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妬みやすい人はパフォーマンスが高いのか?

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私たちは,他人の成功を見た際に様々な感情を経 験する。たとえば,他者を羨ましく感じながら,悔 しさに近い苦痛を味わったり,自分も同じように成 功したいと奮起したりする場合もある。これらは社 会的比較によって生じる感情であり,自他の状態の 両方に焦点が当てられている(Smith, 2000)。すなわ ち,劣った自分と,優れた他者である。澤田(2006)は, 他者が自分よりも何らかの点で有利な状況を知るこ とによって生じる不快感情を妬みと定義し,これが 他者に対する誹謗中傷や粗暴さなど,攻撃的な振る 舞いにつながることを明らかにしている。また,他 者に向けられた妬みがいじめの引き金となり,いじ め加害者が被害者を追い詰める可能性についての論 考(土居・渡部, 1995)や,第二次世界大戦時のドイ ツにおいて反ユダヤ主義を助長した偏見に妬みが含 まれていたとの指摘もある(Glick, 2002)。このよう に,個人間に留まらず集団間における現象に至るま で,妬みはネガティブな結果をもたらす感情とみな されてきた3 ところが近年,ポジティブな効果を有した妬みの存 在が注目されている(Lange & Crusius, 2015; 澤田, 2010; Van de Ven, Zeelenberg, & Pieters, 2009, 2011)。た とえば, オランダ語には妬みを言い表す言葉が二通り 存在する(afgunst と benijden)。この点を踏まえて, Van de Ven et al.(2009, 2011) は, 妬 み を 悪 性 妬 み (malicious envy)と良性妬み(benign envy)に分け,

前者が優れた他者を引きずり下ろそうとする意図と関 連するのに対して,後者は自分自身を高めたり,拡散 的思考を要する課題に長く取り組んだりするなどのポ ジティブな働きがあることを示した。日本語でも,妬 みに類する言葉に「羨み」がある。広辞苑第六版(新 3 妬みの中核にあるのは,あくまで優れた他者に対する敵意 や憤りであり,ポジティブな成分は含まれないとの立場から, こうした妬みを本来の妬み(envy proper)と呼ぶ研究者も少なく ない(Miceli & Castelfranchi, 2007; Smith & Kim, 2007)。

妬みやすい人はパフォーマンスが高いのか?

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良性妬みに着目して

澤田 匡人

2 宇都宮大学 

藤井 勉

 誠信女子大学校

Do envious people show better performance?: Focusing on the function of benign envy as personality trait Masato Sawada (Utsunomiya University) and Tsutomu Fujii (Sungshin Women’s University) This study focused on the differences between two subtypes of envy known as “benign envy” and “malicious envy” as personality traits, and examined the effects of these traits on academic achievement. Two hundred fifty-one university students participated in the study. Both benign envy and malicious envy were found to be independent as also found in a previous study by Lange & Crusius (2015), and a high criterion-related validity was revealed by an association with characteristic variables such as dispositional envy and self-esteem. The students with higher levels of benign envy were found to set goals higher, and as a result, achieved higher levels of academic performance. In contrast, no such effect was found for malicious envy. The importance of focusing more attention on the positive aspects of the emotion of envy is discussed.

Key words: benign envy, malicious envy, performance.

The Japanese Journal of Psychology

2016, Vol. 87, No. 2, pp. 198–204

J-STAGE Advanced published date: March 10, 2016, doi.org/10.4992/jjpsy.87.15316

Correspondence concerning this article should be sent to: Masato Sawada, Faculty of Education, Utsunomiya University, Mine, Utsunomiya 321-8505, Japan. (E-mail: [email protected]

1 本研究は,科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金・ 基盤研究(C),課題番号 26380867)の助成を受けた。 2 本論文の作成にあたり,金綱 知征先生(甲子園大学)から ご助力を得ました。ここに記して謝意を表します。

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村,2008)によれば,羨むとは「人の様子を見て,そ の人のようにありたいと思う」状態を指すのに対し, 妬むとは「うらやみ憎む」ことを意味する。この点を 鑑みると,いわゆる「羨み」は良性妬みに,「妬み」 は悪性妬みにそれぞれ該当すると考えられる。そこで 本稿では,このような分類を妬みのサブタイプと呼び (澤田, 2010),妬みのポジティブな側面について,良 性妬みの機能に着目して検討する。 これまでの研究では,特定の場面に際して妬み感情 をどの程度経験するかを問う形式が多い(Cohen-Charash, 2009; 澤田, 2006; Van de Ven et al., 2011)。た とえば,Van de Ven et al.(2011)は,架空の大学生が 優れた成績を収めたという記事を読ませて社会的比較 を促し,実験参加者に羨みや妬みの程度を回答させて いる。こうした手法は,シナリオさえ用意できれば容 易に実施できる反面,当該場面で扱われた対象や領域 が回答者にとって重要か否かによって結果が左右され やすく(澤田・新井, 2002),社会的望ましさの影響 も避けられない(Bers & Rodin, 1984)。そのため,日 常的に感じている妬みや,妬みによる振る舞いを首尾 よく測定できない可能性がある。 一方,パーソナリティとしての妬み,いわゆる「妬 みやすさ」を測定する尺度もいくつか開発されている。 たとえば,社会的望ましさの混入を極力排除するため に,妬み(envy)という言葉を意図的に用いずに作成 された尺度(York Enviousness Scale:以下 YES とする) がある(Gold, 1996)。YES は,他者が優れているこ とを見過ごさない態度を一貫して測定する単因子構造 の尺度であり,良性・悪性の弁別はできない。Smith, Parrott, Diener, Hoyle, & Kim(1999)の妬み傾向尺度 (Dispositional Envy Scale: 以下 DES とする)も,YES と同じく単因子構造であるが,妬みの強さや経験頻度 をそのまま尋ねる項目が含まれている。しかし,回答 者が妬みという言葉のニュアンスをどう捉えるかによ り解釈が大きく異なる可能性がある上に,項目内容の 大半は悪性妬みに相当するものだった。

このような状況の中で,Lange & Crusius(2015)は, 妬みのパーソナリティにも良性・悪性というサブタ イプがあると想定し,両方の抱きやすさを同時に測 定可能とする Benign and Malicious envy Scale(以下 BeMaS とする)を作成した。彼らは,この尺度を用 いて良性・悪性妬みと行動指標との関連を検討し, 良性妬みを抱きやすい者は,マラソン競技会に参加 する前に,目標を高く(走行に要する時間を短く) 設定し,実際の成績(平均時速)も良好になること を明らかにした。しかし,悪性妬みと目標や成績は 関連していなかった。 本研究の目的 他者のパフォーマンスを前提として 生じる感情(妬みや蔑みなど)は,自己の達成に関連 し た 感 情 と も 重 な り 合 う 部 分 が 多 い(Pekrun & Stephens, 2010)。他者の成功が自分の失敗を際立たせ る場合もあれば,その逆も想定されるためである。し かし,これまでの良性妬みによるポジティブな効果は, 他者のパフォーマンスが必ずしも明らかではない状況 下で検証されてきた(Lange & Crusius, 2015; Van de Ven et al., 2011)。Lange & Crusius(2015)がパフォー マンスの指標としたマラソンは,一定のペースを保持 しながら完走を目指す持久走の一種である。競技会に 参加する以上は,他の走者を意識せざるをえない。し かし,マラソンは社会的比較を強いられながら達成す るというよりは,個人内で設定された目標(完走時間 など)の達成に主眼が置かれる課題ともみなせる。目 標を高く掲げれば掲げるほど,日々の鍛練を必要とす るため,その達成は一朝一夕にはいかなくなる。本研 究では,達成までにある程度の持続的な努力を要する 課題として,学業成績を左右する試験の得点に着目す る。 はたして,学業に関わる試験においても,マラソン のような競技と同様に,良性妬みが目標を高めたり, 優れた成績に結びついたりするだろうか。小中学生を 対象にした青木・中島(2011)の調査では,妬みやす さがパフォーマンスに関連した目標を高めることが報 告されている。調査対象者に対し,プロや習い事の先 生,家族,クラスの中に憧れたりすごいと思ったりす る人物がいるかを尋ねたところ,そうした人物があま り思い当たらなかった者に限り,妬みやすさがテスト や発表会などで良い成績を収めたいなどの目標を高め ていた。しかし,この研究では,実際の成績が測定さ れておらず,妬みやすさの指標も良性・悪性に分けら れていない。そこで本研究では,良性妬みの抱きやす さが試験の目標や実際の成績を高めるか否かについ て,大学生を対象に検討する。 本論文の構成は以下のとおりである。まず,パーソ ナリティとしての良性・悪性妬みを測定するのに有効 な尺度である Lange & Crusius(2015)の BeMaS を翻 訳し,尺度の構造や内的一貫性,基準関連妥当性など の検討を行う。続いて,良性・悪性妬み傾向が,大学 生の学業場面において個人が自ら設定した目標得点と 試験得点に及ぼす影響を検討する。 方  法 調査参加者 関東圏の国立大学において教養科目を 履修する大学生 251 名が調査に参加した。回答に不備 が見られた 11 名を除く 240 名(女性 103 名,男性 137 名)を分析対象とした。平均年齢は 18.60 歳(SD = 0.97)であった。 材料 本研究では以下の尺度から構成された質問紙 を使用した。 日本語版 BeMaS 特性としての良性・悪性妬みを

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BeMaS の全 10 項目を翻訳して使用した4。翻訳にあ たっては原著者から承諾を得た後に,第 1,第 2 著者, および本研究に利害関係のない心理学を専門とする大 学教員の 3 名で並行して翻訳を行い,日本語版の候補 を絞った。続いて,英文校閲会社によって英語に逆翻 訳された全項目について,原著者に原義と相違がない かの確認を求めた。必要に応じて上記の作業を繰り返 し,最終的に日本語版 BeMaS 原案を作成した5。「1: 全 くあてはまらない─ 6: とてもあてはまる」の 6 件法 で回答を求めた。 妬み傾向尺度(DES) 日本語版 BeMaS との関連

を検討するため,Smith et al. (1999) の DES(8 項目) を澤田・新井(2002)が翻訳したものを使用した。澤 田・新井(2002)の尺度は児童・生徒用であったため, 原義を損なわないよう表現を適宜変更し,大学生にも 適用可能なものに改めた。「1: あてはまらない─ 5: あ てはまる」の 5 件法で回答を求めた。 自尊感情尺度 従来の研究では,悪性妬みに相当す る妬みと自尊感情との間に一貫して負の相関が報告さ れており(Smith et al., 1999; 澤田, 2008),自尊感情は BeMaS の悪性妬みとも負の相関を示すことが予想さ れる。この点を確かめるために,Rosenberg(1965) の尺度を桜井(2000)が翻訳した自尊感情尺度 10 項 目を用いた。「1: いいえ─ 4: はい」の 4 件法で回答を 求めた。 手続き 調査は 2015 年 7 月中旬から下旬にかけて, 大学の講義時間の一部を使用し,2 回に分けて行われ た。1 回目の調査では,参加者に対し日本語版 BeMaS および DES,自尊感情尺度への回答を求めた。これ らの尺度への回答を求めた後,「1 週間後に実施する 試験(25 点満点)で何点を目標にするか」を尋ね, 所定の用紙に数字で記入を求めた。この試験は授業内 容に関する選択回答形式の問題であることを説明し, いくつかの練習問題を呈示してから,目標を設定して もらった。 なお,調査の実施にあたっては,試験を除く本調査 への回答や設定した目標得点は受講している講義の成 績とは一切の関連がなく,個人が特定されて不利益を 4 邦訳されている代表的な妬み尺度に DES(Smith et al., 1999) がある(澤田・新井, 2002)。澤田・新井(2002)は,調査参加 者が小中学生であることを考慮し,“envy”の訳語に「妬み」で はなく「羨み」を用いている。また,「羨み」は,小学生でも理 解可能な感情語であるとの報告(澤田,2006),敵意的なニュア ンスが含まれない妬みであるとの見解(澤田,2010)なども踏 まえ,本研究では,項目中の“envy”の訳語に「羨み」をあてた。 5 原著者から翻訳許可を経て,逆翻訳版が原義と異なると指 摘を受けた項目については,再翻訳作業と逆翻訳の呈示を繰り 返し,最終的に全項目が原尺度のワーディングに沿っていると の 承 認 を 得 た(Personal communication, 2015 年 6 月 4 日 許 可, 2015 年 7 月 4 日承認)。 被ることもないと教示した。調査参加者が回答に要し た時間は 20 分程度であった。 1 週間後の 2 回目の調査では,25 問からなる試験を 実施した。実施に先立ち,当該の試験得点が成績に反 映されると教示した。回答のタイミングを等しくする ために,問題を講義室の前方にあるスクリーンに呈示 した。1 問につき呈示時間は 45 秒で,試験に要した 時間は 18 分程度であった6 結  果 日本語版 BeMaS の構造 日本語版 BeMaS 原案の

因子構造を確認するために,Lange & Crusius(2015) にならい探索的因子分析(最尤法・直接オブリミン回 転)を実施した。固有値の減衰状況(3.159, 2.759, 0.851 …)から,2 因子を抽出した。各因子の項目を確認す ると,それぞれ Lange & Crusius(2015)と一致する 因子パターン(良性・悪性妬みについて各 5 項目)で あったが,因子間相関は .04 であり極めて低かった。 そのため,斜交回転よりも直交回転による処理が望ま しいと判断し,再度因子分析(最尤法・バリマックス 回転)を実施した。その結果,Lange & Crusius(2015) と同様の因子構造が再度得られた。項目と因子負荷量 を Table 1 に示す。 続いて,2 因子モデルが妥当か否かを検証するため, 確認的因子分析を実施した。良性妬みと悪性妬みの 2 つの潜在変数を仮定し,探索的因子分析の結果をもと にモデルを構築した(これを 2 因子モデルとする)。 また,Lange & Crusius(2015)と同様,良性・悪性妬 みをまとめた 1 因子モデルも構築し,比較の対象とし た。

2 因子モデルの適合度指標は χ2 = 62.806, p = .002, CFI = .966, GFI = .948, AGFI = .917, AIC = 104.806, RMSEA = .060(90%CI [.036 ─ .082])であり,デー タの共分散構造をよく説明していた。一方,1 因子モ デルの適合度は χ2 = 407.633, p = .000, CFI = .558, GFI = .692, AGFI = .516, AIC = 447.633, RMSEA = .211(90%CI [.193 ─ .230])であり,2 因子モデルと比して適合度 が著しく低下するため,2 因子モデルの採用が妥当と 判断した。 各尺度間の関連 自尊感情尺度における逆転項目の 処理を行った上で,各尺度についても得点が高いほど 尺度名の傾向が強くなるよう合算平均得点を求めた。 また,目標を記入しなかったか,もしくは試験を受験 しなかった者(9 名)を除いた 231 名を以降の分析対 6 全 25 問の平均正答率は 68.06%(SD = 19.10)であった。こ の中で 1 問のみ,四者択一におけるチャンスレベル (25%)に近 く,平均正答率よりも 2SD 以上正答率が低い問題が見られたの で(正答率 26.14%),この問題を除いて以降の分析を実施した。 24 問の平均正答率は 69.81%(SD = 17.36)であった。

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象とし,各尺度について,記述統計量および相関係数 を求めた(Table 2)。各尺度の信頼性の推定値として 算出した α 係数は,いずれも .78 を超えており,一定 の内的一貫性を有していると判断した。良性妬みは自 尊感情との正の相関が有意であり(r = .26, p < .001), 1 週間後の試験で目標とする点数との相関が有意で あった(r = .16, p = . 015)。悪性妬みは自尊感情との 負の相関が有意であり(r = –.21, p = .001),DES とは 正の相関が有意であった(r = .65, p < .001)。良性妬 みと悪性妬みの相関は有意ではなかった(r = .00, p = .990)。なお,全ての尺度に有意な性差は認められな かったが,試験得点のみ,女性(M = 16.49, SD = 3.20) の方が男性(M = 17.28, SD = 3.64)より高い傾向にあっ た(t (229) = 1.74, p = .083, r = .11)。 良性・悪性妬みと試験得点との関連 続いて,良性 妬みが試験の目標得点に正の影響を与え,目標得点が Table 1 日本語版 BeMaS の因子分析結果 (N = 240) No 項目 F1 F2 F1:悪性妬み 6 羨ましく思える人たちに対して,私は悪意を感じる

(I feel ill will toward people I envy.) .824 –.058 10 他の人たちの成果を見ると,私はムカついてしまう

(Seeing other people’s achievements makes me resent them.) .779 .064 8 羨ましいと思う気持ちは,私にその人を嫌いにさせる

(Envious feelings cause me to dislike the other person.)

.755 .048

2 優れた人たちが有利さを失うように,私は願う (I wish that superior people lose their advantage.)

.682 .041

5 もし私が欲しいと思っているものを持っている人たちがいたら,私はそれを取り上げたいと思う (If other people have something that I want for myself, I wish to take it away from them.)

.617 –.019 F2:良性妬み

7 他の人たちの優れた成果に,私も追いつこうと努力する

(I strive to reach other people’s superior achievements.) .024

.816

4 他人を羨ましがることは,私にとって目標を達成する刺激になる

(Envying others motivates me to accomplish my goals.) –.031 .726 3 もし他の人が私よりも優れていると気付いたら,自分をもっと高めようとする

(If I notice that another person is better than me, I try to improve myself.) –.050 .725 1 他人を羨ましいと思うとき,私は今後どうすれば同じように成功出来るかと考える

(When I envy others, I focus on how I can become equally successful in the future.) .046 .597 9 もし誰かに優れた資質や成果,または持ち物があるなら,私はそれを自力で手に入れようとする

(If someone has superior qualities, achievements, or possessions, I try to attain them for myself.) .049 .436 Table 2 各変数間の相関係数および記述統計量(N = 231) 1 2 3 4 5 6 7 1 良性妬み - .00 –.07 .16 * –.03 .00 .26 ** 2 悪性妬み - –.11 –.06 .05 .65 ** –.21 ** 3 年齢 - –.04 –.02 –.09 –.03 4 目標得点 - .13 * –.07 .12 5 試験得点 - .09 –.09 6 DES - –.57 ** 7 自尊感情 - α .85 .78 - - - .86 .84 M 4.08 2.54 18.61 20.74 16.84 2.66 2.56 SD 0.87 1.03 0.98 2.62 3.42 0.86 0.54 * p < .05, ** p < .01

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実 際 の 得 点 に も 正 の 影 響 を 与 え る か を 検 討 し た (Figure 1)。Lange & Crusius(2015)にならったモデ

ルを構築し,パス解析を行った7。モデルの適合度指標

は χ2 = 1.243, p = .743, CFI = 1.000, GFI = .998, AGFI = .987, RMSEA = .000(90%CI [.000 ─ .078])であり,デー タの共分散構造をよく説明していた。良性妬みは試験 の目標得点への正の影響が有意であり(b* = .16, p = .015),目標得点から実際の試験得点への影響も有意 であった(b* = .13, p = .046)。それ以外のパス係数や 相関係数はいずれも有意ではなかった。 考  察 日 本 語 版 BeMaS の 信 頼 性・ 妥 当 性  日 本 語 版

BeMaS について,因子分析の結果,Lange & Crusius (2015)と同様の尺度構成が妥当であることが示され た。適合度指標は 1 因子モデルに比して 2 因子モデル が良好であり,本邦においても良性・悪性妬みという 2 下位尺度からなる BeMaS が妥当であると判断した。 また,先行研究と同様に,両尺度の相関係数はきわめ て低く,同じ妬みでありながらも両者は独立した概念 であることも示唆された。 続いて,日本語版 BeMaS と他の変数との関連を見 ると,悪性妬みは DES とは有意な正の相関を示し, 自尊感情とは有意な負の相関を示した。一方,良性妬 みは DES とは無相関であり,自尊感情とは有意な正 の相関を示した。これらは予測と一致する相関であり, 日本語版 BeMaS の基準関連妥当性を示すものである。 したがって,本邦でも使用可能な日本語版が上首尾に 作成されたといえるだろう。しかしながら,良性・悪 性妬みを特性的な概念とみなすのであれば,再検査信 頼性の確認は必須であり,この点について本研究では 信頼性が十分に検証されたとは言いがたい。今後は再 検査を実施し,日本語版 BeMaS の安定性を確認する ことが課題として挙げられる。 良性・悪性妬みと試験得点との関連 良性妬みは目 標得点に正の影響を及ぼし,試験に先立ち設定された 目標得点は試験得点に正の影響を及ぼしていた。その 一方で,悪性妬みは目標得点には有意な影響を及ぼし ておらず,この結果は Lange & Crusius(2015)と一 致するものである。すなわち,学業場面を対象とした 場合でも,説明率は低かったものの,良性妬みが目標 7 良性妬みと試験得点との間には有意な相関はなく,解析の 前提を満たしていなかったので媒介分析は実施せず,Lange & Crusius(2015)の付録情報に記載されている解析を実施した。 彼らの解析では,マラソンの種別(ハーフかフルか),年齢,性 別が統制されていた。本研究では試験形態の別はなかったが, その他は同一もしくは類似した指標を用いた点を考慮し,基本 的には彼らの手続きにならった。すなわち,調査参加者の年齢 と性別を統制した上で,良性妬みが目標得点の設定を介して, 試験得点を高めるか否かを検討した。 を高め,結果として良好な成績をもたらす可能性が示 された。 ただし,本研究では,単一科目の試験得点を指標と したに過ぎず,良性妬みが首尾良い課題達成とつな が っ た か ど う か は 判 然 と し な い。Lange & Crusius (2015)では,良性妬みと課題の遂行(マラソンの走 行速度)との間に有意な関連が認められたものの,本 研究では同様の結果は得られなかった。この原因とし て,本研究で扱った課題と,持続的な鍛練を要する課 題との相違点が挙げられる。本研究ではこれまで繰り 返し受けた経験のないテストについて,1 週間前に目 標を設定させるという手続きを取った。そのため,成 績を向上させる手立てや指針を得にくく,良性妬みが 十分に機能しなかった可能性がある。今後は,中長期 的な目標を設定に基づいて,その継続・持続が完遂の 指標となる課題(計画的な減量やスキル習得など)を 用いた検討が期待される。 良性妬みの機能 これまで,妬みはネガティブな結 果をもたらす感情と考えられてきた。しかし,本研究 から,良性妬みがポジティブな効果をもたらす傍証が 得られた。すなわち,良性妬みを抱きやすい者は,学 業において目標を高く設定することで,結果として成 績も良くなるという効果である。 もちろん,本研究で得られた値は小さく,その解釈 には慎重さが求められる。しかし,こうした効果が他 者のパフォーマンスが詳らかにされていない状況下で 見られた点は意義がある。というのも,良性妬みを感 じやすい者は,必ずしも当座の妬みとは関係のない課 題のパフォーマンスが高まる可能性が示されたと考え られるためである。青木・中島(2011)では,憧れの 得点が低い者の妬みやすさが,パフォーマンスを向上 させたいという目標を高めていた。あくまで推測の域 を出ないが,仰ぎ見るような他者を意識しているとき よりも,あまり意識していないときの方が,妬みやす さを目標設定の資源として利用できるのかもしれな 良性妬み 目標得点 .03 .03 .13* .16* 試験得点 悪性妬み 年齢 性別 –.02 –.02 –.04 –.07 –.07 .07 –.10 .01 .11 .00 Figure 1. 良性・悪性妬みと目標得点,試験得点との関連。 注 )誤差変数の記載は省略した。また,性別はダミー変数とし て分析に投入した(男性 = 0,女性 = 1)。 * p < .05

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い。換言すれば,社会的比較を強いられない状況だか らこそ,普段から自分が経験している妬みとの向き合 い方,すなわちパーソナリティとしての妬みが,課題 を達成させる素地となり得ると推察できる。この解釈 は,他者のパフォーマンスがわからない中で実施され る試験の目標得点が,良性妬みによって高められた本 研究の結果とも矛盾しない。こうした良性妬みのポジ ティブな働きに着目するならば,妬みを「忌むべき感 情」として排除するのではなく,学業成績の向上を目 指した妬みの有効活用が期待できる。 ただし,妬みはあくまで社会的比較に基づく感情で ある以上,他者のパフォーマンスが参照可能な状況に おいても,良性妬みに同様の効果が認められるかを確 認しておく必要があるだろう。良性妬みが競争的な課 題とそうでない課題のいずれにおいて,より効果を発 揮するかを明らかにするのは,日本語版 BeMaS を用 いて検証されるべき研究の重要な方向性といえよう。 ところで,悪性妬みより良性妬みの方が好ましいか らといって,いたずらに悪性を良性に変えようとする 取り組みは功を奏しないだろう。先行研究や本研究の 結果から,両者は共変しないと考えられるためである。 むしろ,サブタイプの背景にある要因を考慮すべきか もしれない。Van de Ven, Zeelenberg, & Pieters(2012)は, 相手の幸せが相応しいと見なされると良性妬みが生じ るのに対して,相応しくないと判断された場合には悪 性妬みが生じやすいことを明らかにしている。これは 他者の幸福に対する相応性(deservingness)と呼ばれ, 良性・悪性の違いをもたらす主たる要因と考えられて いる(Van de Ven et al., 2011, 2012)。いずれの妬みを 抱きやすいかは,こうした状況の解釈や認知的偏りに 起因している可能性もある。今後は,いかに相応性が 見積もられるのかを加味した検討も求められる。 社会的望ましさの影響 Table 1 に示されているよ うに,良性妬みの平均値が高めだったのに対し,悪性 妬みは控え目な回答が多く,両者に違いがみられた。 このような結果が得られた背景に,社会的望ましさの 影響が想定される。本研究の成績は女性の方が高い傾 向にあった。周囲に良い印象を与えようとする社会的 望ましさは,小学生でも大学生でも女性に顕著である と報告されており(桜井, 1984; 谷, 2008),本研究の 課題への取り組みにも,こうした傾向が混入していた 可能性は否定できない。また,日本語版 BeMaS の項 目内容から判断できる社会的望ましさとの関連は,良 性妬みとは正の,悪性妬みとは負の相関がそれぞれ想 定される。もしそうであったならば,社会的望ましさ の調整を受けて両者の影響力が相殺されてしまい,本 研究のように良性妬みと試験得点との関連が見られな かったり,目標得点から試験得点への値が低かったり したのではないかと推察できる。 こうした問題に対処するために,今後は日本語版 BeMaS が有する社会的望ましさを考慮した検討が求 められる。たとえば,悪性妬みよりもネガティブなニュ アンスが含まれる復讐心の抱きやすさを検討した Sawada & Hayama(2012)では,復讐心と社会的望ま しさとの間に中程度の正の相関が認められたことを踏 まえ,社会的望ましさを統制した偏相関をもとに他の 変数との関連を検討している。このように,あらかじ め社会的望ましさの指標を併用して解析の精度を高め るなど,回答そのものに影響を与える要因を含めた精 査が課題といえる。 引 用 文 献 青木 多寿子・中島 恭平(2011).児童・生徒の向上心, 目標志向性に及ぼす「あこがれ」の影響 学習開 発学研究, 4, 67–73.

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