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(1)

研究ノート

    均衡成長と利潤率

      小 島 照 男

      まじめこ      1    1

 カルドアはその古典的論文において先進工業経済に特徴的な大まかな事実を﹁定型化された事実﹂9tyFQd

facts︶として示した︒彼の指摘した事実が斉合的であるような恒常的成長状態の分析は︑経済成長理論の中心テ

ーマであったし︑きわめて単純化されたモデルでこの﹁事実﹂が巧みに再現され得たことも認められよう︒

 市場メカニズムのもとで恒常的経済成長が実現可能であるか︑またそのような均衡成長径路が安定的であるか

という問題に集中したハロッド・ドマー理論の帰結は︑いわゆる﹁ナイフの刃﹂の問題として周知の︑不安定性

原理を提示し︑均衡成長の実現が困難であること︑またその径路は不安定であることを示したのである︒

 これに反し︑イギリス・ケンブリッジ派の成長理論は︑所得分配論の彫琢から︑リカード︑マルサス︑マルク

スの系譜をたどる古典派的貯蓄関数を導入し︑﹁ナイフの刃の問題は妄想であり:::利潤が貯蓄の主要な源泉を

   均衡成長と利潤率

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供給し︑必要とされる利潤は投資によって創出されることに気がつけば︑ナイフの刃の問題は解決する︒﹂と論

じた︒すなわち︑ハロッド的など=ぷ⁚⁚⁚Qという硬直的な仮定を排除することによって安定的な均衡成長を保

証したのである︒

 しかしながら︑均衡成長と利潤との関係については長い物語がある︒後に極大成長径路に関するターンパイク

定理として発展をみたフォン・ノイマンの要素間固定比例を前提とする競争的均衡分析では︑成長率が利子率に

等しいとき最大であることが示され︑貯蓄率は利子率︵利潤率︶に等しくか=0とされたのである︒同様の議論

はカルドアによっても展開されている︒これが︑利潤率に関する限界生産力説に基づく因果認識であった︒

 ところが︑J・ロビンソンの﹃資本蓄積論﹄以後︑利潤率が成長率を決定するという因果関係は逆転し︑利潤

率は成長率に依存すると論じられるに至ったのである︒

 本稿はマルサス理論を出発点として︑均衡成長と利潤率との相互関連を考察し︑均衡成長率と利潤率との決定

諸力を明らかにすることを目的としている︒

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        一 マルサス人口論の拡張

 資本蓄積論に言及したマルサスの次の章句は︑人口理論の資本蓄積論への適用を明言している︒

  ﹁利潤率および資本の増進を規制する法則は︑賃銀率と人口の増進とを規制する法則ときわめて著しくかつ奇妙に類似して

 いる︒⁝⁝さらに︹このことの︺一つの証拠となるものは︑資本喪失が貿易を妨げない戦争中に回復されていく速度のうち

 に見出せる︒政府への貸付けは資本を収入に転化させ︑最初︑供給手段を減じると同時に需要を増大させる︒その必然的結

 果は利潤の増大でなければならない︒このことは当然︑蓄積能力と報酬との両者を共に増やす︒ただ単に資本家の間に以前

 と同じ貯蓄習慣があるだけで︑失われた資本の回復は急速であるにちがいない︒これは何かの原因で人口が突然破壊された

 ときにその回復が非常に急速であるのとまさに同じ理由によってである︒﹂

 このようなマルサスの議論をグラフを用いて考察しその妥当性を検対してみよう︒

 第1図の作表は実質賃金と人口成長との﹁古典派的関係﹂である︒﹁生存﹂賃金は0145である︒0145以上の

賃金のもとでは労働を扶養する賃金基金の増大によって人口成長があることを示して四﹈表は右上りになってい

る︒人口成長率は生存賃金を超える賃金部分とともに変化する︒すなわち作表は心理的社会学的に決定される

ような人口供給関数である︒

 匹表はマルサス理論では明示的なものではないが︑経済の許容可能な人口成長率を示すものである︒これは

流通資本︵賃金基金︶の成長率に依存し︑賃金分配分が低いほど利潤が高くなることから流通資本の増大が可能と

なり高い人口成長率がもたらされる︒したがって匹一表は賃金が低い分だけ人口成長率を速めるような資本蓄積

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がなされることを示して右下りになるだろう︒当然匹表は人口の需要関数として捉えることができる︒

 £点は二つの表の交点で︑均衡賃金匹と均衡人口成長率匹を決定し人口と流通資本とは同率で成長する︒

賃金が一匹以下であれば︑流通資本が利用労働力以上に成長するために匹はせり上げられ︑逆に匹以上の賃

金のもとでは資本が人口よりも緩慢に成長するために賃金を減じるであろう︒均衡賃金匹こそ︑人口法則が失

業を発生することなく基金の必要成長率をうみ出す唯一の賃金である︒

 マルサス︑リカードは終局的な均衡賃金が﹂肥であることを当然なこと

と捉えた︒逓減的限界農業効率が匹を終局 訃匹に移行させ静態的均

衡が成立すると考えたからである︒

 匹表のシフトは技術的要因によって生じる︒技術的卓越︑すぐれた生産

効率︑有利な制度をもつ経済は高い労働生産性をもつために︑賃金を所与

とすれば︑高い利潤︵それゆえに速い資本蓄積︶を達成できる︒つまり︑技術

的効率が高くなればより高い水準の四一表を享受できるのである︒このよ

うな四一表のシフトは作表を所与とすれば︑人口の成長率を高め実質賃

金を上昇させることになろう︒

 作曲線は︑人口成長の必要条件としての生活標準が上昇するとシフトす

る︒これはいわゆる﹁道徳的抑制﹂が作表を左上方にシフトさせ︑より

緩慢な人口成長率とより高い実質賃金をうみ出すことを意味する︒

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 したがって︑人口の総体的需要曲線はその経済の技術的要因によっ

て決定され︑人口の供給曲線は心理的人的要因がこれを決定する︒こ

れらの二つの表は均衡人口成長率と均衡賃金を決定することができ

る︒ この二つの表が均衡資本蓄積率と均衡利潤率の決定にも用いうると

いうことが重要なのである︒

 第n図で縦幅に利潤率︑横幅に資本成長率を示そう︒皿表は作

表と同様に︑心理的社会的に決定される資本供給関数である︒これは

マルサスの指摘した資本蓄積への人口理論の適用である︒資本は人口

と同じく﹁繁殖する﹂のである︒

 利潤率が高いと高い投資水準が可能であり︑結果的に急速な資本蓄

積を導く︒らの利潤率のもとでは資本成長を実現することができな

い︒利潤率がらを超えると正の資本蓄積があるだろう︒

 匹表は資本蓄積効果を示している︒資本・労働比率が大きくなるにつれて資本の相対的希少性が低くなるた

めに利潤率は低下し逆の場合は上昇するであろう︒

 均衡資本成長率と均衡利潤率とは£点で実現し︑それぞれd︑fである︒利潤率がo以下であれば資本は

£点における成長率を維持できないために資本成長率はdを下回る︒このことは資本の相的的希少性を増し利

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潤率を上昇させることになろう︒

 マルサスの述べた如く︑﹁貿易を妨げない戦争中﹂に資本喪失があれば︑匹表は一時的に匹に上昇し︑あ

らゆる蓄積率のもとで以前の利潤率よりも高い利潤率を保証するであろう︒匹表のシフトがない場合︑つまり

 ﹁資本家の間に以前と同じ貯蓄習慣があるだけで﹂新しい均衡点rでは︑利潤率も資本成長率もともに£点で

の水準を上回り︑﹁喪失資本ストックの回復は速くなくてはならない﹂のである︒

 速やかな技術進歩もしくは速やかな人口成長率は強い資本吸収の技術的機会を生ぜしめ︑資本の相対的希少性

を増大させて匹一表を上方ヘシフトさせるであろう︒それ故に匹表を所与とすれば均衡成長率と均衡利潤率と

を上昇させるであろう︒また強い投資意欲は匹表を下方に押し下げ︑匹表を所与とすれば︑資本成長率を上

昇させ利潤率を低下させることになる︒

二 産出量成長率と利潤率

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 現代の均衡成長の結果は︑カルドアの﹁事実﹂によれば産出量成長率と資本成長率とがほぼ同率であることを

示した︒すなわちg=k

 これを前節の議論にあてはめると︑産出量成長率は資本成長率と置き換えられるから︑産出量の均衡成長率と

利潤率とは︑匹表と匹表によって同時に決定されることになる︒         ︵︱︶ そこで︑この直観的命題を吟味するために古典派的貯蓄関数を用いたカルドア・モデルから議論を始めよう︒

 総所得T︑総賃金W︑総利潤?︑総投資rj︑総貯蓄Sと表わし︑恥︑刄でそれぞれ賃金と利潤からの総貯蓄

を示せば︑次の三つの所得恒等式を得る︒

投資を所与として単純な比例的貯蓄関数を仮定する︒S^ = s^W。 Sp=■SpP.但しらは賃金稼得者の貯蓄性向︑

知は資本家のそれである︒

 そこで貯蓄投資均等関係は︑

この故に完全雇用のもとでY=Yfとして

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資本ストックをKで示しI式をKで除すと次式を得る︒

PJKは利潤率r︑又Kは資本成長率・″︑T一Kは資本産出比率Cの逆数であるから

 均衡成長のもとでは≒=吻で㈲式は賃金稼得者が貯蓄をしない︵j=0︶と仮定するときわめて単純化された

定式化となる︒すなわち

 同様の帰結はパシネッティによっても到達されたが︑その導出過程にはカルドア・ケースのような︑労働者の

貯蓄性向についてのいかなる仮定も設定されていない︒パシネッティの議論は︑超長期において各階層の受領す

る総利潤比率がその所有資本ストック比率に等しく︑その貯蓄比率に等しいという命題に基づいている︒それゆ

え︑均衡成長が存在し賃金稼得者が総貯蓄の例えば圭4を形成するならば︑賃金稼得者は資本ストックの圭4

を所有し総利潤の圭4を受領せねばならないことになる︒

 したがって稼得所得を受領しない﹁純粋な資本家﹂の貯蓄性向をらとすると利潤率はらによって決定され

ることになる︒つまり︑純粋資本家による貯蓄が総貯蓄に占める割合をφとすれば︑総貯蓄・投資均等から純

粋資本家の総貯蓄はがであり︑その受領利潤は叩である︒

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この故に恒常的均衡成長においては次式が成り立つであろう︒

 第Ⅲ図にこの㈲式を認曲線として示してある︒

 認表は原点を通る傾き工4の直線であるが︑開放体系において

は海外投資を考慮して認表を修正する必要がある︒貼表は国際的

な資本移動を考慮した場合に一国の利用可能貯蓄を示し︑世界経済における個々の国にとって認表よりも妥当

な貯蓄関数であると考えられる︒一国の利潤率がある水準戸を超えると純資本流入を享受でき︑戸以上のい

かなる利潤率のもとでも資本調達が可能であり海外資本は資本成長率を増すことになる︒逆にμ以下の利潤率

のもとでは国内貯蓄からの資本逃避が発生し︑国内貯蓄はその総量を資本形成に利用し得ないことになる︒また

国際資本流入があると利潤率の微小な差違が資本成長率の大きな差違をもちきたすと考えられるために心曲線

の勾配は心曲線の勾配より小さいと解釈できるだろう︒

 したがって開放体系における貯蓄投資均衡方程式を次のように表わすことができる︒

(11)

ここでむは純外国投資と利潤率格差との関係を示す定数である︒

 ㈲式から恒常的成長のもとで次式が成立するであろう︒

 かくして︑均衡成長のもとでの産出量成長率と利潤率との関係を資本供給側面から把握できたわけであるが︑

㈲式は第n図の匹表と全く同様に描くことができる︒その場合︑第皿図のらは︑レパパ烈であり︑匹線の勾

配は︵ぶ乙に刎︶となり右上りの直線を得ることができる︒

 次に︑均衡成長下の利潤率と産出量成長率との関係を投資需要側面から導出し︑そこで得られる投資機会関数

が第n図の匹表と同様であることが示されれば︑本節の初めに提示した命題が吟味されたことになるだろう︒

 投資機会は技術的要因によって支配されるため︑例えばコブ・ダグラス型生産関数から導出できるであろう︒

 単純なコブ・ダグラス型生産関数を次のように示そう︒

 但し︑瓦︑瓦︑μはそれぞれZ期の産出量︑資本ストック︑労働投入量であり︑βは定数係数︑αは0八QΛ︷

の正のパラメーターで資本指数︵限界生産力説のもとでは資本への分配率︶である︒

 対数をとって㈲式をtについて微分すると︑

ここで︑ハロッド中立的技術進歩を仮定し︑すべての技術進歩が£の増加になると考えると労働投入成長率は︑

人口成長率を″︑技術進歩率を″と示して︑嶮聯=Q十aで表わすことができる︒さらに㈲織レや

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㈲式をKについて偏微分すると

資本産出比率︵KT︶をCと示すと

 均衡成長のもとでは恥=タまた`﹁=づしりこヤ脊言−j恰︵sは総貯蓄率︶という自明の関

係から︑㈲式より

I︑I式より

 旧式によって投資機会に関する利潤率と成長率との関係を得たのであるが︑より明確なrとgとの関係を導出

するには︑変数sを何らかのパラメーターで表す必要がある︒そこで︑生産関数の議論を離れて︑技術進歩を別

の側面から捉えた技術進歩関数を考えてみよう︒

 技術進歩関数はカルドアによって定式化され︑産出量成長率は﹁技術的ダイナミズム﹂11すなわち技術革新

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をめざす企業家の意志と能力とに依存するという命題を表現したものであった︒つまり労働者一人当りの資本増

加率︵牛緬︶と技術的改善の結果生じる産出量成長率︵牛紬︶とを関係づけたのである︒すなわち

 このような技術進歩関数は︑他の成長理論が成長を投資量や投資の資本集約度や貯蓄率のような変数に依存せ

しめるのに対し︑成長を技術の改良や労働方法の合理化によって生産性を高めようとする﹁技術革新性向﹂によ

って説明しようとするものである︒

 ところで︑このような技術的改善は資本成長率によって充分に物語られるのであろうか︒とりわけ技術の改良

は莫大な研究開発投資を要し︑直ちに資本増加として具現しないであろう︒そこで︑技術進歩は恚y︑すなわ

ち投資シェアーに依存すると仮定し︑叫式を次のように修正しておこう︒

≠=ヅ=Qであるから修正された技術進歩関数は︑Qa4十一Q      宕

つまり︑﹁技術革新性向﹂とともに変化する投資シェアーの拡大は技術進歩を促進し︑投資機会を拡大すると解

釈するわけである︒

 したがってI︑㈲式より次式が得られる︒

㈲︑帥式より

(14)

であるから︑

 パラメーターA︑B︑α︑μはすべて正で所与であるから︑gが増大すればrは減少する︒以上の議論から︑

帥式として示された投資機会関数は︑第H図の匹表と同じく右下りの曲線となる︒この関数の位置は︑A︑B

α︑刄とともに変化し︑人口成長が急激であったり︑技術進歩関数が強力であれば︑いかなる産出量成長率のも

とにおいても︑利潤率を引き上げるのである︒

 本節の成長モデルは︑従来の外生変数たる技術の内生化をなしている点が特徴である︒

(15)

   三 異なる投資機会関数をもつ二経済

 これまでの議論によって上のようなグラフを表すことがで

きるであろう︒第Ⅳ図は︑均衡産出量成長率と利潤率とが︑

貯蓄投資関数匹一表と投資機会関数四一表とによって決定さ

れることを示した図である︒このグラフは異なる投資機会を

もつ二つの経済の比較に用いることができる︒

 いま︑同じ投資関数︵したがって同じ純粋資本家貯蓄性向︶を

もつA︑召二経済を想定しよう︒匹表はA︑B両経済に共通

しているが︑A経済の方がB経済よりも速い労働力成長率︑

あるいは技術進歩率をもつとすれば︑A経済はいかなる経済

成長率のもとでもB経済の利潤率を超える高い利潤率を獲得

できるであろう︒したがって︑A経済の投資機会関数W表

は召経済の匹一表の上方に位置することになる︒   

(16)

 長期的均衡はA経済ではr点で実現し︑B経済では£点で達成される︒明らかに︑A経済はB経済よりも速

い成長率ぽと高い利潤率・とを享受できることになる︒

 投資関数が与えられると︑長期的経済成長が均衡成長径路に近似していると考えて︑超過技術進歩もしくは超

過労働力成長は︑その利用に必要とされる投資をひきおこす︒もしこれを保証するメカュズムが存在すれば︑技

術進歩が生産費減少と失業を発生せしめるかそれとも現実的成長拡大をもたらすかという問題に答えることがで

きよう︒ シュムペーターは︑この問題に明らかな答を見出した︒

  ﹁発展なくして企業者利潤なく企業者利潤なくして発展なし︒資本主義的経済に対しては尚企業者利潤なくして財産形成も

 ないということを附け加へなければならない︒これなしには吾々が眼の前に見るところの大なる社会現象はない﹂︵Ent‑

 xvickLung。s・QS・邦訳四〇三頁︶

 すなわち︑利潤メカニズムを通じてより速やかな技術進歩︵シュムペーターにおいては︑いわゆる﹁新結合の遂行﹂︶

がより高い投資率と結びつくことを示す︒つまり︑技術進歩による投資機会の拡大︵匹表の上方シフト︶はそれま

での資本蓄積率のもとで以前の利潤率を凌駕する利潤率を実現し︑この高い利潤率は投資関数を通じてより高水

準の経済成長率をもたらすであろう︒これこそマルサス︑シュムペーターの経済発展過程の見方であったといえ

 実際のところ︑経済成長論の多くは技術進歩を外生変数として扱ってきたために︑技術進歩と投資とを相互関

連づける力について多くを語ることができなかったのである︒つまり︑経済の投資シェアーは技術進歩や人口成

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長と無関係であると仮定することに満足した結果︑技術進歩や人口安長は単に資本産出比率に影響を与えたにす

ぎなかった︒それゆえ投資率︵貯蓄率︶と成長率とのいかなる関係も全︿の偶然であり︑高い投資率と低い成長率

とが結びつくことも起りうべきことだったのである︒

      ︵2︶ ここで第1表に言及しておこう︒

 表から明らかなようにgとぶとは強い相関を示している︒この

ことは︑これまでの議論に則して次のように解釈できるであろ

う︒すなわち︑高い成長率は︑純粋資本家の貯蓄性向︵富所有者の

消費・貯蓄間選好︶を一定とすれば︑高い技術進歩率もしくは急速

な人口成長からうみ出され︑それに伴う高い利潤は投資シェアー

を高め︑結果的な粗貯蓄率が高かったということである︒

 ここでの議論は貯蓄率が外生変数として与えられて然る後に現

実成長率が決定されるという文脈ではなく︑匹表を決定する所

望成長率と技術進歩関数の係数とが所与で一定ならば︑これらの

パラメーターが成長率と利潤率とを決定し︑そこから貯蓄率が導

出されるという展開をなしている︒

(18)

       四 異なる成長性向をもつ二経済

 前節の議論は純粋資本家の貯蓄性向を一定とし︑それゆえに投資関数を固定させて︑投資機会の相違に起因す

る帰結を考えたのであるが︑本節では︑同じ投資機会関数匹表をもち異なる投資関数匹︑匹表をもつような

二経済を比較考察することによって︑議論のもう一つの側面を浮き彫り

にしよう︒

 第V図は︑ある経済が他の経済よりも強い成長性向︵所望成長率が高い︶

をもつような状況を示している︒

 成長性向の強いQ経済は了という投資関数をもち︑成長性向の弱い

瓦経済の投資関数は匹表である︒Q経済の均衡成長率げは瓦経済の

昭を上回るが︑Q経済の均衡利潤率yは瓦経済のfよりも低くな

る︒強い成長性向はより多くの資本蓄積をうみ出すが︑低い利潤率とい

う犠牲をはらわねばならない︒

 このような議論はよく知られており︑資本飽和的なオランダ経済の利

(19)

潤率についてのアダム・スミスの考察にまで遡る︒

  ﹁またオランダ人がョーロッパ人のだれよりも低利潤で事業をしているのは周知のとおりである︒I・IIII利潤の減少は︑事業

 が繁栄していることの自然的結果か︑もしくは従来よりも一層大きな資財がそれに使用されていることの自然的結果なの

 に︑商人たちは︑ややもすると事業が落ちめになったと不平をこぼす︒se●またかれらが自国よりも利子率の高い国々の私人

 に貸し付けている金額が巨大だということは︑疑いもなくかれらの資財が過剰だということ︑いいかえれば︑それを自国の

 適当事業で他用してかなりの利潤をあげうる限度をこえて︑かれらの資財が増加しているということを立証する諸事情では

 あっても︑その事業が減衰しているということを立証するものではない︒私人の資財のばあいには︑たとえそれがある特定

 の事業によって獲得されたものであっても︑その人がこの事業において使用しうる限度をこえて増加し︑しかもなおその事

 業はひきつづき増進することかありうるように︑一大国民の資本もまた︑これと同様に増加しうるものなのである︒﹂

 しかしながら︑このような議論と対照的にいわゆる﹁血気﹂︵gF乱召回t昌の理論は︑異なる帰結に到って

いる︒

 J・ロビンソンは所望成長率が高ければ︑より強力な﹁血気﹂により利潤率が増大する可能性があることを示

唆している︒すなわち︑より高い所望成長率は時折それが必要とする革新を事前に準備することによって実現さ

れうることがあり︑㈲式に類似するg=spr︵りは資本家の貯蓄性向︶から︑らを所与とすれば高い成長率は高

い利潤率と結びつくとするのである︒

 ロビンソンの﹁血気﹂はここでの﹁富保有者の成長性向﹂と同じ概念である︒しかし㈲式の解釈は︑g=s︒r

においてgが高ければ4は高く︑yはCo"の上昇によって低いということである︒4とrとの相関は逆相関な

(20)

のである︒

 このような係争点はどこに起因するのであろう︒ロビンソン・モデルでは利潤は基本的には投資率によって決

定され︑投資率︵換言すれば資本家の消費性向︶が影響されない場合には︑利潤と実質賃金が影響されることはあ

り得ないのである︒逆にここで展開した議論は貯蓄率が利潤水準に影響し︵逆相関︶︑成長率には利潤が投資に及

ぼす作用を介して間接的に影響すると考えるのである︒すなわち︑ロビンソンの﹁技術スペクトル﹂のシフトは

安定的な(yミー4砦を実現しうる可能性を示し︑そのような状況では﹁血気﹂に燃える企業家が現実消費と

成長との間の選択を回避し得るのであり︑消費のくり延べもなしに成長を選択できるのである︒

 企業家が成長と消費との選択に直面しており︑強い成長性向を示すならばipsofacto低い消費資本比率を選

択していることに他ならないと考える見方こそここでの議論の内包する帰結である︒

 ケインズの述べた﹁未亡人の壷﹂の寓話はロビンソンの企業家と論理を一にしているように思われる︒もちろ

ん富保有者の支出するすべてが他のセクションの人々を微塵も悪化させることなく回収されうるような過小雇用

経済では︑高い投資と高い消費が同時的に達成されうることは広く一致を見ている︒

 ケインズは﹃一般理論﹄で血気の果す役割りに言及して次のように述べている︒

  ﹁将来の長い期間にわたってその完全な結果が引き出されるような何ごとかを積極的になそうとするわれわれの決意の︑お

 そらく︑大部分は︑血気II不活動よりはむしろ活動を欲するおのずからなる衝動IIの結果としてのみなされるのであっ

 て︑数量的な確率を乗じて得られた数量的利益の加重平均の所産としてなされるのではない︒II・●Ieしたがって︑もし血気が

 にぶったり︑自主的な楽観がよろめくようになったりして︑数学的期待値以外にわれわれのたよるべきものがなくなれば企

(21)

 業は衰え︑死滅するに至るであろう︒﹂

 企業家の選評は確かに利潤率や成長率に影響し︑その効果を無視することは誤りであろうことは第V図の考察

から明らかであるが︑そのような選好だけが全く根本的部分を形成し尽くすということではない︒

(22)

       結  び

 以上の議論によって︑利潤率と均衡成長率とが二つの力によって決定されることを示した︒心理的社会的諸力

の決定する投資関数と生産技術的要因から決定される投資機会関数とである︒

 利潤率と均衡成長にとって重要なるもののすべてが技術的要因であるとし︑心理的要因を排除してしまうこと

は妥当ではない︒また同様に︑すべてを企業家心理のたまものとし資本測定︑不完全競争および規模の利益につ

いての一般的困難性を強調して︑成長過程において技術的要因が分析可能な役割りを演じないとすることも誤謬

であろう︒

 本稿の論点を別の角度から見るならば︑これはカルドア流の安定成長モデルの線上にあるといえるであろう︒

したがって隠伏的な議論に光を投ずれば︑次のように述べることができる︒

  ﹁自然成長率と保証成長率とは等しい均衡成長率に向う傾向があり︑両者の間のどのような乖離も︑その差異

を消し去るような傾向をもつ諸力を鼓舞し︑それらの諸力は︑一部は自然成長率の調整を通じて作用し︑また一

部は保証成長率を通じて作用する﹂︒この点はカルドアが彼自身のモデルとハロッド・モデルとの関係に言及し

て指摘している点である︒

参照

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