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社会科における文化財教育

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

社会科における文化財教育

著者 菊地 一郎

雑誌名 古文化財教育研究報告

8

ページ 45‑52

発行年 1979‑03

その他のタイトル On Cultural Properties Studies in Social Studies

URL http://hdl.handle.net/10105/346

(2)

社 会 科 に お け る文 化 財 教 育

(奈良教育大学地 理学 教室)

(昭54年 1月 31日受 理)

10文化 財 の 定 義 と文 化 学 習

一般に文化財とは人類 の文化活動(作)によ って作 り出 された事象・ 事物をい うが、最近では 通 常、 とくに教育の場では、昭和25年制定 の文化財保護法の規定によることが多い。 同法の第2

1)

条第 1項に よれ ば、文化財 は有形 文化 財、無形文化財 、民俗 資料 、記念物の4つに分類 されている。

有 形文化 財 とは建 造物・ 絵画・ 工芸品・ 書跡・ 典 籍・ 古文書 その他 の有 形 の 文化 的所産 でわ が国 に と って歴 史上 又 は芸 術上価値 の高 い もの及 び考 古資料 、無 形 文化 財 とは演劇・ 音 楽・ 工芸技 術 そ の 他 の無 形 の文化 的所産 でわが国 に とって歴 史 上 又は 芸術上価 値の高 い もの、 民谷 資料 とは衣 食住・

生業・ 信 仰 0年 中行事 等 に関す る風俗 慣 習及 び これ に用 い られ る衣 服・ 器具・ 家屋 その他 の物件 で わが国民の 生活の 推移の理解 のため欠 くことの出来 ない もの、 記念物 とは員 塚・ 古墳・ 都 城跡・ 城 跡・ 旧宅 その他 の遺 跡 でわ が 国 に と って歴史上 又は鑑 賞上価値 の高 い もの並 びに 動物(生息 地・ 繁 殖 地及 び渡 来 地 を 含 む。)・ 植 物(自生 地 を 含 む 。)及び地 質鉱 物(特異 な 自然 の 現象 の生 じて い る 土 地 を 含 む。)でわが 国 に と って学 術 上価値 の高 い もの と規 定 され てい る。

な お記念物 には歴史 的な もの と 自然 的な ものが あ り、史跡 。名勝・ 天然記念物 に分 け られ る。 ま た地中や水中 など人目に触 れ ない ところに埋 没 してい るものを埋蔵文化財 とよぶ。 文化 財 の うち、

文化 財保 護委員 会 が指 定 した ものを指 定文 化財 とい い、 と くに重要 な ものを 重要 文化財・ 重 要無 形 文化財・ 重 要民俗 資料・ 特 別 史 跡・ 特 別名勝・ 特別 天 然 記念物 な どとよ び、重要文 化財 のなか で と くにす ぐれ た もの を国宝 とす る。 考古学 で遺物 とよぶ もの は、文化 財保 護法 で規定 され た有 形文化 財の うちの考 古資 料 に入 り、遺跡 は同 じ く記念物 にあた る。

敗 戦の苦 汁を飲 まされ た わが国 は、軍国主 義・ 超国 家主義の誤 りを深 く反 省 し、戦 後 に お け る新 しい 日本 の教育の基本 を確立 す るため昭和22年に教 育基本 法を制定 した。 教育行 政によ る空洞化 現 象を指摘 され なが らも、 公布 後今 日に至 るまで改正 され る ことな く、現行 教育法 制におけ る最 高 法規の地位を 占めてい る。 そ こでは文化 教育学 の教 育原理 に 基づ き、同法 前文 におい て「 わ れ らは さきに、 日本国 憲法を確立 し、民主 的で文 化的 な国家を建 設 して、(中)普遍 に して 、 しか も個 性 ゆたか な文化 の創 造をめ ざす 教 育」を 高 く掲 げ、戦 後教 育の根本理 念の一 つ に した。 以 来わか 国 の 社会 科 教 育では、それを受 けて文化 に関す る学 習を 強調 し、 それぞれの時期の特 色 をに じませ な が ら一 貫 して文 化学 習 を重視 す る立場を維 持 して きたの である。

ところで 「文 化 」の概念 は包括 的、かつ 全体的 で定 義す る ことは容易では ない。 ただ一 般 には人 為 的でない 自然 と対 置す る概念 で、 人間生 活の 物心 両 面 におけ る発 展 の 所産 と され て いる。 イ ギ リ

(3)

スの人類学者 タイ ラー

Tay10r、

E(1832〜 1917)の 次 の定義 は有 名 で あ る。

「文化 と は知 識・ 信 仰・ 芸 術・ 道徳・ 法律・ 慣 習な ど、社会 の成員 と しての人間が獲得 したあ らゆる能力や 慣 習の複合 体 であ る。」 狭義 の文化 は人 間生活の精神 的側 面の発展 を意 味 し、物質 的側 面の 発展は 文化 と も文 明 ともい ってい る。 したが って物質 文化 または物質 文 明のいずれ の言葉 も使 用 されるカミ 精神文 明とい う言葉 はあ ま り使 用 され ない。 しか し実際の 人間 生活 では 、精神 と物質 は一 体 とな っ て お り、文化 と文 明を厳 密 に区別 す る ことには問題が あ ると もいわ れて い る。最 近で は文化人類学 に よ って新 しい文化 概念が提起 されて い る。 それは「文化 とは 人類 が特定 の社会 の歴 史 的O XIL会 条 件の なか で、学 習に よ って作 り出 した物 心両 面 にわた る生 活様式 全般 であ る。 」 とい うもの で、

その場合 、文化は特 定 の価値体 系を基準 に して評価 され るべ きでは な く、あ る時 代0地域 におい て 固有 の存在理 由を もつ ことにな る。

20社 会 科 に お け る 文 化 学 習 の 推 移 と 現 状

19世紀 後半か ら ドイ ツを中心 に興 り、大正 末期か ら昭和 初期 にか けてわが国の教 育 に強 い影 響 を与えた もの に文化 教育学(Kul turpttdagogik)が ぁ る。 そ れは文 化を原理 と し、人類 また は社 会が歴 史 的に築 いた文化 を後代 に伝達 し、 さ らに主体 的に新 しい文化 を創造す ることが教育 の 本 来 的機 能 であると した。

戦 後わが国 の社会科 は ア メ リカ社会科 を全面的 に取 り入れ て発 足 した。 以下 社会科 にお け る文化 学習の推移を中学 校 学 習指導 要 領社会 の改 訂の歩 み に沿 って みて みよ う。  新教育 の発 足 にあ た り 昭和

22年

3月 に学習 指 導 要領一般編が刊行 され 同年 6月 中学校学習指導要領社会科編が 出 された。

そ こでは ア メ リカ社会科 にな らい 、祖先 が築 い た貴 重 な文化遺 産の継承・ 発展 とそ の普 遍 性を強調 す る文化学 習が重視 され 、単元構成 上 も政治・ 経済 の学 習の 前提 とされた。 第1次改訂 の26年 にな る と、わが国 の国 連加盟 に伴 う国 際社 会へ の復 帰やユ ネス コの 国際理解 の教育の活発 な推進 な どの 影響 を受けて、国 際間の文化交流 と相互理解 によ る世界平和へ の寄与 とい う観 点 が盛 られた。

30年

版 の第

2次

改訂 は社 会科 だけ について行 われた。25年に勃 発 した朝鮮 動乱 によ る占領政策 の転換 、26年の 対 日平 和条約 の 調 印な どを背景 に、政府 の 内外 政 策が大 き く変 化 し、社会科 の改 訂は文 教 政 策 の 重要課題 であ った。 そ こでは わが国の伝統 文化 の見 直 しが行 われ、歴史 的 分野 を中 心 に文化 の 普遍 性と特 殊 性 の両面 を理解 させ る文化学 習が、地理・ 政経 社分野 に も行 われ ることに

な った。

30年代 か ら40年代 にか け世界 と 日本 の 状勢に大 きな変化 がみ られ たる と くにわ が国 は経済の 高度成長 期 に入 り、 奇跡 とい わ れ るほ どの経 済 的発展 を と げた。 また それ によ って社会 的ひずみ が 生れた。33年版・ 44年版 の文 化学 習 は、30年版 の基本 的観点 を 引継 ぎなが ら、歴史 的分野 に 文化 の形成・ 交流0伝播・ 摂 取・ 変容 お よ び文化 と生活等の観 点が 加 え られ、初歩的 な文 化 圏構 想 が取 り入れ らオ1た。それは社 会 科 に人類学 の研 究方法 や成果 を導 入 しよ うとする新 しい試 み といえる。

また公民 的分野 に歴 史的分野 での文 化学 習を基礎 に文 化 の社会 的機能 、現代文化 の特色 と問題点 、 文化創造 な どの 内容が付 加 され た。 さ らに公民 と しての基礎的 教養 を修得 させ るとい う観点か ら、

と くに精 神文化 と自由権 につ い て考え させ よ うと してい る。

(4)

この時 期 に基本 的事項 の 精選 、指導 内容 の集約 化 による指導の徹 底 お よび学 習負担 の軽 減が 検討 事項 の一 つ にな った。 前の30年版 改訂 の 際に 、経験 主義 に基づ く問題 解決学習 か ら系 統学 習 へ の 転換 が行 われたが、学力 論 争 と関連 して ミニ マム・ エ ッセ ン シアル ズが活発 な論 議を呼 ん だ。33

年版 以降 は知 識の 基本 的 な もの と して 基本 的事 項 とな った ものであ る。 この ミニ マム・ エッセ ンシ アル ズは エ ッセ ンシア リスツ(本質 派)の主 張 に な る もの で、 もと もとア メ リカの 進歩主義 教 育( 経 験主 義 教育)を批判 し、文 化財を 教 育内容 と して重 視す る文 化教 育学の一学 派 で あ る。

6)

今 次改 訂の52年版 中学校学 習指導 要領 社会 の なか か ら文 化学 習 に関 係す ると ころを ひろい 出 し てみ よ う。 まず歴 史 的分野 の目標(1)で、「 我が国の歴 史を、世界 の歴 史 を背景 に理解 させ 、それ を 通 してわ が国 の伝統 と文化 の特 色を考 え させ る と と もに 、… ……」 とあ り、13)におい て「 国家・ 社・

会及 び文化の発展 や……、現在 に伝 わ る文 化遺産 を その時代や地域 との関連 におい て理 解 させ 、そ れ を愛護 し、尊 重す る態 度を 育 て る。 」、(4)では「歴史 にみ られ る国際 関係や文化交流 の あ らまし を理 解 させ、他民族の文 化、生活 な どに関心 を もたせ 、国際協調の 精神 を養 う。 」な どと述べ て い る。 と くに注 目 され るのは、内容 の取扱 い の と こ ろ で 、

R21 

内容(1)およ び 場の取扱 いに 当た って は 、考古学な どの諸科学 の成果 を活用 す るとと もに」とあ り、また 日3)郷土 の史跡 その他 の文 化財 を見学・ 調査 させ て、 我 が国 の歴 史の発展 を具 体的に把握 させ ると ともに 、特 に内容(5)、 (61、 (7)及

{8)の取 扱い において は、地理 的分野 との 関連を図 り、 か つ 民俗学 の成果 を活用 す るな ど して 、郷 土 の 生活文化 に触 れ させ ることが望 ましい」 と述 べて い るこ とであ る。 考古学を は じめ 人類学・ 民 族学・ 民俗学等の歴 史 学 隣接 諸科 学の 成果 の総合 が 必要 であ ることが説 か れ 、中学 校指導書社会 編 では郷土 学習 に当た って民俗学 の成果を活用 す ることが今 回改訂の特 色 であ るとは っき りうた って い る。

次 に 公民 的分野 につ い てみ ると、 目標(3)に「 ……、 国際協 調 の精神 を養 うとと もに、 自国を 愛 し、

その平 和 と繁栄 を 図 り、文化 を 高める ことが大切であ る ことを 自覚 させ る。 」 とあ るだけで、 目標 に関す る限 り、 文化学 習 に関す る記述 はきわめて少 い。 しか し、 内容 の11)のウが 現代 の文化 と生 活 とな ってお り、「 現代 の社会 生活 におけ る文化の はた らきとその特色 を理解 させ 、我か 国の文化の 伝統 に関心 を もたせ る とともに、文化 を創造 す る意 義 に気付 かせ る。 」 とあ って 、と くに「文化 を 倉」造す る意 義」 にふ れ てい ることが注 目 され る。

学 習指導 要 領の今 次の改訂 の大 きな特 色 の一つは、「第 1学年 及 び第2学年を通 じて 地理 的分野 と歴史 的分野を並行 して学 習 させ、第3学年 に おい て公民 的分野 を学 習 させ るこ とを原 則 とす る」

ことが明示 され てい る ことで あ る。44年版では第 1・2学年の 地歴並 行学 習 と第3学年 におい て歴 史的分野 およ び公民 的分野の学 習を原則 とす るが 、第 1学年 地理 、第 2学年 歴 史 、第3学年 公 民 な ど学校の 実態 に即 して適 切 に定 めて よい と してい たの とは大 きな違 いがあ る。 す なわ ち、 公民 的分 野の学 習 が生徒の発 達段 階の最上位 に明確 に位 置づ け られ た ことを意味 す る。 したが って小・

中学 校段階で、文 化学習 の最終 的ね らい が「文化を創造す る意 義に気付か せ る」 ことに あ ることが 明示 された とい え よ う。

地理 的分野 に関 しては、 目標 お よび 内容のなか に「 文化 」 の文字 は見 当た らない。 しか し、 内容 の取 扱 いの項 で「(3)内容 の{Jの ウの取 扱 い に 当た っては、我が 国 と政治 経 済 又は文化 の上 で関係

(5)

の深い地域 又は国を中心 とし……」 とあ り、中学校指導書IIL会編で身近 な地域の取扱 いについて、

『身近な地域をRア )位置と歴史的背景」を初め 日本の諸地域の学習の観点 として示 してい る項目を もとに して考察す ることが 必要 であ る。 また、歴史的分野の「 内容の取 扱い」の13)の「郷土 の史跡 やその他の文化財を見学・ 調査 させて、我が国の歴史の発展 を具体的に把握させる。 」こととの関 連に も配慮す ることが望 ましい。Jと述べてい る。また学習 指導要領の 内容(1)のウの(アL位置 と歴史 的背 景、同 じ く(ウ)住民 と生活、内容2)の17)位 置 と歴史的背景 で「生活様 式」 の言葉が出ており、そ れ らを「文化」の語で置き換え ることも可能 で、文化学習 に関心が低い とい うわけでは決 してない。

さらに新小学校学習指導要領(52年)社会 についてみ ると、第3学年 の内容(5)に「 ……地域 社会の文化財、行事 などに関心を もたせ る。 」 とあ り、第6学年 の目標(1)に「国家・ 社会の発展に 貢献 した先人の業績 や優れ た文化遺産 についての関心 と理解を深め、わが国の歴史や伝統を大切に しよ うとす る態度を育てる。 」 と述べている。小学校 および中学校を通観 し

.文

化学 習のね らい とあ り方は、 それぞれの生徒の発達段階や学校段階 およびそれを取扱 う学習領域(歴史・ 公民・ 地 理的分野)によってか なりの違いがあ ることがわか る。 とりわけ新学習 指導要領では、小学校段階、

中学校の歴史0地理 および公民的分野で相違が認め られ る。 すなわち、小学校段階では文化財 ま は文化遺産 に対す る関心・ 理解・ 尊重・ 保護が強調 され、中学校の歴史0地理的分野では、文化の 伝承性、変容、特 殊性 と普遍性、公民的分野で は文化 を客体 と して認識す るだけでな く、個人や社 会が文化 を どの よ うに摂取 し、それ によ って 個人が社会的存在 として どの ように形成 されてい くか

とい う過 程、 さらに文化 倉」造に まで及ん でい る。

3・ 文 化 財 教 育 の 研 究 と 奈 良 県

い うまで もな く文化 または文化財その ものは、人間の外側で人間および社会の文化活動(作) によつて作 り出 された所産にす ぎない。 教育の内容 としての文化財は、そのよ うに して形成 され、

蓄積 された文化財 その ものではな く、それ らの中か ら価値判断によ って選択的に再構成 され 、また は文化の創造過程が展 開 され 、 さらに伝達方法上の考慮が加え られた結果 としての文化財でな くて はな らない。 そして、そのよ うな方法およびあり方を考究 し、教育の現場 で検証 してい くのが文化 財教育の研 究 といえよ う。

奈良県 は 美 しい 自然 と歴史的風土 に恵 まれ、全国で も有数の文化財保有県 と して知 られている。

国・ 県文化財指定一覧表

国 宝 、重 要 文 化 財 指 定 件 数(国宝の数は重要文化財の数に含まれない) (昭

52年

7月現在)

下上

Π

建 造 物

建 造 物

奈 良 県 402 1£60

  249 1,57 9■γ1鰤 11971 3,1& 1(I滝 2認 9.8η

(6)

県・ 国別

特別史跡名勝天然記念物 史 跡 名勝 天 然 記 念 物 重 民

8

形 財

天 記 然 物

    1 1 1 1

73 996 2402 60 個 54

15 特 別 史跡 名勝 天 然 記 念物・ 史跡 名勝 天然 記念物等 指定 件数

(特別 史跡 名勝天 然記念 物 の数 は史跡 名勝天 然 記念物の数 に含 まれ な い)

奈良新聞社:奈良県年鑑1979年  90頁

こ こに掲 げる国・ 県 文 化財一 覧表 によ って も明 らか なよ うに、国宝 につい ては実に 全国 の20%以

上、重要文化財 につい ては 全国 の10%弱を有 してい る。 も っと も本県 は阪 神大都市 圏の 郊外 に位 置す るために、都市化・ 宅地化 が早 くか ら進 んでお り、指定文 化財の多 くは 古文化 財(有形文化財)

で、無形文化 財・ 民俗 資料・ 記念物等 の保 存は 必ず しも十 分 とは言え ない状態 であ る。 しか し、 と くに飛鳥地方 は大 和朝 廷発祥 の地であ り、飛鳥京・藤原京・ 平城京 などの宮跡を有 し、古都 とも呼 ばれて いる。昭和27年、当時の文化財保護委員会(現在の文化庁)の 出先研究機 関として、東京 と並 んで奈良国立 文化財研究所 力段 置 された。

39年

か ら平 城 京 跡発 掘調査部、48年か ら飛鳥藤原京跡発掘調査部ヵ理1ま 現在2部制を とっている。また平城京跡内には資料館・ 発掘調査遺物倉庫 があ り、 平城京の遺物・遺 構を見 学 させるほか、 出土品の科学的 な保 存研究を進 めてい る。 また 同 じ平 城 京跡 内 に全国 的 な埋蔵 文化 財 の発 撫 調査に対応 す るため に49年か ら国立 埋蔵 文化財 セ ンターが設置 され、保存 工学 の研究、 発 掘機 器 の開発

.情

報 資料 の収集整理 な どを行 ってい る。 その他県立の橿原 考 古学 研究所 、同 附属考 古学 博 物館 、私立 の元 興 寺文 化財研究 所 な ど古文化財 の発 掘・ 保 存 に関す る国 公私立 の研 究 機関が あ り、 奈良 国立 博 物館、 私立 の寧楽 美術館 、東 洋民俗 博物 館 な ど文化財 の社会 教育機 関 に も恵 まれ てい る。 と ころで社会科 にお ける文化学習の推 移 と現状 について述べ た通 り、少 くと も社会科 の な かでは文化学 習が 高い比 重を 占め てお り、 その中心 が文化 財学習で あ るこ とはい うまで もない。 に もかか わ らず、学 校 教 育の一環 と して位 置 づけ られ るべ き文化財 教 育の研究 機関が未 だ設 置 されて い ない。 今 後の 日本 は 経済よ りも文化 をよ り重視 しなければな らない とす る論調 も出て きてい る。

文 化財 教 育の研 究機 関 の設 置につ いて真剣 に検 討すべ き時 期に来てい ると思 われ る。 また設置場 所 と して は、そ の歴史 的風土 および文化 財研究 の 現状か らみて、奈良県 が望 ま しい といえ るだ ろ う。

県指 定 文 化財 件数

/Jヽ

1 26

(7)

4̲ま  

 

文 化 財 の定義 につ いて は、文化財保 護法の規定 が一般 に定着 して きてお り、 と くに教育の場 で行 わ れて い る。 文化 の概念 につ いては、「文化 は特 定の価値体 系を基準に して評価すべ きでは な く、

あ る地域・ 時代 でそれぞれ 固有 の存在理 由を もつ」 とす る文化人類学 の概 念が提起 されて お り、教 育 の場 で十 分な論 義 が必 要 とされ る。 文化 財 教 育は国際的相 互 理解 に役立 つ とす る有 力 な根拠 とな るか らで あ る。

戦 後の社 会科 におけ る文 化 学 習の推 移 を み ると

,そ

れぞ れの 時期で世界 的 あ るいはわが国 の社会 状勢 、社会 的要 請 に応 え る形 で特色 を もち なが らも、一 貫 して重視 され、学 校 教 育の重要 な一環 と

して位 置づ け られて きた。 また現在、 その重要性を ます ます増 しつつ ある。 そ して文化学 習の中心 に立 つ のが文化財学 習であ る。

文化 財 学習の指導 について本学歴史学教室 の木村博 一教 授 は次 の様 に述 べて い る。 「 文 化財 といえ ば直 ぐに保 存 とい うことに眼が 向け られか ちであ るが、特 に教育の分野 におい ては、保 存 とい う立 場 にのみ止 まらず、文 化財 の何 を どう継承 して ゆ くか 、それをふまえてどうい う新 しい民族文化 をつ くり あげて ゆ くか 、 とい う創造 的立場 が 尊重 され な くてはな らない とお も う。(中)文化 財 は保 存 さ れるべ き もの と して よ りも、む しろ発見 さるべ きもの と してオ旨導 され るのが 望 ましいとい ってよい。」

さ らに「文化 財が貴 重 なのは 、民衆の尊 い労働 とす ぐれ た創意の 所産 と して、 また 個人の天才 と能 力が つ くりだ した 文化 的芸 術的価値 と して 、国 民 の創造 的精神 の根源 とな り、今 日の 民族 的 自覚 の 支 えを な してい るか らだ とい え る。 従 ってそれ は、子供 たちの 民族 の歴 史への愛 情 と尊 敬を深 め 、 民 族的 自覚 を高 め てゆ くもの と して、学習の 中に広汎 に とり入れ られてゆかねば な らない。そうす る こ とによ って 、子供 た ちの心 の中 に、上か らのお しつ けでな く自然 な形 で、ほん とうの愛国心を培

9)

って ゆけ る ことに もなるだろ う。 」

木村 教授 の指 摘 によ って、文化 財教 育が 、子供達 に対 して「 郷土及 び国家の現状 と伝統 について、

正 しい理解 に導 き、進 んで国 際協 調 の精 神を 養 う(学校 教 育法第18条

2項

、小 学 校教 育の 目標 で 中学校 教 育の 目標 に準用)」 王 道で あ ることは 明 らか であ る。 子供達 の正 しい民族 的 自覚 、 ほ ん とうの愛国 心 は、決 して偏 狭 な国 家主義 に走 る こ とな く、国 際協調 と世界平和 に結 びつ く筈 であ る。

なぜ な ら、 自国の文化 を真 に愛す る心 は 、他国(の文化)をも尊重す るに違 いないか らであ る。

社会科 とい わず 、広 く学校 教 育の中 で、文 化財教 育が重要で あれ ばあ るほど、文 化財 教育に関す る研究機 関の 設 置が痛 感 され る。 そ して 古都 といわ れ、 日本 人の心 のふ る さとと称 され るわが奈良 県 は、歴 史 的風土 に恵 まれ、数多 くの文 化財研究 機関を有 し、文化財教 育の研究機 関設 置 にも っと

もふ さわ しい所 とい えよ う。

(8)

参考および引用文献

1)鈴

 竹雄・ 田中 二郎編 (1977):六 法全書、1424〜 1435頁、有斐 閣.

2)Tay1 0r,E,B(1871):Primitive C ulture.

3)乙

 岩造 (1934):文 化 教育学の新研究.

4)大

 照夫 (1974):社 会科基本用語辞典 201〜 203頁、 明治図書.

5)東

F/1ヽ学 校社会科 研究会 (1973):月 学校 社会科

25年

の歩み、 明治図書.

6)文

部省 (1977):中 学校学 習指導要領.

7)文

部省 (1978):中 学校 指導 書社会編.

8)文

部省 (1977):Jヽ学校学習 指導 要領.

9)木

村 博 一 (1954):文 化財 と学習指導、奈良県教育、 第

43集

、 第526号.

(9)

On Cultural Properties Studies in Social Studies Ichiro Kikuchi

(Department of Geogaphy, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received January 31, 1979)

A definition of cultural properties which is provided for in Cultural Properties Protection Low has been adapted broadly in the school education. They are classified into four large

groups in it, tangible and intangible cultural properties, folklore data, and monuments. Cultural studies laying stress on cultural properties have consistently preserved an important place in Japanese social studies after the World War II, though they marked characteristic features

ac-

cording to the wave of the times. Nara Prefecture is abundantly blessed with historical features and precious ancient cultural properties, so some national or private research institutions of cultural properties have been established there. Nowadays the need of the establishment of

a

research institution for cultural properties education is keenly felt in order to promote cultural

studies not only in social studies but broadly in the school education. We believe that Nara Pre-

fecture will be the most suitable place for it.

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