我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化
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(2) . 第9巻. 第1号. 北海道学芸大学紀要(第一部). 昭和3 3年9月. 我が国家長制家族組織の原理と 戦後における変化 北. 達. 村. 北海道学芸大学旭川分校社会学研究室 incipl T6ru KITAMURA: The pr i I Fami ly organ i i e of the pa t r archa zat on r inJapan andi V l t s Change after the V ar l ,. 目. 次. 理 蓄電翻ぎ 都 1謹藁勝一納原 1. 序. 説. 皿 戦後における変化. 1. 序. 説. 家族は家族外社会集団と性格的に鋭く異なって, ・常時面接的, 親近的集団として, 日常的共同 性を有する集団として, 感情的には排他性の強い集団として把握される。 かかる性格は家族にとっ. て本来的であり, 時代的影響を殆んど受けない。 然し家族の機能や組織原理は, 社会体制, 政治体 制の変化に対応じて漸次変化してきている。 特に我が国の場合には敗戦を契機と して, 従来の国家 主義的政治社会体制を民主的体制に組織替したのであるから, 基礎的集団たる家族の組織原理も変. らねばならない筈である。 即ち戦前の我が国家族は家長中心の家族として制度化されてきたが, 当 時の強い国家主義的政治体制の存続強化のためには, 家父長制家族制度の温存強化を図らなければ. ならなかったのである。 従って, ここでは家族は強固な家共同体として把握され, 個人は 「家」 に 緊縛され, 家族関係も権威, 恭順の上下的支配関係によって貫かれ, 抽象的な 「家」 の維持, 存続. が要請されてきた。 戦後は旧政治体制の崩壊, 民主主義的諸制度の導入により, 集団の民主的組織と運営の影響の 外に, 直接的には家族成員に 対する民主教育, マス・コミ ュニケーショ ンの発達による新思想の流 入などによって, 家族はその構成員の愛情に基礎をおき, 個人主義, 自由主義, 友愛主義的原理の 支配する家族に移行していかねばならない筈である。 然し現実の家族は社会の民主化, ,合理 化に比 して, 変化の速度は必らずしも平行していない。 その原因として, 経済力の低さとか, 村落社会の 前近代性に伴なう社会的圧力とか, 複雑なる家族構造とか, 中年層以上の人達が過去の生活過程に. よって培養された 「家族制度」 イデオ, ロギーの支持などに求められるだろう。. 本稿においては日本の家長制家族組織の原理と看倣されてきた統制支配, 共同帰一, 世代連続 の三原理の究明と, これらの原理が戦後の日本家族において, どの程度変化を遂げてきているかを 主とて全国 的資料に基づいて明らかにする積りであるり 。 三原理は日本の家族組織上一体となって 表われていたのであって, これらを切り離して考察する事の実益に就いては疑問がないではない が,. 三原理の意義を一層明らか ならしめるために, 節を分って述べる。. - 83 -.
(3) . 北. 1 1. 村. 達. 家長制家族と統制支配の原理. 日本の家長制家族を組織し, 家族に安定を与えるために統制支配の原理は大きな意義を有して. いた。 具体的には家族内の人間関係は 家長の権力を中心とする縦の上下的な不平等な関係であり, 家長が家族構成員に対して支配, 命令し, 成員達は家長に絶対的に服従していた。 又親子, 夫婦間. においても, 父, 夫は妻子の上位にあって妻子等は父, 夫に恭順して, 一方 的に命令に服しなけれ ばならなかった。 統制, 支配と称せられるためには, 権威を以て相 手の意志を規定していかねばな らないが, 日本の家族においては, 夫々の権威に従属する人達の自由は極度に拘束されていたので ある。 かかる家族関係にみられる支配と服従, 保護と奉仕と言う身分的関係が, 凡ての社会関係に 擬せられる事によって, 我が国が家族国家と称せられてきたのである。. 家族内の権力を強大に してきたのは, 権利行使が法定されていたので, 権力者の地位を確固な ものとしていた。 即ち戸主権と しては, 家族員に対する居所指定権, 離籍権, 入籍, 送籍同意権,. 他家相続, 分家, 廃絶家再興の同意権, 婚姻縁組に対する同意権及び之に 伴なう離籍権, 復籍拒絶 権, 家督相続人を指定し, 又は法定の家督相続人の廃除を請求する権利等であり, 親権としては, ‘ 子の居所指定, 懲戒, 財産管理, 婚姻干渉権, 夫権としては, 妻の財産管理権, 妻の行為に対する 許可権等であった。 これらのうち戸主権の内容が最も多面的であって, 之を握る者が一家の家長の. 地位にあったが, 戸田博士は, 「実際上の家長権は戸主権より内容が大であり, 一家全体の統卒の ために必要な支配的の力が家長に認められている一 と言い, その内容と して, 一家の者の保護, 扶育, 一家の者の移動に就いての処理, 一家の者の協力によって生じた資財, 及び祖先伝来の資 財 ) かように家長権を有する者は内部的には 家 の運用 ,並びに管理, 祖先の祭妃の執行をあげている2 。 族全員を統卒し, 外部的には一家を代表して いたのである。 即ち日常的には祖先伝来の家を司祭し 家族員の労働を差配し, 葬儀, 婚礼を執行し, 近隣その他の会合に出席すると言うように, 仕事も 多面的であった。 反面においては家産を一身に相続する事によって, 権利 行使の物質的裏付がなさ. れていた。 又家庭内においては特別の座席が指定されたり, 専用の室, 特別の食事が用意される事 もあった。 家長権を強大にしておく便宜としては, ,経済的に弱体な農漁村家族, 小商工業の生産的 家族では, 事実上財産を家族全員に分配するよりは, 家長に一身に相続させる事によって, 家も家. 業も安体であり得たのである。 上層階級においては家長は家格を維持し, 家名を継承していくべき 者として資格づけられてきたのである。 何れにしても家長と家族成員との関係は, 家長は物質的裏 付けによって家族員に対し命令し, 支配したが, 家族員は一方的に服従し, 家長に奉仕する事によ って家長の庇護を受けてきた。 従順に奉仕する場合には, 家長も恵みによって保護し, 家長に反抗. する場合には, 庇護の外におかれたのである。 次に親子間における権威, 恭順の関係は親孝行の道徳によって確立されてきた。 即ち子の孝の. 義務は, 親が子を生んでくれた恩とか, 子の職業, 結婚の決定に対する恩と言うような種々なる恩 に条件づけられる訳 で, 且つ親から子への恩恵は特別な好意として, 物質的には測定し得ない深さ. を有していたのである。 川島教授は子の孝の義務の内容とL て, 親に対する絶対恭順の心, 立身出 ) 従って子は親を絶対尊費な者として 世, 親を養う事, 子を作って家を継承する事をあげている3 。. 恭順し, 親の命令であるならば, ,自己の意志に反 しても苦界に身を投 じたり, 肉体を酷使する事も . 平気でなされたのである。 孝の義務強制は親の扶養にとって好都合であったから, 親に対する扶養. の要求が強ければ強い程, 子に対する圧迫となった。 例え孝 行は淳風美俗と して譲えられたにせよ それは子の自然的, 自発的意志に基 づくも のでなく, 従って子自身の人格的独立は遂げられず一方. は権利のみを行使し, 他方は義務のみを負うと言う権力関係に支えられていた。 子は親のための手 - 84 -.
(4) . 我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化 段 で あ り, 道 具 で あ っ て, そ の 人 格 は 踏 み に じ ら れ て い た 。. ・. 夫婦関係においても, 夫婦が平等な人格の基礎の上に立って, 相互に権利を行使すると言うの でなく, 最初から妻は財産行為の無能力者と さえ, 夫が妻の財産を管理する権利を有したり 第三 , 者との取引, 貸借においても, 夫の許可を得て のみ完全とされた 従って妻は夫に一方的に服従す 。 る事によってのみ, 夫婦関係の 平和が保たれてきたのである 夫は主体性を有する人間として妻を 。. 支配し得ても, 妻は人格を無視された物として奉仕するに過ぎなかった 妻の従順, 温和, 貞淑な 。 どは美徳と して称揚されてきたが, 之等は権力 関係に裏打されて表われてきた場合が多く その背 , 後に妻の犠牲, 奉公, 忍従心のあった事は見逃がせない。 夫婦関係においても妻は夫の手段とされ , 道具とされてきたが, 妻が夫の父母 と同居する場合は, 婚家の一員として収容されるために 家長 , の統制, 支配に服し, 家族の課する生活様式に従わねばならなかったので, 妻は累積せる二つの権 威に恭順して, 人格を無視さえ て き た の で あ る。 1 1 1. 戦後における変化. 戦後は法律上, 戸主権を廃止したし, 祖先より連続継承すべき抽象的 「家」 の観念も無くなっ て, 子は結婚によって新家族を戸籍上持 つようになった。 従って現実の生活面においても, 家族成 員を強力に統制すべき人はなく, 親も子も, 夫も妻も平等な人間として, 相互に主体性を保持し , 自由意志を尊重しながら接触して, 集団としての家族 の秩序を維持すべきであると考えられている 。 家族成員の1 人1人が主体的個人として, 集団たる家族より夫婦中心の友愛家族へ移行し 不平等 , な上下的人間関係より, 平等な平面的な人間関係に移行していくべきである 他方種々なる要因に 。 よって, 依然として権力関係が根強く残存 しているとも考えられるが, 実態調査に表われた結果 は 下記の如く である。 [資料11 あなたは昔のように 戸主中心 の家と今 のように20才を過ぎた子供は皆平等な家とどちらがよいと思い ま す か。. ・. 戸主中心の家がよい. 41%. 平 等 な 家 がよ い. 49. わ か らな い. 10 ろ 100ラ. {註) 昭和29 0 ,国立世論調査所 「時事問題に関する世論調査」 による。 .1. [資料2] 自分が結婚したいと思う相手がどう しても親の気にいらない 場合, あなたならどうしますか。 男. 親の 自分の 言葉 思う通. 数. 実数. %. を F従. ギこる. 30. 49. 子. 総. 総. 数. 1131. 100. 市. 部. 434. loo. 郡. 部. 697. 100. 2 2. 54. 駈. 46. わか その他 ら な L、. 総. 数. 実数. %. 親の 自分の. 言葉 思う通 その他 に従 りにす つ. る. 15. 6. 1677. loo. 44. 36. 10. lo. 18. 6. 660. 100. 33. 43. 14. lo. 12. 6. 1017. 100. 51. 31. 8. 10. (註) 昭和25 .4 ,労働省婦人少年局 「封建性に就いての調査」 による。. [資料3] 最近は親の言う事を聞かない子供が多くなったと思いますか。 多 く な っ た と 思う そ ん な 事 は ない わ か らな い .. 66% 28. ・. 6. 扉; ) 昭和27 9才男女2 6 71名対象 ,4 ,国立世論調査所 「社会教育についての調査」 による。 全国16~5 , - 85 -.
(5) . 村. 北. 達. [資料4] 親と子の意見が対立した時はどうすべきか。 親に従うべし %. ′ 無理に従う 子供の意見も尊重 必要な し. わ か らな い. 東. 京. u. 9. 49 7. .. 3 7 ,. 岡. 山. 46 8 .. 26 3’ .. 22 2 .. 4 4 ,. 秋. 田. 51 2 ,. 32 1 .. 13 8 .. 2 7 ,. 31 2 .. [資料5] 嫁と姉が対立した時はどうすべきか。. 東. 京. 8 19 .. 」. 夫子の仲裁. 姑に 従う %. 嫁に従う. 山. 46 3 .. 4 1 .. 秋. 田. 49 8 .. 4 5 .. 4 O ,. 56 6 .. 19 8 .. 岡. わ か らない. 0 4 19 .. 3 33 . 35 9 .. 9 8 .. 0-52頁。 {註) 磯村英一 「親と子の人間関係」{現代家族講座6巻)5 岡山, 秋田は東大社会学研究室の調査による。. [資料6] 夫の収入は全部妻に渡しますか。 1. 5 . 2. 6 . 全部妻に渡す 生活費のみ渡す 3 夫の小遣以外を全部妻に渡す ・ 4 妻に必要な都度必要なだけ渡す 5 答 な し. 2 2 5 ろ loog. (註) 牛島義友 「結婚生活の心理」152頁。. [資料7] あなたは夫に相談なしに単独で借金したり自分の財産を処分した事があるか。 農. (%). 業. 転. 水 産 業 (%}. 業. 商. (%). 業. 別. ホ ワイ トカ ラー. (%). 単独でなした事ある. 2. 4. 16. 9. 夫に 相 談 して な す. 98. 96. 84. 91. 0 (註) 拙縞 「転業別にみたろ妻の地位」 による。 昭和3 .2K市において各転業別60名の妻対象。. これらの資料を通 じて知り得る事は, 第 一に戦前の如き戸主が中心となって 家族成員を統卒し ていく 家族がよいとする者が4割にも達するのは, 戦後の家族では未 だ各個人の人格の平等を確認 して家族の秩序を 保っていこうとする生活態度が確立されていないため, 自由主義の浸透は家族関 係を動揺, 混乱させて終うのである。 従って昔のように 家長が中心となって, 統制支配の原理が貫. く家族への憧れを持つ事になるのだろう。 他方農, 林, 漁, 商業の生産家族においては, 強い権力 を家族内において容認 していく反面において, 家族員個々の将来の生活を保証して貰えると言う功 るのかも知れない。 一般に戦後の家族において個人主義, 平等主 義的思想に対する健 全なる育成がなされていないために起る 家族関係の動揺, 不安の現象は, 昨年 利性も働いて, 戸主制を望んで. 」 の質 度首相官房審議室 が 「家族内に中心になる人がいないと, 家にまとまりがつかなくて困るか。 問に 8割まで 「困る」 と思うと答えている点でも裏 書されて いる。. 又資料3 によっても, 親の言う事を聞かない子供 達が増加してきて, 「子供は 理屈許り言う」 「大人のように生意気になってきた」 「自分さえ良ければよいと言う自己本位になってきた」 と言う 声を親達から聞かれるが, この事は親には絶対的に恭順する所の昔の子供 達とは, 全く逆に親達と. 対等観で臨み, 彼等に強く反抗する子を生み出してい る。 従って戦後の親子関係の特徴と して, 子 - 86 -.
(6) . 我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化. は親を絶対に尊貴な対象して, その命令に服従すると言う意識は薄らいできているし, 孝の義務感 も戦前に比して遥かに 弱くなっている。 かかる現象が後後の誤った自由主義的家族観に根ざす一般. 的特徴として捉えられるとしても, これが正しい意味の近代家族への育成とはなっていない。 次に 資料 4では, 親子の意見対立の場合, 岡山, 秋田で代表される農村では, 親の意見に従うべしとす る者が半数に達しているに反し, 東京では僅かに 1割余に過ぎないと言う対陳を なしている。. かように都市, 農村家族の差異は, 都市家族では生産と消費とが分離し, 家族は単純な る消費 経済的機能を中心とし, 家族の構造も単純化されているので, 親の権力も弱められているに反し, 農村家族では生産的機能が大きな 意義を有し, 労働を通じての家長或いは父の統制支配が行われて. いる事と, 東北地方の単作地帯では経済的生産力も低いために, 家長への従属が自己の生活安定の 基礎ともなっている訳で, 経済的低さが権力保持の原因となっているのである。 更に親の権力が都市より農村に根強く残っている点は, 資料2に示すように, 子供が結婚する. 際の親の圧迫度によって窺われる。 此の種の調査は戦後数多いか, ここでは労働省婦人少年局の調 査のみを取り上げた。 これによれば子の結婚は新家族の形成として, 大きな意義を有するが, 結婚. したい相手が親の気にいらない時どうするかに対して, 男子は3割, 女子は 4割以上親の言葉に絶 対に従うと答えていて, 特に群部の女子が過半数を占めているのは, 農漁村では親の意志と命令に. 忠実に従って, 口答えせぬ事が将来の結婚にプラスすると考えるのであろう。 逆に親と対立しても 子自身の自由で, 家族外へ逃避する事も可能な市部の男子は半数以上自分の意志を貫こうとして い. るし, 親自身の子供の意志尊重度の高まりも注目すべきである。 親子間の統制支配の原理は家族内 の問題として考察される外に, 家族外の社会の構造にも規定きれる事になる。 即ち農村の如く家族 の連合よりなる部落が依然と して, 上下的な構造の 下に個人の生活をも規定せざるを得ない時には 個人の自由を部落内で溶解したり, 拘束してしまうから, 自然部落の監視の目を受けて, 親の命令 に忠実なる子供として行動する事が多いのである。 最後に夫婦関係に就いてであるが, 妻が夫に屈従している大きな原因として, 夫が経済力を握 っている事であり, 牛島教授の調査では, 対象者が東京都内のイ ンテリ層を主体と しているので,. 半数以上の夫は其の収入の全部を妻に渡している。 従って夫は経済的実権掌握を後立てとして, 妻 を従属せしめようとする傾向はみられない。 然し筆者の同様な職 業別 の調査では, ホワイ トカラー. では約7割の夫が一応収入の全 部を妻に渡しているが, 農, 漁, 商の生産的家族の妻の半数は一家 の収入がどれだけあるか不明であり, 特に農業家族では収入の全部を妻に渡す夫は1割に過ぎない。 これが夫支配の原因ともなっている。 資料7に表われた如く, 妻の財産行為上の独立は各職業層と も未だ認められていない。 これは夫婦一体感にもよるが, ÷ 家の収入の増減を図るのは夫の権限内. の行為であると考えられているので, 依然として, 夫の妻に対する優位性が認められる のである。 商業層に比較的妻の独立性が高いのは, 複雑な仕事に妻のタッ チする領域が拡大して きたためだろ. う。 又嫁姑間の従属関係に就いては資料5に示す如くであるが, 農村家族では未だ実権が若夫婦よ り, 老夫婦にあるので, 嫁は姑に出来るだけ従順ならんと努めているし~ 都市家族では逆で, ここ でも都市, 農村家族の差異を発見し得よう。. 要するに戦後の家族では法律上強大な権利を1人に集中する事を避け, 権力者の存在を否定し たが, 現実の家族の実態をみれば, 農, 漁, 商の如き生産的家族には未だ統制支配の原理が残存し. 妻と子供達は夫や父の権威に従属している。 他方都市家族の一部には極端な自由主義, 平等主義原 理が支配的であるため, 家族内の 秩序を破壊し, 不安, 動揺を招いている事も, 特徴的な現象と言 えよう。. - 87 -.
(7) . 北. IV. 村. 達. 家長制 家族と共同帰一の原理. 家族は歴史的に強固な共同組織体として把握されて きたし, 現在においても種々なる共同の契 機によって集団と して存立している。 只如何なる共同を 重視するかは, 学者によって異なる。 マッ クス・ウェーバ ーは家族を経済的共同体として重視し, 家族内では経済的に共産的共同が行われて. いると言うし, クーランジュ は 家族を宗教的共同社会なりとする観点に立つので, 家族は一つの炉 ) 又フィ アーカントは経済的 に祈り, 同一の祖先に供御する事を許された人々の集団と言えよう4 。. 共同, 法的政治的統一, 個人の家族内への融合, 宗教的共同, 相互の内的, 感 情的要求の実現をあ ) 清水教授は居 食 財 祭観 防衛の共同 げて, 家族を共同組織体として意義 づけようとした5 , , , , 。 ) 確かに家 実現は歴史的にみて家族の存在と運命を左右する程の重要な意義を有していたと言う6 。. 族は親子間でも夫婦間でも高度の 感情的融合が期待きれ, 成員が運命的に共同 し, 経済的にも 一体 化 して い た。. かかる共同は我が国 家族においては, 恐らく生活の全面に渡って発見し得よう。 家長制家族で は祖先との共同, 生産, 消費の共同, 享楽の共同, 責任, 名声の共同を要求され, 従属関係に貫か れた結合度の強い封鎖的共同体となっていたので, 成員達は感情的にも, 思想的にも, 行動上も同. 一化していたので, ここに共同帰 一の原理が支配的であったと言い得る。 川島教授は日本の家族組 織の原理として, 共同帰 一の原理が表われている特徴的な点に就いて 次の如く述べている。「家族員 が自分の個人の 生活の場を殆んど持っておらず, 生活の全面に渡って共同が存在している。 従って 家族員は相互に他の者の生 活, 感情, 思想, 行動を殆んど全面的に理解し合っている。 その結果, ) 」 と言うが? 同じ感情, 思想を持ち, 同 じように行動するものである事が期待され, 要求される。 ,. かかる共同帰 一の原理は家父長制家族組織にとっては基本的原理となっている。 即ち此の家族は高 度の統 一性を有する家族であって, 成員達は 家族内にあって私心を捨てて 無私とならねばならず,. 共同生活を通じて凡ての面で一致し合い, 個人的な生活を 持つ事を嫌われるのである。 家族全体の 融合した生活, 即ち家族成員が同 じ感情, 思想, 行動を取らされる生活はあっても, 個人生活は分 ・く事になる。 ソローキ 化していない し, 個人に対する家の優位は必然 的に家の為に没我帰 一してし. ンは農 村の家族本位性の性格として, 家族成員間の連帯性は有機的であり, 自然発生的で, 緊密な 共同生活, 共同労働, 共同活動, 共同感情, 共同信仰の中から自然に生れた ものである。 又家族道 ) それはその傷 我が国家長制家族に該当 徳, 法律, 慣習が家族の安固を強く 守っていると言うが8 ,. する。 特に第 一次産業の農業家族が 4割以上を占め, 更に漁, 小商工業家族の生産的家族を含めて これらの家族においては, 家族成員達は幼時より家父長と同一の家業に従事する事により, 家父長 が祖先より受け継いできた 生活経験と同様の生活経験を学び取る事により, 同化されてきたのであ. る。 鈴木教授は家は一つの精神であり, 之は現在の家族成員等の統一 的活動の中に認め得る と共に この活動は過去と未来 における関係の中 で具現きれている。 又その精神は家族員等の独特の共同体 ) 即ち一軒の家族の成員等にのみ課 験の世界に君臨している 一個の意志であり規範 であると言う9 。. せられる態度や経 験, 言葉や家風, 信仰その他の種々なる生活規範 が一つの意志となって, 家に緊 縛されていく事になるの である。 家族内においては個人が独立して 意識し, 行動するよりは寧ろ, 最初から結 束力の強い家に帰一して意志し, 行動するように訓練されてきたの である。. 家長制家族において共同帰 一の原理が効果的に作用するのは, 家族成員達を家風の下に制約し. ている事である。 即ち世代を 重ねて同精神の下に一家の者が共同していく間に, 夫々の家族におい て, 家事のやり方, 立居振舞, 親, 夫に対する仕え方な どが夫々独特の慣習となっていて, その慣 習に従った行動を取らされるのである。 子供達は幼時期より 家庭内において起床より就床ま で神仏 - 88 -.
(8) . 我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化. への礼拝, 食事の仕方, 親に対する言葉遣いな どが定められていて, その型にはまった行動を強制 されるのである。 特に他家から結婚してくる妻の場合には, 嫁として婚家が有する独特の家風の下. に強く行動を強いられる事になる。 川島教授は異分子ブ こる嫁は婚家の帰一的共同体の一員となり得 るように同化されなければならない。 そのためには嫁は過去の生活環境の中で作り上 げられた自分. の思想, 感 青を捨てて, 無私となり, 婚家の思想, 感情と一体となり得るよう努力しなけばならな 0 ) 之によれば家父長家族の下における婚姻は新家族の創設ではなく 既存の慣習を有す いと言う1 , 。 る家族へ新成員を迎 え入れる事である。 従って新婦は従来の生活様式を捨てて, 婚家の家風に馴致 されねばならないのである。 更に一家の中に は親子共同体, 夫婦共同体, 兄弟共同体の三層の共同. 体が緊密に重なり合って家共同体を構成するが, 夫婦, 兄弟共同体は平面的共同体であるが, 親子 共同体は縦の直系的共同体であって, 之が家長的家族共同体の中心となっているため, 嫁は夫婦共 同体的拘束を受けると同時に, 結婚によって親子共同体の中に包摂さ れる結果になるのである。 このように家族員の個性が家族の中に没入して終う結果,r個人の善悪も家族全員の或いは家の 共同責任となりゞ 個人の受け得べき非難も, 名誉も家族全体のものとなって終うのである。 特に我 が国の農, 山, 漁村では村や部落が強固な村落共同体として把握されて, 一村落においては生産面 日常生活面の組織体が累積していたが, これらは個人の集合としての集団形成ではなく, 家共同体. の連合としての細 ‐織体であった力 故に, 村落共同体内では個人の意識, 行動は個人的なものとして 観察さえ る事なく, 家の代表と して考察されたので, 個人は家帰一的な行動をとらされたのである。 之に反して都市家族では戦前でも, 現在の一 代毎に更新される家族, 従って家風や伝統のない家族 も存していたが, 家族外社会機構が家長制家族に擬制される身分制の濃い上下的組織で組立てられ ていたので, 共同帰一の原理が一般的原理として認められていたのである。. V. 戦後における変化. 戦後家族内においても, 個人の自由尊重と平等の原則が確立されつつあるので, 必然的に従来 の家共同体的組織も崩壊していかねばならない。 家族個人の意識, 行動も独立していくにつれて,. 各成員の共同を通じて家に帰一するのでなく, 各個人の共同によって新しい生活様式を生み出して いく家族が出現し, 共同のあり方も個人の自由意志を尊重していこうとしているから, 共同帰一 の. 原理も通用 し得なくなる筈である。 然 し調査に表われた結果は下記の如くである。. [資料8] 家の中では家族1人1人の自由平等などという事よりも家全体のまとまり方が大切だと思いますか, そ う は 思 い ま せ ん か。. ( 1 ) 家全. 体のまとまりが大切 ( 2 ) そうは 思わない. 83% 13. ( 3 ). わ か らな い. 4 100%. 2 (註) 昭和3 .8 .首相官房審議案室 「憲法に関する世論調査」 による。 全国満20才以上男女2万人対象。. [資料9] 女は結婚したら夫の家の家風や習慣に従わなければならないでしょうか。 それとも従わなくてもよいで しょ う か。. 1 ( ) 従わなければならない ) 従った方がよい 2 (. 34% 36. 3 ( ) 事による. 26. ( 4 ) 従 わな く て もよ い. 3. 5 ( ) わからない. 1 100%. ) 昭和25 (証 … ,働省婦人少年局 「封建性に就いての調査」 による。 .4 .労. - 89 -.
(9) . 村. 北. 達. [資料10](A ) 結婚して2人きりで新家庭を作る場合, 次の三つのうちどれが一番よいと思いますか。 1 ) 夫の家に馴れるように妻が協力する。 ( ( 2 ) 夫と妻と両方のをとりで、れ て い く0 3 ) 夫が妻のやり方に馴れていく。 ( B ( ) 夫の両親と同居しなければならない時はどうでしょうか。 B)( 1 22% ( 6彫ろ 1 )の肯定 (A)( )の肯定 〃. ″. 74. { 2 ). 〃. 2. 6). ″. 4 ( )不 明. 2. { 2 ) 樽). ( 4 )不 明. 36 1. 2 100%. 100%. (註) 昭和28 .5 .国立世論調査所 「家族制度に関する世論調査」 による‐ 0人対象。 東京都内20~50才男女60 [資料11] 親夫婦と子夫婦とは別居した方がよいか。 31% { 1 ) 別居した方がよい 59 ◎ 同居した方がよい 10 樽) わからない 00% 1 「 (註) 昭和28 老後の生活に就いての世論調査 8 国立世論調査所 」 による。 .. 0人対象 0 0 全国20才以上男女2 , 。. 資料8により家全体のまとまりが必ずしも共同帰 一と言う事を意味しないが, 家族内において は家族個人の自由, 平等を認めていくよりは, 全体たる家そのものの統合の方がより重要であると 考えていて, 個人意識の独立, この意識の上に立った共同と言う形は未だ生み出されていないよう である。 従って個人の生活領域の尊重も一般化の段階に達していない。 その具体的事例として, 結 婚せる妻を婚家の一員として収容, 同化するために家風に馴致されている程度は明らか でないが,. 資料9 が示す如く, 女は結婚したならば, 夫側の家風に従うべきだ, 従った方がよいと答えてい る 者が, 実に全数の 7割に達 しているのは, 妻は独立の意識に基づいた行動をとっていく よりは, 寧 ろ夫の家族の家 風に従った行動をとり, その思想, 感情と一体となり得るよう努力しようとしてい る訳である。 此の点は資料3 の農村家族における姑に従順な嫁の多い事 でも裏書されている。. 但し資料10の A の場合の如く, 結婚によって新家族形成の際には, 夫側の 家風に馴致されようと するよりは, 夫婦双方の結婚前の慣習の長所を採入 れて, 新しい生活様式に従った行動をなさんと しようとしている。 これは従来妻が夫に従属し夫の家風のみに従って意識し, 行動してきた事に比. 較すれば大きな変化と言えよう。 然 し夫の両親との同居を予想した場合には, 夫側の家風に従う事 に賛成すると言う者が6割以上に達する事は, 嫁姑間の摩擦, 衝突を避けるために, 新婦は無私と. なって, 順応 して家族全体の安定と統一を保とうとしているのである。 親子夫婦同居の直系家族で は現在の親達の大部分が過去の家族制度の強い時代に生きてきたが故に, 自然に今迄の家の慣習を 固定化しようとする事になるのである。 親夫婦, 子夫婦の同居, 別居に就いては, 資料11 に表われた如く, 我が国では同居を希望す る者が6割に達するのであるが, この種調 査は他の場合でも比率的に高い結 果が出ている。 それは. 親達の生活不安を反映している事と, 親子の精神的共同を長く保たんとする強い共同体的意識に 支 えられているからである。 親達が戦前からの家共同体を存続強化しよとしていく限り, 共同帰一の 原理は尚残るであろうが, 若い夫婦はこれに反撒を加えようとしてい る。 勿論戦後の家族において も, 性的, 経済的, 精神的, 感情的共同を通して 一 体化していく事は 家族の存立にとって欠く事は 出来ないが, 此の場合家長制家族の如く, 家に固着せる既存 の慣習, 制度に帰一 して無私となるの - 90 -.
(10) . 我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化. でなく, 自主性を有する各個人の自由を尊重しつつ, 共同, 協力して, 新しい生活様式, 行動様式 を生み出しながら, 相互に交流しながら一 体していく所に, 民主的家族としての共同のあり方を発 見し得るので, かかる家族は都市家族に漸次表われてきている。. VI 家長制家族と世代連続の原理 我が国の家長的家族は 「家」 と観念さえ てきたが, この 「家」 なる概念は現実に生活している 家族員によって構成きれている家族のみを指すのでなく, 過去より未来に撃がる一本の管の如きも の で あ っ て, そ の 同 一 性 を 以 て 連 続 して い く も の で あ る。 個 々 の 成 員 は 此 の 管 た ろ 「家」 の 中 に 生. れ, 生長して, 死んでいく事により, 新陣代謝していくが 「家」 は個人の生滅に関わらず存続して いくの である。 戸田博士も 「我が国の家は単に空間的に統一された団体であるのみでなく, 祖先と. 子孫とが一つ心に結びついていく時間的な永続性をもつ団体であり, この永続的な団体生活が我が D 世代連続の重要性を認めている かか 国民の最も強く要求している 家の生活である。 」 と言ってI , 。 る不死なる 「家」 を維持存続し, 世代連続を図っていく事は, 家長制家族組織上の原理であった。. 具体的には一家における戸主が法定の権力を行使しながら, 祖先から受継いできた 「家」 を家産, 家名, 家風, 家業と共に保持し発展させ, 次に戸主たるべき者に受継がせて, 戸主権を交替させる 事によって世代の連続を企図してきたのである。 家長制家族は無限に連続するものと考えられていたが, 血統による者の世代継続を要求する事. によって, その継承資格者を限定してきた。 特に長男は世代継承の第一順位者として尊重さえ, 次 三男は冷飯食い, 或いは用心棒の如き存在価値として認められるに過ぎなかったので, 何れ 「家」. より出ていかねばならず, 特に女子は生れる時より 「家」 にとっては寄生的存在として, 婚姻適令 期に達すれば, 「家」 から排除されるように準備されたのである。 かように家族における世代連続. の原理は自然の血統を有する男系の男子によってなされた。 子がない時には 「家」 を継 ぐ事が不可 能なために, 妾に子を生んで貰う事も許容されたし, 自然から拒まれた血統を法によって擬制する. 養子制も 「家」 の断絶を防ぎ, 世代連続を図るために行われてきたのである。 女の子のみが連続し て生れてきた時には, 原則として 「女の子は血筋でない. 従って家長になれないとの観念が支配し ていたので, 此の場合も女の子の誰か1 人に男子の養子を迎えて 「家」 の継承を図らねばならなか っ た の で あ る。. 鈴木教授は家族の世代的連続は祖先崇拝の信仰的態度と孝の道徳の実践的態度の中に自ら結果 するであろうが, 家系尊重のための色々の制度や, 事実上家業の相続の可能なる事や, 或る程度の 2 ’ この点日本の 家族 家産の存する事などの条件が伴なわなければ事実上存し得ないと言っている1 。 では祖先と子孫とが凡ゆる時点において存在を共同にすると言う信仰が必要であって, 戸主は常に. 祖先からの系譜, 祭具を受継ぎ, 祖先を信仰する事によって, 過去の家との一体感を保ってきた訳 で, 祖先を深く奉相する場合には, 家族に福を 高らし, 之をしない場合には, 禍を受けると考えら. れてきたのである。 清水教授は祖先は家族の歴史や財産と共に言葉, 知識, 経験, 感情, 伝統, 家 3 ・ 我が国家長 風, 家憲, 家法, 名誉等を支えてきて, 之等によって子孫を拘束していると言うが1 , 制 家族 に お い て は, か か る 概 念 は そ の 樵 妥 当 して い た の で あ る。 ,. I VI. 戦後における変化. 戦後は超世代的 「家」 の観念は法律的にも廃され, 現実に平等な個人を以て構成する家族自体 が大きな意義を有し, 家族は結 婚を出発点として形成され, 夫婦の死亡によって閉鎖される孝言う ・考えられている。 然し果して, 有限家族の概念が支配し, 家族は一代毎に更新されるべきで, あると - 91 -.
(11) . 村. 北. 達. 日本人から 「家」 と言う観念が払拭されたであろうか。 調査に表われた結果は下記の如くである。 ご「家」 というものは大事に守って子孫に伝えなければならないと思っていますか。 [資料12] 先祖からうけついナ そ う は 思いませんか。 1 ( 72% ) 子孫に伝えなければならない ( 2 ) , そう は 思 わ ない 鎧) わ か らな い. 23 5 100%. (註) 昭和31 .9 .首相官房審議室 「家族制度についての世論調査」 による。 000人対象。 全国満20才以上男女3 , [資料13] 結婚しても子供を生みたくなければ一生生まなくてもよいと思いますか。 それとも結婚したら子供を もつのが当然だと思いますか。 1 ( ) 生まなくてもよい 6% 2 ( ) 子供をもつのが当然 90 倦) わ か ら な い. 4 100%. 4] 子供が1人もいない場合は養子をした方がよいと思いますか。 その必要はないと思いますか。 [資料1 1 { ) 養子をした方がよい 69% ( 2 ) 養子の必要はない 18 回. わか ら な い. 13 100%. 傷 ま … ) 以上2問 [資料12] の対象者と同じ。 [資料15] あなたは自分の地位や財産は出来れば子や孫に残してやりたいと思いますか。 そうは思いませんか。 85% { 1 ) 残してやりたい 2 ( ) そうは思わない 8 倦 ) わからない 7 100%. [資料16] 家が何か商売をしているとか農業をやっている場合, その仕事を出来る事なら多少は子供が嫌がって も子供につがせた方がよいと思いますか。 その必要はないと思いますか。 ( 1 ) つ が せ る べき で あ る. 44%. { 2 ) つがせる必要なし. 50. ◎. わからない. 6. 100% [資料17] 家々でその先祖をまつるのは必要な事だと思いますか。 その必要はないと思いますか。 1 ( 90% ) 必要だと思う 2 ( ) 必要ないと思う 、6 ( 3 ) わからない. 4 100%. (註) 以上3問対象者は前間と同じ。. 資料12より14を通じて言い得る事は, 最近でも日本人の 「家」 に対する執着心と継承意識は. 意外に強い事を示している。 家族は世代毎に更新されると言う考え方は一般化 し て い な い。 例え 「家」 なる概念が無形なものであっても, 之を尊重する態度は深く, 実に7割 以上の者が 「家」 の. 継承を肯定 している。 夫婦にとって子供を作っていく事は, 個体保存本能, 自己再生産本能として 固有のものとなっている。 然し子供を作る事はその子によって社会的な文化遺産を継承させるため に, 社会へ送り出すのが目的なのか, 或いは 「家」 を継承させる事が目的なのか問題であるが, 資 2- -9.
(12) . 我が国家長制家族組織の原理と戦後における変化. 3 を更に追求質問した結果は, 7割まで 「家」 をつがせるのが目的であると言っているし, 子 料1 供を生まなくてもよいと答えている者でも, その半数の者は 「家」 が絶えては困ると言うので, 如. 何に 「家」 に対する執着心と, 世代連続を図らんとする意識が強いかを示している。 それは子供の ない時の養子制にも表われている訳で, 養子を望む者が7割に達し, そのうちの6割の者は明らか に 「家」 の 継 承 を 目 的 と して い る の で あ る。. 5 次に 「家」 の継承と関連して, 財産や家業の継承に就いては資料1 ,16 が明らかに している。 全に個人 子供の結婚後は親夫婦の財産と子夫婦の財産と 戦後の家族が完 中心を貫くようになれば,. は別産となり, 夫々個人責任で生活を確立していくようになる訳である。 然 し現実には個人責任の 原則は確立されず, 自己の財産を子孫に残してやりたいと言う親が未だ8割以上あるのは, 財産の 相続を通じて 「家」 の継承と世代連続を考えているのだろう。 農, 漁, 商業な ど生産的 家族でも, 親の約半数は強制的に でも, 子に 「家」 を継承させようとしているのである。. 祖先崇拝心も個人主義的自由思想, 実証的科学的精神の浸透にも拘わらず根強いのは, 昭和28 年の国立世論調査所, 及び今回の調査でも, 9割に達している事で明らかである。 これは祖先奉把. を通じて, 現在の家族成員達が過去の者と一体化して, 永遠の生命たる 「家」 に結びついていこう と しているのである。 要するに戦後においても抽象的な 「家」 の継承, 之に伴なう家名, 財産, 家 業, 祭妃の継承意識は戦前と鋭く異なった差違がないと結論し得よう。 それは現在の家族の中核を. なしている者が家父長制 家族時代に生きてきた者で占められている数が比率的に高いために, 容易 ・生産家族の多い事も, その原因として指摘し得よう。 に民主的家族に馴染めない事 と経済的に低じ 結. 語. 以上述べてきた所により, 我が国家長制家族組織の原理の究明と戦後における変化の過程をみ てきた。 法律は個人主義, 自由主義, 平等主義に立脚せる家族の形成を目指しているとは言え, 家 族成員の意識, 実生活をみれば, 依然として家族主義が根強く支配していて, 変化の過程は緩慢で ある。 これは家族の中で個人の生活が中心となってきているが, 同時に他の個人の人格を尊重する と言う正しい意味の個人主義が育成されていないために, 一方で一部の個人化家族が崩壊の危機に ある反面, 他方では依然として牢固として抜き難い縦に繋がる 「家」 を中心とし, その中に権力者. が座り, 生活面に強い共同化が要請されるからである。 尤も家族の性格として, 極端なる個人主義, 自由主義的態度行動は, 家族を分解, 崩壊に導く危険性があるので, 家族内でまとま りを保ってい. く事は必要である。 然しそのまとまり方が権威, 恭順関係に基礎づけられて 「家」 に帰一していく 形は望ま しくなく, 飽くまで各個人の意志が充分尊重され, 民主的に話合いの機会が持たれ, 家族 間 で 絶え ざる コ ミ ュ ニ ケ ー ショ ン が な さ れね ば な ら な い。 現 状 で は 都 市 家 族 の 一 部 を 除 い て は か か. る民主化の段階に達していない。 近代的小家族化傾向, 個人主義, 平等主義に基づく家族の組織化 は 望ましいが, 之へ達する道程は遠い。 従って一方では統制支配, 共同帰一,.世代連続の原理が支 配的な家族と, 他方では自由主義, 平等主義, 友愛主義の支配せる家族とが混在しているがために 日本家族の複雑さと困難性が横たわっているのである。 1 ) 本稿において使用した調査資料は, 地方的, 部分的資料は出来るだけ避け, 全国的に渡る精度の高い資料を転 載して, 分析した。 従って主として, 国立世論調査所, 労働省婦人少年局の資料が数多く使用された。 4 1頁, 142頁。 2 ) 戸 田 貞 三; 「家と家族制度」1 3 00頁。 ) 川 島 武 宜: 「イデオロギーとしての家族制度」93一1 4 2頁。 ) 戸 田 貞 三: 「家族構成」4 5 ) 戸 田 貞 三; 「前掲書」 30-3 1頁。 - 93 -. 〉 ● ・ ● ● ● ● ● ● . ′ ● . ● ▲ ● ● 、 . 、 ● ● ; ● 1 . ● く . ・ ● ・ ● ′ ノ . ノ. ヂ ● ● ● ● ●. ′. く } r ● . ・ r ‘ ー . Y. ・ ; 〉 r . ・ .. ● ● ● ● ● ● ● ′. { < ′ モ 1 ・ ● ′ ・ ′ ′ ● ● ● { ● ′.
(13) . 北 6 ) 7 ) 8 ) 9 ) 0 1 ) 11 ) 12 ) 13 ) 附記. 村. 達. 清 水 盛 光: 「家族」1 7頁。 川 島 武 宜: 「前掲書」61頁。 鈴木栄太郎: 「日本農村社会学原理」135頁。 鈴木栄太郎: 「前掲書」14 8頁, 238頁。 川 島 武 宜; 「糖婚」98頁。 戸 田 貞 三: 「家と家族制度」139頁。 鈴木栄太郎; 「前掲書」243頁。 清 水 盛 光; 「前掲書」1 08頁。 この論文は昭和32年度文部省科学研究費による研究で, 蒐集した調査資料は紙数の都合上一部削除した。. - 94 -.
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