志向得. 動尺度項目はすべて基準内であった.そこで,社. 点で要因の主効果が有意であった(各々,F(7,302). 会的迷惑行動尺度項目14項目について主成分分析. =3・30,p<・01;F(7,302)=7・55,p<・001;. を行った結果,3項目が第1成分に対し.40以下. F(7,302)=3.07,p<.01).TukeyのHSD検定. の負荷を示していたため削除し,再度主成分分析. による多重比較を行ったところ,心理的自立得点. を行った(Table6参照).11項目での第1成分. ではⅣ型がⅤ型,Ⅵ型よりも有意に得点が高いこ. への寄与率は26.6%であった.11項目のα係数を. と,価値判断・実行得点ではⅣ型がⅤ,Ⅵ,Ⅶ型. 算出したところ,.72と十分な内的一貫性が確認. よりも,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型がⅤ,Ⅵ型よりも有意に得. されたため,この11項目の平均値を算出し,これ. 点が高いこと,現在把握・将来志向得点ではⅣ型. を社会的迷惑行動得点とした.同様に,向社会的. がⅠ,Ⅴ,Ⅵ型よりも有意に得点が高いことがわ. 行動尺度10項目について主成分分析を行ったとこ. かった.. ろ,1項目の負荷が低かったためこれを削除し,. Table5 各依存性プロフィールの心理的自立得点および各下位尺度得点の平均値(標準偏差) 人数. 型. 心理的自立. イ雨情判断. 自己統制. 現在把握・. 適切な. 社会的知識. Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ. ・実行. ・客観視. 22. 4.73(0.66). 5.23(0.83). 4.73(1.14). 4.77(0.97). 4.98(0.75). 3.77(0.99). 56. 4.71(0.65). 5.04(0.95). 4.61(0.92). 4.89(0.91). 4.82(0.87). 4.12(0.88). 30. 4.78(0.91). 5.08(1.07). 4.55(1.12). 5.20(1.04). 5.17(0.99). 3.89(1.22). 将来志向. 対人関係. ・視野. 31. 5.00(0.68). 5.42(0.75). 4.61(1.02). 5.49(0.99). 5.12(0.87). 4.35(1.06). 28. 4.39(0.53). 4.20(0.98). 4.26(0.84). 4.68(0.88). 4.99(0.76). 3.96(0.98). 40. 4.39(0.50). 4.30(0.70). 4.23(1.00). 4.79(0.74). 4.71(0.87). 4.01(0.58). 71. 4.61(0.67). 4.67(0.96). 4.23(1.05). 5.20(0.89). 5.19(0.76). 3.86(1.03). 32. 4.74(0.51). 4.78(0.78). 4.69(0.77). 5.06(0.91). 5.15(0.89). 4.03(0.81). 7.55暮暮暮. 1.83十. 1.99十. 1.19. F値. 多重比較. 3.30暮暮. Ⅳ>Ⅴ,Ⅵ Ⅳ>Ⅴ,Ⅵ,Ⅶ. 3.07暮暮. Ⅳ>Ⅰ,Ⅴ,Ⅵ. Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ>Ⅴ,Ⅵ. +p<.10 **p<.01料*p<.001. 25.

(11) 高坂 康雅・戸田 弘二 Table6 社会的迷惑行動尺度の主成分分析結果 項. 目. 内. 容. 第1成分. 自慢話を長々する(調和). .589. 混雑しているのに,券売機の前まで行ってから,目的地までの料金をさがす(調和). .561. 何時だろうが気にせず電話する(ルール). .558. 信用して話してもらったことを,他人にしゃべる(調和). .558. 駅付近で、指定された区域外に自転車やバイクを置く(ルール). .540. 集団で結論を出す必要があるのに,自分の意見を主張しつづける(調和). .530. 授業巾に飲み物を飲む(ルール). .480. 混雑した電車などで、他人の足を踏んでも知らない振りをする(調和). .478. 狭い通路ですれ違う時に,道をゆずる素振りを見せない(調和). .464. 図書館で声の人きさを気にしないでしゃべる(ルール). .463. 授業巾,授業と関係ないことを友達としゃべる(ルール). .420. 固有値. 2.922. α係数. .72. 注)カツコ内は吉田ら(1999)の分類を表す Table7 向社会的行動尺度の主成分分析結果 項. 目. 内. 容. 第1成分. 何か探している人には、こちらから声をかける. .649. 気持ちの落ち込んだ友人に電話したり、メールを出したりする. .637. 雨降りの時、あまり親しくない友人でもカサに入れてあげる. .629. 授業を休んだ友人のために、プリントなどをもらう. .590. 見知らぬ人が何か落とした時、教えてあげる. .564. バスや列車で立っているお年寄りに席を譲る. .480. 家族の誕生Rや母のRなどに、家に電話したりプレゼントしたりする. .472. あまり親しくない友人にもノートを貸す. .399. 酒に酔った友人などの世話をする. .396 固有値. 2.657. α係数. .68. 再度主成分分析を行った(Table7参照).9項目. .440,p<.001)は向社会的行動を促進する方. での第1成分への寄与率は29.5%であった.9項. 向で影響していることがわかった.. 目のα係数は.68と若干低めであったが,この9 項目の平均値を向社会的行動得点とした.. 次に,心理的自立が社会的迷惑行動や向社会的. Table8 社会的迷惑行動・向社会的行動の 重回帰分析結果. 行動にどのような影響を与えているかを検討する. 社会的迷惑行動向社会的行動. ため,心理的自立尺度の5下位尺度得点を説明変. 価値判断・実行. 数に,社会的迷惑行動得点,向社会的行動得点を. 自己統制・客観視. −.274***. 現在把握・将来志向. −.031. 従属変数とした垂回帰分析を行った(Table8参 照).その結果,自己統制・客観視得点(β=− .274,p<.001)は社会的迷惑行動を抑制する 方向で影響しており,現在把握・将来志向得点(β. =.147,p<.05)と適切な対人関係得点(β=. 26. .048. .072 −.108 .147*. 適切な対人関係. .078. .440***. 社会的知識・視野. .087. .053. 重相関係数(R). .353***. .489***. *p<.05 ***p<.001 注)表中の数字は標準偏回帰係数である.

(12) 青年期における心理的自立(Ⅲ). やりのある行動を取れることが自立の第4の要素 考 察 心理的自立尺度について. 本研究では,青年の心理的自立を測定するため. といえる.第5国子の「社会的知識・視野」は認 知的側面の“社会的知識・視野’’が“自己認知’’. と別れてまとまった因子で,本研究に独自の因子. の尺度を作成することが第1の目的であった.心. である.社会的に広い視野を持ち,社会における. 理的自立の構造を包括的に捉えるために,先行研. 自分の役割を理解していることが自立の第5の要. 究を整理し,高坂・戸田(2003)に基づき,尺度. 素といえよう.. 構成を行った.その結果,「価値判断・実行」,「自. 以上のように,因子分析の結果は必ずしも高. 己統制・客観視」,「現在把握・将来志向」,「適切. 坂・戸田(2003)の概念的枠組みに対応したもの. な対人関係」,「社会的知識・視野」の5因子が抽. ではなかった.しかし,現実の場面では行動や価. 出され,これにより5つの下位尺度をもつ,計29. 値,情緒,認知といった各側面が独立に機能する. 項目からなる心理的自立尺度が作成された.第1. と考えるよりも,相互に関連して行動の組織化に. 因子の「価値判断・実行」は価値的側面の“判断”. 寄与すると考える方がむしろ妥当であり,さらに. と行動的側面の“実行’’が1つにまとまった因子. 5つの因子は4つの側面の内容を充分に網羅した. で,福島(1992)の精神的自立第2因子(判断・. ものとなっていることから,本尺度は高坂・戸田. 責任性)にほぼ対応している.高坂・戸田(2003). (2003)の概念的枠組みをある程度反映したもの. では判断できることとそれを実行に移せることを. であるといえるだろう.本研究で作成されたPJS. 概念的に区別して捉えていたが,現象面ではひと. は,これまでに作成された自立尺度(吉本,1984. つの行動単位(ユニット)となっており,自らの. ;福島,1992)とは異なり,理論的枠組みに基づ. 判断にもとづいて実行できることが自立の第1の. いて作成され,心理的自立概念を直接的にその対. 要素と考えられる.第2因子の「自己統制・客観. 象としているという特徴を持つ尺度である.さら. 視」は情緒的側面の“自己統制’’と認知的側面の. に,第4因子の「適切な対人関係」は,関係性の. “自己認知一自己客観視の側面’’がまとまった因. 視点が表れたものであり,この点からも日本にお. 子である.感情をコントロールし冷静に物事を理. ける自立概念を包括的に捉えることができたとい. 解できることが自立の第2の要素である.第3因. えよう.心理的自立とは良好な関係性を持ちつつ,. 子の「現在把握・将来志向」は価値的側面の“価. 自分の価値観を確立し行動できることといえるで. 値観一目標の側面’’と認知的側面の“自己認知一. あろう.. 視状把握の側面’’がまとまった因子で,福島(1992). ただし,行動的側面における“責任’’に関する. の精神的自立第1因子(主体的自己)にほほ対応. 要素が2項目しかなかったために尺度構成の途中. する.「価値判断・実行」が現在の価値判断にも. で削除されてしまい,結果として本尺度には含ま. とづいた行動であるならば,この因子は将来に対. れていないという問題点がある.福島(1992)で. する価値判断と行動を表すものといえよう.現状. は責任に関する項目は精神的自立の第2因子(判. を的確に把握じl乎采の目標に向かって努力できる. 断・責任性)に含まれていることから,責任は「価. ことが自立の第3の要素といえる.第4因子の「適. 値判断・実行」を構成する要素と思われるが,今. 切な対人関係」は情緒的側面における“適切な対. 後は責任に関する項目を増やして再度尺度構成を. 人関係’’が“自己統制’’と別れてできた因子であ. 行う必要がある.また,本研究では,信頼性の検. る.福島(1992)の社会的自立第1因子(協調性・. 討について,Cronbachのa係数を用いたが,再. 社会的能動性)は本研究の第2因子(自己統制・. 検査法などを行うことによって,さらなる信頼性. 客観視)と第4因子(適切な対人関係)が一緒に. の確認が必要であろう.. なったものといえよう.周囲の他者と協調し思い. 27.

(13) 高坂 康雅・戸田 弘二. 併存的妥当性の検討一俵存性との関連から一. 心理的自立尺度と依存性尺度との関連を検討し. このように,PJSと依存性尺度との関連は, いずれも関(1982)の結果から予測されるものと. たところ,統合的依存性は5つの下位尺度全てと. ほぼ一致していた.これらの結果から,PJSの. 有意な正の偏相関を示し,依存欲求は価値判断・. 併存的妥当性をある程度確認できたと思われる. 実行得点,自己統制・客観視得点,適切な対人関. が,今後も様々な側面からさらなる妥当性検討が. 係得点と有意な負の偏相関を示した.関(1982). 必要である.. によれば,依存欲求は未熟な依存の形態であり, 自立の対概念といえる.また,統合的依存性は成. 熟した依存性の形態であり,その意味で上記の結. 心理的自立と社会的迷惑行動・向社会的行動. 心理的に自立していることが,個人の社会的行. 果は予想されたとおりの結果といえる.一方,依. 動にどのように影響しているのかを検討するため. 存拒否では,自己統制・客観視得点,現在把握・. に,社会的迷惑行動及び向社会的行動との関連を. 将来志向得点,社会的知識・視野得点との問に弱. 検討した.その結果,社会的迷惑行動に対しては. いながらも有意な正の偏相関が見られた.依存拒. 自己統制・客観視得点が負の影響力を持ち,向社. 否とは「人に頼らない」ことであり,独立意識の. 会的行動に対しては適切な対人関係得点と現在把. 表れともいえる.青年期は,実際の生活が依存的. 握・将来志向得点が正の影響力を持っていること. であっても,意識の上では独立性が高くなること. が明らかとなった.社会的迷惑行動は,周囲の状. も指摘されており(加藤,1977),依存拒否は必. 況に関わりなく,自分の欲求を満たそうとし,そ. ずしも自立とともに低減するものではない(関,. の欲求を抑えることができないために生ずる行動. 1982).むしろ,多少の正の偏相関は青年期の発. であるといえよう.それに対し,「自己統制・客. 達からいえば妥当な結果といえよう.次に,関. 観視」は自分の感情をコントロールし,冷静に物. (1982)にならって8つの依存性プロフィールの. 事を見つめようとする能力であり,このような能. 問で心理的自立得点を比較したところ,Ⅳ型(低. 力を持っていることが社会的迷惑行動を抑制する. 一高一高)がⅤ型(高一低一低),Ⅵ型(高一低. ことは妥当な結果といえる.これまでの社会的迷. 一高)よりも高い価値判断・実行得点,現在把握・. 惑行動に関する研究(斎藤,1999など)から,社. 将来志向得点を示した.関(1982)は適応との関. 会考慮の高い人ほどルール・マナー違反に関わる. 連で現実自己の肯定度を従属変数に8つのプロ. 行動を迷惑だと認知することがわかっているが,. フィールを比較している.対象者数が少ないため. 社会考慮は実際の迷惑行動経験とは関連せず,迷. に有意な結果は得ていないが,上記の結果は関. 惑行動を減少させる要因についてはほとんどわ. (1982)の結果とほほ一敦する.関(1982)によ. かっていなかった.本研究により,社会的迷惑行. れば,Ⅴ型は幼児に近い未熟な依存の型であり,. 動は「自己統制・客観視」により抑制されること. Ⅵ型は依存したいのにできない神経症的な依存の. がわかったことは,この領域における今後の研究. 型である.また,最も成熟した依存の型はⅢ型(低. 方向に新たな示唆を与えるものといえよう.. 一高一低)と考えられるが,独立意識の発達から. また,適切な対人関係が向社会的行動を促進す. 青年期においては依存拒否が低いことが自立的と. ることについては,向社会的行動が共感性や社会. は必ずしもいえないために1V型もかなり成熟した. 的スキルなどの対人関係を円滑に行うための能. 型とされている.「価値判断・実行」も「現在把握・. 力・スキルと正の相関にある(例えば,菊池,1988). 将来志向」も自分の判断にもとづいて主体的に実. ことからも納得のいく結果であろう.. 行することに関わる自立の側面である.成熟した. このように,心理的自立の各側面によって社会. 依存性はとりわけ判断と実行に関わる自立に深く. 的行動との関連が異なっていることがわかった.. 関わっているものと思われる.. 今後は,心理的自立の各側面がどのような社会的. 28.

(14) 青年期における心理的自立(Ⅲ). 行動に影響するのか,さらに心理的自立の各側面. の自立を促す教育的介入の方法や社会システムの. を獲得するためには,どのような時期に,いかな. あり方に関する多くの示唆が提供できるものと思. る教育的介入を行えば効果的なのか,などについ. われる.. ての検討が必要であろう. 文 献. まとめと今後の課題. 本研究では青年の心理的自立の構造を包括的に 捉えるための尺度を構成し,依存性尺度との関連 から構成された尺度の妥当性を検討し,さらに社 会的迷惑行動及び向社会的行動との関連から,心 理的自立が青年の社会的行動にどのような影響を 与えているかについて明らかにしてきた.これま で理論的な枠組みにもとづいた心理的自立尺度が. Blos,P.1979 Theadolescentpassage.NewYork:In− ternationalUniversitiesPress. Douvan,E.&Adelson,].1966 TheadolescenteJゆeri− ence.NewYork:Wiley. 江口恵子1966 依存性の研究 教育心理学研究,14,45 −58.. Freud,A.1958 Adolescence.PsychoanalyticStudyof theChild,13,255−278. 深谷和子 2000 自立とは何か一身辺自立,経済的自立,. なかったことを考慮すれば,本研究で作成された. 精神的自立,そして「社会的自立」 児童心理,726,. PJSは,今後,実証的な自立研究を進めるうえで. 11−16.. の基本的な尺度のひとつとなるだろう. 一方で,本研究では,心理的自立を個人内の人. 福島朋子1992 思春期から成人にわたる心理的自立一 自立尺度の作成および発達的検討一 発達研究,8,67 −87.. 格特性として捉えようとしたために,意識的に特. 福島朋子1993a 青年から成人にわたる自立と依存 日. 定の人物との関係は排除するようにしてきた.し. 本発逆心理学会第4担j大会発表論文集,153.. かし,心理的自立は青年が一人で獲得するもので はなく,身近な他者との関わりの中で獲得してい. 福島朋子1993b 自立に関する概念的考察一青年・成人 および女性を中心として一 発達研究,9,73−85. Greenberger,E.1984 Dqfining如Chosocialmaturib,. くものである.これまでの自立研究が親からの自. in adolescence.Karoly,P.&Steffen,].(Eds.). 立を問題にすることが多かった(Freud,1958;. ∴l(ノり/(・∫l・i〃/わ(・/J(/Jイりノ・(ノ/∫りハノ(ノ.・√’りJ川(ん///りJJ∫(/〃(Jlリブト. Douvan&Adelson,1966;水野,1987;福島,. temPo7tlり′COnCernS.Lexington,MA:Heath.. 1992;など)ことも含めて考えると,親との関係 の変化が青年の自立の獲得とどのように関わるの かについても検討する必要がある.. また,心理的自立は大学生の時期に突然獲得さ れるものではなく,それ以前の時期から徐々に獲 得されるものであろう.福島(1992)は,心理的 自立が中学・高校・大学と年齢を経るに従って漸 増し,その発達には男女差が存在することを報告 している.本研究で見いだされた心理的自立の諸 側面がそれぞれどのように分化し発達するのか,. そこにはいかなる男女差が存在し,どのような自 立のあり方が男女それぞれにおいて適応的なの か,各側面での自立の不全が各時期のいかなる諸 問題と関わっているのか,などについても明らか にする必要がある.これらの検討を適して心理的 自立の発達過程を明らかにすることにより,青年. Havighurst,R.].1953 月滋mandeLJelopmentandeduca− tion.Longmans,Green.(荘司雅子訳1958 人間の 発達課題と教育 牧書店) 平石賢二1995 青年期の異世代関係一相互性の視点か ら 落合良行・楠見孝(編) 講座生涯発達心理学 第4巻 自己への閃い直し一青年期 金子書房,125− 154. Hoffman,].A.1984 PsychologicalseparationqFlate adolescentsj[omtheir parents.JournalofCounsel− ingPsychology,31(2),170−178. 上子武次1982 親は子どもの自立を育てているか 児 童心理,36(1)55−65. 神谷ゆかり 1993 女性における自立尺度の作成 安田 女子大学紀要,21,93−100. 神谷ゆかり 1997 自立の概念規定について‘auton− omy’の視点を中心に一 安田女子大学紀要,25,105 −113.. 加藤隆勝1977 青年期における自己意識の構造 東京 大学出版会. 加藤隆勝・高木秀明1980 青年期における独立意識の. 29.

(15) 高坂 康雅・戸田 弘二 発達と自己概念との関係 教育心理学研究,28(4), 336−340.. 菊池章夫1988 ノ思いやりを科学する一向社会的行動の 心理とスキルー 川島書店 高坂康雅 2003 青年の心理的自立と家族機能との関連 日本青年心理学会第11回大会発表論文集,44−47. 高坂康雅・戸田弘二 2003 青年期における心理的自立 (Ⅰ)−「心理的自立」概念の検討一 北海道教育大 学付属教育実践総合センター紀要,4,135−144. 久世敏雄・久世妙子・長田雅喜1980 自立心を育てる 有斐閣 水野治太郎1987 大学生の自立一親子関係を中心にし て一 麗沢大学紀要,44,219246. Mussen,P.&EisenbergBerg,N.1977Rootsdcaring, ヾ/J‘/メイJJ∫‘川‘ノ/J‘・/かJJ∫.・7’/Ji‘ノ‘・J・‘・/り♪肋〃/隼/−♪川∫りlイ‘//わト. haLJiorinchildren.Sbnn7ulCisco:W.H.Freeman.(菊 池章夫(訳)1980 思いやりの発達心理学 金子書房) Noom,M.].,Dekovic,M.&Meeus,W.2001Concep− /J/‘//‘仙/小ゞ/∫‘川(ノ肋・‘バJ/ハ・肋〃/−イ‘/(ノり/‘・∫11〃/‘/J//りノ川川.l・.. JournalofYouthand Adolescence,30,576−595. 斎藤和志1999 社会的迷惑行為と社会を考慮すること 愛知淑徳大学論集,24,67−77. 佐藤達哉1996 社会化と個性化 青柳肇・杉山憲司 編 パーソナリティ形成の心理学 第5幸 福村山版, 67−82.. 関知忠子1982 人格適応向からみた依存性の研究一自 己像との関連において一 臨床心理事例研究,9,230 −249.. Steillberg,L.1985 Adolescence.KllOpf. 田中敏1996 実践心理データ解析 新曜社 渡達恵子1990 自立の概念化の試み 日本女子大学紀 要(人間社会学部),1,189−206. 古田俊和・安藤直樹・元意思寛・藤田達雄・廣岡秀一・ 斎藤和志・森久美子・石田靖彦・北折充隆1999 社 会的迷惑に関する研究(1) 名古屋大学教育学部紀 要(教育心理学科),46,53−73. 二吉本美紀1984 青年期の自立に関する一考察(「自立」 概念明確化の試み) 昭和薬科大学紀要(人文・社会・ 自然編),19,31−42.. (高坂康雅 筑波大学博士課程) (戸田弘二 岩見沢校教授). 30.

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