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構成作品の色彩教育への応用について : max bill "die grafischen reihen"における作品研究

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(1)Title. 構成作品の色彩教育への応用について : max bill "die grafischen rei hen"における作品研究. Author(s). 八重樫, 良二. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 54(1): 175-189. Issue Date. 2003-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/310. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第54巻 第1号. 平成15年 9 月. JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.54,No.1. September,2003. 構成作品の色彩教育への応用について. −maXbill“diegra丘schenreihen”における作品研究−. 八重樫 良 二 北海道教育大学旭川校 デザイン研究室. 1.はじめに. マックス・ビル(1)は1908年スイスに生まれ,「バウハウスの最後の巨匠」ともいわれる建築家,彫刻家, 画家であり,商業デザイナーでもあった.1927年から2年間,ドイツ,デッサウのバウハウスで建築を学ん だ後に様々な分野で活躍した.1952年には新設されたウルム造形大学の建築とプロダクトデザインの担当教 官に就き,初代学長も務めている.「より良い生活環境をつくるのが真の芸術家の役割であるという信念の もと,良い形態を追求した.」とも紹介されている.1994年に没している. その多彩な造形活動において,版画技法の一種でもあるシルクスクリーン印刷による一連の作品を発表 し,色彩構成に関する実践的研究も行っている.それを紹介する図書が本稿の副題に記した著作,“die grafischenreihen”(2)である.マックス・ビルが色彩構成においてどのような点に着目していたのか,そこ に紹介される作品を基にその創作研究の手法を分析し,色彩教育に関する教材課題への応用の可能性につい. て考察する.. 2.“diegrafischenreihen”の概要. 書名にある“diegrafischenreihen”とはドイツ語で「視覚的秩序」といった意味であり,色彩構成に関 する作品とその説明が主要な内容となっている.いわばマックス・ビルの版画作品集とも呼べる図書であ. る.原文はドイツ語と一部,フランス語で作品題名と簡単な作品説明が記されている.その作風は各分割面 を均一な色面で表した幾何的な抽象構成であり,、いわゆる平面構成の典型的な事例となっている.それは モンドリアン(3)やヴァザレリイ(‘1). といった20世紀,モダンアートの作家達と同様,現代的な構成美を思わせ. る.「数理的な分割面と基本色に基づく平面構成」といった副題を付記することで,より内容が理解される ように思える.本校では筆者の読解を元に,その概要を記す. 掲載作品にはいずれもマックス・ビル自身のサインと作品ナンバーが記されているのが見られ,一般の版 画作品と同様の性格となっている.それはこれらの作品が単なる配色見本ではなく,芸術作品として自立し ていることの証でもある.この点で,マックス・ビルが学問的な研究者らとは異なり,色彩研究を具体的な 作品に結びつける表現者としての立場を何う事ができる.また,代表的な色彩体系の一つであるオストワル ト体系を提唱したドイツ人,オストワルト(5)は色彩体系自体が美的表現となること,即ち,秩序が美その」も のであると考えて,その体系化を計ったとされているが,マックス・ビルの作品にも同質のものが感じられ 175.

(3) 八重樫 良 二. る.総体として図学的観点が色濃く感じられ,その美的印象としては,アメリカの色彩学者であるジャツ ド(6)が挙げた「規則的に選ばれた色は調和する」とする秩序要因が多大なものとなっている.. 本書は全部で14のテーマに基づいたシリーズ作品を紹介している.最初の作品は1935年から1938年に制作 された「多角形」を題材とした色面の構成研究となっている.15点で一連のシリーズとして制作されドイ ツ,イギリス,フランスなどヨーロッパの各所で個展の形式で発表されていることが記されている・またこ. の作品についてはマックス・ビル自身の簡単な作品説明も加えられている.他のシリーズでも同様に作品の 大きさや制作の主題,展覧会や文献等での発表履歴などが紹介されている.作品によってはそのアイデア展 開を示すスケッチなども加わり,いずれのテーマも色彩研究の観点から興味深いものばかりである.それぞ れの制作タイトルからは,平面構成の論理性,即ち造形規則とも言うべき制約的なルールを設けて,制作し た事が理解される.. ともすると主観的な価値のみが優先する実の表現にあって,その制作手法には論理性とともに普遍性が感 じられ,とりわけ色彩に関する授業実践の立場から大いに参考となる点である.以下にそのテーマと掲載さ. れる作品のタイトル,シリーーズを構成する点数,大きさ,制作年,及びその平面構成の仕方などに関する説 明を簡単に列記しておぐ7).作品の行頭のナンバーは図書の掲載順に付記され,それぞれの作品の秩序付け に対するナンバリングとなっている.つまり作品NO.1は「秩序の1番目」ということを意味する.本書 においてマックス・ビルは全部で14の平面構成の秩序(ルール)を提示したことになる.. NO.1「多角形のバリエーション」15点 32cmX30cm1935年r1938年. 一辺を共有して,3角形から8角彪の多角形まで6つの図形を重ねた作図を基本に,15種の展開を計った 作品.平面分割に対するアイデア展開を計る上でこうした国学的手法がもたらす効果がよく理解できる作例 となっている.. NO.2「三部作」3点 67.5cmX93.5cmの用紙に59.7cmX84.4cm1957年. 横長の色面の中央に正方形二つを配した構成.その対比的な配色効果は色の対比効果の見本例のようであ り,作品として受け取るには極めて抑制的な表現となっている.. NO.3「7scarions」7点 40cmX40cm1967年 菱形正方形を4分割・4色に塗り分け,トリミングによって(色を見せたい箇所のみに穴をあけた白いマ スクを上からかぶせるような手法で)七種の変化をつくった作品.. NO.4「4:4,11の習作」11点 65cmX55cmの用紙に41.7cmX41.7cm1963年−1970年 正方形を縦と横に4列ずつに区切り,全部で16面に分割.そのうち4面分を1色で塗ることとして全部で 4色を用いた構成.. NO.5「等量分割による5つの正方形」5点 64.8cmX49.6cm1972年 4または8,12分割した正方形の中で,等面積になるよう規則的に配色した5つの構成作品.それぞれに 「相互性・動き・確実性・静止・バランス」の小題がある.. NO.6「5つの正方形における色変換」5点 80cmX60cm1974年. 正方形を6分割した各面に配した平面構成.天地に当たる箇所に同色を配することで全体の半分の色面と 176.

(4) 構成作品の色彩教育への応用について. なり,画面全体の基調色となる.. NO.7「16星座」16点 50cmX35.5cm1974年 黄色にはじまり黄緑に至るまでの明るい調子の色相環から16色相を取り出し,それぞれの単色に塗られた 円形に黒線でわずかに構成の変化を与えたシリーズ.. NO.8「8(2*4/4)=8」8点 70cmX70cm1974年 1画面に横に細長いプロポーションをもった矩形の構成が上下1対で表されている.8点で1シリーズを 成す.どの構成も4色の等量面に分割され配色されている.. NO.9「7twins」7点 42cmX59.6cm1977年 6色を基本に,1画面に正方形の構成が左右1対で表されている.1つ毎の構成は縦8列,横8列の64分 割したマス目に基本色を配置したものであり,左右の対をなしていることに特徴がある.. NO.10「同じ体系における7の入れ替え」7点 28.5cmX21cm1979年 全体の構成は縦に並ぶ3つの白面を取り囲むように,虹色にみる7色相−7色で1組の色面が窓枠のよう に配置される.その始まりの色の順変えによるシリーズ展開が計られている.. NO.11「3つの同じ色の量(正方形・3角形・円形)」3点 70cmX70cm1983年 6色を基本色として正方形,3角形,円形を6等分(その分割面の形は異なる場合も含む)して配色した 構成.. NO.12「8つの色変換」8点 65cmX50cm1986年 8色を基本色として菱形正方形を4面に分けて配色している.分割面に大小があり,一番大きい面に8色 の中の1色を配色して8種を構成.1画面には4色が使用されている.. NO.13「4つの等量の変化∼育と黄から生じる赤と緑−」5(4+1)点 50cmX36cm1989年 4色を用いた4種の構成作品.配色面は横長から正方形,縦長へ変化する4種の矩形であり,その4種の プロポーションを黒線のみで同一面に示した1点が加えられている.. NO.14「無題」4点 570cmX86cm1992年−1994年 この作品についてなにも説明が記されていない.長辺が短辺の2倍寸になっている横長の矩形を16分割. し,白と他に3色で各4面ずつを塗り分ける構成である.蛍光色が用いられ,これまでのシリーズにはな かった特殊な印象を受ける作品シリーズとなっている.. 3.各シリーズにみる色面の形と色 この著作で紹介される作品はいずれも正方形,円形など幾何形を元に,マックス・ビル自身が定めた一定 のルールにしたがって分割した色面による構成であり,そこには厳格な理性の表現が感じられる.行き当た りばったりといった気まぐれで偶発的な要素は見られない.用いる色彩の選択も同様である.できるだけ分 177.

(5) 八重樫 良 二. 割面の数も色数も限定して,その配色の組み合わせを一連のシリーズとして試し. 図1. ている.. その最も極端な例としてNO.2に挙げられている「三部作」と題された,同. 一の色を地色として,2つの正方形が隣り合って配置されているだけの作品(図 1)がある.背景も含めて使われている色は3色のみであり,その配色は3通り の組み合わせしか生じない.だからこそこうした作品タイトルとなったのであろ うが,この作品は全く村比効果の検証のための色見本のようである.実際,これ らのシリーズを通してマックス・ビルは美的な秩序を得るべく厳選した色数に制. 限し,その配色について単純に得られる組み合わせについて試している.制限さ れた同じ色同士の組み合わせでありながらも,隣り合う色との関係において対比. 効果が生じることや,広い面に配色される色は画面全体のイメージを左右する主 要色となること等から,その配置面の違いによって,それぞれの配色イメージに. 差異が生じている.このことが同一の分割面に対して配色のみを違えるという手 法によるシリーズ化のねらいともなっている.マックス・ビルは対比的効果をよ. り一層高め,美的な関係となりうる色同士の関係,即ち色相・明度・彩度の各属 性の差によって生じる村比効果について着目し,原理的な色の関係を導こうとし ているかのように思われる.. 例えば赤・青・黄の関係,これらの色は他の色みが全く含まれていない色相関係にあって,互いの混合に ょって他の色みが生じることから色料の3原色と呼ばれる.さらにはそれに緑を加えた4原色の関係につい ても心理的な原色ともなっている.このように視覚的な原色のイメージは単に光の3原色のみを指すわけで はない.マックス・ビルは本書で紹介される各作品において1シリーズについて3色から16色まで用いてい. る.いずれの場合においても配色数を制限し,配色違いをバリエーションとする抽象的な平面構成の作品で あるが,その制限的な色使いによって何かしら原理的で秩序ある美的印象が生じている.著作のタイトルは まさにこの点から名称づけられたことが察せられる.本著作にみる作品はいわば単純な表現,無駄を排した 純粋な抽象性によって,鑑賞者の想像力を引き出している.. 本稿ではこうしたマックス・ビルの作品における色使いを通して,その平面構成の考え方を知ることを主. なねらいとして,その使用色を探ってみた.色の照合は日本色彩研究所が提唱するPCCS(H)に基づく色見本 との比較による.この方法では近似色を得るにとどまる(9).また,マックス・ビルが実際の版画に用いた色 はどんな色であるか,本当の作品の色と本著の印刷色(10)とどのくらい差異があるのかは不明である・しか. し,大まかな観点では配色されている色の関係を把握することは可能と考える.以下は各シリーズで用いら れた色をPCCSに照合して得られた使用色である.加えて,その色面の形と面積比に規則性が見られるシ リーズについてはそれを補記する.. ・各作品における使われている色(使用色). *PCCSとの照合により,その類似色をトーン記号によって各色を記した. *()の記載はその色を()内の色とすることもできることを意味する. NO.1「多角形のバリエーション」. 使用色6色−−−b6 v3 v12 v20 v4 s23(v23) 作品構成−〝−3角形から円形までの多角形への発展的形態の変化. 178.

(6) 構成作品の色彩教育への応用について. NO.2「三部作」. 使用色3色−−−Sn21t20 ̄ト b5(b5とs6の間の色) 作品構成−−一背景色上に置かれる2つの正方形.. 面積比−−−地色:A面:B面=約6.11:1:1 NO.3「7scarions」 使用色4色−−−V3 b6 v19 bk 作品構成−−−菱形正方形の4分割を基調に. ,その一部を白面で覆い隠した形の変化.. 面積比−−一等量分割 A面:B面:C面:D面=1:1:1:1 NO.4「4:4,11の習作」 多色使用のため照合せず.. 類似(近接)と村比(遠隔)の関係にある4色で構成. 作品構成−−一正方形4×4の計16個からなる正方形(外枠を伴う).. 面積比−−一等量分割 A面:B面:C面:D面(各面4コマ分)=1:1:1:1 NO.5「等量分割による5つの正方形」. 使用色4色−−−V19 v12 s6(b5とs6の間の色) v3 作品構成−−一正方形の4∼12分割による平面構成,矩形・矩形の対角線・3角形・正方形・菱形による分. 割.. 面積比−−一等量分割 A面:B面:C面:D面=1:1:1:1 NO.6「5つの正方形における色変換」. 使用色5色−一一V3 v5 v12 b16 b22 作品構成−−一正方形の6分割による平面構成,上下を2分割にした矩形をさらに対角線で3分割.. 面積比−−−A面:B面:C面:D面:E面=12:2:2:1:1 NO.7「16星座」. 使用色16色一一−b8 b7 b6 b5 b4 bl b24(1t24+) b23(1t23+)1t22+lt18+1t16+ b13 (1t13+) b12 bllltlO+ b9 作品構成−−一円の直径に対して3種の比率にある円弧を黒線で分割の暗示,実際には分割せず1色で表 現.. NO.8「8(2*4/4)=8」. 使用色4色L−−b24 b51t20+ bll 作品構成−−一横の長さに対して約,縦1/6にあたる矩形を4分割,分割面は等量であるが分割の仕方は 必ずしも同型ではない.対で同型になる面,2組をもって横長矩形を分割した平面構成(4面とも同型を含. む).. 面積比一一一等量分割 A面:B面:C面:D面=1:1:1:1. 179.

(7) 八重樫 良 二. NO.9「7twins」 使用色4色+無彩色2色−−−1t18’b12 b5 b2 bkw 作品構成−−一正方形を64分割,自を24面・黒を36面として有彩色4色各1面に配置を最初の構成として, 有彩色の面の数を7面ずつ占めるまでの過程を平面構成,それぞれ過程毎に自・黒の概念的な反転配置した ものを対にして同時に表現.. 面積比L−−それぞれの面毎の有彩色面はA面:B面:C面:D面=1:1:1:1(白面・黒面との関 係は変化). NO.10「同じ体系における7の入れ替え」. 使用色7色−−−参照面が小さく色見本の比較困難のため照合せず.黄・黄緑・青・紫・赤紫・赤・橙の7 色を基本にその起点となる色を変えて(順は変えずに)縦,横に並べて配色. 作品構成一一一正方形8×8の計64個からなる正方形の周囲にあたる箇所に7色を配置,両端部に置かれる 色は同色となる.その正方形を3つ縦に並べて,全体を形作る.中心に挟まれる正方形の天地にあたる箇所 は重複のため省かれる.そのため両端部に置かれる色は縦方向には2コマ置かれる箇所の重複が防がれるこ とで,逆に佃の色より少なく置かれる.結果的に横8コマ,縦22コマからなる縦長矩形の周囲に7色を配置 する平面構成,7色に囲まれる箇所は白面. 面積比【−−一両端部に置かれる色は8コマ分,他の6色については10コマ分の面積.. NO.11「3つの同じ色の量(正方形・3角形・円形)」. 使用色6色−−一b16 Vll b22 v4 v5 v6 作品構成−−一正方形・3角形・円形について等量で6分割して構成,等量分割ではあるが同型分割ではな. い.2色面1対にして分割することが基本となっているが3角形についてはその規則は破られている.. 面積比−−N等量分割 A面:B面:C面:D面:E面:F面=1:1:1:1:1:1 NO.12「8つの色変換」. 使用色4色−−−V6 v5 v3 紫みのマゼンタ(該当色無し) b22 b18 b12 vl. (仝8色を設定し,その中から4色を使用してバリエーションを展開している.) 作品構成一−−菱形正方形を左右不対象に4分割,分割された結果に対して左右の反転形の構成有り. 面積比−.−A面:B面:C面:D面=71:16:9:1 NO.13「4つの等量の変化一育と黄から生じる赤と緑−」. 使用色4色一一一Vll v4 v7 b18 作品構成−−「正方形を横に4個並べたプロポーションの矩形,正方形1個,正方形を縦に2個並べた矩 形,正方形を縦に8個並べた矩形,この4種の矩形が同面積になるようにそれぞれの1個の正方形のポロ ポーションを基に導かれている.それぞれ対角線に沿った3角形に等量で同型の色面,8面に分割される. 内,中心に配置する2つの3角形は同色が置かれて矩形に見える.. 面積比−−一等量分割 A面:B面:C面:D面=1:1:1:1(ただし1色は中心の4角形1つに集約 される). NO.14「無題」*蛍光色のため照合せず 180.

(8) 構成作品の色彩教育への応用について. これまで各作品の使用色として挙げた色をPCCSでの色相川削二並べると以下の順になる.. b2 v3 v4 v5 b5 v6 b6 s6 v7 bll vll sf12 v12 b12 b13 b16 b181t18十 v 19 v201t20+ b22 s23 b24 色相番号のみを挙げるなら 2 3 4 5 6 7 1112 16 18 19 20 22 23 24 となる. 上記の色相番号は2∼7番が続き番号になっており,11∼12番,16番と18∼20番,そして22∼24番の続き. 番号,というように大きくは4群の色相としてとらえられる.2∼7番はオレンジ色を中心とする赤から黄 色までの色幅であり,11∼12番は緑色,16番と18∼20番は青を中心とする緑みを帯びた青から紫色の群,そ して22∼24番は赤みがかった紫色となっている.つまり,おおまかにはオレンジ・緑・青・赤紫に属する色 相が用いられていることが言える.. PCCSの基本色相は1∼24番の24色からなり,2香は赤.8番は黄色,14番は青緑,20番は紫を意味する 数字である.この4色は24色相環の中では左右上下の等距離の4頂点にあたる位置を占めて,心理的な4原 色にあたる色みである.マックス・ビルの作品からここに挙げた数字の中で8番の黄色が抽出されなかった ことは,不使用色といった意味で. ,その配色の特徴を示すように思われる.なぜなら8の黄色は赤みも緑も. 帯びない,全くの黄色であって一般的にはレモンイエローと呼ばれる黄みである.原色の抽出という観点か らはこの黄色は最初の候補として十分考え得る色相のように思われ,それが含まれないことにマックス・ビ ルの作為的な意識を感じるからである.もちろん7番の色は,最も黄色らしい色である8番の色に類似した 色であるが,わずかにオレンジみを帯びていてあたたかみを感じる黄色であり,6番はオレンジがか?た黄. 色,5番は黄みがかったオレンジ色に相当する色相番号である.上記リストにあるように黄色に相当する色 についてマックス・ビルは中立的黄色ではなく5番,6番のあたりのあたたかみを帯びた黄色みを月]いてい ることが分かる.. ごく限られた使用色としてどの色が抽出されているのか,いわば作品の原色とも思えるその色を知ること は配色美を探る上で興味深く思える.モビールの創作者として良く知られる彫刻家,アレクサンダー・カル. ダー(‖)は作品に用いる色について次のような言葉を残している.「私にとって,最も重要で欠かせない色は 自と黒の2色である.一方に赤をおき,その反対側に青をおく.青の近くには黄色とオレンジ色を少しだ け.たくさんではなく.他の色には興味がない.(12)」この言葉は,カルダーの数多くの作品において,. その. 色に関する本質的な作風をみごとに言い表している.実際,その作品を知る者にとってはその色の組み合わ せを見るだけでも,すぐにカルダーをイメージできよう.極少ない原色の組み合わせが逆に特有の個性を生 じる源となっている例である.マックス・ビルはカルダーよりは多くの色をその作品に用いたが,使用色を. 制限することによって,自分が好ましいと思える色の関係(特に対比的に用いられる色の差のあり方)を追 求している.色数が多くなれば,どの色と比べての差であるか,その対象が多くなることで色面の関係は暖 昧になっていく.暖昧さを排除して厳格な関係付けを計り,象徴性を高める手法が感じられる.図版での照 合ではカルダーが用いた黄色も暖かみを帯びものであり,マックス・ビルの作品でのオレンジみを帯びた黄. 色と類似した印象がある.わずかな色数に絞られた色の中での,赤みを帯びた黄色は色彩調和での原色を考 える時の何らかのヒントを与えてくれるものかもしれない.. 4.NO.6「5つの正方形における色変換」における分割面と配色 これまで記したよう,本書でのマックス・ビルの作品は一定のルールにしたがって幾何的に分割した平面 構成となっている.このことは表現要素を色彩に限って,実践的な配色練習を行う際には,形の意味性を除 181.

(9) 八重樫 良 二. 外することに有効であると考えられる.形の意味性とは,表現された図形が自然物であれ人工物であれ,何 らかの具体的な意味を伝えてしまうことを指す.表現には形の意味や質感,そこからさらに連想されるイ メージなど色彩以外の要素が必ず伴う.だからこそ表硯に豊かなイメージが生じる訳でもあるが,色彩の学. 習のための習作的表現の際には表現の要素を色彩のみに絞り込んで,吟みする事も必要である.マックス・ ビルの作品では色面の大きさと使用色の関係のみが表現されているため,そうした学習訓棟にとっては一つ の規範的事例とも受け取れる.ここではその練習課題への応用を計ることを目的にNO.6に挙げられた 「5つの正方形における色変換」を取りあげて,その使用色と色面の大きさの関係について分析した. この作品(図2)では,あざやかな調子(ヴィヴィッドトーン)ま たは明るい調子(ブライトトーン)の色の組み合わせによるシリーズ. となっている.赤(v3),オレンジ(v5),緑(v12),明るい青(b 16),紫(b22)の5色を基本色に,正方形を6分割した各面に配し た平面構成である.図2に示すよう上下に点対称となるよう分割さ. れ,大きな3角形の面は全体の1//4,その内側の面が1/6,さら にその内側の面は1/12の面積比になっている. ここで用いられた・5色はPCCSの色相環上の位置は図3に示すよ. うな5角形となる.比較として同じ赤のv3を起点として,色相環を ほぼ等分する5角形を点線で示した.その場合に比べ,マックス・ビ ルが選んだ5色は黄色がオレンジ系に偏り,また青について緑色によ. 図3. 6:yO. 8:Y. 10:YG. り近い位置の青が選ばれて,扁平な5角形を措いている.この位置関. 係から5色は等しく独立した関係ではなく,赤・オレンジ系の暖色系 と黄緑・青系の寒色系の対立的対比が強められた選択となっているこ. とが分かる.紫はそのどちらにも属さない中間色系となり第3の性格 を持つ. 20:∨. 正方形を6分割した面に5色を配置する,単純にはこの場合の組み 合わせは120通りあるが,ここでは配色のバリエーションとしては仝. 実線はマックス・ビルの5色を示す 点線はほぼ等距離にある5色を示す. 部で5つの組み合わせが提示されている.赤とオレンジは必ず隣り合. うよう配置され,黄緑と青が隣り合うよう配置されている.赤のすぐ隣に黄緑と青が配置されることはな く,青のすぐ隣に赤とオレンジは置かれていない.赤と青の間にはいずれも紫色が置かれている.つまり赤. はオレンジと紫の隣に,青は黄緑と紫の隣にあって,赤と青の間には1つの場合を除いては必ず紫が挟まれ ている.1つの場合とは紫が一番大きな色面に配置された場合であり,それを挟むことはできないので赤と 青はオレンジ,黄緑を挟んで紫色の隣に置かれている.. この配色の仕方から,ここでの配色のテーマとして類似感と対立感のある対比の同時比較がその意図にあ ることが推察される.ムーン・スペンサー(12)は色相差・明度差・彩度差に着目し,2色配色の調和関係につ いて同じか類似か対照とわかる差にある関係を一良好としている(13).例えば色相差について,赤とオレンジは 類似の関係にある差(PCCSにおいて30度差),赤と青の色相差ははっきりと村照にある差(PCCSにおい て165度),赤と紫は村照と類似の間にある差(PCCSにおいて105度)に位置している.それぞれの5色に ついて赤を中心としてムーン・スペンサーの理論にあてはめてみるなら,赤にとって近い差(オレンジ) 中間的な差(紫)・はっきりと対照的な差(育と黄緑)の3種の関係に区分される. マックス・ビルは先ず類似関係にある2色が隣り合うよう配置した後に,はっきり対照となる2色を中間 差にある紫色を挟んで配置している.その意味では紫色は差について緩衝域となるような役目を担ってい 182.

(10) 構成作品の色彩教育への応用について. る.120の組み合わせの中からの5つの配色パターンの選択は主観的判断ではなくこうした理論的な配色効 果の確かめがあったことが伺われる.. 同様に色面の大きさも配色イメージに大きな影響をもつ.マックス・ビルの他のシリーズでは面積につい ては等量分割になるような平面構成が多いが,このシリーズでは1/4,1/6,1/12の面積比がみられ る.全体の1/4を占める一番大きな上下の2つの3角形の面には同色が配されることで,正方形全体の半 分の面積を占めることになる.ここに置かれる色はその面積比から画面全体のイメージを支配する色であ. り,こうした全体の中で多くを占める色を主調色と呼んでいる.マックス・ビルは配色に使用する5色,そ れぞれを主調色とすることでイメージの変化を試みている.色相環の順に沿って赤・オレンジ・黄緑・青・. 紫が大きな色面を占める.残りの4色は1色1面に配色され,1/6または1/12の面積比で置かれること になる.前述したようマックス・ビルは規則性をもって配色の計画を行っている.この作品における規則か らは,それぞれの面に置かれる色は最初の主調色を決めることによって,自動的に他の色面の配色も決定付 けられるような性格をもっている.これまでの考察をまとめると,この作品における色の選択と配置の仕方 には,以下の(1)から(6)または(5)までの手順が挙げられる.どの色を主調色とするかによっていくぶん他の4 色の配置の仕方が変わるので手順を分岐して記す.. (1)A∼Eの5色を選択する.. 図4. 5色の中では,A色とB色は類似の関係に. ・A色に対して類似的な色 ・D色とE色に対して対照的な色. ある2色となるように(類似グループ①),D. 「く二. 色とE色も類似の関係にある2色となるよう. に(類似グループ②),A色とE色の中間に位. ・E色に対して類似的な色 ・A色とB色に対して対照的な色. 類似グループ①. 置するようにC色を選択する.ただし,A色. \ ′. C色. とE色が色相環上で最も遠い関係にあるもの とする.このときの5色の色相環上での位置関. どの色に対しても 「●. ・A色とB色に対して より対照的な色. 中間的な差の色. 中間色. 係は図4のようになる.. (2)6分割した面を順にイ,ロ,ハ,ニ,ホ,へとする.元の正方形全体に対して,イとへは1/4,ロとホ は1/6,ハとこは1/12の面積比である.以下,色面と色の配置について図5に示す.. ①最も差の大きい関係にある色(A色とE色のどちらか)を主調色とする場合 以下の例はA色の場合を例示した.(E色の場合はA色をE色に,B色をD色に読み替える.) (3)A色をイとへに配置する.. (4)そのときB色はA色とグループされているのでロとホに配置されることになるが,1/4面への配置を 除いて1色は1面への配置とする考えからロとホのどちらかのみに配置する.(仮にホに配置) (5)A色とE色は中間色であるC色を挟んで配置することから,ロにC色,ハにE色を配置する. (6)残るこにD色を配置する.結果的にD色とE色のグループ関係が守られて配置されることになる.. (∋類似的な差の関係にあるB色またはD色を主調色とする場合. 以下の例はB色の場合を例示した.(D色の場合はB色をD色に,A色をE色に読み替える.) (3)B色をイとへに配置する.. (4)そのときA色はB色とグループされているのでロとホに配置されることになるが,1/4面への配置を 183.

(11) 八重樫 良 二. 除いて1色は1面への配置とする考えからロとホのどちらかのみに配置する.. 図5. (仮にホに配置). (5)A色とE色は中間色であるC色を挟んで配置することから,ニにC色,ハに E色を配置する.. (6)残るロにD色を配置する.結果的にD色とE色のグループ関係が守られて配 置されることになる.. (釘中間的な差にあるC色を主調色とする場合. (3)C色をイとへに配置する. (4)そのときA色とE色は互いに他のグループの色と隣り合わせにならないこと から,ロとホに配置される.. (5)B色とD色はグループの関係から,それぞれA色とE色を配置したロとホの 隣のハとこに配置される.. 主調色は文字通り構成の主役として,明るい感じ・柔らかな感じ・落ち着いた. 感じ等々,調子(トーン)と呼ばれる明度と彩度の両方を併せもった色の性格を. もって,その色相による寒暖感とともに,全体のイメージを支配している.例え ば主調色として彩度が高い色が選ばれた場合には,その構成は派手ではっきりと 目立つ構成になるものであろうし,彩度は低く明度が高い色が選ばれた場合には パステル調のおだやかで薄く,淡いデリケー. トな印象の構成となる.マックス・. ビルが選んだ5色はどれもが彩度の高い色を選択していることから,いずれの配. 色の場合もはっきりした強い組み合わせを感じる配色となっている.このように 最初の5色の選択は構成の性格を決定付ける上で重要な選択となる. 一方,主調色に対して村照的な差を持ち,主調色をより際だたせて見せる色を アクセントカラーと呼ぶ.アクセントカラーは主調色と同時に配色されることで. 構成に何らかの対比を与えて,配色をより良く見せる,つまり色を映えて見せる ことに有効である.配色の中でどの色がアクセントカラーの役目を果たすのか,. それは個別的で主観的な問題にゆだねられている.ただ多くの場合,アクセントカラーは比較的小さな面積 で配置し,主調色に対してはっきりとした差をもっていることが適切である.例えば,暗い色の中に置かれ る小さな白点の自さはより明るく見えるとともに,背景の暗さはより暗く感じることとを指している.その 差とは明るさ(明度)ばかりではなく,色相・彩度といった色の3属性の何れかの,または複合した違いを 意味する.. マックス・ビルの作品における5色の明度,彩度差は比較的小さく,同じ調子で色相差が大きい色の組み 合わせとなっている.同時にその5色が村比されるときには,主調色に選ばれた色に対して最も遠い関係に ある色がアクセントカラーに成り得る候補として考えられる.それが実際にどのように見えるのか,ここで 指摘した規則的な配色手順は主観的判断を除外して,機械的な配置によってアクセントカラーとなりえる色 面の大きさを自動的に制御する役割を果たしている.実際には必ずしも最も離れた色相にある色がアクセン トカラーになる訳ではなく,理論と実践の結びつきは複経である.. 配色された各色の目立ち方(際だちの度合)は,もちろんその色,単色の3属性の度合にもよるが配色に も影響を受けている.すぐ隣に配された色との対比効果は大きな要因であり,その差が大きいときには,ぎ 184.

(12) 構成作品の色彩教育への応用について. らぎらして互いの境界域が際だちすぎる場合も見られる.マックス・ビルが赤と青は隣り合わせないように. したのは,その対比効果を好まなかったように推察される.最初の5色の選択だけが作為的に行い,あとは 好ましくない配色を避けながらも自身の主観が影響しない創作手法をこのシリーズで実験したかのように感. じられる.赤∼紫にかけたそれぞれの色を主調色とする5点の作品シリーズはいずれも鮮やかな色彩が強調 され,美的印象を残すものばかりである.その色相差が大きく明快で動的なイメージの配色は,ともすると バラバラでまとまりの無い配色に陥ることもあるが,ここで記した配色のルールはそうなることを防いで, 動的な調和感を生んでいる.. 5.色彩教育における学習課題への応用. 美術において形と色彩の要素は不可分であって,中でも「平面梼成」は抽象的な形態観に基づいて,それ らの要素を抽象化した表現が見られることがその特徴ともなっている.その実を受け止める価値観は多様で あり,様々な受け止め方がある.これまで,マックス・ビルの平面構成における配色手法に関して理論的観 点が見られることを挙げた.先に取りあげた「5つの正方形における色変換」の作品ではその面の分割や配 色の割り当ての仕方に規則性が見いだされた.5種の作品展開には一定の規則性を有することから,どれも シリーズとしてのまとまりと同様の知的な構成美,色彩美が感じられる.このことは本稿で取りあげた著作 で紹介されるマックス・ビルの作品の全てに渡る共通点であり,その作風,個性とも言える.作家が見いだ した造形の論理性,その思考がその作風に直結している. アメリカのジャツドは先人の色彩調和論の研究をまとめた論文(刷の中で大きくは次の4点の調和原理を挙 げている(15). ・秩序の原理…規則的に選ばれた色は調和する. ・なじみの原理…自然界のように,人々によく知られた色は調和する. ・類似性の原理…どんな色も,共通性があれば調和する.. ・明瞭性の原理…数色の関係があいまいではなく,明快であれば調和する.. 最初に記したようジャソドが挙げた調和原理に沿って言うなら,マックス・ビルの作品から受ける印象は. 秩序の原理の体現となっている.ただし,それはいわば実の価値観の種別としての区分であり,実際の配色 には類似的な関係もあれば明瞭な違いをもつ関係もあることは既に記した.むろんジャッドは何の前置きも なく,これらの原理を挙げている訳でもないし,「色彩調和は非常に複雑な問題である‥・」と記してい る.その点からするとジャッドは概括として,色彩調和の考えを4方の指針にまとめたものと受け取れる. ともすると,あいまいで個人の主観のみで語られてしまいかねない配色調和の問題について,明快な考え方 を示している点で興味深い.. 美術教育において,こうした知識理解のためには実際に視覚的経験を積み重ね,また創作表現を通した実. 感がなによりも有益であると考える.これまで研究者や実践的な美術教育者らによってそのための多くの練. 習課題が提示されているが,実際,どういった課題が有効であろうか.ジャッドの言葉を借りるなら,それ を想定することはまさに複雑な問題であろう.なぜなら色彩の印象は単に色あいの関係のみならず,形の表 現とも密接にむすびついているからである.例えば色面の図形がどのような意味をもつか,具象的であるか 抽象的であるか,などの要因によってもその色使いは影響を受けることであろうし,また色面の大小の違い にも着目する必要もある.さらに他に配置される要素との関係において,近接しているか孤立的であるか, 類似的か対比的か,などといった全体構成との関わりも伴っている.このように用いる色彩を決定する際に 185.

(13) 八重樫 良 二. はそれに影響を持つ要因への考慮を必要としている.. 色面の形状,大きさ,使用する色数,その構成,これらを加みしながらどの色がどんな色と隣り合わせに なるか,囲まれるか等といった配色計画が立案される.もし,その全てを自由に考えるものとするならば, 色彩に関する学習を主に努めようとするにしては考えるべき要素が多く,習作の目的を色彩学習に限定する 事自体が困難になることであろう.そうなることを防ぐために,その学習目的によって考慮すべき要素を絞 り込む必要があり,その想定の仕方が課題の特性ともなるものと考える.. 概念的には,その初歩の学習段階としては「塗り絵」と同様,色面の形状,大きさ,配置は既に決められ ていて使用色のみを考慮することから始め,徐々に構成自体を試行錯誤しながら,その配色効果への理解を 深めていく,というような段階的な理解が色彩教育には有効な手立てであろう.色彩教育の実践において は,対比効果や色彩体系,色彩調和論などに関する知識と実技体験とが結びついて学習されることが望まし く,それに沿った課題設定が考慮すべきである.. マックス・ビルの作品に見られる表現要素に関する条件付けはその良い見本ともなっているように思え. る.例えば,先に記した「5つの正方形における色変換」において,最初の5色の選択によって所定の平面 構成が言わば,自動的にできてしまうことはその好例と言えよう.図3に点線で示す5色(PCCS色相環上 でほぼ正5角形となるような5色)を選択したなら,後はルールに従って配色することで,その平面構成が どのような配色イメージとなるのかを試すことができる.ここでの課題は塗り絵のための色を選ぶことと同. 様の行為でありながら,それほど安易なものではない.なぜなら,その配色の仕方には配色箇所の調和感へ の考慮,併せて色面の面積比への考慮が既になされているからである.再度,この作品シリーズにおいて表 現要素がどのように条件付けされているかを以下に列記する.. ・「5つの正方形における色変換」における条件付けについて. 1)色面の形状−−−一正方形を上下半分に2分割し,さらにそれぞれの矩形を3分割して,計6つの3角 形面とする.. 2)色面の大きさ−−−一一番小さな3角形の面積を1としたとき,1:2:3の関係の面積比に分割す る.上下で2組.. 3)使用する色数−−−−5色.内,1色は2面を占めて全体に村して半分の面積を占める.. 4)色の選択の仕方−′一−一共通して明るく強しミ調子であること. 5)色の配置の仕方−−−一色相について最も大きい差にある2色は隣合わせに配置しない.. 上記の条件付けはそのまま,色彩練習のための学習課題での条件になりうるものである.1∼2番目の条 件は色面の形に関する条件付けである.3∼5番目は色彩についての条件付けであり,ここでは学習者が主. 体的に考えるべき要素は3番目の条件に挙げられる5色をどう選択するかである.もしこの条件を守って課 題として取り組むなら,色の選択の仕方のみが考慮の対象となる.ここでは色の調子の統一性と色の配置の 仕方についても制限を受けているため,本作と同様に強い対比を生じる配置を避けた上で明快な対比効果を もった配色例が得られるものと予想が立つ.条件に従って忠実に配色計画を行うなら当然,マックス・ビル の作品と類似した印象の作例が得られることであろう. こうした実際の作品分析から得られた何らかの制作条件を学習課題に応用する長所として大きくは2つの. 点を挙げたい.1つは色彩練習を作品表現と直に関連づけて学習できる点である.配色練習のための課題の 多くは学習者が自らその配色イメージを実感するためであって,有益なトレーニングと認められてはいても. 他者に向けた表現となることは希である.それ自体が作品性を帯びることは無いと考えるのが一般的であ 186.

(14) 構成作品の色彩教育への応用について. る・また色彩に関する知識は知識に過ぎず,創作表現に際しては感覚的に色彩を与えるものというように,. 実技としての作品創作とは分離して受け取られがちでもある. しかし実際には近代美術の表現において色彩を主役として,その要素を純化して表現した作家は多々,見 られる.そうした作家の考え方に習って,つまりは手本とした作家と同様に表現要素を条件立てて,色彩課 題を提示することは,思考的な意味で彼らの創作の追体験でもあり,実制作と類似した感覚が体験できるの ではないかと考える.その点で模写することと同様に思考的な模作を行っているのであり,実際の創作体験 に結びついて色彩棟習の意義を実感することに有効なことと思われる.. もう一点は,課題条件の改変によって学習内容の発展性が望める点である.対象とした作品と同様の条件 で同様の考え方の配色計画を立案したなら,同様の傾向の結果になるであろうことを記したが,同様の条件. で異なる考え方の配色計画を立案したり,逆に同様の考え方で異なる条件付けしたりすることなどによっ て,その課題に違う手法,目的を導くことができる.例えば,前記した条件の中の4番目に挙げた「色の選 択の仕方」について「明るく強い調子で」ではなく,「ばらばらな調子で」としたり「渋い調子で」とした りするだけで仕上がりの印象は随分と違う予想が立てられよう.このように課題条件を変更することによっ. て,同様の表現でありながら異なる配色感を持たせられる.こうしたアレンジが考えられる事は課題想定を 立案する者,つまり指導者にとっての課題特性として優れている事のように思える. このようにマックス・ビルの作品に見られる論理性,配色への条件付けは,そのまま色彩教育における学. 習課題に応用することができる.これまで記したよう色面の形や数,使用色などについて,その条件付けは そのままでも,改変することもできる.実際の課題として取りあげる上ではマックス・ビルの考え方のみを 習って,その村象者や学習意図を考慮してアレンジする方がより,実践的な課題となることであろう.ここ. では「5つの正方形における色変換」の作品例のみを取りあげたが,他の作品シリーズにおいても同様であ る.それぞれの作品における配色の手法,考え方を知ることで,課題への応用の幅も広がり発展的な課題作 成への示唆を与えてくれるように感じている.. 6.ま と め. 先に事したジャツドの調和原理の中で,類似性の原理と明瞭性の原理は一見,矛盾した考えを提示してい る.似た色同士の配色は良いとする一方で,はっきりと異なる色同士の組み合わせもまた良いとするように 解釈できるためである.実際は,穏やかな印象を与える調和感と活気に満ちた調和感では各々に色の選択の 仕方は異なること,良いと感じる視覚的な印象は一通りではないことを指摘したものと受け取れる.このよ. うに配色の調和感の問題は複雑であり主観的な問題である.こうした感覚的な価値を育成することが美術に とって重要であるが,その教育にもまた複雑な問題を有すると思われる.. 本稿での考察は実際の美術作品を基にした,新たな課題作成の手法を模作することを意図している.それ は色彩学習に関する配色練習について,無機的なサンプル作りに終止するかのような課題傾向を感じていた ためである.学生にとって塗り絵的な色彩課題は多くの場合,あまり興味が持たれず単なる制作ノルマのよ. うに思われがちである.それは色彩理論を反映した色見本作りにすぎず,実制作で直面する問題はもっと直. 感的な感覚によって解決されるものと感じているからである.“die grafischen reihen”を初めて見た時 に,作品様式の表面上はそうした色彩課題での表現によく似ていながら,強い魅力が感じられた.それはや. はり色彩による表現の豊かさであり,当然であるがそれぞれの作品が自立しているためである.これらの作 品から何らか課題作成のヒントが得られないものかと考えた.. 本稿では著作で紹介される作品での使用色の照合と共に,一作品をとりあげてその配色の考え方について 187.

(15) 八重樫 良 二. 分析した.考察を通しては,マックス・ビルの考え方を参考として学習目的に応じたアレンジを加えること. であらたな課題展開が計れる可能性を指摘した.今後,その課題事例を作成し,授業実践と検証を通して研 究を進めていきたいと考えている.. 図註. 図1「三部作」における各面と使用色との関係に関する説明図. 佗用色は3色であり,PCCSではsf121t20+ b5(b5とs6の間の色)の各色に相当する・それぞれ,やや白みのある緑(A色),白っ ぼい紫(B色),明るい黄みのあるオレンジ(C色)を指す.それらの色の配置を入れ替えることで,三部作−となる・本書で紹介される作 品の多くにこうした色の配置変えによるバリエーションが見られる. 図2 「5つの正方形における色変換」における各面に関する説明図. 使用色は5色であり,PCCSではv3 v5 v12 b16 b22の各色に相当する.それぞれ鮮やかな,赤,オレンジ,青,緑,紫 を指す・ 山番広い面に相当する箇所は【1二下に2カ所の3角形而であり,同じ1色を置き,その間の4面に残る4色が置かれる・本文に記すようその 配色の仕方には一定のルールがある.図中の分数は正方形全体を1としたときの面積比である・. 図3 PCCS色相環上での使用色の位置関係の比較に関する説明図 「5つの正方形における色変換」での5色は色相環_Lでは実線で示す5角形を描く位置関係にある.正5角形に近似する位置関係にある点 線と比べると,黄色と青紫について赤みのあるオレンジ,より青い色相に寄って色が選択されていることが分かる・. 図4 5色のPCCS色相環上での位置関係の補足図 この図ではマックス・ビルの作品での使用色(図3)に習って例示している. 図5 「5つの正方形における色変換」における配色の仕方に関する説明図. 左図に示す各色面に対して,①∼③までのような手順で配色される.①と②についてはイとへ面に置かれる色は2通りあるので,計5通り のバリエーションが得られる.. 註. (1)マックス・ビル maxbillスイス生1908年−1994年 (2)総頁数106P 特色カラー印刷1995年 ドイツ・シュソノトガルトで出版。lT記参考文献に再掲。. (3)ピェト・モンドリアン オランダ生 PietMondrian1872年−1944年 (4)ヴイクトル・ヴァザレリ VictorVasarely ハンガリー生1908年−. (5)オストワルト WilhelmOstward ドイツ生1853年一1932年 (6)ジャソド D.B.Judd アメリカ生1900年−1972年 (7)この図書での掲載作品のオリジナルは主にシルクスクリーン技法による.▼一部(作品ナンバー NO・8 NO・10 NO・11NO・14)はセ リグラフィー技法による.シルクスクリーンが孔版なのに対しセリグラフィーは平板による投法である. (8)Pra。ticalC。lor Co−Ordinate Systemの略称,(郷E7本色彩研究所が1964年に発表したEJ本色研配色体系,つまりPCCSとして発表したカ ラーシステムのこと.日本の美術教育の場では良く用いられ普及している色彩体系となっている. (9)色の照合については(柵日本色彩研究所のPCCSハーモニツクカード201の色見本紙を用いて,明るい太陽光のもと,図書に掲載される作品 の上に見本紙を置いて一番,類似感があるものを選んだ.1E確ではないが,色相環上での位置関係,明度差,彩度差をPCCSでのトーン差 を知ることで有る程度,把握できると考えた.. (1功 本書の印刷は4色刷りではなく,特色刷りとなっている.普通のカラー印刷では4色刷りが一一般的であるが,特に美術書など色の再現性 が重視される印刷物では特色と呼ばれる,色毎に印刷インクを調整して便梢する印刷手法が取られている・「maX billdie grafischen rei− hen」でもその図書の性格から作品の再現は1色ごとに調整されている.こうしたことからオリジナルの版画作品ではないが,印刷物であっ ても使用色を照合することに意味があると考えた.. (1O)アレクサンダー・カルダー AlexanderCalder アメリカ生1898年−1976年 (11)「アレクサンダー・カルダー展図録(F記参考文献に掲)」p121から引用.. (12)PMoon&D.E.Spencerの二人のアメリカの色彩研究者のこと. (13)1944年発表の「AestheticMeasureAppliedtoColorHarmony.(色彩調和に適用される美的尺度)」の中で,2色を配したときの調和関係 について,その3属性の差に着目して一定の数式にあてはめて得られる数値を美度と呼び,その概念について説明している・. 188.

(16) 構成作品の色彩教育への応用について. (14)1955年発表の論文,「Classicallowsofcolorharmonyexpressedintermsofthecolorsolid.(色彩体系における古典的色彩調和論概説)」 の中で,その見解を述べている.. (1封 ここで挙げた4つの原理の記述は「 ̄色彩(下記参考文献に掲)」p59から引用した.. 参考文献. 「maxbilldiegrafischenreihenJ maxbil11995年Yerlaggerdhatje社出版ISBN3−7757uO311−Ⅹ 「アレクサンダー・カルダ「展図録」 2000年11月3Eト2002年4月 国内8カ所で巡恒】展開催の際の展覧会図録 「色彩調和の成立事情」 福日三周;夫 著(棚日本色彩研究所 編集1985年育峨書房 「色彩」 大井義雄・川崎秀昭 著(班別]本色彩研究所 監修 平成8年日本色研 「新編 色彩科学ハンドブック」 El本色彩学会 編1998年(棚東京大学‡l▼l版会. 「色彩の心理学」 金子隆芳 著1990年岩波書店(岩波新書) 「色彩構成 配色による創造」 ジョセファルバース 著 仁l石和也 訳1972年ダヴイッド杜 「配色ノート」 視覚デザイン研究所 編 昭和57年視覚デザイン研究所 「色彩と配色」 太「l三川日経・河原英介 著1974年グラフィック杜 他. (旭川校 教授). 189.

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参照

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