指定管理者制度の期間設定等が与える住民サービス及びコストへの
影響分析
〈 要 旨 〉 平 成 15 年の地方自治法の一部改正により、公の施設の管理 について、 民間事業者も 参 入 可能 と した 指定 管 理者 制 度が 導 入さ れた 。しか し、民 間資 源等 の 活用メ リ ット が あ る 一 方、不適 切 な 運 用によ り 、ノ ウハ ウ の習 得・蓄 積 等が 困 難と なり 、その メ リッ ト が 十 分 に活 か しき れて い ない こ とが 懸 念さ れて い る 。そ こ で 、本 稿 では 、都道 府 県立 の公 共 ホ ール と 公園 を対 象 に、指 定管 理 期間 及び 指 定管 理 者の イ ンセ ンテ ィ ブに 関 わる 契約 内 容 が 、施 設 利用 者数 と指 定 管理 料 へ与 える 影 響を 実 証分 析 した 。その 結果 、指 定管 理 期 間 は、公共 ホー ル の施設 利 用者 数 に 有 意な 影 響を 与 え て い るこ とが 分 かっ た。さ らに 、 最 適 な指 定 管理 期間 は 、大 規 模な 施 設ほ ど長 く なる こ とも 分 かっ た 。一 方、利 用 料金 制 度 と 評価 制 度 は 、施 設 特性 に 区別 な く 施 設利 用 者数 に 正の 有 意な 影響 を 与え て いる こと が 確 認で き た。2012 年 (平成 24 年)2 月
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム
MJU11014 高本 直人
目 次 1. は じ め に ... 1 2. 指 定 管 理 者 制 度 に つ い て ... 2 2.1 指 定 管 理 者 制 度 と は
...
2 2.2 公 の 施 設 に 関 す る こ れ ま で の 地 方 自 治 法 の 改 正...
3 2.3 管 理 委 託 制 度 と 指 定 管 理 制 度 と の 比 較...
4 2.4 指 定 管 理 者 制 度 の 導 入 状 況...
4 3. 指 定 管 理 者 制 度 の 期 間 設 定 等 が 与 え る 影 響 ( 理 論 分 析 ) ... 7 4. 指 定 管 理 者 制 度 の 期 間 設 定 等 が 与 え る 影 響 ( 実 証 分 析 ) ... 8 4.1 指 定 管 理 期 間 が 与 え る 施 設 利 用 者 数 と 指 定 管 理 料 へ の 施 設 特 性 毎 の 影 響 分 析..
8 4.2 施 設規 模 の違 いによ る 最適 な 指定 管理 期 間へ の 影響 分 析...
13 4.3 指 定 管理 者制 度 の諸 制 度が 与 える 施設 利 用者 数 への 影 響分 析...
14 5. 考 察 お よ び 政 策 提 言 ... 16 6. 今 後 の 課 題 ... 17 謝 辞 ... 18 参 考 文献 ... 19- 1 - 1. は じ め に 平 成 15 年の地方自治法の一部改正により 、 公の施設の管理を限られた法人や団体に 委 託 する こ とが でき る 従来 の 制度( 管 理委 託制 度)に 代 わり 、広 く民 間事業 者 も参 入 可 能 と した 指 定管 理者 制 度が 導 入さ れ た。公 の 施設と は 、地 方自 治法 第 244 条 1 項のとお り 「 住 民 の 福 祉 を 増 進 す る 目 的 を も っ て そ の 利 用 に 供 す る た め の 施 設 」 の こ と で あ り 、 具 体 的に は 、地 方公 共団体 が 整備 す る 体 育館 、文化 施 設 、公園 、保 育 所など 住 民が 利 用 す る 様々 な 施設 が そ れ に該 当 する 。総 務省 が 、平成 21 年 10 月に行った「公の施設の指 定 管 理者 制 度の 導入 状 況等 に 関す る 調査 結果 」によ る と 、指定 管理 者 制度が 導 入さ れ て い る 施設 の 数は 、 70,022 施設(平成 21 年 4 月現在)で、 前回の調査(平成 18 年 9 月 ) か ら 、 8,457 施設増加し、 今後においても、 官業の民間開放の流れから 、そ の 増加傾向 は 継 続す る であ ろう 。 し か し 、制 度 導入 に当 たっ て は 、民 間 資源 等を 活用 で きる メ リッ トが あ る一 方 、指定 管 理 期 間 の 設 定 や 利 用 料 金 制 度1導 入 等 と い っ た 制 度 の 運 用 如 何 に よ っ て は 、 ノ ウ ハ ウ の 習 得・蓄 積・共 有 、人材 確 保・育 成 、施 設利 用者 と の信 頼 関係 の構 築 、長 期 的な 視 点 に 立 った 施 設運 営・事 業実 施 等が 困 難と なり 、その メ リッ ト が十 分に 活 かし き れず 、制 度 目 的 で あ る 、「 住 民 サ ー ビ ス の 向 上 」 と 「 経 費 の 削 減 」 が 図 れ て い な い こ と が 懸 念さ れ る 。ここ で 重要 なポ イン ト は 、指 定 管理 者制 度の 導 入に 際 して 、地方 自治 法 では 、「 目 的 を 効果 的 に達 成す る ため 必 要が あ ると 認め る とき は」と 書か れて い る点で あ る。先に 述 べ たよ う な指 定管 理 者制 度 導入 を めぐ る 諸 問 題を 抱 える 中 で 、本 来 、この 制 度は 、施 設 目 的を 軽 視し 放棄 す るこ と を許 容 する もの で はな く 、そ の施 設 目 的 を効果 的・効 率的 に 達 成す る ため に活 用 され る べき で あり 、当 面の財 政 支出 を 削減 させ る ため の みに 、「 安 か ろ う悪 か ろう 」で 導 入す る こと は 、地 方自 治 法の 趣 旨に 反 する もの で ある 。 指 定 管理 者 制度 に関 す る先 行 研究 と して は 、前 中・ 野口 (2005)がアンケート調査 に 基 づ き、制 度導 入後 の サービ ス の向 上 及び コス ト 低下 を 示し 、内 閣府 政 策統括 官 (2008)も 、 制 度 導入 に よる 支出 削 減効 果 と増 収 効果 を示 し てい る。そ の他、制度 導 入に よ るコ スト 削 減 効 果 を 分 析 し た 坂 田 (2006)や みずほ 総合研 究所 (2006)等があ る。 先 行研 究で は 、 主 に 、「 指 定 管 理 者 制 度 自 体 」 の 導 入 効 果 を 分 析 し て い る も の が 多 く 、 導 入 効 果 も 、 コス ト 面 に偏 り 、そ の分 析 方法 も 指定 管 理者 への ア ンケ ー ト 等 を 用い るな ど 統計 的 な分 析は 尐 な い。 そ こ で、本稿 で は、制度運 用 にあ た り 、先に 述べた 問 題点 と も大 きく 関 連す る「指 定 管 理 期間 の 設定 」及び「指 定 後の 指 定管 理者 の モラ ル ハザ ー ドを 防ぐ た めの 諸 制度( 利 用 料 金 制 度 と 評 価 制 度 ) の 活 用 」 に 着 目 し 、 都 道 府 県 立 の 公 共 ホ ー ル と 公 園 を 対 象 に、 指 定 管理 期 間が 与え る 施設 利 用者 数 と指 定管 理 料 へ の 施設 特 性毎 の 影 響 、施 設 規模 の違 い に よる 最 適な 指定 管 理期 間 への 影 響、指定 管 理者 制 度の 諸 制度 が与 え る 施 設 利用 者数 1 出 井 信 夫 (2006)P 7、 8「指 定管理者 の自主的 な経営努 力を発揮 しやす く すること 、自治体 の 会 計 事 務 の 効 率 化 を 図 る と い う 趣 旨 か ら 導 入 さ れ た 制 度 で あ り 、利 用 料 金 制 度 を 選 択 す る こ と で 、 指 定 管 理 者 が 直 接 利 用 料 金 を 受 け 取 り 、 自 ら の 収 入 と し て 扱 え る 。」
- 2 - へ の 影 響 に つ い て 、 定 量的 な デ ー タ を 用 い て 、 最尐 二 乗 法 (OLS)に よ り 実 証分析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、「 指 定 管 理 期 間 」 と 「 施 設 規 模 」 は 、 公 共 ホ ー ル の 施 設 利 用 者 数 に 有意 な 影 響を 与 え、そ の 関係は 4 年を 頂 点に 上に 凸 型の 曲 線を 描 き、大 規 模な 施 設 ほど 長 い 指 定 管理 期 間が 必要 で ある こ と が 確 認で きた 。加え て 、「 利用 料金 制 度 」と「 評 価 制度 」 も 、公共 ホ ール と公 園 の両 施 設利 用 者数 に正 の 有意 な 影響 を 与え てい る こと が 確認 でき た 。分 析を 踏 まえ 、指定管 理 者制 度 の運 用に 当 たり 、施 設特 性 と施 設規 模に 配 慮 し た 指 定 管 理期 間 の設 定と 、指定 後 の 指 定 管理 者の モ ラル ハ ザー ド を防 ぐ た め の諸 制 度( 利用 料 金 制度 と 評価 制度 ) の積 極 的な 活 用を 提言 し た。 本 稿 の構 成 は次 のと お りで あ る 。まず 、第 2 章で制度の内容や導入状況など 制度の現 状 を 概観 し た。次 に、第 3 章では指定管理者制度の期間設定等が与える 影響 について理 論 分 析を 行 い 、第 4 章では それについての実証分析 を行った 。最後に 、第 5 章 で 分析 結 果 に 対す る 考察 と政 策 提言 を 行い 、 第 6 章で今後の課題を示した 。 2. 指 定 管 理 者 制 度 に つ い て この 章で は 、 指 定管 理者 制 度の 現 状に つい て 概観 す る。 ま ず、 2.1 節 で制 度 の内容を 説 明 し、次 に 、2.2 節 で公の施設に関するこれまでの 地方自治法の改正 を、2.3 節で これ ま で の管 理 委託 制度 と の 比 較 を行 い 、最 後に 、 2.4 節 で 制度の導入状況を 示 す 。 2.1 指 定 管 理 者 制 度 と は 指 定 管理 者 制度 とは 、 平成 15 年の地方自治法の一部改正によって導入された「公の 施 設」の 管理 運営 の 方式の こ とで あ り 、従 来、公の 施 設の 管 理に つい て、地 方 公共 団 体 の 管 理権 限 下で 、公 共 団体( 土地 改 良区 等 )、公共 的 団体( 農協 、自治 会等 )、地方 公共 団 体 の出 資 法人 ( 1/2 以上出資等)に限定されていたが 、 改正後は、 地方公共団体の指 定 を 受け た 「指 定管 理 者」 に 管理 を 代行 させ る こと が 可能 と なっ た。 制 度 導入 に あた って は 、バ ブ ル経 済 崩壊 後の 経 済低 迷 によ る 膨大 な財 政 赤字 を 背景に 、 総 合 規制 改 革会 議や 地 方分 権 改革 推 進会 議で の 議論 等 を踏 ま え 、民間 事 業者 に おい ても 十 分 なサ ー ビス 提供 能 力を 備 えて い るも のが 増 加し て いる こ と 、多様 化 する 住 民ニ ーズ に よ り効 果 的・効 率 的に対 応 する た めに は 、民間事 業 者の 有 する 資源 や ノウ ハ ウ等 を 活 用 す るこ と が有 効で あ る と の 考え 方 に基 づき 、「住 民 サー ビ スの 向上 」と「 経 費の 削 減」 を 目 的に 、官業 の 民間 開放( 規 制緩 和 )が 促進 され 、地 域の 活性 化 、行 政改 革 の推 進 等 が 期 待さ れ てい る。 指 定 管理 者 とな りう る 者の 範 囲は 、地 方自 治 法上特 段 の制 限 はな く 、株式会 社 やN P O 法 人等 の 民間 事業 者(個 人 を除 く)に も広 く門戸 が 開か れ たも のと な った 。また 、行 政 処 分の 一 つで ある「施設 の 使用 許 可」を行 わせる こ と 、さら に は 、利用料 金 につ い て も 、 当 該 地 方 公 共 団 体 の 承 認 を 受 け る こ と が 前 提 に は な る が 、 指 定 管 理 者 に 決 定 さ せ、 収 入 とし て 収受 させ る こと( 利 用料 金 制度 )も可能 な 制度 と なっ てい る 。指 定 管理 者 制 度 の 全体 の 仕組 みと 地 方自 治 法と の 関係 は、 表 2.1 のとおりである。
- 3 - な お 、「 指 定管 理期 間 」につ い ては 、地 方 自治 法上は「 期間 を定 め て行 うもの と する 。」 と 規 定さ れ てい るだ け で 、特 に 、基 準 等の 規定 はな く 、施設 の種 類 、目 的 、機 能 等を 勘 案 し て、 当 該地 方公 共 団体 が 個々 に 設定 する こ とと な って い る 。 表 2.1 指定管理者制度の 仕組み と地方自治法との関係2 項 目 地方自治法該当条文 (1) 平等利用の確保 法第244条 施設の管理にあたっては、住民の平等利用の確保、差別的取扱いの 禁止が義務付けられている。 第2、3項 (2) 条例の制定 法第244条の2 指定の手続き、指定管理者に行わせる管理の基準及び業務の範囲は あらかじめ条例で定めることとされている。 第4項 (3) 指定の議決 法第244条の2 指定管理者の指定を行うときは、指定管理者に管理を行わせようと する施設の名称、指定の期間等について、あらかじめ議会の議決を経 なければならない。 第6項 (4) 事業報告 法第244条の2 指定管理者は、毎年度終了後、地方公共団体に業務報告書を提出し なければならない。 第7項 (5) 指定の取消し等 法第244条の2 地方公共団体は、指定管理者に対し、適正な管理を行うために必要 な調査や指示等を行い、その指示に従わない場合等には、指定の取消 しや業務の停止を命じることができる。 第10、11項 (6) 権限の範囲 法第231条の3 指定管理者は、条例の定めにより施設の使用許可を行うことが可能 であるが、使用料の強制徴収や不服申立てに対する決定、行政財産の 目的外使用許可等の行政処分権限を代行することはできない。 法第244条の4 法第238条の4 第4項 2.2 公 の 施 設 に 関 す る こ れ ま で の 地 方 自 治 法 の 改 正 地 方 自治 法 は第 二次 世 界大 戦 後の 1947 年に制定されているが 、 制定当初には公の施 設 の 概念 は なく 、その 後 、日 本 が高 度 成長 を続 ける 中 、地方 公 共団 体に 求め ら れる サ ー ビ ス も高 度 化し てく る こと と なり 、以前 から の 国ま た は公 共 団体 等の 公 共主 体 に供 用さ れ る 人的 手 段及 び物 的 施設 の 総合 体 とし ての 「 営造 物 」の 概 念を 改め て 整理 し 、 1963 年 の 改正 で 物的 施設 を 中心 と した 概 念と して 、新た に「 公の 施 設 」の 概念が 取 り入 れ ら れ た 。そ の際 に 、導 入され た のが 、管 理 委託 制度で あ り 、公の 施 設の 運営を 公 共的 団 体 等 に 委託 す るこ とが 可 能と な った 。 その 後 、 1991 年の改正で、 委託先 を地方公共団体 が 2 分 の 1 以上出資している財団 法 人や株式会社形態の第三セクター等に拡大 する とと も に 、利用 料 金制 度 を 導入 す るこ と がで きる よ うに な った 。そ れま では 、施 設 の料 金 収 入 は 地方 公 共団 体の 収 入と な って い たこ とか ら 、運 営 団体 が 利用 促進 の ため に 努力 をす る 誘 因(イ ン セン ティ ブ)を 持 たな い こと から 、料 金 収入 を 運営 主体 の 収入 と する こ と が で きる よ うに した も ので あ る。 2 出 所 : 岩 手 県 HP 資料を参 考に筆者 作成
- 4 - し か し、利用 料金 制 度の導 入 や 、運営 主体 を いわゆ る 第三 セ クタ ーに ま で拡 大 した が 、 そ れ でも 公 の施 設の 運 営が 必 ずし も 効率 的・効 果的 に 行わ れ てい ない と いう 認 識は 強く 、 そ れ が、一連 の行 政 改革の 流 れと も つな がり 、指定 管 理者 制 度が 導入 さ れる こ とと な っ た 。 2.3 管 理 委 託 制 度 と 指 定 管 理 制 度 と の 比 較 指 定 管理 者 制度 は 、以前の 管 理委 託 制度 と比 較 して 、単 な る事 務や 業 務の執 行 の委 託 で は なく 、行 政 処分 である「 指定 」を 行い 、使 用許 可 や利 用 料金 の設 定 等も 可 能と す る 自 由 度の 高 い制 度 「 管 理の 代 行」 で ある 。 表 2.2 管理委託制度と指定管理制度との比較3 項 目 管理委託制度 指定管理者制度 主体 公共団体、公共的団体、政令で定める出資法人(1/2以上出資等) 民間事業者を含む幅広い団体(個人は除く) 条例を根拠として締結される契約に基づ く具体的な管理の事務または業務の執行 の委託 「指定」(行政処分)により公の施設の 管理権限を受けた者に委任するもの 【公法上の契約関係】 【管理の代行】 設置者である地方公共団体 指定管理者 利用承認等の処分 右記に掲げた利用承認等の処分を行うこ とができない。 法的性格 公の施設の管理権限 ・個々の使用許可を行うことができる。 ・条例により定められた枠組みの中で、 地方公共団体の承認を得て利用料金を設 定できる。 2.4 指 定 管 理 者 制 度 の 導 入 状 況 総 務 省の「 公の 施設 の 指定 管 理者 制 度の 導入 状 況等 に 関す る 調査 結果( 平成 21 年 10 月 23 日)」を元に 、平 成 21 年 4 月 1 日現在 の指定管理者制度の導入状況 等を整理した。 3 出 所 : 高 松 市 資 料 を 参 考 に 筆 者 作 成 〈 概 要〉 ① 指 定管 理者 制 度の 導入 施 設数 は 、 全 国で 70,022 施設であり、前回調査(平成 18 年 9 月 2 日)から、 8,457 施設増加している。 ② 指定管理者の種別として、民間企業等の割合は約 3 割であり、前回調査から、約 1 割 増 加 し て い る 。 ③ 指定管理者制度の選定手続きについて、公募している割合は4割で、前回の調査 か ら 、約 1 割増加している。 ④ 従前の管理受託者等が引き続き指定管理者となった割合は、約 7 割である。 ⑤ 指定管理期間は、5年間が一番多く、次に多い 3 年間を合わせると、全体の約 8 割 を 占め る 。
- 5 - ① 指 定 管 理 者 制 度 が 導入 さ れ て い る 施 設 数 指定 管 理者 制度 が 導入 さ れて い る施 設数 は 、全 体 で、70,022 施設であり 、前回調査 ( 平 成 18 年 9 月 2 日 現在 : 61,565 施設 )から 、8,457 施設(対 18 年度 対比 113.7% ) の 増 加し 、 都道 府県 立 の施 設 への 導 入率 は、 58.7% である。 表 2.3 指定管理者制度が導入されている施設数 (単位:施設) 都道府県 政令指定都市 市区町村 合計 6,882 6,327 56,813 70,022 ② 指 定 管 理 者 の 種 別 指 定 管理 者 の種 別と し て、 民 間企 業 等4の 割合 は 、29.3%であり、 前回調査(平成 18 年 9 月 2 日 現 在 : 18.3% ) から 、 11.0% 増 し て い る 。 表 2.4 指定管理者の種別 区 分 株式会社 NPO法人 その他 公益社団・財団法人等一般社団・財団法人、 公共団体 公共的団体 合計 レクリエーション・ スポーツ施設 28.6 6.5 13.3 36.1 0.8 14.8 100 産業振興施設 22.6 2.6 15.1 14.5 0.4 44.8 100 基盤施設 15.6 1 14.7 42.3 0.8 25.7 100 文教施設 7.3 3.9 7.2 17.3 0.3 64 100 社会福祉施設 2.9 3.7 5 11.7 0.6 76.1 100 合計 14.8 3.3 11.1 27.5 0.6 42.6 100 (単位:%) 4 「 民 間 企 業 等 」 の 内 訳 は 、 株 式 会 社 14.8% 、特定非営 利活動法人 3.3%、そ の他 11.1% 「 そ の 他 」 の 内 訳 は 、 学 校 法 人 、 医 療 法 人 、 共 同 企 業 体 等 民 間 企 業 等 指定管理 者の種別割合
- 6 - ③ 指 定 管 理 者 の 選 定 手続 別 状 況 指定 管 理者 制度 の 選定 手 続き に つい て 、公 募で 行 って い る割 合は 、40% で 、前回の 調 査 (平 成 18 年 9 月 2 日 現 在: 29.1%)から 、10.9%増加している。 表 2.5 指定管理者の選定手続別状況 (単位:施設、%) 区分 レクリエーション・ スポーツ施設 7,259 52.8 産業振興施設 1,868 26.2 基盤施設 11,550 52.3 文教施設 3,212 23.4 社会福祉施設 4,103 30.8 合計 27,992 40 公募施設 ④ 従 前 の 管 理 受 託 者 ・指 定 管 理 者 の 継 続 状 況 従 前 の管 理 受託 者等 が 引き 続 き指 定 管理 者と な った 割 合は 、72.4%あり、その内公 募 に よる こ とな く選 定 され た 割合 は 47.2% にあたる。 表 2.6 従前の管理受託者・指定管理者の継続状況 (単位:%) 区 分 継続 継続無 合計 従前の管理受託者等が引き 続き指定管理者となった割合 72.4 27.6 100 区 分 非公募 公募 合計 うち公募によることなく選定さ れた割合 47.2 52.8 100 ⑤ 指 定 管 理 者 制 度 導 入施 設 の 指 定 管 理 期 間 別 状況 指 定 管理 期 間は 、5 年間が一番多く( 47.3% )、次に多い 3 年間(32.6%)を合わせ る と 、全 体 の 79.9%を占める。 表 2.7 指定管理者制度導入施設の指定 管理 期間別状況 (単位:施設、%) 区分 1年 70 1 84 1.3 777 1.4 931 1.3 2年 44 0.6 135 2.1 968 1.7 1,147 1.6 3年 3,931 57.1 871 13.8 18,042 31.8 22,844 32.6 4年 310 4.5 2,684 42.4 4,311 7.6 7,305 10.4 5年 2,457 35.7 2,399 37.9 28,285 49.8 33,141 47.3 6年 4 0.1 14 0.2 300 0.5 318 0.5 7年 9 0.1 1 0 89 0.2 99 0.1 8年 9 0.1 7 0.1 79 0.1 95 0.1 9年 1 0 17 0.3 179 0.3 197 0.3 10年以上 47 0.7 115 1.8 3,783 6.7 3,945 5.6 都道府県 政令指定都市 市区町村 合計
- 7 - 3. 指 定 管 理 者 制 度 の 期 間 設 定 等 が 与 え る 影 響 ( 理 論 分 析 ) 指 定管 理 者制 度の 導 入の 効 果に つ いて 、経 済 モデ ル を用 い て説 明す る と、図 3.1 のと お り とな る。ま ず、公の施 設(有 料を 想 定)の管理 運 営を 直 営で 行っ た 場合 の 需要 曲 線 ( 私 的) と 限界 費用 曲 線 を 、 それ ぞ れ D1 と MC1 と する。 公の施設は、通 常 、公 共 財 で あ ると と もに 、正 の外部 性(例 えば 、教 育 効果や 健 康増 進 等)を持 ってい る と考 え ら れ る ため 、 需要 曲線 ( 私的 ) は、 そ の財 の社 会 的価 値 を 表 し て お ら ず 、 社 会 的 価 値 は 、 私 的 な価 値 より も大 き い た め 、社 会 的需 要曲 線(社 会 的価 値 曲線 )D3 は、需要曲線(私 的 ) より も 上方 に位 置 する と 考え ら れる5。 こ こ で 、指 定 管理 者制 度を 導 入す る と 、民 間ノ ウハ ウ 等の 活 用に より 、提供 さ れる サ ー ビ スの 質・量 とも 上 昇す る こと で 、需 要曲 線(私 的 )が 上 方へ シフ ト(D1→ D2)し、 経 費 にお い ても 効率 化 が図 ら れ、限 界費 用曲 線 も下 方 へシ フ ト( MC1→ MC2)すると考 え ら れる 。そ の結 果、指定 管 理者 制 度導 入前 に 比べ 、よ り 低い 価格(P1→P2)で、より 高 い 水準 の 住民 サー ビ ス( Q1→ Q2)を提供することが可能となる。 本 稿 では 、指 定管 理者 制度 の 運用 に あた って の 諸制 度( 指定 管 理期 間の 設定 、利 用料 金 制 度 及 び 評 価 制 度 ) が 、 そ の 効 果 の 大 き さ ( 需 要 曲 線 と 限 界 費 用 曲 線 の シ フ ト の 幅) に ど のよ う な影 響を 与 えて い るの か を分 析す る もの で ある 。 図 3.1 指定 管 理者 制度 導 入の 効 果分 析 5 マ ン キ ュ ー (2005)P279、 280 D2 1 需 要 曲 線 (限 界 価 値 曲 線 ) ・指 定 管 理 者 制 度 導 入 前 D1 ・指 定 管 理 者 制 度 導 入 後 D2 ・社 会 的 (正 の外 部 性 有 り) D3 2 限 界 費 用 曲 線 ・指 定 管 理 者 制 度 導 入 前 MC1 ・指 定 管 理 者 制 度 導 入 後 MC2 3 均 衡 価 格 及 び住 民 サービス水 準 ・指 定 管 理 者 制 度 導 入 前 P1、Q1 ・指 定 管 理 者 制 度 導 入 後 P2、Q2 D1 価 格 ・限 界 費 用 住 民 サービス水 準 MC2 MC1 P1 P2 Q1 Q2 D3
- 8 - 4. 指 定 管 理 者 制 度 の 期 間 設 定 等 が 与 え る 影 響 ( 実 証 分 析 ) 本 章 では 、前 章の 理 論分析 を 踏ま え 、指定 管 理者制 度 の効 果 的な 運用 を 探る べ く 3 つ の 実 証分 析 を行 う。 ま ず、 分 析 1 として、「指定管理期間が与える 住民サービス面 (施 設 利 用者 数 )と コ スト 面( 指 定 管理 料 )へ の施 設特 性 毎の 影 響分 析 」を 行う 。次 に、分 析 2 として、「施設規模の違いによる最適な指定管理期間への影響分析」を行い、最後 に 、 分 析 3 として、「 指定管理者制度の 諸制度(利用料金制度と評価制度)が与える施 設 利 用者 数 への 影響 分 析」を 行 う。な お、分 析 1 と 分 析 2 の関係は、分析 1 では 、公共 ホ ー ルや 公 園と いっ た 施設 特 性 の 違 いに よる 影 響を 分 析し 、分 析 2 で は、同じ施設特性 の 施 設に お ける 施設 規 模( 面 積) の 違い によ る 影響 を 分析 す るも ので あ る。 対象 施設 は 、施 設特 性の 違 う 施 設 とし て、 都 道府 県 立の 公 共ホ ール6と 公 園 の 指定 管 理 者 制度 へ の移 行期 間 が終 了 した2007 年度から 2010 年度(4 年間)の施設利用者数 と 指 定管 理 料等 の情 報 を用 い 、4.1 節から 4.3 節で、それぞれ分析 1、2、3 の実証分析 を 行 った 。 4.1 指 定 管 理 期 間 が 与 え る 施 設 利 用 者 数 と 指 定 管 理 料 へ の 施 設 特 性 毎 の 影 響 分 析 分 析 1 では、指定管理期間の長短が 及ぼす 施 設利用者数 及 び指定管理料への影響 を観 察 す るた め 、 公 共ホ ー ル ( 4.1.1 節) と公園 ( 4.1.2 節 ) を分けて、次のモデルを 最 小 二 乗 法 ( OLS)により推計する。 Y =a + b1 term + b2 term^2 + Xc + e ま ず、 被 説明 変数 ( Y)は、各都道府県HPに公表されているデータを利用し、 住 民 サ ー ビス を 捉え る変 数 とし て「施 設利 用 者数 」を、コ スト 面を 捉 える 変数と し て「 指定 管 理 料」 を 設定 した 。 次 に、説 明変 数 は 、指 定管 理 期間 の 長短 の影 響 を分 析 する た め、「 指定 管理期 間( term)」 及 び 「指 定 管理 期間 の 2 乗 ( term^2)」 を設定し、データは、 総務省 の「公の施設の指 定 管 理者 制 度の 導入 状 況等 に 関す る 調査 結果 ( 平成 21 年 10 月実 施 )」 を利用 した。 そ の 他 の 説 明 変 数 は 、 外 部 要 因 を コ ン ト ロ ー ル す る 変 数 と し て 、「 住 民 基 本 台 帳 人口 要 覧 ( 総 務 省 調 査 )」 を 利 用 し て 「 推 計 人 口 」 と 、「 家 計 調 査 年 報 ( 総 務 省 調 査 )」 を 利 用 し て「1 世帯 当 たり の実 収 入 」を 、都道 府県 毎に 設 定し た 。ま た 、施 設ス ペ ック と し て 、「 建 築 年 も し く は 開園 年 」、「 施 設 規 模 ( 面 積)」、「 職 員 数 ( 公 共 ホ ール の み )」、「入 場 料 金 可 否 ダ ミ ー ( 公 園 の み )」、「 自 主 事 業 可 否ダ ミ ー 」、「 複 合 施 設 可 否ダ ミ ー ( 公 共 ホ ー ルの み )」、「 有料 施設 可 否ダ ミ ー( 公 園の み )」を 設定 し 、デ ー タは( 社 )全国 公 立 文 化 施設 協 会発 行の「全国 公 立文 化 施設 名簿 」及び 各 都道 府 県H Pに 公 表さ れ てい る も 6 舞 台 芸 術 の 公 演 等 を 主 用 途 と す る ホ ー ル 専 用 施 設 と 、 舞 台 芸 術 以 外 の 利 用 を 主 用 途 と す る 施 設 で は あ る が ホ ー ル 機 能 を 有 す る そ の 他 の 施 設 の 両 方 を 合 わ せ た も の
- 9 - の を 利 用 し た 。 加 え て 、 指 定 管 理 者 制 度 の 諸 制 度 と し て 、「 選 定 時 の 公 募 可 否 ダ ミ ー 」、 「 指 定 範 囲 ダ ミ ー ( 全 部 指 定 か 一 部 指 定 か )」、「利 用 料 金 制 度 導 入 可 否 ダ ミ ー 」、「 評 価 制 度 導入 可 否ダ ミー 」を設 定 し、デー タ は、総務省 の「公 の施 設 の指 定管理 者 制度 の 導 入 状 況等 に 関す る調 査 結果( 平成 21 年 10 月 実施)」を利用した。その他、「 指 定管 理者 種 別 ダ ミ ー ( 株 式 会 社 、 N P O 法 人 、 財 団 法 人 等 )」、「 公 園 種 別 ダ ミ ー (広 域 、 総 合 、 運 動 等 )」、「 年 度 ダ ミ ー( 2007~ 2010)」、「 地域ダミー(都道府県 毎 )」、「 施 設 利 用 者 数 も し くは 指 定管 理料 」を設 定 し、デー タ は、総務省 の「公 の施 設 の指 定管理 者 制度 の 導 入 状 況等 に 関す る調 査 結果 ( 平 成 21 年 10 月 実施)」 及び 各都道府県HPに公表されて い る もの を 利用 した 。 なお 、 a は定数項、 e は誤差項を示している。 4.1.1 公 共 ホ ー ル に お け る 影 響 分 析 ま ず、公 共ホ ール に おけ る 指定 管 理期 間が 与 える 施 設利 用 者数 及び 指 定管 理 料 へ の影 響 分 析を 行 う。 表 4.1 基本統計量(公共ホール) 変数名 サンプル数 平均 標準偏差 最小値 最大値 指定管理期間 172 4.598837 1.370789 1 10 指定管理期間の2乗 172 23.01744 15.42857 1 100 推計人口 172 2958970 2793196 595331 1.26E+07 1世帯当たりの実収入 172 520756.2 52108.82 387438 651399 建築年 172 1986.081 14.6037 1927 2005 延べ床面積 172 15725.07 13111.45 1200 83297 職員数 172 15.95349 9.69766 1 57 自主事業可否(ダミー) 172 0.8662791 0.341346 0 1 複合施設可否(ダミー) 172 0.2267442 0.4199483 0 1 選定時の公募可否(ダミー) 172 0.7267442 0.4469322 0 1 指定範囲(ダミー) 172 0.9534884 0.2112052 0 1 利用料金制度導入可否(ダミー) 172 0.9767442 0.1511549 0 1 評価制度導入可否(ダミー) 172 0.9651163 0.184021 0 1 施設利用者数 172 291789.9 239433.8 16001 1167000 指定管理料 172 190926.1 200717.9 8027 1116600 ※ 年度 ダ ミー 、地 域 ダミ ー 、指 定 管理 者種 別 ダミ ー は省 略 施 設 利用 者 数へ の影 響 分析 に 関す る 推定 結果( 公共 ホ ール )は 、表 4.2 のとおりであ る 。「 指定 管理 期 間」 と「 指 定管 理 期間 の 2 乗」について 、「 指 定 管理 期間 の 2 乗 」 は、 10% の 水 準 で 有 意 な 結 果 が 得 ら れ た 。両 変 数 は 、相 関 し て い る 可 能 性 が 高 い た め 、加 え て F 検定 を 行い 、F 値 は、 6.39 となり、 1%の有意水準で、 帰無仮説( 2つの推定回帰 係 数 (「指 定管 理 期間 」 と 「 指定 管 理 期 間の 2 乗」) をゼロとする )が棄却されるため、 「 指 定管 理 期間 」及 び「指 定 管理 期 間の 2 乗 」は、施 設利用者 数 に有意な影響を与えて い る こと が 推定 で き た 。 次 に 、最 適な 指 定 管 理期間 を 推計 す る。「指 定 管理 期 間」の係 数 が正 であり 、「 指 定 管 理 期 間の 2 乗」の係数が負であるため、指定管理期間が延びれば施設利用者数は、増加
- 10 - す る が 、そ の 増加 割合 は 逓 減 し 、最 適 期間 を頂 点に 、そ の数 は 減尐 する こと が 推定 で き た ( 上に 凸 型の 曲線 を 描く )。 そこ で、 推 計式 を「 指 定管 理 期間 」で 微 分 し 、 頂点 ( 最 適 期 間) を 計算 する と 、 4 年 ( 3.84 年) が最適 であることが 確認 できた 。 な お 、以 降 、本 稿の 推 定結 果 にお い て、 ***、 **、 *は そ れ ぞ れ 1%、 5%、 10%の水 準 で 有意 で ある こと を 示す も のと す る。 表 4.2 推計結果(公共ホール:施設利用者数) 被説明変数 説明変数 係数(人) 標準誤差 指定管理期間 65312.54 62131.29 指定管理期間の2乗 -8494.69 * 4933.09 推計人口 0.36 0.69 1世帯当たりの実収入 0.19 0.58 建築年 -4746.58 *** 1181.87 延べ床面積 19.52 *** 1.92 職員数 7324.93 *** 2080.78 自主事業可否(ダミー) -119744.00 *** 43646.06 複合施設可否(ダミー) -25566.89 39478.97 選定時の公募可否(ダミー) 101294.10 ** 47165.95 指定範囲(ダミー) 101364.20 101847.30 利用料金制度導入可否(ダミー) -182256.90 136051.20 評価制度導入可否(ダミー) -4289067.00 7922034.00 指定管理料 -0.26 ** 0.13 定数項 9054810.00 *** 2501411.00 サンプル数 自由度調整済み決定係数 施設利用者数 172 0.7578 ※ 年 度ダ ミ ー、 地域 ダ ミー 、 指定 管 理者 種別 ダ ミー は 省略 指 定 管理 料 への 影響 分 析に 関 する 推 定結 果( 公 共ホ ー ル)は 、表 4.3 のとおりである。 「 指 定管 理 期間 」と「 指定 管 理 期 間 の 2 乗」について、両変数とも、統計的に有意な結 果 が 得ら れ なか った 。両変 数 は 、相 関 して いる 可能 性 が高 い ため 、加え てF 検 定を 行 っ た が 、F 値 は、 0.96 となり、 10%の有意水準でも帰無仮説(2つの推定回帰係数 (「 指 定 管 理期 間 」と「 指定 管理 期 間の 2 乗」)をゼロとする)が棄却されないため、「指 定 管 理 期 間」及び「指 定 管理 期 間 の 2 乗」の説明変数は、指定管理料に何ら影響を与えてい な い こと が 推計 でき た 。
- 11 - 表 4.3 推計結果(公共ホール:指定管理料) 被説明変数 説明変数 係数(千円) 標準誤差 指定管理期間 -5665.02 43713.95 指定管理期間の2乗 -559.62 3497.66 推計人口 0.00 0.48 1世帯当たりの実収入 0.38 0.40 建築年 -1763.28 ** 867.43 延べ床面積 9.56 *** 1.62 職員数 8681.20 *** 1306.91 自主事業可否(ダミー) 52423.55 * 31155.91 複合施設可否(ダミー) -16920.37 27654.44 選定時の公募可否(ダミー) -76058.42 ** 32936.15 指定範囲(ダミー) 28410.99 71579.99 利用料金制度導入可否(ダミー) 83855.16 95694.70 評価制度導入可否(ダミー) 193869.70 5555073.00 施設利用者数 -0.13 ** 0.06 定数項 3060718.00 * 1824955.00 サンプル数 自由度調整済み決定係数 指定管理料 172 0.8309 ※ 年 度ダ ミ ー、 地域 ダ ミー 、 指定 管 理者 種別 ダ ミー は 省略 4.1.2 公 園 に お け る 影 響 分 析 次 に 、公 園 にお ける 指 定管 理 期間 が 与え る 施 設 利用 者 数 及 び 指定 管理 料 への 影 響分析 を 行 う。 表 4.4 基本統計量(公園) 変数名 サンプル数 平均 標準偏差 最小値 最大値 指定管理期間 286 4.160839 1.109135 1 5 指定管理期間の2乗 286 18.53846 8.163908 1 25 推計人口 286 3087853 2924806 595331 8885458 1世帯当たりの実収入 286 536934.8 59083.21 387438 640039 開園年 286 1983.122 22.14963 1873 2007 広さ 286 77.2972 140.3911 2 1150 入場料金可否(ダミー) 286 0.0664336 0.249475 0 1 自主事業可否(ダミー) 286 0.986014 0.1176384 0 1 有料施設可否(ダミー) 286 0.6223776 0.4856422 0 1 選定時の公募可否(ダミー) 286 0.8671329 0.3400261 0 1 指定範囲(ダミー) 286 0.9825175 0.1312903 0 1 利用料金制度導入可否(ダミー) 286 0.6433566 0.4798478 0 1 評価制度導入可否(ダミー) 286 0.9160839 0.2777479 0 1 施設利用者数 286 334468.5 378365.3 2652 2663700 指定管理料 286 83004.17 94946.49 900 645000 ※ 年 度ダ ミ ー、 地域 ダ ミー 、 指定 管 理者 種別 ダ ミー 、 公園 種 別ダ ミー は 省略 施 設利 用 者数 への 影 響分 析 に関 す る 推 定結 果(公 園)は、表 4.5 のとおりである。「 指 定 管 理期 間 」と「 指定 管理 期 間の 2 乗」について、両変数とも、統計的に有意な結果が
- 12 - 得 ら れな か った 。両 変数は 、相関 して い る可 能性が 高 いた め、加 えて F検定 を 行っ た が、 F 値 は、 0.73 となり、 10%の有意水準でも帰無仮説(2つの推定回帰係数 (「 指定管理 期 間 」と「指 定 管理 期間の 2 乗」)をゼロとする)が棄却されないため、「 指 定 管理 期 間」 及 び「 指定 管 理 期 間の 2 乗」の説明変数は、施設利用者数 に何ら影響を与えていないこ と が 推計 で きた 。 表 4.5 推計結果(公園:施設利用者数) 被説明変数 説明変数 係数(人) 標準誤差 指定管理期間 -180931.00 152277.30 指定管理期間の2乗 23052.91 20602.50 推計人口 -0.10 2.39 1世帯当たりの実収入 0.18 0.89 開園年 -5667.17 *** 966.77 面積 79.04 162.14 入場料金可否(ダミー) -141138.30 85961.26 自主事業可否(ダミー) -371763.70 ** 170562.30 有料施設可否(ダミー) -28745.60 50093.61 選定時の公募可否(ダミー) -97413.25 69532.14 指定範囲(ダミー) -203293.70 195034.50 利用料金制度導入可否(ダミー) 50745.06 58937.93 評価制度導入可否(ダミー) 1310886.00 19400000.00 指定管理料 1.69 *** 0.24 定数項 11900000.00 *** 2841688.00 サンプル数 自由度調整済み決定係数 施設利用者数 286 0.503 ※ 年 度ダ ミ ー、 地域 ダ ミー 、 指定 管 理者 種別 ダ ミー 、 公園 種 別ダ ミー は 省略 指 定 管理 料へ の 影響 分析 に 関す る 推定 結果 ( 公園 ) は、 表 4.6 のとおりである。「 指 定 管 理期 間 」と「 指定 管理 期 間の 2 乗」について、両変数とも、統計的に有意な結果が 得 ら れな か った 。両 変数は 、相関 して い る可 能性が 高 いた め、加 えて F検定 を 行っ た が、 F 値 は、 0.43 となり、 10%の有意水準でも帰無仮説(2つの推定回帰係数 (「 指定管理 期 間 」と「指 定 管理 期間の 2 乗」)をゼロとする)が棄却されないため、「 指 定 管理 期 間」 及 び「 指定 管 理 期 間の 2 乗」の説明変数は、指定管理料に何ら影響を与えていないこと が 推 計で き た。
- 13 - 表 4.6 推計結果(公園:指定管理料) 被説明変数 説明変数 係数(千円) 標準誤差 指定管理期間 26745.87 37133.05 指定管理期間の2乗 -4150.45 5020.50 推計人口 0.08 0.58 1世帯当たりの実収入 0.00 0.22 開園年 482.87 * 249.94 面積 97.43 ** 38.97 入場料金可否(ダミー) 77538.36 *** 20424.85 自主事業可否(ダミー) 54906.72 41777.53 有料施設可否(ダミー) 5501.80 12195.57 選定時の公募可否(ダミー) 11240.05 16978.17 指定範囲(ダミー) 80795.17 * 47286.36 利用料金制度導入可否(ダミー) 6878.53 14360.53 評価制度導入可否(ダミー) -777442.90 4728504.00 施設利用者数 0.10 *** 0.01 定数項 -1138631.00 713043.40 サンプル数 自由度調整済み決定係数 指定管理料 286 0.5324 ※ 年 度ダ ミ ー、 地域 ダ ミー 、 指定 管 理者 種別 ダ ミー 、 公園 種 別ダ ミー は 省略 4.2 施 設 規 模 の 違 い に よ る 最 適 な 指 定 管 理 期 間 へ の 影 響 分 析 分 析 2 では、施設規模(面積)の違いより、最適な 指定 管 理期 間にどのような影響を 与 え るか を 分析 する 。推計 式 は 、分 析 1 で用いた推計式に、「 面積 ×指 定管 理 期間 」、「 面 積 ×指定 管理 期 間 の 2 乗」の交差項を追加し、 最小二乗法 (OLS)により推計を行った。 な お、分 析に は、分 析 1 で 指定管理 期間によって有意な影響を受ける ことが確認できた 「 公 共ホ ー ルの 施設 利 用者 数 」の ケ ース を用 い る。 推 定結 果 は、表 4.7 のとおりである。「面 積 ×指 定 管理 期 間」と「面 積×指 定管 理 期 間 の 2 乗」について、両変数とも 、 1%の水準で有意な結果が得られため、 施設規模(面 積 ) は、 指 定管 理期 間 に 有 意 な影 響 を与 えて い るこ と が確 認 でき た。 そ こ で、具体 的 に、施設規 模 の違 い( 面 積の 大小)に よる 指定 管 理期 間への 影 響を 捉 え る ため 、 面積 を 全 体の 25、 50、 75%に当たる規模に固定し、 推計式を「 指定管理期 間 」 で微 分 し、 その 面 積に 応 じた 最 適な 指定 管 理 期 間 を推 計 した 。 推 定 結果 は 、表 4.8 のとおりである。施設規模が大きくなるほど、長い指定管理期間 が 必 要で あ るこ とが 確 認で き た( 逆 に、施 設規 模が 小 さけ れ ば、短 期 間 でも 問 題な い)。
- 14 - 表 4.7 推計結果(公共ホール: 交差項 ) 被説明変数 説明変数 係数(人) 標準誤差 面積×指定管理期間 19.79 *** 6.95 面積×指定管理期間の2乗 -2.50 *** 0.62 指定管理期間 -100921.00 61226.75 指定管理期間の2乗 10276.35 ** 5156.25 推計人口 0.52 0.55 1世帯当たりの実収入 0.27 0.46 建築年 -3955.82 *** 1049.59 延べ床面積 -15.94 19.38 職員数 6929.95 *** 1726.58 自主事業可否(ダミー) -163544.10 *** 35241.37 複合施設可否(ダミー) -16372.99 32396.52 選定時の公募可否(ダミー) 41881.62 38702.11 指定範囲(ダミー) -190985.20 ** 90884.56 利用料金制度導入可否(ダミー) -122132.80 108781.40 評価制度導入可否(ダミー) -4913991.00 6324509.00 指定管理料 -0.15 0.10 定数項 7904991.00 *** 2167736.00 サンプル数 自由度調整済み決定係数 施設利用者数 172 0.8466 ※ 年 度ダ ミー 、 地域 ダ ミー 、 指定 管理 者 種別 ダ ミー は 省略 表 4.8 分位点毎の指定管理期間一覧 4.3 指 定 管 理 者 制 度 の 諸 制 度 が 与 え る 施 設 利 用 者 数 へ の 影 響 分 析 分 析 3 では、情報の非対称のために起こる 指定後の指定管理者のモラルハザードを防 ぐ た めの 諸 制度 であ る 「利 用 料金 制 度( イン セ ンテ ィ ブ制 度 )」 と 「評 価制 度 (モ ニ タ リ ン グ )」 が、 施 設利 用者 数 にど の よう な影 響 を与 え てい る かを 分析 す る。 分 析は 、 施 設 利 用者 数 の指 定管 理 期間 の 初年 度 を基 準と し た最 終 年度 と のギ ャッ プ(( 最終 年 度- 最 初 年度 ) /最 初 年度 )を 被 説明 変 数と し、 最 小二 乗 法(OLS)により推計を行った。 な お 、分 析 は、 対象 期 間内 で 、 指 定 管理 期間 が 完結 す る 施 設 の み を 対 象 と す る た め 、 サ ン プル 数 の関 係 か ら 、公 共 ホー ル と公 園の 合 同で 分 析を 行 う 。 分位点
25%
50%
75%
面積6,484
12,556
21,138
指定管理期間2.317875 3.502542 3.735332
- 15 - 表 4.9 基本統計量(公共ホール・公園 合同 ) 変数名 サンプル数 平均 標準偏差 最小値 最大値 利用料金制度導入可否(ダミー) 15 0.7333333 0.4577377 0 1 評価制度導入可否(ダミー) 15 0.8 0.4140393 0 1 推計人口ギャップ 15 -0.0053726 0.0044076 -0.015838 0.0013323 1世帯当たりの実収入ギャップ 15 -0.0510665 0.0712657 -0.1639681 0.1091456 面積 15 3281.333 4576.058 45 12185 施設利用者数ギャップ 15 0.0132954 0.1557582 -0.1907013 0.448597 ホール可否(ダミー) 15 0.4 0.5070926 0 1 公園可否(ダミー) 15 0.6 0.5070926 0 1 ※ ギ ャッ プ = ( 最終 年 度- 最 初年 度 ) /最 初年 度 ※ 指 定管 理 者種 別ダ ミ ーは 省 略 推 定結 果 は、表 4.10 のとおりである。「 利用料金制度 」と「評価制度」について、両 変 数 とも 、10%の水準で有意な結果が得られ、いずれも係数の符号が正となっているた め 、 両制 度 とも 、施 設 利用 者 数に 正 の 有 意な 影 響を 与 えて い るこ とが 確 認で き た。 表 4.10 推計結果(公共ホール・公園 合 同) 被説明変数 説明変数 係数(%) 標準誤差 利用料金制度導入可否(ダミー) 0.2652 * 0.1026 評価制度導入可否(ダミー) 0.2888 * 0.1083 推計人口ギャップ -2.6670 9.3950 1世帯当たりの実収入ギャップ -1.1501 1.0656 面積 -0.0001 *** 0.0000 ホール可否(ダミー) 0.6785 *** 0.1391 定数項 -0.4827 * 0.2054 サンプル数 自由度調整済み決定係数 施設利用者数ギャップ 15 0.7759 ※ 指 定管 理 者種 別ダ ミ ーは 省 略
- 16 - 5. 考 察 お よ び 政 策 提 言 本章 では 、こ れま で の分 析 結果 に 対す る考 察 とそ れ を踏 ま えた 三つ の 政策 提 言を行う。 ま ず、 一 つ目 の提 言 は、 分 析 1 の結果 を踏まえ、「指定管理期間は、 全施設一律では な く 、施 設 特性 に配 慮 した 適 切な 設 定を 行う べ き 」 で ある 。 指 定 管理 期 間に つい て は、公共 ホ ール の施 設 利用者 数 へ有 意 な影 響( 1%の有意水準) を 与 え、その 影 響は 、指定 管 理期 間 が延 びれ ば 施設 利 用者 数 は、増加 するが 、その 増加 割 合 は逓 減 し、最 適期 間( 約 4 年)を頂点に、その数は減尐することが推定できた 。し か し、公 共ホ ール の 指定管 理 料 と 公 園の 施設 利 用者 数 及び 指 定管 理料 に つい て は、いず れ も 有意 な 結果 が得 ら れな か った 。 一 般 的に 、公 共 ホー ル への 施 設利 用 者数 を増 加 させ る ため に は、ソフ ト(舞 台 公演(自 主 事 業も 含 む)) の充 実 が 求 めら れ る。 その た めに は 、公 共 ホー ル職 員 の 高 度 で複 雑 な 舞 台 機構(通 常 オー ダーメ イ ド)の熟 知、そ の良さ を 最大 限 に活 かす 技 能 の 習 得、業務 の 標 準化 、職 員間 の ノウハ ウ の共 有 と蓄 積、人材の 育 成等 と いっ た人 的 資本 蓄 積が 必 要 不 可 欠で あ り、 その 実 現に は 一定 程 度の 習熟 期 間が 必 要 に な る と 考 え ら れ る 。 加 え て 、 自 主 事業 を 行う7際 に も 、長 期 的で 大 規模 な事 業 の企 画 ・実 施 、地 元と の 協働 事 業の 実 施 、地 域へ の 芸術 普及 活動 等 は 、短 期 間で 成果 を出 す こと が 困難 であ り 、比 較 的長 い 期 間 で 成果 を 捉え てい く 必要 も ある 。そ の効 果 は、提 供 する サ ービ スの 累 積量 が 増加 する こ と で、職員 の 習熟 度の上 昇 、ノ ウハ ウ の蓄 積、作 業 の標 準 化等 によ り 、効 率 的に サ ー ビ ス を提 供 する こと が 可能 と なる 「 経験 によ る 学習 効 果8」 と も考 えら れ る。 し かし 、 一 定 期間 を 超え ると 、 期間 の 長期 化 に よ り競 争 原理 が 働か ず (一 種の 独 占 状 態 )、業 務 の マ ンネ リ 化 等 を招 き 、そ の 効果 も 減尐 して し まう と いう 問 題点 も今 回 の分 析 によ り確 認 で きた 。そ し て、その関 係 は、指定 管 理期 間 によ る 施設 利 用者 数へ の 影響 と して 、上 に 凸 の曲 線 を描 いて い るこ と と に 表 れて いる と 考え ら れ る 。 つ ま り 、 指 定 管 理 期 間 は 、 全 施 設一 律 の設 定で は なく 、公共 ホ ール や公 園 等と い った 施 設特 性に 配 慮し た 適切 な設 定 を 行う べ きで ある 。 次 に、 二 つ目 の提 言 は、 分 析 2 の結果を踏まえ、「同じ施設特性の施設においても、 施 設 規模 に 配慮 した 指 定管 理 期間 の 設定 が必 要 」で あ る。 施 設 規模 ( 面積 )は 、 指定 管 理期 間 に有 意な 影 響( 1%の有意水準)を与え、 施設規 模 が 大き く なる ほど 、長い 指 定管 理 期間 が必 要 であ る こと が 確認 でき た(逆 に 、施設 規 模 が 小さ け れば 、短 期 間で も 問題 な い)。 公共 ホー ル の場 合 、一 般的 に 、 施 設 規模 が 大 き い ほど 、舞 台機 構が 大規 模 で高 度 なも のが 多 く、複 数 の ホ ー ルの 他 、会議 室 やリ ハ ー サ ル 室と い った 付帯 設 備も 多 数 備 え てい る 施 設 が多 い 。その た め 、先 に述べ た 、舞台 機 構 の 熟知 、技 能の 習 得 、人 材 育成 等 とい った 人 的資 本 蓄積 に 長い 時間 が 必要 と なる た め、 施 設 規模 に よっ て 指 定 管理 期 間の 設 定に 配慮 が 必要 で ある 。 7 自 主 事 業 実 施 割 合 90.7%( 平成 22 年度 地域の公 立文 化施設実 態調査: 財団法人 地域創造 ) 8 岩 田(2008)P173、174
- 17 - 最 後に 、 三つ 目の 提 言は 、 分析 3 の結果を踏まえ、「情報の非対称により起こる 指 定 後 の 指定 管 理者 の モ ラ ルハ ザ ード を 防ぐ ため の 諸制 度 を 積 極 的 に 活 用 す べ き 」 で あ る 。 指 定 管理 者 制度 の諸 制 度で あ る「利 用料 金 制度 」と「 評 価制 度 」に つい て、両 制 度と も 、施設 利用 者 数に 正の有 意 な影 響( 10%の有意水準)を与えている ことが確認できた。 情 報 の非 対 称の ため に 起こ る 契約 後 のモ ラル ハ ザー ド の解 消 には 、イ ン セン テ ィブ 契約 と モ ニタ リ ング があ る。指 定 管理 者 制度 にお い ては 、利 用 料金 制度 が インセ ン ティ ブ 契 約 、評価 制度 が モニ タリン グ に 相 当 する と考 え られ る 。そ して 、両 制 度も、公 共ホ ール と 公 園と い った 施設 特 性の 違 う 両 施 設に 対し て も、有効 に 働く こと が 確認で き た 。そこ で 、今 後 、指 定 管理 者制度 を 運用 す る際 には 、指定 後 の 指 定 管理 者の モ ラル ハ ザー ド を 防 ぐ ため の 諸制 度を 積 極的 に 活用 す べき であ る 。 6. 今 後 の 課 題 本 稿 では 、指定 管理 者 制度 の 指定 期 間等 が与 え る施 設 利用 者 数及 び指 定 管理 料 への影 響 を 分析 し、指定 管 理者制 度 の効 果 的な 運用 に 向け て の 三 つ の政 策提 言 を 行 っ たが 、一 方 で 次の よ うな 課題 も 残さ れ てい る 。 ま ず 、効果 を 分析 する ため の 指標 の あり 方に つ いて で ある 。本 稿 で は 、施設 利 用者 数 の み を、住民 サ ービ スの指 標 とし て 設定 して い る。こ の指 標は 、指 定 管理料( イン プッ ト )を 投入 し 、ど れだ け観 客 が来 た か( ア ウト プッ ト )とし て 、定 量的 に捉 え やす く 明 快 で ある が 、例 えば 、 公共 ホ ール の 設置 目的 が 、「 幅 広い 市 民と と も に 、文 化 芸術 活 動 の 振 興・普及 を 図り 、文化 の 創造 と 交流 に寄 与 する こ と 」であ っ た場 合、そ の 設置 目 的 に 対 する 達 成度( 成果:ア ウ トカ ム )を 測 るた めに は 不十 分 な面 があ る 。本 来 、指定 管 理 者 制度 の 導入 に当 た って は 、地 方 自治 法第 244 条の 2 第 3 項の規定のとおり、公の 施 設 の設 置 目的 に準 じ た指 標 を設 定 する 必要 が ある 。施 設 利用 者数 だ けでな く、住 民の 芸 術 活動 へ の 支 援、住民と 協 働で の 舞台 創作 事 業、子ど も を対 象に し たワー ク ショ ッ プ 等 数 字に は 現れ にく く、し か も短 期 的に は成 果 が捉 え にく い けれ ども 、公共 ホ ール の 使 命( ミ ッシ ョ ン )と しては 必 要不 可 欠で ある 事 業の 評 価を い かに 行う べ きか 、引 き続 き 検 討 が必 要 であ る。 次 に 、指定 管理 者 の入 れ替 え( 継続 性 )の 問題 につ い てで あ る。本 稿で は、一 指 定管 理 期 間を 切 り分 けて 、その 効 果( 施設 利 用者 数と指 定 管理 料 への 影響 )を分 析 して い る。 し か し 、現 実 的に は 、従前 の 指定 管 理者 が継 続 して 指 定を 受 ける 場合 も 想定 さ れる 。そ の 際 、引継 ぎ コス トが 発生 せ ず 、ノ ウ ハウ の蓄 積も 一 定程 度 存在 する た め、ス ム ーズ に 初 年 度の 業 務を スタ ー トで き る等 の メリ ット が ある と 考え ら れる。今 後は、指定 管 理期 間 終 了後 の 指定 管理 者 の入 れ 替え の 影響( 継 続性)を 考 慮 した 評価 分 析も 検 討 すべ き で あ る 。 今 後 にお い ても 、官 業の民 間 開放(規 制 緩和 )の流 れ から 、指 定 管理 者制度 の 導入 は 増 え 続け る であ ろう 。制度 導 入 に あ たっ ては 、コス ト に傾 倒 した 一面 的 な評 価 では な く、
- 18 - 複 数 の指 標 を 設 定し 、総合 的 にそ の 効果 を分 析 し 、施設 の 設置 目的 や 地方自 治 法の 制 度 導 入 の趣 旨 に沿 った 指 定管 理 者制 度 の 効 果的 な 運用 が 求め ら れる 。 謝 辞 本 論 文 の 執 筆 に あ た っ て は 、 福 井 秀 夫 教 授 ( プ ロ グ ラ ム デ ィ レ ク タ ー 、 副 査 )、 西脇 雅 人 助 教 授 ( 主 査 )、 安 藤 至 大 客 員 准 教 授 ( 副 査 ) を は じ め 、 ま ち づ く り プ ロ グ ラ ムの 教 員 およ び 学生 の皆 様 には 、ご 多 忙の 中 、懇 切 丁寧 な ご指 導 をい ただ き まし た こと 心よ り 御 礼申 し あげ ます 。また 、指 定管 理 者制 度に 係 る 各 種デ ー タ照 会に 関 して 、ご 多忙 の 中 、多 く の自 治体 等 の皆様 よ り多 大 なる ご 協 力 をい た だき ま した。こ こに記 し て感 謝 の 意 を 表し ま す。 ま た、1 年間 政策 研 究大 学 院大 学 での 研究 の 機会 を 与え て いた だい た 派遣 元 およ び 最 後 ま で温 か く 支 え励 ま して く れた 妻 、家 族に 改 めて 深 く感 謝 しま す。 な お、本稿 は個 人 的な見 解 を示 す もの であ り 、筆 者 の派 遣 元の 見解 を 示す も ので は あ り ま せん 。 また 、誤 り はす べ て筆 者 の責 任で あ るこ と をお 断 りい たし ま す。
- 19 - 参 考 文 献 ・ 出 井信 夫 (2006)『指定管理者制度』学陽書房 ・ 伊 藤 久 雄 (2008)「 指 定期 間 の 実 態 と 課 題 -人 材の 確 保 と 育 成 、 雇 用の 観点 か ら 」『 地 方 自 治職 員 研修 臨 時 増刊 89 号』 公職研 ・ 岩 田規 久 男 (2008)『ゼミナールミクロ経済学入門』日本経済新聞出版社 ・小川 充彦 (2011)「指定管理者制度導入の効果の検証について」『 政 策研究 大 学院 大 学ま ち づ くり プ ログ ラム 修 士論 文 』 ・ 財 団 法 人 地 方 自 治 総 合 研 究 所 共 同 研 究 (2008)「指 定 管理 者 制度 の現 状 と今 後 の課 題 」 ・ 坂 田期 雄 (2006)『民間の力で行政のコストはこんなに 下がる』 時事通信出版局 ・ 地域 協 働型 マネ ジ メント 研 究会 編 著 (2004)『指定管 理者制度ハンドブック』ぎょうせ い ・ 柄田 明美 (2008)「公共経営改革で岐路に立つ公の施設運営-公立文化施設における指 定 管 理者 制 度の 影響 を 中心 に - 」『 ニッ セ イ基 礎研 所報 Vol49』 ・ 内 閣府 政策 統 括官( 経済 財 政分 析 担当 ) (2008)「指定管理者制度の導入効果-施設の 支 出 と収 入 にど の程 度 の効 果 があ る のか - 」『 政策 課 題分 析 シリ ーズ 3』 ・ 中 川幾 郎 ・松 本茂 章 編著 (2007)『指定管理者は今どうなっているのか』水曜社 ・ 成 田 頼 明 (2009)『 指 定管 理 者 制 度 の す べ て 制 度 詳 解 と 実 務 の 手 引【 改訂 版 】』 第 一 法 規 ・蓮 川寛 (2011)「指定管理者制度は今-第2ステージへの課題」『 ガバ ナン ス 3月 号 』ぎ ょ う せい ・ 福 井秀 夫 (2007)『ケースからはじめよう 法と経済』日本評論社 ・ 前中 康 志・野 口 晴子 (2005)「指定管理者制度における受託団体のサービスの質と経営 効 率 性- ミ クロ デー タ によ る 事業 主 体別 分析 - 」 ・ N・ グ レゴ リー ・マ ンキ ュ ー (2005)『マンキュー経済学 Ⅰ ミクロ編』東洋経済新報社 ・ み ず ほ 総 合 研 究 所 (2006)「 指 定 管 理 者 制 度 に み る 官 業 の 民 間 開 放 の 現 状 と 課 題 」『 み ず ほ レポ ー ト』 ・ 南 学 (2010)「指定管理者制度から公共施設のあり方を見直す」『 PHP policy Review』